特許第6003906号(P6003906)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6003906-光学用光硬化性シート型接着剤組成物 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6003906
(24)【登録日】2016年9月16日
(45)【発行日】2016年10月5日
(54)【発明の名称】光学用光硬化性シート型接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/00 20060101AFI20160923BHJP
   C09J 175/14 20060101ALI20160923BHJP
   C09J 171/12 20060101ALI20160923BHJP
   C09J 4/02 20060101ALI20160923BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20160923BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20160923BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20160923BHJP
【FI】
   C09J7/00
   C09J175/14
   C09J171/12
   C09J4/02
   C09J11/06
   C08F290/06
   G09F9/00 342
【請求項の数】4
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-558727(P2013-558727)
(86)(22)【出願日】2013年2月14日
(86)【国際出願番号】JP2013053533
(87)【国際公開番号】WO2013122144
(87)【国際公開日】20130822
【審査請求日】2015年11月11日
(31)【優先権主張番号】特願2012-33441(P2012-33441)
(32)【優先日】2012年2月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000132404
【氏名又は名称】株式会社スリーボンド
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】古賀 敬朗
(72)【発明者】
【氏名】荒井 佳英
(72)【発明者】
【氏名】根本 崇
【審査官】 佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−1739(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/038366(WO,A1)
【文献】 特開2001−163931(JP,A)
【文献】 特開2009−155503(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/115224(WO,A1)
【文献】 特開2013−18871(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/079584(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
C08F 290/06
G09F 9/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)〜(D)成分:
(A)重量平均分子量が20,000〜100,000であるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー100質量部、
(B)ガラス転移点が50〜120℃であるフェノキシ樹脂3〜70質量部、
(C)光重合開始剤0.1〜10質量部、および、
(D)エーテル結合を有する繰り返しブロック数を1分子中に8〜30有し、且つ1分子中に1以上の(メタ)アクリロイル基を含有する(メタ)アクリレートモノマー1〜50質量部、
を含有する光学用光硬化型シート状接着剤。
【請求項2】
前記(D)成分が、少なくともエーテル結合の繰り返しブロック数を1分子中に8〜25有する請求項1に記載の光学用光硬化型シート状接着剤。
【請求項3】
前記(A)成分が、ポリカーボネート骨格、ポリブタジエン骨格、水添ポリブタジエン骨格からなる群から選択される構造を1つ以上有する化合物である請求項1又は請求項2に記載の光学用光硬化型シート状接着剤。
【請求項4】
表示モジュールとカバーパネルとの間、カバーパネルとタッチパネルとの間、および、タッチパネルと表示モジュールとの間、の少なくともいずれかが、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学用光硬化型シート状接着剤で接着されてなる画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示モジュールとカバーパネル、タッチパネルと表示モジュール、カバーパネルとタッチパネル等の接着に用いられ、高温高湿下において高い外観信頼性を有する光学用光硬化性シート型接着剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどの画像表示装置において、表示モジュールとカバーパネルとの間に空間が設けられているが、カバーパネルと表示モジュールの間に生じた空気層により、屈折率の違いによる光の散乱が生じて、照度やコントラストの低下を招いていた。そこで該カバーパネルと表示モジュールとの間に液状の紫外線硬化性樹脂を充填することにより、これらの問題の対策がなされていた。また、同様の理由でカバーガラスとタッチパネルの間、タッチパネルと表示モジュールの間についても紫外線硬化性樹脂が用いられている。
【0003】
