特許第6004906号(P6004906)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6004906
(24)【登録日】2016年9月16日
(45)【発行日】2016年10月12日
(54)【発明の名称】蓄冷機能付きエバポレータ
(51)【国際特許分類】
   F28D 20/00 20060101AFI20160929BHJP
   F28D 20/02 20060101ALI20160929BHJP
   F25B 39/02 20060101ALI20160929BHJP
   B60H 1/32 20060101ALI20160929BHJP
【FI】
   F28D20/00 Z
   F28D20/02 Z
   F25B39/02 Z
   B60H1/32 613C
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-251587(P2012-251587)
(22)【出願日】2012年11月15日
(65)【公開番号】特開2014-98528(P2014-98528A)
(43)【公開日】2014年5月29日
【審査請求日】2015年10月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000152826
【氏名又は名称】株式会社日本クライメイトシステムズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 博志
(72)【発明者】
【氏名】猪原 広一朗
(72)【発明者】
【氏名】北 加寿紀
(72)【発明者】
【氏名】吉田 敬
(72)【発明者】
【氏名】小請 健太郎
【審査官】 伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−529644(JP,A)
【文献】 特開2010−243065(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0204597(US,A1)
【文献】 特開2002−225536(JP,A)
【文献】 特表2009−525911(JP,A)
【文献】 特表2006−503253(JP,A)
【文献】 特開2013−237347(JP,A)
【文献】 特開2014−092321(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 20/00
F28D 20/02
F25B 39/02
B60H 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒圧縮機から吐出された冷媒が膨張弁を経て供給されるとともに、冷熱を蓄える蓄冷部を備えた蓄冷機能付きエバポレータにおいて、
上記冷媒圧縮機の冷媒吐出量が減少したときに、表面温度の上昇速さが第1の速さである第1の部分と、第1の速さよりも遅い第2の速さで上昇する第2の部分とを有し、
上記蓄冷部は、上記第1の部分の風下側に配置され、上記第2の部分の風下側に配置されないことを特徴とする蓄冷機能付きエバポレータ。
【請求項2】
請求項1に記載の蓄冷機能付きエバポレータにおいて、
冷媒の流れ方向に連なる複数のパスを有しており、
上記第2の部分は、冷媒の流れ方向最上流のパスであることを特徴とする蓄冷機能付きエバポレータ。
【請求項3】
請求項1に記載の蓄冷機能付きエバポレータにおいて、
上下方向に延びるとともに、冷媒が流通するチューブを有しており、
上記第2の部分は、上記チューブの下側部分であることを特徴とする蓄冷機能付きエバポレータ。
【請求項4】
請求項1に記載の蓄冷機能付きエバポレータにおいて、
冷媒の流れ方向に連なる複数のパスと、
上下方向に延びるとともに、冷媒が流通するチューブとを有しており、
上記第2の部分は、冷媒の流れ方向最上流のパス及び上記チューブの下側部分であることを特徴とする蓄冷機能付きエバポレータ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載の蓄冷機能付きエバポレータにおいて、
上記蓄冷部は、上記エバポレータの本体部分とは別体とされ、該本体部分に取り付けられていることを特徴とする蓄冷機能付きエバポレータ。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか1つに記載の蓄冷機能付きエバポレータにおいて、
