特許第6004558号(P6004558)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6004558
(24)【登録日】2016年9月16日
(45)【発行日】2016年10月12日
(54)【発明の名称】構造物の耐震補強構造
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/02 20060101AFI20160929BHJP
【FI】
   E04G23/02 F
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-75563(P2016-75563)
(22)【出願日】2016年4月5日
【審査請求日】2016年4月7日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505086152
【氏名又は名称】槇谷 栄次
(73)【特許権者】
【識別番号】504079601
【氏名又は名称】新日本建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119220
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 武彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139103
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 卓志
(74)【代理人】
【識別番号】100139114
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 貞嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100094787
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 健二
(72)【発明者】
【氏名】槇谷 栄次
【審査官】 油原 博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−019138(JP,A)
【文献】 特開2016−023476(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋コンクリート構造物、鉄骨コンクリート構造物及び鉄骨構造のいずれかの構造物の耐震補強構造であって、
補強対象の構造物に対して硬化性充填材を充填する空隙を設けて配置され外側本体部の上下に水平補強リブを形成した外側薄肉鋼板と内側本体部に垂直補強リブを形成した内側薄肉鋼板との間の水平補強リブ及び垂直補強リブ以外の外側本体部と内側本体部の間に配置される連続繊維シートとからなる繊維シートサンドイッチ補強部材と、
コンクリート構造物と繊維シートサンドイッチ補強部材との空隙に充填される硬化性充填材と、
からなることを特徴とする構造物の耐震補強構造。
【請求項2】
前記水平補強リブと前記垂直補強リブに前記繊維シートサンドイッチ補強部材の連設、構造物への固定のための複数の固定ボルト挿通孔を形成することを特徴とする請求項1に記載の構造物の耐震補強構造。
【請求項3】
上面視が一文字形、コ字形、L字形及び半円形の繊維シートサンドイッチ補強部材を用意し、使用個所に応じて選択して使用することを特徴とする請求項1又は2に記載の構造物の耐震補強構造。
【請求項4】
異なる繊維方向の連続繊維シートを複数枚積層して用いることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の構造物の耐震補強構造。
【請求項5】
繊維シートサンドイッチ補強部材の硬化性充填材の充填側の薄肉鋼板の表面を粗面とすることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の構造物の耐震補強構造。
【請求項6】
連続繊維シートの材料をカーボン繊維、アラミド繊維、ポリエチレン繊維及びポリアレート繊維のいずれかとすることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の構造物の耐震補強構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋コンクリート構造物、鉄骨コンクリート構造物及び鉄骨構造のいずれかの構造物の耐震補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄筋コンクリート構造物、鉄骨コンクリート構造物及び鉄骨構造の耐震補強構造として、構造物の外周部に鋼製の永久型枠を配置し、構造物と永久型枠間の空間に、未硬化のコンクリートを打設して、コンクリートを硬化させ、永久型枠と構造物を一体化する構造物耐震補強構造が提案されている。
