特許第6004192号(P6004192)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社オートネットワーク技術研究所の特許一覧 ▶ 住友電装株式会社の特許一覧 ▶ 住友電気工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6004192-電気接続箱 図000002
  • 特許6004192-電気接続箱 図000003
  • 特許6004192-電気接続箱 図000004
  • 特許6004192-電気接続箱 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6004192
(24)【登録日】2016年9月16日
(45)【発行日】2016年10月5日
(54)【発明の名称】電気接続箱
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/16 20060101AFI20160923BHJP
   H05K 7/06 20060101ALI20160923BHJP
【FI】
   H02G3/16
   H05K7/06 C
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-229217(P2013-229217)
(22)【出願日】2013年11月5日
(65)【公開番号】特開2015-91153(P2015-91153A)
(43)【公開日】2015年5月11日
【審査請求日】2015年11月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】蜂矢 賀一
【審査官】 石坂 知樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−6612(JP,A)
【文献】 特開2007−135385(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/16
H05K 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源ラインに接続された電源側バスバーと、グランドラインに接続されたグランド側バスバーを含んだ複数のバスバーが絶縁板上に配設されてなるバスバー回路体を備えた電気接続箱において、
前記電源側バスバーと前記グランド側バスバーが隣接配置されている一方、
前記電源側バスバーと前記グランド側バスバーの隣接隙間から露呈する前記絶縁板の露呈部に対して、酸化物堆積阻止構造が施されている
ことを特徴とする電気接続箱。
【請求項2】
前記酸化物堆積阻止構造が、前記露呈部を切り欠いたものである請求項1に記載の電気接続箱。
【請求項3】
前記酸化物堆積阻止構造が、前記露呈部に加えて、前記露呈部に連接して前記電源側バスバーと前記グランド側バスバーの少なくとも一方を支持するバスバー支持部を切り欠いたものである請求項2に記載の電気接続箱。
【請求項4】
前記酸化物堆積阻止構造が、前記露呈部に複数の貫通孔を設けるものである請求項1に記載の電気接続箱。
【請求項5】
前記絶縁板が網目構造の樹脂板で形成されており、各網目により前記貫通孔が構成されている請求項4に記載の電気接続箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両に搭載される電気接続箱に係り、特に浸水後の発火防止構造を備えた電気接続箱に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車等の電装系の適所には電気接続箱が設けられており、バッテリーから各種負荷への電源分配がスペース効率よく行われるようになっている。具体的には、電気接続箱の内部に、バッテリー等の電源ラインに接続された電源側バスバーとグランドラインに接続されたグランド側バスバーが絶縁板上に配設されたバスバー回路体が収容されており、電源分配が行われるようになっている。
【0003】
ところで、このような電気接続箱の内部に水が浸入すると、バスバー回路体のショート等が発生するおそれがあるため、電気接続箱には、車両使用時に想定される水かかりを考慮したある程度の防水対策がなされている。例えば、特許第4585980号公報(特許文献1)に記載のように、電気接続箱のケースの隙間をシール材等で封止したり、ケース内の適所に排水斜面を設けて内部に浸入した水の排水を促すようにしたものが知られている。
【0004】
しかしながら、従来の電気接続箱の防水構造は、あくまで車両使用時を想定したものであることから、東日本大震災の如き災害時に津波や洪水等で浸水する想定外のケースにおいて、十分な防水効果が発揮され得ないことは当然である。そして、想定外の浸水後に、車両のバッテリー付近の電気接続箱が発火し車両火災が発生する事例が多数報告され、問題視されるようになってきている。