下記特許文献1には、ポリウレタンアクリレート、イソボルニルアクリレート及び光重合開始剤を含有する液状の紫外線硬化性組成物が開示されている。しかし、このような液状の紫外線硬化性樹脂で接着する方法では、貼り合わせの際に気泡が混入し、また端部から樹脂がはみ出すという問題が避けられなかった。
【0004】
カバーパネルと表示モジュールとを接着する方法において、気泡混入やはみ出しが生じないものとして光硬化性シート状接着剤が検討されている。特許文献2には、光硬化性シート状接着剤として特定分子量のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、フェノキシ樹脂、光重合開始剤を含有する光硬化性接着剤組成物が開示されている。しかしながら、表示モジュールは多種多様な機器に使用されるようになってきており、その使用環境も次第に苛酷になってきているという背景から、特許文献2に開示された組成物でカバーパネルと表示モジュールの間を封止したものを様々な条件で使用してみると、高温高湿度下に置いた場合に、接着層に白濁が生じ、透明性が損なわれることがわかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−271489号公報
【特許文献2】特開2010−090204号公報
【発明の概要】
【0006】
上記特許文献2に記載の従来技術において、高温高湿下での白濁化を改善しようとしても、従来は保存安定性が低下する傾向があった。本発明では、このような問題をも併せて解決するためになされたものである。すなわち、本発明は、表示モジュールとカバーパネル、タッチパネルと表示モジュール又はカバーパネルとタッチパネル等の接着に用いられ、高温高湿下においても、白濁が生じず、高い外観信頼性を有し、及び保存安定性に優れた光学用光硬化性シート型接着剤組成物を提供するものである。
【0007】
本発明の要旨を次に説明する。本発明の実施態様は、本発明は上述した従来の問題点を克服するものである。すなわち、本発明は以下の要旨を有するものである。
【0008】
(A)〜(D)成分を含有することを特徴とする光学用光硬化型シート状接着剤:
(A)重量平均分子量が20,000〜100,000であるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー100質量部、(B)ガラス転移点が50〜120℃であるフェノキシ樹脂3〜70質量部、(C)光重合開始剤0.1〜10質量部、および(D)エーテル結合を有する繰り返しブロック数が1分子中に8〜30有し、且つ1分子中に1以上の(メタ)アクリロイル基を含有する(メタ)アクリレートモノマー1〜50質量部。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の光学用光硬化性シート型接着剤組成物を用いた、画像表示装置の構成を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、透明性に優れ、柔軟な硬化物であることから、表示モジュールとカバーパネル、タッチパネルと表示モジュール、カバーパネルとタッチパネル等の接着に好適に用いられる。さらに、高温高湿下においても白濁が抑制されることから高い外観信頼性、及び保存安定性に優れるという効果を有した光学用光硬化性シート型接着剤組成物である。
【0011】
以下に発明の詳細を説明する。
【0012】
[(A)成分]
本発明において使用する(A)成分であるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーに特に制限はないが、好ましくは、分子内に2個以上の水酸基を有するポリオール化合物と分子内に2個以上のイソシアネート基を有する化合物と少なくとも分子中に1個以上の水酸基を含有する(メタ)アクリレートとの反応生成物から成るウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーである。また、(A)成分の重量平均分子量は、好ましくは、20,000〜100,000であり、更に好ましくは2,5000〜90,000であり、特に好ましくは、30,000〜80,000である。重量平均分子量が100,000を上回ると、表示モジュールやパネル等の被着体との貼りあわせ時に界面でのなじみが悪く、高温高湿環境下で接着層が白濁するおそれがある。重量平均分子量が20,000を下回ると、未硬化組成物の常温での固体状態の維持が困難となるおそれがある。尚、本明細書において、重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量をいう。
【0013】
分子内に2個以上の水酸基を有するポリオール化合物としては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、カプロラクトンジオール、ビスフェノールポリオール、ポリイソプレンポリオール、水添ポリイソプレンポリオール、ポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール、ひまし油ポリオール、ポリカーボネートジオール等が挙げられる。中でも、透明性に優れ、耐久性に優れることから、ポリカーボネートジオール、ポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオールが好ましく、特に好ましくは、高温高湿度下に置いた場合に接着層に白濁が生じない硬化物が得られるという観点からポリカーボネートジオールが挙げられる。これらは単独で使用してもよく、複数を組み合わせて使用してもよい。また、ポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオールは、そのメカニズムは不明であるが、本発明者らにより、ポリカーボネートジオールと同様の効果が得られることが確認されている。すなわち、好ましい実施形態としては、前記(A)成分が、ポリカーボネート骨格、ポリブタジエン骨格、水添ポリブタジエン骨格からなる群から選択される構造を1つ以上有する化合物である光学用光硬化型シート状接着剤である。
【0014】
