(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を実施するための実施形態について、図面を用いて説明する。本発明は、以下に記載の構成に限定されるものではなく、同一の技術的思想において種々の構成を採用することができる。例えば、以下に示す構成の一部は、省略し又は他の構成等に置換してもよい。また、他の構成を備えるようにしてもよい。
【0017】
<インクジェット記録装置>
インクジェット記録装置1について、
図1〜
図3等を参照して説明する。インクジェット記録装置1では、画像データに従い、記録媒体にインクが吐出され、この画像データに対応した画像が、記録される。画像の記録には、例えば、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のインクが用いられる。画像の記録には、これら4色の他、シアン、マゼンタ、イエローの各色の淡色系であるライトシアン、ライトマゼンタ、ライトイエロー、及び/又は、クリアを用いてもよい。画像が記録される記録媒体としては、記録用紙の他、加工生産において用いられる産業資材が例示される。産業資材には、短冊状又は長尺状の布帛、各種の建築材等が例示される。布帛としては、各種材質による繊維織物が含まれる。本実施形態は、画像の記録に用いられるインク色に関し、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色を例として説明する。記録媒体に関し、所定の幅の長尺状の布帛5を例として説明する。
【0018】
インクジェット記録装置1は、導入部10と、搬送部20と、記録部40と、載置部50と、第一移動部60と、第二移動部70と、撮像機構80と、第一回収部90と、制御装置100(
図1で不図示)と、メンテナンス部110(
図1で不図示)を備える。記録媒体としての長尺状の布帛5は、導入部10の側から第一回収部90の側に、順次送られる。布帛5の送りは、インクジェット記録装置1が備える、複数の送りローラ2と、搬送部20によって実現される。
【0019】
導入部10は、長尺状の布帛5を、繰り出し、複数の送りローラ2を介して、搬送部20に供給する。長尺状の布帛5は、例えば、
図1に示すように、導入用の台車13に収容された状態で、導入部10にセットされる。台車13に収容された布帛5は、例えば、左右交互に折り畳まれた状態とされる。長尺状の布帛5は、ロール状に巻き取られた状態で、導入部10にセットされるようにしてもよい。導入部10における布帛5の経路は、諸条件を考慮して適宜設定される。
【0020】
搬送部20は、導入部10から供給された布帛5を、第一方向に搬送する。搬送部20は、コンベア等によって構成される。例えば、搬送部20がベルトコンベアによって構成される場合、搬送部20は、
図1に示すように、一対の第一ローラ21及び第二ローラ22と、搬送ベルト23とを備える。第一ローラ21は、記録部40より第一方向の上流側に設けられる。第二ローラ22は、記録部40より第一方向の下流側に設けられる。
【0021】
搬送ベルト23は、環状とされた無端ベルトであって、第一ローラ21及び第二ローラ22に張力が作用した状態で架けられる。例えば、第一方向の下流側の第二ローラ22が、不図示の駆動部の駆動力によって、第一方向に対応した方向に回転することで、搬送ベルト23が、これと同一方向に回転する。
図1に基づけば、第二ローラ22は、左回転する(「第二ローラ22」内に示す矢印参照)。このとき、第一方向の上流側の第一ローラ21は、従動して回転する。
【0022】
搬送ベルト23の表面である搬送面24には、全周に亘って粘着部が形成される。搬送部20の第一方向の上流側の端部には、押圧ローラ30が、搬送面24(粘着部)に対向するようにして設けられる。押圧ローラ30は、導入部10から供給された布帛5を、粘着部が形成された搬送面24に対して、押圧する。布帛5は、搬送部20の上流側で搬送面24に載せ置かれ、粘着部にて搬送面24に固定された状態で、第一方向に搬送される。搬送部20によって搬送される布帛5は、記録部40を通過し、第一方向の下流側に到達する。
【0023】
搬送部20の第一方向の下流側の端部の上方には、剥離ローラ32が設けられる。剥離ローラ32は、不図示の駆動部によって、搬送方向に対応した方向に回転する。
