(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施形態に係る端子送り装置について説明する。実施形態に係る端子送り装置は、ここでは、切圧セット装置1の端子圧着システム25に組み込まれている。
【0015】
<1.切圧セット装置>
まず、切圧セット装置1の全体構成について説明する。
図1は、切圧セット装置1の全体構成を示す説明図である。この切圧セット装置1は、切圧機構部22で処理された端子付電線18を電線端部セット機構部30で処理するものであり、上記切圧機構部22で電線の長尺切断及び端子圧着を行い、電線端部セット機構部30でその端子付き電線18の端部を電線保持バー10に順次セットするとともに電線保持バー10ごと外部に取り出せるように構成されている。
【0016】
切圧機構部22は、電線を切断して端部に端子を圧着可能に構成されている。ここでは、切圧機構部22は、複数種類の端子付電線18を所定順で製造可能に構成されており、複数種類の端子付電線18を適宜混在させた順でも、同一種類の端子付電線18を連続的にも製造可能とされている。
【0017】
より具体的には、切圧機構部22は、電線調尺切断部23と、電線皮剥部24と、端子圧着システム25とを備えると共に、電線端部を搬送する電線端部搬送機構部26とを有している。
【0018】
電線調尺切断部23は、複数種類の電線を選択的に所定長に切断可能に構成されたものであり、例えば、電線を巻回収納したリールと、前記リールから電線長を測長しつつ電線を引出す電線測長引出部と、引出された電線を切断する電線切断部と、引出された電線をU字状に折返えす折返し部とを有する構成を採用することができる。そして、電線測長引出部の駆動によりリールから電線を所定長引出して、電線切断部により電線を切断する。また、引出された電線の一端部を折返し部により折返して略U字状にし、その両端部を上記電線端部搬送機構部26にセットする。これにより、所定長に切断された電線Wが得られる。また、上記リールが複数設けられると共に、当該各リールから選択的に電線を供給可能にする電線選択供給部が設けられている。これにより、複数種類の電線を適宜切替えて所定長に切断することができる。
【0019】
このように複数の種類の電線を選択的に供給して所定長の電線に切断する電線調尺切断部23自体の構成は、例えば、特開平9−306257号公報等に開示された周知の構成を採用することができる。
【0020】
電線皮剥部24は、電線Wの端部を皮剥ぎするものであり、例えば、接近離隔自在な一対の皮剥刃と、当該皮剥ぎ刃を電線W端部に向けて進退駆動させる進退駆動部とを有する構成を採用することができる。そして、本電線皮剥部24に搬送された電線端部に向けて一対の皮剥刃を接近移動させ、一対の皮剥刃を電線Wの被覆部に切込ませた状態で、電線の端部側に向けて移動させることで、電線Wの端部の被覆部が皮剥ぎされる。このような電線皮剥部24としては、上記のように一対の皮剥刃で被覆部を除去する構成等、種々の周知構成を採用することができる。
【0021】
端子圧着システム25は、電線W端部に対して複数種類の端子を選択的に圧着可能に構成されており、例えば、複数対のダイセットを有し、その複数対の中から一対のダイセットを共通の端子圧着ポジションにセット可能な圧着装置において、複数種類の端子を選択的に前記端子圧着ポジションに供給可能に構成したものを用いることができる。
【0022】
そして、上記電線皮剥部24で皮剥ぎされた電線Wの端部が、本端子圧着システム25に搬送されると、予め設定された所定の端子が選択されて供給されると共に、当該所定の端子に応じた一対のダイセットが選択されて端子圧着ポジションにセットされ、これにより、当該電線Wの端部に所定の端子が圧着され、端子付電線18が得られることになる。なお、端子圧着システム25については、後に詳述する。
【0023】
電線端部搬送機構部26は、電線Wの端部を保持して、電線調尺切断部23から電線皮剥部24及び端子圧着システム25を経由して、電線端部セット機構部30側の受渡し位置WPに向けて搬送可能に構成されている。より具体的には、電線Wの両端部を把持及び把持解除可能な一対の電線端部保持部27と、当該電線端部保持部27を、電線調尺切断部23、電線皮剥部24、端子圧着システム25に対応する各位置及び受渡し位置WP間で往復移動させる電線端部往復駆動部28とを有している。
