【実施例】
【0050】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明を限定するものではない。なお、実施例中において特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を表す。
【0051】
<各種特性の測定方法>
まず、実施例、比較例で用いた凝集粒子の物性測定方法について説明する。
【0052】
(初期凝集粒子および最終の凝集粒子の粒子径の粒子径測定方法)
初期凝集粒子および最終の凝集粒子の粒子径測定は、測定装置としてはコールターマルチサイザー−II型(ベックマン−コールター社製)を用い、電解液はISOTON−II(ベックマン−コールター社製)を使用した。
【0053】
測定法としては、分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムの5%水溶液2ml中に測定試料を0.5〜50mg加える。これを前記電解液100〜150ml中に添加した。試料を懸濁した電解液は超音波分散器で約1分間分散処理を行い、前記マルチサイザーII型により、アパーチャー径として100μmアパーチャーを用いて2μm以上60μm以下の粒子の粒度分布を測定して、体積平均粒径を求めた。測定する粒子数は50,000であった。
【0054】
<ガラス転移温度の測定方法>
ガラス転移温度は、示差走査熱量計(マックサイエンス社製:DSC3110、熱分析システム001)を用い、JIS 7121−1987に準拠して測定した。この装置の検出部の温度補正にはインジウムと亜鉛との混合物の融点を用い、熱量の補正にはインジウムの融解熱を用いた。試料はアルミニウム製パンに入れ、サンプルの入ったアルミニウム製パンと対照用の空のアルミニウム製パンとをセットし、昇温速度10℃/minで測定を行った。
【0055】
ガラス転移温度については、測定により得られたDSC曲線の吸熱部におけるベースラインと立ち上がりラインとの延長線の交点の温度をもってガラス転移温度とした。
【0056】
<重量平均分子量(Mw)の測定>
ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)(ポリスチレン換算)は、GPC(東ソー(株):製HLC−8120)を用いて測定した。カラムは東ソー製TSKgel SuperHM−M(15cm)を使用し、THF溶媒によりGPCスペクトルを測定した。単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用してポリエステル樹脂の分子量を算出した。
【0057】
<酸価の測定>
酸価は、JIS K0070に従って行い、中和滴定法を用いた測定で行った。即ち、適当量の試料を分取し、溶剤(ジエチルエーテル/エタノール混合液)100ml、及び、指示薬(フェノールフタレイン溶液)数滴を加え、水浴上で試料が完全に溶けるまで充分に振り混ぜる。これに、0.1mol/L水酸化カリウムエタノール溶液で滴定し、指示薬の薄い紅色が30秒間続いた時を終点とした。酸価をA、試料量をS(g)、滴定に用いた0.1mol/l水酸化カリウムエタノール溶液をB(ml)、fを0.1mol/L水酸化カリウムエタノール溶液のファクタとした時、A=(B×f×5.611)/Sとして算出した。
【0058】
実施例および比較例に供する樹脂粒子分散液に用いる樹脂の合成例を以下に示す。
【0059】
<ポリエステル樹脂(1)の合成>
加熱乾燥した二口フラスコに、ポリオキシプロピレン(2,2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン80モル部と、エチレングリコール10モル部と、シクロヘキサンジオール10モル部と、テレフタル酸80モル部と、イソフタル酸10モル部と、n−ドデセニルコハク酸10モル部を原料に、触媒としてジブチル錫オキサイドを入れ、容器内に窒素ガスを導入して不活性雰囲気に保ち昇温した後、150から230℃で約12時間共縮重合反応させ、その後、210から250℃で徐々に減圧して、ポリエステル樹脂(1)を合成した。