図1に基づけば、剥離ローラ32は、左回転する(「剥離ローラ32」の外周に示す矢印参照)。剥離ローラ32は、搬送ベルト23(第二ローラ22)の回転に同期して回転する。布帛5に接する剥離ローラ32の外周面は、布帛5との間で所定の摩擦力が発生するような状態をなしている。剥離ローラ32が回転すると、搬送部20にて搬送されている布帛5は、剥離ローラ32の側に引っ張られる。これによって、画像が記録された状態で搬送されている布帛5は、載置部50を通過した所定の位置で、粘着部から剥離される。
【0024】
記録部40は、
図2に示すように、インクジェットヘッド41C,41M,41Y,41Kを備える。インクジェットヘッド41C,41M,41Y,41Kは、キャリッジ42に搭載される。インクジェットヘッド41C,41M,41Y,41Kには、インクを吐出するノズルが形成される。インクジェットヘッド41Cは、シアンインクを吐出するインクジェットヘッドである。インクジェットヘッド41Mは、マゼンタインクを吐出するインクジェットヘッドである。インクジェットヘッド41Yは、イエローインクを吐出するインクジェットヘッドである。インクジェットヘッド41Kは、ブラックインクを吐出するインクジェットヘッドである。インクジェットヘッド41C,41M,41Y,41Kを備える記録部40によれば、フルカラーの画像を、布帛5に記録することができる(
図2等で、第一方向の下流側に示す布帛5に付された網目模様参照)。
【0025】
画像の記録に、上述したような淡色系のインク等を用いる場合、記録部40は、これら各色のインクを吐出するインクジェットヘッドを、それぞれ備える。インクジェットヘッド41C,41M,41Y,41Kは、何れも、同一の構成を有する(他の色が用いられる場合、他の色のインクを吐出するインクジェットヘッドについても同じ)。本実施形態では、インクジェットヘッド41C,41M,41Y,41Kを、区別しない場合又はこれらを総称する場合、単に、インクジェットヘッド41という。インクジェット記録装置1において、各色のインクは、対応したインクのためのインクタンク(不図示)に貯留され、色毎のインク供給ラインにて、各色のインクジェットヘッド41に、それぞれ供給される。
【0026】
インクジェットヘッド41C,41M,41Y,41Kは、
図2に示すように、第一方向に配列される。配列順序は、適宜設定される。例えば、
図2に示すような順で配列される。インクジェットヘッド41は、布帛5の幅方向に、布帛5を横断するように設けられる。インクジェットヘッド41は、ドロップオンデマンド型のインクジェットヘッドである。ドロップオンデマンド型のインクジェットヘッド41では、搬送部20にて布帛5が搬送され、画像を記録するタイミングで、インクジェットヘッド41に形成されたノズルからインクが吐出される。インクジェットヘッド41は、搬送部20にて搬送される布帛5にインクを吐出するノズルが、第二方向において、布帛5の幅以上の範囲に配列して形成されたライン型のインクジェットヘッドでもある。第二方向は、第一方向に交差、具体的には直交する方向であって、布帛5の幅方向に一致する方向である。
【0027】
載置部50は、
図2に示すように、搬送面24を第二方向に横断するようにして設けられる。載置部50において、搬送面24を第二方向に横断する部分は、テストパターン7の記録時には、搬送面24の上方で、且つ、吐出面43より低い位置に設けられる。載置部50は、供給部51と、第二回収部52を備える。供給部51は、第二方向において搬送部20の第一の側に設けられる。供給部51には、ロール状に巻き取られた状態の検査用媒体6がセットされる(
図2等で、2点鎖線で示す「検査用媒体6」参照)。供給部51は、ロール状の検査用媒体6を、載置面54の側に繰り出し、載置面54に検査用媒体6を供給する。載置面54は、搬送面24を第二方向に横断する載置部50の部分において、搬送面24に対向する面とは反対の側に形成される。載置面54は、インクジェットヘッド41に形成されたノズルが配列される範囲に対応して、第一の側及び第二の側を第二方向に延在する。載置面54には、供給部51から供給された検査用媒体6が載せ置かれる。検査用媒体6には、
図3に示すような、テストパターン7が記録部40で記録される。テストパターン7は、インクジェットヘッド41に形成されたノズルからのインクの吐出状態を検査するための画像である。第一方向において、載置面54は、記録部40においてインクジェットヘッド41C,41M,41Y,41Kが配列されている領域より幅狭とされる(載置面54(LA)<インクジェットヘッド41C,41M,41Y,41K(LB)、
図2参照)。
【0028】
