特許第6004118号(P6004118)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6004118積層セラミック構造体及びその製造方法並びに圧電アクチュエータの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6004118
(24)【登録日】2016年9月16日
(45)【発行日】2016年10月5日
(54)【発明の名称】積層セラミック構造体及びその製造方法並びに圧電アクチュエータの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 41/083 20060101AFI20160923BHJP
   H01L 41/047 20060101ALI20160923BHJP
   H01L 41/257 20130101ALI20160923BHJP
   H01L 41/29 20130101ALI20160923BHJP
   H01L 41/09 20060101ALI20160923BHJP
   H02N 2/04 20060101ALI20160923BHJP
【FI】
   H01L41/083
   H01L41/047
   H01L41/257
   H01L41/29
   H01L41/09
   H02N2/04
【請求項の数】19
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-543787(P2015-543787)
(86)(22)【出願日】2014年10月8日
(86)【国際出願番号】JP2014076926
(87)【国際公開番号】WO2015060132
(87)【国際公開日】20150430
【審査請求日】2015年6月25日
(31)【優先権主張番号】特願2013-219302(P2013-219302)
(32)【優先日】2013年10月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 仁宗
【審査官】 加藤 俊哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−168073(JP,A)
【文献】 特開2003−061193(JP,A)
【文献】 特開2001−347660(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 41/083
H01L 41/047
H01L 41/09
H01L 41/257
H01L 41/29
H02N 2/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に延ばされており、前記第1の方向と直交する第2の方向に沿って分割することにより複数の圧電アクチュエータを形成するための積層セラミック構造体であって、
複数のセラミック層が積層されており、直方体状の積層セラミック本体を備え、
前記積層セラミック本体は、上面と、下面と、対向し合う第1,第2の側面と、対向し合う第1,第2の端面とを有し、前記上面、下面及び第1,第2の側面が前記第1の方向に延びており、前記第1,第2の端面が前記第2の方向に延びており、
前記積層セラミック本体の上面に設けられた上面対向電極と、
前記積層セラミック本体の下面に設けられた下面対向電極と、
前記積層セラミック本体内に設けられており、前記上面及び前記下面と平行に配置された内部対向電極と、
前記第1の側面に設けられた第1の側面電極と、
前記第2の側面に設けられた第2の側面電極とをさらに備え
記上面対向電極が、前記第1の側面に至るように延ばされて、前記第1の側面電極に電気的に接続されており、前記内部対向電極のうち、最上部に位置する内部対向電極が、前記第2の側面に引き出されて、前記第2の側面電極に電気的に接続されており、
前記上面対向電極、前記内部対向電極及び前記下面対向電極が、前記積層セラミック構造体の上下方向において交互に前記第1の側面電極または前記第2の側面電極に引き出されており、
前記積層セラミック構造体の上下方向において交互に前記第1の側面電極または前記第2の側面電極に引き出されている、前記上面対向電極、前記下面対向電極及び前記内部対向電極が、平面視した際に重なり合う対向部を構成しており、
前記第1の側面電極に接続されている前記上面対向電極において、前記対向部と、前記第1の側面との間の領域の部分に、前記第1の方向に延びるスリットが設けられている、積層セラミック構造体。
【請求項2】
前記上面対向電極、前記内部対向電極及び前記下面対向電極が積層されている対向部において、対向電極間に挟まれたセラミック層が厚み方向において分極されており、かつ分極方向が隣り合うセラミック層において逆方向とされている、請求項1に記載の積層セラミック構造体。
【請求項3】
前記スリットが、前記上面対向電極の前記対向部と前記第1の側面電極との間の領域に位置している部分において、前記上面対向電極の前記第1の方向における両端部に至らないように設けられている、請求項1または2に記載の積層セラミック構造体。
【請求項4】
前記スリットが、前記上面対向電極の前記対向部と前記第1の側面電極との間の領域に位置している部分において、前記上面対向電極の一方側端部には至らず、他方側端部には至っている、請求項1または2に記載の積層セラミック構造体。
【請求項5】
前記上面対向電極が、前記スリットにより、第1の上面対向電極部と、第2の上面対向電極部とに分割されており、
前記スリットが、前記第1の方向に延びるスリット本体部と、前記スリット本体部の前記第1の方向において、一方側の端部から前記積層セラミック本体の前記第1の側面に至るように延ばされている第1のスリット延長部と、前記スリット本体の前記第1の方向において他方端から前記第1の側面電極に至るように延ばされている第2のスリット延長部とを有し、前記スリットが前記第1の上面対向電極部により囲まれており、前記第2の上面対向電極部が、前記スリットにより囲まれており、前記第1の上面対向電極部及び前記第2の上面対向電極部が、前記第1の側面に至るように設けられている、請求項1または2に記載の積層セラミック構造体。
【請求項6】
前記積層セラミック本体の上面において、前記上面対向電極と隔てられて、前記スリット内において前記第1の方向に延びるように設けられた検査用電極をさらに備える、請求項1〜5のいずれか1項に記載の積層セラミック構造体。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の積層セラミック構造体の製造方法であって、
前記上面対向電極、前記内部対向電極及び前記下面対向電極が設けられている前記積層セラミック本体を用意する工程と、
前記積層セラミック本体の前記第1,第2の側面電極間に異なる電位を印加し、分極する工程とを備える、積層セラミック構造体の製造方法。
