【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、コイルの受動部品が能動部品よりも大きな断面積を備え、及び能動部品がその表面の一部と形状接合によって冷却絶縁体と隣接し、その原材料はコイルの材料と比べて相対的に高い熱伝導性を備え、及び相対的に低い磁力伝導性と導電性を備えているという解決法を提示する。
【0016】
薄板金を金属部材と溶接するために、コイルを通って大きな電気パルスが流れ、その際実際には少なくとも1つのコンデンサーバンクが電源として使用される。それによって強力な点状又は線状の磁場が生成され、この磁場は薄板内に渦電流を誘導する。それによって生じた反力は、薄板金の点状又は線状の範囲がコイルによって突き放され及び非常に高速で加速する程度の高い圧力を生じさせる。
【0017】
試験では電気コイルの磁場強度が最大の範囲では薄板範囲の速度は最大720m/sに達し、これは2,600km/hに相当する。このような高い速度では、隣接する薄板範囲はその慣性によって同じ速度で加速するのではなく、変形する。さらに離れた範囲の薄板の慣性は、それぞれ1つの帯状の範囲で薄板の変形を制限し、この範囲内では薄板がそれぞれ1つのほぼS字型の形状に変形される。磁場の構成に対応して、この変形はフロントラインのS字に沿って表面上に広がる。
【0018】
このような高い速度で動く、薄板のS字型のフロントラインは金属部材に急激に衝突する。
【0019】
その際金属部材の間にある空気は、さらに超音速に達し得るほど強く加速され圧縮され、それによって既知の衝撃波が生じる。薄板及び金属部材の最上部にある原子層、及びそれによって各金属表面にある酸化膜は高速で薄板と金属部材との間の空間から放出される。
【0020】
金属部材と薄板金の2つの境界層は、圧力を回避し、短時間爆発方向に液体のように流れ、その際粒界はさらに引き続いて保持される。その際境界付近の層は交互にせき止められ、相互にずれて入り込み、その結果波状の結合ゾーンが生じる。この波面は常に衝突過程の伝播方向に対して垂直に伸びるが、これは水面に当たる石によって引き起こされる波に類似している。結合ゾーン内の波のパターンは、流れ方向に対して横向きに方向づけされた、砂浜に打ち寄せる水によって形成されるうねに似ている。
【0021】
水の波に似て、金属境界面の波も砕けたり又はそれどころか丸く巻いてしまい得る。波の頭頂の前の渦が強くなりすぎた場合のみ、そこで溶融するか又は中間金属被膜が形成され得る。
【0022】
それによって薄板がその下に配置されている金属部材に当たる際に、互いに当たる原子内で格子エネルギーが有効になり、前に「爆発圧接」で記述したように、薄板金が金属部材と溶接される。
【0023】
この結合は主に短時間の高圧によって引き起こされるため、関与する金属の溶融温度は接続面に沿った非常に平らなゾーンでのみ達成される。その深さは実際にはわずか0.5〜5μmであることが多い。
【0024】
このゾーンから周囲金属へ非常に速やかに放熱されるため、その際金属の構造と粒度が維持される。相対的に非常に大きい液化ゾーンが生じる従来式の融接の場合とは異なり、本発明による溶接後に凝固すると、極度に粒度の細かい、同時に高い強度と高い延性を備えた構造が生じる。
【0025】
それゆえに、融接の場合のように、接合するべき2つの金属の混合はここでも生じない。このような混合ではさまざまな金属組み合わせによってもろい中間金属相が結果として生じてしまう。
【0026】
本発明によるパルス溶接機を使用して、特に融点が大幅に異なる2つの金属間でも、非常に均一で負荷に耐える溶接が達成され得る。こうして例えばアルミニウム薄板が鋼桁の上に溶接されたり、又は銅とチタンが互いに結合され得る。
【0027】
