(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6004903
(24)【登録日】2016年9月16日
(45)【発行日】2016年10月12日
(54)【発明の名称】大型の円環形状物品の輸送用トレーラ
(51)【国際特許分類】
B62D 53/06 20060101AFI20160929BHJP
【FI】
B62D53/06 Z
【請求項の数】15
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-248044(P2012-248044)
(22)【出願日】2012年11月12日
(65)【公開番号】特開2013-126862(P2013-126862A)
(43)【公開日】2013年6月27日
【審査請求日】2015年9月10日
(31)【優先権主張番号】特願2011-248937(P2011-248937)
(32)【優先日】2011年11月14日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000178011
【氏名又は名称】山九株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000229900
【氏名又は名称】日本フルハーフ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100102417
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(72)【発明者】
【氏名】丸山 正雄
(72)【発明者】
【氏名】楠森 英樹
(72)【発明者】
【氏名】小川 晋
(72)【発明者】
【氏名】中島 正憲
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 隆
【審査官】
森本 哲也
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭48−063422(JP,A)
【文献】
特開昭57−209104(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0320729(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 53/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラクタにより牽引され、円環形の側面を有する円環形状の物品を輸送するトレーラであって、
前記トレーラには、円環形の側面が車両前後方向となるよう前記物品を立てかけた状態で保持する収容体が、車幅方向に複数個並列して配置され、
前記収容体は、立てかけた状態の前記物品の側面に平行な2枚の側板と、前記2枚の側板を連結する連結部材とを備えており、
車幅方向に配置した複数の前記収容体の間には、前記収容体間の距離を変更可能な駆動装置が設けられていることを特徴とするトレーラ。
【請求項2】
輸送される前記物品の外径が2500mm以上である請求項1に記載のトレーラ。
【請求項3】
前記トレーラが、車両前後方向の中間部に床面が低く形成された低床部を備え、前記収容体が前記低床部に配置される請求項1又は請求項2に記載のトレーラ。
【請求項4】
車幅方向に複数個並列して配置した前記収容体の組が、車両前後方向に複数組配置される請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のトレーラ。
【請求項5】
車幅方向に配置した複数の前記収容体間の距離を変更可能な前記駆動装置が、前記収容体の各々に両端が連結された油圧シリンダである請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のトレーラ。
【請求項6】
車幅方向に配置した複数の前記収容体には、前部及び後部に各々摺動ロッドが固定されており、前記摺動ロッドがトレーラの車幅方向に設置されたガイドレールに沿って摺動可能である請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のトレーラ。
【請求項7】
前記摺動ロッドと前記ガイドレールとの間に位置決め用のロックピンが設けられる請求項6に記載のトレーラ。
【請求項8】
前記摺動ロッドの上面に係合する抑え部材が、車幅方向に配置した複数の前記収容体の各々に設けられており、各々の前記抑え部材は、回動軸により連結されて、係合する位置と係合解除の位置との間に連動して回動するよう前記ガイドレールに取り付けられる請求項6又は請求項7に記載のトレーラ。
【請求項9】
車幅方向に配置した複数の前記収容体が、トレーラの床面に着脱自在に装着された請求項1乃至請求項8のいずれかに記載のトレーラ。
【請求項10】
前記収容体には、フォークリフトのフォークを挿入するフォークポケットが形成された請求項9に記載のトレーラ。
【請求項11】
請求項9又は請求項10に記載のトレーラであって、
車幅方向に配置した複数の前記収容体には、前部及び後部に各々摺動ロッドが固定され、前記摺動ロッドは、トレーラの車幅方向に設置されたガイドレールに沿って摺動可能であり、かつ、前記ガイドレールの下方には車両前後方向に延びるガイドレール連結枠が固定されており、
前記収容体をトレーラの床面に装着するときは、前記ガイドレール連結枠が前記トレーラのメインフレームとサイドレールとの間における床面の下部に挿入されるトレーラ。
