(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
−−−第1の実施の形態−−−
図1,2を参照して、本発明による原子炉水位計の第1の実施の形態を説明する。本実施の形態では、本発明による原子炉水位計が沸騰水型原子炉(BWR)に適用された場合の例について説明する。
図1は、本実施の形態の原子炉水位計を用いた原子炉圧力容器(RPV)の水位計測に係る模式図である。なお、
図1では、沸騰水型原子炉の各構成のうち、原子炉圧力容器の水位計測に関する構成を主に記載し、他の構成についての記載を省略している。本実施の形態の沸騰水型原子炉は、原子炉格納容器10の内部に原子炉圧力容器1が格納されている。
【0009】
原子炉圧力容器1の内部には、不図示の炉心シュラウドが設置されている。以下の説明では、原子炉圧力容器をRPVと称する。炉心シュラウド内には、複数の燃料集合体が装荷された不図示の炉心が配設されている。不図示の気水分離器および蒸気乾燥器は、RPV1内で炉心の上方に配設されている。RPV1内には、所定量の冷却水が存在している。RPV1内の冷却水は、ジェットポンプ等によって不図示の炉心の下方から炉心に供給される。
【0010】
冷却水は、炉心を通過する際に加熱されて水および蒸気を含む気液二相流となる。不図示の気水分離器は気液二相流を蒸気と水に分離する。分離された蒸気は、更に不図示の蒸気乾燥器で湿分を除去されて不図示の蒸気タービンの駆動源として用いられる。蒸気タービンから排出された蒸気は、不図示の復水器で凝縮されて水となる。この凝縮水は、給水として再びRPV1内に供給される。気水分離器および蒸気乾燥器で分離された水は、RPV1内で落下して冷却水となる。
【0011】
本実施の形態の原子炉水位計100は、計測配管LPと、光ファイバ温度センサ5と、処理装置9とを備えている。計測配管LPは、液面形成配管部4と、上部配管部2と、下部配管部3とを有する。液面形成配管部4は、原子炉格納容器10の内部に設けられた鉛直方向に延在する配管である。上部配管部2は、液面形成配管部4の上部とRPV1の気相部とを接続する配管である。下部配管部3は、液面形成配管部4の下部とRPV1の液層部とを接続する配管である。なお、下部配管部3は、
図1に示すように、RPV1の底面に接続される。
【0012】
このように構成される計測配管LPでは、RPV1内の冷却水の一部が流れ込んで、液面形成配管部4の内部に液面(気相部と液層部との境界)が形成される。液面形成配管部4の液面の高さ位置、すなわち液面形成配管部4内部の冷却水の水位は、RPV1内の水位と連動する。したがって、液面形成配管部4における冷却水の水位を計測することで、RPV1内の水位を推定(すなわち、RPV1内の水位を計測)できる。そこで、本実施の形態の原子炉水位計100では、光ファイバ温度センサ5を用いて液面形成配管部4における気相部と液層部との間で生じる温度差と、温度差が生じた高さ位置を検出する。そして、検出した高さ位置から、液面形成配管部4内部の冷却水の水位(すなわち、RPV1内の冷却水の水位)を算出する。なお、光ファイバ温度センサ5を用いた温度計測原理については後述する。
【0013】
具体的には、液面形成配管部4内部の上部から下部まで光ファイバ温度センサ5を配設する。光ファイバ温度センサ5に用いられる光ファイバは、耐放射線特性が優れたものが望ましい。光ファイバ温度センサ5は、原子炉格納容器10に設けられた計装ペネトレーション6を介して、原子炉格納容器10の外部に設けられた処理装置9に接続されている。処理装置9には、光源7と検出部8とが設けられている。光源7では、光ファイバ温度センサ5に入射するパルス光を発生する。
【0014】
検出部8では、光源7が発生したパルス光による光ファイバ温度センサ5の内部の散乱光を検知して光ファイバ温度センサ5の任意の位置における温度を計測する。このようにして検出部8では、光ファイバ温度センサ5の温度分布の情報が得られる。そして検出部8では、得られた温度分布の情報に基づいて、液面形成配管部4における気相部と液層部との温度差が生じる位置(すなわち液面形成配管部4内部の冷却水の水位)を算出する。検出部8は、算出結果をRPV1内の冷却水の水位の情報に変換して外部に出力する。
【0015】
