(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記カバープレートは、前記走査方向における前記キャリッジの移動範囲の少なくとも一方の端部において、前記所定の平面と直交する方向から見て、前記一方の端部に到達した前記キャリッジと重ならないことを特徴とする請求項2〜4の何れかに記載の液体吐出装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1の支持ワイヤでは、チューブを把持するチューブ把持部が、他の部分よりも上方まで延びている。一方で、特許文献1に記載されているようなインクジェットプリンタでは、スペースの制約等の関係で、支持ワイヤの上方にフレームを設け、このフレームに制御基板等を配置することがある。この場合には、フレームが配置される位置によっては、キャリッジの移動に連動してチューブが移動し、支持ワイヤが揺動したときに、チューブ把持部や、チューブのチューブ把持部近傍の部分が、フレームと対向する位置とフレームと対向しない位置との間で、フレームの縁を横切って移動することがある。そして、この場合には、チューブ把持部や、チューブのチューブ把持部近傍の部分がフレームの縁に引っ掛かってしまう虞がある。
【0005】
本発明の目的は、液体吐出ヘッドに接続された可撓性を有する長尺部材を保持しつつキャリッジの移動に応じて移動する保持部材、あるいは、保持部材に保持された長尺部材が、制御基板が配置されたフレームなどの構造部材の縁に引っ掛かってしまうのを防止することが可能な液体吐出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明に係る液体吐出装置は、所定の平面上において所定の走査方向に往復移動するキャリッジと、前記キャリッジに搭載された液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドに接続された、可撓性を有する長尺部材と、前記長尺部材を保持しつつ、前記キャリッジの移動に応じて移動する保持部材と、前記キャリッジの前記所定の平面と平行な配置面に沿って配置された構造部材と、を備え、前記保持部材及び前記長尺部材の中で、前記所定の平面と直交する方向において前記構造部材に最も近接する部分である近接部は、前記所定の平面と直交する方向から見て、前記構造部材と重なる領域と前記構造部材と重ならない領域との間で前記構造部材の一縁を横切って移動するように構成され、前記構造部材と前記近接部との間に、前記所定の平面と直交する方向から見たときに前記近接部の移動領域全域と重なる、カバープレートが設けられている。
【0007】
チューブやFFC等の長尺部材を保持する保持部材は、キャリッジの移動に伴って移動する。この移動の際に、所定の平面と平行な配置面に配置された構造部材に近接する近接部が、構造部材と重なる領域と重ならない領域の間で、構造部材の一縁を横切って移動する。そのため、近接部が、構造部材の一縁に引っ掛かってしまう虞がある。本発明では、構造部材と近接部の間にカバープレートが配置されているため、近接部が構造部材の一縁に引っ掛かってしまうのを防止することができる。また、カバープレートが、近接部の移動範囲の全域と重なっているため、近接部がカバープレートの縁に引っ掛かることもない。なお、本発明における「構造部材の一縁」とは、構造部材の周縁の一部のことである。
【0008】
第2の発明に係る液体吐出装置は、第1の発明に係る液体吐出装置において、前記構造部材の前記一縁が、前記走査方向に沿って延び、前記カバープレートは、前記構造部材の前記一縁に沿って設けられ、前記近接部は、前記走査方向における前記キャリッジの移動範囲の一部の、第1範囲内で移動し、前記カバープレートは、前記走査方向における前記第1範囲において、それ以外の範囲と比べて、前記走査方向と交差する方向に張り出した張出部を有し、前記張出部を含む、前記カバープレートの前記第1範囲に位置する部分が、前記所定の平面と直交する方向から見て、前記近接部の移動領域全域と重なる。
【0009】
本発明によると、カバープレートが、走査方向に延びる構造部材の一縁に沿って設けられた上で、第1範囲において他の範囲よりも張り出した張出部を有する。そして、張出部を含む、カバープレートの第1範囲に位置する部分が、近接部の移動領域全域と重なっている。この構成では、走査方向における張出部と隣接する領域にスペースができるため、レイアウト面で有利となる。また、カバープレートのコストを下げることができる。
【0010】
第3の発明に係る液体吐出装置は、第2の発明に係る液体吐出装置において、前記構造部材には制御基板が取り付けられ、前記制御基板は、前記走査方向における前記第1範囲とは異なる第2範囲に配置され、前記カバープレートは、前記第2範囲において前記走査方向に延びて、前記制御基板を保護する保護部を有する。