【0005】
このような想定外の浸水後に、電気接続箱が発火しないよう何等かの対策を考案することは急務であるが、津波や洪水等による浸水まで想定した防水構造を電気接続箱に施すことは、電気接続箱の大型化やコスト高を招くばかりでなく、通常の車両使用時における電気接続箱の機能に支障を来すおそれもあり、現実的な対策とは言い難い。それ故、浸水後に電気接続箱の発火を防止し得る有効な対策が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4585980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、電気接続箱の防水構造に寄らずとも浸水後の車両火災の発生を防止することができる、新規な構造の電気接続箱を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
車両浸水後の発火原因について本発明者が鋭意研究した結果、特にバッテリーに直結された電気接続箱において、電源ラインに接続された銅製の電源側バスバーとグランドラインに接続された銅製のグランド側バスバーが隣接配置された部位において、発火が起こることを見出した。すなわち、車両が塩水等の電解質を含んだ水に浸水した際には、比較的電位差の大きな電源側バスバーとグランド側バスバーの間で電気分解が生じ、陽極に銅の酸化物である亜酸化銅(Cu2 0)が析出する。水が引いた際に、析出した亜酸化銅が電源側バスバーとグランド側バスバーの間に堆積することにより、両者の間に亜酸化銅の堆積物による短絡路が形成される。浸水後もバッテリーからの通電が継続され、ある程度温度が上昇した際に亜酸化銅が低抵抗化することでショートが発生する。その際の発熱により絶縁板が燃焼することにより火災が発生することを新たに見出したのである。そして、かかる新たな見地に基づき本発明を完成するに至ったのである。
【0009】
本発明の第一の態様は、電源ラインに接続された電源側バスバーと、グランドラインに接続されたグランド側バスバーを含んだ複数のバスバーが絶縁板上に配設されてなるバスバー回路体を備えた電気接続箱において、前記電源側バスバーと前記グランド側バスバーが隣接配置されている一方、前記電源側バスバーと前記グランド側バスバーの隣接隙間から露呈する前記絶縁板の露呈部に対して、酸化物堆積阻止構造が施されていることを特徴とする。
【0010】
本態様によれば、絶縁板上に隣接配置された電源側バスバーとグランド側バスバーの隣接隙間から露呈される絶縁板の露呈部に対して、酸化物堆積阻止構造が施されている。それ故、仮に車両が津波や洪水等により浸水して電位差の大きな隣接する電源側バスバーとグランド側バスバーの間で電気分解が発生して酸化物である亜酸化銅が生じても、それらの隣接隙間には、かかる酸化物が堆積することを阻止する酸化物堆積阻止構造が施されている。従って、隣接配置された電源側バスバーとグランド側バスバーの間に酸化物が堆積することを未然に防止して、堆積酸化物による短絡路の形成を阻止してショートやそれによる発火を防止することができる。従って、電気接続箱の防水構造に寄らずとも、簡単な構造で浸水時の電気接続箱の発火の発生を防ぐことができるのである。
【0011】
なお、電源側バスバーとは電源ラインであるバッテリーのプラス端子に直接接続されているものの他、他部材を介して間接的に接続されているものも含む。また、グランド側バスバーとは、グランドラインであるバッテリーのマイナス端子に直接接続されているものの他、他部材を介して間接的に接続されているものも含む。要するに、電位差を有する隣接配置された2つのバスバーにより、電源側バスバーとグランド側バスバーが構成される。
【0012】
本発明の第二の態様は、前記第一の態様に記載のものにおいて、前記酸化物堆積阻止構造が、前記露呈部を切り欠いたものである。
【0013】
本態様によれば、電源側バスバーとグランド側バスバーの隣接隙間から露呈する絶縁板の露呈部を切り欠くことにより酸化物堆積阻止構造が構成されている。従って、仮に車両浸水時に亜酸化銅が析出しても、電源側バスバーとグランド側バスバーの隣接隙間の絶縁板が切り欠かれており、隣接隙間の絶縁板上に亜酸化銅が堆積することがより確実に防止されている。それ故、堆積酸化物によるショートやそれに伴う発火を有利に防止できるのである。
【0014】
本発明の第三の態様は、前記第二の態様に記載のものにおいて、前記酸化物堆積阻止構造が、前記露呈部に加えて、前記露呈部に連接して前記電源側バスバーと前記グランド側バスバーの少なくとも一方を支持するバスバー支持部を切り欠いたものである。
【0015】