本発明によるコイルでは、導電断面積の大きさはコイルのいわゆる「受動部品」と「能動部品」では非常に異なる。受動部品ではその下部で溶接が行なわれず、能動部品ではその下部で溶接が行なわれる。能動部品内では電流が大幅に小さい断面積を通って、相対的に非常に小さい面上に「押し込められ」、それによってこの面の下側で非常に確実で効果的な溶接が実現される。
【0028】
それとは逆に受動部品の下側では、その断面積が格段に大きいために薄板金のこの範囲では渦電流が非常にわずかに、又は無視してよい程度しか生成されず、その結果薄板金にこの範囲で顕著な加速や変形が見られないほどに磁場強度は小さい。
【0029】
磁場がほぼ能動部品にのみ集中されることは非常に望ましい効果であるが、公知の従来技術によるコイルはいわゆる「エアコイル」として、さらなる絶縁又は支持なしには、パルス溶接中に機械的反力が加わることによって能動部品が比較的少ない回数使用した後に壊れてしまう結果となりかねない。
【0030】
生成された磁場をさらに強化するために能動部品内で電流密度がさらに上昇する必要がある場合、能動部品は溶解してしまうほどに強く加熱される。
【0031】
この効果はヒューズの原理として知られている。本発明によるコイルの能動部品と同様に、ヒューズのヒューズ線は電流ガイドの通常の構成部品よりもはるかに小さい断面積を備えている。しかし電磁パルス溶接のコイルとは異なり、ヒューズは明確に摩耗部品として企図されている。
【0032】
能動部品を少なくとも1つの冷却絶縁体と接触させることによってコイルの能動部品をこの負荷から保護することは、本発明の基本的な考えである。その名前が示唆しているように、冷却絶縁体は能動部品に生じた損失熱を排出するためにも、それに対する断熱のためにも使用される。それゆえに、これは高い熱伝導性と小さい導電性を備えている。
【0033】
別の、その名前には含まれていない冷却絶縁体の機能は、能動部品の機械的な支持である。コイルがE字型のコイルである場合、冷却絶縁体は例えば能動部品と受動部品が接触しないよう確実に防止する。
【0034】
冷却絶縁体に特に適している材料は、窒化ホウ素であることが判明している。窒化ホウ素は化学式ではBNで表されるホウ素と窒素の化合物であり、2つの安定した修飾α−BNとs−BNが存在する。その熱伝導性は銅の約5倍高い。それにもかかわらず窒化ホウ素は磁力伝導性と導電性は相対的に非常にわずかである。
【0035】
冷却絶縁体を電磁パルス薄板溶接用コイルの能動部品に部分的に付着させるという原理は、さまざまな形状のコイルに適用可能である。
【0036】
その一例がすでに従来技術として挙げたE字型のコイルである。このコイルは、能動部品として細長い形材から成り、この形材は2つの向かい合った長辺をそれぞれ1つの受動部品で脇を囲まれている。2つの受動部品は能動部品に対して平行に、距離を置いて伸びている。本発明による冷却絶縁体は、この場合能動部品と2つの受動部品の間にある2つの隙間に取り付けられ、2つの部品の上にそれぞれ平らに載せられている。
【0037】
電磁パルス溶接用コイルの別の有意義な一実施形態は、「2ターン」コイル、つまりターンが2巻きある1つのコイルである。ここで特に興味深い実施形態では、2つのターンを接続するための電流バーを除くすべてのコイルの部品が1つの平面に伸びている、つまり1つのプレートから構成されている。
【0038】
この実施形態では、2つのターンの能動部品は平行に、互いに間隔をあけて配置されている。2つの能動部品の間にある空隙と向かい合っている面の上には、それぞれ1つの冷却絶縁体が載せられ、それに向かい合っている各ターンの受動部品の面に接する。この2ターンコイルの各ターンは、前述のE字型コイルの半分に相当する。
【0039】
このような2ターンコイルの利点は、電流密度及びそれによって磁場強度が1ターンコイルに比べてほぼ倍であるということである。このような実施形態は、冷却絶縁体ずつによる能動部品の支持がないとしたら作動できず、すでに最初の電流パルスで壊れてしまうであろう。