上記蓄冷部は、上記エバポレータの本体部分に組み込まれていることを特徴とする蓄冷機能付きエバポレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷熱を蓄えることができる蓄冷機能付きエバポレータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、車両用空調装置にはエンジンで駆動される冷媒圧縮機を備えた冷凍サイクルが使用されており、冷凍サイクルのエバポレータを空気冷却器としているのが一般的である。
【0003】
近年、燃費向上及び環境負荷軽減の観点からエンジンを自動停止する、いわゆるアイドリングストップ機能を備えた車両が普及してきている。エンジンが停止すると冷媒圧縮機も停止するので、車室の冷房性能が確保できなくなり、ひいては、エンジンの再始動が頻繁に起こり、アイドリングストップ機能の効果が十分に得られなくなる。
【0004】
そこで、例えば、特許文献1、2に開示されているようにエバポレータに蓄冷機能を持たせることにより、アイドリングストップ中における冷風温度の上昇を抑制することが考えられている。
【0005】
特許文献1のエバポレータは、複数のチューブ及びフィンからなるコアと、チューブの端部に連通する一対のヘッダタンクとを備えたチューブアンドフィンタイプの熱交換器である。ヘッダタンクの内部は、外部空気の流れ方向に2つに仕切られており、外部空気の上流側の空間には冷媒が流通し、一方、下流側の空間には蓄冷材を封入している。チューブは、ヘッダタンク内部において冷媒が流通する部分に連通する冷媒流通チューブと、蓄冷材を封入する部分に連通する蓄冷材封入チューブとで構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−133126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1の蓄冷機能付きエバポレータでは、蓄冷部が冷熱を蓄えていない状況下において、エバポレータの外部空気流れ方向上流側(風上側)で冷却された冷風の冷熱が蓄冷部で蓄冷材に奪われてしまう。特に、特許文献1では外部空気の流れ方向下流側(風下側)の全体に蓄冷材封入チューブが配設されていて、エバポレータの風下側全体が蓄冷部となっているので、風上側の冷風の全量が蓄冷部を通過することになる。従って、冷房性能の低下が懸念される。
【0008】
また、特許文献1では、風下側全体に蓄冷材を封入するようにしているので、その分、エバポレータが大型化してしまう。また、空調装置によっては蓄冷材が風下側全体に必要ない場合があり、この場合には無用なコストアップとなる。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、蓄冷部を設けることによる冷房性能の低下を抑制するとともに、蓄冷部を無用に大きくすることなく、必要最小限の大きさにできるようにしてコスト低減を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明では、冷媒圧縮機の冷媒吐出量が減少したときに表面温度の上昇速さが遅い部分の風下側には蓄冷材を設けないようにし、表面温度の上昇速さが速い部分の風下側に蓄冷材を設けるようにした。
【0011】
第1の発明は、冷媒圧縮機から吐出された冷媒が膨張弁を経て供給されるとともに、冷熱を蓄える蓄冷部を備えた蓄冷機能付きエバポレータにおいて、
上記冷媒圧縮機の冷媒吐出量が減少したときに、表面温度の上昇速さが第1の速さである第1の部分と、第1の速さよりも遅い第2の速さで上昇する第2の部分とを有し、
上記蓄冷部は、上記第1の部分の風下側に配置され、上記第2の部分の風下側に配置されないことを特徴とするものである。
【0012】
この構成によれば、例えば冷媒圧縮機が停止して冷媒吐出量が減少したときに、エバポレータの表面温度は、第1の部分の上昇速さが速く、第2の部分の上昇速さが遅くなる。蓄冷部は、第1の部分の風下側に配置されているので、第1の部分の表面温度が速く上昇しても、蓄冷部によって冷風温度を低く維持することが可能になるので、冷媒圧縮機が停止した場合であっても快適性は良好に維持される。
【0013】
一方、冷媒圧縮機の冷媒吐出量が減少していない通常時には、蓄冷部が第2の部分の風下側には配置されていないので、第2の部分を通過する空気が蓄冷部を通過しない。よって、低温の空気を室内に供給することが可能になるので、高い冷房性能が確保される。
