特許第6003742号(P6003742)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6003742凝集粒子の製造装置、電子写真用トナーの製造装置、凝集粒子の製造方法および電子写真用トナーの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6003742
(24)【登録日】2016年9月16日
(45)【発行日】2016年10月5日
(54)【発明の名称】凝集粒子の製造装置、電子写真用トナーの製造装置、凝集粒子の製造方法および電子写真用トナーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 2/10 20060101AFI20160923BHJP
   G03G 9/087 20060101ALI20160923BHJP
【FI】
   B01J2/10 A
   G03G9/08 381
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-58500(P2013-58500)
(22)【出願日】2013年3月21日
(65)【公開番号】特開2014-180651(P2014-180651A)
(43)【公開日】2014年9月29日
【審査請求日】2015年3月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士ゼロックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】増田 悠二
(72)【発明者】
【氏名】一色 勇治
【審査官】 ▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−140987(JP,A)
【文献】 特開2011−118391(JP,A)
【文献】 特開2008−122623(JP,A)
【文献】 特開2012−133353(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 2/00−2/30
G03G 9/08−9/18
C08J 3/02−3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂粒子分散液と凝集剤とを含む原料混合物中の初期凝集粒子径を測定する粒径測定装置と、
撹拌装置を有し前記原料混合物から凝集粒子を形成する凝集槽と、
前記凝集槽に設けられた加熱装置と、
前記凝集槽内の流体の温度を測定する温度測定手段と、
目標凝集粒子径に対する初期凝集粒子径と凝集温度との関係を予め格納し、前記関係に基づき前記粒径測定装置で測定された初期凝集粒子径から凝集温度を算出し、前記温度測定手段で測定された凝集槽内の流体の温度算出された凝集温度まで昇温するように、前記加熱装置を制御する制御装置と、
を有し、
前記初期凝集粒子径は、前記原料混合物を下記関係式(1)
15<ND<200 (1)
(式(1)中、Nは撹拌回転数(rps)、Dは撹拌翼長(m)である)で表される攪拌混合を行った後に昇温を行い、35℃に到達した時点の粒子の体積平均粒径であり、
前記関係は、下記関係式(2)
(凝集温度)={−a×(初期凝集粒子径)+b}×c (2)
(式(2)中、a及びbは予め実施される予備実験により目標凝集粒子径と凝集時間に応じて設定される定数であって、aの範囲は1<a<30であり、bの範囲は30<b<200であり、cは予め実施される予備実験により凝集時間に応じて設定される定数であって、前記凝集時間は30分間以上2時間以下であり、cの範囲は、前記凝集時間が30分間のときc=1であり、前記凝集時間が30分間を超えるとき0<c<1である)で表され、
前記樹脂粒子分散液は、酸価が2.3mgKOH/g以上32.6mgKOH/g以下である樹脂の乳化分散液であり、
前記凝集剤は硫酸アルミニウムであることを特徴とする凝集粒子の製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載の凝集粒子の製造装置で得られた凝集粒子を融合させ合一させる合一槽を有することを特徴とする電子写真用トナーの製造装置。
【請求項3】
少なくとも樹脂粒子分散液と凝集剤とを混合して原料混合物を得る工程と、
前記原料混合物を下記関係式(1)
15<ND<200 (1)
(式(1)中、Nは撹拌回転数(rps)、Dは撹拌翼長(m)である)で表される条件下で攪拌混合した後、昇温を行い、35℃に到達した時点の粒子の体積平均粒径を測定することによって、前記原料混合物の初期凝集粒子径を測定する工程と、
目標凝集粒子径に対する初期凝集粒子径と凝集温度との関係に基づき、測定された初期凝集粒子径から凝集温度を算出し、凝集槽内の流体の温度算出された凝集温度まで昇温するように、凝集槽内の温度を制御する工程と、
を有し、
前記関係は、下記関係式(2)
(凝集温度)={−a×(初期凝集粒子径)+b}×c (2)
(式(2)中、a及びbは予め実施される予備実験により目標凝集粒子径と凝集時間に応じて設定される定数であって、aの範囲は1<a<30であり、bの範囲は30<b<200であり、cは予め実施される予備実験により凝集時間に応じて設定される定数であって、前記凝集時間は30分間以上2時間以下であり、cの範囲は、前記凝集時間が30分間のときc=1であり、前記凝集時間が30分間を超えるとき0<c<1である)で表され、
前記樹脂粒子分散液は、酸価が2.3mgKOH/g以上32.6mgKOH/g以下である樹脂の乳化分散液であり、