【0011】
本発明によると、構造部材に制御基板が取り付けられ、制御基板が走査方向の第2範囲に配置されている場合に、カバープレートの第2範囲に保護部が設けられることにより、制御基板への外部からの干渉を防止することができる。
【0012】
第4の発明に係る液体吐出装置は、第3の発明に係る液体吐出装置において、前記カバープレートは、前記制御基板に接続される配線を保持する配線保持部を有する。
【0013】
本発明によると、カバープレートを利用して、制御装置に接続される配線の、液体吐出装置各部への引き回しを行うことができる。
【0014】
第5の発明に係る液体吐出装置は、第2〜第4の何れかの発明に係る液体吐出装置において、前記カバープレートは、前記走査方向における前記キャリッジの移動範囲の少なくとも一方の端部において、前記所定の平面と直交する方向から見て、前記一方の端部に到達した前記キャリッジと重ならない。
【0015】
本発明によると、キャリッジの移動範囲の端部にキャリッジが移動したときに、キャリッジがカバープレートに覆われずに完全に露出する。そのため、故障時等に、キャリッジ及び液体吐出ヘッドに対する修理や、キャリッジの交換等の作業を容易に行うことができる。
【0016】
第6の発明に係る液体吐出装置は、第1の発明に係る液体吐出装置において、前記構造部材の前記一縁が、前記走査方向に沿って延び、前記近接部は、前記走査方向において、前記走査方向における前記キャリッジの移動範囲のうちの、一部の範囲内で移動し、前記カバープレートは、前記走査方向における前記一部の範囲にのみ設けられている。
【0017】
カバープレートが、走査方向における、近接部が移動し得る一部の範囲に設けられているため、近接部が構造部材の縁に引っ掛かってしまうのを防止することができる。また、カバープレートが走査方向における上記一部の範囲にのみ設けられているため、カバープレートを、近接部が構造部材の縁に引っ掛かってしまうのを防止することが可能な範囲で最も小さくすることができる。
【0018】
第7の発明に係る液体吐出装置は、第1〜第6の何れかの発明に係る液体吐出装置において、前記長尺部材は、前記所定の平面と直交する方向から見て、前記構造部材の前記一縁を横切るように配置され、前記カバープレートは、前記所定の平面と直交する方向から見たときに、前記構造部材の前記一縁の、前記長尺部材が横切る部分と少なくとも重なるように配置されている。
【0019】
本発明によると、構造部材の一縁の、長尺部材が横切る部分に、カバープレートが配置されているため、長尺部材が構造部材の一縁に接触して損傷してしまうのを防止することができる。
【0020】
第8の発明に係る液体吐出装置は、所定の平面上において所定の走査方向に往復移動するキャリッジと、前記キャリッジに搭載された液体吐出ヘッドと、前記インクジェットヘッドに接続された、可撓性を有する長尺部材と、前記長尺部材を保持しつつ、前記キャリッジの移動に応じて移動する保持部材と、前記キャリッジの前記所定の平面と平行な平面に沿って配置され
、前記液体吐出ヘッドよりも前記走査方向と交差する交差方向において一方側に配置される構造部材と、を備え、前記保持部材及び前記長尺部材の中で、前記所定の平面と直交する方向において前記構造部材に最も近接する部分である近接部は、前記走査方向における前記キャリッジの移動範囲のうちの一部の範囲内で移動し、前記構造部材は、
前記所定の平面と直交する方向から見たときに、前記近接部の移動領域全域と重なっており、さらに、前記構造部材は、
前記交差方向の液体吐出ヘッド側に縁部を有し、前記縁部は、前記走査方向に平行な第1部分と、前記交差方向において前記第1部分よりも前記液体吐出ヘッド側に近くに配置され、前記近接部の移動領域のうち前記第1部分よりも前記液体吐出ヘッド側に近い一部の移動領域の移動軌跡に沿う円弧形状を有する前記2部分とを有する。
【0021】
本発明によると
、近接部が構造部材の
縁部を横切ることがない。これにより、近接部が構造部材の
縁部に引っ掛かってしまうのを防止することができる。なお、本発明における「構造部材の
縁部」とは、構造部材の周縁の一部のことである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、近接部が構造部材の一縁に引っ掛かってしまうのを防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0025】
図1〜
図4に示すように、本実施の形態に係るプリンタ1(本発明の液体吐出装置)は、2本のガイドレール2a、2bと、キャリッジ3と、インクジェットヘッド4(本発明の液体吐出ヘッド)、本体フレーム5、保持ワイヤ6(本発明の保持部材)、基板用フレーム7(本発明の構造部材)、制御基板8、基板9と、カバープレート10とを備えている。なお、
図2、
