(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来から、LED(発光ダイオード)を光源とし、複数のLEDを直並列に接続して点灯させ、画像処理装置の照明に使用する照明装置が知られている(例えば、特許文献1)。開発当初の赤色LEDを使用した画像処理用の照明装置では、
図8のように、そのLEDの所定電圧である順方向電圧は最大で約2(V)で、5個直列に接続して12V電源で駆動するのが一般的であった。また、LEDに流す電流を調整するために、電流制限抵抗をさらに直列に挿入していた。
【0003】
その後開発された青色LEDや白色LEDを使用した照明装置では、
図9(A)のように、これらLEDの順方向電圧は最大で約3.5(V)で、3個直列に接続して、同様に12V電源で駆動される場合が多かった。
図9(B)では、広範囲に対象物を照明するために、直列接続したLEDを複数並列させている。
【0004】
また、
図10(A)のように、照明装置によっては、単一のLEDから出射される光を集光して、スポット照明的な光源とするものも知られている(例えば、特許文献2)。複数のLEDからの光を1つに集光するには、光学設計上で難易度が高く、照明装置も大型化するため、この図のように、単一の高輝度LEDで実現させる場合が多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、
図10(A)のように、単一のLEDでは、その所定電圧である順方向電圧に対して電流制限抵抗で消費する電力が、
図8、9と比較してかなり大きくなるので、照明装置の筐体温度を著しく上昇させてしまう。このため、
図10(B)のように、LEDの電流制限抵抗を照明装置の外付けに設置したり、または、
図10(C)のように、専用の定電流電源を用いてLEDを駆動するなどの対策がなされて、照明装置内の温度上昇を回避していた。
【0007】
図10(B)の場合、構成が簡単なため比較的使用されるものの、外付けの電流制限抵抗が必要となる。
図10(C)の場合には、専用の定電流電源が必要となる。この定電流電源は、種々の定格電流の照明装置に対応できるよう電流値を可変にしているが、照明装置の許容電流を超過する電流が流れるおそれがあるので、別の配線から許容電流値を電源側に伝達して、個々の照明装置に応じて最大電流を制限する構成がさらに必要となる(例えば、特許文献3)。
【0008】
複数のLEDを使用する照明装置であっても、LEDの順方向電圧の都合上、規定数の整数倍のLED個数でないと、回路上一部で損失が大きくなる。
図11は、青色または白色LEDを10個使用する回路例であるが、LEDの直列数は図の通り3個が基本なので、残った1個は独立した回路で電流制限抵抗を増やして点灯させる必要がある。
【0009】
このように、LEDを使用する照明装置の設計は、LEDの所定電圧である順方向電圧により制約を受けており、この所定の順方向電圧の制約によって設計の自由度が阻害される、という問題点があった。
【0010】
本発明は、前記の問題点を解決して、LEDの所定の順方向電圧の制約を受けることなく、設計の自由度の向上が可能な画像処理用LED照明装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明に係る画像処理用LED照明装置は、光源であるLEDに直流電力を供給する直流電源、および前記直流電源から供給された直流電力をPWM制御するPWM制御部を有する電源ユニットと、 前記直流電源からの直流電力または前記PWM制御された電力を変換する電力変換部を有し、変換された電力でLED照明を行う照明ユニットとを備え、前記照明ユニットは、LEDへの変換電力の電圧が所定時間印加されたとき、前記電力変換部への電流を遮断し、所定時間経過後に当該電流を復帰させる強制復帰回路を備えている。
【0012】
この構成によれば、電力変換部により直流電源からの直流電力またはPWM制御された電力を変換し、この変換された電力により所望の順方向電圧でLEDを駆動するとともに、強制復帰回路により電力変換部への電流を遮断し、所定時間経過後に当該電流を復帰させることで、電力変換部を強制的に作動させ、その変換機能を自動的に維持することができる。したがって、LEDの順方向電圧を所望の電圧に安定して変換できるので、LEDの所定の順方向電圧の制約を受けることなく、設計の自由度を向上することができる。