分子内に2個以上のイソシアネート基を有する化合物としては、例えば芳香族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネートなどが挙げられ、中でも柔軟性のある硬化物が得られるという観点で、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネートが好ましい。これらは単独で使用してもよく、複数を組み合わせて使用してもよい。
【0015】
芳香族ポリイソシアネートとしては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジソシアナート、トリフェニルメタントリイソシアネートなどが挙げられ、脂環式ポリイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート、ビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ノルボルナンジイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート等が挙げられ、脂肪族ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、1,6,11−ウンデカトリイソシアネート等が挙げられる。中でも、高温高湿度下に置いた場合に接着層に白濁が生じない硬化物が得られることから、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等のジイソシアネートが好ましい。
【0016】
少なくとも分子中に1個以上の水酸基を含有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ポリエチレングリコール等の二価のアルコールのモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン等の三価のアルコールのモノ(メタ)アクリレート又はジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも柔軟性に優れる硬化物が得られるという観点から、二価のアルコールのモノ(メタ)アクリレートが好ましく、より好ましくはエチレングリコールのモノ(メタ)アクリレートである。が好ましくい。これらは単独で使用してもよく、複数を組み合わせて使用してもよい。
【0017】
(A)成分ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの合成方法は特に限定されるものではなく、公知の方法を使用することができる。例えば、分子内に2個以上の水酸基を有するポリオール化合物と、分子内に2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物とを、モル比(ポリオール化合物:イソシアネート化合物)で好ましくは3:1〜1:3であり、更に好ましくは2:1〜1:2の割合で、希釈剤(例えば、メチルエチルケトン、メトキシフェノール等)中で反応させてウレタンプレポリマーを得る。次いで、更に、得られたウレタンプレポリマー中に残存するイソシアネート基と、これと反応するのに十分な量の少なくとも分子中に1個以上の水酸基を含有する(メタ)アクリレートとを反応させて、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを合成する方法が挙げられる。
【0018】
また、合成時に用いる触媒としては、例えば、オレイン酸鉛、テトラブチルスズ、三塩化アンチモン、トリフェニルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、ジブチル錫ジラウレート、ナフテン酸銅、ナフテン酸亜鉛、オクチル酸亜鉛、オクテン酸亜鉛、ナフテン酸ジルコニウム、ナフテン酸コバルト、テトラ−n−ブチル−1,3−ジアセチルオキシジスタノキサン、トリエチルアミン、1,4−ジアザ[2,2,2]ビシクロオクタン、N−エチルモルホリンなどを挙げることができ、中でも活性が高く、透明性に優れる硬化物が得られることから、ジブチル錫ジラウレート、ナフテン酸亜鉛、オクチル酸亜鉛、オクテン酸亜鉛が好ましく用いられる。これらの触媒を、反応物の総量100質量部に対して0.0001〜10質量部用いるのが好ましい。また、反応温度は、通常10〜100℃、特に30〜90℃で行うのが好ましい。
【0019】
[(B)成分]
本発明に用いられる(B)成分であるフェノキシ樹脂は、例えばエピクロルヒドリンとビスフェノール等から誘導される化合物である。常温で組成物を固体状態に保つための成膜補助を目的として使用される。(B)成分フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノール型フェノキシ樹脂、ノボラック型フェノキシ樹脂、ナフタレン型フェノキシ樹脂、ビフェニル型フェノキシ樹脂等が挙げられる。これらは、単独で使用してもよく、複数を組み合わせて使用してもよい。フェノキシ樹脂としては、保護パネルのガラスやプラスチックとの密着性が良好であるという観点から、特に、ビスフェノール型フェノキシ樹脂が好ましい。中でも本発明の(A)成分と相溶性がよく、柔軟性を有した硬化物が得られるという観点から、ビスフェノールAおよびビスフェノールFの共重合フェノキシ樹脂が好ましい。これらは単独で使用してもよく、複数を組み合わせて使用してもよい。
【0020】
また、表示装置等への貼り付け性と圧着時の被着体とのなじみを向上させるためには熱プレス時にシート状接着剤が軟化することが好ましく、このため、フェノキシ樹脂はガラス転移点が50〜120℃の範囲が好ましく、より好ましくは60〜90℃の範囲が挙げられる。ガラス転移点が50℃に満たない場合は、ベタつきが大きく、フィルムとしてのハンドリング性が低下するおそれがあり、ガラス転移点が120℃よりも高いと表示モジュールやパネル等の被着体との貼りあわせ時に界面でのなじみが悪く、高温高湿環境下で接着層が白濁するおそれがある。
【0021】