図3では、各構成要素の位置関係をわかりやすくするために、基板用フレーム7、制御基板8、基板9及びカバープレート10の外形線を太線で図示している。また、
図3では、図面をわかりやすくするために、本体フレーム5の外形線の図示を省略している。また、
図3では、参考のために、基板用フレーム7の外形線の位置を一点鎖線で図示し、カバープレート10の外形線の位置を二点鎖線で図示している。
【0026】
2本のガイドレール2a、2bは、それぞれ水平面(本発明の所定の平面)と平行な所定の走査方向に延びているとともに、水平面と平行で且つ走査方向と直交する搬送方向に互いに離隔して配置されている。また、ガイドレール2aとガイドレール2bとは、これらの下方に配置された支持フレーム11によって支持されている。キャリッジ3は、搬送方向の上流側及び下流側の端部が、それぞれガイドレール2a及びガイドレール2bによって下方から支持されており、ガイドレール2a、2bに沿って、移動範囲R1内で走査方向に往復移動する。なお、以下では、
図1に示すように走査方向の右側及び左側を定義して説明を行う。
【0027】
インクジェットヘッド4は、キャリッジ3に搭載され、その下面に形成された複数のノズル20からインクを吐出する。インクジェットヘッド4には、4本のチューブ12(本発明の長尺部材)が接続されている。4本のチューブ12は、上下方向に配列されており、プリンタ1の本体に設けられた4つのインクカートリッジ13と接続されている。4つのインクカートリッジ13には、走査方向の右側に配置されているものから順に、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインクが貯留されている。あるいは、4つのインクカートリッジ13には、走査方向の左側に配置されているものから順に、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインクが貯留されていてもよい。4つのインクカートリッジ13に貯留されたインクは、4本のチューブ12を介してインクジェットヘッド4に供給される。そして、インクジェットヘッド4は、複数のノズル20からこれら4色のインクを吐出する。
【0028】
そして、プリンタ1では、図示しない搬送機構より記録用紙を搬送方向に搬送しつつ、キャリッジ3とともに走査方向に往復移動するインクジェットヘッド4からインクを吐出させることにより、記録用紙に印刷を行う。
【0029】
(本体フレーム、保持ワイヤ)
本体フレーム5は、合成樹脂材料からなり、搬送方向におけるガイドレール2bの下流側に配置されている。本体フレーム5の上面には、保持ワイヤ6が取り付けられている。保持ワイヤ6は、金属材料からなり、
図5に示すように、揺動軸21、直線部22及び曲線部23を有している。なお、
図5の走査方向及び搬送方向は、保持ワイヤ6が
図3の実線で示す位置にある状態での方向を示している。
【0030】
揺動軸21は上下方向に延び、本体フレーム5の上面に形成された貫通孔29に挿通されている。これにより、保持ワイヤ6は、揺動軸21において本体フレーム5に揺動自在に支持される。また、揺動軸21の下端部には約90°折れ曲がった抜け落ち防止部21aが設けられている。これにより、貫通孔29に挿通された揺動軸21は、抜け落ち防止部21aが、本体フレーム5の貫通孔29の壁となる部分に引っ掛かり、保持ワイヤ6が本体フレーム5から外れてしまうのが防止される。
【0031】
直線部22は、揺動軸21の上端部に連なっており、直線状に水平に延びている。直線部22の途中部分には、チューブ把持部24が設けられている。チューブ把持部24は、保持ワイヤ6の直線部22を形成する部分が、約90°ずつ同じ側に4回連続して折り曲げられることによって形成されたものであり、直線部22の他の部分よりも上方に突出しているとともに、折り曲げられた部分によって、上下方向に延びた隙間24aを形成している。隙間24aには4本のチューブ12が挿通されている。
【0032】
曲線部23は、直線部22の揺動軸21と反対側の端に連なっており、直線部22から離れる側に凸(
図1の状態で走査方向の右側に凸)となるように湾曲して、揺動軸21の近傍まで延びている。また、揺動軸21の近傍に位置する曲線部23の直線部22と反対側の端部近傍の部分は、直線部22の下方をくぐるように延びているとともに、上方に折り曲げられている。これにより、曲線部23の直線部22と反対側の端部が、直線部22の揺動軸21近傍の部分に固定される。
【0033】
そして、以上に説明したような構成を有する保持ワイヤ6は、隙間24aに挿通された4本のチューブ12を支持する。これにより、4本のチューブ12が下方に垂れ下がるのが防止される。また、保持ワイヤ6は、チューブ12がキャリッジ3の移動に連動して移動したときに、チューブ12の移動に合わせて、揺動軸21を中心に揺動する。
