特許第6004156号(P6004156)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6004156-穀粒外観品位判別装置 図000002
  • 特許6004156-穀粒外観品位判別装置 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6004156
(24)【登録日】2016年9月16日
(45)【発行日】2016年10月5日
(54)【発明の名称】穀粒外観品位判別装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/85 20060101AFI20160923BHJP
【FI】
   G01N21/85 A
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-44084(P2012-44084)
(22)【出願日】2012年2月29日
(65)【公開番号】特開2013-181772(P2013-181772A)
(43)【公開日】2013年9月12日
【審査請求日】2015年2月25日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001812
【氏名又は名称】株式会社サタケ
(72)【発明者】
【氏名】松島 秀昭
(72)【発明者】
【氏名】石突 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】平野 修一
【審査官】 深田 高義
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−361333(JP,A)
【文献】 特開2005−017190(JP,A)
【文献】 特開2003−270156(JP,A)
【文献】 実開昭57−022043(JP,U)
【文献】 特開2011−242284(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/85
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀粒を底面上に載置する皿状の試料トレーと、
該試料トレー上の穀粒を前記試料トレーの下方から撮像する撮像手段と、
該撮像手段により撮像した穀粒の画像情報を分析する分析手段と、
前記画像情報を保存する保存手段と、
から構成され、前記試料トレーは、穀粒が載置される底面が透明で穀粒鑑定具として使用可能なものであり、使用者が把持可能な把持部を備えた穀粒外観品位判別装置において、
前記把持部は、前記底面の周縁部から一定の高さに立ち上がる周囲壁面を外側突出させて溝状に延設したものであり、該溝を形成する両側面の上端面と前記周囲壁面の上端面とが平坦な面を形成し、かつ、該溝の終端が穀粒を排出する排出口となり、該排出口の下端が前記底面よりも高い位置に設けられるものであることを特徴とする穀粒外観品位判別装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米粒等の穀粒の外観品位を判別する穀粒外観品位判別装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、穀物の検査は、特許文献1に記載されているようなカルトンと呼ばれる穀粒鑑定具を使用して目視により行われている。この方法によって手軽に検査を行うことができるが、目視による検査では、熟練を要する上、検査結果に個人差が生じるという問題があった。さらに、検査のためにカルトン上に載置された状態の穀粒の画像情報を保存できないという問題があった。
【0003】
それら問題を解決するために、例えば特許文献2に記載されているように、光学的に測定を行う方法が知られている。この方法によれば、専用のトレー(スキャン底板)に検査対象の穀粒を載置し、その穀粒をスキャナで撮像し、撮像して得られた画像情報を用いて検査を行うことが可能となる。
【0004】
しかし、特許文献2に記載の方法では、カルトンとは形状の異なる専用トレーを別途用意する必要があるので、検査のためにカルトン上に載置された状態の穀粒の画像情報を保存することができない。このため、従来のカルトンによる検査との関連づけができないという問題があった。また、前記トレーには穀粒の排出口が設けられていないため、測定後に前記トレー上の穀粒をサンプル袋等に移し替えることが困難であるといった問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4716389号公報