【0024】
各電線端部保持部27は、開閉自在な一対の把持片を有している。一対の把持片の一端部は所定の軸周りに回転自在に支持されており、エアシリンダ等のアクチュエータ等の駆動によって、立設状に閉じた閉姿勢と、倒伏状に開いた開姿勢との間で姿勢変更自在とされている。この一対の電線端部保持部27は、電線端部往復駆動部28に所定間隔あけた状態で移動可能に設けられている。
【0025】
電線端部往復駆動部28は、リニアモータ等のアクチュエータを有しており、上記一対の各電線端部保持部27を、電線調尺切断部23から電線皮剥部24、端子圧着システム25を経て、受渡し位置WPに向けて移動させるように構成されている。電線端部往復駆動部28は、各電線端部保持部27に保持された電線Wの端部が、電線皮剥部24及び端子圧着システム25における各作業位置を通過する際に一旦停止し、当該電線Wの端部に対して皮剥ぎ処理や端子圧着処理等を行わせる。そして、所定長に切断され、端部の皮剥ぎ及び端子圧着された端子付電線18の端部を、上記端子圧着システム25よりも電線端部セット機構部30よりの位置に設定された受渡し位置WPに搬送し、ここで、それらの端部を電線端部セット機構部30に渡すように構成されている。
【0026】
なお、本実施形態では、切圧機構部22は、電線の種類及び端子の種類の双方を変更可能に構成されているが、その一方のみ変更可能であっても構わない。また、切圧機構部22は、一種類の電線の端部に対して一種類の端子を連続的に圧着するものであっても構わない。
【0027】
電線端部セット機構部30は、電線端部保持セット部32と、電線保持バー支持部40とを備えている。
【0028】
電線端部保持セット部32は、切圧機構部22で端子圧着された端子付き電線18の端部を保持し、端子付き電線18の端部を電線保持バー支持部40に支持された電線保持バー10の各電線保持部14に順次セット可能に構成されている。
【0029】
このように端子付き電線18の端部を電線保持バー支持部40に支持された電線保持バー10にセットする電線端部セット機構部30自体の構成は、例えば、特開2009−152104号公報等に開示された周知の構成を採用することができる。
【0030】
<2.連続端子9>
ここで、連続端子9について説明しておく。
図2は、連続端子9を示す平面図である。
【0031】
連続端子9は、複数の端子91が連ねられた帯状の部材であり、具体的には、帯状の連鎖帯92の片側に複数の端子91が等間隔で並列状に連鎖されて形成されている。連鎖帯92には、各端子91に対応して等間隔に送り孔93が形成されている。各端子91の基部(バレル部)911は、電線の端部と圧着可能なように、断面略U字状に開放して形成されている。
【0032】
後に明らかになるように、連鎖帯92が、1個の端子91と対応する長さで切断されることによって(具体的には、連続端子9の端部の端子91とその隣の端子91とのほぼ中間の位置で、連鎖帯92が切断されることによって)、連続端子9の端部の1個の端子91が、1個の端子91と対応する長さの帯片921(切り取られた連鎖帯92)と接続された状態で、連続端子9から切り離される。この帯片921付きの端子91を、以下「帯片付き端子90」ともいう。
【0033】
<3.端子圧着システム>
次に、端子圧着システム25の構成について、
図3を参照しながら説明する。
図3は、端子圧着システム25の構成を模式的に示す図である。
【0034】
端子圧着システム25は、複数(図示の例では、3個)の端子送り装置110と、端子搬送システム120と、圧着装置130と、制御部140とを備える。
【0035】
<端子送り装置110>
端子送り装置110は、連続端子9を、端子91ひとつ分ずつ、起点位置P1に向けて送出する。端子送り装置110について詳しくは後述する。
【0036】
<端子搬送システム120>
端子搬送システム120は、複数の端子送り装置110各々の起点位置P1に送出された端子91を、定められた目標位置P3まで次々と搬送する。端子搬送システム120は、具体的には、各起点位置P1に設けられた切断装置20と、起点位置P1と目標位置P3との間に設けられた2つの搬送装置(第1搬送装置121、および、第2搬送装置122)とを、主として備える。
【0037】