【0034】
より詳細に説明すると、
図2、
図3では、移動範囲R1の右端部に位置しているときのキャリッジ3を実線で図示し、移動範囲R1の左端部に位置しているときのキャリッジ3破線で図示している。さらに、
図3では、キャリッジ3が移動範囲R1の右端部に位置しているときのチューブ12及び保持ワイヤ6の位置を実線で図示し、キャリッジ3が移動範囲R1の左端部に位置しているときのチューブ12及び保持ワイヤ6の位置を破線で図示している。保持ワイヤ6は、キャリッジ3が走査方向に移動したときに、揺動軸21を中心に
図3の実線で図示した位置と破線で図示した位置との間で揺動する。また、このとき、チューブ把持部24は、
図3に示す移動領域S内で移動する。ここで、移動領域S内を移動するチューブ把持部24の、走査方向における移動範囲R2(本発明の第1範囲)は、キャリッジ3の移動範囲R1の一部となっている。
【0035】
また、本体フレーム5の上面には、上方に突出した突出部28が設けられている。突出部28は、保持ワイヤ6が上述したように揺動したときに、直線部22及び曲線部23の揺動軸21からほぼ同じだけ離れた所定の部分がそれぞれ通過する領域に沿って延びている。これにより、保持ワイヤ6は、本体フレーム5の突出部28によって下方から支持されている。また、保持ワイヤ6には、直線部22及び曲線部23の突出部28と接触する部分に、合成樹脂材料などからなる保護チューブ27が取り付けられている。これにより、金属材料からなる保持ワイヤ6と合成樹脂材料からなる本体フレーム5の突出部28とが直接接触してしまうのが防止される。
【0036】
(基板用フレーム、制御基板)
基板用フレーム7は、金属材料などからなり、本体フレーム5の上方に、平面視で(本発明の「所定の平面と直交する方向から見て」)本体フレーム5と重なるように配置されている。また、基板用フレーム7は、水平面と平行な配置面に沿って、ガイドレール2bの左端部近傍の部分から、保持ワイヤ6よりも右側の部分にわたって、走査方向に延びている。また、基板用フレーム7は、走査方向における両端部が、これらの間の部分よりも搬送方向下流側に長く延びており、それぞれ、基板取付部7a、7bとなっている。そして、基板取付部7aの上面には制御基板8が取り付けられ、基板取付部7bの上面に基板9が取り付けられている。制御基板8は、プリンタ1の動作の制御を行うための基板であり、走査方向に範囲R3(本発明の第2範囲)にわたって延びている。基板9は、例えば通信用の基板など、制御基板8とは別の基板である。
【0037】
また、基板用フレーム7の搬送方向上流側の縁7c(本発明の一縁)は、走査方向に延びている。基板用フレーム7の縁7cは、搬送方向において、保持ワイヤ6が
図3の実線で示す位置にある状態でのチューブ把持部24の位置と、保持ワイヤ6が
図3の破線で示す位置にある状態でのチューブ把持部24の位置との間に位置している。そのため、チューブ把持部24の移動領域Sは、平面視で、基板用フレーム7と重なる領域と、基板用フレーム7と重ならない領域とにまたがって延びている。すなわち、チューブ把持部24は、平面視で、基板用フレーム7と重なる領域と、基板用フレーム7と重ならない領域との間を、平面視で縁7cを横切って移動する。また、チューブ12は、平面視で、基板用フレーム7の縁7cを横切るように延びており、キャリッジ3が移動範囲R1内で移動したときに、チューブ12の縁7cを横切る部分は、走査方向に範囲R4内で移動する。
【0038】
(カバープレート)
カバープレート10は、合成樹脂材料などからなり、基板用フレーム7の下面に、すなわち、カバープレート10は、基板用フレーム7と保持ワイヤ6との間に配置されている。カバープレート10は、基板用フレーム7とほぼ同じ範囲で走査方向に延びている。また、カバープレート10の搬送方向における上流側の端部は、走査方向の全域において、基板用フレーム7の縁7cよりも搬送方向の上流側に張り出している。さらに、カバープレート10の搬送方向における上流側の端部のうち、走査方向におけるチューブ把持部24の移動範囲R2を含む一部の範囲に位置する部分は、他の範囲に位置する部分よりも搬送方向上流側に張り出した張出部31となっている。張出部31は、チューブ把持部24の移動領域Sよりも搬送方向の上流側まで張り出している。これにより、カバープレート10は、チューブ把持部24の移動領域S全域と重なり、カバープレート10の下面は、チューブ把持部24と常に対向している。ここで、カバープレート10の搬送方向における上流側の端部の下面は、
図4に示すように、チューブ把持部24の上端部24b(本発明の近接部)よりも上方に位置している。
【0039】
また、このような張出部31は、キャリッジ3の搬送方向下流側の端部よりも搬送方向の上流側まで張り出している。そして、キャリッジ3が、チューブ把持部24の移動範囲R2を通過する際には、キャリッジ3の搬送方向下流側の端部が、張出部31の下方を通過する。