【特許文献2】国際公開第WO2011/162315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記問題点にかんがみ、検査員の目視によるカルトンでの検査を行うとともに、その検査のためにカルトン上に載置された状態の穀粒の画像情報を保存し、該画像情報によっても検査が行えるようにすることと、検査後の穀粒をトレーから容易に排出可能とすることを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明は上記問題を解決するために、穀粒を底面上に載置する皿状の試料トレーと、該試料トレー上の穀粒を前記試料トレーの下方から撮像する撮像手段と、該撮像手段により撮像した穀粒の画像情報を分析する分析手段と、前記画像情報を保存する保存手段と、から構成され、前記試料トレーは、穀粒が載置される底面が透明で穀粒鑑定具として使用可能なものであり、使用者が把持可能な把持部を備えた穀粒外観品位判別装置において、前記把持部は、前記底面の周縁部から一定の高さに立ち上がる周囲壁面を外側突出させて溝状に延設したものであり、該溝を形成する両側面の上端面と前記周囲壁面の上端面とが平坦な面を形成し、かつ、該溝の終端が穀粒を排出する排出口となり、該排出口の下端が前記底面よりも高い位置に設ける、という技術的手段を講じるものとした。
【0008】
また、前記試料トレーを穀粒鑑定具として使用可能な形状にする、という技術的手段を講じた。
【発明の効果】
【0009】
本発明の穀粒外観品位判別装置は、従来の目視による検査に用いるカルトンと同一形状又は略同一形状の試料トレーで測定を行うので、前記検査に前記試料トレーを使用することが可能である。このため、前記検査に前記試料トレーを使用することで、目視による検査後に、検査したそのままの状態の穀粒を前記穀粒外観品位判別装置にて光学的に測定することが可能になった。
【0010】
また、前記穀粒外観品位判別装置により光学的に測定を行うことで、目視による検査を行った状態の穀粒を画像情報として保存することができる。
【0011】
さらに、前記試料トレーに穀粒の排出口を設けたので、サンプル袋など比較的小さな袋に穀粒をスムーズに投入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の穀粒外観品位判別装置の斜視図である。
図2】本発明で使用する試料トレーの平面図である。
図3】本発明で使用する試料トレーの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は本発明の穀粒外観品位判別装置1を示した図ある。
【0014】
図1に示されるように、穀粒外観品位判別装置1は、コンピュータ2と、該コンピュータ2に接続された「画像読取装置」としてのカラースキャナ3とを含んで構成されている。
【0015】
前記コンピュータ2には、画像情報を分析する分析手段、画像情報の保存する保存手段、測定結果をネットワーク経由で配信する機能等が装備されている。
【0016】
前記カラースキャナ3は、画像読取面4を上端面に有するスキャナ本体5と、このスキャナ本体5の画像読取面4を測定時に覆うカバー6とから構成されている。
【0017】
前記スキャナ本体5の上面にはガラス製の画像読取面4が配設されている。画像読取面4はガラス板に限定されるわけではなく、アクリル板を使用してもよいし、それら以外の透明材料から成る板材を使用してもよい。上記構成の画像読取面4には、測定時に試料トレー20が載置される。
【0018】
前記スキャナ本体5内には、走査装置が配設されており、該走査装置は、試料トレー20の底面に対して光を照射する光照射部(光源)と、光照射部から照射されて穀粒表面で反射された反射光を受光する受光部とから構成されている。
【0019】
前記走査装置の受光部は、カラーCCD等で構成されており、画像読取面4に載置された穀粒からの反射光を例えばRGBの三色(赤色、緑色及び青色)の光毎に受光し、受光して得られた画像情報をコンピュータ2に出力するようになっている。
【0020】
前記カバー6の一辺はスキャナ本体5の上端一辺にヒンジ結合されているので、該ヒンジにより回動可能である。このため、測定時にはカバー6によってスキャナ本体5の画像読取面4をカバーすることができ、外部からの迷光を防止することができる。なお、カラースキャナ3には一般的なスキャナを用いることができる。
【0021】
次に、本実施形態の穀粒外観品位判別装置1の試料トレー20について説明する。図示しているように、試料トレー20は、略皿状に形成されている。試料トレー20は、平面視で略丸状の底面21と、この底面21の周縁部から立ち上げられた周囲壁面22と、該周囲壁面22の一部に設けられた排出口23とによって構成されている。排出口23は、把持部も兼ねているので、排出口の長さ(図2中のX)は、検査員が持ちやすい長さに設定されている。また、試料トレーの外径(排出口23は除く)は17cm程度であり、底面21の外径(排出口23は除く)は14cm程度である。
【0022】
前記試料トレー20の形状は、排出口23を除きカルトン(穀粒鑑定具)と同一形状であり、従来のカルトンと同様に検査員によって目視による検査を行うことが可能である。このため、試料トレー20の底面21上には千粒の玄米が重なることなく載置可能であることが望ましい。
【0023】
前記底面21は、透明状の板で形成されており、例えばアクリル樹脂等によって形成してもよい。また、試料トレー20が画像読取面4の上面に載置された状態では、画像読取面4の上面に底面21が当接状態で載置されるようになっている。ところで、穀粒外観品位判別装置1での測定では、底面21の周縁部付近の穀粒であっても、該穀粒の全体が撮像される必要がある。穀粒の一部分が欠落して撮像されてしまうと、画像処理の際に砕粒として判別されてしまうからである。このため、底面21は全面が透明であることが望ましい。