本態様によれば、電源側バスバーとグランド側バスバーの隣接隙間から露呈する絶縁板の露呈部に加えて、露呈部に連接して電源側バスバーとグランド側バスバーの少なくとも一方を支持するバスバー支持部を切り欠くことにより酸化物堆積阻止構造が構成されている。従って、仮に車両浸水時に亜酸化銅が析出しても、絶縁板の露呈部が切り欠かれていることにより亜酸化銅の堆積が防止されていることに加えて、露呈部に連接する絶縁板のバスバー支持部が切り欠かれていることにより、堆積酸化物によるショートが発生したとしてもそれに伴い発火する絶縁板が切り欠かれていることから結果として発火を有利に防止できるのである。
【0016】
本発明の第四の態様は、前記第一の態様に記載のものにおいて、前記酸化物堆積阻止構造が、前記露呈部に複数の貫通孔を設けるものである。
【0017】
本態様によれば、電源側バスバーとグランド側バスバーの隣接隙間から露呈する絶縁板の露呈部に複数の貫通孔が設けられることにより酸化物堆積阻止構造が構成されている。従って、仮に車両浸水時に亜酸化銅が析出しても、それら貫通孔から酸化物が落下し、電源側バスバーとグランド側バスバーの隣接隙間に堆積することが阻止されている。それ故、堆積酸化物によるショートやそれに伴う発火を有利に防止できるのである。特に、絶縁板の露呈部に貫通孔を設けることにより、完全に切り欠く場合に比して、絶縁板の強度やバスバーの保持性を確保しつつ、酸化物の堆積を阻止できるのである。
【0018】
本発明の第五の態様は、前記第四の態様に記載のものにおいて、前記絶縁板が網目構造の樹脂板で形成されており、各網目により前記貫通孔が構成されているものである。
【0019】
本態様によれば、絶縁板全体を網目構造の樹脂板で形成できることから、電源側バスバーとグランド側バスバーの隣接隙間から露呈する露呈部のみに酸化物堆積阻止構造を別途形成する場合に比して、製造効率よく酸化物堆積阻止構造を絶縁板に設けることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、絶縁板上に隣接配置された電源側バスバーとグランド側バスバーの隣接隙間から露呈される絶縁板の露呈部に対して、酸化物堆積阻止構造が施されている。それ故、仮に車両が津波や洪水等により浸水して電源側バスバーとグランド側バスバーの間で電気分解が発生して亜酸化銅が生じても、電源側バスバーとグランド側バスバーの間に酸化物が堆積することを未然に防止して、堆積酸化物による短絡路の形成を阻止してショートやそれによる発火を防止することができる。従って、電気接続箱の防水構造に寄らずとも、簡単な構造で浸水時の電気接続箱の発火の発生を防ぐことができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態としての電気接続箱を示す分解斜視図。
図2図1に示すバスバー回路体を示す分解斜視図。
図3図1におけるIII−III断面の要部拡大図。
図4】本発明の電気接続箱に用いられる酸化物堆積阻止構造の他の態様を示す図であって、図2に相当する分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0023】
先ず、図1〜3に、本発明の一実施形態としての電気接続箱10を示す。電気接続箱10は、図1に示されているように、内部回路を構成するバスバー回路体12と、アッパケース14と、ロアケース16とを含んで構成されている。そして、バスバー回路体12の両側からアッパケース14とロアケース16が重ね合わされて組み付けられることにより、ケースの内部にバスバー回路体12が収容された電気接続箱10が提供されるようになっている。なお、バスバー回路体12は、図示しないボルト等の公知の固着手段によってケースに対して固着されている。また、以下の説明において、特に断りのない場合には、上方とは、アッパケース14が位置する図1中の上方、下方とは、ロアケース16が位置する図1中の下方をいうものとする。
【0024】
図1に示されているように、アッパケース14およびロアケース16は、合成樹脂から形成されており、互いに相手側に向けて開口する略矩形浅底の箱体形状を有している。そして、アッパケース14とロアケース16は、例えば、アッパケース14に設けられた図示しない係止爪が、ロアケース16の対応する箇所に設けられた図示しない係合枠に挿通されて係合されることで、相互に組み付けられるようになっている。また、アッパケース14あるいはロアケース16の周壁には、周方向に離隔した適所に図示しないブラケット装着部が設けられており、車体側に設けられた図示しないブラケットが装着されて、電気接続箱10がエンジンルーム内等の車両の適所に装着固定されるようになっている。
【0025】