【請求項8】
前記上面対向電極と、下面対向電極とを用いて、電気的特性を測定する工程をさらに備える、請求項7に記載の積層セラミック構造体の製造方法。
【請求項9】
前記積層セラミック本体の上面に、前記上面対向電極と隔てられて、前記スリット内において前記第1の方向に延びるように検査用電極を設ける工程をさらに備える、請求項7または8に記載の積層セラミック構造体の製造方法。
【請求項10】
前記検査用電極と前記上面対向電極との間で短絡の有無を検査する工程をさらに備える、請求項に記載の積層セラミック構造体の製造方法。
【請求項11】
前記積層セラミック本体の上面において、前記上面対向電極を形成するにあたり、前記第1の方向に延びるスリット本体と、前記スリット本体の前記第1の方向における一方端から前記第1の側面に延びる第1のスリット延長部と、前記スリット本体の前記第1の方向の他方端から前記積層セラミック本体の前記側面に至る第2のスリット延長部とを有するスリットと、第1の上面対向電極部と、前記スリットに囲まれた第2の上面対向電極部とを設ける、請求項7または8に記載の積層セラミック構造体の製造方法。
【請求項12】
前記第1の上面対向電極部と前記第2の上面対向電極部との間で短絡の有無を検査する工程をさらに備える、請求項11に記載の積層セラミック構造体の製造方法。
【請求項13】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の積層セラミック構造体を用意する工程と、
前記積層セラミック構造体を前記第1の側面と前記第2の側面とを結ぶ前記第2の方向に、かつ前記第1の方向に沿って複数の位置で切断して分割することにより複数の圧電アクチュエータを得る工程とを備える、圧電アクチュエータの製造方法。
【請求項14】
前記上面対向電極と、下面対向電極とを用いて、電気的特性を測定する工程をさらに備える、請求項13に記載の圧電アクチュエータの製造方法。
【請求項15】
前記積層セラミック構造体を分割する工程の後に、前記スリットが設けられている部分よりも前記第1の方向外側の部分において前記上面対向電極と下面対向電極とを用いて電気的特性を測定する工程をさらに備える、請求項14に記載の圧電アクチュエータの製造方法。
【請求項16】
前記積層セラミック本体の上面に、前記上面対向電極と隔てられて、前記スリット内において前記第1の方向に延びるように検査用電極を設ける工程をさらに備える、請求項13に記載の圧電アクチュエータの製造方法。
【請求項17】
前記検査用電極と前記上面対向電極との間で短絡の有無を検査する工程をさらに備える、請求項16に記載の圧電アクチュエータの製造方法。
【請求項18】
前記積層セラミック本体の上面において、前記上面対向電極を形成するにあたり、前記第1の方向に延びるスリット本体と、前記スリット本体の前記第1の方向における一方端から前記第1の側面に延びる第1のスリット延長部と、前記スリット本体の前記第1の方向の他方端から前記積層セラミック本体の前記側面に至る第2のスリット延長部とを有するスリットと、第1の上面対向電極部と、前記スリットに囲まれた第2の上面対向電極部とを設ける、請求項13〜17のいずれか1項に記載の圧電アクチュエータの製造方法。
【請求項19】
前記第1の上面対向電極部と前記第2の上面対向電極部との間で短絡の有無を検査する工程をさらに備える、請求項18に記載の圧電アクチュエータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のセラミック層が積層されている積層セラミック本体を有する積層セラミック構造体及びその製造方法に関し、特に、複数の圧電アクチュエータに分割される積層セラミック構造体及びその製造方法、並びに該圧電アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、積層セラミック本体を用いた圧電アクチュエータが種々提案されている。例えば、下記の特許文献1に記載の圧電アクチュエータでは、圧電セラミックスからなる複数のセラミック層が積層されている。このセラミック層と内部電極とが交互に積層されている活性層が、積層セラミック本体内に配置されている。活性層の積層方向外側に、内部電極を有しない不活性層が積層されている。この圧電アクチュエータでは、活性層が駆動されて屈曲振動する。なお、積層セラミック本体の下面には電極は設けられていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−023186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の圧電アクチュエータでは、屈曲振動により、積層セラミック本体を構成しているセラミックスの脱粒が生じることがあった。脱粒が生じると、粒が周囲の部品等に付着し、悪影響を与えるおそれがあった。
【0005】
他方、特許文献1に記載の圧電アクチュエータや、該圧電アクチュエータを得るためのマザーの積層体段階においては、分極処理や電気的特性検査のための電気的接続を側面を利用して行わねばならなかった。そのため、取り扱いが煩雑であった。さらに、側面を利用して電気的特性を検査した場合には、側面が伸縮する部分にあたるため、測定精度が十分でなかった。
【0006】
本発明の目的は、上記脱粒が生じ難く、かつ分極処理や電気的特性検査を容易に行うことができる、積層セラミック構造体及びその製造方法を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、動作時に脱粒が生じ難く、かつ電気的特性検査を容易に行い得る、圧電アクチュエータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の第1の発明は、第1の方向に延ばされており、第1の方向と直交する第2の方向に沿って分割することにより複数の圧電アクチュエータを形成するための積層セラミック構造体である。第1の発明に係る積層セラミック構造体は、複数のセラミック層が積層されており、直方体状の積層セラミック本体を備え、前記積層セラミック本体は、上面と、下面と、対向し合う第1,第2の側面と、対向し合う第1,第2の端面とを有し、前記上面、下面及び第1,第2の側面が前記第1の方向に延びており、前記第1,第2の端面が前記第2の方向に延びており、前記積層セラミック本体の上面に設けられた上面対向電極と、前記積層セラミック本体の下面に設けられた下面対向電極と、前記積層セラミック本体内に設けられており、前記上面及び前記下面と平行に配置された内部対向電極と、前記第1の側面に設けられた第1の側面電極と、前記第2の側面に設けられた第2の側面電極とをさらに備え、前記上面対向電極、前記下面対向電極及び前記内部対向電極が、平面視した際に重なり合う対向部を構成しており、前記上面対向電極が、前記第1の側面に至るように延ばされて、前記第1の側面電極に電気的に接続されており、前記内部対向電極のうち、最上部に位置する内部対向電極が、前記第2の側面に引き出されて、前記第2の側面電極に電気的に接続されており、前記上面対向電極、前記内部対向電極及び前記下面対向電極が、前記積層セラミック構造体の上下方向において交互に第1の側面電極または第2の側面電極に引き出されており、前記上面対向電極の前記対向部と、前記第1の側面との間の領域の部分に、前記第1の方向に延びるスリットが設けられている。