第二回収部52は、第二方向において搬送部20の第二の側に設けられる。第二回収部52は、載置面54に載せ置かれ、テストパターン7が記録された検査用媒体6の部分を回収する。第二回収部52は、駆動部53を備える。この駆動部53が駆動すると、検査用媒体6が巻き取られ、第二回収部52において、検査用媒体6が回収される。第二回収部52で検査用媒体6が回収されると、これに応じて、供給部51にセットされたロール状の検査用媒体6が回転し(
図9で、「検査用媒体6」内に2点鎖線で示す矢印参照)、新たな検査用媒体6が繰り出される。繰り出された検査用媒体6は、新たに載置面54に載せ置かれる。
【0029】
第一移動部60は、搬送面24と吐出面43の間を、第一方向又は第一方向とは反対の方向(
図1及び
図2等に示す「下流側」から「上流側」への方向)に、載置部50を移動する。吐出面43は、インクジェットヘッド41においてノズルが形成された面である。吐出面43は、搬送面24(搬送面24に載せ置かれた布帛5において画像が記録される記録面)に対向する(
図1参照)。第一移動部60は、
図2に示すように、一対のガイド部61,62と、駆動部63を備える。ガイド部61は、第二方向の第一の側のフレーム3の上面に設けられる。ガイド部62は、第二方向の第二の側のフレーム4の上面に設けられる。フレーム3,4は、それぞれ、搬送ベルト23と隣り合い、第一方向に沿った状態で設けられる。フレーム3,4は、搬送部20において、第一ローラ21及び第二ローラ22を回転可能な状態で支持するフレームである。フレーム3,4は、第一ローラ21及び第二ローラ22のためのフレームとは別にインクジェット記録装置1が備えるフレームであってもよい。ガイド部61,62は、載置部50を支持する。ガイド部61,62によって支持される載置部50は、上述したように、搬送面24を第二方向に横断し、且つ、第二方向の第一の側及び第二の側の両側で、前述したような移動ができる状態となる。載置面54(載置面54に載せ置かれた検査用媒体6においてテストパターン7が記録される記録面)は、搬送面24及び吐出面43に平行となる。第一移動部60において、ガイド部61,62に移動可能な状態で支持される載置部50は、後述する検査方法が実行されていない場合、記録部40より第一方向の下流側の所定の位置(以下、「第三位置」という)に配置される。
【0030】
駆動部63は、載置部50を移動させるための駆動源である。駆動部63には、例えば、サーボモータ、ステッピングモータ又はDCモータが採用される。この場合、ガイド部61としては、例えば、ボールねじのような構成が採用される。駆動部63は、ガイド部61に連結される。ガイド部62としては、例えば、リニアガイドのような構成が採用される。載置部50は、前述したようなモータによって構成される駆動部63の回転方向に応じた方向に移動する。例えば、駆動部63が右回転した場合、載置部50は、第一方向に移動する。駆動部63が左回転した場合、載置部50は、第一方向とは反対の方向に移動する。
【0031】
第二移動部70は、第一位置と第二位置の間で、記録部40を移動する。第一位置は、搬送部20によって搬送される布帛5に画像が記録される場合に、記録部40が設けられる位置である。本実施形態では、記録部40が第一位置に設けられた場合において、布帛5の記録面と吐出面43との間の距離を、ギャップG(
図1参照)という。第二位置は、第一移動部60によって、搬送面24と吐出面43の間を移動(通過)する載置部50の載置面54に載せ置かれた検査用媒体6の記録面と、吐出面43との間の距離が、ギャップGに一致した状態となる位置である。本実施形態では、第二移動部70による記録部40の移動方向は、鉛直方向、換言すれば、搬送面24(布帛5の記録面)及び載置面54(検査用媒体6の記録面)に垂直な方向に一致する。
【0032】
第二移動部70は、
図2に示すように、3個のガイド部71,72,73と、駆動部74を備える。ガイド部71,72,73は、鉛直方向に沿った状態で、例えば、キャリッジ42と、インクジェット記録装置1が備えるフレーム(不図示)にそれぞれ固定される。ガイド部71,72,73としては、例えば、リニアガイドのような構成が採用される。駆動部74は、記録部40を移動させるための駆動源である。駆動部74には、例えば、油圧シリンダ、空圧シリンダ又は電動シリンダが採用される。駆動部74が、前述したようなシリンダによって構成される場合、駆動部74は、ロッド75の突出方向が、鉛直方向の上側となるように、キャリッジ42と、インクジェット記録装置1が備えるフレーム(不図示)に固定される。具体的に、ロッド75は、所定の構成を介して、キャリッジ42に固定される。筐体部76は、インクジェット記録装置1が備えるフレーム(不図示)に固定される。