各切断装置20は、連続端子9の連鎖帯92を、1個の端子91と対応する長さで切断して(より具体的には、起点位置P1に送出された端子91とその隣の端子91との中間の位置で連鎖帯92を切断して)、連続端子9から1個の帯片付き端子90を切り出す。切断装置20は、具体的には、例えば、カッター、カッターを連鎖帯92に対して近接離間する方向に移動させる駆動機構、等を含んで構成される。
【0038】
第1搬送装置121、および、第2搬送装置122は、各起点位置P1から目標位置P3まで、端子91(具体的には、帯片付き端子90)を受け渡しながらこれを搬送する。すなわち、起点位置P1と目標位置P3との間には、受け渡し位置P2が設けられており、第1搬送装置121は、帯片付き端子90を起点位置P1から受け渡し位置P2まで搬送し、第2搬送装置122は、受け渡し位置P2にて第1搬送装置121から帯片付き端子90を受け取って、当該帯片付き端子90を目標位置P3まで搬送する。
【0039】
<圧着装置130>
圧着装置130は、目標位置P3において、ここに送出された帯片付き端子90の帯片921を端子91から切り落とすとともに、帯片921から切り離された端子91のバレル部911を金型で加締めることによって、当該バレル部911を電線の端部に圧着固定する。これによって、電線の端部に端子91が固定されて、端子付き電線が製造される。圧着装置130は、具体的には、例えば、帯片付き端子90から帯片921を裁断するためのカッター、圧着用の上金型、上金型と対向配置された圧着用の下金型、上金型と下金型とを近接離間させる方向に移動させる駆動機構、等を含んで構成される。
【0040】
<制御部140>
制御部140は、複数の端子送り装置110、端子搬送システム120、および、圧着装置130の各々と電気的に接続され、これら各部110,120,130を制御する。制御部140は、具体的には、例えば、各種演算処理を行うCPU、プログラム等を記憶するROM、演算処理の作業領域となるRAM、プログラムや各種のデータファイルなどを記憶するハードディスク、LAN等を介したデータ通信機能を有するデータ通信部等がバスラインなどにより互いに接続された、一般的なコンピュータにより構成される。また、制御部140は、各種表示を行うディスプレイ、キーボード及びマウスなどで構成される入力部等と接続されている。
【0041】
<4.端子送り装置110>
次に、端子送り装置110について説明する。
図4は、実施形態に係る端子送り装置110を示す説明図である。
【0042】
端子送り装置110は、ここでは、端子供給部50と端子送り機構部60とを備える。
【0043】
<端子供給部50>
端子供給部50は、リール支持部52と、端子ガイド機構部54と、ガイド付勢部材56とを備える。
【0044】
リール支持部52は、連続端子9が巻回された端子リールRを回転可能に支持するように設けられている。
【0045】
端子ガイド機構部54は、端子リールRに巻回された連続端子9が端子送り機構部60のステージ111に到達するまでの間の少なくとも一部を案内可能に設けられている。また、端子ガイド機構部54は、端子リールRからの連続端子9の供給方向に応じて、姿勢変更または回転可能に設けられている。具体的には、端子ガイド機構部54は、軸部54aと、アーム部54bとガイド部55とを含む。
【0046】
軸部54aは、回転可能に設けられている。アーム部54bは、軸部54aから延びるように形成されている。具体的には、ここでは、アーム部54bは、軸部54aから2方向に延び、一方のアーム部54cは作業台Sにつながるとともに、他方のアーム部54dはガイド部55がつながるように形成されている。そして、軸部54aにより、一方のアーム部54cと他方のアーム部54dとが相対回転可能に連結されている。
【0047】
ガイド部55は、他方のアーム部54dの先端に設けられている。ガイド部55はここでは、円柱状に形成され、その側面上を連続端子9が移動するように形成されている。つまり、ガイド部55は、連続端子9が端子リールRから端子送り機構部60に到達するまでの間で、連続端子9の供給経路を湾曲させることができる。
【0048】
ガイド付勢部材56は、端子ガイド機構部54を付勢可能に設けられている。具体的には、ガイド付勢部材56は、ここでは、他方のアーム部54dを上向きに付勢するように作業台Sに設けられている。