【0060】
得られたポリエステル樹脂(1)の重量平均分子量(Mw)は、17,100であった。また、ポリエステル樹脂(1)の酸価は12.5mgKOH/gであった。さらに、ポリエステル樹脂(1)のガラス転移温度を、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定し、JIS規格(JIS K−7121参照)により解析して得た。その結果、明確なピークを示さず、階段状の吸熱量変化が観察された。階段状の吸熱量変化の中間点をとったガラス転移温度(Tg)は58℃であった。
【0061】
<ポリエステル樹脂(2)の合成>
ポリエステル樹脂(1)の反応終了時にテレフタル酸ジメチル2.6モル部を添加し、樹脂末端修飾を行い、ポリエステル樹脂(2)を合成した。
【0062】
また、ポリエステル樹脂(2)の酸価は2.3mgKOH/gであった。ポリエステル樹脂(1)と同様にしてガラス転移温度の測定を行い、DSCスペクトルを得たところ、明確なピークを示さず、階段状の吸熱量変化が観察された。階段状の吸熱量変化の中間点をとったガラス転移温度(Tg)は60℃であった。
【0063】
<ポリエステル樹脂(3)の合成>
ポリエステル樹脂(1)の反応終了時に1,2,4−トリメリット酸2.6モル部を添加し、樹脂末端修飾を行い、ポリエステル樹脂(3)を合成した。
【0064】
ポリエステル樹脂(1)と同様にして分子量を測定したところ、得られたポリエステル樹脂(3)の重量平均分子量(Mw)は20,800であった。また、ポリエステル樹脂(3)の酸価は32.6mgKOH/gであった。ポリエステル樹脂(1)と同様にしてガラス転移温度の測定を行い、DSCスペクトルを得たところ、明確なピークを示さず、階段状の吸熱量変化が観察された。階段状の吸熱量変化の中間点をとったガラス転移温度(Tg)は61℃であった。
【0065】
[分散液の調製]
<ポリエステル樹脂分散液(1)の調製>
・ポリエステル樹脂(1) 100質量部
・酢酸エチル 70質量部
・イソプロピルアルコール 15質量部
5Lのセパラブルフラスコに上記酢酸エチルと上記イソプロピルアルコールとの混合溶媒を投入し、これに上記樹脂を徐々に投入して、スリーワンモーターで攪拌を施し、完全に溶解させて油相を得た。この攪拌されている油相に10質量%アンモニア水溶液を合計で3質量部となるようにスポイトで徐々に滴下し、更にイオン交換水230質量部を10ml/minの速度で徐々に滴下して転相乳化させ、更にエバポレータで減圧しながら脱溶剤を実施し、「ポリエステル樹脂(1)」を含む「ポリエステル樹脂分散液(1)」を得た。この分散液中に分散する樹脂粒子の体積平均粒径は180nmであった。なお、分散液の樹脂粒子濃度はイオン交換水で調整して20質量%とした。
【0066】
<ポリエステル樹脂分散液(2)の調製>
ポリエステル樹脂(1)の代わりにポリエステル樹脂(2)を用い、10質量%アンモニア水溶液を合計で0.5質量部とした以外は、ポリエステル樹脂分散液(1)と同様にしてポリエステル樹脂分散液(2)を得た。分散液中の樹脂粒子の体積平均粒径は165nmであり、分散液の樹脂粒子濃度はイオン交換水で調整して20質量%とした。
【0067】
<ポリエステル樹脂分散液(3)の調製>
ポリエステル樹脂(1)の代わりにポリエステル樹脂(3)を用い、10質量%アンモニア水溶液を合計で13質量部とした以外は、ポリエステル樹脂分散液(1)と同様にしてポリエステル樹脂分散液(3)を得た。分散液中の樹脂粒子の体積平均粒径は195nmであり、分散液の樹脂粒子濃度はイオン交換水で調整して20質量%とした。
【0068】
<離型剤分散液の調製>