【0040】
また、カバープレート10の搬送方向上流側の端部のうち、走査方向における制御基板8が配置された範囲R3に位置する部分は、基板保護部32となっている。基板保護部32は、基板用フレーム7の縁7cよりも搬送方向の上流側に張り出しているが、キャリッジ3の搬送方向下流側の端よりは搬送方向の下流側に位置している。ここで、
図2からわかるように、範囲R3には、キャリッジ3の移動範囲R1の左端部が含まれている。
【0041】
また、
図2のように、カバープレート10には、制御基板8が配置された範囲R3を含む範囲に位置する部分に、制御基板8から引き出された配線36aを保持するための配線保持部33が設けられている。配線保持部33は、
図6に示すように、4つの配線掛け部41a〜41dと、挿通部42とを有している。ここで、カバープレート10の上面には、走査方向の右端部を除く部分に、上方に突出しているとともに、走査方向に連続的に延びた壁部34が形成されている。4つの配線掛け部41a〜41dは、壁部34の、制御基板8が配置された範囲R3に位置する部分の搬送方向上流側の面に、走査方向に沿って間隔をあけて配列されている。挿通部42は、カバープレート10の走査方向の左端部の、壁部34よりも搬送方向上流側に位置する部分に形成され、カバープレート10を上下方向に貫通している。
【0042】
制御基板8から引き出された配線36aは、
図6に示すように、挿通部42に向けて走査方向に延びており、走査方向に延びた部分が、配線掛け部41a〜41dに掛けられることにより、壁部34に保持されている。また、配線36aは、挿通部42に挿通されることにより、カバープレート10よりも下側まで延びている。ここで、配線36aは、例えば、プリンタ1に設けられる各種のセンサに接続された配線や、図示しない搬送機構を駆動するためのモータに接続された配線などである。なお、
図6では、配線保持部33に保持された配線36aを1本だけ図示しているが、配線保持部33に複数の配線36aが保持されていてもよい。
【0043】
また、カバープレート10の走査方向における基板取付部7aと基板取付部7bとの間に位置する部分の上面には、制御基板8と基板9とを接続するFFC36bを保持するための配線保持部35が設けられている。配線保持部35は、走査方向に沿って並んだ2つの配線掛け部46a、46bを有している。制御基板8と基板9とを接続する走査方向に延びたFFC36bは、
図6に示すように、2つの配線掛け部46a、46bに掛けられることでカバープレート10に保持されている。
【0044】
以上に説明したようなプリンタ1では、上述したように、保持ワイヤ6が揺動したときに、チューブ把持部24が、平面視で、基板用フレーム7と重なる領域と、基板用フレーム7と重ならない領域とにまたがる移動領域Sを、基板用フレーム7の縁7cを横切って移動する。一方で、本実施の形態では、上述したように、カバープレート10の平面視でチューブ把持部24と重なる部分の下面が、チューブ把持部24の上端部24bよりも上方に位置している。そのため、チューブ把持部24が平面視で基板用フレーム7の縁7cを横切るように移動したとしても、通常は、チューブ把持部24がカバープレート10や、カバープレート10よりも上方に位置する基板用フレーム7に接触することはない。
【0045】
しかしながら、例えば、キャリッジ3の移動時にチューブ12が上方に変位した場合には、チューブ把持部24がチューブ12によって一時的に上方に持ち上げられることがあり得る。一方で、チューブ把持部24の上端部24bと基板用フレーム7との間の上下方向の間隔はそれほど大きくはない。そのため、このような場合には、本実施の形態とは異なり、仮に、カバープレート10がないとすると、チューブ把持部24の上端部24bが、基板用フレーム7の縁7cを横切るときに、縁7cに引っ掛かってしまう虞がある。
【0046】
これに対して、本実施の形態では、上述したように、基板用フレーム7の下面にカバープレート10が取り付けられ、カバープレート10がチューブ把持部24の移動領域Sの全域と重なっている。これにより、チューブ把持部24は、上下方向において、カバープレート10の下面に常に対向し、基板用フレーム7の縁7cやカバープレート10の搬送方向上流側の縁には対向しない。したがって、チューブ把持部24の上端部24bがカバープレート10の下面に接触することはあっても、基板用フレーム7の縁7cや、カバープレート10の搬送方向上流側の縁に引っ掛かることはない。
【0047】