(B)成分のフェノキシ樹脂としては市販品を使用することができる。市販品としては、例えば、フェノトートYP−50、フェノトートYP−50S、フェノトートYP−55、フェノトートYP−70、ZX−1356−2、FX−316(新日鐵化学社製)、JER1256 、JER4250又はJER4275(三菱化学株式会社製)、PKHB、PKHC、PKHH、PKHJ、PKFE(Inchem社製)等が挙げられる。
【0022】
本発明における(B)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して、3〜70質量部が好ましく、より好ましくは5〜60質量部であり、特に好ましくは、15〜50質量部である。70質量部を超えると、シート状接着剤が加熱により流動し難くなり、3質量部未満では、未硬化性組成物が常温で固体状態を保つことが困難となりかつ著しくベトつきが強くなることから、組成物のハンドリング性が悪くなる。
【0023】
[(C)成分]
本発明に用いられる(C)成分である光ラジカル重合開始剤は、紫外線等の活性エネルギー線を照射することにより、ラジカルが発生する化合物である。(C)成分としては、例えば、アセトフェノン系光ラジカル重合開始剤、ベンゾイン系光ラジカル重合開始剤、ベンゾフェノン系光ラジカル重合開始剤、チオキサントン系光ラジカル重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光ラジカル重合開始剤等が挙げられ、この中でもポリカーボネート等のカバーパネル越しの光照射でも充分に光硬化可能であり、高温高湿下においても白濁が抑制された硬化性組成物が得られるという観点から、アシルホスフィンオキサイド光ラジカル重合開始剤が好ましい。またこれらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0024】
アセトフェノン系光ラジカル重合開始剤としては、例えばジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノンオリゴマー等が挙げられるが、この限りではない。
【0025】
ベンゾイン系光ラジカル重合開始剤としては、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等が挙げられるが、この限りではない。
【0026】
ベンゾフェノン系光ラジカル重合開始剤としては、例えばベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4′−メチル−ジフェニルサルファイド、3,3′,4,4′−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−N,N−ジメチル−N−[2−(1−オキソ−2−プロペニルオキシ)エチル]ベンゼンメタナミニウムブロミド、(4−ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリドが挙げられるが、この限りではない。
【0027】
チオキサントン系光ラジカル重合開始剤としては、例えば2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−(3−ジメチルアミノ−2−ヒドロキシ)−3,4−ジメチル−9H−チオキサントン−9−オンメソクロリド等が挙げられるが、この限りではない。
【0028】
アシルホスフィンオキサイド系光ラジカル重合開始剤としては、アシルホスフィンオキシド系光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ビス(2,4,6 −トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド等が挙げられるが、この限りではない。
【0029】
本発明における(C)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましく、より好ましくは、0.3〜5質量部である。10質量部を超えると、硬化物の透明性が損なわれるおそれがあり、0.1質量部未満では、組成物の光硬化性が低下してしまうおそれがある。
【0030】
[(D)成分]
本発明に用いられる(D)成分は、エーテル結合及び(メタ)アクリロイル基を含有する(メタ)アクリレートモノマーである。好ましい実施形態は、(D)成分が、少なくともエーテル結合の繰り返しブロック数を1分子中に8〜25有する、上記の光学用光硬化型シート状接着剤である。また、(D)成分は、高温高湿度下に置いた場合に生じる接着層の白濁を抑制できるという観点で、エーテル結合を有する繰り返しブロック数を1分子中に8〜30有することが好ましく、エーテル結合を有する繰り返しブロック数を1分子中に9〜27または8〜25有することがより好ましく、さらに好ましくはエーテル結合を有する繰り返しブロック数を1分子中に10〜25有する(メタ)アクリレートモノマーである。エーテル結合の繰り返しブロック数が8に満たない(メタ)アクリレートモノマーを用いると、高温高湿度下に置いた場合に接着層に白濁が生じ、透明性が損なわれてしまうおそれがある。またエーテル結合の繰り返しブロック数が30を上回ると、当該化合物が結晶化してしまい硬化物が白濁してしまうおそれがある。また、(D)成分は、本発明の(A)成分と反応することで、高温高湿環境化で溶出することがなくなるという観点で1分子中に1以上の(メタ)アクリロイル基を含有する(メタ)アクリレートモノマーであることが好ましい。(メタ)アクリロイル基を含有しない(メタ)アクリレートモノマーを用いた場合、高温高湿度下に置いた場合の接着層が白濁してしまうおそれがある。これらは単独で使用してもよく、複数を組み合わせて使用してもよい。
【0031】