また、図1に示されているように、アッパケース14の上面18には、アッパケース14の上方に向かって突出する周壁を備えたコネクタ収容部20a〜dが複数設けられている。これら複数のコネクタ収容部20a〜dの底壁に形成された端子挿通孔22を通じて、後述するバスバー28a〜gの端部に設けられたバスバー端子30,32がアッパケース14の上方に向かって突出している。なお、バスバー端子30,32は、複数本の適当な組合せからなるグループを形成して、それぞれのコネクタ収容部20a〜d内に配設されている。
【0026】
そして、コネクタ収容部20a〜dに対して、図示しない外部の電気回路を構成する電線の端末に設けられた外部コネクタが差し込まれるようになっている。この外部コネクタの差し込みにより、コネクタ収容部20a〜d内に突設されたバスバー端子30,32に対して、外部の電気回路を構成する電線が接続されるようになっている。
【0027】
一方、バスバー回路体12は、図2に示されているように、略薄肉平板形状の絶縁板26a,26bの表面に対してバスバー28a〜gが重ね合わされて支持された積層構造とされている。すなわち、絶縁板26a,26bの表面には、重ね合わされて支持されたバスバー28a〜gに対応した形状のバスバー嵌合溝34が形成されており、このバスバー嵌合溝34にバスバー28a〜gが嵌め込まれて支持されている。これにより、バスバー28a〜gは、絶縁板26a,26bの表面において、バスバー嵌合溝34の底面である配設面36に載置されて位置決め状態で組み付けられている。なお、本実施形態では、バスバー嵌合溝34は、バスバー嵌合溝34を囲むように突設されたリブ38によって周壁が形成された構造とされている。
【0028】
各バスバー28a〜gは、導電性金属板の打抜加工等で形成されたプレートであって、その端縁部の適当な位置にバスバー端子30,32を備えている。これらバスバー端子30,32は、絶縁板26a,26b上で上方に向かって略直角に屈曲して形成されている。なお、各バスバー端子30,32の基端部分は、絶縁板26a,26bに形成されたバスバー嵌合溝34の底壁部分で支持されている。
【0029】
下段の絶縁板26bに載置されたバスバー28e〜gのバスバー端子32は、上段の絶縁板26aに形成された複数の貫通孔40に挿通されており、上段の絶縁板26aに載置されたバスバー28a〜dのバスバー端子30と同様に、上段の絶縁板26aの表面から上方に向かって略直角に突出されている。
【0030】
一方、絶縁板26a,26bは、いずれも合成樹脂から形成されており、網目構造を有している。具体的には、絶縁板26a,26bはいずれも略矩形状とされており、絶縁板26a,26bの全面に亘り縦横両方向に対して所定ピッチで貫通孔42を貫設することにより、網目構造が形成されている。言い換えれば、網目構造を構成する各網目により貫通孔42が構成されているのである。
【0031】
本実施形態では、例えば、バスバー28cが電源ラインに接続された電源側バスバーとされている一方、バスバー28d,28fがグランドラインに接続されたグランド側バスバーとされている。ここで、電源側バスバーとは電源ラインであるバッテリーのプラス端子に直接接続されているものの他、他部材を介して間接的に接続されているものも含む。また、グランド側バスバーとは、グランドラインであるバッテリーのマイナス端子に直接接続されているものの他、他部材を介して間接的に接続されているものも含む。要するに、電位差を有する隣接配置された2つのバスバーにより、電源側バスバーとグランド側バスバーが構成されるのである。例えば、電源側バスバーには、12Vの他、24Vや48Vといった電圧が印加されるバスバーや、12V以下の電圧が印加されるバスバーも含まれる。また、グランド側バスバーには、0Vの電圧が印加されるバスバーの他、電源側バスバーよりも低い0V以上の電圧が印加されるバスバーも含まれる。本実施形態では、電源側バスバー28cに12Vの電圧が印加され、グランド側バスバー28d,28fに0Vの電圧が印加されている。
【0032】
図1〜3に示されているように、電源側バスバー28cとグランド側バスバー28dが隣接配置されており、電源側バスバー28cとグランド側バスバー28dの隣接隙間から露呈する絶縁板26aの露呈部44a〜cには、複数の貫通孔42が貫設されている。それ故、仮に車両が津波や洪水等により浸水して電位差の大きな隣接する電源側バスバー28cとグランド側バスバー28dの間で電気分解が発生して酸化物である亜酸化銅が生じても、それら貫通孔42から亜酸化銅が落下し、電源側バスバー28cとグランド側バスバー28dの隣接隙間に堆積することが阻止されている。それ故、堆積酸化物である亜酸化銅によるショートやそれに伴う発火を有利に防止できる。従って、電気接続箱10の防水構造に寄らずとも、簡単な構造で浸水時の電気接続箱10の発火の発生を防ぐことができるのである。