【請求項12】
前記ガイドレール連結枠とトレーラとの間に位置決め用のロックピンが設けられる請求項11に記載のトレーラ。
【請求項13】
前記ガイドレール連結枠の前部及び後部には、ピン挿入孔の形成された脚部材が固定されるとともに、各々の前記ピン挿入孔に挿入されるスライドピンが設けられており、各々の前記スライドピンは、リンク機構により連結されて、挿入位置と挿入解除位置との間で連動して摺動するようトレーラに取り付けられる請求項11に記載のトレーラ。
【請求項14】
円環形状の物品を保持する前記収容体には、前記物品の外周面に接触して前記物品を支持する支持ロッドが設けられており、前記支持ロッドは、取り付け位置が調整可能なように前記収容体の2枚の側板の間に設置される請求項1乃至請求項13のいずれかに記載のトレーラ。
【請求項15】
前記円環形状の物品はタイヤである請求項1乃至請求項14のいずれかに記載のトレーラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタによって牽引され、大型の円環形状の物品を積載して輸送するトレーラ、例えば、露天掘りを行う鉱山の大型作業用車両等に用いる超大型タイヤを輸送するためのトレーラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
露天掘り式鉱山等で掘削した鉱石の運搬のために使用される、非常に大型のダンプトラックなどの作業車両には、直径が3mを越えるような超大型タイヤが装着される。こうした超大型タイヤは、工場で製造された後、鉱山等の現地において超大型の作業車両に取り付けられるため、工場から現地(海外にある鉱山等の場合には港湾設備)まで陸上を輸送することが必要であるが、超大型タイヤをトラック等に積載できるよう細分割することは不可能であって、輸送に際して様々な制約を受けることとなる。
【0003】
一例として、道路を走行する車両については、走行安全性の確保や円滑な交通等のために各種の法規が定められており、車両の横幅や積載する貨物を含めた車両の高さについて規制がある。日本の現行の法規においては、道路の通常走行が可能であるためには、車両の横幅が2500mmを越えないよう、積載する貨物を含めた全高が4100mm(規制緩和された指定道路の場合。一般的には3800mm)を越えないよう制限されている。超大型タイヤを輸送するには、従来は、
図14に示すように、トラクタTRにより牽引される低床式トレーラTLに複数の超大型タイヤTY(この例では、外径が3550mm)をいわば横積みに積み重ねて行うことが多い。この場合には、車両の全高は指定道路の制限値以内に収めることができるものの、横幅が3mを越えるため、走行する際には、特別な許可を得て、夜間、走行しなければならない。
【0004】
超大型タイヤを輸送するための特殊な方法が、特開2003−72956号公報に開示されている。この公報に記載の方法では、
図15に示すように、超大型タイヤTYの直径上の対向する2個所に当板PTを置き、それぞれの当板PTを棒材RD(又はチェーン等)を用いて締め付けて、超大型タイヤTYを圧縮し自由状態から変形させる。これにより、超大型タイヤTYの直径が縮小され、道路を通常走行する場合の制限値を越えないこと、あるいは倉庫等に格納する場合の所要スペースを縮小することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−72956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
タイヤは、硬質ゴムからなる円環形状の物品であって、
円環形の側面と外周面(地面に接地する面)を有し、一般的には円環形状の外径が幅寸法よりもはるかに大きい。上記特許文献に記載のような方法で外径を縮小した際には、材料の硬質ゴムに圧縮、引張り等の歪みが生じ、歪みが残留したときは使用時の強度が低下する等の虞れがある。また、超大型タイヤの外径を縮小するには強大な力を作用させる必要があり、そのための専用の器具等を準備する必要もある。
車両に積載する貨物についての法規上の制限からすると、外径が3mを越す超大型タイヤであっても、
図14のような横積みとはせず、
円環形の側面が車両前後方向となるよう立てかけた姿勢で低床式トレーラに積載したときには、外径を縮小しない自由状態でも高さの制限をオーバーすることがない。そのため、
図16に示すように、超大型タイヤTYを低床式トレーラTLに立てかけて輸送することが考えられるが、このときは、トレーラTLの前後方向及び車幅方向には複数の超大型タイヤを並べて積載するのが効率的である。超大型タイヤにも各種の寸法のものが存在するけれども、例えば、タイヤ外径が3550mm、幅寸法が1160mmの超大型タイヤであれば、理論上は車幅方向には2個のタイヤを並列に積載することができる。
【0007】
ところが、超大型タイヤは重量も大きく、タイヤの外周面を接地してこれを立てかけた姿勢としたときは、
図16の矢視A−A図のEXに示すように、その自重により超大型タイヤの下部となる側面が膨れて張出すことが判明した。上記のタイヤ外径が3550mm、幅寸法が1160mmの超大型タイヤであると、張出し量を加えたタイヤの下部の幅寸法は約1360mmに達し、トレーラに2個のタイヤを並列に積載したときには、合計の幅寸法が車両の横幅の制限値である2500mmを越える結果となる。
【0008】