【0009】
第1の発明に係る積層セラミック構造体のある特定の局面では、前記上面対向電極、前記内部対向電極及び前記下面対向電極が積層されている対向部において、対向電極間に挟まれたセラミック層が厚み方向において分極されており、かつ分極方向が隣り合うセラミック層において逆方向とされている。
【0010】
第1の発明に係る積層セラミック構造体の他の特定の局面では、前記スリットが、前記上面対向電極の前記対向部と前記第1の側面電極との間の領域に位置している部分において、上面対向電極の第1の方向における両端部に至らないように設けられている。
【0011】
第1の発明に係る積層セラミック構造体の別の特定の局面では、前記スリットが、前記上面対向電極の対向部と前記第1の側面電極との間の領域に位置している部分において、前記上面対向電極の一方側端部には至らず、他方側端部には至っている。
【0012】
第1の発明に係る積層セラミック構造体の他の特定の局面では、前記上面対向電極が、前記スリットにより、第1の上面対向電極部と、第2の上面対向電極部とに分割されており、前記スリットが、前記第1の方向に延びるスリット本体部と、前記スリット本体部の前記第1の方向において、一方側の端部から前記積層セラミック本体の第1の側面に至るように延ばされている第1のスリット延長部と、前記スリット本体の第1の方向において他方端から第1の側面電極に至るように延ばされている第2のスリット延長部とを有し、前記スリットが前記第1の上面対向電極部により囲まれており、前記第2の上面対向電極部が、前記スリットにより囲まれており、前記第1の上面対向電極部及び前記第2の上面対向電極部が、前記第1の側面に至るように設けられている。
【0013】
第1の発明に係る積層セラミック構造体のさらに他の特定の局面では、前記積層セラミック本体の上面において、前記上面対向電極と隔てられて、前記スリット内において前記第1の方向に延びるように設けられた検査用電極がさらに備えられている。
【0014】
本願の第2の発明は、第1の発明に従って構成されている上記積層セラミック構造体の製造方法であり、前記上面対向電極、前記内部対向電極及び前記下面対向電極が設けられている前記積層セラミック本体を用意する工程と、前記積層セラミック本体の前記第1,第2の側面電極間に異なる電位を印加し、分極する工程とを備える。
【0015】
第2の発明に係る積層セラミック構造体の製造方法のある特定の局面では、前記上面対向電極と、下面対向電極とを用いて、電気的特性を測定する工程がさらに備えられている。
【0016】
第2の発明に係る積層セラミック構造体の製造方法のさらに他の特定の局面では、前記電気的特性を測定した後に、前記積層セラミック本体を前記第1の側面と前記第2の側面とを結ぶ方向に、かつ前記第1の方向に沿って複数の位置で切断して分割する工程がさらに備えられている。
【0017】
第2の発明に係る積層セラミック構造体の製造方法のさらに別の特定の局面では、前記積層セラミック本体を分割する工程の後に、前記スリットが設けられている部分よりも前記第1の方向外側の部分において前記上面対向電極と下面対向電極とを用いて電気的特性を測定する工程がさらに備えられている。
【0018】
第2の発明に係る積層セラミック構造体の製造方法のさらに他の特定の局面では、前記積層セラミック本体の上面に、前記上面対向電極と隔てられて、前記スリット内において前記第1の方向に延びるように検査用電極を設ける工程がさらに備えられている。
【0019】
第2の発明に係る積層セラミック構造体の製造方法のさらに他の特定の局面では、前記検査用電極と前記上面対向電極との間で短絡の有無を検査する工程がさらに備えられている。
【0020】
第2の発明に係る積層セラミック構造体の製造方法の別の特定の局面では、前記積層セラミック本体の上面において、前記上面対向電極を形成するにあたり、第1の方向に延びるスリット本体と、前記スリット本体の第1の方向における一方端から第1の側面に延びる第1のスリット延長部と、前記スリット本体の第1の方向の他方端から前記積層セラミック本体の前記側面に至る第2のスリット延長部とを有するスリットと、第1の上面対向電極部と、前記スリットに囲まれた第2の上面対向電極部とを設ける。
【0021】
第2の発明に係る積層セラミック構造体の製造方法のさらに他の特定の局面では、前記第1の上面対向電極部と前記第2の上面対向電極部との間で短絡の有無を検査する工程がさらに備えられている。
【0022】
本願の第3の発明は、圧電アクチュエータであり、複数のセラミック層が積層されている、直方体状のアクチュエータ本体を備え、前記アクチュエータ本体が、上面と下面と、対向し合う第1,第2の側面と、対向し合う第1,第2の端面とを有し、前記第1,第2の端面を結ぶ方向が第1の方向であり、前記アクチュエータ本体の上面に設けられた上面対向電極と、前記アクチュエータ本体の下面に設けられた下面対向電極と、前記アクチュエータ本体の内部に配置されており、上面及び下面と平行に設けられた内部対向電極と、前記アクチュエータ本体の第1の側面に設けられた第1の側面電極と、前記アクチュエータ本体の第2の側面に設けられた第2の側面電極とをさらに備え、前記上面対向電極、前記内部対向電極及び前記下面対向電極は、平面視した場合に重なり合う対向部を有しており、前記上面対向電極は第1及び第2の側面電極に電気的に接続されていないフロート電極とされており、前記内部対向電極及び下面対向電極が、前記アクチュエータ本体の上下方向において交互に第2の側面または第1の側面に引き出され、第2の側面電極または第1の側面電極に電気的に接続されており、前記内部対向電極及び下面対向電極のうち上下方向において隣り合う対向電極に挟まれたセラミック層が厚み方向に分極されており、かつ厚み方向に隣り合うセラミック層が逆方向に分極されている。
【0023】