【0033】
記録部40は、上述したようなシリンダによって構成される駆動部74におけるロッド75の伸縮に応じて移動する。例えば、記録部40が第一位置に設けられた状態で、ロッド75が伸長した場合、記録部40は、鉛直方向を上側に移動し、第二位置に配置される(
図4参照)。記録部40が第二位置に設けられた状態で、ロッド75が縮んだ場合、記録部40は、鉛直方向の下側に移動し、第一位置に配置される(
図9参照)。本実施形態では、3個のガイド部71,72,73と、1個の駆動部74を備える第二移動部70を例として説明するが、ガイド部及び駆動部の数は、これとは異なるようにしてもよい。ガイド部及び駆動部の数は、適宜設定される。記録部40に対して、ガイド部71,72,73及び駆動部74がそれぞれ設けられる位置についても、適宜設定される。
【0034】
撮像機構80は、記録部40で検査用媒体6に記録されたテストパターン7を撮像するための機構である。撮像機構80は、記録部40より第一方向の下流側の位置に設けられる。撮像機構80は、
図2に示すように、撮像部81と、第三移動部82を備える。撮像部81は、CCDを備える。撮像部81は、第三移動部82に取り付けられる。このとき、撮像部81は、載置部50が第三位置にある状態で、CCDが載置面54(テストパターン7が記録された検査用媒体6)に対向するようにされる。第三移動部82は、撮像部81を、第二方向に往復移動させる。第三移動部82は、一対のプーリ83,84と、タイミングベルト85と、駆動部86を備える。プーリ83は、第二方向において搬送部20の第一の側に設けられる。プーリ84は、第二方向において搬送部20の第二の側に設けられる。タイミングベルト85は、環状とされた無端ベルトであって、プーリ83,84に張力が作用した状態で架けられる。タイミングベルト85には、取付具87を介して撮像部81が取り付けられる。駆動部86は、撮像部81の往復移動のための駆動源となる。駆動部86は、例えば、プーリ84に連結され、プーリ84を右回転及び左回転させる。駆動部86には、例えば、サーボモータ、ステッピングモータ又はDCモータが採用される。
【0035】
駆動部86が駆動し、プーリ84が左回転すると(
図8で、「駆動部86」の外周に示す矢印参照)、タイミングベルト85も同一方向に回転する(
図8で、「タイミングベルト85」内に示す矢印参照)。これに伴い、撮像部81は、第二方向を第一の側から第二の側に向けて移動する。駆動部86が駆動し、プーリ84が右回転すると、タイミングベルト85も同一方向に回転する。これに伴い、撮像部81は、第二方向を第二の側から第一の側に向けて移動する。テストパターン7の撮像開始時、撮像部81が第二方向の第一の側にある場合、駆動部86は、プーリ84が左回転するように駆動する。一方、撮像部81が第二方向の第二の側にある場合、駆動部86は、プーリ84が右回転するように駆動する。
【0036】
第一回収部90は、画像が記録された布帛5を、回収する。第一回収部90は、
図1に示すように、振り落とし部91を備える。振り落とし部91は、不図示の駆動部にて、鉛直方向の上側の部分を支点として第一方向及び第一方向とは反対の方向に揺動し(
図1で、「振り落とし部91」に近接して示す両矢の矢印参照)、搬送部20の側から送られてくる布帛5を、回収用の台車93に回収する。長尺状の布帛5は、供給前と同様、左右交互に折り畳まれた状態で、台車93に収容される。布帛5をロール状に巻き取り、回収するようにしてもよい。第一回収部90にて回収され、台車93に収容された布帛5は、次の工程に移動される。
【0037】
制御装置100は、各種の電気回路と、制御部を備える。制御装置100において、制御部は、インクジェット記録装置1で実行される各種の処理を制御する。例えば、制御部は、搬送される布帛5への画像の記録を制御する。制御部は、後述する検査方法の実行を制御する。このとき、制御部は、第二移動部70によって記録部40が、第一位置から第二位置に移動し、第二位置から第一位置に移動するように制御する。制御部は、第一移動部60によって載置部50が、搬送面24と吐出面43の間を、第一方向とは反対の方向に移動し、第一方向に移動するように制御する。制御部は、第一移動部60による第一方向への移動と共に、記録部40で、移動している載置部50の載置面54に載せ置かれた検査用媒体6にテストパターン7を記録するように制御する。
【0038】
