(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6004013
(24)【登録日】2016年9月16日
(45)【発行日】2016年10月5日
(54)【発明の名称】可変圧縮比内燃機関
(51)【国際特許分類】
F02B 75/04 20060101AFI20160923BHJP
F02B 75/32 20060101ALI20160923BHJP
F01M 11/00 20060101ALI20160923BHJP
F16C 5/00 20060101ALI20160923BHJP
F16J 1/14 20060101ALI20160923BHJP
【FI】
F02B75/04
F02B75/32 A
F01M11/00 C
F16C5/00
F16J1/14
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-557366(P2014-557366)
(86)(22)【出願日】2013年12月16日
(86)【国際出願番号】JP2013083616
(87)【国際公開番号】WO2014112266
(87)【国際公開日】20140724
【審査請求日】2015年4月10日
(31)【優先権主張番号】特願2013-6393(P2013-6393)
(32)【優先日】2013年1月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】日吉 亮介
(72)【発明者】
【氏名】中村 勝敏
(72)【発明者】
【氏名】杉田 丈治
【審査官】
瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−025431(JP,A)
【文献】
特開2011−169152(JP,A)
【文献】
特開2010−216276(JP,A)
【文献】
特開2002−047955(JP,A)
【文献】
特開2003−322036(JP,A)
【文献】
特開2011−241796(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 75/04,75/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1制御軸の回転位置に応じて機関圧縮比を変更する可変圧縮比機構と、
上記第1制御軸の回転位置を変更及び保持するアクチュエータと、
上記アクチュエータと第1制御軸とを連結する連結機構と、を有し、
この連結機構が、
上記第1制御軸と上記アクチュエータとを連結するレバーと、
上記第1制御軸の中心から径方向外方へ延びる第1アーム部の先端と上記レバーの一端とを回転可能に連結する第1連結ピンと、を有し、
かつ、機関本体に固定されて、上記第1制御軸のジャーナル部を回転可能に支持するベアリングキャップを有し、
上記第1連結ピンの軸方向から見て、少なくとも所定の圧縮比姿勢で、上記第1連結ピンが、上記ベアリングキャップから外れた位置に配置され、
更に、エンジンオイルを貯留するオイルパンが、下面に開口部が形成されたオイルパンアッパと、上記オイルパンアッパの下面の開口部に取り付けられる浅皿状のオイルパンロアと、により構成され、
上記第1連結ピンの下方に上記オイルパンアッパの下面の開口部が位置している可変圧縮比内燃機関。
【請求項2】
上記第1連結ピンと第1制御軸の中心との最短距離が、上記ベアリングキャップの下端と上記第1制御軸の中心との最短距離よりも大きく設定されている請求項1に記載の可変圧縮比内燃機関。
【請求項3】
上記可変圧縮比機構が、クランクシャフトのクランクピンに回転可能に取り付けられるロアリンクと、このロアリンクとピストンとを連結するアッパリンクと、上記ロアリンクもしくはアッパリンクと上記第1制御軸に偏心して設けられた偏心軸部とを連結する制御リンクと、を有し、
上記第1連結ピンの軸方向から見て、少なくとも所定の圧縮比姿勢で、上記第1連結ピンが、上記制御リンクから外れた位置に配置されている請求項1又は2に記載の可変圧縮比内燃機関。
【請求項4】
上記第1連結ピンと第1制御軸の中心との最短距離が、上記制御リンクの下端と上記第1制御軸の中心との最短距離よりも大きく設定されている請求項3に記載の可変圧縮比内燃機関。
【請求項5】