本願の第4の発明は、第1の方向に延ばされており、第1の方向と直交する方向に沿って分割することにより複数の圧電アクチュエータを形成するための積層セラミック構造体であって、複数のセラミック層が積層されており、前記第1の方向に延びる第1,第2の側面を有する直方体状の積層セラミック本体を備え、前記積層セラミック本体は、上面と、下面と、対向し合う第1,第2の側面と、対向し合う第1,第2の端面とを有し、前記上面、下面及び第1,第2の側面が前記第1の方向に延びており、前記第1,第2の端面が第2の方向に延びており、前記積層セラミック本体の上面に設けられた上面対向電極と、前記積層セラミック本体の下面に設けられた下面対向電極と、前記積層セラミック本体内に設けられており、前記上面及び前記下面と平行に配置された内部対向電極と、前記第1の側面に設けられた第1の側面電極と、前記第2の側面に設けられた第2の側面電極とをさらに備え、前記上面対向電極、前記下面対向電極及び前記内部対向電極が、平面視した際に重なり合う対向部を構成しており、前記上面対向電極が、前記第1の側面に至るように延ばされて、前記第1の側面電極に電気的に接続されており、前記内部対向電極のうち、最上部に位置する内部対向電極が、前記第1の側面に引き出されて、前記第1の側面電極に電気的に接続されており、前記内部対向電極及び前記下面対向電極が、前記積層セラミック構造体の上下方向において交互に第1の側面電極または第2の側面電極に引き出されている、積層セラミック構造体である。
【0024】
第4の発明に係る積層セラミック構造体のある特定の局面では、前記上面対向電極と、前記最上部の前記内部対向電極との間のセラミック層が分極されておらず、前記最上部の内部対向電極を含む内部対向電極と、前記下面対向電極とが積層されている対向部において、対向電極間に挟まれたセラミック層が厚み方向に分極されており、かつ分極方向が隣り合うセラミック層において逆方向とされている。
【0025】
本願の第5の発明は、複数のセラミック層が積層されている直方体状のアクチュエータ本体を備え、前記アクチュエータ本体が、上面と下面と、対向し合う第1,第2の側面と、対向し合う第1,第2の端面とを有し、前記第1,第2の端面を結ぶ方向が第1の方向であり、前記アクチュエータ本体の上面に設けられた上面対向電極と、前記アクチュエータ本体の下面に設けられた下面対向電極と、前記アクチュエータ本体の内部に配置されており、上面及び下面と平行に設けられた内部対向電極と、前記アクチュエータ本体の第1の側面に設けられた第1の側面電極と、前記アクチュエータ本体の第2の側面に設けられた第2の側面電極とをさらに備え、前記上面対向電極、前記内部対向電極及び前記下面対向電極は、平面視した場合に重なり合う対向部を有しており、前記上面対向電極と最上部に位置している前記内部対向電極との間のセラミック層が分極されておらず、前記最上部に位置している内部対向電極を含む内部対向電極と、前記下面対向電極とが積層されている部分においては、対向電極間に挟まれたセラミック層が厚み方向に分極されており、2以上のセラミック層が対向している場合には厚み方向において隣り合うセラミック層が逆方向に分極されており、前記上面対向電極及び最上部に位置する前記内部対向電極が前記第1の側面電極に引き出されており、前記最上部に位置する内部対向電極を含む内部対向電極及び下面対向電極が積層されている部分においては、アクチュエータ本体の上下方向において内部対向電極及び下面対向電極が交互に第1の側面または第2の側面に引き出され、第1の側面電極または第2の側面電極に電気的に接続されている、圧電アクチュエータである。
【発明の効果】
【0026】
第1の発明に係る積層セラミック構造体及びその製造方法である第2の発明によれば、脱粒が生じ難く、かつ分極処理や電気的特性検査を容易に行うことを可能とする積層セラミック構造体を提供することができる。
【0027】
また、第3の発明に係る圧電アクチュエータでは、動作時に脱粒が生じ難く、かつ電気的特性検査を容易に行うことができる。
【0028】
第4の発明に係る積層セラミック構造体によれば、動作時に脱粒が生じ難い第5の発明に係る圧電アクチュエータを得るための積層セラミック構造体を得ることができ、かつ分極処理や電気的特性検査を容易に行い得る積層セラミック構造体を提供することができる。
【0029】
第5の発明によれば、動作時に脱粒が生じ難く、電気的特性検査を容易に行い得る圧電アクチュエータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係る積層セラミック構造体の斜視図である。
図2図2は、図1のA−A線に沿う部分の断面図である。
図3図3は、図1のB−B線に沿う部分の断面図である。
図4図4は、本発明の第1の実施形態において、積層セラミック構造体を第2の方向に沿って分割する工程を説明するための模式的平面図である。
図5図5は、本発明の第1の実施形態で得られた圧電アクチュエータを示す斜視図である。
図6図6は、本発明の第2の実施形態に係る積層セラミック構造体を示す斜視図である。
図7図7は、本発明の第3の実施形態に係る積層セラミック構造体を示す斜視図である。
図8図8は、図7のA2−A2線に沿う部分の断面図である。
図9図9は、図7のB2−B2線に沿う部分の断面図である。
図10図10は、本発明の第1の実施形態に係る積層セラミック構造体の第1の変形例を説明するための斜視図である。
図11図11は、本発明の第1の実施形態に係る積層セラミック構造体の第2の変形例の積層構造を説明するための斜視図である。
図12図12は、本発明の第1の実施形態の第2の変形例に係る積層セラミック構造体の斜視図である。
図13図13は、本発明の第4の実施形態に係る積層セラミック構造体の斜視図である。
図14図14は、図13のA3−A3線に沿う部分の断面図である。
図15図15は、本発明の第4の実施形態で得られた圧電アクチュエータの斜視図である。
図16図16は、本発明の第5の実施形態に係る積層セラミック構造体の断面図である。
図17図17は、本発明の第6の実施形態に係る積層セラミック構造体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0032】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る積層セラミック構造体の斜視図である。図2及び3は、それぞれ、図1のA−A線及びB−B線に沿う部分の断面図である。
【0033】
積層セラミック構造体1は、積層セラミック本体2を有する。積層セラミック本体2は、直方体状の形状を有する。より具体的には、積層セラミック本体2は、上面2aと、下面2bと、対向し合う第1,第2の側面2c,2dと、対向し合う第1,第2の端面2e,2fとを有する。第1の端面2eと、第2の端面2fとを結ぶ方向を第1の方向とする。すなわち、上面2a、下面2b及び第1,第2の側面2c,2dは第1の方向に延ばされている。
【0034】
また、第1の側面2cと第2の側面2dとを結ぶ方向を、第1の方向と直交する第2の方向とする。
【0035】
本実施形態の積層セラミック構造体1は、第2の方向と平行な方向に沿って分割することにより複数の圧電アクチュエータを形成するのに用いられる。すなわち、積層セラミック構造体1は、多数の圧電アクチュエータを得るためのマザーの構造体である。