本発明の(D)成分のエーテル結合の構造単位の繰り返し数が8〜30である(メタ)アクリロイル基含有(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリオキシテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリオキシテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。本発明の(D)成分の分子量は、200〜5,000の範囲が好ましく、より好ましくは、250〜3,000である。分子量が200〜5,000の範囲から外れると、高温高湿度下に置いた場合の接着層が白濁してしまうおそれがある。また、市販品としては、例えば、M−90G、AM−130G、M−90G、M−230G、A−400、A−600、APG−700、A−1000、9G、14G、23G、1206PE(新中村化学社製)、PDE−600、PDP−700、ADE−600、(日油社製)、ライトエステル130MA、ライトエステル130MA、ライトエステル130A、14EG、14EG−A(協栄社製)等が挙げられるが、この限りではない。
【0032】
本発明における(D)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して、1〜50質量部が好ましく、より好ましくは、2〜30質量部であり、特に好ましくは、2.5〜20質量部である。50質量部を超えると、硬化物の柔軟性が損なわれることから、衝撃吸収性が低下してしまうおそれがある。さらに、高温高湿度下に置いた場合に接着層が白濁するおそれもある。配合量が1質量部未満では、高温高湿度下に置いた場合に接着層が白濁するおそれがある。
【0033】
本発明に対し、本発明の目的を損なわない範囲で、(A)成分、(D)成分以外のエチレン性不飽和化合物、シランカップリング剤、アクリルゴム、ウレタンゴム、スチレン系共重合体等の各種エラストマー、充填材、保存安定剤、酸化防止剤、光安定剤、接着助剤、可塑剤、染料、顔料、難燃剤、増感剤、熱ラジカル開始剤、有機溶剤、重金属不活性剤、イオントラップ剤、乳化剤、水分散安定剤、消泡剤、離型剤、レベリング剤、ワックス、レオロジーコントロール剤、界面活性剤等の添加剤を適量配合しても良い。
【0034】
本発明に対し、(A)成分、(D)成分以外のエチレン性不飽和化合物としては、例えば、(メタ)アクリロイル基を有する単官能性、二官能性、三官能性及び多官能性のモノマー、オリゴマー等を使用することができる。これらは単独で若しくは二種以上の混合物として用いることができる。
【0035】
単官能性モノマーとしては、例えば、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、変性ブチル(メタ)アクリレート、エピクロロヒドリン変性フェノキシ(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モルホリノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0036】
二官能性モノマーとしては、例えば、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エピクロロヒドリン変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルジアクリレート、ジ(メタ)アクリロイルイソシアヌレート等が挙げられる。
【0037】
三官能性モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エピクロロヒドリン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エピクロロヒドリン変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。
【0038】
多官能性モノマーとしては、例えば、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの重合性モノマーは単独で若しくは二種以上の混合物として用いることができる。
【0039】
さらに本発明の光硬化性シート型接着剤組成物には、表示パネルやカバーパネル又はタッチパネルとの密着性を向上させる目的で、シランカップリング剤を配合してもよい。シランカップリング剤としては、例えば、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等のグリシジル基含有シランカップリング剤、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のビニル基含有シランカップリング剤、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリル基含有シランカップリング剤、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤、その他γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらの中でもより密着性の向上が期待できるという観点で、グリシジル基含有シランカップリング剤、(メタ)アクリル基含有シランカップリング剤が好ましく用いられる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0040】
本発明に対し、硬化物の弾性率、流動性などの改良を目的として、保存安定性を阻害しない程度の充填材を添加してもよい。具体的には有機質粉体、無機質粉体、金属質粉体等が挙げられる。
【0041】
無機質粉体の充填材としては、ガラス、フュームドシリカ、アルミナ、マイカ、セラミックス、シリコーンゴム粉体、炭酸カルシウム、窒化アルミ、カーボン粉、カオリンクレー、乾燥粘土鉱物、乾燥珪藻土等が挙げられる。無機質粉体の配合量は、(A)成分100重量部に対し、0.1〜100重量部程度が好ましい。
【0042】
フュームドシリカ系充填材は、硬化物の機械的強度を向上させる目的で配合される。好ましくは、オルガノクロロシラン類、ポリオルガノシロキサン、ヘキサメチルジシラザンなどで疎水化処理したものなどが用いられる。フュームドシリカの具体例としては、例えば、日本アエロジル製の商品名アエロジルR974、R972、R972V、R972CF、R805、R812、R812S、R816、R8200、RY200、RX200、RY200S、R202等の市販品が挙げられる。