【0033】
しかも、絶縁板26aの露呈部44a〜cに貫通孔42を設けることにより対策を行うことで、絶縁板26aの露呈部44a〜cを完全に切り欠く場合に比して、絶縁板26aの強度やバスバー28cの保持性を確保しつつ、酸化物の堆積を阻止できるのである。このように、本実施形態では、絶縁板26aの露呈部44a〜cに貫設された複数の貫通孔42により、酸化物堆積阻止構造が構成されているのである。
【0034】
さらにまた、本実施形態によれば、絶縁板26a全体を網目構造の樹脂板で形成されていることから、電源側バスバー28cとグランド側バスバー28dの隣接隙間から露呈する絶縁板26aの露呈部44a〜cのみに酸化物堆積阻止構造たる貫通孔42を別途形成する場合に比して、製造効率よく貫通孔42を絶縁板26aに設けることができる。しかも、下段の絶縁板26b全体も網目構造の樹脂板で形成されていることから、上段の絶縁板26aの露呈部44a〜cから落下する酸化物をさらに下段の絶縁板26bの貫通孔42に落とし込むことができるので、かかる酸化物により下段のバスバー28e〜g間でショートが生じることを有利に防止できる。
【0035】
また、図2及び図3に示されているように、網目構造の絶縁板26aを挟んで上下に電源側バスバー28cとグランド側バスバー28fが重ね合される部位において、網目を覆蓋する処置としてのシート46が、絶縁板26aとグランド側バスバー28fの間に配設されている。これにより、かかる上下の重なり合わせ部位における浸水後の酸化物の堆積によるショートおよびそれによる発火が防止されるようになっている。なお、シート46は絶縁性のシート材、例えば合成樹脂により形成されている。
【0036】
次に、図4を用いて、本発明の電気接続箱10のバスバー回路体12に用いられる酸化物堆積阻止構造の他の態様について詳述するが、上記実施形態と同様な構造とされた部材および部位については、図中に、上記実施形態と同一の符号を付することにより、それらの詳細な説明を省略する。すなわち、かかるバスバー回路体50は、絶縁板26a,26bがそれぞれ貫通孔42の無い平板形状とされている一方、酸化物堆積阻止構造が、上段の絶縁板26aの露呈部44a〜cを切り欠いたものである点に関して、上記実施形態と異なる実施形態を示すものである。バスバー回路体50においては、上段の絶縁板26aの露呈部44a〜cを切り欠いたことにより、電源側バスバー28cとグランド側バスバー28dの隣接隙間から露呈する絶縁板26aの露呈部44a〜c上に亜酸化銅が堆積することをより確実に防止することができる。それ故、堆積酸化物によるショートやそれに伴う発火を有利に防止できるのである。
【0037】
しかも、本実施形態では、電源側バスバー28cとグランド側バスバー28dの隣接隙間が最も狭くなる領域Aにおいて、酸化物堆積阻止構造が、露呈部44a〜cに加えて、露呈部44a〜cに連接して電源側バスバー28cを支持するバスバー支持部52(図4中、仮想線で示す部分)を切り欠いた切欠部54から構成されている。これにより、堆積酸化物によるショートが発生したとしても、その際に生じる熱により燃焼する可能性が高いバスバー支持部52が切り欠かれていることから、それに伴う発火を有利に防止できる。
【0038】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、第1の実施形態では、絶縁板26aの露呈部44a〜c以外にも貫通孔42が貫設されていたが、少なくとも絶縁板26aの露呈部44a〜cに貫通孔42が設けられていればよい。従って、下段の絶縁板26bには貫通孔42は設けられていなくてもよい。また、上段の絶縁板26aの露呈部44a〜cに貫設される貫通孔の形状や個数や間隔は任意に設定可能である。
【0039】
また、シート46の代わりに、シート46が配設される箇所において上段の絶縁板26aに貫通孔42を設けないようにしてもよい。
【0040】
さらに、第2の実施形態では、平板形状の絶縁板26aの露呈部44a〜cを切り欠いて酸化物堆積阻止構造を設けた例を示したが、第1の実施形態に示した網目構造の絶縁板26aにおいてさらに露呈部44a〜cを切り欠いて構成することもできる。また、第2の実施形態では、露呈部44a〜cに連接して電源側バスバー28cを支持するバスバー支持部52をさらに切り欠いた切欠部54により酸化物堆積阻止構造を例示したが、これに代えてあるいは加えてグランド側バスバー28dを支持するバスバー支持部を切り欠いてもよい。
【符号の説明】
【0041】
10:電気接続箱、12,50:バスバー回路体、26ab:絶縁板、28a〜g:バスバー、42:貫通孔(酸化物堆積阻止構造)、44a〜c:露呈部、52:バスバー支持部、54:切欠部(酸化物堆積阻止構造)
図1
図2
図3
図4