特許第6004188号(P6004188)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヤマハ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6004188-スピーカ装置 図000002
  • 特許6004188-スピーカ装置 図000003
  • 特許6004188-スピーカ装置 図000004
  • 特許6004188-スピーカ装置 図000005
  • 特許6004188-スピーカ装置 図000006
  • 特許6004188-スピーカ装置 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6004188
(24)【登録日】2016年9月16日
(45)【発行日】2016年10月5日
(54)【発明の名称】スピーカ装置
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/26 20060101AFI20160923BHJP
   H04R 1/02 20060101ALI20160923BHJP
   H04R 3/14 20060101ALI20160923BHJP
   H04S 5/02 20060101ALI20160923BHJP
   H04R 5/02 20060101ALI20160923BHJP
   H04R 1/34 20060101ALI20160923BHJP
【FI】
   H04R1/26
   H04R1/02 101B
   H04R3/14
   H04S5/02 P
   H04R1/02 101Z
   H04R5/02 Z
   H04R5/02 J
   H04R1/34 310
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-107885(P2013-107885)
(22)【出願日】2013年5月22日
(65)【公開番号】特開2014-230067(P2014-230067A)
(43)【公開日】2014年12月8日
【審査請求日】2015年8月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123940
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 辰一
(72)【発明者】
【氏名】平川 和明
【審査官】 千本 潤介
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭57−143781(JP,U)
【文献】 特開2004−096273(JP,A)
【文献】 米国特許第04348552(US,A)
【文献】 特開2009−213103(JP,A)
【文献】 特表2000−517136(JP,A)
【文献】 特開平08−019089(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/26
H04R 1/02
H04R 1/34
H04R 3/14
H04R 5/02
H04S 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
背面および上面に開口部を有する筐体と、
前記背面の開口部に設けられた第1のスピーカユニットと、
前記上面の開口部に設けられた第2のスピーカユニットと、
前記第1のスピーカユニットに音声信号を供給するとともに、前記第2のスピーカユニットに、前記音声信号の一部の音域成分の信号を供給する電子回路と、
を備えたスピーカ装置。
【請求項2】
前記第2のスピーカユニットの上方に設けられ、前記第2のスピーカユニットから放音された音声を、前記筐体の前面側に反射するリフレクタを備えた請求項1に記載のスピーカ装置。
【請求項3】
前記電子回路は、前記音声信号の中音域の成分の信号を前記第2のスピーカユニットに供給する請求項1または請求項2に記載のスピーカ装置。
【請求項4】
前記筐体は、その内部が上下方向に、前記上面の開口部を含み、前記第2のスピーカユニットを収容する上層ボックス、前記背面の開口部を含み、前記第1のスピーカユニットを収容する中層ボックス、および、前記電子回路を収容する下層ボックスを含む複数の層に区切られている請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のスピーカ装置。
【請求項5】
前記第1のスピーカユニットは、複数チャンネルの音声信号がそれぞれ供給される複数のスピーカユニットからなり、
前記電子回路は、前記複数チャンネルの音声信号から前記一部の音域成分の信号を抽出して合成した信号を前記第2のスピーカユニットに供給する