【0043】
上記の任意成分のうち、酸化防止剤及び光安定剤の添加は、光硬化性シート型接着剤組成物の貯蔵安定性向上及び硬化性組成物の耐候性向上のために好ましい。酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、有機イオウ系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、ベンゾトリアゾール系酸化防止剤を用いることができる。光安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤、ベンゾエート系光安定剤を用いることができる。さらに、酸化防止剤及び光安定剤としては以下の市販品を使用することができる。例えば、スミライザーBHT、スミライザーS、スミライザーBP−76、スミライザーMDP−S、スミライザーGM、スミライザーBBM−S、スミライザーWX−R、スミライザーNW、スミライザーBP−179、スミライザーBP−101、スミライザーGA−80、スミライザーTNP、スミライザーTPP−R、スミライザーP−16(住友化学株式会社製)、アデカスタブAO−20、アデカスタブAO−30、アデカスタブAO−40、アデカスタブAO−50、アデカスタブAO−60、アデカスタブAO−70、アデカスタブAO−80、アデカスタブAO−330、アデカスタブPEP−4C、アデカスタブPEP−8、アデカスタブPEP−24G、アデカスタブPEP−36、アデカスタブHP−10、アデカスタブ2112、アデカスタブ260、アデカスタブ522A、アデカスタブ329K、アデカスタブ1500、アデカスタブC、アデカスタブ135A、アデカスタブ3010(旭電化工業株式会社製)、チヌビン770、チヌビン765、チヌビン144、チヌビン622、チヌビン111、チヌビン123、チヌビン292(チバスペシャリティケミカルズ株式会社製)等が挙げられる。これらの酸化防止剤及び光安定剤の配合量は特に限定されないが、(A)成分100質量部に対して、好ましくは0.001〜5質量部、より好ましくは0.01〜3質量部である。
【0044】
本発明の光硬化性接着剤組成物をシート又はフィルム状に加工する方法としては、公知の技術を使用することができる。例えば、本発明の組成物を、溶剤で希釈して液状の塗液を調製し、次いで、該塗液を、予め離型処理が施されたポリエチレンテレフタレートフィルム等の支持体上にフローコート法、ロールコート法、グラビアロール法、ワイヤバー法、リップダイコート法等により塗工し、次いで、溶剤を乾燥することにより、任意の膜厚を有するシート又はフィルム状の組成物を得ることが出来る。塗液の調製に際しては、各成分の配合後に溶剤で希釈することもできるし、又は各成分の配合前に予め溶剤で希釈しておくこともできる。
【0045】
本発明で使用可能な使用溶剤とは、例えばメタノール、エタノール等のアルコール類、ジクロロエタン、トリクロロエタン等の塩素系溶剤、トリクロロフルオロエタン等のフッ素系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等の酢酸エステル系溶剤、ジメチルエーテル、メチルエチルエーテル、ジエチルエーテル類、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等のアルカン系溶剤、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素系溶剤などが挙げられる。中でも本発明の(A)成分及び(B)成分及び(D)成分と相溶性が高いことから、ケトン系溶剤が好ましい。
【0046】
接着剤層の厚さは、好ましくは、1〜500μm程度であり、より好ましくは、5〜400μmであり、さらに好ましくは10〜200μmである。また、接着剤剤層の厚さが1μmより薄いと、カバーパネルと表示モジュールの間の貼りあわせに本発明を用いた場合に充分な耐衝撃性のある表示装置ではなくなるおそれがある。500μmより厚いと、透明性を失うおそれがある。
【0047】
離型フィルムの材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルフィルムなどのプラスチックフィルム、紙、布、不織布などをあげることができるが、離型性の観点からプラスチックフィルムが好ましい。前記離型フィルムの厚みは、好ましくは5〜300μm、より好ましくは25〜200μm程度である。前記離型フィルムには、前記接着剤層からの剥離性を高められるという観点より、フッ素系化合物、シリコーン系化合物、長鎖アルキル系化合物などによる離型処理したものが好ましい。
【0048】
次に、表示モジュールとカバーパネルとの間に本発明の光学用光硬化型シート状接着剤を用いた貼りあわせ方法について説明する。貼り合わせ方法は、大きく分けて転写工程、貼り合わせ工程、硬化工程の3工程で構成される。尚、表示モジュールとカバーパネルとの間の貼りあわせ方法を例に示すが、カバーパネルとタッチパネルの間或いは、タッチパネルと表示モジュールの間にも同様に用いることができる。
【0049】
[転写工程]
転写方法としては、シート状接着剤の軽剥離側のセパレーターフィルムを剥がして、その面を表示モジュール2又は保護パネル3に圧着を行う。被着体への密着性を高めるという観点でロールラミネーターを用いて、熱と圧力をかけながらの転写が好ましい。
【0050】
[貼り合わせ工程]
転写後、シート状接着剤に残っている基材フィルムを剥がし、残りのパネル面同士を合わせ、被着体に熱をかげながらプレスし、貼り合わせを行う。この際、気泡無く貼り合わせが可能であるという観点で真空中或いは減圧雰囲気での貼り合わせが好ましい。貼り合わせ装置としては、真空プレス機及び真空ラミネーター、オートクレーブ等が挙げられる。
【0051】
[硬化工程]