図2は、光ファイバ温度センサ5を用いた温度計測原理を説明するための図である。処理装置9に備えられた光源7によりパルス光を入射すると、入射したパルス光が光ファイバ(すなわち光ファイバ温度センサ5)の各部でごく僅かに散乱する。その散乱光の一部が後方散乱光として光ファイバの光を入射した端部(入射端)に戻ってくる。この後方散乱光の遅延時間(光パルスを入射してから後方散乱光が入射端に戻ってくるまでの時間)は、散乱光が発生した位置から入射端までの光ファイバの距離に依存する。また、この後方散乱光に含まれるラマン散乱光の強度は、散乱を起こした位置における光ファイバの温度に依存する。
【0016】
したがって、光ファイバにおける光の伝搬速度(既知)と、後方散乱光の遅延時間からラマン散乱光の発生位置を算出できる。また、後方散乱光に含まれるラマン散乱光の強度に基づいて、散乱を起こした位置における光ファイバの温度を算出できる。そこで、本実施の形態の検出部8では、後方散乱光を検知し、検知したラマン散乱光の遅延時間および強度に基づいて光ファイバ温度センサ5の任意の位置における温度を計測(算出)する。
【0017】
上述した第1の実施の形態の原子炉水位計100では、次の作用効果を奏する。
(1) RPV1に接続した計測配管LPの液面形成配管部4に液面を形成させるように構成した。そして、液面形成配管部4に形成された液面の高さ位置を光ファイバ温度センサ5によって検出するように構成した。これにより、RPV1の水位を気相部と液相部との圧力差を検出しなくてもよくなるため、基準水位を形成する基準面器が必須でなくなる。したがって、基準水位が変動するなどしてRPV1内の正確な水位が計測できなくなるおそれを排除でき、沸騰水型原子炉の運転管理に貢献できる。
【0018】
(2) 液面形成配管部4に形成された液面の高さ位置の検出に光ファイバ温度センサ5を用いるように構成した。これにより、放射線量が高い原子炉格納容器10の内部に耐放射線特性が低い電子回路を設ける必要がないため、水位計測の信頼性を向上できる。
【0019】
(3) 原子炉格納容器10の内部に計測配管LPを設けるように構成した。これにより、RPV1の冷却水が原子炉格納容器10の外部に漏洩する可能性を低減でき、沸騰水型原子炉のフェイルセーフに貢献できる。
【0020】
(4) 下部配管部3をRPV1の底面に接続することにより、下部配管部3をRPV1の側面に接続する場合に比べて、RPV1の水位の計測下限を下げることができる。これにより、RPV1の水位がRPV1の底面近傍まで低下してしまうような万が一の場合であっても、RPV1の水位を計測できる。
【0021】
−−−第2の実施の形態−−−
図3を参照して、本発明による原子炉水位計の第2の実施の形態を説明する。以下の説明では、第1の実施の形態と同じ構成要素には同じ符号を付して相違点を主に説明する。特に説明しない点については、第1の実施の形態と同じである。本実施の形態では、主に、液面形成配管部4を原子炉格納容器10の外部に設けた点で、第1の実施の形態と異なる。
【0022】
図3は、本実施の形態の原子炉水位計100を用いたRPV1の水位計測に係る模式図である。なお、
図3では、沸騰水型原子炉の各構成のうち、RPV1の水位計測に関する構成を主に記載し、他の構成についての記載を省略している。本実施の形態の原子炉水位計100では、原子炉格納容器10に設けられた計装ペネトレーション6を介して、計測配管LPの上部配管部2および下部配管部3を原子炉格納容器10の外部に導く。そして、原子炉格納容器10の外部で上部配管部2および下部配管部3を液面形成配管部4に接続する。
【0023】
第1の実施の形態で述べたように、光ファイバ温度センサ5を用いることで原子炉格納容器10の内部に耐放射線特性が低い電子回路を設ける必要はない。しかし、光ファイバ温度センサ5として耐放射線特性で優れた光ファイバを用いていても、光ファイバの被爆量は少ないことが望ましい。したがって、本実施の形態のように、液面形成配管部4を原子炉格納容器10の外部に設けることで、光ファイバ温度センサ5の被爆量を低減できるので、光ファイバ温度センサ5の耐久性を向上できる。これにより、水位計測の信頼性を向上でき、沸騰水型原子炉の運転管理に貢献できる。
【0024】
また、光ファイバ温度センサ5の耐久性の向上により、光ファイバ温度センサ5の点検頻度や交換頻度を低減でき、メンテナンス費用を削減できる。さらに、液面形成配管部4を原子炉格納容器10の外部に設けたことで、人や機械による液面形成配管部4や光ファイバ温度センサ5の監視が可能となり、メンテナンス性が向上する。
【0025】
−−−第3の実施の形態−−−