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のスピーカ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部屋の壁面に音を反射させて音声を伝搬させるスピーカ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、四角柱状の細長い筐体の四側面すべてに複数のスピーカユニットが設けられ、筐体を直立させて設置するスピーカ装置の発明が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。このスピーカ装置は、各スピーカユニットがオーディオ信号を出力するタイミングを遅延・調整して、指向性を持たせた音波である音声ビームを出力する。このスピーカ装置は、音声ビームを部屋の床や天井の方向に出力して複数回反射させるので、間接音が多くの方向から聴取者に到達することになる。これにより、聴取者にスピーカ装置の明確な位置を感じさせないという効果が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−37058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のスピーカ装置を、例えば部屋のコーナーに置き、このコーナーの壁に対向するスピーカユニットから音声を放音させると、部屋のコーナーにおいて中音域がこもって音声が不明瞭になるという問題がある。また、特許文献1に記載のスピーカ装置は、前記のように筐体の四側面すべてに複数のスピーカユニットが設けられているので装飾などを施すことができず、そのデザインが制限されてしまうという問題がある。
そこで、本発明は、音声を壁面で反射させても明瞭さを維持でき、かつ筐体のデザインの自由度が高いスピーカ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明のスピーカ装置は、背面および上面に開口部を有する筐体と、背面の開口部に設けられた第1のスピーカユニットと、上面の開口部に設けられた第2のスピーカユニットと、第1のスピーカユニットに音声信号を供給するとともに、第2のスピーカユニットに音声信号の一部の音域成分の信号を供給する電子回路と、を備えたことを特徴とする。
【0006】
この発明のスピーカ装置は、例えば部屋の壁際に設置される。背面側に設けられた第1のスピーカユニットから放音された音声は壁面で反射して部屋に伝搬する。放音された音声のうち一部の周波数成分が反射で減衰してこもった音声になっても、上向きに設置された第2のスピーカユニットによりその成分を補うことができる。
【0007】
上記発明において、第2のスピーカユニットの上方に設けられ、第2のスピーカユニットから放音された音声を筐体の前面側に反射するリフレクタを備えてもよい。
上記発明において、電子回路は、音声信号の中音域の成分の信号を第2のスピーカユニットに供給してもよい。
【0008】
上記発明において、筐体の内部が上下方向に三層に区切られていてもよい。上層ボックスは、上面の開口部を含み第2のスピーカユニットを収容する。中層ボックスは、背面の開口部を含み第1のスピーカユニットを収容する。下層ボックスは、電子回路を収容する。
【0009】
上記発明において、第1のスピーカユニットは、複数チャンネルの音声信号がそれぞれ供給される複数のスピーカユニットからなり、電子回路は、複数チャンネルの音声信号から一部の音域成分の信号を抽出して合成した信号を第2のスピーカユニットに供給するものであってもよい。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、正面にスピーカユニットを設けず筐体のデザインの自由度を高くしても、放音される音声の明瞭さを確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】この発明の実施形態に係るスピーカ装置の外観図
図2】スピーカ装置の内部構成図
図3】スピーカ装置のスピーカグリルを取り外した状態の背面図
図4】スピーカ装置の上端に設けられるヘッドピースの斜視図
図5】スピーカ装置の設置形態の例を示す図
図6】スピーカ装置の電子回路のブロック図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態に係るスピーカ装置について説明する。図1は、この発明の実施形態に係るスピーカ装置の外観図であり、図1(A)が正面図、図1(B)が右側面図、図1(C)が背面図である。図2は、スピーカ装置の内部構成図である。図3は、スピーカグリルを取り外したスピーカ装置の背面図である。
【0013】
本発明の実施形態に係るスピーカ装置1は、複数のスピーカが収容される筐体11、筺体11を床面から支持する円板状のベース14、および、筺体11とベース14とを接続する棒状のピロー13を備えている。筐体11は、ピロー13およびベース14によって支持されて鉛直方向に立設される。
【0014】