また、超大型タイヤのトレーラへの積み込み・積み降ろしには、大型のフォークリフトを使用し、前方に延びるフォークを、円環形状をなす超大型タイヤの中心穴部分に挿入して持ち上げるのが望ましく、こうすると、大掛かりなクレーン設備等を要することなく荷役作業が可能となる。ただし、2個の超大型タイヤをトレーラの車幅方向に並べ、両方のタイヤの間に殆ど間隙がなく接近して積載されるときは、荷役作業に際し、一方のタイヤの中心穴部分に挿入したフォークの先端が他方のタイヤと衝突して干渉し、フォークリフトを使用した荷役作業が非常に困難となることがある(後述の
図3参照)。このような問題点は超大型タイヤの輸送に限らず、例えば、大型のベアリング、紙シートを卷回したコイル等、大型の円環形状の物品を積載して輸送するトレーラに共通するものである。
本発明の課題は、大型の円環形状の物品をトレーラに立てかけて積載することにより、走行安全性を確保しながら道路を通常走行する大型の円環形状の物品の輸送を可能とし、しかも、なるべく多くの円環形状の物品をトレーラに積載して輸送の効率化を図り、上述の問題点を解決することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題に鑑み、本発明は、円環形状の物品を輸送するトレーラにおいて、円環形状の物品を立てかけた状態で保持する収容体を車幅方向に複数個並列して配置し、さらに、駆動装置を設置して収容体間の距離を変更可能とするものである。すなわち、本発明は、
「トラクタにより牽引され、
円環形の側面を有する円環形状の物品を輸送するトレーラであって、
前記トレーラには、
円環形の側面が車両前後方向となるよう前記物品を立てかけた状態で保持する収容体が、車幅方向に複数個並列して配置され、
前記収容体は、立てかけた状態の前記物品の側面に
平行な2枚の側板と、前記2枚の側板を連結する連結部材とを備えており、
車幅方向に配置した複数の前記収容体の間には、前記収容体間の距離を変更可能な駆動装置が設けられている」
ことを特徴とするトレーラとなっている。
【0010】
請求項2に記載のように、本発明のトレーラは、輸送される前記円環形状の物品の外径が2500mm以上の場合に、また、請求項15に記載のように、前記円環形状の物品がタイヤである場合に、好適なものである。
【0011】
請求項3に記載のように、本発明のトレーラでは、車両前後方向の中間部に床面を低く形成した低床部を設け、前記円環形状の物品の収容体をこの低床部に配置することが好ましい。また、請求項4に記載のように、車幅方向に複数個並列して配置した前記収容体の組を、車両前後方向に複数組配置することが好ましい。
【0012】
請求項5に記載のように、車幅方向に配置した複数の前記収容体間の距離を変更可能な前記駆動装置として、前記収容体の各々に両端が連結された油圧シリンダを用いることができる。
【0013】
請求項6に記載のように、車幅方向に配置した複数の前記収容体には、前部及び後部に各々摺動ロッドを固定し、前記摺動ロッドがトレーラの車幅方向に設置されたガイドレールに沿って摺動可能であるように構成することができる。この場合においては、請求項7に記載のように、前記摺動ロッドと前記ガイドレールとの間に位置決め用のロックピンを設けることが好ましい。そして、請求項8に記載のように、前記摺動ロッドの上面に係合する抑え部材を、車幅方向に配置した複数の前記収容体の各々に設け、各々の前記抑え部材が、回動軸により連結されて、係合する位置と係合解除の位置との間に連動して回動するよう前記ガイドレールに取り付けることもできる。
【0014】
本発明のトレーラにおいては、請求項9に記載のように、円環形状の物品を収容する、車幅方向に配置した複数の前記収容体を、トレーラの床面に着脱自在に装着することができる。この場合においては、請求項10に記載のように、前記収容体に、フォークリフトのフォークを挿入するフォークポケットを形成することが好ましい。
また、前記収容体をトレーラの床面に着脱自在に装着した場合には、請求項11に記載のように、請求項6と同様な摺動ロッドとガイドレールとを設けるとともに、前記ガイドレールの下方に車両前後方向に延びるガイドレール連結枠を固定し、前記収容体をトレーラの床面に装着するときは、前記ガイドレール連結枠を前記トレーラのメインフレームとサイドレールとの間における床面の下部に挿入するように構成することが好ましい。このように構成したときは、請求項12に記載のように、前記ガイドレール連結枠とトレーラとの間に位置決め用のロックピンを設ける構造とすること、あるいは、請求項13に記載のように、前記ガイドレール連結枠の前部及び後部に、ピン挿入孔の形成された脚部材を固定するとともに、各々の前記ピン挿入孔に挿入されるスライドピンを設け、各々の前記スライドピンが、リンク機構により連結されて、挿入位置と挿入解除位置との間で連動して摺動するようトレーラに取り付けられる構造とすることができる。
【0015】
請求項14に記載のように、円環形状の物品を保持する前記収容体には、前記物品の外周面に接触して前記物品を支持する支持ロッドを設け、前記支持ロッドを、取り付け位置が調整可能なように前記収容体の2枚の側板の間に設置することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のトレーラは、
円環形の側面を備えた円環形状の物品を輸送するものであるが、円環形状の物品としては大型タイヤが代表的なものであるので、以下では、具体例として請求項15の発明のような大型タイヤ輸送用のトレーラについて述べる。