【0014】
そして、蓄冷部が第2の部分の風下側に配置されないので、上述のように快適性に影響を殆ど与えることなく、蓄冷部の大きさを小さくすることが可能になる。
【0015】
第2の発明は、第1の発明において、
冷媒の流れ方向に連なる複数のパスを有しており、
上記第2の部分は、冷媒の流れ方向最上流のパスであることを特徴とするものである。
【0016】
この構成によれば、冷媒圧縮機から吐出された冷媒は、エバポレータの冷媒流れ方向最上流のパスを流通した後、下流側のパスを流通する。最上流のパスは、冷媒の液相率が高いため、冷媒圧縮機の冷媒吐出量が減少しても液冷媒の蒸発潜熱による蓄冷効果がある。つまり、最上流のパスは他のパスに比べて表面温度の上昇速さが遅いので、この最上流のパスを第2の部分として風下側に蓄冷部を配置しないようにすることで、冷房時の快適性が良好に維持される。
【0017】
第3の発明は、第1の発明において、
上下方向に延びるとともに、冷媒が流通するチューブを有しており、
上記第2の部分は、上記チューブの下側部分であることを特徴とするものである。
【0018】
この構成によれば、冷房時にチューブの表面に発生した結露水は、チューブが上下方向に延びているので、チューブの表面において下側部分に流れ落ちることになる。この結露水は冷却されているので、冷媒吐出量が減少しても結露水の持つ冷熱によってチューブの下側部分の表面温度の上昇速さが遅くなる。このチューブの下側部分を第2の部分として風下側に蓄冷部を配置しないようにすることで、冷房時の快適性が良好に維持される。
【0019】
第4の発明は、第1の発明において、
冷媒の流れ方向に連なる複数のパスと、
上下方向に延びるとともに、冷媒が流通するチューブとを有しており、
上記第2の部分は、冷媒の流れ方向最上流のパス及び上記チューブの下側部分であることを特徴とするものである。
【0020】
この構成によれば、最上流のパス及びチューブの下側部分の風下側に蓄冷部を配置しないようにすることで、冷房時の快適性が良好に維持される。
【0021】
第5の発明は、第1から4のいずれか1つの発明において、
上記蓄冷部は、上記エバポレータの本体部分とは別体とされ、該本体部分に取り付けられていることを特徴とするものである。
【0022】
この構成によれば、蓄冷部が別体であるため、エバポレータの本体部分の冷媒のフローパターンや結露水の排水構造等に影響を与えることなく、蓄冷部の大きさを自由に設定することが可能になる。
【0023】
第6の発明は、第1から4のいずれか1つの発明において、
上記蓄冷部は、上記エバポレータの本体部分に組み込まれていることを特徴とするものである。
【0024】
この構成によれば、エバポレータを例えば空調ケーシングに収容する際に、蓄冷部をエバポレータの本体部分と一緒に収容することが可能になるので、空調装置の製造時の作業性が良好になる。
【発明の効果】
【0025】
第1の発明によれば、蓄冷部を、冷媒吐出量が減少したときに表面温度の上昇速さの速い第1の部分の風下側に配置し、上昇速度の遅い第2の部分の風下側には配置しないようにしたので、蓄冷部を設けることによる冷房性能の低下を抑制できるとともに、蓄冷部を無用に大きくすることなく、必要最小限の大きさにしてコスト低減を図ることができる。
【0026】
第2の発明によれば、冷媒の流れ方向最上流のパスは表面温度の上昇速さが遅く、この最上流のパスの風下側に蓄冷部を配置しないようにすることで、第1の発明の効果がより一層顕著なものとなる。
【0027】
第3の発明によれば、上下方向に延びるチューブの下側部分の表面温度の上昇速さは遅く、このチューブの下側部分の風下側に蓄冷部を配置しないようにすることで、第1の発明の効果がより一層顕著なものとなる。
【0028】
第4の発明によれば、冷媒の流れ方向最上流のパス及びチューブの下側部分の風下側に蓄冷部を配置しないようにしたので、第1の発明の効果がより一層顕著なものとなる。
【0029】
第5の発明によれば、蓄冷部をエバポレータの本体部分とは別体にしたので、エバポレータの本体部分の冷媒のフローパターンや結露水の排水構造等に影響を与えることなく、蓄冷部の大きさを自由に設定することができる。
【0030】
第6の発明によれば、蓄冷部がエバポレータの本体部分に組み込まれているため、空調装置の製造時の作業性を良好にできる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】実施形態1に係る蓄冷機能付きエバポレータを風下側から見た斜視図である。