上記所定の圧縮比姿勢のとき、上記第1アーム部の先端が上記第1制御軸の中心に対して下方を指向するように構成されている請求項1〜4のいずれかに記載の可変圧縮比内燃機関。
【請求項6】
上記所定の圧縮比姿勢で、上記第1アーム部の先端が上記オイルパンアッパの開口部より下方へ張り出している請求項1〜5のいずれかに記載の可変圧縮比内燃機関。
【請求項7】
上記所定の圧縮比姿勢が、最高圧縮比もしくは最低圧縮比の姿勢である請求項1〜6のいずれかに記載の可変圧縮比内燃機関。
【請求項8】
上記連結機構が、
上記第1制御軸と平行に配置され、上記レバーにより上記第1制御軸と連結される第2制御軸と、
上記第2制御軸の中心から径方向外方へ延びる第2アーム部の先端と上記レバーの他端とを回転可能に連結する第2連結ピンと、を有し、
上記第1制御軸の中心と第2制御軸の中心とを通る直線に対し、上記第1アーム部の突出方向と第2アーム部の突出方向とが互いに逆方向となるように設定されている請求項1〜7のいずれかに記載の可変圧縮比内燃機関。
【請求項9】
上記連結機構が、
上記第1制御軸と平行に配置され、上記レバーにより上記第1制御軸と連結される第2制御軸と、
上記第2制御軸の中心から径方向外方へ延びる第2アーム部の先端と上記レバーの他端とを回転可能に連結する第2連結ピンと、を有し、
上記第2連結ピンと第2制御軸の中心との最短距離が、ハウジングに回転可能に支持される第2制御軸のジャーナル部の半径よりも大きく設定されている請求項1〜8のいずれかに記載の可変圧縮比内燃機関。
【請求項10】
上記連結機構が、
上記第1制御軸と平行に配置され、上記レバーにより上記第1制御軸と連結される第2制御軸と、
上記第2制御軸の中心から径方向外方へ延びる第2アーム部の先端と上記レバーの他端とを回転可能に連結する第2連結ピンと、を有し、
上記第1制御軸が機関本体の内部に配置される一方、
上記第2制御軸が機関本体の側壁に取り付けられるハウジング内に収容配置され、
かつ、上記レバーが機関本体の側壁に形成されたスリットを貫通している請求項1〜9のいずれかに記載の可変圧縮比内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機関圧縮比を変更可能な可変圧縮比機構を備える可変圧縮比内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複リンク式のピストン−クランク機構を利用して機関圧縮比を変更可能な可変圧縮比機構を本出願人は提案している(例えば特許文献1参照)。このような可変圧縮比機構は、モータ等のアクチュエータにより第1制御軸の回転位置を変更することで、機関圧縮比を機関運転状態に応じて変更・制御することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−257254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記可変圧縮比機構のアクチュエータを、オイルや排気熱等から保護するために機関本体の外部に配置する構造の場合、例えば、機関本体の側壁を貫通するレバーを備えた連結機構によってアクチュエータと第1制御軸とが連結される。レバーの一端は第1連結ピンを介して第1制御軸と連結される。第1制御軸のジャーナル部は、機関本体に固定されるベアリングキャップを用いて機関本体側に回転可能に支持される。
【0005】
このような構造の可変圧縮比内燃機関において、第1連結ピンの軸方向から見て、上記ベアリングキャップの外形と第1連結ピン(言い換えると、この第1連結が挿通するピン穴)とがラップしていると、第1連結ピンを組み付ける際に、第1連結ピンを挿入するスペースを確保するために、ベアリングキャップを一旦取り外す必要があり、組付作業性が悪化する。
【0006】
そこで本発明は、組付作業性を向上することのできる新規な可変圧縮比内燃機関を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る可変圧縮比機構は、第1制御軸の回転位置に応じて機関圧縮比を変更する可変圧縮比機構と、上記第1制御軸の回転位置を変更及び保持するアクチュエータと、上記アクチュエータと第1制御軸とを連結する連結機構と、を有している。この連結機構は、上記第1制御軸と平行に配置される第2制御軸と、上記第1制御軸と第2制御軸とを連結するレバーと、上記第1制御軸の中心から径方向外方へ延びる第1アーム部の先端と上記レバーの一端とを回転可能に連結する第1連結ピンと、上記第2制御軸の中心から径方向外方へ延びる第2アーム部の先端と上記レバーの他端とを回転可能に連結する第2連結ピンと、を有している。