本発明のタイヤ輸送用のトレーラには、タイヤの収容体が車幅方向に複数個並列して配置される。この収容体は、タイヤの
円環形の側面が車両前後方向となるよう、これを立てかけた状態で保持するものであり、外径が3mを越えるような超大型タイヤであっても、トレーラに積載された状態が、道路を走行するための高さの制限値内となるように積載することが可能である。
大形のタイヤを立てかけた姿勢としたときは、前述のように、自重によりタイヤの下部の側面が膨れて外方に張出すことがあるが、本発明の収容体は、立てかけた状態のタイヤの側面に平行な2個の側版を備えている。そのため、タイヤ下部の側面の張出しが側板により抑制され、例えば、幅寸法が1160mmの超大型タイヤを車幅方向に2個並列して配置しても、側板の厚さとの合計の幅寸法が、車両の横幅の制限値である2500mmを越えないようにすることができる。
【0017】
そして、本発明のトレーラでは、タイヤの積み込み・積み降ろしの荷役作業をフォークリフトにより容易に行うため、車幅方向に複数個並列するタイヤ保持用の収容体の間には駆動装置が設けられており、収容体間の距離が変更可能となっている。大型タイヤのトレーラへの荷役作業は工場の敷地内等でトレーラを停止して行われ、道路を走行する際の制限は受けないので、このときには、駆動装置により収容体間の距離を拡大する。これにより、収容体に保持される大型タイヤの間隔も広がり、フォークリフトによる荷役作業において、一方のタイヤの中心穴部分に挿入したフォークの先端が他方のタイヤと干渉する事態は回避される。
【0018】
請求項2の発明は、外径が2500mm以上である超大型タイヤの輸送のために本発明のトレーラを適用するものである。タイヤの外径が2500mm以上であると、
図14のようにタイヤを横積みした状態では、車両横幅の制限値をオーバーすることとなる。本発明のトレーラでは、タイヤを立てかけた姿勢で積載するので、こうしたタイヤでも高さの制限値以内に収まり、道路の通常走行が可能となる。
【0019】
請求項3の発明は、本発明のトレーラとして、車両前後方向の中間部に床面を低く形成した低床部を設けたトレーラ、つまり、低床式トレーラを採用し、タイヤの収容体をこの低床部に配置するものである。こうすると、タイヤを設置する床面が低くなり、トレーラを含めた全体の高さの制限値以内により大きな外径のタイヤを積載することができる。また、請求項4の発明のように、車幅方向に複数個並列して配置した収容体の組を、車両前後方向に複数組配置すると、輸送するタイヤの数が増大し効率化を図ることができる。
【0020】
請求項5の発明は、車幅方向に配置した収容体間の距離を変更する駆動装置として、収容体の各々に両端が連結された油圧シリンダを用いるものである。油圧シリンダは、小型のものであっても十分な操作力を確保することができ、油圧シリンダの油圧源も小型であるので、駆動装置全体をコンパクトに構成することが可能である。
ただし、本発明の収容体間の距離を変更する駆動装置としては空気圧シリンダを用いてもよく、場合によっては、収容体にラックを固定し、回転するピニオンによってラックを変位させるような駆動装置を使用してもよい。また、油圧シリンダの一端をトレーラに固定して収容体の一方のみを移動させ、収容体間の距離を変更するようにしてもよい。
【0021】
請求項6の発明は、車幅方向に配置した複数の収容体には、その前部及び後部に各々摺動ロッドを固定し、これをトレーラの車幅方向に設置されたガイドレールに沿って摺動させて、収容体間の距離を変更するように構成したものである。摺動ロッドとガイドレールとの間には、潤滑性の優れた樹脂スペーサ又は転動する「ころ」等を介在させることにより、収容体の円滑な移動が可能となるとともに、摺動ロッドやガイドレールが収容体の補強材としても機能し、タイヤの荷重が作用する収容体の過大な変形が防止される。請求項7の発明のように、摺動ロッドとガイドレールとの間に位置決め用のロックピンを設けたときは、トレーラの走行時にロックピンでタイヤを保持する収容体を固定することにより、振動などに起因する収容体の不測の移動が防止される。
また、請求項8の発明は、摺動ロッドの上面に係合する抑え部材を、車幅方向に配置した複数の収容体の各々に設けるものであって、各々の抑え部材は、回動軸により連結されて、係合する位置と係合解除の位置との間に連動して回動するようガイドレールに取り付けられる。この構成により、抑え部材を収容体の移動防止用拘束手段とすることが可能であり、複数の抑え部材を連動させている結果、抑え部材の操作が容易かつ効率的となり作業性が向上する。
【0022】
ここで、請求項9の発明は、大型のタイヤを収容する収容体を、トレーラの床面に着脱自在に装着するものである。外径が3mを越えるような超大型タイヤはいわば特殊貨物であって、それほど頻繁に輸送の機会があるものではない。請求項9の発明のような構造とすると、大型タイヤを輸送しないときは、収容体を取り外して一般的な貨物をトレーラ上に積載することが可能となり、トレーラの使用頻度を大幅に高めることができる。
収容体をトレーラの床面に着脱自在に装着するトレーラにおいては、請求項10の発明のフォークポケットを収容体に形成すると、フォークリフトによる収容体の着脱ができるため、装着等の際の利便性が向上する。
【0023】