【0024】
前記周囲壁面22は、周囲壁面22と底面21とでなす角度が50度以上90度未満、より好ましくは60度以上80度以下であることが好ましい。前記なす角度が50度未満であると、測定時に底面21の周縁部に位置する穀粒が周囲壁面22に乗り上がることがある。そのよう場合、前記穀粒の形状を正確に撮像できなくなるおそれが生じる。また、前記なす角度が90度以上になると、目視での検査時に底面21の周縁部22付近の穀粒が、周囲壁面22が障壁となって見づらくなるという問題が生じる。
【0025】
前記排出口23は、試料トレー20に載置された穀粒を排出するために形成されている。検査後に試料トレー20上の穀粒をサンプル袋等に移し替える時に、排出口23をサンプル袋の袋口に差し込むことで、穀粒の移し替えを容易に行うことができる。また、排出口23は底面21に対して所定の傾斜角度が設けられている。その傾斜は、試料トレー20の外側が高くなるように設けられている。
【0026】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。本実施形態では検査対象の穀粒が玄米である場合について説明する。
【0027】
まず、試料トレー20の底面21上に、約千粒の玄米を粒同士がそれぞれ重ならないように投入する。投入後、従来のカルトンによる検査と同様に、前記底面21上の玄米を目視により検査する。なお、試料トレー20の底面21は透明であるため、目視による検査時には、試料トレー20の下方に玄米とは異なる色のシートを敷くとよい。前記色としては、黒色や青色が好ましい。
【0028】
目視による検査が終了した後、底面21上の玄米を動かすことなくそのままの状態で、図1に示すように、試料トレー20をカラースキャナ3の画像読取面4上に載置する。その際、排出口23を把持部として使用すればよい。カラースキャナ3での測定時には、試料トレー20の底面21が光路となるので、指等と接触して底面21に汚れが付着することは好ましくない。
【0029】
前記試料トレー20を載置した後は、カバー6で試料トレー20の上面をカバーし、カラースキャナ3を用いて玄米7の画像を撮像する。具体的には、スキャナ本体5の走査装置を、画像読取面4の底面に沿って移動(二次元走査)させる。その際に、走査装置の光照射部から玄米7へ光が照射され、玄米7で反射した反射光が走査装置の受光部に受光される。受光した信号は、RGBの画像情報としてコンピュータ2に出力される。
【0030】
なお、カラースキャナ3で撮像する玄米7は、底面21に接する面、すなわち、粒の下側が撮像される。このため、目視による検査では確認されない穀粒の裏側を測定することができる。
【0031】
前記画像情報をコンピュータ2で解析することにより、測定した玄米の外観品位(砕米、死米、着色米、青未熟米、害虫被害米等)を光学的に高精度で検査することができる。また、コンピュータ2において、前記画像情報が保存可能であることは言うまでもない。
【0032】
前記コンピュータ2での解析は、一般的な解析手法を用いることができる。例えば、特開2011−242284号公報に記載されているような方法を用いることができる。また、本実施例では、玄米を整列させることなく測定を行っているが、例えば、中国にて公開されているCN101281112号公報(公開公報)に記載されているような画像処理を行うことで、各玄米を粒単位で識別させることが可能である。
【0033】
また、カラースキャナ3で取り込んだ画像をコンピュータ2の画面に定期的に表示させる。これにより、検査員が、カラースキャナ3で取り込んだ画像と目視での検査結果とを比較することができ、穀粒外観品位判別装置1及び目視での検査結果に誤差(バラツキ)がないかをチェックすることが容易にできる。
【0034】
このように、検査員による目視の検査の後に、該検査を行った穀粒を簡単かつ迅速に、該穀粒を載せ換えることなく光学的に測定することができる。なお、試料トレー20は、カラースキャナ3で測定を行うので、試料トレー20本体からの反射光が前記測定時に影響することが考えられる。このため、少なくとも表面は光沢がないことが好ましく、黒体若しくは黒体に近い素材で試料トレー20を形成することが望ましい。
【0035】
ところで、本発明の穀粒外観品位判別装置で使用する試料トレー20の形状は、排出口23を省略した形状としてもよい。この場合、試料トレーの形状は穀粒鑑定具(カルトン)と同一の形状となる。また、特開2000−074901号公報に記載されているような角皿状の形状とすることも可能である。なお、一回の測定で測定する穀粒の個数は、特に限定されることはなく、試料トレーの底面に載置可能な個数の範囲で自由に増減すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の穀粒外観品位判別装置は、穀粒だけではなく、豆類も検査することが可能である。また、樹脂製ペレット等、粒状の物であれば検査に用いることができる。
【符号の説明】
【0037】
1 穀粒外観品位判別装置
2 コンピュータ
3 カラースキャナ
4 画像読取面
5 スキャナ本体
6 カバー
7 玄米
20 試料トレー
21 底面
22 周囲壁面
23 排出口
図1
図2
図3