また、本実施の形態では、カバープレート10の搬送方向上流側の端部のうち、チューブ把持部24の移動範囲R2を含む一部の範囲に位置する部分が、他の範囲に位置する部分よりも搬送方向の上流側に張り出した張出部31となっていることにより、カバープレート10は、移動範囲R2において、平面視でチューブ把持部24の移動領域Sの全域と重なっている。したがって、張出部31の走査方向における両側にスペースができ、レイアウトの面で有利である。また、カバープレート10の搬送方向の上流側の端部を、走査方向の全域にわたって張出部31と同じだけ張り出すようにした場合と比較して、カバープレート10の面積を小さくすることができる。これにより、カバープレート10のコストを低減することができる。
【0048】
また、プリンタ1では、例えば、紙詰まりが発生したときに、ユーザが搬送方向の上流側からプリンタ1の内部に手を入れて、詰まった記録用紙を取り除くことがある。これに対して、本実施の形態では、カバープレート10の搬送方向上流側の端部のうち、制御基板8が配置された範囲R3に位置する部分が、基板用フレーム7の縁7cよりも搬送方向の上流側まで張り出した基板保護部32となっている。したがって、ユーザが制御基板8の近傍まで手を入れても、入れた手は、制御基板8よりも手前に位置する基板保護部32に接触し、制御基板8に接触することがない。これにより、制御基板8への外部からの干渉を防止することができる。
【0049】
また、本実施の形態では、キャリッジ3の移動範囲R1の左端部に位置する基板保護部32が、キャリッジ3の搬送方向下流側の端よりも、搬送方向の下流側に位置している。これにより、キャリッジ3が移動動範R1の左端部に到達したときに、キャリッジ3は、基板保護部32と重ならず、完全に露出する。したがって、例えば、プリンタ1の故障時等に、キャリッジ3を移動範囲R1の左端部に位置させることにより、キャリッジ3及びインクジェットヘッド4に対する修理や、キャリッジ3の交換等の作業を容易に行うことができる。
【0050】
なお、本実施の形態では、キャリッジ3は、移動範囲R1の右端部に到達したときには、カバープレート10よりも走査方向の右側に位置する。そのため、この状態において、キャリッジ3がカバープレート10に覆われることはない。しかしながら、上述したように、キャリッジ3を移動動範R1の左端部に位置させた状態で、上記修理や交換等の作業を行うことができるようになっている場合には、キャリッジ3を移動範囲R1の右端部に位置させた状態で、上記修理や交換等の作業を行うことができるようになっている必要がない。したがって、移動範囲R1の右端部に位置するキャリッジ3の上方にプリンタを構成する部材を配置することが可能となり、レイアウトの自由度を高くすることができる。
【0051】
また、本実施の形態では、カバープレート10に配線保持部33、35が設けられているため、カバープレート10を利用して、配線36aやFFC36bの引き回しを行うことができる。
【0052】
また、チューブ12の基板用フレーム7の縁7cを横切る部分は、走査方向に範囲R4で移動するが、上述したように、カバープレート10は、走査方向の全域において、縁7cよりも搬送方向の上流側に張り出しているため、チューブ12の縁7cを横切る部分が、金属材料からなる基板用フレーム7の縁7cに接触することがない。これにより、チューブ12の損傷が防止される。なお、このとき、チューブ12は、カバープレート10の搬送方向上流側の縁には接触し得るが、カバープレート10は合成樹脂材料からなるものであるため、チューブ12が、カバープレート10の搬送方向上流側の縁に接触したとしても、チューブ12が基板用フレーム7の縁7cに接触する場合と比べれば、チューブ12は損傷しにくい。
【0053】
次に、本実施の形態に種々の変更を加えた変形例について説明する。ただし、本実施の形態と同様の構成については、適宜その説明を省略する。
【0054】
上述の実施の形態では、カバープレート10が、平面視で、移動範囲R1の左端部に位置している状態のキャリッジ3と重ならないようになっていたが、これには限られない。例えば、基板保護部32が、上述の実施の形態の場合よりも搬送方向上流側に張り出しており、カバープレート10が、平面視で移動範囲R1の左端部に位置している状態のキャリッジ3と重なるようになっていてもよい。この場合でも、キャリッジ3は、移動範囲R1の右端部に到達したときに、カバープレート10よりも走査方向の右側に位置するため、カバープレート10に覆われず、全体が露出する。したがって、キャリッジ3やインクジェットヘッド4に対する修理や、キャリッジ3の交換の作業などを容易に行うことができる。
【0055】
また、上述の実施の形態では、カバープレート10に配線保持部33、35が設けられていたが、これには限られない。カバープレート10に配線保持部が設けられていなくてもよい。
【0056】
また、上述の実施の形態では、カバープレート10の搬送方向における上流側の端部のうち、チューブ把持部24の移動範囲R2を含む一部の範囲に位置する張出部31が、他の範囲に位置する部分よりも搬送方向の上流側まで張り出していたが、これには限られない。例えば、カバープレート10の搬送方向における上流側の端部全体が、張出部31と同程度、搬送方向の上流側に張り出していてもよい。