【0013】
好ましくは、前記照明ユニットは、さらに前記電力変換部に過大電流が流れたことを検出する過大電流検出回路を有し、前記強制復帰回路は、前記過大電流が検出されたときに、前記電力変換部への電流を遮断し、所定時間経過後に当該電流遮断を解除して復帰させる。したがって、電力変換部に過大電流が流れた場合に、遮断時間を短くしてLEDを保護するとともに、LEDの順方向電圧を所望の電圧に安定して変換できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、電力変換部により直流電源からの直流電力またはPWM制御された電力を変換し、この変換された電力により所望の順方向電圧でLEDを駆動するとともに、強制復帰回路により電力変換部への電流を遮断し、所定時間経過後に当該電流を復帰させることで、電力変換部を強制的に作動させ、その変換機能を自動的に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る画像処理用LED照明装置を示す回路図である。
【
図3】本装置の強制復帰回路の動作を示す信号波形である。
【
図4】本装置の強制復帰回路の動作を示す信号波形である。
【
図5】(A)、(B)は変形例に係る画像処理用LED照明装置を示す回路図である。
【
図6】変形例に係る画像処理用LED照明装置を示す回路図である。
【
図7】第2実施形態に係る画像処理用LED照明装置を示す回路図である。
【
図8】従来の画像処理用LED照明装置を示す回路図である。
【
図9】(A)、(B)は従来の画像処理用LED照明装置を示す回路図である。
【
図10】(A)〜(C)は従来の画像処理用LED照明装置を示す回路図である。
【
図11】従来の画像処理用LED照明装置を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る画像処理用LED照明装置を示す回路図である。このLED照明装置1は、LED(発光ダイオード)2を光源とし、例えば搬送される製品をカメラで撮像し、製品の撮像データを画像処理する画像処理装置用に使用される。このLED照明装置1は、LED2に電源を供給する電源ユニット3、およびLED照明を行う照明ユニット10を備えている。
【0017】
電源ユニット3は、LED2に直流電力を供給する直流電源5と、直流電源5から供給された直流電力をPWM制御するPWM制御部6とを備えている。PWM制御部6は、PWM生成回路7、駆動回路U1およびスイッチング用トランジスタQ1を備えている。直流電源5の正電極とトランジスタQ1のコレクタ電極とが接続されて、駆動回路U1の出力とトランジスタQ1のベース電極とが接続されている。スイッチング用トランジスタQ1は駆動回路U1により駆動されて、PWM生成回路7から所望のPWM波形が生成される。
【0018】
図2は、PWM制御部6の動作を示すもので、PWM制御部6は、所定電圧で駆動されるLED照明装置1の輝度を調整するために、直流電源5の直流電力を所定の周波数、デューティ比でスイッチングさせる。
図2のa.〜d.は、それぞれ調光値(PWMデューティ比)が10、50、90、100%の状態を示す。
【0019】
照明ユニット10は、光源であるLED2と、直流電源5からの直流電力または前記PWM制御された電力を変換する電力変換部11と、LED2への変換電力の電圧が所定時間印加されたとき、電力変換部11への電流を遮断し、所定時間経過後に当該電流を復帰させる強制復帰回路12を有し、変換された電力でLED照明を行う。
【0020】
電力変換部11は、LED2に変換電力を供給する、例えばインダクタL1と、このインダクタL1と並列に接続されて、漏れ磁束のエネルギーを放出するための、例えばダイオードD1とツェナーダイオードD2からなるスナバ回路13とを有する。電流制限抵抗として、インダクタL1およびスナバ回路13と直列に抵抗R1が接続されている。
【0021】
強制復帰回路12の構成について説明する。