【0036】
上記積層セラミック本体2では、圧電セラミックスからなる複数のセラミック層が積層されている。これらの複数のセラミック層の積層方向は、上面2aと下面2bとを結ぶ方向である。
【0037】
積層セラミック本体2の上面2aには、上面対向電極3が設けられている。図2及び図3に示すように、下面2bには下面対向電極4が設けられている。
【0038】
また、積層セラミック本体2内には、上面2a,下面2bと平行に複数の内部対向電極5,6が設けられている。
【0039】
上面対向電極3は、第1の端面2eと上面2aとのなす端縁及び上面2aと第2の端面2fとのなす端縁には至らないように設けられている。すなわち、上面対向電極3の第1の方向外側には、上面対向電極3が設けられていない領域2a1,2a2が設けられている。
【0040】
特に図示はしないが、下面2bに設けられた下面対向電極4は、領域2a1,2a2と重なり合う領域には至っていない。
【0041】
上面対向電極3は、スリット3aを有する。スリット3aは、第1の方向に延びる細長い矩形形状を有している。スリット3aを設けることにより、スリット3aに、上面2aの一部が露出していることとなる。
【0042】
上面対向電極3は、第1の側面2cに設けられた第1の側面電極7に接続されている。第1の側面電極7は、第1の側面2cを覆っているが、さらに、下面2bの一部に至るように設けられている。もっとも、第1の側面電極7は、下面2bに至っておらずともよい。
【0043】
図2及び図3に示すように、第2の側面2dには、第2の側面電極8が設けられている。下面対向電極4は、第2の側面電極8に電気的に接続されている。
【0044】
内部対向電極5は、複数の内部対向電極5,6のうち最上部に位置する内部対向電極である。この内部対向電極5は、第2の側面2dに引き出されており、第2の側面電極8に電気的に接続されている。他方、内部対向電極6は、第1の側面2cに引き出されており、第1の側面電極7に電気的に接続されている。
【0045】
上面対向電極3、内部対向電極5、内部対向電極6及び下面対向電極4は、平面視した場合、積層セラミック本体2の第2の方向中央領域において重なり合っている。この重なり合っている部分が、本発明における対向部を構成している。
【0046】
前述したスリット3aは、上記対向部と、第1の側面2cとの間の領域において、第1の方向に延びるように設けられている。
【0047】
積層セラミック本体2では、複数のセラミック層2g,2h,2iが積層されている。そして、図2及び図3に矢印で示すように、セラミック層2g,2h,2iが厚み方向に分極されている。より具体的には、隣り合うセラミック層であるセラミック層2gとセラミック層2hとは、分極方向が逆方向とされている。同様に、隣り合うセラミック層同士である、セラミック層2hとセラミック層2iの分極方向も逆方向とされている。言い換えれば、複数のセラミック層2g〜2iは、上下方向において交互に逆方向に分極されている。
【0048】
上記セラミック層2g〜2iは、適宜の圧電性セラミックスにより構成することができる。圧電セラミックスとしては、例えば、PZT系セラミックスなどを好適に用いることができる。
【0049】
他方、上面対向電極3、下面対向電極4、内部対向電極5,6及び第1,第2の側面電極7,8などの各種電極は、Ag、Ag−Pd、Ptなどの適宜の金属もしくは合金により形成することができる。
【0050】
製造に際しては、圧電セラミックスを主体とするセラミックグリーンシート上に、上記内部対向電極6を印刷する。他方、内部対向電極5が印刷されたセラミックグリーンシート及び上面対向電極3が印刷されたセラミックグリーンシートを別途用意する。これらのセラミックグリーンシートを積層する。しかる後、得られた積層体に、下面対向電極4及び第1,第2の側面電極7,8を形成するために導電ペーストを印刷する。しかる後、積層体を焼成する。
【0051】
焼成後に、セラミック層2g〜2iを分極処理する。このようにして、積層セラミック構造体1を得ることができる。
【0052】
なお、上面対向電極3、第1,第2の側面電極7,8及び下面対向電極4は、焼結後に導電ペーストを塗布し焼き付けることや、スパッタや蒸着等により形成されてもよい。
【0053】
上記分極に際しては、上面対向電極3及び下面対向電極4を電源と接続し直流電圧を印加すればよい。従って、分極に際しての電気的接続を容易に行うことができる。
【0054】
分極時には、積層セラミック構造体1はd31方向に伸縮する。従って、積層セラミック構造体1において反りは生じ難い。
【0055】
また、上記積層セラミック構造体1の段階で電気的特性を測定してもよい。このような電気的特性の測定に際しても、上面対向電極3及び下面対向電極4を測定装置と電気的に接続すればよい。従って、電気的特性を容易に測定することができる。
【0056】
また、上面2a及び下面2bを保持して上記電気的特性を測定することができるので、測定精度も高められる。これは、伸縮方向を拘束せずに電気的特性を測定し得ることによる。
【0057】
さらに、上記分極処理に際しては、セラミック層2g〜2iの全てがd31方向に伸縮する。従って、分極に際して、積層セラミック本体2に反りが生じ難い。
【0058】
加えて、積層セラミック本体2の上面2a及び下面2bにおいて少なくとも対向部が上面対向電極3及び下面対向電極4で被覆されている。従って、分極処理時や、上記電気的特性の測定時に脱粒が生じ難い。
【0059】
上記積層セラミック構造体1を得た後に、本実施形態では、図4に平面図で示すように、積層セラミック構造体1を第2の方向に平行な方向に沿って複数の位置で分割する。すなわち、図4の実線C,Cは、第2の方向に平行に延びる切断線を示す。これらの複数の切断線に沿って積層セラミック構造体1を分割することにより、図5に示す圧電アクチュエータ11を得ることができる。圧電アクチュエータ11は、上記スリット3aが設けられている部分において積層セラミック構造体1から切り出された部分に相当する。なお、積層セラミック本体2を分割した後に、スリット3aが設けられている部分よりも第1の方向外側の部分において上面対向電極3と下面対向電極4とを用いて電気的特性を測定してもよい。
【0060】
図5に示すように、圧電アクチュエータ11では、積層セラミック本体2が分割されて、個々の圧電アクチュエータ11単位のアクチュエータ本体2Aが形成されている。アクチュエータ本体2Aの上面には、上面対向電極3Aが、下面には下面対向電極4Aが形成されている。また、アクチュエータ本体2A内には、内部対向電極5A,6Aが配置されている。さらに、第1,第2の側面電極7A,8Aが、第1の側面2A1及び第2の側面2A2を覆うように設けられている。
【0061】