請求項11の発明は、収容体をトレーラの床面に着脱自在に装着する具体的な構造として、請求項6の発明と同様な摺動ロッドとガイドレールとを設けるとともに、ガイドレールの下方に車両前後方向に延びるガイドレール連結枠を固定し、これを、トレーラのメインフレームとサイドレールとの間における床面の下部に挿入するものである。この発明によれば、上記の請求項6の発明と同様な効果が生じると同時に、収容体とその取り付け装置とを一体的にトレーラに着脱することが可能となる。さらに、ガイドレール連結枠が床面の下部に格納されるため、トレーラの床面構造を殆ど変えることなく、大型タイヤの収容体を強固にトレーラに装着することができる。
床面下部に格納されるガイドレール連結枠は、請求項12の発明のように、ロックピンによりトレーラに位置決めすることができる。また、請求項13の発明のように、ガイドレール連結枠にピン挿入孔の形成された2個の脚部材を固定するとともに、リンク機構により連結された2本のスライドピンを連動して抜き差しするように構成すると、位置決め装置の効率的な操作が可能となり、スライドピンを抜いたときの収納手段を設ける必要もなくなることとなる。
【0024】
請求項14の発明は、タイヤ等の物品を保持する収容体の2枚の側板の間に、物品の外周面に接触して支持する支持ロッドを、取り付け位置が調整可能なように設置するものである。これによれば、外径の異なるタイヤ等を立てかけた状態で収容する場合でも、支持ロッドを外周面に接触させて、収容体内に安定して保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の実施例であるトレーラにタイヤを積載し、トラクタと連結したときの状態を概略的に表す全体図である。
【
図2】
図1のトレーラを、タイヤを外した状態において単体で示す図である。
【
図3】フォークリフトを使用する、大型タイヤの本発明のトレーラへの荷役作業を概略的に示す図である。
【
図4】ラック・ピニオンを用いる本発明の駆動装置の変形例を示す図である。
【
図7】本発明の別実施例1である、収容体を着脱自在に構成したトレーラの要部を示す斜視図である。
【
図8】
図7の収容体とトレーラの側面図及び断面図である。
【
図9】別実施例1の着脱装置を改良した変形別実施例1を示す斜視図である。
【
図10】変形別実施例1において、着脱装置をトレーラにロックする機構を示す斜視図である。
【
図11】変形別実施例1において、収容体をトレーラ床面にロックする機構を示す詳細図である。
【
図12】収容体に改良を加えた、本発明の別実施例2を示す図である。
【
図14】大型タイヤを横積みで輸送する従来のトレーラを示す図である。
【
図15】大型タイヤを輸送のために変形する方法を示す図である。
【
図16】大型タイヤを立てかけて積載したトレーラを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面に基づいて、円環形状の物品を輸送する本発明のトレーラとして、大型タイヤを輸送するトレーラの実施例について説明する。
図1及び
図2に示されるように、この実施例のトレーラ1は、牽引するトラクタTRに連結される前部11(グースネック部)と車軸AXを取り付けた後部の床面12とが高く形成され、中間部に低床部13を設けたトレーラ、つまり、低床式トレーラであり、その低床部13にタイヤTYを保持する収容体2が設置される。収容体2は、上部が開放された箱状をなし、トレーラ1の車幅方向に2個のものが組をなして並列に配置され、かつ、トレーラ1の前後方向には2組の収容体2が配置されて、合計で4個の収容体2が低床部13に設置されている。
【0027】
トレーラ1に積載されるタイヤTYは、
円環形の側面を有し、
図16と同様な、外径が3550mm、幅寸法が1160mmの超大型タイヤであり、タイヤTRは、
円環形の側面がトレーラ1の前後方向となるよう立てかけた状態で収容体2に保持される。タイヤを立てかけた状態としたときに出現する下部側面の張り出しEXは、収容体2の側板21に接触させて抑制することが可能であり(
図1(c)参照)、そのため、本発明のトレーラ1では、上記の寸法のタイヤTYを積載した状態でトレーラ1の横幅が2490mmとなる。また、タイヤTY先端までの全高は4095mmであって、本発明のトレーラ1は、超大型タイヤを積載した状態において道路の通常走行が可能となる。
【0028】
図2に示されるように、トレーラ1は、平面視において、前後方向に全長に亘って平行に延びる2本のメインフレームMFを備えている。メインフレームMFは、トレーラ1の低床部13では上下のフランジ板の中央にウエッブ板が溶接された断面I形状の強度部材となっており、収容体2は、メインフレームMFの上部に車幅方向に摺動可能に設置される(詳細な構造は後述)。収容体2には、タイヤTYの下端部が接触する底板22が設けられ、底板22は、2枚の側板21の下端部を連結する連結部材としても機能する。
【0029】
そして、車幅方向に並列に配置された2個の収容体2の間には、底板22の裏面側に、収容体2間の距離を変更するための駆動装置である油圧シリンダ3が設置されており、油圧シリンダ3の基端が一方の収容体2の底板22に固定されるとともに、伸縮するロッドの先端が他方の収容体2の底板22に固定される。トレーラ1には、オイルポンプ等を有する図示しない油圧源ユニットが適宜の個所に設置されており、油圧シリンダ3に作動油を圧送する。
トレーラ1の走行時には油圧シリンダ3に作動油は供給されず、