制御部は、撮像機構80によってテストパターン7を撮像するように制御し、撮像されたテストパターン7に対応した画像データを生成する。制御部は、生成された画像データに従い、インクの吐出状態を判定する。例えば、制御部は、画像データを画像処理して検出される情報が、予め定めた条件に合致する場合、インクの吐出状態は正常であると判定する。一方、制御部は、前述した情報が、予め定めた条件に合致しない場合、インクの吐出状態は異常であると判定する。インクの吐出状態の判定に関する処理は、例えば、上述した特許文献2及び特許文献3に開示された処理と同様にして行われる。この点に関する説明は、省略する。
【0039】
メンテナンス部110は、記録部40に対するメンテナンスを行う。メンテナンスは、例えば、インクの吐出状態が異常であると判定された場合に行われる。メンテナンスが行われる場合、
図3に示すように、記録部40は、所定の移動機構(不図示)によって、メンテナンス部110が設けられた位置に移動される。メンテナンス部110では、例えば、吐出面43がクリーニングされる。各色のインクジェットヘッド41に形成されたノズルから、各色のインクが強制的に吐出される。この吐出は、例えば、エア詰まり等を解消する目的で行われる。メンテナンスが終了した場合、記録部40は、所定の移動機構によって、
図2に示す位置に戻される。その後、インクジェット記録装置1では、例えば、布帛5の搬送が開始され、布帛5への画像の記録が再開される。
【0040】
<検査方法>
インクジェット記録装置1で実行される、インクの吐出状態を検査するための検査方法について、
図4〜
図9等を参照して説明する。検査方法は、例えば、布帛5への画像の記録処理の途中の所定のタイミングで実行される。検査方法は、第一工程〜第六工程を含む。第一工程〜第六工程は、順次、実行される。
【0041】
第一工程は、
図4に示すように、第二移動部70によって、第一位置にある記録部40を上昇させ(「駆動部74」に近接して示す矢印参照)、第二位置に移動する工程である。第一工程では、駆動部74が駆動し、ロッド75が鉛直方向を上側に伸長する。これに伴い、記録部40は、第二位置に向けて上昇する。第一位置から第二位置への記録部40の移動は、ガイド部71,72,73によってガイドされる。従って、記録部40は、スムーズに上昇する。記録部40が第二位置に移動した場合、第一工程は終了する。第二位置への記録部40の移動は、例えば、駆動部74が備える駆動量を検出するためのセンサ(不図示)、又は、第二位置に対応して設けた記録部40を検出するためのセンサ(不図示)からの出力によって、制御される。検査方法は、第一工程から第二工程に移行する。
【0042】
第二工程は、
図5に示すように、第三位置に配置された載置部50を、第四位置に移動する工程である。第四位置は、インクジェットヘッド41Kに形成されたノズルのうち、第一方向において最も上流側に形成されたノズルによるノズル列を通過し、このノズル列に含まれるノズルから吐出されたインクが、載置面54に載せ置かれた検査用媒体6に付与可能となる位置である。本実施形態において、インクジェットヘッド41Kは、第一方向において最も上流側に設けられたインクジェットヘッドである。第二工程では、載置部50は、第一移動部60によって、搬送面24と吐出面43の間を、第一方向とは反対の方向に移動する。載置部50が第四位置に移動した場合、第二工程は終了する。第四位置への載置部50の移動は、例えば、駆動部63が備える駆動量を検出するためのセンサ(不図示)、又は、第四位置に対応して設けた載置部50を検出するためのセンサ(不図示)からの出力によって、制御される。検査方法は、第二工程から第三工程に移行する。
【0043】
第三工程は、
図6及び
図7に示すように、載置部50を第一方向に移動し(
図6で、「載置部50」に近接して示す矢印参照)、検査用媒体6にテストパターン7を記録する工程である。即ち、第三工程は、移動工程と、記録工程を含む。移動工程は、第四位置に配置され、検査用媒体6が載置面54に載せ置かれた載置部50を、第一方向に移動する工程である。移動工程では、載置部50は、
図6に示すように、第一移動部60によって、搬送面24と吐出面43の間を、第一方向に移動する。記録工程は、移動工程によって移動している載置部50の載置面54に載せ置かれた検査用媒体6に、
図7に示すように、テストパターン7を記録する工程である。検査用媒体6にテストパターン7を記録し、載置部50が第三位置まで移動した場合(