図1の電源ユニット3のトランジスタQ1のエミッタ電極と、直流電源5の負電極との間に、直列接続の抵抗R4およびR5が、並列に接続されている。また、この抵抗R4およびR5と並列に、直列接続の抵抗R6およびコンデンサC1が接続されている。トランジスタQ1のエミッタ電極と、強制スイッチングを行うトランジスタQ2のコレクタ電極とが接続されている。オペアンプ(またはコンパレータ)U2は、トランジスタQ2を駆動する。抵抗R4とR5の接続点は、オペアンプU2の入力端子3に接続されるとともに、抵抗R3を介してトランジスタQ2のベース電極に接続されている。オペアンプU2の出力端子1もトランジスタQ2のベース電極に接続されている。また、抵抗R6とコンデンサC1の接続点は、オペアンプU2の入力端子2に接続されるとともに、抵抗R2およびダイオードD3を介してトランジスタQ2のベース電極に接続されている。
【0022】
抵抗R3、R4、R5は分圧抵抗部を構成し、オペアンプU2の入力端子3への電圧を分圧することにより、強制スイッチングのヒステリシスを設けて発振できるようにしている。抵抗R6、R2およびコンデンサC1は、強制スイッチングを行うトランジスタQ2のスイッチング周波数設定部を構成する。また、抵抗R6、R2の抵抗値比率で、強制スイッチングを行うトランジスタQ2自身の発振PWMデューティ比が決定される。
【0023】
以下、上記構成を有するLED照明装置1の動作を説明する。
まず、電力変換部11は、PWM制御によるスイッチングを利用して、インダクタL1の巻線比でLED2に供給する電力を変換させる。インダクタL1には巻線の途中から引き出したタップがあり、タップの位置により電力の変換比が決定される。例えば、インダクタL1全体の巻数を90回、インダクタL1のタップからダイオードD2側の巻数が30回、LED2の順方向電圧を3.5Vとすると、インダクタL1の両端ではLED2の順方向電圧が巻線比で変換されて、
3.5×90÷30=10.5[V]
となる。
【0024】
このことから、抵抗R1に印加される電圧はPWM電圧が12Vの場合、1.5Vで済むため、
図9(A)の回路同様、3直列のLEDを駆動するのと同等となり、単一のLEDを使用しているにもかかわらず、
図10(A)の回路よりも損失が大幅に削減される。さらに、LED2に流れる電流はインダクタL1の巻線比で変換されるため、上記の巻線比であれば、
I
R1=I
LED1×30÷90=I
LED1÷3
のように、電源ユニット3からの駆動電流を、LED2に流したい電流の1/3にすることができる。ここでI
R1は抵抗R1に流れる電流、I
LED1はLED2に流れる電流を意味する。つまり、抵抗R1の損失は、
図10(A)の回路では、8.5[V]×I
LED1となるが、
図1の電力変換部11の回路では、1.5[V]×I
LED1÷3となり、抵抗R1の損失を1/17まで減少させることができる。
【0025】
つぎに、強制復帰回路12の動作について説明する。電力変換部11のインダクタL1による電力変換は有限時間のものであり、
図2d.の100%PWMデューティ比では、一定時間後に変換機能が作動しなくなる。そこで、実用的にはPWMデューティ比がある程度以上高くなる場合には、
図1のように、強制的に照明ユニット10側で駆動電流をスイッチングさせる強制復帰回路12が必要となる。
【0026】
抵抗R6とコンデンサC1は直流電源5からのPWMまたは直流電圧により充放電され、コンデンサC1の電圧がオペアンプU2の入力端子3の電圧を超えると、オペアンプU2の出力端子1の電圧が低下するため、トランジスタQ2が遮断される。また同時に、ダイオードD3と抵抗R2を経由してコンデンサC1に蓄えられた電荷を放電する。
【0027】
このとき、印加電圧をVaとしたとき、オペアンプU2の入力端子3の電圧は、それまでの電圧V
ON、すなわち、
V
ON=Va・R5÷{(R4//R3)+R5}
=Va・R5÷{(R3・R4/(R3+R4))+R5}
=Va・R5・(R3+R4)/(R3・R4+R3・R5+R4・R5)
の式で得られる電圧から、
V
OFF=Va・(R5//R3)÷{R4+(R5//R3)}
=Va・{R3・R4/(R3+R4)}÷{R4+(R3・R5/(R3+R5))}
=Va・R3・R4/(R3・R4+R3・R5+R4・R5)
の電圧V
OFFに切り替わるため、このV
ONからV
OFFへの切り替えにより、入力端子3の電圧が、V・R4・R5/(R3・R4+R3・R5+R4・R5)分だけ低下する。その後コンデンサC1が放電されて上記V
OFFの電圧未満にまで低下すると、オペアンプU2の出力端子1の電圧が上昇し、再びトランジスタQ2の駆動を開始する。