前記凝集剤は硫酸アルミニウムであることを特徴とする凝集粒子の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の凝集粒子の製造方法で得られた凝集粒子を融合させ合一させる工程を有することを特徴とする電子写真用トナーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凝集粒子の製造装置、電子写真用トナーの製造装置、凝集粒子の製造方法および電子写真用トナーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真法等、静電潜像を経て画像情報を可視化する方法は、現在様々な分野で利用されている。電子写真法においては、帯電・露光工程により感光体上に静電荷像を形成し、トナーを含む現像剤で現像し、次いでトナー像の転写及び定着工程を経て可視化される。ここで用いられる現像剤は、トナーとキャリアからなる二成分現像剤と、磁性トナーまたは非磁性トナーを単独で用いる一成分現像剤とがあるが、そのトナーの製造法は、通常、熱可塑性樹脂を顔料、帯電制御剤、ワックス等の離型剤と共に溶融混練し、冷却後、微粉砕し、さらに分級する混練粉砕法が使用されている。形成されたトナーには、必要に応じて流動性やクリーニング性を改善するための無機或いは有機の粒子が添加され、トナー粒子表面に付着させる。
【0003】
通常の混練粉砕法では、使用材料の粉砕性や粉砕工程の条件により微妙に変化するものの、トナーの形状およびトナーの表面構造は不定形である。そこで、意図的にトナーの形状およびトナーの表面構造を制御するために、近年、湿式製法によるトナーが使用されるようになって来ている。湿式製法では、一般的に、球形状に近いトナーが得られ、球形状に近いトナーの特徴は、例えば粉砕トナーに比べ、帯電性に優れ、転写効率が高いことが挙げられる。ここで、湿式製法として、例えば、乳化重合凝集法や懸濁重合法が知られている。
【0004】
ここで、乳化重合凝集法や懸濁重合法は、一般に、少なくとも1種以上の樹脂粒子分散液と、1種以上の着色剤分散液とを混合し、例えば2価以上の価数を取りうる金属元素の存在下で凝集粒子を形成する凝集工程と、前記樹脂粒子のガラス転移温度以上の温度に加熱して前記凝集粒子を融合・合一してトナー粒子を形成する合一工程と、を有する。
【0005】
例えば、特許文献1には、加熱して凝集を行う場合に、凝集温度として、50℃からガラス転移温度(Tg)の温度範囲内で、30分間以上8時間以下保持することにより予め定められた粒径のトナー粒子が得られることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−304020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、本構成を有しない場合に比べ、短時間で目標粒子径の凝集粒子を得る凝集粒子の製造装置および凝集粒子の製造方法、ならびに、電子写真用トナーの製造装置および電子写真用トナーの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の通りである。
【0009】
(1)樹脂粒子分散液と凝集剤とを含む原料混合物中の初期凝集粒子径を測定する粒径測定装置と、撹拌装置を有し前記原料混合物から凝集粒子を形成する凝集槽と、前記凝集槽に設けられた加熱装置と、前記凝集槽内の流体の温度を測定する温度測定手段と、目標凝集粒子径に対する初期凝集粒子径と凝集温度との関係を予め格納し、前記関係に基づき前記粒径測定装置で測定された初期凝集粒子径から凝集温度を算出し、前記温度測定手段で測定された凝集槽内の流体の温度算出された凝集温度まで昇温するように、前記加熱装置を制御する制御装置と、を有し、前記初期凝集粒子径は、前記原料混合物を下記関係式(1)
15<ND<200 (1)
(式(1)中、Nは撹拌回転数(rps)、Dは撹拌翼長(m)である)で表される攪拌混合を行った後に昇温を行い、35℃に到達した時点の粒子の体積平均粒径であり、前記関係は、下記関係式(2)
(凝集温度)={−a×(初期凝集粒子径)+b}×c (2)
(式(2)中、a及びbは予め実施される予備実験により目標凝集粒子径と凝集時間に応じて設定される定数であって、aの範囲は1<a<30であり、bの範囲は30<b<200であり、cは予め実施される予備実験により凝集時間に応じて設定される定数であって、前記凝集時間は30分間以上2時間以下であり、cの範囲は、前記凝集時間が30分間のときc=1であり、前記凝集時間が30分間を超えるとき0<c<1である)で表され、前記樹脂粒子分散液は、酸価が2.3mgKOH/g以上32.6mgKOH/g以下である樹脂の乳化分散液であり、前記凝集剤は硫酸アルミニウムである凝集粒子の製造装置である。
【0010】
(2)上記(1)に記載の凝集粒子の製造装置で得られた凝集粒子を融合させ合一させる合一槽を有する電子写真用トナーの製造装置である。
【0011】
(3)少なくとも樹脂粒子分散液と凝集剤とを混合して原料混合物を得る工程と、前記原料混合物を下記関係式(1)
15<ND<200 (1)
(式(1)中、Nは撹拌回転数(rps)、Dは撹拌翼長(m)である)で表される条件下で攪拌混合した後、昇温を行い、35℃に到達した時点の粒子の体積平均粒径を測定することによって、前記原料混合物の初期凝集粒子径を測定する工程と、目標凝集粒子径に対する初期凝集粒子径と凝集温度との関係に基づき、測定された初期凝集粒子径から凝集温度を算出し、凝集槽内の流体の温度算出された凝集温度まで昇温するように、凝集槽内の温度を制御する工程と、を有し、前記関係は、下記関係式(2)
(凝集温度)={−a×(初期凝集粒子径)+b}×c (2)
(式(2)中、a及びbは予め実施される予備実験により目標凝集粒子径と凝集時間に応じて設定される定数であって、aの範囲は1<a<30であり、bの範囲は30<b<200であり、cは予め実施される予備実験により凝集時間に応じて設定される定数であって、前記凝集時間は30分間以上2時間以下であり、cの範囲は、前記凝集時間が30分間のときc=1であり、前記凝集時間が30分間を超えるとき0<c<1である)で表され、前記樹脂粒子分散液は、酸価が2.3mgKOH/g以上32.6mgKOH/g以下である樹脂の乳化分散液であり、前記凝集剤は硫酸アルミニウムである凝集粒子の製造方法である。