図2(c)下図のように、収容体2間の距離が縮小された状態であって、トレーラ1の横幅は、一般道路の通常走行時の制限値以内に保持される。トレーラ1に大型タイヤTYの積み込み・積み降ろしを行う荷役作業時には、油圧シリンダ3に作動油を圧送してロッドを伸長し、
図2(c)上図のように、収容体2間の距離を拡大する。
【0030】
図3は、フォークリフトを使用する大型タイヤの荷役作業を概略的に示すものである。フォークリフトFKによる荷役作業では、円環形状の大型タイヤTYの中心穴内にフォークを挿入してこれを持ち上げる関係上、
図3(a)に示すように、走行時の制限値以内に収容体2間の距離が縮小された状態では、並列するタイヤ間の間隙が極めて小さく、フォークの先端が奥側のタイヤに接触し干渉して、事実上、荷役作業が不可能となる。本発明のトレーラにおいて、
図3(b)に示すように、油圧シリンダ3を伸長して収容体2間の距離を広げると、フォーク先端の干渉が回避され、荷役作業が非常に容易となる。
【0031】
この実施例では、収容体間の距離を変更する駆動装置として、コンパクトで操作力の大きな油圧シリンダを採用しているけれども、圧縮エアで作動する空気圧シリンダを用いてもよく、この場合には、空気源としてトレーラ1の車輪ブレーキ用の圧縮エアを利用できる。また、油圧や空気圧の流体圧シリンダに代えて、
図4に示すように、平行に置かれたラックLを2個の収容体2にそれぞれ固定し、モータの駆動で回転するピニオンPにより、ラックLを互いに反対方向に変位させるような駆動装置を使用してもよい。
【0032】
メインフレームMFの上部に設置される収容体2及びその摺動構造について、
図5、
図6により詳細に説明する。
図5は、
図2のB部の拡大図、
図6は、
図2(c)の拡大図となっている。
図5に示すように、タイヤを保持する収容体2には、タイヤ下端部が接触する底板22と、タイヤ下方部の当て部材23を取り付けた斜め板24が設けられ、これらにより、両側板21が連結される。底板22と斜め板24との接合部分には、収容体2の横方向の全長に延びる摺動ロッド25(
図6も参照)が溶接で固着されている。一方、トレーラ1の低床部13には、車幅方向両端のサイドレールSR間に全長亘って延びる断面コ字状の一対のガイドレール4が設置されており、ガイドレール4は、ボルトによってメインフレームMFの上部フランジ板に固着される。摺動ロッド25は、一対のガイドレール4の間に嵌め込まれ、両者の間に潤滑性の優れた樹脂スペーサ5が介在される。樹脂スペーサ5の代わりに転動する「ころ」を介在させることもできる。こうした構造の摺動ロッド25及びガイドレール4は、
図2に示すとおり、収容体2の前後に夫々設けられている。
【0033】
収容体2間の距離を変更する油圧シリンダ3は、底板22の下方に置かれ、油圧シリンダ3の基端が
図6における左方の収容体2の底板22に固定されると同時に、伸縮するロッドの先端が右方の収容体2の底板22に固定される。トレーラ1が走行するときは、
図6(b)に示すとおり、油圧シリンダ3が縮小された状態にあり、2個の収容体2は、互いに接近して間隙が殆どない状態となる。トレーラ走行中における収容体2の位置を規制するため、ガイドレール4の車幅方向の両端部とそれに対応する摺動ロッド25の位置とには、ロックピン挿入用の穴が形成されている。走行時には、
図5に示すように、ガイドレール4と収容体2の摺動ロッド25とを貫通するロックピン6をこれらの穴に挿入することにより、2個の収容体2が
図5(b)の位置に確実に拘束され、振動などに起因する収容体2の不測の移動が防止される。さらに、挿入されたロックピン6が外れないよう、ロックピン6の頭部を抑える抜け止板61が取り付けられている。
【0034】
タイヤの積み込み等の荷役作業時には、油圧シリンダ3のロッドを伸長すると、各々の収容体2の摺動ロッド25が一対のガイドレール4の間を摺動し、収容体2間の距離が拡大して
図6(a)の位置となり、フォークリフトを使用した荷役作業が容易化される。ガイドレール4には、適宜の個所に抑えストッパ7が設けてあり、この抑えストッパ7は、
図5に示すように、ガイドレール4から摺動ロッド25の上方に張り出し、トレーラの走行時などに摺動ロッド25が上方に外れるのを防止する。
【0035】
ここで、本発明に改良を施した別実施例について、
図7乃至
図13に基づき説明を加える。始めに、収容体をトレーラ床面上に着脱自在に装着する構造を備えた別実施例1について、
図7、
図8により説明する。
【0036】
図7の斜視図に示すように、別実施例1のトレーラの床面は、ハッチングを施した部分の床板、すなわち、メインフレームMFとサイドレールSRとの間のA部の床板及び両メインフレームMFの間のB部の床板、が取り外し可能に構成されている。B部の床面の下方には、収容体2間の距離を拡大する油圧シリンダ3が置かれているが、この別実施例1では、左右の収容体2を夫々単独で移動させることが可能なよう2個の油圧シリンダが設置される(
図8下図参照)。
【0037】
左右の収容体2の構造は、基本的には
図5、
図6に示す実施例のものと同様であって、各収容体2には摺動ロッド25が固着され、これは一対のガイドレール4の間に嵌め込まれる。ただし、ガイドレール4はトレーラの床面に固定されてはおらず、ガイドレール4の下部には、車両前後方向に延びて収容体の前後のガイドレール4を連結するガイドレール連結枠8が固定される。このガイドレール連結枠8は、メインフレームMFとサイドレールSRとの間のA部の床板の位置に一致するよう2本設けてある。また、収容体2の側板21には、脱着する際にフォークリフトのフォークを差し込むフォークポケットFPが形成されている。