筐体11は、略四角柱の形状をなしており、上方向に向けて若干幅が狭まっている。すなわち、正確には四角錐台形状(四角錐の頂点側(頭部)を底面に平行な面で水平に切削した形状)である。筐体11の側面は、鉛直線に対して2パーセント傾斜している。スピーカ装置1は、2つの側面に挟まれる稜線部19を正面(ユーザ方向)にして設置される。以下の説明では、正面方向を前方、背面方向を後方と呼ぶ。また、左右の方向は、正面方向のユーザからスピーカ装置1を見たときの方向を用いる。
【0015】
このスピーカ装置1では、スピーカユニットは、前向きでなく後ろ向きに設けられている。このため、図1(B),(C)に示されるように、筺体11の背面側にスピーカグリル12が設けられている。これにより、スピーカ装置1の正面側には、スピーカグリル12を設ける必要がなくなり、筐体11前面の稜線部19には、装飾用のLED16が設けられている。
【0016】
筐体11の内部は、2枚の仕切り板によって仕切られており、上下方向に3つの空間を有する構造になっている。上部の空間がスピーカユニット20を収容する中音域用スピーカボックス30、中央部の空間がスピーカユニット21、22を収容するステレオスピーカボックス31、下部の空間が電子回路15を収容する回路ボックス32として用いられる。
【0017】
図2および図3に示すように、ステレオスピーカボックス31は、背面側に開口しており、この開口部にバッフル板24が設けられている。このバッフル板24は、平面ではなく、四角柱の筺体11の形状に合わせて左右に湾曲している。このバッフル板24に、スピーカユニット21、22、および、バスレフポート23が取り付けられている。スピーカユニット21は、右チャンネルのスピーカユニットであり、斜め右後方に向けて取り付けられている。スピーカユニット22は、左チャンネルのスピーカユニットであり、斜め左後方に向けて取り付けられている。バスレフポート23は、ダクトを介してステレオスピーカボックス31内部に開口している。バッフル板24は、スピーカグリル12に覆われている。図1(B)に示すように、スピーカグリル12は、ほぼ筺体11と面一に形成された金属メッシュからなる。
【0018】
また、中音域用スピーカボックス30は上面に開口しており、この開口部にスピーカユニット20が上向きに取り付けられている。スピーカユニット20のさらに上には、スピーカユニット20から放音された音声を前方に反射するヘッドピース10が設けられている。
【0019】
図4は、ヘッドピースの斜視図である。ヘッドピース10は、放音口110を有する上部の本体部101と、本体部101の上面に配置された天板102と、下部のスカート106を備えている。本体部101の形状は略立方体である。ヘッドピース10の底板103には、その中央部に円形の開口部103Aが形成されている。開口部103Aの口径は、スピーカユニット20の口径とほぼ同じである。
【0020】
本体部101の内側には、背板104である2つの側面113,114に挟まれた辺の下側の頂点105Cと、放音口110である(切り欠かかれた)2つの側面111、112の上辺とをつなぐ2つの三角形の面であるリフレクタ105(105A,105B)が形成されている。本体部101は略立方体であるため、リフレクタ105の左右の面105A、105Bは、それぞれ底板103などの水平面に対して約45度の角度をなしている。
【0021】
スピーカユニット20の放音面は、ヘッドピース10の下方かつ同じ中心軸で真上に向けて設置されている。また、ヘッドピース10のリフレクタ105の面は、スピーカユニット20の放音面に対向して配置され、その傾斜角度は約45度である。そのため、スピーカユニット20から上方向に放音された音声は、図4に示す矢印201のようにリフレクタ105で反射されて左右の斜め前方に広がるように伝搬される。これにより、スピーカユニット20から音声が上向きに放音されても、リフレクタ105で反射されて筐体11側面の前面側から前方左右方向に、損失少なく伝搬することが可能になる。
【0022】
図5は、スピーカ装置1の設置形態の一例を示す図である。スピーカ装置1は、部屋の隅(例えばコーナー)に壁を背にして設置される。正面側には、スピーカユニットやスピーカグリルがなく、装飾的なLED照明16が設けられているため、一般のスピーカ装置とは異なり装飾的なインテリアとしても機能する。
【0023】
スピーカ装置1に音声信号が入力されたとき、スピーカユニット22、21から、左右チャンネルの音声がそれぞれ放音される。スピーカユニット21、22は背面方向(壁向きに)設けられているため、スピーカユニット21、22から放音された左右チャンネルの音声は、壁面で反射して前方(室内方向)に伝搬する。スピーカユニット21、22から放音された音声のうち、高音域の音声は直進性が強いため壁で良く反射する。また、低音域の音声は聴感上定位感が強くないため、壁面付近で鳴っているように聴こえてもユーザ(聴取者)にとって違和感が少ない。一方、中音域の音声は、人の話し声や歌声を含む音域であり、壁面で反射させると減衰が大きく、いわゆる「こもり」となって音声の明瞭度を低下させてしまう。そこで、このスピーカ装置1は、左右チャンネルの音声から中音域の成分を抽出し、この中音域の音声を上向きのスピーカユニット20から放音する。スピーカユニット20は上向きであるが、その上に設けられているヘッドピース10により、放音された中音域の音声は良好に前方に伝搬する。これにより、ユーザに、低音域から高音域までの音声を違和感なく明瞭に聴かせることが可能になる。