図7参照)、第三工程は終了する。第三位置への載置部50の移動は、例えば、駆動部63が備える駆動量を検出するためのセンサ(不図示)、又は、第三位置に対応して設けた載置部50を検出するためのセンサ(不図示)からの出力によって、制御される。検査方法は、第三工程から第四工程に移行する。
【0044】
第四工程は、
図8に示すように、第三位置にある載置部50の載置面54に載せ置かれた検査用媒体6に記録されたテストパターン7を、撮像機構80を介して撮像し、テストパターン7に対応した画像データを生成する工程である。第四工程では、第三移動部82によって、撮像部81が第二方向を第一の側から第二の側、又は、第二の側から第一の側に移動する。例えば、
図7に示すように、第三工程の終了時に、撮像部81が第二方向の第一の側に配置されていたとする。この場合、第三移動部82では、駆動部86が駆動し、プーリ84及びタイミングベルト85が左回転する(
図8参照)。これに伴い、撮像部81は、第二方向を第一の側から第二の側に向けて移動する。第三工程の終了時に、撮像部81が第二方向の第二の側に配置されていたとする。この場合、第三移動部82では、駆動部86が駆動し、プーリ84及びタイミングベルト85が右回転する。これに伴い、撮像部81は、第二方向を第二の側から第一の側に向けて移動する。
【0045】
撮像部81が第一の側における移動端又は第二の側における移動端まで移動し、これによって撮像されたテストパターン7に対応した画像データが生成された場合、第四工程は終了する。各移動端への撮像部81の移動は、例えば、駆動部86が備える駆動量を検出するためのセンサ(不図示)、又は、各移動端に対応してそれぞれ設けた撮像部81若しくは取付具87を検出するためのセンサ(不図示)からの出力によって、制御される。検査方法は、第四工程から第五工程に移行する。
【0046】
第五工程は、第四工程で生成された画像データに従い、インクの吐出状態を判定する工程である。インクの吐出状態は、上述した通り、既に提案された処理に従い、実行される。従って、これに関する説明は、省略する。
【0047】
第六工程は、
図9に示すように、第二移動部70によって、第二位置にある記録部40を下降させ(「駆動部74」に近接して示す矢印参照)、第一位置に移動する工程である。第六工程では、駆動部74が駆動し、ロッド75が鉛直方向を下側に縮む。これに伴い、記録部40は、第一位置に向けて下降する。第二位置から第一位置への記録部40の移動は、ガイド部71,72,73によってガイドされる。従って、記録部40は、スムーズに下降する。記録部40が第一位置に移動した場合、第六工程は終了する。第一位置への記録部40の移動は、例えば、駆動部74が備える駆動量を検出するためのセンサ(不図示)、又は、第一位置に対応して設けた記録部40を検出するためのセンサ(不図示)からの出力によって、制御される。第六工程の終了に伴い、検査方法は、終了する。
【0048】
第五工程において、インクの吐出状態が正常であると判定されていた場合、検査方法の終了に伴い、搬送部20によって搬送される布帛5への画像の記録が再開される。導入部10による布帛5の供給と、搬送部20による布帛5の搬送と、第一回収部90による布帛5の回収は、検査方法の開始に伴い、停止させた状態とされる。これによって、画像が記録されない布帛5の部分の発生を抑制することができる。布帛5を有効に利用することができる。ただし、搬送部20による布帛5の搬送等は、検査方法が開始された場合においても、継続させるようにしてもよい。例えば、第一方向に所定のサイズの画像が、布帛5に繰り返して記録されるような場合、継続させるとよい。先に記録された画像と、後に記録された画像の間に、未記録領域を形成することが可能となり、画像の区切り位置を明確にすることができる。
【0049】
布帛5への画像の記録が再開された後、画像の記録が実行されている状態で、第二回収部52において、これに含まれる駆動部53が駆動し、テストパターン7が記録された検査用媒体6の部分が、第二回収部52に回収される。これによって、載置面54には、テストパターン7が記録されていない新たな検査用媒体6が繰り出され、載せ置かれる。インクの吐出状態が異常であると判定されていた場合、記録部40は、メンテナンス部110に移動され、記録部40に対するメンテナンスが行われる。インクの吐出状態が異常であると判定されていた場合、テストパターン7が記録された検査用媒体6の部分の回収は、メンテナンスが行われているタイミングで行われるようにしてもよい。
【0050】
<本実施形態の効果>
本実施形態によれば、次のような効果を得ることができる。
【0051】