また、機関本体に固定されて、上記第1制御軸のジャーナル部を回転可能に支持するベアリングキャップを有している。そして、上記第1連結ピンの軸方向から見て、少なくとも所定の圧縮比姿勢で、上記第1連結ピンが、上記ベアリングキャップから外れた位置に配置されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、少なくとも所定の圧縮比姿勢で、第1連結ピンがベアリングキャップから外れた位置に配置されるために、ベアリングキャップを取り外すことなく第1連結ピン側で第1連結ピンによりレバーと第1制御軸とを組み付けることが可能となり、組付作業性が大幅に向上する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施例に係る可変圧縮比機構を備えた可変圧縮比内燃機関を示す断面対応図。
【
図3】上記可変圧縮比内燃機関を示す
図2とは逆方向の断面対応図。
【
図4】上記可変圧縮比内燃機関を示す横断面対応図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好ましい実施例を図面を参照して詳細に説明する。なお、
図2〜
図5は
図1に対して簡略化して描いているが、
図1〜
図5は全て同じ実施例を示す断面対応図である。先ず、複リンク式ピストン−クランク機構を利用した可変圧縮比機構10について説明する。なお、この機構10は上記の特開2004−257254号公報等にも記載のように公知であるために、簡単な説明にとどめる。
【0011】
内燃機関の機関本体の一部を構成するシリンダブロック1には、各気筒のピストン3がシリンダ2内に摺動可能に嵌合しているとともに、クランクシャフト4が回転可能に支持されている。可変圧縮比機構10は、クランクシャフト4のクランクピン5に回転可能に取り付けられるロアリンク11と、このロアリンク11とピストン3とを連結するアッパリンク12と、シリンダブロック1等の機関本体側に回転可能に支持される第1制御軸14と、この第1制御軸14に偏心して設けられた偏心軸部15と、この偏心軸部15とロアリンク11とを連結する制御リンク13と、を有している。ピストン3とアッパリンク12の上端とはピストンピン16を介して相対回転可能に連結され、アッパリンク12の下端とロアリンク11とはアッパリンク側連結ピン17を介して相対回転可能に連結され、制御リンク13の上端とロアリンク11とは制御リンク側連結ピン18を介して相対回転可能に連結され、制御リンク13の下端は上記の偏心軸部15に回転可能に取り付けられている。
【0012】
第1制御軸14には、減速機21を備えた連結機構20を介して、この可変圧縮比機構10のアクチュエータとしてのモータ19が連結されている。このモータ19により第1制御軸14の回転位置(角度)を変更することによって、ロアリンク11の姿勢の変化を伴って、ピストン上死点位置やピストン下死点位置を含むピストンストローク特性が変化して、機関圧縮比が変化する。従って、図示せぬ制御部によりモータ19を駆動制御することによって、機関運転状態に応じて機関圧縮比を制御することができる。なお、アクチュエータとしては、電動式のモータ19に限らず、油圧駆動式のアクチュエータであっても良い。
【0013】
第1制御軸14は、シリンダブロック1やその下側に固定されるオイルパンアッパ6等からなる機関本体の内部に回転可能に支持されている。一方、モータ19は機関本体の外部に配置されており、より詳しくは、機関本体の一部を構成するオイルパンアッパ6の吸気側の側壁(以下、「オイルパン側壁」と呼ぶ)7に取り付けられるハウジング22の機関後方側に取り付けられている。
【0014】
減速機21は、モータ19の出力軸の回転を減速して第1制御軸14へ伝達するものであり、例えば波動歯車機構を利用した構造のものが用いられる。なお、減速機としては、このような波動歯車機構を利用した構造に限らず、サイクロ減速機等の他の形式の減速機を用いることもできる。
【0015】
連結機構20には、減速機21の出力軸と一体的に構成された第2制御軸23が設けられている。なお、減速機21の出力軸と第2制御軸23とを別体とし、両者が連動して回転するように連結する構成であっても良い。