【0040】
本発明によるコイルの別の非常に興味深い一実施形態は、いわゆる「ハンマーコイル」である。この名称は、その幾何学的形状から来ており、ハンマーの「柄」の部分は2つの、たいていは互いに平行に伸びる、たいていは板状の受動部品から形成され、この受動部品のところに、それぞれ1つの端部にそれに対して横向きに配置された細い能動部品が取り付けられ、この能動部品は横方向に2つの板状受動部品から上に突き出ており、それによりハンマーコイルのヘッド部を形成している。
【0041】
前述の1ターンコイルや2ターンコイルとは異なり、このようなハンマーコイルは材料板から効率的に切り出すことはできない。興味深い一実施形態は、その代わりに能動部品が縦長の細い金属形材から形成され、そこから2つの端部がそれぞれ1つの短い終端セクションに曲げられ、これらがそれぞれ1つの受動部品と接続されている。その際2つの終端セクションはそれぞれ互いにほぼ平行に配置されている。有意義には、能動部品の断面積は2つの受動部品の断面積よりも大幅に小さく、それによって磁場は能動部品の範囲に集中する。その結果、極めて高い電流密度が能動部品内に生じ、2つの互いに平行な面がそれぞれ冷却絶縁体に隣接する場合にのみ、能動部品が即座に溶融されることがない。
【0042】
この冷却絶縁体を能動部品と永続的に及び負荷に耐えるよう結合するため、本発明は2つの冷却絶縁体の外側を巡ってそれ自体が閉じた金属ベルトが伸びるか又は他の押さえ装置がむき出しの、2つの冷却絶縁体の互いに平行な面の上に載せられることを提示する。
【0043】
能動部品から受動部品へ抵抗の少ない電流の移行を可能にするために、本発明はそれぞれ1つの終端セクションが板状の受動部品の広い面にある溝に固定されていることを提示する。
【0044】
溶接過程中における本発明によるコイルへの負荷は、能動部品から受動部品への移行範囲に、少なくともインナーエッジが、しかし理想的には表面全体も、連続的に丸み付けされていることによってさらに低減される。それによって、能動部品から受動部品への移行の際に電流密度が突然ではなく連続的に降下し、その結果熱的及び機械的な「規定破断個所」が回避可能になる。
【0045】
すでに何度も言及したように、本発明による溶接方法のためには、薄板金を溶接の前に第二の金属部材からいくらかの小さい間隔をあけておくことが絶対に必要であり、その結果薄板金は電場が有効になった際にこの間隔にわたって加速され得、相対的に高速で及び鋭角で他の金属部材に衝突する。実際には非常に多くの場合、そのための間隔の寸法が0.3〜1.0mmであることが実証されている。
【0046】
試験では、衝突が表面に対して垂直に行なわれるのではなく、衝突の直前に2つの表面の間の角度が2度〜30度に調整されるように薄板が変形された場合に最良の結果が示された。このような「傾いて方向づけられた」衝突の場合にのみ、材料の所望の塑性変形及び負荷に耐える結合が得られる。
【0047】
2つの薄板金の間隔の適切な選択及びコイルの造形及びそこを通って流れる電流の強さによって、特定の衝突角度が約2度〜30度に調節される。さらに、加速した薄板セクションがその下にある金属部材に衝突する際にもたらされたエネルギーは、2つの金属が1つの、そうでなければ冷たい状態で、それぞれ1つの非常に薄い境界層の中で塑性変形可能である程度の高さの圧縮応力に変換される。
【0048】
溶接の前に、そのために適した間隔を確実に保つために、最も簡便には、2つの互いに溶接するべき部材のための適切なストッパー又はスペーサーを使用する。
【0049】
毎回新たに間隔を調整しなくてもよいように、又は適切なスペースホルダーを使用しなくてよいように、本発明は別法として、溶接するべき薄板内に少なくとも1つのふくらみ及び/又は細長いビードを形成し、その隣接する薄板表面の範囲より高くなった高みが、前に挙げた、溶接に必要な、薄板金と金属部材との間の間隔に相当することを提示する。