【0012】
(4)上記(3)に記載の凝集粒子の製造方法で得られた凝集粒子を融合させ合一させる工程を有する電子写真用トナーの製造方法である。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、短時間で目標粒子径の凝集粒子が得られる。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、短時間で電子写真用トナーが得られる。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、短時間で目標粒子径の凝集粒子が得られる。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、短時間で電子写真用トナーが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施の形態の凝集粒子の製造装置の構成の一例を示す概略図である。
図2】実施例1から実施例3と比較例1,2の凝集時間と凝集温度との関係を一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本実施の形態の凝集粒子の製造装置の構成の一例について、図1を用いて以下に説明する。
【0019】
本実施の形態の凝集粒子の製造装置100(以下「製造装置100」と略す)は、少なくとも樹脂粒子分散液と凝集剤とを含む原料混合物中の初期凝集粒子径を測定する粒径測定装置20と、撹拌装置を有し前記原料混合物から凝集粒子を形成する凝集槽10と、凝集槽10に設けられた加熱装置16と、凝集槽10内の流体の温度を測定する温度測定手段としての温度計24と、目標凝集粒子径に対する初期凝集粒子径と凝集温度との関係を予め格納し、前記関係に基づき粒径測定装置20で測定された初期凝集粒子径から凝集温度を算出し、温度計24で測定された凝集槽10内の流体の温度と算出された凝集温度とに応じて、加熱装置16を制御する制御装置30と、を有する。
【0020】
ここで、凝集槽10に設けられた撹拌装置は、駆動源12に接続された撹拌棒14と、撹拌棒14に設けられた複数の撹拌羽根18とを有する。また、凝集槽10に設けられた加熱装置16は、例えば、加熱コイルでもよく、加熱ジャケットでもよい。
【0021】
また、凝集槽10は、バルブ22を有する配管を介して粒径測定装置20と接続されている。粒径測定装置20としては、例えば、コールターマルチサイザー−II型(ベックマン−コールター社製)測定装置が用いられる。そして、電解液としては、ISOTON−II(ベックマン−コールター社製)が使用される。粒径の測定法としては、分散剤として界面活性剤(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)の5%水溶液2ml中に、測定試料を0.5mg加え、これを前記電解液100ml中に添加する。この測定試料を懸濁させた電解液を超音波分散器で約1分間分散処理を行い、前記コールターマルチサイザー−II型により、アパーチャー径が100μmのアパーチャーを用いて、粒径が2.0から60μmの範囲の粒子の粒度分布を測定する。測定した粒子数は50,000である。測定された粒度分布を、分割された粒度範囲(チャンネル)に対し、体積について小径側から累積分布を描き、累積50%となる粒径を体積平均粒子径と定義する。
【0022】
ここで、本明細書における『初期凝集粒子径』とは、少なくとも樹脂粒子分散液と凝集剤とを含む原料混合物を下記に示す関係式により十分な撹拌、混合を行った後に昇温を行い、35℃に到達した時点の粒子の「体積平均粒径」をいう。
関係式:15<ND<200
ここで、Nは撹拌回転数(rps)、Dは撹拌翼長(m)とする。
【0023】
また、凝集槽10には、配管62を介して原料槽40が接続され、原料槽40から、少なくとも樹脂粒子分散液と凝集剤とが適宜混合された原料混合物がポンプ60を介して凝集槽10に送液される。ここで、例えば、電子写真用トナー粒子を製造するための凝集粒子を調製する場合には、樹脂粒子分散液の他に、必要に応じて、着色剤粒子分散液と離型剤粒子分散液とが適宜混合されてポンプ60を介して凝集槽10に送液される。
【0024】
また、pH調整剤槽50が、電磁弁54とフローメータ56が設けられた配管52を介して配管62に接続され、配管62には、pH測定器58が設けられている。従って、凝集槽10に送液される原料混合物のpHをpH測定器58で測定し、pH測定器58からの出力に応じて、電磁弁54を開閉し、pH調整剤槽50から必要量の硝酸水溶液等のpH調整剤を、配管52を介して配管62に送液し、配管62におけるポンプ60で、pH調整剤と原料混合物とを混合して凝集槽10へ送液する。なお、pH調整剤の送液方法はこれに限るものではなく、凝集槽10にpH調整剤を送液して原料混合物と混合してもよい。
【0025】
また、制御装置30は、上述した加熱装置16と粒径測定装置20と温度計24とそれぞれ電気的接続手段等により接続されている。さらに、制御装置30は、目標凝集粒子径に対する初期凝集粒子径と凝集温度との複数個の関係を予め格納している。ここで、目標凝集粒子径は、最終凝集粒子粒径に応じて複数個格納されており、さらに、これらの複数個の目標凝集粒子径に対して、複数個の初期凝集粒子径と凝集温度との関係が格納されている。例えば、以下の関係式を格納してもよい。
【0026】
関係式:(凝集温度)={−a×(初期凝集粒子径)+b}×c
式中、cは凝集時間に応じて適宜設定される定数であり、a,bは目標凝集粒子径と凝集時間に応じて適宜設定される定数である。また、凝集時間は、30分間以上2時間以下であり、凝集時間が30分間のとき=1であり、30分間を超えると、0<<1から適宜選択される。a,bの範囲は、それぞれ、1<a<30、30<b<200である。
【0027】
目標凝集粒子径は、凝集粒子を電子写真用トナー製造に用いる場合、例えば、3.0μm以上7.0μm以下、好ましくは4.0μm以上6.0μm以下である。