【0028】
図3は、照明ユニット10側に直流電源5からそのまま直流電力が印加されている場合に、
図4は、PWM制御されて、例えば
図2b.のPWMデューティ比50%の電力が印加された場合に、それぞれ強制復帰回路12における各部信号の波形例を示す。それぞれa.は電源出力、b.はU2の端子3の信号波形、c.はU2の端子2の信号波形、d.は、U2の端子1の信号波形を示す。
【0029】
図3のように、a.の照明ユニット10側に直流電圧が印加されている場合は上記発振動作が繰り返されるため、d.のインダクタL1による電力変換動作が維持できる。また、
図4a.のような例えばPWMデューティ比50%のPWM信号が印加されている場合、コンデンサC1へはそのPWMデューティ比に応じて充放電が繰り返されるが、ある一定のPWMデューティ比以上にならないと、上記Vonを超える電圧まで充電されないこととなる。すなわち、分圧抵抗部の抵抗R3、R4、R5を調整することで、PWMデューティ比がどれだけ高くなれば強制復帰(スイッチング)回路12が作動するかを設計することが可能である。通常は、このPWMデューティ比が80〜90%以上となるように設計される。
【0030】
上記したように、抵抗R6、R2、コンデンサC1はトランジスタQ2の強制スイッチングする発振周波数を決定する要素である。これは少なくとも電源ユニット3から供給されるPWM周波数よりも遅く設定しないと、通常のPWM駆動でも強制復帰(スイッチング)回路12が作動してしまうためである。また、抵抗R6とR2の比率によって決定されるトランジスタQ2の発振PWMデューティ比は、通常90%以上に設定される。
【0031】
また、インダクタL1は、
図5(A)のように、1次コイルと2次コイル間で電力変換を行うトランス形式とすることも可能である。この例では、スナバ回路13は、ダイオードD1、ツェナーダイオードD2で構成されているが、これに何ら限定されるものではなく、任意の回路を採用することが可能である。例えば、
図5(B)のようにダイオードD1と、並列接続したコンデンサC2および抵抗R7とを直列接続した回路構成とすることもできる。
【0032】
さらに、
図6のようにインダクタL1で電圧を大きく上昇させて、多数個の直列接続されたLED2を駆動させ、照明の輝度を高めることも可能である。この場合も同様に、LEDの順方向電圧を所望の電圧に安定して変換できるので、LEDの所定の順方向電圧の制約を受けることなく、設計の自由度を向上することができる。
【0033】
つぎに、第2実施形態について説明する。インダクタL1は、これに直流電流が流れ続けた場合、インダクタとしての役割を果たさなくなるため、インダクタL1および抵抗R1へ通常よりも大きな電流が流れ始める。その場合、抵抗R1とインダクタL1間の信号の電圧が低下するため、オペアンプU2の入力端子3の電圧が抵抗R3を介して下がり、ついにはオペアンプU2の出力端子1の電圧も低下することになる。
【0034】
これを検出するために、
図7のように、電力変換部11の抵抗R1とダイオードD1の接続点と、強制復帰回路12の抵抗R3とを直結させた過大電流検出回路14が設けられている。その他の構成は
図1と同様である。過大電流検出回路14は、
図1のように抵抗R3の接続をオペアンプU2の出力端子1ではなく、
図7のように、トランジスタQ2のエミッタ電極から抵抗R1を介した信号に接続することで、インダクタL1に何らかの要因で過大電流が流れた場合に、自動的に遮断することができる。この過大電流が消滅すると、通常の強制復帰回路12の動作となる。
【0035】
第2実施形態では、電力変換部11に過大電流が流れた場合に、遮断時間を短くしてLED2を保護するとともに、LED2の順方向電圧を所望の電圧に安定して変換できる。
【0036】
以上のように、本発明では、電力変換部により直流電源からの直流電力またはPWM制御された電力を変換し、この変換された電力により所望の順方向電圧でLEDを駆動するとともに、強制復帰回路により電力変換部への電流を遮断し、所定時間経過後に当該電流を復帰させることで、電力変換部を強制的に作動させ、その変換機能を自動的に維持することができる。これにより、LEDの順方向電圧を所望の電圧に安定して変換できるので、LEDの所定の順方向電圧の制約を受けることなく、設計の自由度を向上することができる。