図5から明らかなように、セラミック層2g〜2iは図1に示した積層セラミック構造体1の場合と同様に分極処理されているが、セラミック層2gには駆動時に電圧は印加されない。上面対向電極3Aは、第1の側面電極7Aと分離されている。すなわち、図4のスリット3aが設けられていた部分において、上面対向電極3Aが、第1の側面電極7Aと分離されている。従って、セラミック層2gには駆動時に電圧は印加されない。よって、セラミック層2gは、不活性層となる。
【0062】
第1の側面電極7Aと第2の側面電極8Aとの間に電圧を印加すると、セラミック層2hとセラミック層2iとが活性層として駆動され、セラミック層2h,2iが伸縮する。上述のように、セラミック層2gは不活性層となる。
【0063】
前述した特許文献1では、積層セラミック本体の上面は電極で覆われていたが、下面には電極が設けられていなかったため、下面側において脱粒が生じやすかった。
【0064】
これに対して、駆動時に屈曲したとしても、アクチュエータ本体2Aの上面は上面対向電極3Aで覆われており、下面も下面対向電極4Aで覆われている。従って、セラミックスの脱粒が生じ難い。
【0065】
なお、上記圧電アクチュエータ11の製造に際しては、好ましくは粘着シート上に、複数の積層セラミック構造体1を張り付けた後に、該粘着シート上において前述したように図4の実線C,Cに沿って積層セラミック構造体1を分割することが望ましい。そして、このように粘着シート上に、分割された複数の圧電アクチュエータ11が貼付された状態で、圧電アクチュエータ11を提供することが望ましい。その場合には、上記粘着シートに保持された状態で、分割により得られた個々の圧電アクチュエータ11の電気的特性検査も、容易に行うことができる。
【0066】
また、上記圧電アクチュエータ11では、上記のように駆動時に脱粒が生じ難いだけでなく、電気的特性の測定も、下面対向電極4Aと、第1の側面電極7Aとを用いて容易に行うことができる。
【0067】
図6は、本発明の第2の実施形態に係る積層セラミック構造体の斜視図である。積層セラミック構造体21では、上面対向電極3のスリット3aが上面対向電極3の第2の端面2f側の端部において閉じておらず、第2の端面2f側に向かって開いている。このように、スリット3aは、第2の端面2f側において開いていてもよい。あるいは逆に、スリット3aは、第2の端面2f側ではなく、第1の端面2e側において開いていてもよい。もっとも、分極を行うためには、上面対向電極3のスリット3aの両側の部分は電気的に接続されている必要がある。
【0068】
その他の構成は、積層セラミック構造体21は積層セラミック構造体1と同様であるため、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0069】
図7は、本発明の第3の実施形態に係る積層セラミック構造体の斜視図である。第3の実施形態の積層セラミック構造体31は、積層セラミック本体32を有する。積層セラミック本体32は、直方体状の形状を有する。積層セラミック本体32は、上面32aと、下面32bと、第1の側面32cと、第2の側面32dと、第1の端面32eと第2の端面32fとを有する。なお、図7図9では、第1,第2の側面32c,32dの位置は、図1図3に示した第1、第2の側面2c,2dと逆の側に位置している。本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、上面対向電極33が上面32a上に形成されている。また、図8及び図9に示すように、下面32b上に、下面対向電極34が設けられている。
【0070】
上面対向電極33には、スリット33aが設けられている。スリット33aはスリット3aと同様に第1の方向に延ばされている。本実施形態では、スリット33aは、第1の方向両端が閉じられているが、前述した第2の実施形態のように、一方端が開いていてもよい。
【0071】
本実施形態の積層セラミック構造体31では、積層セラミック本体32内に、内部対向電極35が設けられている。内部対向電極35は、第2の側面32dに引き出されており、第2の側面電極38に電気的に接続されている。本実施形態が第1の実施形態と異なるところは、以下の点にある。
【0072】
図8及び図9に示すように、1層の内部対向電極35のみが形成されている。そして、上面対向電極33は第1の側面32c側に引き出されており、第1の側面32c上に設けられた第1の側面電極37に電気的に接続されている。下面対向電極34も同様に、第1の側面電極37に電気的にされている。
【0073】
積層セラミック本体32は2層のセラミック層32g,32hを有する。分極に際しては、第1,第2の側面電極37,38間に直流電圧を印加する。その結果、積層セラミック本体32では、セラミック層32g,32hが厚み方向において互いに逆方向に分極処理されている。この分極方向を図8及び図9に矢印で示す。
【0074】
本実施形態のように、複数層のセラミック層が積層セラミック本体内に配置されていてもよい。
【0075】
上記スリット33aが設けられている部分において第2の方向に平行な方向に沿って積層セラミック本体32を切断することにより、第1の実施形態と同様に圧電アクチュエータを得ることができる。この場合、図9から類推されるように、得られた圧電アクチュエータでは、第1,第2の側面電極37,38間に電圧を駆動すると、内部対向電極35と下面対向電極34との間にのみ、すなわちセラミック層32hのみに電圧が印加されることになる。セラミック層32gは不活性層となる。
【0076】
本実施形態においても、得られた圧電アクチュエータでは、少なくとも対向部を上面及び下面に投影した領域が、上面対向電極及び下面対向電極で覆われることになる。そのため、駆動に際しての脱粒を効果的に抑制することができる。
【0077】
また、本実施形態においても、第1及び第2の実施形態と同様に、積層セラミック構造体31段階での分極処理及び電気的特性検査を容易に行うことができる。加えて、電気的特性の精度を高めることもできる。さらに、積層セラミック構造体31を分割して得られた圧電アクチュエータにおいても、電気的特性を容易に測定することができる。
【0078】
第1〜第3の実施形態から明らかなように、上記積層セラミック構造体1,21,31では、3層または2層のセラミック層が積層されていたが、セラミック層の積層数は特に限定されず、4層以上の偶数層または5層以上の奇数層であってもよい。
【0079】
図13は、本発明の第4の実施形態に係る積層セラミック構造体の斜視図である。
【0080】
積層セラミック構造体41は、直方体状の積層セラミック本体42を有する。積層セラミック本体42は、上面42a、下面42b、第1,第2の側面42c,42d及び第1,第2の端面42e,42fを有する。
【0081】
また、積層セラミック本体42では、圧電セラミックスからなるセラミック層42g,42hが積層されている。
【0082】