【0038】
収容体2をトレーラ上に装着するときは、まず、A部とB部の床板を取り除く。次に、左右の収容体2をフォークリフトによってトレーラ上に位置させ、徐々に下降させて、収容体下方のガイドレール連結枠8をA部に挿入する。A部の両端にはガイド部材GM(収容体2が装着されていないときは、回転して床下に収納される)が設けてあり、ガイドレール連結枠8は、ガイド部材GMに案内されて容易に正確な位置にセットされる。これにより、収容体2の下面のシリンダ係合ピンCPは、夫々の油圧シリンダのロッドと係合することとなる(
図8下図参照)。
収容体2がトレーラ上に位置決めされると、ロックピンLP(
図7参照)をサイドレールSRとガイドレール連結枠8とに挿通して収容体2を固定する。一般的な貨物を積載可能とするため収容体2を取り外すときは、逆の手順で実行される。
【0039】
上記の別実施例1において、ガイドレール連結枠8をトレーラに位置決めしてロックする機構及びタイヤ等の収容体2をガイドレール4にロックする機構に関し、さらに改良を加えた変形別実施例1を
図9乃至
図11により説明する。
図9は、ガイドレール4とガイドレール連結枠8とを結合した変形別実施例1における収容体の取り付けフレーム体を示す斜視図であり、このフレーム体は、
図7のものと同様に、収容体2と共にトレーラに着脱自在であって、装着したときにはガイドレール連結枠8が床面の下部に挿入される。ここで、変形別実施例1のガイドレール連結枠8には、その前部及び後部の下側にそれぞれ脚部材81が固定され、脚部材81にはピン挿入孔82が形成される。そして、
図9の2点鎖線に示すとおり、ピン挿入孔82に挿入される2本のスライドピン9が設置され、これらは、リンク機構RKにより連動して抜き差しするように構成されている。
【0040】
スライドピン9を操作するリンク機構RKの要部、つまり、トレーラの外側のサイドレール等を除いた
図9のC部の詳細を
図10に示す(
図10、
図11では、収容体2及びその摺動ロッド25を装着した状態で表している)。スライドピン9は、ガイドレール連結枠8に固定された脚部材81のピン挿入孔82に対向し、ガイド部材91内をスライドするように配置されている。スライドピン9には、リンク機構RKの一部をなすロッドR1が連結され、ロッドR1の他端は、回動軸92に固定されたアームA1に枢着される。後部の脚部材に挿入されるスライドピンは、同様な構成により、リンク機構RKの一部をなすロッドR2、アームA2に連結される。ガイド部材91、回動軸92等はトレーラのメインフレームMFに固着されるとともに、回動軸92には、ばねSPの装着されたハンドルHDが取り付けられる。
【0041】
収容体2及びガイドレール4をトレーラの床面に設置しガイドレール連結枠8を床面下部に挿入した状態で、ハンドルHDを
図10で反時計方向に回動すると、スライドピン9が左方にスライドしてピン挿入孔82に入り込む。同時に後部のスライドピンもピン挿入孔に挿入され、ガイドレール4等がトレーラにロックされる。収容体2及びガイドレール4をトレーラから取り外すときには、ハンドルHDを
図10の時計方向に回動してスライドピンを引き抜くが、こうした操作は、ハンドルHDの回動のみで前後2本のスライドピンの抜き差しが可能であり、回動軸92を延長して車幅方向の左右のスライドピンを連動させた場合には、同時に4本の操作ができることとなる。また、スライドピンは常時トレーラに装着されているので、取り外し式のロックピン(
図7参照)と異なり、スライドピンの紛失が防止され、収納手段を用意する必要もない。
ハンドルHDとばねSPとは、いわゆるオーバーセンターロックの機能を備えるように連結されていて、ハンドルHDは、時計方向及び反時計方向のそれぞれの回動端部位置においてばねSPにより拘束される。
【0042】
図9に示す変形別実施例1では、タイヤ等の収容体2をガイドレール4にロックする機構に関しても改良が行われており、これについて、
図9のD−D断面矢視図である
図11も参照しながら説明する。
ガイドレール4には、L字型の2個の抑え部材10が間隔を置いて配置してあり、これらは、回動可能に支持された回動連結軸101の両端に固着されている。抑え部材10を上方に回動したときは、
図11に示すとおり、収容体2に固定した摺動ロッド25の上面に係合する。そして、2個の抑え部材10は、車幅方向に配置した各々の収容体2の摺動ロッド25に、それぞれ係合する位置に設置される。ガイドレール4の上面には、上方に回動した抑え部材10を挟み込む一対のガイド片102が固定されている。
【0043】
図11に示すように、摺動ロッド25の上面には小突起25Pが溶接等により固着されており、抑え部材10が上方に回動して係合位置となったときは、抑え部材10は、その側面が小突起25Pに当接し、摺動ロッド25及びタイヤ等の収容体2がトレーラの車幅外方に移動するのを阻止する。そのため、抑え部材10は、
図6の実施例におけるストッパ7とロックピンの役割を兼用することになる。
抑え部材10を固着した回動連結軸101はガイドレール4に取り付けられ、抑え部材10とガイドレール4との間には、オーバーセンターロック機能を備えたばねSPが装着される。また、抑え部材10にはハンドルHDが固着されており、ハンドルHDを操作することにより、回動連結軸101の両端の抑え部材10を連動して、係合位置(
図11の実線)と係合解除位置(
