(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0008】
本発明の第1実施形態の構成について
図1を用いて説明する。
【0009】
車両のエンジン1の出力はトルクコンバータ11を介して無段変速機12に入力される。無段変速機12はプライマリプーリ13とセカンダリプーリ14と、これらに掛け回されたVベルト15とを備える。プライマリプーリ13は油圧Ppriに応じて溝幅を変化させることで、Vベルト15との接触半径を変化させる。セカンダリプーリ14は油圧Psecに応じて溝幅を変化させることで、Vベルト15との接触半径を変化させる。結果として、無段変速機12は油圧Ppriと油圧Psecとの制御に応じて、入力回転速度と出力回転速度の比、すなわち変速比を無段階に変化させる。油圧Ppriと油圧Psecとは油圧供給装置16により生成される。
【0010】
セカンダリプーリ14はファイナルギア18とディファレンシャル19を介して駆動輪に結合する。
【0011】
エンジン1は吸気量を調整する吸気スロットル装置3を備える。吸気スロットル装置3は、エンジン1の吸気通路2に設けた吸気スロットル4と、吸気スロットル4の開度を入力信号に応じて変化させる電動モータ5を備える。
【0012】
油圧供給装置16と吸気スロットル装置3はコントローラ21が出力する指令信号に応じて作動する。
【0013】
コントローラ21は中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)および入出力インタフェース(I/O インタフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。コントローラ21を複数のマイクロコンピュータで構成することも可能である。
【0014】
コントローラ21には吸気スロットル4のスロットル開度を検出するスロットル開度センサ6、車両が備えるアクセルペダル7のアクセル開度を検出するアクセル開度センサ22、エンジン1の回転速度を検出するエンジン回転速度センサ23、プライマリプーリ13の回転速度を検出するプライマリプーリ回転速度センサ24、車両の走行速度を検出する車速センサ26、および大気圧を検出する大気圧センサ27から検出信号がそれぞれ信号として入力される。
【0015】
コントローラ21はこれらの検出信号に応じて、吸気スロットル4の開度制御と、油圧供給装置16を介した無段変速機12の変速制御とを行うことで、車両の駆動力を制御する。
【0016】
次に本実施形態の目標変速比、目標エンジントルクを設定する設定部100について
図2の制御ブロック図を用いて説明する。以下で説明する制御は、コントローラ21によって実行される。
【0017】
設定部100は、目標駆動力算出部101と、目標出力算出部102と、目標エンジン回転速度算出部103と、目標出力回転速度算出部104と、目標変速比算出部105と、大気圧補正部106と、目標エンジントルク算出部107とから構成される。
【0018】
目標駆動力算出部101は、車速とアクセル開度とに基づいて予め設定したマップから第1目標駆動力を算出する。車速は、車速センサ26からの検出信号に基づいて検出される。アクセル開度は、アクセル開度センサ22からの検出信号に基づいて検出される。
【0019】
目標出力算出部102は、第1目標駆動力と車速とを乗算し、目標出力を算出する。
【0020】
目標エンジン回転速度算出部103は、目標出力に基づいて予め設定したマップから目標エンジン回転速度を算出する。
【0021】
目標出力回転速度算出部104は、車速に基づいて無段変速機12のセカンダリプーリ14の回転速度を算出する。
【0022】
目標変速比算出部105は、目標エンジン回転速度をセカンダリプーリ14の回転速度で除算することで、目標変速比を算出する。目標エンジン回転速度は、第1目標駆動力に基づいて算出されているので、大気圧の影響を受けない回転速度である。そのため、大気圧が異なる場合でも、目標変速比は変化しない。
【0023】
大気圧補正部106は、大気圧と第1目標駆動力とに基づいて予め設定したマップから第2目標駆動力を算出する。大気圧は、大気圧センサ27からの検出信号に基づいて検出される。大気圧補正部106は、大気圧に応じて第1目標駆動力を補正して第2目標駆動力を算出する。大気圧が低くなるにつれて、第2目標駆動力は小さくなる。
【0024】
目標エンジントルク算出部107は、第2目標駆動力と駆動輪の半径とを乗算し、乗算した値を目標変速比とファイナルギア比とで除算することで目標エンジントルクを算出する。例えば車両が高地を走行しており、大気圧が低く、空気密度が低い場合には、大気圧が標準的な平地を車両が走行している場合と比較して、目標エンジントルクは小さくなる。
【0025】
本実施形態を用いた場合の第1目標駆動力、第2目標駆動力について
図3のタイムチャートを用いて説明する。