上面42a上に、上面対向電極43が形成されている。上面対向電極43は、第1の実施形態とは異なり、スリットを有しない。上面対向電極43は、上面42aと第1の側面42cとのなす端縁に引き出されている。上面対向電極43は、第1の側面電極47に電気的に接続されている。第1の側面電極47は、図13に示すように、第1の側面42cを覆い、かつ下面42bの一部に至るように設けられている。もっとも、下面42bに至らずともよい。
【0083】
積層セラミック本体42の下面には、下面対向電極44が設けられている。下面対向電極44は、下面42bと第2の側面42dとのなす端縁に至るように設けられている。第2の側面42d上には、第1の側面電極48が設けられている。図14に示すように、第2の側面電極48に、下面対向電極44が電気的に接続されている。
【0084】
積層セラミック本体42内には内部対向電極45が設けられている。すなわち、2層のセラミック層42g,42h間に、1層の内部対向電極45が設けられている。
【0085】
上面対向電極43、内部対向電極45及び下面対向電極44は平面視した際に重なり合う部分、すなわち対向部を形成するように設けられている。
【0086】
本実施形態の積層セラミック構造体41では、分極処理に際し、上面対向電極43と下面対向電極44との間に直流電圧を印加すればよい。その結果、図14に矢印で示すように、セラミック層42hが厚み方向に分極される。他方、セラミック層42gは分極されない。
【0087】
よって、セラミック層42gは、最終的に得られる圧電アクチュエータにおいて駆動されない、不活性層となる。
【0088】
上記積層セラミック構造体41においても、上面対向電極43及び下面対向電極44を用いて電圧を印加することにより上記分極処理を行い得る。従って、分極が容易である。加えて、電気的特性検査に際しても、上面対向電極43及び下面対向電極44を外部と電気的に接続したり、上面及び下面側から保持して電気的特性を測定したりすることができる。従って、電気的特性検査を容易にかつ高精度に行い得る。
【0089】
上記積層セラミック構造体41から圧電アクチュエータを得るに際しては、第1の実施形態と同様に、第1の方向と直交する第2の方向と平行な方向に沿って積層セラミック構造体41を分割すればよい。この場合、上面対向電極43が設けられている部分から、図15に示す個々の圧電アクチュエータ49を得ることができる。
【0090】
圧電アクチュエータ49は、積層セラミック本体42を切断して得られたアクチュエータ本体42Aを有する。アクチュエータ本体42Aの上面には、上面対向電極43Aが形成されており、内部には、内部対向電極45Aが形成されている。下面には、下面対向電極44Aが位置することとなる。また、第1,第2の側面電極47A,48Aが第1,第2の側面を覆うように位置することとなる。
【0091】
従って、内部対向電極45Aと下面対向電極44Aとの間に直流電圧を印加することにより、圧電アクチュエータ49を駆動することができる。
【0092】
圧電アクチュエータ49においても、駆動に際して屈曲振動する対向部の上方の面及び下面が、上面対向電極43A及び下面対向電極44Aで覆われている。従って、脱粒を確実に防止することができる。もっとも、セラミック層42gが不活性層となるため、分極時には、積層セラミック本体42が反るおそれはある。
【0093】
なお、本実施形態では、スリットを設ける必要がないため、加工工程の簡略化を図ることができる。
【0094】
第1〜第3の実施形態では、スリットが設けられている部分よりも第1の方向外側において、上面対向電極が連なっている部分が存在する。上面対向電極において、スリットの両側を接続しているこの部分は、第1〜第3の実施形態では、圧電アクチュエータとして取り出すことができない部分となる。従って、第1〜第3の実施形態では、積層セラミック構造体から取り出される圧電アクチュエータの数が少なくなる。
【0095】
これに対して、第4の実施形態では、上面対向電極43の第1の方向全長にわたる部分の全てから、圧電アクチュエータを切り出すことができる。従って、同じ寸法の積層セラミック構造体を用意した場合、第4の実施形態によれば第1〜第3の実施形態よりも多くの数の圧電アクチュエータを取り出すことができる。
【0096】
図16は、本発明の第5の実施形態に係る積層セラミック構造体の断面図である。第5の実施形態の積層セラミック構造体51は、第4の実施形態の積層セラミック構造体41の変形例に相当する。すなわち、積層セラミック本体52内に、本実施形態では、3層の内部対向電極55a〜55cが設けられており、それによって4層のセラミック層52g〜52jが積層されている。セラミック層52h〜52jが図示の矢印で示すように分極されている。内部対向電極55a,55cが、第1の側面電極47に電気的に接続されている。中央に位置している内部対向電極55bは第2の側面電極48に電気的に接続されている。
【0097】
本実施形態の積層セラミック構造体51は、積層セラミック本体52内の構造が第4の実施形態の積層セラミック本体42と異ならされていることを除いては、第4の実施形態と同様である。従って、他の部分には積層セラミック本体42と同じ参照番号を付する。このように、積層セラミック本体52内に、4層のセラミック層52g〜52jを構成してもよい。この場合においても、最上部のセラミック層52gは分極されず、不活性層となる。
【0098】
図10は、図1に示した第1の実施形態に係る積層セラミック構造体の第1の変形例を説明するための斜視図である。図10に示す変形例に係る積層セラミック構造体80では、積層セラミック本体2の上面2a上に検査用電極81が設けられている。検査用電極81は、細長いストリップ状の形状を有する。検査用電極81は、スリット3a内において前述した第1の方向に延ばされている。また、検査用電極81は、スリット3aを介して上面対向電極3と隔てられている。
【0099】
検査用電極81は、適宜の金属などの導電性材料からなる。好ましくは、上面対向電極3と同じ金属からなることが望ましい。それによって、同一プロセスにより、上面対向電極3と検査用電極81を形成することができる。
【0100】
検査用電極81が設けられていることを除いては、積層セラミック構造体80は、第1の実施形態に係る積層セラミック構造体1を同様である。従って、同一の参照番号を付することにより同一部分の説明を省略する。
【0101】
検査用電極81が設けられているため、上面対向電極3と、検査用電極81との間で、短絡の有無を検査することができる。
【0102】
第1の実施形態に係る積層セラミック構造体1では、上面対向電極3の膜厚が薄いと、目視により、スリット3aが確実に形成されているか否かを確認することが困難である。また、この確認を電気的に行うことができない。スリット3aが正しく形成されないと、スリット3aの第2の方向両側の上面対向電極部分が短絡するおそれがある。よって、最終的に切り出された圧電アクチュエータが正しく動作しなくなるおそれがある。