【0016】
この第2制御軸23は、オイルパン側壁7に横付けされたハウジング22内に回転可能に収容配置されており、オイルパン側壁7に沿って機関前後方向(つまり、第1制御軸14と平行な方向)に延在している。潤滑用のオイルが飛散する機関本体の内部に配置される第1制御軸14と、機関本体の外部に設けられる第2制御軸23とは、オイルパン側壁7を貫通するレバー24によって機械的に連結されており、両者14,23は連動して回転する。なお、オイルパン側壁7及びハウジング22には、レバー24が挿通するスリット24Aが貫通形成されており、このスリット24Aの周囲を塞ぐようにハウジング22がオイルパン側壁7に液密に取り付けられている。
【0017】
レバー24の一端と、第1制御軸14の中心より径方向外方へ延在する第1アーム部25の先端とは、第1連結ピン26を介して相対回転可能に連結されている。レバー24の他端と、第2制御軸23の中心より径方向外方へ延在する第2アーム部27の先端とは、第2連結ピン28を介して相対回転可能に連結されている。
【0018】
このようなリンク構造によって、第1制御軸14が回転すると、機関圧縮比が変化するとともに、第1アーム部25,第2アーム部27及びレバー24の姿勢が変化することから、モータ19から第1制御軸14への回転動力伝達経路の減速比も変化することとなる。
【0019】
クランクシャフト4のメインジャーナル部4Aと第1制御軸14のジャーナル部14Aとは、機関本体としてのシリンダブロック1に固定されるベアリングキャップ30によって機関本体側に回転可能に支持されている。ベアリングキャップ30は、主ベアリングキャップ30Aと副ベアリングキャップ30Bとにより構成されており、両者は共通のキャップ取付ボルト33を用いてシリンダブロック1のバルクヘッド(図示省略)の下面側に固定されている。第1制御軸14は主ベアリングキャップ30Aとバルクヘッドの間に回転可能に支持され、第2制御軸23は主ベアリングキャップ30Aと副ベアリングキャップ30Bとの間に回転可能に支持されている。
【0020】
図4にも示すように、第1制御軸14には、各気筒毎に偏心軸部15が設けられるとともに、この偏心軸部15と交互にジャーナル部14Aが設けられている。そして、第1連結ピン26が挿通する二股形状の第1アーム部25は、気筒列方向の中央部のベアリングキャップ30と制御リンク13との隙間に配置されており、この第1アーム部25の両側面とベアリンクキャップ30・制御リンク13の側面との隙間は僅かなもの(例えば2〜3mm)程度とされている。
【0021】
次に、この実施例の特徴的な構成及び作用効果について、以下に列記する。
【0022】
[1]
図2に示すように、第1連結ピン26の軸方向から見たクランク軸方向視において、少なくとも所定の圧縮比姿勢、具体的には、第1アーム部25が最も下方側を指向する圧縮比姿勢で、第1連結ピン26が、ベアリングキャップ30から下方へ外れた位置に配置されている。つまり、第1連結ピン26のピン孔がベアリングキャップ30の存在範囲と重ならないように設定されている。
【0023】
このような構成により、次のような作用効果が得られる。第1に、ベアリングキャップ30をシリンダブロック1側に組み付けた状態で、第1連結ピン26によりレバー24と第1制御軸14とを組み付けることが可能となり、ベアリングキャップ30を取り外す必要がないために、組付作業性が向上する。
【0024】
第2に、上述したようにベアリングキャップ30を取り外すことなく容易にレバー24と第1制御軸14とを組付可能であるために、レバー24を第2連結ピン28を介して第2制御軸23側に予め組み付けておき、つまりレバー24をハウジング22側に予め組み付けた状態にユニット化しておき、このユニット化されたハウジングの状態での搬送・納入が可能となるために、組立時の作業効率が向上するとともに、ハウジング22を機関本体に組み付ける際に、ハウジング22側を分割する必要がないために、減速機21等を収容したハウジング22内への異物の混入を抑制・回避することができ、品質が向上する。
【0025】
第3に、第1連結ピン26をベアリングキャップ30から外れた位置に配置するように第1アーム部25の寸法を増大することで、レバー24に作用する荷重が相対的に低減し、レバー24を介して可変圧縮比機構10側からハウジング22内の第2制御軸23やモータ19側へ作用する入力荷重を低減することができる。また、モータ19の出力軸に角度センサを取り付けている場合には、この角度センサの振動が低減されるために、検出精度の向上を図ることができる。