【0049】
そして、端子ガイド機構部54及びガイド付勢部材56は、連続端子9の巻き方によらず、連続端子9をステージ111に案内可能に設けられている。
【0050】
ここで、連続端子9の巻き方に応じて、端子リールRからステージ111に連続端子9が送られる様子について説明する。
図5は、連続端子9が
図4とは逆巻にされているときの端子送り装置110を示す説明図である。
【0051】
実施形態に係る端子送り装置110では、連続端子9は、電線Wに圧着される際に加締められるバレル部911が上向きになるように端子供給部50から端子送り機構部60に送られる。
図4では、連続端子9は、そのバレル部911(バレル部911の開口部)が外側を向くように端子リールRに巻かれている(以下、外巻という)。しかしながら、連続端子9によっては、
図5のように、バレル部911(バレル部911の開口部)が内側を向くように端子リールRに巻かれている場合もある(以下、内巻という)。この場合、
図4とは、連続端子9の供給方向が異なってしまう。端子ガイド機構部54とガイド付勢部材56とは、このように、連続端子9の巻き方が内巻か、外巻かにより、端子の供給方向が異なる場合でも、1つの端子送り装置110で対応可能とする部分である。
【0052】
具体的には、ここでは、端子リールRが、端子送り機構部60に近い位置で、端子送り機構部60よりも下方に配置される。この際に、供給経路上には、連続端子9が屈曲する位置(以下、屈曲位置という)が生じてしまう。なお、端子リールRの配置位置を端子送り機構部60の真下に近づけるほど、設備全体をコンパクトにすることができる。
【0053】
しかしながら、端子リールRを端子送り機構部60の真下に近づけるほど、端子リールRからの端子送り機構部60への供給経路上の屈曲位置における屈曲角度が小さくなる。また、本実施形態の場合は、外巻に比べて内巻の場合に、端子リールRからの端子送り機構部60への供給経路における屈曲角度が小さくなる。
【0054】
このように端子リールRからの端子送り機構部60への供給経路における屈曲角度が小さくなると、連続端子9が折れてしまう又は切れてしまう場合がある。端子ガイド機構部54とガイド付勢部材56とは、端子リールRからの端子送り機構部60への供給経路における屈曲角度を180度に近づける(水平に近づける)ことが可能となるように構成されている。
【0055】
即ち、端子ガイド機構部54が設けられなければ、端子リールRからの端子送り機構部60への供給経路上における屈曲位置は、連続端子9が作業台S(又はステージ111)上で水平にされる位置である。端子ガイド機構部54のガイド部55は、作業台Sの外周縁部から外側に向けて突出することにより、水平方向において屈曲位置に対して端子送り機構部60がある側とは反対側に設けられている。これにより、この屈曲位置における連続端子9の屈曲角度を大きくすることができる。つまり、端子ガイド機構部54が設けられることにより、水平方向において端子送り機構部60に対して屈曲位置よりも離れた位置で連続端子9をガイド部55上で滑らかに湾曲させることが可能となることによって、屈曲位置における屈曲角度を大きくすることができる。
【0056】
特に、
図5のように内巻の場合、ガイド部55が回転可能又は姿勢変更可能に設けられなければ、ガイド部55での湾曲の前後の連続端子9の送り方向を結ぶ角度が小さくなり過ぎてしまう恐れがある。しかしながら、ガイド部55が回転可能又は姿勢変更可能に設けられることで、湾曲の前後の連続端子9の送り方向を結ぶ角度が小さくなる場合、ガイド付勢部材56の付勢力に抗して、ガイド部55が軸部54aを中心に回転することによって、湾曲の前後の連続端子9の送り方向を結ぶ角度を大きくすることができる。
【0057】
なお、ここでは、ガイド部55が軸部54aを中心に回転する例で説明したが、アーム部54bがガイド付勢部材56と連結されている等により、ガイド部55が下に下がる等することによって姿勢変更可能であってもよい。
【0058】
<端子送り機構部60>
次に、端子送り機構部60について説明する。
図6は、端子送り機構部60を示す概略正面図である。
図7は、端子送り機構部60を示す概略底面図である。
図8は、端子送り機構部60を示す概略側面図である。
図9は、移動距離規制部70を示す正面図である。