図2図1のII−II線断面図である。
図3】実施形態1に係る蓄冷機能付きエバポレータを模式的に示した図である。
図4】実施形態2に係る蓄冷機能付きエバポレータの図1相当図である。
図5】実施形態3に係る蓄冷機能付きエバポレータの図1相当図である。
図6】実施形態4に係る蓄冷機能付きエバポレータの図1相当図である。
図7】実施形態5に係る蓄冷機能付きエバポレータの図1相当図である。
図8】実施形態6に係る蓄冷機能付きエバポレータの図1相当図である。
図9】実施形態7に係る蓄冷機能付きエバポレータの図3相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0033】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る蓄冷機能付きエバポレータ1を風下側(外部空気の流れ方向下流側)から見た斜視図である。図2は、エバポレータ1の上側ヘッダタンク3の水平断面を示す図である。このエバポレータ1は、図示しないが、車両用空調装置の冷凍サイクルの一要素である。冷凍サイクルは、エバポレータ1の他、熱交換媒体としての冷媒を圧縮する冷媒圧縮機、凝縮器、膨張弁を備えており、これら機器は冷媒配管によって接続されて冷媒が循環するようになっている。冷媒圧縮機は、車両のエンジンによって駆動されるようになっているので、エンジンが停止すると冷媒圧縮機からの冷媒吐出量が減少し、0になる。
【0034】
また、この車両には、停車時で、かつ、エンジン自動停止の所定条件が成立した場合にエンジンのアイドリングを自動停止するように構成された、いわゆるアイドリングストップ装置が搭載されている。アイドリングストップ装置の構成については、従来周知のものなので説明を省略する。アイドリングストップ装置は、空調装置の作動中であっても、車両制御装置が、例えば乗員の要求する冷房性能や暖房性能を確保できると判断した場合には、アイドリングの自動停止を許可し、乗員の要求する冷房性能や暖房性能を確保できないと判断した場合には、アイドリングの自動停止を禁止するようになっている。
【0035】
エバポレータ1は、例えば加熱用熱交換器等と共にケーシング100(図1にのみ仮想線で示す)に収容されている。ケーシング100には、エアミックスダンパや吹出方向切替ダンパ等を収容することもできるようになっている。
【0036】
エバポレータ1は、コア2と、上側ヘッダタンク3と、下側ヘッダタンク4とを備えている。コア2は、図2に示す複数の風下側チューブ21及び風上側チューブ22(図3には模式的に示す)と、図1に示す複数のフィン23と、一対のエンドプレート24とを備えている。
【0037】
風下側チューブ21は、エバポレータ1の外部空気流れ方向(各図に矢印Xで示す方向)下流側に配置され、風上側チューブ22は、エバポレータ1の外部空気流れ方向上流側に配置されている。このエバポレータ1は、外部空気の流れ方向に2列のチューブ21,22が配置された複列型の構造となっている。
【0038】
風下側チューブ21及び風上側チューブ22は、共に上下方向に延びており、外部空気の流れ方向に長い断面形状を有する偏平チューブである。風下側チューブ21は、エバポレータ1の幅方向(図1の左右方向)に所定の間隔をあけて配置されており、隣り合う風下側チューブ21間に上記フィン23が配置されている。風下側チューブ21は、後述する上側ヘッダタンク3の第2仕切板32の配設によって左右に2つのチューブ群に分けられており、第2仕切板32よりも右側のチューブ21aには蓄冷材が充填され、第2仕切板32よりも左側のチューブ21bには、冷媒が流通するようになっている。このチューブ21bで構成されたパスが冷媒流れ方向最上流に位置する最上流パス101(図2及び図3に示す)である。チューブ21aとチューブ21bとは、断面形状、外形状、長さ等が同じに設定された同一チューブである。
【0039】
尚、蓄冷材としては、従来から使用されているものを用いることができ、種類は特に限定されない。また、チューブ21aの上端部及び下端部を閉塞して蓄冷材をチューブ21aに封入してもよいし、チューブ21aの上端部及び下端部は閉塞せずに、ヘッダタンク3,4におけるチューブ21aの連通する空間に蓄冷材を充填してもよい。
【0040】