【0026】
第4に、上述したように第2制御軸23への入力荷重を低減することで、第2制御軸23の軸受荷重を低減し、その軸受部分の磨耗を抑制することができる。
【0027】
第5に、上述したように第2制御軸23への入力荷重を低減することで、第2連結ピン28の軸受面圧を低減することができる。これによって、この第2連結ピン28が挿通する第2制御軸23の第2アーム部28先端のピン孔径及びピンボス部の肉厚を低減することができる。この結果、上述したように第1アーム部25の寸法を増大しているにもかかわらず、第2制御軸23をコンパクト化し、ひいてはハウジング22側の寸法増大を抑制することができる。
【0028】
第6に、上記の第1アーム部25の寸法増大によって、第1連結ピン26への入力荷重を抑制し、その軸受部分の磨耗を抑制することができる。また、第1アーム部25の寸法増大に伴い、第1制御軸14とレバー24とが干渉し難い構造となり、両者の干渉を回避するための切欠等が不要となるために、第1制御軸14の油孔周りの肉厚を十分に確保しつつ、油孔を大きく形成して、潤滑性能の向上を図ることができる。
【0029】
第7に、上述したようにハウジング22側への入力荷重を低減することによって、このハウジング22が取り付けられるオイルパンアッパ6への入力荷重を抑制して、オイルパンアッパ6の変形を抑制することができる。この結果、オイルパンアッパ6の変形に伴う圧縮比の変動を抑制し、ひいては、共振や過度の高圧縮比化に伴う燃焼圧の過度な増大を抑制して、アクチュエータへの異常負荷入力を回避することができるとともに、オイルパンの強度・剛性を確保しつつ小型化・軽量化を図ることができる。
【0030】
第8に、上述したようにレバー24への入力荷重を低減することで、第1制御軸14の軸受部分に作用する荷重も低減する。この結果、バルクヘッドやベアリングキャップ30の倒れ方向への変形を抑制し、主運動系の不正挙動に起因するモータ19側への異常負荷入力を抑制・回避することができる。
【0031】
[2]より具体的には、
図2に示すように、第1連結ピン26と第1制御軸14の中心との最短距離(第1連結ピン26の中心から第1制御軸14の中心までの距離から第1連結ピン26の半径を引いた距離)L1が、ベアリングキャップ30の下端と第1制御軸の中心との最短距離L2よりも大きく設定されている。このような設定により、上述したように所定の圧縮比姿勢で第1連結ピン26がベアリングキャップ30から外れた位置に配置されることとなる。
【0032】
[3]第1連結ピン26の軸方向から見て、少なくとも所定の圧縮比姿勢で、第1連結ピン26が、制御リンク13からも外れた位置に配置されている。
【0033】
これによって、
図4にも示すように、第1連結ピン26が挿通する第1アーム部25は制御リンク13とベアリングキャップ30との間に2〜3mm程度の僅かな隙間を介して配置されているが、上記の構成により、第1連結ピン26を組み付ける際に、制御リンク13との干渉をも抑制・回避することができ、制御リンク13を取り外すことなく第1連結ピン26によりレバー24と第1制御軸14とを組み付けることができる。この結果、第1連結ピン26を制御リンク13側から挿入する場合にも、上記の[1]における第1連結ピン26をベアリングキャップ30側から挿入する場合と同様の作用効果を得ることができる。
【0034】
[4]具体的には、
図3にも示すように、第1連結ピン26と第1制御軸14の中心との最短距離L3が、制御リンク13の下端と第1制御軸14の中心との最短距離L4よりも大きく設定されている。これによって、上記[3]に記載のように、第1連結ピン26の軸方向から見て、少なくとも所定の圧縮比姿勢で、第1連結ピン26が制御リンク13からも外れた位置に配置される構成となる。
【0035】
[5]より具体的には、
図2及び
図3に示すように、第1アーム部25の先端が第1制御軸14の中心に対して下方を指向する姿勢のときに、上記所定の圧縮比姿勢となり、第1連結ピン26がベアリングキャップ30と制御リンク13の双方から外れた位置に配置されるようになっている。
【0036】