【0057】
また、上述の実施の形態では、カバープレート10に基板保護部32が設けられていたが、基板保護部32は設けられていなくてもよい。すなわち、カバープレート10の搬送方向における上流側の端部のうち、制御基板8が配置された範囲R3に位置する部分は、基板用フレーム7の縁7cよりも搬送方向の下流側に位置していてもよい。
【0058】
また、上述の実施の形態では、カバープレート10の搬送方向上流側の端部が、チューブ12が基板用フレーム7の縁7cを横切る範囲R4の全長にわたって、基板用フレーム7の縁7cよりも搬送方向の上流側まで張り出していたが、これには限られない。例えば、カバープレート10の搬送方向における上流側の端部のうち、チューブ12が基板用フレーム7の縁7cを横切る範囲R4には含まれるが、チューブ把持部24の移動範囲R2には含まれない範囲に位置する部分は、基板用フレーム7の縁7cよりも搬送方向の下流側に位置していてもよい。
【0059】
また、上述の実施の形態では、カバープレート10が、走査方向に基板用フレーム7とほぼ同じ範囲で延びていたが、これには限られない。一変形例(変形例1)では、
図7に示すように、カバープレート51が、走査方向の基板用フレーム7が配置されている範囲のうち、チューブ把持部24の移動範囲R2(本発明の一部の範囲)にのみ設けられている。また、カバープレート51の搬送方向上流側の縁の走査方向における両端部が、曲面となっていることにより、走査方向の右側及び左側の縁と滑らかにつながっている。
【0060】
この場合でも、カバープレート51を、張出部31(
図3参照)と同程度搬送方向の上流側に張り出すようにすれば、上述の実施の形態と同様、チューブ把持部24の上端部24bが基板用フレーム7の縁7cや、カバープレート51の縁に引っ掛かってしまうのを防止することができる。また、この場合には、チューブ把持部24の上端部24bが基板用フレーム7の縁7cや、カバープレート51の縁に引っ掛かってしまうのを防止することができる範囲で、カバープレート51を走査方向に最も小さくすることができる。また、この場合には、チューブ12は、キャリッジ3の位置によって、カバープレート51の搬送方向上流側の縁、及び、走査方向の右側及び左側の縁のいずれかを横切る。しかしながら、変形例1上述したように、カバープレート51の搬送方向上流側の縁と、走査方向の右側及び左側の縁と滑らかにつながっているため、チューブ12がカバープレート51の縁に引っ掛かってしまうのを防止することができる。
【0061】
また、上述の実施の形態では、基板用フレーム7の下面にカバープレート10が固定された構成となっていたが、これには限られない。別の一変形例(変形例2)では、
図8に示すように、基板用フレーム7及びカバープレート10の代わりに、基板用フレーム56(本発明の構造部材)が設けられている。
【0062】
基板用フレーム56は、基板用フレーム7及びカバープレート10とほぼ同じだけ走査方向に延びている。また、基板用フレーム56は、走査方向における両端部が、これらの間の部分よりも搬送方向の下流側に延びていることにより、それぞれ基板取付部56a、56bとなっている。基板取付部56aの上面には制御基板8が取り付けられ、基板取付部56bの上面には基板9が取り付けられている。
【0063】
また、基板用フレーム56の搬送方向の上流側の端部のうち、走査方向におけるチューブ把持部24の移動範囲R2を含む一部の範囲に位置する部分は、他の範囲に位置する部分よりも搬送方向の上流側に張り出したカバー部56cとなっている。カバー部56cは、移動領域Sよりも搬送方向の上流側まで張り出している。これにより、チューブ把持部24の移動領域Sの一部が、平面視でカバー部56cと重なり、移動領域Sの残りが、平面視で基板用フレーム56のカバー部56c以外の部分(本発明に係る本体部)と重なる。
【0064】
この場合には、移動領域S内を移動するチューブ把持部24が、平面視で、常に基板用フレーム56のカバー部56c及びそれ以外の部分のうちいずれかの部分と重なる。したがって、チューブ把持部24が基板用フレーム56の搬送方向のおける上流側の縁56dに引っ掛かってしまうのを防止することができる。
【0065】
また、以上の例では、保持ワイヤ6の上方に、制御基板8及び基板9を取り付けるための基板用フレーム7、56が配置されていたが、これには限られない。保持ワイヤ6の上方に、基板用フレーム以外の構造部材が配置されていてもよい。
【0066】