図10は、移動距離規制部70を示す平面図である。
【0059】
端子送り機構部60は、ステージ111と、送り爪62と、爪移動機構部80と、移動距離規制部70とを備える。さらにここでは、爪付勢部材64と、支持機構部66を備える。端子送り機構部60は、作業台Sに設置されている。作業台Sには、孔Hが設けられ、この孔Hの内部を送り爪62が移動可能に設けられている。ここでは、孔Hの内周縁部のうち、送り爪62が戻る方向にある部分を第1位置T1、送り爪62が進む方向にある部分を第2位置T2とする。もっとも、第1位置T1と第2位置T2とは、上記した位置に限られない。第1位置T1と第2位置T2とは、後述する駆動機構が送り方向に沿って連結部を押圧可能な異なる2地点であれば、任意に設定可能な位置である。
【0060】
ステージ111は、連続端子9を載置可能に形成されている。具体的には、ステージ111は長尺の板状に形成され、ここでは、作業台S上に固定されている。また、ステージ111には、送り爪62の先端部が進入可能な孔が設けられている。
【0061】
支持機構部66は、爪移動機構部80を第1位置T1と第2位置T2との間で往復移動可能に支持する。支持機構部66は、直線移動ガイド部66aと、移動本体部66bとを備える。具体的には、直線移動ガイド部66aは、真っ直ぐな棒状に形成され、作業台Sの下部に固定されている。そして、移動本体部66bは、直線移動ガイド部66aに移動可能に支持され、直線移動ガイド部66aに沿って直線的に往復移動可能となっている。
【0062】
爪移動機構部80は、作業台Sの下部に設けられている。爪移動機構部80は、連結部82と、被押圧部84と、駆動機構86と、接触部88とを備える。具体的には、連結部82が支持機構部66の移動本体部66bに連結されており、移動本体部66bが直線移動ガイド部66aに沿って移動することにより、爪移動機構部80も第1位置T1と第2位置T2との間で直線的に往復移動可能となっている。
【0063】
被押圧部84は、駆動機構86と接触し、駆動機構86に押圧される部分である。被押圧部84は、ここでは、連結部82の下部の側面に設けられている。被押圧部84は、駆動機構86により送り方向に押圧される。これにより、連結部82と連結する移動本体部66bは、ガイド付勢部材56の付勢力に抗して、駆動機構86により送り方向に移動可能となる。また、駆動機構86による押圧が解除されると、爪付勢部材64の付勢力により、戻り方向に移動させられる。
【0064】
接触部88は、連結部82に設けられ、移動距離規制部70と接触可能に設けられている。接触部88は、送り方向に移動した際に移動距離規制部70と接触する送方向接触部88aと、戻り方向に移動した際に移動距離規制部70と接触する戻方向接触部88bとを含む。接触部88が移動距離規制部70と接触することにより、連結部82が停止し、送り爪62も停止する。
【0065】
駆動機構86は、送り爪62を移動させることができる。具体的には、駆動機構86は、エアシリンダ等のアクチュエータで構成され、連結部82の被押圧部84を一方方向(ここでは送り方向)に押圧可能に設けられている。
【0066】
駆動機構86は第1位置T1から第2位置T2に向かって爪移動機構部80の被押圧部84を押圧可能に設けられている。ここでは、第1位置T1が送り前の位置(戻り位置)、第2位置T2が送り後の位置(送り位置)に設定されている。これにより、ここでは、第1位置T1から第2位置T2に向かう方向が送り方向、第2位置T2から第1位置T1に向かう方向が戻り方向となっている。もっとも、第1位置T1が送り後の位置(送り位置)、第2位置T2が送り前の位置(戻り位置)に設定され、第1位置T1から第2位置T2に向かう方向が戻り方向、第2位置T2から第1位置T1に向かう方向が送り方向となってもよい。
【0067】
爪付勢部材64は、連結部82と、作業台Sとを連結し、連結部82を一方(ここでは戻り方向)に付勢する部材である。爪付勢部材64は、ここでは、第2位置T2から第1位置T1に向かって、連結部82を付勢可能に設けられている。また、爪付勢部材64は、ここでは、引張りコイルばね64a等で構成されているが、連結部82を一方に付勢可能であればよい。また、爪付勢部材64として、ここでは引張りコイルバネが2つ設けられているが、引張りコイルばね64aは1つでも、3つ以上でもよい。しかしながら、