[6]オイルパンアッパ6の下面側には開口部6Aが開口形成されており、この開口部6Aを閉塞するように、浅皿状のオイルパンロア8が取り付けられる。これらオイルパンアッパ6とオイルパンロア8とによって、エンジンオイルを貯留するオイルパンが構成されている。そして、第1連結ピン26の下方にオイルパンアッパ6の開口部6Aが位置するように設定されている。つまり、第1連結ピン26がオイルパンアッパ6の開口部6Aの上方に配置するように構成されている。
【0037】
これによって、第1制御軸14やオイルパンアッパ6を機関本体側に組み付けた状態で、オイルパンアッパ6の開口部6Aを通して第1連結ピン26によりレバー24と第1制御軸14とを組付可能となる。従って、上述したように、レバー24をハウジング22側に予め組み付けてユニット化した状態で、このレバー24を第1連結ピン26を介して機関本体に組付けられている第1制御軸14に組み付けることが可能となり、作業性が格段に向上するとともに、モータ19や減速機21をハウジング22に組み付けた状態、つまり品質保証がなされた状態での組付が可能となり、品質向上を図ることができる。
【0038】
[7]また、
図5に示すように、所定の圧縮比姿勢、つまり第1アーム部25の先端が下方(シリンダ軸方向に沿って燃焼室と反対側、つまりクランクケース側の方向)を指向する姿勢のとき、第1アーム部25の先端がオイルパンアッパ6の下端よりも所定距離L5だけ下方に位置しており、この第1アーム部25の先端がオイルパンアッパ6の開口部6Aより下方へ張り出している。
【0039】
このように第1連結ピン26の先端を開口部6Aよりも下方に張り出させることで、第1連結ピン26を組み付ける際に、この第1連結ピン26を組み付ける第1アーム部25の下端部を目視可能となり、組付時の作業性を更に向上することができる。
【0040】
[8]更に言えば、最高圧縮比もしくは最低圧縮比の姿勢、つまり第1制御軸14が一方に最も捻られた回転位置のときに、上記所定の圧縮比姿勢となって、第1連結ピン26がベアリングキャップ30と制御リンク13の双方から外れた位置に配置されるようになっている。
【0041】
[9]
図2,
図3及び
図5に示すように、第1制御軸14の中心と第2制御軸23の中心とを通る直線に対し、第1アーム部25の突出方向と第2アーム部27の突出方向とが互いに逆方向となるように設定されている。
【0042】
このように突出方向を逆向きとすることで、同方向に設定される場合に比して、第1に、レバー24の長さを短縮して、レバー24の剛性を向上することができる。この結果、共振を抑制して、モータ19やこのモータ19に取り付けられる角度センサの振動を低減することができる。
【0043】
第2に、レバー24と制御リンク13とのなす角度を挟角化して、第1制御軸14の軸受部分に作用する荷重を低減することができる。この結果、バルクヘッドやベアリングキャップ30の倒れ変形を抑制することができる。
【0044】
第3に、突出方向を逆向きとすることで、レバー24が貫通するオイルパン側壁7のスリット24Aを、オイルパンアッパ6のオイルパン側壁7に固定されるハウジング22の側壁の範囲に配置することができる。このために、スリット24Aがシリンダブロック1やオイルパンロア8に跨って形成されることがなく、スリット24Aの形成に伴う剛性の低下やシール性の低下を抑制・回避することができる。
【0045】
[10]更に、
図5に示すように、第2連結ピン28と第2制御軸23の中心との最短距離L6が、ハウジング22に回転可能に支持される第2制御軸23のジャーナル部23Aの半径L7よりも大きく設定されている。
【0046】
これによって、第2アーム部28がジャーナル部23Aから径方向外方へ張り出す形となり、第2連結ピン28が挿通する第2制御軸23のピン孔がジャーナル部23Aと重なることがなく、このピン孔を容易に加工することができる。また、上述したように第1アーム部25の長さの増大に対応して、第2アーム部27の長さも増大することで、連結機構20による減速比特性を適正なものに設定可能となる。
【0047】
以上のように本発明を具体的な実施例に基づいて説明してきたが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、種々の変形・変更を含むものである。例えば、上記の可変圧縮比機構では制御リンクをロアリンクに連結しているが、制御リンクをアッパリンクに連結する構造とすることもできる。