図11の2点鎖線)に切り換え、そこに拘束することができる。なお、ここでは、抑え部材10を用いたロック機構について、タイヤ等の収容体が着脱自在である変形別実施例1に適用したものを述べているけれども、このロック機構が、収容体がトレーラに固着された
図6等の実施例に適用可能であるのは明らかである。
【0044】
次いで、タイヤ等の収容体を改良した別実施例2について、
図12及び
図13を参照して説明する。
図12は別実施例2の収容体の全体図であり、
図13(a)はその詳細図、また、
図13(b)(c)は
図13(a)のX−X断面矢視図となっている。
別実施例2の収容体2Aは、
図12に示すように、タイヤ等の
円環形の側面と平行な側板が、車両幅方向の内側のものと外側のものとで異なった形状を有する。つまり、外側の側板21Aの両端部は内側の側板21Bよりも上方に延長されて、タイヤ等の側面を上部まで覆うように構成されており、そのため、タイヤ等の車両の外側への倒れが防止され、より安定した保持が可能となっている。さらに、後述する位置調整可能な支持ロッドを備え、径の異なる多種のサイズのタイヤ等に対応できるように構成されている。なお、
図12の収容体2Aは、フォークポケットFP及びシリンダ係合ピンCPを備え、収容体が着脱自在な取り付け装置に適用されるものであるが、この収容体2Aは、収容体がトレーラに固着される
図6等の実施例にも適用可能である。
【0045】
図13(b)(c)に示すとおり、収容体2Aには、前後方向の両端部の近傍に、外側の側板21Aと内側の側板21Bとの間に掛け渡された支持ロッド26が設置されている。支持ロッド26の両端にはシリンダ部材26Aが固定され、ここに、回動可能に側板に枢着されたロッドアーム26Bが連結されるとともに、コイルばねCSに押されてシリンダ部材26A内を軸方向に摺動するロッドピン26Cが設けられる。ロッドピン26Cには操作用のハンドルHDが固着されていて、シリンダ部材26Aの壁面には、ハンドルHDの軸HDSが通過するスリットが設けてある(
図13(b)の下方視拡大図参照。なお、シリンダ部材26AのスリットはT字状であって、ロッドピン26Cを内側の位置にロックできる)。また、両方の側板には、ロッドピン26Cに対向するように、円周方向に整列した複数の調整ピン穴26Dが形成されている。タイヤ等の外周と接触する支持ロッド26の外面は、タイヤ等の損傷を防止するよう樹脂管26Eで覆われるとともに、タイヤ等の側面が接触する側板21A、21Bの内面にも樹脂スペーサPSが張られている。
【0046】
収容体2Aに最大外径のタイヤを格納するときは、
図13(a)に示すように、斜め板24Aに最も近い調整ピン穴26Dにロッドピン26Cを挿入して、支持ロッド26を斜め板24Aに最も近接した位置に置く。これに対し、タイヤの外径が小さく、立てかけた状態のタイヤの外周面が支持ロッド26に接触しないようなときは、支持ロッド26をタイヤの中心側に移動させる。そのため、まず、ロッドピン26Cに固着したハンドルHDを操作し、コイルばねCSに抗してロッドピン26Cを収容体2Aの内側方向にスライドして、ロッドピン26Cを調整ピン穴26Dから引き抜く(
図13(b)参照)。次に、支持ロッド26をタイヤの外周面に接触させるよう、ロッドアーム26Bを
図13(a)で時計方向に回動させてからハンドルHDを自由状態とする。ロッドピン26Cは、コイルばねCSに押されて外方に突出して対応する調整ピン穴26Dに挿入され、支持ロッド26の位置決めが行われることとなる(
図13(c)参照)。
このようにして、収容体2Aは、格納するタイヤ等の物品のサイズが小さいときでも、支持ロッド26の位置を調整することにより、物品を安定して保持することができる。図示はしないが、物品の幅方向の寸法が小さいときは、適宜の厚さのスペーサ板を収容体の側板と物品との間に挿入すればよく、収容体内により安定して保持するには、物品を緊縛するロープ等を使用することができるのは当然である。
【0047】
以上詳述したように、本発明は、超大型タイヤ等の円環形状の物品を運搬するトレーラにおいて、円環形状の物品を立てかけた状態で保持する収容体を車幅方向に複数個並列して配置し、さらに、駆動装置を設置して収容体間の距離を変更可能とすることにより、道路を通常走行する大型の円環形状物品の輸送を可能として輸送の効率化を図り、また、大型の円環形状物品の荷役作業を容易化するものである。上述の実施例では、本発明のタイヤ輸送用のトレーラとして、車両前後方向の中間部に低床部を設け、後部の床面が高い低床式トレーラを採用しているが、中間部から車両後端までの床面高さが等しいトレーラであっても、積載するタイヤの高さが道路を通常走行する際の制限値内に収まる場合には、そのトレーラを利用できることは言うまでもない。また、タイヤの収容体を構成する底板や斜め板の代わりに、収容体の側板を連結する棒状体を採用する、輸送するタイヤによっては、収容体を車幅方向に3個並列して配置する、あるいは、大型ベアリングの輸送用、紙や樹脂等のシートを卷回したコイルの輸送用として本発明のトレーラを利用するなど、上記実施例に対し各種の変形が可能であるのは明らかである。
【符号の説明】
【0048】
1 タイヤ(円環形状の物品)輸送用トレーラ
13 低床部
2、2A 収容体
21、21A、21B 側板
22 底板
26 支持ロッド
3 油圧シリンダ
4 ガイドレール
8 ガイドレール連結枠
TY タイヤ
TR トラクタ
TL トレーラ
MF メインフレーム
SR サイドレール