図3中、太線で囲まれた部分は、蓄冷材が充填されたチューブ21aからなる蓄冷部110を表している。蓄冷部110は、冷媒圧縮機の冷媒吐出量が減少したときに、エバポレータ1における表面温度の上昇速さが速い部分の風下側にのみ配置され、表面温度の上昇速さが遅い部分の風下側には配置されていない。蓄冷部110をチューブ21aで構成したので、エバポレータ1の本体部分に組み込んだ状態とすることができ、蓄冷部110が本体部分から飛び出して配置されるようなことはない。
【0041】
また、風上側チューブ22も風下側チューブ21と同様に配置されているので、風下側チューブ21及び風上側チューブ22は、外部空気の流れ方向から見たとき、互いに重複することになる。このため、例えば、外部空気の流れ方向上流側から風上側チューブ22を見たときには風下側チューブ21は殆ど見えない。
【0042】
図2に示すように、風上側チューブ22は、第3仕切板33によって左側のチューブ22群と右側のチューブ22群とに分けられている。左側のチューブ22群で構成されたパスは、最上流パス101の冷媒流れ方向下流側に連通する中間パス102(図2に示す)である。右側のチューブ2群で構成されたパスは、中間パス102の冷媒流れ方向下流側に連通する最下流パス103(図2に示す)である。
【0043】
フィン23は、上下方向に延びるコルゲートフィンである。このフィン23は、エバポレータ1の風下側チューブ21から風上側チューブ22に亘って連続している。つまり、コア2は、複数の風下側チューブ21と風上側チューブ22及びフィン23が交互にエバポレータ1の幅方向に並ぶように配置されてなるものである。
【0044】
エンドプレート24は、コア2の外端部のフィン23を外側から覆うように配置されている。
【0045】
上側ヘッダタンク3は、チューブ21、22の上端部に配置されており、エバポレータ1の幅方向(チューブ21,22及びフィン23の並び方向)に延びる筒状をなしている。上側ヘッダタンク3の内部には、該上側ヘッダタンク3の内部空間を、外部空気の流れ方向下流側の風下側空間Rと上流側の風上側空間Sとに仕切るための第1仕切板31と、風下側空間Rをエバポレータ1左側の左側空間R2と右側の右側空間R1とに仕切るための第2仕切板32と、風上側空間Sをエバポレータ1左側の左側空間S2と右側の右側空間S1とに仕切るための第3仕切板33とが設けられている。第1〜第3仕切板31〜33は、上側ヘッダタンク3の仕切部となるものである。
【0046】
風下側空間Rの左側空間R2には、風下側チューブ21のうち、冷媒が流通する最上流パス101のチューブ21bの上端部が接続されている。また、風下側空間Rの右側空間R1には、蓄冷材が充填されたチューブ21aが接続されている。また、上側ヘッダタンク3の風上側空間Sには、風上側チューブ22の上端部が接続されている。
【0047】
図1に示すように、上側ヘッダタンク3の右端面の風下側には、上側ヘッダタンク3に冷媒を供給する供給管50が設けられており、この供給管50は、上側ヘッダタンク3の風下側空間Rの右側空間R1に接続されている。上側ヘッダタンク3の右端面の風上側には、上側ヘッダタンク3内の冷媒を排出する排出管51が設けられており、この排出管51は、上側ヘッダタンク3の風上側空間Sの右側空間S1に接続されている。従って、供給管50及び排出管51は、エバポレータ1の同一側面から該ヘッダタンク3に接続されており、互いに隣接している。
【0048】
また、上側ヘッダタンク3の風下側空間Rの右側空間R1の内部には、バイパス通路を構成するバイパス管39が設けられている。バイパス管39は、供給管50から供給された冷媒を、右側空間R1をバイパスして左側空間R2に流すためのものである。バイパス管39の上流側は供給管50に接続されている。バイパス管39の下流側は第2仕切板32を貫通して左側空間R2に接続されている。従って、供給管50はバイパス管39を介して左側空間R2に連通することになる。
【0049】
また、上側ヘッダタンク3の第1仕切板31における第2仕切板32よりも左側の部分には、風下側空間Rの左側空間R2と風上側空間Sの左側空間S2とを連通させるための連通孔31aが形成されている。
【0050】
下側ヘッダタンク4は、チューブ21,22の下端部に配置されており、エバポレータ1の幅方向に延びる筒状をなしている。下側ヘッダタンク4の内部には、該下側ヘッダタンク4の内部空間を、外部空気の流れ方向下流側の風下側空間Tと上流側の風上側空間Uとに仕切るための第1仕切板41と、風下側空間Tをエバポレータ1左側の左側空間T2と右側の右側空間T1とに仕切るための第2仕切板42とが設けられている。第1、第2仕切板41、42は、下側ヘッダタンク4の仕切部となるものである。