・パラフィンワックス(日本精蝋(株)製、FNP92):45部
・アニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製、ネオゲンRK)5部
・イオン交換水:200部
以上を混合して95℃に加熱し、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)を用いて分散した。その後、マントンゴーリン高圧ホモジナイザ(ゴーリン社)で分散処理し、離型剤を分散させてなる離型剤分散液(固形分濃度:20%)を調製した。離型剤粒子の体積平均粒径は0.19μmであった。
【0069】
<着色剤分散液の調製>
・シアン顔料(大日精化(株)製、Pigment Blue 15:3(銅フタロシアニン)) 1000部
・アニオン界面活性剤(第一工業製薬社製、ネオゲンR) 15部
・イオン交換水 9000部
以上を混合溶解し、ホモジナイザー(IKAウルトラタラックス)により10分間分散し、中心粒径0.16nm、固形分量20%の着色剤分散液を得た。
【0070】
<実施例1:凝集粒子(1)の製造>
・ポリエステル樹脂分散液(1) 267部
・着色剤分散液 25部
・離型剤分散液 40部
・アニオン性界面活性剤(TeycaPower) 2.0部
上記原料を2Lの円筒ステンレス容器に入れ、0.3Mの硝酸水溶液12部を加えて、pHを2.7に調整した。
【0071】
次いで、Ultraturrax(IKAジャパン社製)により1000rpmでせん断力を加えながら、凝集剤として硫酸アルミニウム10%水溶液100部を滴下した。尚、この凝集剤滴下の途中で、原料混合物の粘度が増大するので、粘度上昇した時点で、滴下速度を緩め、凝集剤が一箇所に偏らないよう注意した。凝集剤の滴下が終了したら、さらに回転数6000rpmに上げて5分間攪拌し、凝集剤と原料混合物を充分混合した。次いで、上記原料混合物をマントルヒーターにて35℃に加温しながら550rpm以上650rpm以下で攪拌した。60分攪拌後、マルチサイザーII型(アパーチャー径:50μm、ベックマン−コールター社製)を用いて初期粒子径を測定したところ、3.0μmであった。
【0072】
そこで、予め実施の予備実験により求めておいた下記関係式に基づき、凝集温度を46.3℃と設定し、凝集粒子を成長させるため2.6℃/分で46.3℃まで昇温し、さらに昇温開始から合計30分間となるまで撹拌後、コールターマルチサイザー−II型(アパーチャー径:50μm、ベックマン−コールター社製)を用いて粒子径を測定したところ、5.92μmであった。
【0073】
関係式:(凝集温度)={−10.9×(初期粒子径)+79}×1
【0074】
一方、凝集粒子被覆用として、ポリエステル樹脂分散液(1)190部に、イオン交換水38部を加えて混合し、予めpH2.7に調整した被覆用樹脂粒子分散液を調製した。上記凝集工程で凝集粒子が5.8μmに成長したところで、上記被覆用樹脂粒子分散液を加え、攪拌しながら10分間保持した。その後、被覆した凝集粒子(付着粒子)の成長を停止させるために、1Mの水酸化ナトリウム水溶液を加え、原料混合物のpHを8.0に制御した。ついで、凝集粒子を融合させるために、pHを8.0に制御しながら昇温速度1℃/minで85℃まで昇温した。85℃に到達した時点で0.3Mの硝酸水溶液20部を投入し凝集粒子を融合させた後、1.0℃/分の降温速度で冷却した。
【0075】
<実施例2:凝集粒子(2)の製造>
実施例1における製造方法にて、ポリエステル樹脂分散液(1)をポリエステル樹脂分散液(2)に代えた以外は、同一方法で凝集粒子を作製した。初期粒径は2.5μmであったため、関係式より、凝集温度を51.2℃としたところ、5.94μmの凝集粒子を得た。
【0076】
<実施例3:凝集粒子(3)の製造>