【0028】
次に、本実施の形態における凝集粒子の製造装置100の動作について、図1を用いて以下に説明する。
【0029】
まず、少なくとも樹脂粒子分散液と凝集剤とを混合して原料混合物を得た後、前記原料混合物を原料槽40からポンプ60を用いて送液するとともに、pH測定器58を用いて配管62の原料混合物のpHを測定する。凝集槽10へ送液する原料混合物を酸性にするため、pH測定器58からの出力に応じて、電磁弁54が開閉され、pH調整剤槽50から必要量の硝酸水溶液等のpH調整剤を、配管52を介して配管62に送液し、配管62におけるポンプ60で、pH調整剤と原料混合物とを混合して凝集槽10へ送液する。
【0030】
また、温度計24を用いて、凝集槽10内の流体の温度を測定する。そして、粒径測定装置20で測定された『初期凝集粒子径』と温度計24で測定された『槽内温度』は、それぞれ制御装置30に出力される。制御装置30は、予め格納されている『目標凝集粒子径に対する初期凝集粒子径と凝集温度との関係』に基づいて、測定された初期凝集粒子径から凝集温度を算出し、『槽内温度』と算出された凝集温度とに応じて、加熱装置16を制御する。ここで、制御装置30は、例えば、加熱装置16に対して、算出された凝集温度まで昇温するように制御すればよく、さらに、その凝集温度での保持時間を制御してもよい。また、例えば、加熱装置16による昇温速度を制御してもよく、この昇温速度は、例えば、0.5℃/分以上3℃/分以下、好ましくは0.1℃/分以上3℃/分以下である。昇温速度が0.5℃/分未満および3℃/分を超える場合、凝集粒子の粒子径のバラツキが予め定められた範囲より大きくなる場合がある。また、加熱装置16による凝集温度の保持時間は、例えば15分以上2時間以下、好ましくは30分以上1時間以下である。
【0031】
また、本実施の形態における電子写真用トナーの製造装置は、図1に示す凝集槽10と配管64で接続され、凝集粒子の製造装置100で得られた凝集粒子を融合させ合一させる合一槽(図示せず)を有する。さらに、本実施の形態における電子写真用トナーの製造方法は、上述した凝集粒子の製造装置100により得られた凝集粒子を融合させ合一させる工程を有する。
【0032】
ここで、上述した樹脂粒子分散液は、いかなる樹脂分散液でもよいが、例えば、ビニル系二重結合を有する重合性単量体を含む重合性単量体を水系溶媒中で重合させ樹脂粒子分散液を得る場合、ラジカル重合性のビニル基を含有するモノマーとしては、芳香族系ビニル単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、ビニルエステル系単量体、ビニルエーテル系単量体、モノオレフィン系単量体、ジオレフィン系単量体、ハロゲン化オレフィン系単量体等が挙げられる。芳香族系ビニル単量体としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン、p−エチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、3,4−ジクロロスチレン等のスチレン系単量体及びその誘導体が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、β−ヒドロキシアクリル酸エチル、γ−アミノアクリル酸プロピル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等が挙げられる。ビニルエステル系単量体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル等が挙げられる。ビニルエーテル系単量体としては、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニルフェニルエーテル等が挙げられる。モノオレフィン系単量体としては、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン等が挙げられる。ジオレフィン系単量体としては、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等が挙げられる。ハロゲン化オレフィン系単量体としては、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル等が例示されるが、これらに制限されることはなく、またこれらのモノマーは単独または2種類以上併用して用いても良い。
【0033】
また、上述した樹脂粒子分散液が、例えばポリエステ樹脂である場合、以下に示すポリエステル樹脂が用いられる。
【0034】
−ポリエステル樹脂−
ポリエステル樹脂としては、具体的には、適度なガラス転移温度を有し炭素数6以上のアルキル基を側鎖に有するポリエステル樹脂がより好ましい。炭素数6以上のアルキル基を有するポリエステルは、前記の多価カルボン酸または多価アルコールに炭素数6以上のアルキル基を有するモノマーを用いることで得ることができ、例えば、ドデセニルコハク酸などが用いられるが、これに限るものではない。
【0035】
ポリエステル樹脂は、主として多価カルボン酸類と多価アルコール類との縮重合により得られるものである。なお、本実施形態では、前記ポリエステル主鎖に対して、他成分を50質量%以下の割合で共重合した共重合体もポリエステルとして使用することができる。
【0036】
本実施の形態において用いるポリエステル樹脂の製造に用いる多価カルボン酸類としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェン酸等の芳香族ジカルボン酸、p−オキシ安息香酸、p−(ヒドロキシエトキシ)安息香酸等の芳香族オキシカルボン酸、コハク酸、アルキルコハク酸、アルケニルコハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ダイマー酸、トリマー酸、水添ダイマー酸、シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキセンジカルボン酸等の不飽和脂肪族及び脂環族ジカルボン酸等を、また多価カルボン酸としては他にトリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸等の三価以上の多価カルボン酸等が用いられる。