【0103】
これに対して、検査用電極81が設けられていると、上面対向電極3と検査用電極81との間の短絡がないことを検査することができる。それによって、スリット3aの第2の方向両側の上面対向電極部分の短絡が生じていないことを確実に電気的に確認することができる。
【0104】
図11は、第1の実施形態の第2の変形例の製造工程を説明するための斜視図であり、図12は、第2の変形例の積層セラミック構造体の斜視図である。
【0105】
図11に示すように、積層セラミック本体2の上面2a上において、上面対向電極3として、第1の上面対向電極部3x及び第2の上面対向電極部3yを形成する。第1の上面対向電極部3xと第2の上面対向電極部3yとは、スリット3aにより隔てられている。スリット3aは、スリット本体部3a1と、第1,第2のスリット延長部3a2,3a3とを有する。スリット本体部3a1は、第1の方向に延ばされている。スリット本体部3a1の第1の方向一端側において、第1のスリット延長部3a2が連ねられている。第1のスリット延長部3a2は、スリット本体部3a1の上記一端側から、第1の側面2cに至るように設けられている。第2のスリット延長部3a3は、スリット本体部3a1の第1の方向他端側から第1の側面2cに至るように設けられている。
【0106】
特に限定されないが、第1,第2のスリット延長部3a2,3a3は第2の方向に延びている。
【0107】
第1の上面対向電極部3xは、平面視において、上記スリット3を囲む形状とされている。また、平面視において、上記第2の上面対向電極部3yは、上記スリット3に囲まれた形状とされている。第2の上面対向電極部3yは、第1の方向に延びるストリップ状の平面形状を有する。また、第2の上面対向電極部3yは、側面2cと上面2aとのなす端縁に沿うように設けられている。
【0108】
第1の上面対向電極部3xは、第1の方向両端から、それぞれ、側面2cと上面2aとのなす端縁に至る延長部3x1,3x2とを有する。
【0109】
従って、第1の上面対向電極部3xと、第2の上面対向電極部3yとは隔てられているが、いずれも側面2cと上面2aとのなす端縁に至るように設けられている。
【0110】
しかる後、図12に示すように、第1の側面電極7xを形成する。第1の側面電極7xは、第1の側面2cを覆うように設けられている。また、第1の側面電極7xは、上面2aと側面2cとのなす端縁において、第1,第2の上面対向電極部3x,3yに電気的に接続されている。
【0111】
図12に示した第2の変形例に係る積層セラミック構造体82では、上面対向電極3が上記のように形成されていることを除いては、第1の実施形態の積層セラミック構造体1と同様である。従って、同一部分については、同一の参照番号を付することにより、その説明を省略する。
【0112】
第2の変形例では、図11に示した状態で、すなわち第1の側面電極7xの形成前に、第1の上面対向電極部3xと、第2の上面対向電極部3yとの間で、短絡の有無を電気的に検査すればよい。すなわち、短絡が生じていない場合、スリット3aのスリット本体部3a1の第1の方向両側に位置している第1の上面対向電極部3xと上面対向電極部3yとの絶縁を確実に確認することができる。
【0113】
しかも、図12に示すように、第1の側面電極7xを形成した後には、第1,第2の上面対向電極部3x,3yが電気的に接続される。そのため、分極や、特性確認は第1の実施形態と同様に行うことができる。
【0114】
図17は、第6の実施形態に係る積層セラミック構造体の断面図である。第6の実施形態に係る積層セラミック構造体61は、第4の実施形態の積層セラミック構造体41の変形例に相当する。ここでは、積層セラミック本体62が、3層のセラミック層62g〜62iを上面側から順に配置した構造を有する。そして、2層の内部対向電極65a,65bがセラミック層62hを介して重なり合っている。
【0115】
積層セラミック本体62においては、最上部のセラミック層62gは分極処理されていない。セラミック層62h,62iが図示の矢印で示すように分極されている。
【0116】
その他の構成は、積層セラミック構造体61は、積層セラミック構造体41と同様である。従って、他の部分には積層セラミック本体42と同じ参照番号を付する。本実施形態のように、積層セラミック本体62内には、奇数層のセラミック層62g〜62iが積層されていてもよい。
【0117】
第5及び第6の実施形態の積層セラミック構造体51,61は、その他の点においては、第4の実施形態の積層セラミック構造体41と同様の構造を有する。従って、第4の実施形態と同様の効果を奏する。
【0118】
なお、第4〜第6の実施形態から明らかなように、最上部のセラミック層が不活性層となる構造の積層セラミック構造体においても、セラミック層の積層数は偶数層であってもよく、奇数層であってもよく、その積層数は特に限定されない。
【符号の説明】
【0119】
1…積層セラミック構造体
2…積層セラミック本体
2A…アクチュエータ本体
2A1,2A2…第1,第2の側面
2a…上面
2a1,2a2…領域
2b…下面
2c,2d…第1,第2の側面
2e,2f…第1,第2の端面
2g〜2i…セラミック層
3,3A…上面対向電極
3x,3y…上面対向電極部
3x1,3x2…延長部
3a…スリット
3a1…スリット本体部
3a2,3a3…スリット延長部
4,4A…下面対向電極
5,5A,6,6A…内部対向電極
7,7A,7x…第1の側面電極
8,8A…第2の側面電極
11…圧電アクチュエータ
21,31…積層セラミック構造体
32…積層セラミック本体
32a…上面
32b…下面
32c,32d…第1,第2の側面
32e,32f…第1,第2の端面
32g,32h…セラミック層
33…上面対向電極
33a…スリット
34…下面対向電極
35…内部対向電極
37,38…第1,第2の側面電極
41,51,61…積層セラミック構造体
42,52,62…積層セラミック本体
42A…アクチュエータ本体
42a…上面
42b…下面
42c,42d…第1,第2の側面
42e,42f…第1,第2の端面
42g,42h,52g〜52j,62g〜62i…セラミック層
43,43A…上面対向電極
44,44A…下面対向電極
45,45A,55a〜55c,65a,65b…内部対向電極
47,47A…第1の側面電極
48,48A…第2の側面電極
49…圧電アクチュエータ
80,82…積層セラミック構造体
81…検査用電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図10
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図16
図17