(1)上記では、第一移動部60を備えるインクジェット記録装置1とした。インクジェット記録装置1では、第一移動部60によって、載置面54に検査用媒体6が載せ置かれた載置部50を、第四位置から第一方向に移動させ、この移動に対応して、検査用媒体6に、テストパターン7が記録される(検査方法の第三工程、
図6及び
図7参照)。そのため、テストパターン7を記録するために、搬送面24から布帛5を取り除き、新たに検査用媒体6を載せ置くといった作業を行う必要がなく、テストパターン7の記録に要する時間を短縮することができる。
【0052】
インクジェット記録装置1では、テストパターン7を記録する度に、記録部40をメンテナンス部110に移動する必要がない。この点においても、テストパターン7の記録に要する時間を短縮することができる。メンテナンス部110への記録部40の移動は、記録されたテストパターン7に従い、インクの吐出状態が異常であると判定された場合に限定することができる。布帛5への画像の記録を効率的に行うことができる。
【0053】
テストパターン7の記録は、上述した通り、載置面54に検査用媒体6が載せ置かれた載置部50を第一方向に移動し、この移動に対応して行うこととした。そのため、第一方向において、吐出面43をカバーするような検査用媒体6とする必要がない。第一方向において、検査用媒体6の幅を狭くすることができる。その結果、第一方向において、載置面54を、記録部40においてインクジェットヘッド41C,41M,41Y,41Kが配列されている領域より幅狭とすることが可能となり(
図2参照)、載置部50を小型化することができる。これに伴い、載置部50を移動する第一移動部60も小型化することができる。載置部50及び第一移動部60の小型化は、インクジェット記録装置1の小型化に繋がる。
【0054】
第一移動部60による載置部50の移動は、搬送面24と吐出面43の間を移動させて行われる。これによれば、搬送部20による搬送領域と、第一移動部60による移動領域は、鉛直方向に異なる位置となる。そのため、第一移動部60を、搬送面24との関係を考慮することなく設計することができる。設計の自由度が向上し、第一移動部60をシンプルにすることができる。
【0055】
(2)上記では、第二移動部70を備えるインクジェット記録装置1とした。インクジェット記録装置1では、第二移動部70によって、記録部40が第二位置に移動(上昇)し、この状態で、第一移動部60によって移動している載置部50の載置面54に載せ置かれた検査用媒体6に、テストパターン7が記録される(検査方法の第一工程及び第三工程、
図6及び
図7参照)。第二移動部70による移動に関し、第二位置は、上述した通り、載置面54に載せ置かれた検査用媒体6の記録面と、吐出面43の間の距離が、記録部40が第一位置にある場合のギャップG(
図1参照)に一致した状態となる位置である。検査方法の第三工程では、載置部50を、画像を記録する際に布帛5を搬送する第一方向に移動させる。テストパターン7は、布帛5と同一方向に検査用媒体6を移動させて記録される。そのため、テストパターン7を、布帛5に画像を記録する状態で記録することができる。検査方法の第五工程では、布帛5に画像を記録する状態と同様の状態で記録されたテストパターン7に従い、インクの吐出状態を判定することができる。記録工程を含む第三工程における移動工程での載置部50の移動速度は、布帛5に画像を記録する際の搬送部20による布帛5の搬送速度に一致させるようにするとよい。制御部は、第一移動部60による移動速度が搬送速度となるように制御する。これによって、テストパターン7を記録する状態を、布帛5に画像を記録する状態により近づけることができる。
【0056】
(3)上記では、供給部51及び第二回収部52を備える載置部50とし、ロール状の検査用媒体6とした。載置部50では、布帛5への画像の記録が再開され、又は、メンテナンスが行われているタイミングで、テストパターン7が記録された検査用媒体6の部分が、第二回収部52に回収される。載置面54には、テストパターン7が記録されていない新たな検査用媒体6が載せ置かれる。そのため、検査用媒体6の交換を好適に行うことができる。例えば、テストパターン7の記録が、所定の間隔、又は、所定の事象毎に繰り返して実行されるような場合、既にテストパターン7が記録された検査用媒体6の部分を、スムーズに回収し、新たな検査用媒体6を供給することができる。
【0057】
<変形例>
本実施形態は、次のようにすることもできる。このような構成によっても、上記同様の効果を得ることができる。
【0058】