【0037】
ポリエステル樹脂の製造に用いる多価アルコール類としては、脂肪族多価アルコール類、脂環族多価アルコール類、芳香族多価アルコール類等が例示される。脂肪族多価アルコール類としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジメチロールヘプタン、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ε−カプロラクトン等のラクトン類を開環重合して得られるラクトン系ポリエステルポリオール等の脂肪族ジオール類、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエルスリトール等のトリオール及びテトラオール類等が例示される。
【0038】
脂環族多価アルコール類としては、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、水素化ビスフェノールA、水素化ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物及びプロピレンオキサイド付加物、トリシクロデカンジオール、トリシクロデカンジメタノール、ダイマージオール、水添ダイマージオール等が例示される。
【0039】
芳香族多価アルコール類としては、パラキシレングリコール、メタキシレングリコール、オルトキシレングリコール、1,4−フェニレングリコール、1,4−フェニレングリコールのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールA、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物及びプロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0040】
ポリエステル樹脂末端の極性基を封鎖し、トナー帯電特性の環境安定性を改善する目的において単官能単量体がポリエステル樹脂に導入される場合がある。単官能単量体としては、安息香酸、クロロ安息香酸、ブロモ安息香酸、パラヒドロキシ安息香酸、スルホ安息香酸モノアンモニウム塩、スルホ安息香酸モノナトリウム塩、シクロヘキシルアミノカルボニル安息香酸、n−ドデシルアミノカルボニル安息香酸、ターシャルブチル安息香酸、ナフタレンカルボン酸、4−メチル安息香酸、3−メチル安息香酸、サリチル酸、チオサリチル酸、フェニル酢酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、オクタンカルボン酸、ラウリル酸、ステアリル酸、及びこれらの低級アルキルエステル、等のモノカルボン酸類、あるいは脂肪族アルコール、芳香族アルコール、脂環族アルコール等のモノアルコールが用いられる。
【0041】
ポリエステル樹脂の製造方法としては、特に制限はなく、酸成分とアルコール成分とを反応させる一般的なポリエステル重合法で製造することができ、例えば、直接重縮合、エステル交換法等が挙げられ、モノマーの種類によって使い分けて製造する。
【0042】
ポリエステル樹脂の製造は、例えば、重合温度180℃以上230℃以下の間で行うことができ、必要に応じて反応系内を減圧にし、縮合時に発生する水やアルコールを除去しながら反応させる。モノマーが反応温度下で溶解又は相溶しない場合は、高沸点の溶剤を溶解補助剤として加え溶解させても良い。重縮合反応においては、溶解補助溶剤を留去しながら行う。共重合反応において相溶性の悪いモノマーが存在する場合は、あらかじめ相溶性の悪いモノマーと、そのモノマーと重縮合予定の酸又はアルコールとを縮合させておいてから主成分と共に重縮合させると良い。
【0043】
ポリエステル樹脂の製造時に使用可能な触媒としては、ナトリウム、リチウム等のアルカリ金属化合物;マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属化合物;亜鉛、マンガン、アンチモン、チタン、スズ、ジルコニウム、ゲルマニウム等の金属化合物;亜リン酸化合物、リン酸化合物、及びアミン化合物等が挙げられ、具体的には、以下の化合物が挙げられる。
【0044】
例えば、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、酢酸リチウム、炭酸リチウム、酢酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、塩化亜鉛、酢酸マンガン、ナフテン酸マンガン、チタンテトラエトキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトライソプロキシド、チタンテトラブトキシド、三酸化アンチモン、トリフェニルアンチモン、トリブチルアンチモン、ギ酸スズ、シュウ酸スズ、テトラフェニルスズ、ジブチルスズジクロライド、ジブチルスズオキシド、ジフェニルスズオキシド、ジルコニウムテトラブトキシド、ナフテン酸ジルコニウム、炭酸ジルコニール、酢酸ジルコニール、ステアリン酸ジルコニール、オクチル酸ジルコニール、酸化ゲルマニウム、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−t−ブチルフェニル)ホスファイト、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、トリエチルアミン、トリフェニルアミン等の化合物が挙げられる。このような触媒の添加量は、原材料の総量に対して0.01〜1.00重量%とすることが好ましい。
【0045】