図3では車両が高地に停車している状態から走行を開始した場合のアクセル開度、第1目標駆動力、第2目標駆動力の変化について示している。
図3においては、同じアクセル開度で車両が平地を走行した場合の駆動力を破線で示す。
【0026】
時間t0においてアクセルペダル7が踏み込まれ、車両は走行を開始する。これに伴い、第1目標駆動力、および第2目標駆動力が徐々に増加する。第2目標駆動力は、大気圧に基づいて補正されるので、車両が平地を走行した場合の目標駆動力と比較して小さくなる。そのため、第2目標駆動力に基づいて算出される目標エンジントルクは、車両が平地を走行した場合の目標エンジントルクと比較して小さくなる。一方、第1目標駆動力は、大気圧に基づいて補正されないので、車両が平地を走行した場合の目標駆動力と同じ値となる。そのため、第1目標駆動力に基づいて算出される目標変速比は、車両が平地を走行した場合と同じ値となる。
【0027】
本発明の第1実施形態の効果について説明する。
【0028】
本実施形態では、アクセル開度に基づいて第1目標駆動力を算出し、第1目標駆動力に基づいて目標変速比を算出する。また、大気圧と第1目標駆動力とに基づいて目標エンジントルクを算出する。このように、目標変速比と目標エンジントルクのうち、目標エンジントルクのみを大気圧の影響を考慮して算出するので、例えば車両が同じアクセル開度で平地、または高地を走行している場合に、大気圧が異なっていても目標変速比は同じ変速比となる。
【0029】
同じアクセル開度で走行している場合に、大気圧の影響でエンジン回転速度が変化すると運転者に違和感を与えることがある。
【0030】
本実施形態では、目標変速比と目標エンジントルクのうち、目標エンジントルクのみを大気圧の影響を考慮して算出するので、大気圧に応じて目標変速比が変化することを防止し、エンジン回転速度が変化することを防止し、運転者に違和感を与えることを防止することができる。
【0031】
大気圧が低くなると、エンジン1が出力可能なトルクが小さくなる。そのため、例えば運転者がアクセルペダル7を徐々に踏み込んだ場合に、大気圧の影響により途中でエンジントルクが最大トルクとなり、その後アクセルペダル7の踏み込みに対するトルク増加がなくなる(小さくなる)おそれがある。本実施形態では、目標エンジントルクを大気圧に基づいて算出するので、大気圧が低い場合には、目標エンジントルクを小さくするのでエンジントルクが最大トルクとなることを抑制し、アクセルペダル7の踏み込みに対するトルク増加がなくなる(小さくなる)ことを抑制することができる。
【0032】
次に本発明の第2実施形態について説明する。
【0033】
第2実施形態については
図1と異なる部分を説明する。第2実施形態の車両は、
図4に示すように、
図1に示す構成に加えてASCD(Automatic Speed Control Device)スイッチ28を備える。コントローラ21は、ASCDスイッチ28の操作に応じてオートクルーズを実行する。
【0034】
次に本実施形態の目標変速比、目標エンジントルクを設定する設定部200について
図5の制御ブロック図を用いて説明する。以下で説明する制御は、コントローラ21によって実行される。
【0035】
設定部200は、目標駆動力算出部201と、大気圧補正部202と、オートクルーズ目標駆動力算出部203と、大気圧逆補正部204と、第1目標駆動力選択部205と、目標出力算出部206と、目標エンジン回転速度算出部207と、目標出力回転速度算出部208と、目標変速比算出部209と、第2目標駆動力選択部210と、目標エンジントルク算出部211とから構成される。
【0036】
目標駆動力算出部201は、車速とアクセル開度とに基づいて予め設定したマップから第1目標駆動力を算出する。
【0037】
大気圧補正部202は、大気圧と第1目標駆動力とに基づいて予め設定したマップから第2目標駆動力を算出する。
【0038】
オートクルーズ目標駆動力算出部203は、オートクルーズにおける目標駆動力である第3目標駆動力を算出する。オートクルーズ目標駆動力算出部203は、オートクルーズ時の目標車速と実際の車速とに基づいて第3目標駆動力を算出する。オートクルーズ目標駆動力算出部203は、目標車速に基づいて走行抵抗を算出し、この走行抵抗をベースとなる目標駆動力とし、実際の車速と目標車速との偏差から更に必要な駆動力を算出し、目標駆動力と更に必要な駆動力とを加算して第3目標駆動力を算出する。第3目標駆動力は、現在、車両が走行している環境における大気圧の影響を含んだ駆動力である。例えば、大気圧が低い高地を車両が走行している場合には、第3目標駆動力は、大気圧が標準的な平地を車両が走行している場合よりも小さくなる。
【0039】