実施例1における製造方法にて、ポリエステル樹脂分散液(1)をポリエステル樹脂分散液(3)に代えた以外は、同一方法で凝集粒子を作製した。初期粒径は3.6μmであったため、関係式より、凝集温度を39.8℃としたところ5.88μmの凝集粒子を得た。
【0077】
<比較例1:凝集粒子(4)の製造>
昇温速度を2.6℃/毎分、凝集温度46.3℃に代えた以外は、実施例2における製造方法に準拠して凝集粒子を得た。凝集粒子の粒子径は5.14μmであった。
【0078】
<比較例2:凝集粒子(5)の製造>
昇温速度を2.6℃/毎分、凝集温度46.3℃に代えた以外は、実施例3における製造方法に準拠して凝集粒子を得た。凝集粒子の粒子径は6.33μmであった。
【0079】
<実施例4:凝集粒子(6)の製造>
−樹脂粒子分散液(4)の作製−
スチレン(和光純薬社製、特級) 78重量部
アクリル酸n−ブチル(試薬一級:和光純薬社製) 22重量部
アクリル酸(和光純薬社製) 2重量部
ドデカンチオール(和光純薬社製) 1.5重量部
【0080】
上記成分を予め混合し、溶解して溶液を調製しておき、アニオン性界面活性剤(ダウケミカル社製、ダウファックスA211)4重量部をイオン交換水100重量部に溶解した界面活性剤溶液をフラスコに収容し、上記の溶液103.5重量部を投入して分散し乳化して10分間ゆっくりと攪拌・混合しながら、過硫酸アンモニウム3重量部を溶解したイオン交換水50重量部を投入した。次いで、系内を窒素で十分に置換した後、フラスコを攪拌しながらオイルバスで系内が68℃になるまで加熱し、5時間そのまま乳化重合を継続して樹脂粒子分散液(4)を得た。樹脂粒子分散液から樹脂粒子を分離して物性を調べたところ、中心径は200nm、分散液中の固形分量は40%、ガラス転移温度は52℃、酸価は14mgKOH/g、重量平均分子量Mwは33000であった。
【0081】
実施例1における製造方法にて、ポリエステル樹脂分散液(1)を樹脂粒子分散液(4)に代えた以外は、同一方法で凝集粒子を作製した。初期粒径は2.7μmであったため、関係式より、凝集温度を54.5℃としたところ6.02μmの凝集粒子を得た。またここで関係式は、関係式:(凝集温度)={−9.8×(初期粒子径)+81}×1、を用いた。
【0082】
<実施例5:凝集粒子(7)の製造>
実施例1における製造方法にて、ポリエステル樹脂分散液(1)をポリエステル樹脂分散液(2)に代えた以外は、同一方法で凝集粒子を作製した。初期粒径は2.5μmであったため、関係式より、凝集温度を41.5℃としたところ、4.54μmの凝集粒子を得た。またここで関係式は、関係式:(凝集温度)={−5.8×(初期粒子径)+56}×1、を用いた。
【0083】
<実施例6:凝集粒子(8)の製造>
実施例1における製造方法にて、ポリエステル樹脂分散液(1)をポリエステル樹脂分散液(3)に代えた以外は、同一方法で凝集粒子を作製した。初期粒径は3.6μmであったため、関係式より、凝集温度を35.1℃としたところ4.42μmの凝集粒子を得た。またここで関係式は、実施例5と同じく関係式:(凝集温度)={−5.8×(初期粒子径)+56}×1、を用いた。
【0084】
得られた結果を、表1に示す。また、
図2に、実施例1から実施例3と比較例1,2の凝集時間と凝集温度との関係を示す。
【0085】
【表1】
【0086】
目標凝集粒子径を5.9μmに設定して凝集温度を制御した結果、実施例1から実施例4のいずれも、目標凝集粒子径に近似する凝集粒子が得られた。また、目標凝集粒子径を4.5μmに設定して凝集温度を制御した結果、実施例5,6のいずれも、目標凝集粒子径に近似する凝集粒子が得られた。このように、実施例のように原料混合物中の初期凝集粒子径を測定し、目標凝集粒子径に対する初期凝集粒子径と凝集温度との関係に基づき、測定された初期凝集粒子径から凝集温度を算出し、凝集槽内の流体の温度と算出された凝集温度とに応じて、凝集槽内の温度を制御することによって、比較例に比べて短時間で目標粒子径の凝集粒子が得られた。