【0024】
筺体11の回路ボックス32には電子回路15が内蔵されている。図6は、電子回路15の主要部のブロック図である。電子回路15は、コントローラ50、信号処理部51、オーディオアンプ52、入力選択部53、Bluetooth(登録商標)通信回路54、ケーブルコネクタ55、LED点灯回路56などを有している。
【0025】
コントローラ50は、マイコンで構成される。コントローラ50には、赤外線リモコン(不図示)によって送信される赤外線信号を受光する受光回路40が接続されている。受光回路40は、受光した赤外線信号を電子信号に変換してコントローラ50に入力する。コントローラ50は、受光回路40から入力された信号に基づいて、入力選択部53における入力信号の選択、信号処理部51における音質の調整、オーディオアンプ52の音量の調整、Bluetooth通信回路54のオン/オフやパスワードの設定、および、LED16の点灯制御などを行う。
【0026】
信号処理部51は、入力選択部53から入力された(2チャンネルステレオ)のオーディオ信号の音質を調整するとともに、左右チャンネルの信号から中音域の成分を取り出してこれを合成し、第3チャンネルのオーディオ信号として出力する。すなわち、信号処理部51は、機能的にバンドパスフィルタ66,67、および、ミキサ68を内蔵している。また、オーディオアンプ52は、機能的に、3チャンネルの増幅回路64,65,69を有しており、それぞれ左チャンネル、右チャンネルおよび中音域のオーディオ信号を増幅する。増幅回路64は、左チャンネルの音声信号を増幅し、その信号をスピーカ22に出力する。増幅回路65は、右チャンネルの音声信号を増幅し、その信号をスピーカ212に出力する。
【0027】
バンドパスフィルタ66は、左チャンネルの音声信号のうち、中音域(一例として、100Hz〜7kHz)を抽出してミキサ68に出力する。バンドパスフィルタ67も同様に、右チャンネルの音声信号のうち、中音域を抽出してミキサ68に出力する。ミキサ68は、入力された左チャンネルの中音域の音声信号と右チャンネルの中音域の音声信号を合成し、この合成信号をアンプ69に出力する。アンプ69は、中音域の合成信号を増幅してスピーカユニット20に出力する。したがって、スピーカユニット20からは、左右チャンネルの中音域の音声が放音される。
【0028】
図5に示したように、スピーカ装置1が背面側を部屋の壁に向けて設置された場合、スピーカユニット21,22から放音された音声は壁面で反射される。これにより、スリムな筐体から放音された音声でも広がりを持った響きにすることができる。このとき、中音域の音声が壁面での反射によって不明瞭になっても、スピーカユニット20から中音域の音声が放音されるので、左右チャンネルの音声の全音域を明瞭に響かせることができる。
また、筐体11の前面にスピーカユニットやスピーカグリルを設けていないので、前面側のデザインの自由度も高くなる。
【0029】
バンドパスフィルタ66が抽出する中音域は、概ね100Hz〜7kHzの周波数帯域であるがこれに限定されない。また、100Hz〜7kHzの範囲内の一部の帯域であってもよい。また、バンドパスフィルタ66が抽出する帯域は、中音域に限定されない。中音域以外の帯域の音声をスピーカユニット20から放音するようにしても、それぞれの帯域に応じた効果を得ることが可能である。
【0030】
また、この実施形態では、背面のスピーカユニット21、22に全帯域の音声を放音させるようにしているが、上向きのスピーカユニット20から放音する帯域成分を除去した信号をスピーカユニット21、22から放音するようにしてもよい。
【0031】
また、上記実施形態では、背面には2つのスピーカユニット21,22を設けているが、個数は2個に限定されない。また、放音する音声のチャンネル数も2チャンネルに限定されない。たとえば、モノラルであっても良い。
【0032】
なお、スピーカ装置1の筐体11の形状は四角錐台形状に限るものではなく、円錐台形状、円柱状、多角柱状など概ね柱状であればよい。
【0033】
スピーカユニット21,22が、本発明の第1のスピーカユニットに対応する。スピーカユニット20が、本発明の第2のスピーカユニットに対応する。この実施形態のいずれの構成部も、本発明の趣旨を損なわない範囲で変形は自由である。
【符号の説明】
【0034】
1 スピーカ装置
10 ヘッドピース
11 筐体
15 電子回路
20、21、22 スピーカユニット
30 中音域用スピーカボックス
31 ステレオスピーカボックス
32 回路ボックス
105 リフレクタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6