【0003】
また、鋼製の永久型枠の外周に繊維シートを巻き付け固定し、耐震性をより向上させた構造物耐震補強構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−240368号公報
【特許文献2】特開2011−26786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の構造物耐震補強構造においては、鋼製の永久型枠に囲まれた空間に打設固化されるコンクリートと永久型枠との一体化が不十分であるという問題と、鋼製の永久型枠の地震時の変位に対する耐久性が十分でないという問題があり、その結果、鋼製の永久型枠に囲まれた空間に配筋される軸方向筋やフープ筋の量を増やさなければならないという問題を有していた。
【0006】
また、鋼製の永久型枠の外周に繊維シートを巻き付け固定する構造物耐震補強構造においては、繊維シートと鋼製永久型枠外周面との接着面が一面であるため、繊維シートと鋼板との付着力が不十分で繊維シートの引張強度が十分に発揮することができず、さらに複数層の繊維シートを巻き付け固定することが困難であるという問題を有していた。
【0007】
本発明は、従来技術の持つ課題を解決するもので、構造が簡単で、製造が容易で耐震性能を向上することが可能な繊維シートサンドイッチ補強部材を永久型枠として用いた鉄筋コンクリート構造物、鉄骨コンクリート構造物及び鉄骨構造のいずれかの構造物の耐震補強構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の構造物用耐震補強構造は、前記課題を解決するために、鉄筋コンクリート構造物、鉄骨コンクリート構造物及び鉄骨構造のいずれかの構造物の耐震補強構造であって、補強対象の構造物に対して硬化性充填材を充填する空隙を設けて配置され外側本体部の上下に水平補強リブを形成した外側薄肉鋼板と内側本体部に垂直補強リブを形成した内側薄肉鋼板との間の水平補強リブ及び垂直補強リブ以外の外側本体部と内側本体部の間に配置される連続繊維シートとからなる繊維シートサンドイッチ補強部材と、コンクリート構造物と繊維シートサンドイッチ補強部材との空隙に充填される硬化性充填材と、からなることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の構造物耐震補強構造は、前記水平補強リブと前記垂直補強リブに前記繊維シートサンドイッチ補強部材の連設や、構造物への固定のための複数の固定ボルト挿通孔を形成することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の構造物耐震補強構造は、上面視が一文字形、コ字形、L字形及び半円形の繊維シートサンドイッチ補強部材を用意し、使用個所に応じて選択して使用することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の構造物耐震補強構造は、異なる繊維方向の連続繊維シートを複数枚積層して用いることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の構造物耐震補強構造は、繊維シートサンドイッチ補強部材の硬化性充填材の充填側の薄肉鋼板の表面を粗面とすることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の構造物耐震補強構造は、連続繊維シートの材料をカーボン繊維、アラミド繊維、ポリエチレン繊維及びポリアレート繊維のいずれかとすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
鉄筋コンクリート構造物、鉄骨コンクリート構造物及び鉄骨構造のいずれかの構造物の耐震補強構造であって、補強対象の構造物に対して硬化性充填材を充填する空隙を設けて配置され外側本体部の上下に水平補強リブを形成した外側薄肉鋼板と内側本体部に垂直補強リブを形成した内側薄肉鋼板との間の水平補強リブ及び垂直補強リブ以外の外側本体部と内側本体部の間に配置される連続繊維シートとからなる繊維シートサンドイッチ補強部材と、コンクリート構造物と繊維シートサンドイッチ補強部材との空隙に充填される硬化性充填材と、からなることで、2枚の薄肉鋼板と一体化された繊維シートが引張強度、減衰性能を発揮し、耐震性にすぐれた構造物耐震補強構造とすることが可能となる。
水平補強リブと垂直補強リブに繊維シートサンドイッチ補強部材の連設や、構造物への固定のための複数の固定ボルト挿通孔を形成することで、繊維シートサンドイッチ補強部材の横方向、縦方向も連結が容易となり、さらに構造物への固定を容易にすることが可能となる。