図4を参照して、本発明による原子炉水位計の第3の実施の形態を説明する。以下の説明では、第1の実施の形態と同じ構成要素には同じ符号を付して相違点を主に説明する。特に説明しない点については、第1の実施の形態と同じである。本実施の形態の原子炉水位計100では、主に、基準水位の水頭圧と原子炉水位の水頭圧との差圧に基づく従来技術の原子炉水位計と、光ファイバ温度センサ5を用いたRPV1の水位計測装置(原子炉水位計100)とを併設する点で、第1の実施の形態と異なる。
【0026】
図4は、本実施の形態のRPV1の水位計測に係る模式図である。なお、
図4では、沸騰水型原子炉の各構成のうち、RPV1の水位計測に関する構成を主に記載し、他の構成についての記載を省略している。本実施の形態の原子炉格納容器10の内部には、さらに基準面器11が設けられている。また、原子炉格納容器10の外部には、さらに差圧式水位計測装置12が設けられている。基準面器11および差圧式水位計測装置12による従来技術の原子炉水位計は公知であるので、詳細な説明を省略する。
【0027】
本実施の形態では、従来技術の原子炉水位計のバックアップ装置として光ファイバ温度センサ5を用いた原子炉水位計100を設ける。本実施の形態の原子炉水位計100では、上部配管部2によって、液面形成配管部4の上部と基準面器11の気相部とを接続する。これにより、液面形成配管部4の上部は、基準面器11の気相部を介してRPV1の気相部に接続される。
【0028】
このように構成することにより、簡単な構成によって従来技術のRPV1の水位計測装置のバックアップ装置を設けることができ、沸騰水型原子炉の運転管理に貢献できる。
【0029】
−−−第4の実施の形態−−−
図5を参照して、本発明による原子炉水位計の第4の実施の形態を説明する。以下の説明では、第3の実施の形態と同じ構成要素には同じ符号を付して相違点を主に説明する。特に説明しない点については、第3の実施の形態と同じである。本実施の形態では、主に、液面形成配管部4を原子炉格納容器10の外部に設けた点で、第3の実施の形態と異なる。
【0030】
図5は、本実施の形態のRPV1の水位計測に係る模式図である。なお、
図5では、沸騰水型原子炉の各構成のうち、原子炉圧力容器の水位計測に関する構成を主に記載し、他の構成についての記載を省略している。本実施の形態の原子炉水位計100では、原子炉格納容器10に設けられた計装ペネトレーション6を介して、計測配管LPの上部配管部2および下部配管部3を原子炉格納容器10の外部に導く。そして、原子炉格納容器10の外部で上部配管部2および下部配管部3を液面形成配管部4に接続する。
【0031】
第2の実施の形態でも述べたように、光ファイバ温度センサ5として耐放射線特性で優れた光ファイバを用いていても、光ファイバの被爆量は少ないことが望ましい。したがって、本実施の形態のように、液面形成配管部4を原子炉格納容器10の外部に設けることで、光ファイバ温度センサ5の被爆量を低減できるので、光ファイバ温度センサ5の耐久性を向上できる。これにより、バックアップ装置としての原子炉水位計100の信頼性を向上でき、沸騰水型原子炉の運転管理に貢献できる。
【0032】
なお、上述の説明では、従来技術のRPV1の水位計測装置を設けた場合には、液面形成配管部4の上部が基準面器11の気相部を介してRPV1の気相部に接続されるように構成しているが、本発明はこれに限定されない。たとえば、基準面器11の有無に関わらず、上部配管部2によって液面形成配管部4の上部とRPV1の気相部とを直接接続するように構成してもよい。
【0033】
以上で説明した各実施の形態および変形例はあくまで一例であり、発明の特徴が損なわれない限り、本発明はこれらの内容に限定されない。
【0034】
本発明は、上述した実施の形態のものに何ら限定されず、原子炉圧力容器内の気相部に接続された上部配管部と、原子炉圧力容器の底面で液層部に接続された下部配管部と、上部配管部と下部配管部の間を接続して内部に液面を形成する液面形成配管部と、液面形成配管部の内部で液面形成配管部の上部から下部まで配設される光ファイバを有する光ファイバ温度センサと、光ファイバに入射するパルス光の光源と、光ファイバ内で発生する散乱光を検知し、検知した散乱光に基づいて光ファイバの任意の位置における温度を検出する温度検出部と、温度検出部で検出した光ファイバの任意の位置における温度に基づいて、液面形成配管部における気相部と液層部との温度差が生じる位置を液面の位置として算出する液面位置算出部と、液面位置算出部で算出した液面の位置に基づいて、原子炉圧力容器内の冷却水の水位の情報に変換して出力する水位情報出力部とを備えることを特徴とする各種構造の原子炉水位計を含むものである。