図7のように、爪付勢部材64として用いられる引張りコイルばね64aが被押圧部84を挟むように対称に設けられることで、駆動機構86により押圧された際に、連結部82にモーメントが発生することを抑えることができる。
【0068】
なお、第2位置T2から第1位置T1に向けても駆動機構86が連結部82を押圧する等の構成を採用することにより、爪付勢部材64を省略することができる。
【0069】
送り爪62は、ステージ111上の連続端子9を端子91ひとつ分ずつ送出することができる。具体的には、送り爪62は、ここでは、連結部82に連結されている。また、送り爪62は、送り方向とこれと逆向きの戻り方向とに往復移動可能に設けられている。そして、送り方向に移動する際に、その先端部をステージ111上の連続端子の送り孔93に引っ掛けて、連続端子9を送り方向に送出することができる。
【0070】
より具体的には、送り爪62は、連結部82からステージ111側に突出するように設けられている。また、送り爪62は、先端に行くほど細くなるように形成されている。送り爪62の基端部は、作業台Sに設けられた孔Hの内側に位置するように設けられ、移動本体部66bに連結された連結部82の移動に伴い、作業台Sの孔Hの内部を直線的に往復移動する。送り爪62の中間部は、ステージ111に設けられた孔の内側に位置するように設けられ、移動本体部66bに連結された連結部82の移動に伴い、ステージ111の孔の内部を移動する。送り爪62の先端部は、ステージ111から突出するように形成され、ステージ111上に載置される連続端子9の送り孔93に進入可能に設けられている。送り爪62の先端部は、連結部82が駆動機構86により送り方向に移動させられる際に連続端子9の送り孔93に引っ掛かり、連続端子9を送り方向に移動可能である。
【0071】
移動距離規制部70は、送り爪62の移動距離を規制することができる。ここでは、移動距離規制部70は、ステージ111等とは別体で形成され、ねじ等で着脱可能に設けられている。これにより、移動距離規制部70を取り外すことができ、送り爪62の移動距離を変更することができる。
【0072】
即ち、移動距離規制部70は、送り爪62の移動距離を規制することができるとともに、着脱可能に設けられている。これにより、取り外された移動距離規制部70の規制距離を調整する又は取り外された移動距離規制部70を規制距離の異なるものと交換することができる。これにより、爪移動機構部80による送り爪62の移動距離を変更可能である。
【0073】
具体的には、移動距離規制部70は、本体部72と本体部72から突出する一対の突出部74とを備える。さらにここでは、それぞれの突出部74に被接触部76が設けられている。
【0074】
本体部72は、ここでは、ねじ71等によりステージ111に着脱可能に設けられている。また、ここでは、本体部72は、ステージ111上の連続端子9の位置が水平方向にずれないように規制する、水平方向ガイド部73を含む。水平方向ガイド部73は、薄板状に形成され、本体部72から側方に突出すると共に先端部がステージ111に向かって屈曲している。そして、水平方向ガイド部73の先端部が連続端子9のバレル部911の溝に嵌まりこむ。これにより、ステージ111上の連続端子9が、水平方向に位置ずれしにくくなる。
【0075】
一対の突出部74は、ここでは、本体部72と着脱可能に設けられている。そして、一対の突出部74を本体部72に取り付ける位置は選択可能となっている。具体的には、ここでは、突出部74と本体部72とは、ねじ71a等により連結されている。本体部72には、ねじ71aに対応するねじ孔71bが複数(ここでは、それぞれの突出部74に対して5つずつ)設けられている。複数のねじ孔71bのうちの1つを選択することにより、本体部72に対して突出部74を設ける位置を選択可能となっている。そして、突出部74を異なるねじ孔71bの位置で本体部72に取り付けることで、一対の突出部74の間隔を変更可能となっている。
【0076】
ここでは、一対の突出部74それぞれに対するねじ孔71bの間隔は同じになるように設定されているが、このことは、必須ではない。一方の突出部と他方の突出部とでねじ孔の間隔を異ならせてもよい。これにより、一対の突出部の間隔をより多くの値から選択可能となる。
【0077】