上面視が一文字形、コ字形、L字形及び半円形の繊維シートサンドイッチ補強部材を用意し、使用個所に応じて選択して使用することで、多様なコンクリート構造物の形状に対応することが可能となる。
異なる繊維方向の繊維シートを複数枚積層して用いることで、より引張強度、減衰性能を向上させることが可能となる。
繊維シートサンドイッチ補強部材の硬化性充填材の充填側の薄肉鋼板の表面を粗面とすることで、硬化性充填材との付着力を向上させることが可能となる。
連続繊維シートの材料をカーボン繊維、アラミド繊維、ポリエチレン繊維及びポリアレート繊維のいずれかとすることで、引張強度の大きな材料で連続繊維シートを形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態を示す図である。
図2】本発明の実施形態を示す図である。
図3】本発明の実施形態を示す図である。
図4】本発明の実施形態を示す図である。
図5】(a)(b)本発明の実施形態を示す図である。
図6】(a)(b)本発明の実施形態を示す図である。
図7】本発明の実施形態を示す図である。
図8】本発明の実施形態を示す図である。
図9】本発明の実施形態を示す図である。
図10】本発明の実施形態を示す図である。
図11】本発明の実施形態を示す図である。
図12】本発明の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態を図により説明する。図1は、本発明の構造物の耐震構造に用いる繊維シートサンドイッチ補強部材1の一実施形態を示す図である。
【0017】
図1は、上面視コ字形の繊維シートサンドイッチ補強部材1の構成部材を示す図である。繊維シートサンドイッチ補強部材1は、断面コ字形の外側薄肉鋼板2、連続繊維シート3、断面コ字形の内側薄肉鋼板4により構成される。外側薄肉鋼板2は、断面コ字形の外側本体部2aの上下端部から内側に水平に伸びる上水平補強リブ2bと下水平補強リブ2cが形成される。
【0018】
内側薄肉鋼板4は、断面コ字形の内側本体部4aに垂直補強リブ4bが形成される。この実施形態では、垂直補強リブ4bが内側本体部4aの内側に90度折曲して形成されているが、90度外側に折曲して形成しても良い。外側薄肉鋼板2と内側薄肉鋼板4との間に連続繊維シート3を外側薄肉鋼板2の外側本体部2aと内側薄肉鋼板4の内側本体部4aにのみに接するように配置し、上下水平補強リブ2b、2c及び垂直補強リブ4bの部分には配置されないように接着剤を介して一体化する。上下水平補強リブ2b、2c及び垂直補強リブ4bの部分に接着剤を介して配置された連続繊維使途3が配置されていないため、繊維シートサンドイッチ補強部材1を連設する際、上下水平補強リブ2b、2c及び垂直補強リブ4bの部分をスポット溶接するような場合でも安全である。
【0019】
外側薄肉鋼板2と内側薄肉鋼板4を連続繊維シート3を介して一体化する際、連続繊維シート3の厚み分だけ外側薄肉鋼板2の寸法を内側薄肉鋼板4の寸法より大きく形成する。
【0020】
連続繊維シート3の材料としてはカーボン繊維などの無機系繊維、アラミド繊維、ポリエチレン繊維及びポリアレート繊維などの有機系繊維を用いる。これらの繊維で形成される1方向及び2方向の繊維シート4の引張強度は5〜180ton/mと大きい。外側薄肉鋼板2と内側薄肉鋼板4の間に複数層の連続繊維シート3を積層する場合、繊維方向が異なるように積層配置する。繊維方向が異なるように積層配置することにより、繊維シート4の引張強度と減衰性能が向上する。
【0021】
繊維シートサンドイッチ補強部材1は、厚さ1.0〜2.3mmの外内薄肉鋼板2、4の表面に接着樹脂材を付着させる。接着樹脂材の付着した外内薄肉鋼板2、4の間に連続繊維シート3を置き、外内薄肉鋼板2、4に荷重を加え、連続繊維シート3を圧着固定する。外内薄肉鋼板2、4の表面の接着樹脂材が付着しているので複数層の繊維シート3を積層配置しても確実に外内薄肉鋼板2、4に接着固定される。
【0022】
外内薄肉鋼板2、4の間に連続繊維シート3を圧着固定するので連続繊維シート3の付着強度が向上し、連続繊維シート3の引張強度が著しく増大する。従来の鋼板の外表面に連続繊維シートを固定するものは、連続繊維シートの鋼板への付着性能が低いため、付着強度が繊維シートの設計引張強度より著しく小さくなる。
【0023】
外側薄肉鋼板2の上下水平補強リブ2b、2cと内側薄肉鋼板4の垂直補強リブ4bには、複数の繊維シートサンドイッチ補強部材1を縦方向、横方向に連設したり、構造物に固定するための固定ボルト挿通孔5を複数形成する。図2は、図1に示す外側薄肉鋼板2と内側薄肉鋼板4を連続繊維シート3を一体化し上面視コ字形の繊維シートサンドイッチ補強部材1とした状態を示す。前述のように垂直補強リブ4bを90度外側に折曲して形成しても良い。