貼りあわせたパネルにおいて保護パネル側から活性エネルギー線を照射することによりシート状接着剤4を硬化し、パネルを一体化させることができる。本発明の光硬化性シート状接着剤は、活性エネルギー線の照射によっても速やかに硬化し、強靱な硬化物を形成するとともに、ガラスやプラスチックに対して強固な接着力を発現する。活性エネルギー線の照射は、150〜750nmの波長域の照射光が好ましく、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ又はLEDランプを使用して1〜100kJ/mの積算光量で硬化することができ、好ましくは5〜70kJ/mの積算光量である。
【0052】
図1は、本発明の光学用光硬化型シート状接着剤を用いて構成された画像表示装置の一例を模式的に示した概略断面図である。図1に示されるように、画像表示装置1では、表示モジュール2上に、本発明の光硬化型シート状接着剤4が配置され、カバーパネル(保護パネル)3が配置される。すなわち、表示モジュール2とカバーパネル3とが、本発明の光硬化型シート状接着剤4によって接着されている。
【0053】
図1に示した実施形態以外に、カバーパネルとタッチパネルとの間、タッチパネルと表示モジュールとの間が、本発明の光硬化型シート状接着剤によって接着される実施形態もとり得る。すなわち、好ましい実施形態としては、表示モジュールとカバーパネル間、或いはカバーパネルとタッチパネルの間或いは、タッチパネルと表示モジュールの間のいずれかが上記の光学用光硬化型シート状接着剤で接着してなることを特徴とする画像表示装置である。本発明の光硬化型シート状接着剤は、光透過性および弾性率に優れているため、画像表示装置の上記した部材を接着するのに好適である。さらに、本発明の画像表示装置は、本発明の光硬化型シート状接着剤を用いて接着されているため、高温高湿下でも画像表示部が白濁することなく十分な光透過率を維持することができる。
【0054】
本発明における表示モジュールとは、液晶表示装置や有機エレクトロルミネンス表示装置、PDP(プラズマディスプレイパネル)などが挙げられるが、この限りではない。また、本発明のタッチパネルとは、抵抗膜方式タッチパネル、静電容量方式タッチパネル、電磁誘導方式タッチパネル、赤外線方式タッチパネル、超音波方式タッチパネルなどが挙げられるが、この限りではない。また、本発明におけるカバーパネルとは、ポリカーボネート板やアクリル板やガラス板等が挙げられるが、この限りではない。
【0055】
本発明の光学用光硬化型シート状接着剤の硬化物の弾性率は、10Pa以下であることが好ましい。弾性率が10Paより高いと表示モジュールとカバーパネルとの間、カバーパネルとタッチパネルの間或いは、タッチパネルと表示モジュールの間を接着した場合に、十分な緩衝性が得られないことから、外部からの応力が表示装置に伝わり、表示不良を起こすおそれがある。
【0056】
本発明の光学用光硬化型シート状接着剤の硬化物は、全光線透過率が85%以上であることが好ましい。85%に満たない場合は、表示モジュールとカバーパネルとの間、カバーパネルとタッチパネルの間或いは、タッチパネルと表示モジュールの間を接着した場合に、十分な透明性が得られないおそれがある。尚、全光線透過率はJIS−K−7361−1(1997年)に基づき測定される値である。
【0057】
また、本発明の光学用光硬化型シート状接着剤の硬化物は、500%以上の伸び率を示すことができる。伸び率は、JIS−K−6251(2010年)に準拠して測定された値を言う。また、硬化物は、0.5N/mm以上の剥離接着強さを示すことができる。剥離接着強さは、JIS−K−6854−1(1999年)に準拠して測定された値を言う。このように、本発明の光学用光硬化型シート状接着剤の硬化物は伸び率および剥離接着強さの機械的特性に優れるため、フレキシブルなシート材にも適用でき、かつ、表示モジュールおよびカバーパネル等の接着に使用した場合に耐久性のある部品を提供でき、好適である。
【実施例】
【0058】
以下に実施例をあげて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0059】
実施例及び比較例において使用した試験法は下記の通りである。
<組成物の調製>
各成分を表1、2に示す質量部で採取し、常温にてミキサーで30分混合し、樹脂組成物を調整し、各種物性に関して次のようにして測定した。尚詳細な調整量は表1、2に従い、数値は全て質量部で記載する。
【0060】
[合成例1 ウレタンアクリレートオリゴマーA]
温度計、攪拌機及び還流管を備えたガラス製反応容器に、メチルエチルケトン582.26質量部、イソホロンジイソシアネート59.94質量部、4‐メトキシフェノール0.05質量部及びジブチルスズジラウレート0.1質量部を仕込み、撹拌しながら60℃に加温した。これに、70℃に加温したポリカーボネートジオール(T5651、旭化成ケミカルズ株式会社製)520質量部を滴下した。滴下終了後、3時間撹拌して反応させた。次いで、2‐ヒドロキシエチルアクリレート2.32質量部を滴下し、滴下終了後、3時間撹拌して反応させた。なお、イソホロンジイソシアネート:ポリカーボネートジオールのモル比は1:2であった。赤外分光によって、イソシアネート基が消失するのを確認して反応終了とし、ポリカーボネートウレタンアクリレートを得た。重量平均分子量は60,000であった。
【0061】
[比較合成例1(ウレタンアクリレートオリゴマーB)]
メチルエチルケトン410質量部、トリレンジイソシアネート12.2質量部、4‐メトキシフェノール0.1質量部、ジブチルスズジラウレート0.1質量部、ポリエステルジオール360質量部及び2‐ヒドロキシエチルアクリレート2.0質量部を使用した以外は、合成例1と同一に実施した。得られたポリエステルウレタンアクリレートの重量平均分子量は5,000であった。
【0062】
[a成分]
a1:ウレタンアクリレートオリゴマーA
[a成分の比較成分]
a’1:ウレタンアクリレートオリゴマーB
a’2:RC100C:(メタ)アクリル基を末端に有するアクリル共重合体(カネカ社製)
[b成分]
b1:YP−70:ビスフェノールAとビスフェノールFの共重合型フェノキシ樹脂、重量平均分子量50,000、ガラス転移点70℃(新日鐵化学社製)
[b成分の比較成分]