ポリエステル樹脂のガラス転移温度としては、好ましくは50℃以上120℃以下であり、より好ましくは60℃以上110℃以下である。前記ガラス転移温度が50℃より低いとトナーの保存性や、定着後のトナー画像の保存性が問題となる場合がある一方、120℃より高いと従来のトナーに比べて十分な低温定着が得られない場合がある。
【0046】
更に、本実施形態のガラス転移温度の測定には、例えばパーキンエルマー社製のDSC−7が用いられる。この装置の検出部の温度補正はインジウムと亜鉛との融点を用い、熱量の補正にはインジウムの融解熱を用いる。サンプルは、アルミニウム製パンを用い、対照用に空パンをセットし、昇温速度10℃/minで測定を行う。
【0047】
ポリエステルの樹脂粒子分散液の作製については、樹脂の酸価の調整やイオン性界面活性剤などを用いて乳化分散することにより、調製することが可能である。
【0048】
また、その他の方法で作製した樹脂の場合は油性で水への溶解度の比較的低い溶剤に溶解するものであれば樹脂をそれらの溶剤に溶かして水中にイオン性の界面活性剤や高分子電解質と共にホモジナイザーなどの分散機により水中に粒子分散し、その後加熱又は減圧して溶剤を蒸散することにより、樹脂粒子分散液が作製される。また、樹脂に界面活性剤を加え、ホモジナイザーなどの分散機により水中にて乳化分散する方法や転相乳化法などにより、樹脂粒子分散液を調製してもよい。
【0049】
本実施の形態に用いられる凝集剤としては、例えば、界面活性剤のほか、無機塩、2価以上の金属塩が好適に用いられる。特に、金属塩を用いる場合、凝集性制御が向上し、凝集粒子を電子写真用トナー製造に用いる場合、トナー帯電性が向上する。
【実施例】
【0050】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明を限定するものではない。なお、実施例中において特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を表す。
【0051】
<各種特性の測定方法>
まず、実施例、比較例で用いた凝集粒子の物性測定方法について説明する。
【0052】
(初期凝集粒子および最終の凝集粒子の粒子径の粒子径測定方法)
初期凝集粒子および最終の凝集粒子の粒子径測定は、測定装置としてはコールターマルチサイザー−II型(ベックマン−コールター社製)を用い、電解液はISOTON−II(ベックマン−コールター社製)を使用した。
【0053】
測定法としては、分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムの5%水溶液2ml中に測定試料を0.5〜50mg加える。これを前記電解液100〜150ml中に添加した。試料を懸濁した電解液は超音波分散器で約1分間分散処理を行い、前記マルチサイザーII型により、アパーチャー径として100μmアパーチャーを用いて2μm以上60μm以下の粒子の粒度分布を測定して、体積平均粒径を求めた。測定する粒子数は50,000であった。
【0054】
<ガラス転移温度の測定方法>
ガラス転移温度は、示差走査熱量計(マックサイエンス社製:DSC3110、熱分析システム001)を用い、JIS 7121−1987に準拠して測定した。この装置の検出部の温度補正にはインジウムと亜鉛との混合物の融点を用い、熱量の補正にはインジウムの融解熱を用いた。試料はアルミニウム製パンに入れ、サンプルの入ったアルミニウム製パンと対照用の空のアルミニウム製パンとをセットし、昇温速度10℃/minで測定を行った。
【0055】
ガラス転移温度については、測定により得られたDSC曲線の吸熱部におけるベースラインと立ち上がりラインとの延長線の交点の温度をもってガラス転移温度とした。
【0056】
<重量平均分子量(Mw)の測定>
ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)(ポリスチレン換算)は、GPC(東ソー(株):製HLC−8120)を用いて測定した。カラムは東ソー製TSKgel SuperHM−M(15cm)を使用し、THF溶媒によりGPCスペクトルを測定した。単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用してポリエステル樹脂の分子量を算出した。
【0057】
<酸価の測定>
酸価は、JIS K0070に従って行い、中和滴定法を用いた測定で行った。即ち、適当量の試料を分取し、溶剤(ジエチルエーテル/エタノール混合液)100ml、及び、指示薬(フェノールフタレイン溶液)数滴を加え、水浴上で試料が完全に溶けるまで充分に振り混ぜる。これに、0.1mol/L水酸化カリウムエタノール溶液で滴定し、指示薬の薄い紅色が30秒間続いた時を終点とした。酸価をA、試料量をS(g)、滴定に用いた0.1mol/l水酸化カリウムエタノール溶液をB(ml)、fを0.1mol/L水酸化カリウムエタノール溶液のファクタとした時、A=(B×f×5.611)/Sとして算出した。
【0058】
実施例および比較例に供する樹脂粒子分散液に用いる樹脂の合成例を以下に示す。
【0059】
<ポリエステル樹脂(1)の合成>
加熱乾燥した二口フラスコに、ポリオキシプロピレン(2,2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン80モル部と、エチレングリコール10モル部と、シクロヘキサンジオール10モル部と、テレフタル酸80モル部と、イソフタル酸10モル部と、n−ドデセニルコハク酸10モル部を原料に、触媒としてジブチル錫オキサイドを入れ、容器内に窒素ガスを導入して不活性雰囲気に保ち昇温した後、150から230℃で約12時間共縮重合反応させ、その後、210から250℃で徐々に減圧して、ポリエステル樹脂(1)を合成した。
【0060】