【0024】
繊維シートサンドイッチ補強部材1は、接着樹脂材の強度管理や圧着装置が整った工場で形成し、強度のばらつきがない製品とする。減衰性に優れた連続繊維シート3と伸び率の大きな軟鋼材の外側薄肉鋼板2と内側薄肉鋼板4を用いて繊維シートサンドイッチ補強部材1が形成されているので、繊維シートサンドイッチ補強部材1自体が履歴減衰特性を有するので、これを補強部材として用いると構造物の制震性能が向上する。繊維シートサンドイッチ補強部材1の硬化剤充填側に位置する一方の表面をサンドブラスト等の手段により粗面とし、硬化剤との定着性を向上させる。
【0025】
図3は、上面視L字形の繊維シートサンドイッチ補強部材1、図4は、上面視一文字形の繊維シートサンドイッチ補強部材1、図5(a)(b)は、上面視半円形の繊維シートサンドイッチ補強部材1を示す。外側薄肉鋼板2、内側薄肉鋼板4、連続繊維シート3の配置構成は上面視コ字形の繊維シートサンドイッチ補強部材1と同様であるので説明を省略する。
【0026】
図6(a)(b)は、繊維サンドイッチ補強部材1を断面矩形の鉄筋コンクリート柱6の耐震補強に適用した例を示す図である。床構造7から立設する断面矩形の鉄筋コンクリート柱6耐震補強のため、断面矩形の鉄筋コンクリート柱6の周囲にコンクリート等の硬化性充填材の充填空隙を開けて図2に示される上面視コ字形の繊維サンドイッチ補強部材1を向かい合わせに配置する。垂直補強リブ4aの固定ボルト挿通孔5に固定ボルト8を挿入しナットを螺着して向かい合わせた上面視コ字形の繊維サンドイッチ補強部材1を連結する。床構造7に接する下水平補強リブ2bの固定ボルト挿通孔5からアンカーボルト9を床構造7に打ち込み固定する。
【0027】
1段目の上面視コ字形の繊維サンドイイチ補強部材1の連結固定が終了すると、2段目の繊維サンドイッチ補強部材1を連結固定する。2段目の繊維サンドイッチ補強部材1の向きを1段目の繊維サンドイッチ補強部材1の向きを90度変えて垂直補強リブ4bの接合部が直線状になるのを防止する。1段目の繊維サンドイッチ補強部材1の上水平補強リブ2bの固定ボルト挿通孔5と2段目の繊維サンドイッチ補強部材1の下水平補強リブ2cの固定ボルト挿通孔5に固定ボルト8を挿入し、ナットを螺着して固定する。この作業を順次実施し、断面矩形の鉄筋コンクリート柱6の上部まで繊維サンドイッチ補強部材1を連結固定する。鉄筋コンクリート柱6と繊維サンドイッチ補強部材1の空隙に軸方向筋10、必要に応じてフープ筋を配筋し、コンクリートモルタル等の硬化性充填材を充填し、硬化させ、鉄筋コンクリート柱6と繊維サンドイッチ補強部材1を一体化する。繊維サンドイッチ補強部材1は、連続繊維シート3が外内薄肉鋼板2、4と一体化されており、繊維サンドイッチ補強部材1自体が引張強度が大きく、減衰性に優れているため、配筋量を少なくすることが可能となる。
【0028】
図7は、断面H型の鉄骨柱11の耐震補強に繊維サンドイッチ補強部材1を適用した例を示す図である。断面H型の鉄骨柱11の周囲に硬化性充填材の充填空隙をあけて、上面視コ字形の繊維サンドイッチ補強部材1を向かい合わせに配置する。垂直補強リブ4aの固定ボルト挿通孔5に固定ボルト8を挿入しナットを螺着して向かい合わせた上面視コ字形の繊維サンドイッチ補強部材1を連結する。床構造7への固定や、上部に積み上げていく構成は、断面矩形の鉄筋コンクリート柱6の耐震補強と同様であるので説明を省略する。
【0029】
図8は、断面H型の鉄骨柱11の耐震補強に繊維サンドイッチ補強部材1を適用した例を示す図である。断面H型の鉄骨柱11の周囲に硬化性充填材の充填空隙をあけて、上面視半円形の繊維サンドイッチ補強部材1を向かい合わせに配置する。垂直補強リブ4aの固定ボルト挿通孔5に固定ボルト8を挿入しナットを螺着して向かい合わせた上面視半円形の繊維サンドイッチ補強部材1を連結する。床構造7への固定や、上部に積み上げていく構成、硬化性充填材の充填工程は、断面矩形の鉄筋コンクリート柱6の耐震補強と同様であるので説明を省略する。
【0030】
図9は、断面矩形の鉄骨コンクリート柱12の一面のみの耐震補強に繊維サンドイッチ補強部材1を適用した例を示す図である。断面矩形の鉄骨コンクリート柱12の一面側に上面視コ字形の繊維サンドイッチ補強部材1の垂直補強リブ4bが断面矩形の鉄骨コンクリート柱12の一面と接するように配置し、垂直補強リブ4bに形成した固定ボルト挿通孔5を通してアンカーボルト9を打ち込み固定する。鉄骨コンクリート柱12にあと施工アンカー14を埋め込み、あと施工アンカー14の突出部を鉄骨コンクリート柱12と繊維サンドイッチ補強部材1との空隙に配筋した軸方向筋10とフープ筋13の近傍に位置させる。あと施工アンカー14の突出部を軸方向筋10とフープ筋13の近傍に位置させることにより、鉄骨コンクリート柱12と固化した硬化性充填材との一体化が促進され耐震性能が向上する。床構造7への固定や、上部に積み上げていく構成、硬化性充填材の充填工程は、断面矩形の鉄筋コンクリート柱6の耐震補強と同様であるので説明を省略する。