また、それぞれの突出部74の先端には、被接触部76が設けられている。被接触部76は、送り爪62が第1位置T1から第2位置T2に向けて移動する途中、及び、第2位置T2から第1位置T1へ向けて移動する途中の少なくとも一方で、送り爪62の移動を規制することができる。
【0078】
具体的には、移動距離規制部70が作業台Sに固定されたステージ111に固定されるとともに、連結部82が作業台Sに固定された直線移動ガイド部66aに沿って動く移動本体部66bと連結された状態で、この被接触部76が連結部82の接触部88と接触可能となるように設けられている。つまり、突出部74は、本体部72からステージ111の側方に突出し、作業台Sの孔Hを通り、作業台Sの下方まで突出し、その先端側に被接触部76が設けられている。
【0079】
被接触部76として、ここでは、調整ねじ76aが設けられている。この調整ねじ76aを緩める又は締めることによって、突出部74から調整ねじ76aの先端部までの高さを調整できる。これにより、一対の被接触部76(調整ねじ76a)の間隔を調整することができる。
【0080】
そして、それぞれの突出部74の位置及びそれぞれの調整ねじ76aの締め具合を調整することにより、被接触部76の間隔(
図9のI3)を調整可能である。そして、一対の調整ねじ76aの一方と一対の接触部88の一方が接触している状態で、他方の調整ねじ76aと他方の接触部88の間隔(
図6のI1)が連結部82の移動可能な距離I1となる。換言すると、被接触部76の間隔I3から、一対の接触部88の間隔を引いたものが連結部82の移動可能な距離I1となる。また、この連結部82の移動可能な距離I1が送り爪62の移動距離I1となる。
【0081】
この連結部82の移動可能な距離I1を、連続端子9の送り孔93の間隔(連続端子9の間隔、
図6のI2)に合わせることで、端子送り機構部60により、連続端子9を端子一つ分だけ正確に送ることができる。ここでは、一対の接触部88間の距離は固定されているため、被接触部76の間隔(
図9のI3)を調整することにより、連結部82の移動可能な距離(
図6のI1)を調整することができる。
【0082】
もっとも、一対の接触部88間の距離も調整可能であってもよいが、一対の接触部88間の距離は固定されている方が、連結部82の移動可能な距離I1の調整が容易となる。
【0083】
連続端子9の種類に応じて、移動距離規制部70の被接触部76の間隔を調整するには、移動距離規制部70を交換する方法と、取り外した移動距離規制部を調整する方法との2つの方法がある。
【0084】
即ち、移動距離規制部70を交換する場合、連続端子9の種類に応じて、被接触部76の間隔の異なる複数の移動距離規制部70をあらかじめ用意しておき、連続端子9を交換する際に移動距離規制部70も交換後の連続端子9に合ったものと交換する。この場合、移動距離規制部70を調整する時間等を抑えることができる。
【0085】
また、取り外した移動距離規制部を調整する場合、連続端子9の交換の際に、取り外した移動距離規制部70の突出部74の位置及び調整ねじ76aの高さを調整して、調整後再び取り付ける。この場合、移動距離規制部70の部材費等を抑えることができる。
【0086】
なお、着脱可能な突出部74は一対ではなく一つだけであってもよい。同様に調整ねじ76aも一対ではなく一つだけであってもよい。この場合でも、突出部の位置及び調整ねじの高さのうち少なくとも一方を調整することにより、被接触部の間隔I3を調整することができる。
【0087】
また、一対の突出部74が本体部72と着脱可能であること及び調整ねじ76aが設けられることにより、移動距離規制部70の規制可能な距離を調整できることは必須ではない。つまり、1つの移動距離規制部70の規制可能な距離が1つだけであってもよい。この場合は、異なる規制距離を持つ複数の移動距離規制部70をあらかじめ用意することにより、送り爪62の移動距離を連続端子9の送り孔93の間隔に合わせることができる。
【0088】
<動作>
次に、送り爪62が移動する際に移動距離規制部70が規制する動作を説明する。
図11及び
図12は、端子送り機構部60の一部を示す説明図である。
図11は、送り方向において、連結部82と、移動距離規制部70とが接触している図である。
図12は、戻り方向において、連結部82と、移動距離規制部70とが接触している図である。