得られたポリエステル樹脂(1)の重量平均分子量(Mw)は、17,100であった。また、ポリエステル樹脂(1)の酸価は12.5mgKOH/gであった。さらに、ポリエステル樹脂(1)のガラス転移温度を、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定し、JIS規格(JIS K−7121参照)により解析して得た。その結果、明確なピークを示さず、階段状の吸熱量変化が観察された。階段状の吸熱量変化の中間点をとったガラス転移温度(Tg)は58℃であった。
【0061】
<ポリエステル樹脂(2)の合成>
ポリエステル樹脂(1)の反応終了時にテレフタル酸ジメチル2.6モル部を添加し、樹脂末端修飾を行い、ポリエステル樹脂(2)を合成した。
【0062】
また、ポリエステル樹脂(2)の酸価は2.3mgKOH/gであった。ポリエステル樹脂(1)と同様にしてガラス転移温度の測定を行い、DSCスペクトルを得たところ、明確なピークを示さず、階段状の吸熱量変化が観察された。階段状の吸熱量変化の中間点をとったガラス転移温度(Tg)は60℃であった。
【0063】
<ポリエステル樹脂(3)の合成>
ポリエステル樹脂(1)の反応終了時に1,2,4−トリメリット酸2.6モル部を添加し、樹脂末端修飾を行い、ポリエステル樹脂(3)を合成した。
【0064】
ポリエステル樹脂(1)と同様にして分子量を測定したところ、得られたポリエステル樹脂(3)の重量平均分子量(Mw)は20,800であった。また、ポリエステル樹脂(3)の酸価は32.6mgKOH/gであった。ポリエステル樹脂(1)と同様にしてガラス転移温度の測定を行い、DSCスペクトルを得たところ、明確なピークを示さず、階段状の吸熱量変化が観察された。階段状の吸熱量変化の中間点をとったガラス転移温度(Tg)は61℃であった。
【0065】
[分散液の調製]
<ポリエステル樹脂分散液(1)の調製>
・ポリエステル樹脂(1) 100質量部
・酢酸エチル 70質量部
・イソプロピルアルコール 15質量部
5Lのセパラブルフラスコに上記酢酸エチルと上記イソプロピルアルコールとの混合溶媒を投入し、これに上記樹脂を徐々に投入して、スリーワンモーターで攪拌を施し、完全に溶解させて油相を得た。この攪拌されている油相に10質量%アンモニア水溶液を合計で3質量部となるようにスポイトで徐々に滴下し、更にイオン交換水230質量部を10ml/minの速度で徐々に滴下して転相乳化させ、更にエバポレータで減圧しながら脱溶剤を実施し、「ポリエステル樹脂(1)」を含む「ポリエステル樹脂分散液(1)」を得た。この分散液中に分散する樹脂粒子の体積平均粒径は180nmであった。なお、分散液の樹脂粒子濃度はイオン交換水で調整して20質量%とした。
【0066】
<ポリエステル樹脂分散液(2)の調製>
ポリエステル樹脂(1)の代わりにポリエステル樹脂(2)を用い、10質量%アンモニア水溶液を合計で0.5質量部とした以外は、ポリエステル樹脂分散液(1)と同様にしてポリエステル樹脂分散液(2)を得た。分散液中の樹脂粒子の体積平均粒径は165nmであり、分散液の樹脂粒子濃度はイオン交換水で調整して20質量%とした。
【0067】
<ポリエステル樹脂分散液(3)の調製>
ポリエステル樹脂(1)の代わりにポリエステル樹脂(3)を用い、10質量%アンモニア水溶液を合計で13質量部とした以外は、ポリエステル樹脂分散液(1)と同様にしてポリエステル樹脂分散液(3)を得た。分散液中の樹脂粒子の体積平均粒径は195nmであり、分散液の樹脂粒子濃度はイオン交換水で調整して20質量%とした。
【0068】
<離型剤分散液の調製>
・パラフィンワックス(日本精蝋(株)製、FNP92):45部
・アニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製、ネオゲンRK)5部
・イオン交換水:200部
以上を混合して95℃に加熱し、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)を用いて分散した。その後、マントンゴーリン高圧ホモジナイザ(ゴーリン社)で分散処理し、離型剤を分散させてなる離型剤分散液(固形分濃度:20%)を調製した。離型剤粒子の体積平均粒径は0.19μmであった。
【0069】
<着色剤分散液の調製>
・シアン顔料(大日精化(株)製、Pigment Blue 15:3(銅フタロシアニン)) 1000部
・アニオン界面活性剤(第一工業製薬社製、ネオゲンR) 15部
・イオン交換水 9000部
以上を混合溶解し、ホモジナイザー(IKAウルトラタラックス)により10分間分散し、中心粒径0.16nm、固形分量20%の着色剤分散液を得た。
【0070】
<実施例1:凝集粒子(1)の製造>
・ポリエステル樹脂分散液(1) 267部
・着色剤分散液 25部
・離型剤分散液 40部
・アニオン性界面活性剤(TeycaPower) 2.0部
上記原料を2Lの円筒ステンレス容器に入れ、0.3Mの硝酸水溶液12部を加えて、pHを2.7に調整した。
【0071】
次いで、Ultraturrax(IKAジャパン社製)により1000rpmでせん断力を加えながら、凝集剤として硫酸アルミニウム10%水溶液100部を滴下した。尚、この凝集剤滴下の途中で、原料混合物の粘度が増大するので、粘度上昇した時点で、滴下速度を緩め、凝集剤が一箇所に偏らないよう注意した。凝集剤の滴下が終了したら、さらに回転数6000rpmに上げて5分間攪拌し、凝集剤と原料混合物を充分混合した。次いで、上記原料混合物をマントルヒーターにて35℃に加温しながら550rpm以上650rpm以下で攪拌した。60分攪拌後、マルチサイザーII型(アパーチャー径:50μm、ベックマン−コールター社製)を用いて初期粒子径を測定したところ、3.0μmであった。
【0072】
そこで、予め実施の予備実験により求めておいた下記関係式に基づき、凝集温度を46.3℃と設定し、凝集粒子を成長させるため2.6℃/分で46.3℃まで昇温し、さらに昇温開始から合計30分間となるまで撹拌後、コールターマルチサイザー−II型(アパーチャー径:50μm、ベックマン−コールター社製)を用いて粒子径を測定したところ、5.92μmであった。