【0050】
第一の実施形態として本発明は、ふくらみ又はビードが薄板金の溶接するべき範囲の中央に配置されることを記述している。さらに、コイルの能動部品は、圧力波及びそれによって薄板のS字型の変形がこのビードから出て伝播されるように配置されなければならない。これにより、互いに溶接された面がふくらみの回り又はビードの両側へ伸びることが達成される。
【0051】
その際、中央の1つの点で、又は溶接された面の真ん中の線に沿って、2つの金属部材が互いに接続されないことは簡単に克服できる。なぜならこの点又は線の両側には質的に非常に高価値の、互いに溶接された面が広がるからである。
【0052】
第二の別法の実施形態として本発明は、多数の、互いに間隔をあけたふくらみが、溶接するべき薄板金の範囲の縁に配置されていることを提示する。その場合に、溶接はこれらふくらみの間の中央から始まり及び溶接が進むにつれてふくらみまで伸びる。理想的にはそれどころかふくらみは溶接された面に統合され、もはやふくらみとは認識できなくなる。
【0053】
ふくらみの間の間隔の利点は、薄板金の衝突の際及びその変形の開始で生じる圧力波がふくらみの間を通って広がることができ、それゆえに削り取られた酸化被膜が2つの金属部材の表面から吹き飛ばされるための十分なクリアランスがあることである。
【0054】
すでに何度も説明したように、溶接された薄板金によって、溶接するべき範囲の中央から出てS字型の変形が溶接範囲の縁まで広がることは、本発明による溶接の特有の特徴である。溶接された範囲の縁のS字型の形状は、向かい合っている、溶接していない側の薄板金では、くぼみと認識できる。
【0055】
溶接後にこのようなくぼみを残してはならないという要求がある場合、溶接前に薄板金内に上向きの、相手方とは反対向きのふくらみ及び/又はビードを備えることで、前は平坦だった薄板金に溶接後に生じるであろう形状を補完することが考えられる。溶接過程中の変形により、外側に向かって高くなったふくらみは再び「滑らかにされ」、その結果、最終的には平らな面が生成される。
【0056】
注意しなければならないのは、このようなふくらみ又はビードの配置では、第二の金属部材と溶接するべき薄板金の範囲が直接及び間隔なしに当接し、その結果溶接の際に生じる圧力波が全部は流れ出て行けない可能性があることである。
【0057】
それによって金属酸化膜の削り取りが妨げられてしまいかねないため、本発明は改良された別法として、外側へふくらんだふくらみ又はビードがその縁範囲にいくつかの小さな段差を備え、これらによって圧力波を消去し得るということを提示する。
【0058】
別の改良は、前もって薄板内に作られたふくらみ及び/又はビードは、溶接するべき範囲よりいくらか細く、その結果溶接過程自体がふくらみ又はビードを再び「平らにならす」ことによって達成される。
【0059】
薄板金内に前もって成形されたふくらみ又はビードを使ったパルス溶接法のために、さらにふくらみ又はビードを施すためにもパルス溶接機を使用することが考えられ、その結果薄板金はそのために特化された機械に1回挿入されるか又は挟み込まれるだけでよい。本発明はそのために装置の一実施形態を提示し、その装置では溶接するべき薄板金は対応する保持具にただ1回だけ挿入されるか又は挟み込まれる。そうすれば、第一の工程段階で、例えば電磁パルス接合(EMPF)では溶接するべき範囲の中又は範囲に接して、ふくらみ及び/又はビードが成形される。第二の加工段階では、薄板金のこの範囲が金属部材と溶接される。
【0060】
このような二重装置の利点は、加工段階を省略することによる作業時間の節約と品質確実性の獲得である。
【0061】
以下では、本発明のさらなる詳細と特徴を実施例を使用して詳しく解説する。しかしこの説明は本発明を制限するものではなく、単に説明するものである。以下、模式的図面を示す。