b’1:ERF−001M30:ビスフェノールAとビスフェノールSの共重合型フェノキシ樹脂、ガラス転移点130℃(新日鐵化学社製)
[c成分]
c1:2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド(BASF社製)
c2:ベンゾフェノン(東京化成工業製)
[d成分]
d1:23G:ポリエチレングリコールジメタクリレート、エーテル結合繰り返し数23、分子量1108(新中村化学社製)
d2:14G:ポリエチレングリコールジメタクリレート、エーテル結合繰り返し数14、分子量708(新中村化学社製)
d3:9G:ポリエチレングリコールジメタクリレート、エーテル結合繰り返し数9、分子量508(新中村化学社製)
[d成分の比較成分]
d’1:4G:ポリエチレングリコールジメタクリレート、エーテル結合繰り返し数4、分子量308(新中村化学社製)
d’2:ACMO:アクリロイルモルホリン、分子量141(興人社製)
d’3:DMAA:ジメチルアクリルアミド、分子量99(興人社製)
d’4:ポリエチレングリコール:(メタ)アクリル基非含有ポリエチレングリコール、エーテル結合繰り返し数12
d’5:ポリエチレングリコール:(メタ)アクリル基非含有ポリエチレングリコール、エーテル結合繰り返し数20
[その他成分]
MEK:メチルエチルケトン。
【0063】
[白濁試験]
・シートの作成
実施例1〜6及び比較例1〜9の組成物をポリエチレンテレフタレート(PET)製剥離フィルム上に塗布し、100℃環境化で溶媒を除去して乾燥させた。次いで、溶媒が除去された塗工面にPET製剥離フィルムを張り合わせて、接着剤層の厚さが150μmのシート状接着剤を得た。
・白濁試験
上記のようにして得られたシート状接着剤の一方のPET製剥離フィルムをはがして厚さ125μmのPETフィルムに貼着した。次いで、このシート状接着剤が貼着されたPETフィルムを50mm×50mmに裁断した。こうして裁断された試料からPET製剥離フィルムを剥ぎ取り、ガラス板に貼着して、積算光量30kJ/mとなるように紫外線を照射して硬化させ、ガラス板/接着剤層/PETフィルムの試料を作製した。この各試料を60℃/90%Rhの条件に24時間放置した。取り出し後、上記の各試料を室温に戻し、外観の変化を目視で確認した。その結果を表1,2に示す。
【0064】
《評価基準》
◎:白濁は生じていなかった。
○:白濁がわずかに生じていた。
×:白濁がはっきりと生じていた。
【0065】
[貯蔵安定性試験]
表1、2に基づき作製した実施例1〜6、比較例1〜9の組成物をPET製剥離フィルム上に塗布し、100℃環境化で溶媒を除去して乾燥させた。次いで、溶媒が除去された塗工面にPET製剥離フィルムを張り合わせて、接着剤層の厚さが150μmのシート状接着剤を得た。このシート状接着剤を常温環境下に1ヶ月放置し、その後の外観より貯蔵安定性を確認した。その結果を表1,2に示す。評価基準は以下の通りである。
【0066】
《評価基準》
◎:ゲル化、結晶化等が確認されなかったもの。
○:わずかにゲル化、結晶化が確認されたもの。
×:ゲル化、結晶化等が確認されたもの。
【0067】
【表1】
【0068】
【表2】
【0069】
[透過率試験]
白濁試験と同一にして得たPETフィルム上の実施例1〜3及び比較例8のシート状接着剤を、3.0mm×25mm×50mmのガラス板の一面全面に、シート状組成物がガラス面に接するようにして貼り付け、積算光量30kJ/mとなるように紫外線を照射して硬化した。次いで、これからPETフィルムを取り外したものを試験片として使用した。この試験片の全光線透過率を、JIS−K−7361−1に準拠して、濁度計(日本電色工業株式会社製NDH2000)を用いて測定した。その結果を表3に示す。
○:全光線透過率は85%以上
×:全光線透過率は85%未満。
【0070】
[弾性率試験]
白濁性試験と同一にして得たPETフィルム上の実施例1〜3及び比較例8のシート状接着剤に、積算光量30kJ/mとなるように紫外線を照射して硬化させた。次いで、該硬化物の弾性率を測定した。測定装置として、動的粘弾性測定装置(セイコーインスツルメンツ株式会社製DMS6100)を使用した。試験片としては、PETフィルム上から取り外したシート状組成物を重ね合わせて厚さ0.6mmとした試料を用意して、25℃における弾性率を求め、その結果を表3に示す。また、測定周波数は1Hzとした。
○:10Pa以下
×:10Paより大きい
【0071】
【表3】
【0072】
[伸び率の測定]
実施例1〜3の各組成物に30kJ/mの紫外線を照射し、硬化物を作製した。前記硬化物を厚さ0.6mm、全長50mm、幅10mmになるように試験片をカットし準備した。そして、引張試験機によって試験片が切断に至るまで引っ張り、JIS−K−6251(2010年)に準拠して測定した。結果を表4に示す。また、引っ張り速度は毎分50mmとした。
○:伸び率が500%以上
×:伸び率が500%未満
[はく離接着強さの測定]
PETフィルムとアクリル板を実施例1〜3の各組成物で重ね合わせ、30kJ/mの紫外線を照射し、試料を作製した。その試料をJIS−K−6854−1(1999年)に従い、はく離速度200mm/分、90°はく離によるはく離接着強さを測定した。その結果を表4に示す。
○:0.5N/mm以上
×:0.5N/mm未満
【0073】
【表4】
【0074】
本発明の光学用光硬化性シート型接着剤組成物は、表示モジュールとカバーパネル、タッチパネルと表示モジュール、カバーパネルとタッチパネルの接着に用いられ、高温高湿下において高い外観信頼性を有し、且つ透明性に優れ、保存安定性に優れ、伸び率および剥離接着強さの機械的特性にも優れることから、広い分野に適用可能であり、産業上有用である。
【0075】
なお、本出願は、2012年2月17日に出願された日本国特許出願第2012−033441号に基づいており、その開示内容は、参照により全体として引用されている。
【符号の説明】
【0076】
1 画像表示装置
2 表示モジュール
3 カバーパネル
4 シート状接着剤
図1