(1)上記では、検査方法の第二工程で、第一移動部60によって、載置部50を第一方向とは反対の方向に移動し、載置部50を第四位置に配置する。その後、第三工程で、第四位置から第一方向に載置部50を移動し(移動工程)、この移動に対応して、移動している載置部50の載置面54に載せ置かれた検査用媒体6に、テストパターン7を記録する(記録工程)こととした。上述した第三工程の記録工程(テストパターン7の記録)は、第二工程における移動に対応して行われるようにしてもよい。この場合、第三工程では、記録工程は実行されず、移動工程のみが行われる。テストパターン7が、各色用のインクジェットヘッド41から吐出され、検査用媒体6の記録面に付与されるインクによって形成されるインクドットのうち、第一方向において、隣り合うインクドット同士が、重なり合わないようなパターンであったとする(例えば
図7参照)。このようなテストパターン7の場合、テストパターン7を記録する際の検査用媒体6の移動方向(第一方向又は第一方向とは反対の方向)に関わらず、検査用媒体6に記録されるテストパターン7は、同様の状態となる。従って、インクの吐出状態を、上記同様、判定することができる。
【0059】
上記では、撮像機構80を、記録部40より第一方向の下流側に設けることとした。撮像機構80は、記録部40に対して、第一方向の上流側及び下流側に設けるようにしてもよい。この場合、上述したように、第一移動部60による載置部50の移動を少なくすることができる。検査方法に要する時間を短縮することができる。例えば、上述したように、載置部50が第一方向の下流側にあり、第一移動部60によって、載置部50を第一方向とは反対の方向に移動させつつ、テストパターン7を記録するとする。記録されたテストパターン7は、第一方向の上流側に設けられた撮像機構80の撮像部81によって撮像される。撮像のために、載置部50を、第一方向に移動させるといった工程を省略することができる。載置部50が第一方向の上流側にあり、第一移動部60によって、載置部50を第一方向に移動させつつ、テストパターン7を記録するとする。この場合、記録されたテストパターン7は、第一方向の下流側に設けられた撮像機構80の撮像部81によって撮像される。撮像のために、載置部50を、第一方向とは反対の方向に移動させるといった工程を省略することができる。
【0060】
(2)上記では、インクジェット記録装置1が第二移動部70を備え、検査方法の第一工程で、記録部40を第一位置から第二位置まで移動させた状態で、テストパターン7を記録することとした。記録部40の移動は、第二位置より第一位置に近い位置までとしてもよい。この他、記録部40を移動させず、記録部40は、第一位置に配置したままとしてもよい。この場合、第一工程は省略される。上昇させる距離を何れとするかは、ギャップGと、載置面54に載せ置かれた検査用媒体6の記録面と吐出面43の間の距離(記録部40が第一位置にある状態での距離)の関係等に基づき決定するとよい。記録されるテストパターン7によって、好適にインクの吐出状態を判定できるか否かについても検討するとよい。例えば、ギャップGを広くした状態で画像の記録を行うようなインクジェット記録装置1では、記録部40の移動は、第二位置より第一位置に近い位置までとし、又は、第一位置のままとしてもよい。第六工程は、記録部40を上昇させた移動距離に応じて実施される。第一位置のままとし、移動させない場合、第六工程は省略される。
【0061】
(3)上記では、記録媒体として長尺状の布帛5を例とし、インクジェット記録装置1が、導入部10及び第一回収部90を備えることとした。記録媒体が建築材のような短冊状で、インクジェット記録装置1で建築材に画像を記録するような場合、導入部10及び第一回収部90は、省略される。押圧ローラ30及び剥離ローラ32も省略される。画像の記録が行われる場合、建築材は、第一方向の上流側の所定の位置で、搬送面24に載せ置かれる。搬送部20は、搬送面24に載せ置かれた建築材を、第一方向に、記録部40を通過させて搬送する。記録部40を通過する際に画像が記録された建築材は、第一方向の下流側の所定の位置で、取り除かれる。建築材を搬送する搬送部20では、粘着部は省略される。搬送部20は、ローラコンベアによって構成されてもよい。
【0062】
長尺状の布帛5を対象とする場合、インクジェット記録装置1は、上述した各部の他、例えば、乾燥部を備えるようにしてもよい。乾燥部は、布帛5が送られる経路のうち、搬送部20(剥離ローラ32)と第一回収部90の間に設けられる。乾燥部は、記録部40によって画像が記録された布帛5を乾燥する。