【0073】
関係式:(凝集温度)={−10.9×(初期粒子径)+79}×1
【0074】
一方、凝集粒子被覆用として、ポリエステル樹脂分散液(1)190部に、イオン交換水38部を加えて混合し、予めpH2.7に調整した被覆用樹脂粒子分散液を調製した。上記凝集工程で凝集粒子が5.8μmに成長したところで、上記被覆用樹脂粒子分散液を加え、攪拌しながら10分間保持した。その後、被覆した凝集粒子(付着粒子)の成長を停止させるために、1Mの水酸化ナトリウム水溶液を加え、原料混合物のpHを8.0に制御した。ついで、凝集粒子を融合させるために、pHを8.0に制御しながら昇温速度1℃/minで85℃まで昇温した。85℃に到達した時点で0.3Mの硝酸水溶液20部を投入し凝集粒子を融合させた後、1.0℃/分の降温速度で冷却した。
【0075】
<実施例2:凝集粒子(2)の製造>
実施例1における製造方法にて、ポリエステル樹脂分散液(1)をポリエステル樹脂分散液(2)に代えた以外は、同一方法で凝集粒子を作製した。初期粒径は2.5μmであったため、関係式より、凝集温度を51.2℃としたところ、5.94μmの凝集粒子を得た。
【0076】
<実施例3:凝集粒子(3)の製造>
実施例1における製造方法にて、ポリエステル樹脂分散液(1)をポリエステル樹脂分散液(3)に代えた以外は、同一方法で凝集粒子を作製した。初期粒径は3.6μmであったため、関係式より、凝集温度を39.8℃としたところ5.88μmの凝集粒子を得た。
【0077】
<比較例1:凝集粒子(4)の製造>
昇温速度を2.6℃/毎分、凝集温度46.3℃に代えた以外は、実施例2における製造方法に準拠して凝集粒子を得た。凝集粒子の粒子径は5.14μmであった。
【0078】
<比較例2:凝集粒子(5)の製造>
昇温速度を2.6℃/毎分、凝集温度46.3℃に代えた以外は、実施例3における製造方法に準拠して凝集粒子を得た。凝集粒子の粒子径は6.33μmであった。
【0079】
<実施例4:凝集粒子(6)の製造>
−樹脂粒子分散液(4)の作製−
スチレン(和光純薬社製、特級) 78重量部
アクリル酸n−ブチル(試薬一級:和光純薬社製) 22重量部
アクリル酸(和光純薬社製) 2重量部
ドデカンチオール(和光純薬社製) 1.5重量部
【0080】
上記成分を予め混合し、溶解して溶液を調製しておき、アニオン性界面活性剤(ダウケミカル社製、ダウファックスA211)4重量部をイオン交換水100重量部に溶解した界面活性剤溶液をフラスコに収容し、上記の溶液103.5重量部を投入して分散し乳化して10分間ゆっくりと攪拌・混合しながら、過硫酸アンモニウム3重量部を溶解したイオン交換水50重量部を投入した。次いで、系内を窒素で十分に置換した後、フラスコを攪拌しながらオイルバスで系内が68℃になるまで加熱し、5時間そのまま乳化重合を継続して樹脂粒子分散液(4)を得た。樹脂粒子分散液から樹脂粒子を分離して物性を調べたところ、中心径は200nm、分散液中の固形分量は40%、ガラス転移温度は52℃、酸価は14mgKOH/g、重量平均分子量Mwは33000であった。
【0081】
実施例1における製造方法にて、ポリエステル樹脂分散液(1)を樹脂粒子分散液(4)に代えた以外は、同一方法で凝集粒子を作製した。初期粒径は2.7μmであったため、関係式より、凝集温度を54.5℃としたところ6.02μmの凝集粒子を得た。またここで関係式は、関係式:(凝集温度)={−9.8×(初期粒子径)+81}×1、を用いた。
【0082】
<実施例5:凝集粒子(7)の製造>
実施例1における製造方法にて、ポリエステル樹脂分散液(1)をポリエステル樹脂分散液(2)に代えた以外は、同一方法で凝集粒子を作製した。初期粒径は2.5μmであったため、関係式より、凝集温度を41.5℃としたところ、4.54μmの凝集粒子を得た。またここで関係式は、関係式:(凝集温度)={−5.8×(初期粒子径)+56}×1、を用いた。
【0083】
<実施例6:凝集粒子(8)の製造>
実施例1における製造方法にて、ポリエステル樹脂分散液(1)をポリエステル樹脂分散液(3)に代えた以外は、同一方法で凝集粒子を作製した。初期粒径は3.6μmであったため、関係式より、凝集温度を35.1℃としたところ4.42μmの凝集粒子を得た。またここで関係式は、実施例5と同じく関係式:(凝集温度)={−5.8×(初期粒子径)+56}×1、を用いた。
【0084】
得られた結果を、表1に示す。また、図2に、実施例1から実施例3と比較例1,2の凝集時間と凝集温度との関係を示す。
【0085】
【表1】
【0086】
目標凝集粒子径を5.9μmに設定して凝集温度を制御した結果、実施例1から実施例4のいずれも、目標凝集粒子径に近似する凝集粒子が得られた。また、目標凝集粒子径を4.5μmに設定して凝集温度を制御した結果、実施例5,6のいずれも、目標凝集粒子径に近似する凝集粒子が得られた。このように、実施例のように原料混合物中の初期凝集粒子径を測定し、目標凝集粒子径に対する初期凝集粒子径と凝集温度との関係に基づき、測定された初期凝集粒子径から凝集温度を算出し、凝集槽内の流体の温度と算出された凝集温度とに応じて、凝集槽内の温度を制御することによって、比較例に比べて短時間で目標粒子径の凝集粒子が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明の凝集粒子の製造装置、電子写真用トナーの製造装置、凝集粒子の製造方法および電子写真用トナーの製造方法は、特に電子写真法、静電記録法等に用いる現像剤の用途に有用である。
【符号の説明】
【0088】
10 凝集槽、12 駆動源、14 撹拌棒、16 加熱装置、18 撹拌羽根、20 粒径測定装置、22 バルブ、24 温度計、30 制御装置、40 原料槽、50 pH調整剤槽、52,62,64 配管、54 電磁弁、56 フローメータ、58 pH測定器、60 ポンプ、100 凝集粒子の製造装置。
図2
図1