【0031】
図10は、鉄筋コンクリート柱6と鉄筋コンクリート梁15の交差部の耐震補強に繊維サンドイッチ補強部材1を適用した例を示す図である。鉄筋コンクリート柱5と鉄筋コンクリート梁14の交差部に一対の上面視L字形の繊維サンドイッチ補強部材1の両端の垂直補強リブ4bが梁15の表面に接するように配置し、垂直補強リブ4bに形成した固定ボルト挿通孔5を通してアンカーボルト9を打ち込み固定する。鉄筋コンクリート梁14にあと施工アンカー13を埋め込み、あと施工アンカー13の突出部を鉄筋コンクリート柱6と鉄筋コンクリート梁14の交差部と繊維サンドイッチ補強部材1との空隙に配筋した軸方向筋10とフープ筋13の近傍に位置させる。あと施工アンカー13の突出部を軸方向筋10とフープ筋13の近傍に位置させることにより、鉄筋コンクリート柱6と鉄筋コンクリート梁14と固化した硬化性充填材との一体化が促進され耐震性能が向上する。図10では、鉄筋コンクリート柱6と鉄筋コンクリート梁15の交差部の一面側の耐震補強を図示しているが、鉄筋コンクリート柱6と鉄筋コンクリート梁15の交差部の反対側の面側も同様に耐震補強する。
【0032】
図11は、鉄筋コンクリート柱6、6間に形成された鉄筋コンクリート壁16の耐震補強に繊維サンドイッチ補強部材1を適用した例を示す図である。鉄筋コンクリート柱6、6間に形成された鉄筋コンクリート壁16の両側に上面視一文字形の繊維サンドイッチ補強部材1を横方向と縦方向に連設して配置する。両端に位置する繊維サンドイッチ補強部材1の垂直補強リブ4bを鉄筋コンクリート柱6の一面と接するようにし、垂直補強リブ4bに形成した固定ボルト挿通孔5を通してアンカーボルト9を打ち込み固定する。床構造7への固定や、上部に積み上げていく構成、硬化性充填材の充填工程は、断面矩形の鉄筋コンクリート柱6の耐震補強と同様であるので説明を省略する。
【0033】
図12は、断面H型の鉄骨柱11の一面側にのみの耐震補強に繊維サンドイッチ補強部材1を適用した例を示す図である。断面H型の鉄骨柱11の一面側の両端にそれぞれ上面視L字形の繊維サンドイッチ補強部材1の垂直補強リブ4bが接するように配置し、垂直補強リブ4bと鉄骨柱11を溶接等の手段により固定する。一対の上面視L字形の繊維サンドイッチ補強部材1に上面視一文字形の繊維サンドイッチ補強部材を連結して断面H型の鉄骨柱11の一面側に繊維サンドイッチ補強部材1に囲まれた硬化性充填材の充填空隙を形成する。断面H型の鉄骨柱11の一面側に硬化性充填材との一体化を促進する複数の定着棒17を一端を鉄骨柱11に溶接して配置する。
【0034】
以上のように、本発明の構造物の耐震補強構造は、2枚の薄肉鋼板の間に大きな付着力で連続繊維シートが付着させた繊維サンドイッチ補強部材で形成しているため、大きな引張強度と減衰性能を有する永久型枠とすることが可能となり、耐震性に優れた構造物耐震構造とすることが可能となる。
【符号の説明】
【0035】
1:繊維シートサンドイッチ補強部材、2:外側薄肉鋼板、2a:外側本体部、2b:上水平補強リブ、2c:下水平補強リブ、3:連続繊維シート、4:内側薄肉鋼板、4a:内側本体部、4b:垂直補強リブ、5:固定ボルト挿通孔、6:鉄筋コンクリート柱、7:床構造、8:固定ボルト、9:アンカーボルト、10:軸方向筋、11:鉄骨柱、12:鉄骨コンクリート柱、13:フープ筋、14:あと施工アンカー、15:鉄筋コンクリート梁、16:鉄筋コンクリート壁、17:定着棒


【要約】
【課題】構造が簡単で、製造が容易で耐震性能を向上することが可能な繊維シートサンドイッチ補強部材を永久型枠として用いた鉄筋コンクリート構造物、鉄骨コンクリート構造物及び鉄骨構造のいずれかの構造物の耐震補強構造を提供することを目的とする。
【解決手段】鉄筋コンクリート構造物、鉄骨コンクリート構造物及び鉄骨構造のいずれかの構造物の耐震補強構造であって、補強対象の構造物に対して硬化性充填材を充填する空隙を設けて配置され本体部の上下に水平補強リブを形成した外側薄肉鋼板と本体部に垂直補強リブを形成した内側薄肉鋼板との間の水平補強リブ及び垂直補強リブ以外の本体部に配置される連続繊維シートとからなる繊維シートサンドイッチ補強部材と、コンクリート構造物と繊維シートサンドイッチ補強部材との空隙に充填される硬化性充填材と、からなることを特徴とする。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12