【0089】
送り爪62のつながる連結部82は、駆動機構86に押圧されることにより、爪付勢部材64の付勢力に抗して、送り方向に移動する。送り方向に移動させられた連結部82は、その送方向接触部88aが、
図11のように、送り方向に位置する突出部74の被接触部76と接触することにより、停止する。
【0090】
先端部が連続端子9の送り孔93に引っ掛かっている送り爪62が、連結部82と同時に移動することにより、連続端子9が、連結部82の移動分だけ送り方向に移動させられる。ここで、連結部82の移動分を連続端子9の送り孔93の間隔にあらかじめ合わせた移動距離規制部70を取り付けることで、連続端子9が、端子一つ分だけ正確に移動することができる。
【0091】
なお、ここでは、駆動機構86が送り爪62を押し、送り爪62が移動距離規制部70と接触して止まった場合、駆動機構86による負荷が大きくなり過ぎると駆動機構86を止めるように制御部140から指令が出される。
【0092】
連結部82が送り方向に移動して停止したのち、駆動機構86による押圧が解除されると、連結部82は、ガイド付勢部材56の付勢力により戻り方向に移動させられる。そして、戻り方向に移動させられた連結部82は、戻方向接触部88bが戻り方向に位置する突出部74の被接触部76と接触することにより、停止する。この間にエアシリンダ等の駆動機構86も再び連結部82を押圧可能な状態に戻る。そして、送り方向に向かって駆動機構86が再び連結部82を押圧し始める。
【0093】
以降、これを繰り返すことにより、連続端子9を端子一つ分だけ正確に送る動作を繰り返すことができる。
【0094】
<送り爪62の移動距離I1の調整>
次に、送り爪62の移動距離I1を調整する動作について説明する。
【0095】
図13は、端子送り機構部60の一部を示す説明図である。
図13は、被接触部76の間隔I3aが、
図11の被接触部76の間隔I3と異なるように突出部74の位置が変更されている。
【0096】
具体的には、移動距離規制部70を取り外した状態で、少なくとも一方の突出部74が
図11の状態よりも内側でねじ止めされるように突出部74の位置を変更する。これにより、被接触部76の間隔I3aが、
図11の状態よりも小さくなっている。これにより、送り爪62の移動距離I1aも
図11の状態よりも小さくなっている。
【0097】
被接触部76の間隔I3を大きくするには、移動距離規制部70を取り外した状態で、少なくとも一方の突出部74がより外側でねじ止めされるように突出部74の位置を変更する。これにより、被接触部76の間隔I3を大きくすることができる。これにより、送り爪62の移動距離I1も大きくすることができる。
【0098】
なお、被接触部76の間隔I3を変更する場合、調整ねじ76aの調整と突出部74の位置の変更とのうちどちらか一方だけでも行ってもよいし、両方行ってもよい。また、調整ねじ76aの調整を行う場合はどちらか一方の調整ねじ76aだけを調整してもよい。同様に突出部74の間隔を変更する場合、どちらか一方の突出部74の位置だけを変更してもよい。
【0099】
調整ねじ76aの調整と、突出部74の間隔の変更とのうち少なくとも一方を行うことにより、被接触部76の間隔I3を変更することができる。これにより、連続端子9の種類が変更され、送り孔93の間隔I2が変わった場合に、送り爪62の移動距離I1を送り孔93の間隔I2に合わせることができる。
【0100】
<効果>
実施形態に係る端子送り装置110によると、移動距離規制部70が着脱可能に設けられ、移動距離規制部70の規制距離を調整する又は移動距離規制部70を規制距離の異なるものと交換することにより、爪移動機構部80による送り爪62の移動距離を変更可能であるため、複数種類の端子に柔軟に対応することができる。
【0101】
また、端子リールRに巻回された連続端子9がステージ111に到達するまでの間の少なくとも一部を案内可能に設けられた端子ガイド機構部54と、端子ガイド機構部54を付勢可能なガイド付勢部材56とを備えるため、連続端子9が端子リールRにどちらの巻き方で巻かれていても対応可能となる。これにより、複数種類の端子に柔軟に対応することができる。
【0102】
以上のようにこの発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。