大気圧逆補正部204は、大気圧に基づいて第3目標駆動力を補正し、第4目標駆動力を算出する。第4目標駆動力は、現在、車両が走行している環境における大気圧の影響を受けない値である。例えば、車両が高地をオートクルーズにより走行している場合には、第4目標駆動力は、車両が平地をオートクルーズにより走行している場合の駆動力に相当する駆動力となる。より具体的には、1気圧相当の駆動力となる。
【0040】
第1目標駆動力選択部205は、ASCDスイッチ28からの信号に基づいて、目標変速比算出用駆動力を選択する。第1目標駆動力選択部205は、ASCDスイッチ28がONの場合には、第4目標駆動力を目標変速比算出用駆動力として選択し、ASCDスイッチ28がOFFの場合には、第1目標駆動力を目標変速比算出用駆動力として選択する。
【0041】
目標出力算出部206は、目標変速比算出用駆動力と車速とを乗算し、目標出力を算出する。
【0042】
目標エンジン回転速度算出部207は、目標出力に基づいて予め設定したマップから目標エンジン回転速度を算出する。
【0043】
目標出力回転速度算出部208は、車速に基づいて無段変速機12のセカンダリプーリ14の回転速度を算出する。
【0044】
目標変速比算出部209は、目標エンジン回転速度をセカンダリプーリ14の回転速度で除算することで、目標変速比を算出する。ASCDスイッチ28がONの場合には、大気圧の影響を受けないように補正された第4目標駆動力に基づいて目標変速比は算出される。また、ASCDスイッチ28がOFFの場合には、大気圧の影響を受けない第1目標駆動力に基づいて目標変速比は算出される。そのため、大気圧が異なる場合でも、他の運転状態が同じであれば、目標変速比は変化しない。
【0045】
第2目標駆動力選択部210は、ASCDスイッチ28からの信号に基づいて、目標エンジントルク算出用駆動力を算出する。第2目標駆動力選択部210は、ASCDスイッチ28がONの場合には、第3目標駆動力を目標エンジントルク算出用駆動力として選択し、ASCDスイッチ28がOFFの場合には、第2目標駆動力を目標エンジントルク算出用駆動力として選択する。
【0046】
目標エンジントルク算出部211は、目標エンジントルク算出用駆動力と駆動輪の半径とを乗算し、乗算した値を目標変速比とファイナルギア比とで除算することで目標エンジントルクを設定する。
【0047】
本発明の第2実施形態の効果について説明する。
【0048】
オートクルーズにより走行している場合には、オートクルーズにおける目標駆動力である第3目標駆動力に対して大気圧に基づいて、大気圧の影響を受けなくなるように補正した第4目標駆動力を算出する。そして、第4目標駆動力に基づいて目標変速比を算出する。これにより、ASCDスイッチ28がONからOFFに切り替わった場合に、大気圧の影響により目標変速比が変更されることを抑制することができる。例えば、オートクルーズでアクセル開度が全開であり、アクセル開度が全開となるように運転者がアクセルペダル7を踏み込んでASCDスイッチ28がONからOFFへ切り替わった場合に、目標変速比算出用駆動力は変化せず、目標変速比は変更されない。そのため、例えば大気圧が低い高地を車両が走行している場合でも、ASCDスイッチ28がONからOFFに切り替わった場合に大気圧の影響によって目標変速比が変更されることを防止し、変速ショックが発生することを防止することができる。
【0049】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0050】
上記実施形態、例えば第1実施形態では、大気圧に基づいて目標エンジントルクを算出したが、これに限られることはなく、気温など空気密度に影響を及ぼす要因に基づいて目標エンジントルクを算出してもよい。また、第2実施形態においても、空気密度に影響を及ぼす要因に基づいて第4目標駆動力を算出してもよい。
【0051】
第1実施形態では、目標エンジントルクを大気圧によって補正するために、大気圧補正部106によって第2目標駆動力を算出し、第2目標駆動力に基づいて目標エンジントルクを算出したが、これには限定されず、目標エンジントルクを大気圧に応じて補正できればよい。例えば第1目標駆動力に基づいて目標エンジントルクを算出し、その値を大気圧に応じて補正してもよい。第2実施形態においても同様である。
【0052】
また、第2実施形態では、オートクルーズによって走行している場合に、目標変速比を大気圧による影響を受けないように補正をするために、大気圧逆補正部204によって第4目標駆動力を算出し、第4目標駆動力に基づいて目標変速比を算出したが、これに限定されず、オートクルーズによって走行している場合に、目標変速比が大気圧による影響を受けないように補正できればよい。例えば、第3目標駆動力に基づいて目標変速比を算出し、その値を大気圧の影響を受けないように補正してもよい。
【0053】
本願は2012年11月27日に日本国特許庁に出願された特願2012−258689に基づく優先権を主張し、この出願の全ての内容は参照により本明細書に組み込まれる。