また、上述の実施の形態では、チューブ把持部24の上端部24bが、チューブ12よりも基板用フレーム7に近接していたが、これには限られない。例えば、キャリッジ3、保持ワイヤ6などの上下方向の位置関係等が上述の実施の形態と異なっており、チューブ12のチューブ把持部24近傍の部分の上端部が、保持ワイヤの上端部よりも基板用フレーム7に近接していてもよい。あるいは、4本のチューブ12が互いに分離しない一体的に形成されたものである場合などにおいて、保持ワイヤが、一体となったチューブ12のうち、最も上方に位置するチューブよりも下側のチューブのみを把持しており、一体となったチューブ12の上端部が、保持ワイヤの上端部よりも基板用フレーム7に近接していてもよい。
【0067】
これらの場合には、チューブ12の上端部が、保持ワイヤよりも基板用フレーム7に近接している。さらに、チューブ12は、保持ワイヤに保持されることによって持ち上げられているため、保持ワイヤがないとした場合よりも基板用フレーム7に近接している。そのため、仮にカバープレート10がないとすると、チューブ12の上端部が基板用フレーム7の縁7cに引っ掛かってしまう虞がある。しかしながら、本実施の形態では、基板用フレーム7の下面にカバープレート10が配置されているため、チューブ12の上端部が基板用フレーム7の縁7cに引っ掛かってしまうのを防止することができる。
【0068】
また、上述の実施の形態では、保持ワイヤ6が取り付けられた本体フレーム5の上方に、基板用フレーム7が配置され、保持ワイヤ6は、チューブ把持部24が他の部分よりも上方に突出した構成となっていたが、これには限られない。例えば、保持ワイヤ6が取り付けられた本体フレーム5と、基板8、9が取り付けられた基板用フレーム7との上下の位置関係が逆であってもよい。すなわち、本体フレーム5が、上述の実施の形態よりも高い位置に配置され、本体フレーム5の下方に基板用フレーム7が配置されていてもよい。この場合には、保持ワイヤ6は、本体フレーム5の下面に取り付けられ、チューブ把持部24が他の部分よりも下方に突出する。また、基板取付部7a、7bの下面に基板8、9が取り付けられる。この場合でも、基板用フレーム7の上面、すなわち、保持ワイヤ6と基板用フレーム7との間にカバープレート10を配置すれば、チューブ把持部24の下端部(本発明の近接部)が基板用フレーム7の縁7cに引っ掛かってしまうのを防止することができる。
【0069】
また、保持ワイヤ6は、チューブ把持部24が設けられた直線部22と、曲線部23とを備えたものであることには限られない。例えば、保持ワイヤ6は、曲線部23を有していないものであってもよい。さらには、チューブ12を保持する保持部材は、金属材料からなるワイヤが折り曲げられることによって形成された部材とは異なる部材であってもよい。
【0070】
また、上述の実施の形態では、保持ワイヤ6がチューブ12を保持するためのものであったが、これには限られない。例えば、キャリッジ3に搭載されたインクジェットヘッド4は、インクジェットヘッド4に電力や信号を送るためのFFC(Flexible Flat Cable、本発明に係る長尺部材)によってプリンタ1の本体側と電気的に接続されていることがある。このような場合には、保持ワイヤ6は、チューブ12とともに、FFCや、FFCが移動したときに発生する異音を抑えるための、FFCよりもコシの強いフィルム状のシールド部材を保持するものであってもよい。あるいは、例えば、インクカートリッジ13がキャリッジ3上に配置されている場合など、インクジェットヘッド4とインクカートリッジ13とを接続するチューブ12がない場合には、保持ワイヤ6は、FFCのみ、あるいは、FFCとシールド部材のみを保持するものであってもよい。さらには、保持ワイヤ6は、チューブ12及びFFC以外の、インクジェットヘッド4に接続された、可撓性を有する長尺部材を保持するものであってもよい。
【0071】
これらの場合でも、上述の実施の形態と同様、基板用フレーム7と保持ワイヤ6の長尺部材を保持する部分との間に、カバープレート10が配置されているため、保持ワイヤ6の長尺部材を保持する部分の上端部、あるいは、長尺部材の保持ワイヤ6によって保持された部分の上端部が、基板用フレーム7の縁7cに引っ掛かってしまうのを防止することができる。
【0072】
また、上述の実施の形態では、基板用フレーム7の縁7cが走査方向に沿って直線状に延びていたが、これには限られない。基板用フレーム7の縁7cが走査方向に沿って曲線状に延びていてもよい。
【0073】
また、上述の実施の形態では、走査方向及び搬送方向が、水平面と平行であったが、これには限られない。走査方向及び搬送方向は、鉛直面や、水平面に対して傾いた面など、水平面以外の所定の平面と平行であってよい。
【0074】
また、以上では、ノズルからインクを吐出することによって印刷を行うインクジェットプリンタに本発明を適用した例について説明したが、これには限られない。ノズルからインク以外の液体を吐出する、インクジェットプリンタ以外の液体吐出装置に本発明を適用してもよい。