【0051】
風下側空間Tの左側空間T2には、風下側チューブ21のうち、冷媒が流通するチューブ21bの下端部が接続されている。また、風下側空間Tの右側空間T1には、蓄冷材が充填されたチューブ21aが接続されている。また、下側ヘッダタンク4の風上側空間Uには、風上側チューブ22の下端部が接続されている。
【0052】
また、図3に示すように、下側ヘッダタンク4の第1仕切板41における第2仕切板42よりも左側の部分には、風下側空間Tの左側空間T2と風上側空間Uとを連通させるための連通孔41aが形成されている。
【0053】
次に、上記のように構成されたエバポレータ1の作用について説明する。エンジンが運転状態にあり、冷媒圧縮機が作動している場合には、膨張弁を介して減圧された冷媒が供給管50から図3の矢印Aで示すように上側ヘッダタンク3の風下側空間Rの右側空間R1内のバイパス管39に流入し、矢印Bで示すようにバイパス管39を左側へ流れる。
【0054】
バイパス管39を流れた冷媒は、風下側空間Rの左側空間R2に流入した後、分流し、矢印C1で示すように風下側チューブ21b(最上流パス101)に流入し、風下側チューブ21bを流通して下側ヘッダタンク4の風下側空間Tの左側空間T2に流入するとともに、矢印C2で示すように連通孔31aから風上側空間Sの左側空間S2に流入する。下側ヘッダタンク4の風下側空間Tの左側空間T2に流入した冷媒は、矢印Dで示すように下側ヘッダタンク3の連通孔41aから風上側空間Uに流入する。一方、上側ヘッダタンク3の風上側空間Sの左側空間S2に流入した冷媒は、矢印Eで示すように左側空間S2に接続された風上側チューブ22(図2に示す中間パス102)に流入し、風上側チューブ22を流通して下側ヘッダタンク4の風上側空間Uに流入する。下側ヘッダタンク4の風上側空間Uに流入した冷媒は、矢印Fで示すように上側ヘッダタンク3の風上側空間Sの右側空間S1に接続された風上側チューブ22(図2に示す最下流パス103)に流入し、風上側チューブ22を流通して上側ヘッダタンク3の風上側空間Sの右側空間S1に流入する。上側ヘッダタンク3の風上側空間Sの右側空間S1に流入した冷媒は、矢印Gで示すように排出管51から外部へ排出される。
【0055】
この形態では、上側ヘッダタンク3の風下側空間Rの左側空間R2の冷媒を、矢印C2で示すように、蓄冷材が充填されたチューブ21aの風上側に重複する風上側チューブ22に流すようにしている。これにより、蓄冷材が充填されたチューブ21aの外部空気流れ方向上流側に位置するチューブ22に流通する冷媒の流量を増加させることができる。
【0056】
冷媒は、風下側チューブ21b及び風上側チューブ22を流通する間に外部空気と熱交換して外部空気を冷却するとともに、風下側チューブ21a内の蓄冷材に冷熱を与えて蓄冷材に冷熱が蓄えられる。このとき、風下側チューブ21aには、風上側チューブ22を通過して冷却された冷風が接触するので、蓄冷材への蓄冷時間が短縮される。さらに、冷媒が流れる風下側チューブ21bが風下側チューブ21aの左側に隣接しているので、風下側チューブ21bの冷熱が風下側チューブ21aの蓄冷材に伝わりやすくなり、このことによっても蓄冷材への蓄冷時間が短縮される。
【0057】
蓄冷材が十分に蓄冷するまでは、風上側チューブ22間を通過して冷却された冷風の冷熱が風下側チューブ21aの間を通過する際に、蓄冷材と熱交換するので冷風の温度が上昇することになる。この実施形態では、最上流パス101を構成するチューブ21bの風下側には蓄冷部110が配置されていないので、最上流パス101のチューブ21b間を通過する冷風の冷熱は蓄冷部110に奪われない。しかも、最上流パス101を構成するチューブ21bの冷媒は液相率が高いので、蒸発潜熱が大きく、チューブ21b間を通過する冷風はより一層温度低下する。従って、蓄冷部110を設けても高い最大冷房性能を得ることができる。
【0058】
エンジンのアイドリングが自動停止した場合には、冷媒圧縮機からの冷媒吐出量が0になるので、エバポレータ1への冷媒流入量が0になる。エバポレータ1への冷媒流入量が0になっても、しばらくの間は、最上流パス101を構成するチューブ21bの内部の冷媒の液相率が高い状態であるため、最上流パス101を構成するチューブ21bでは液冷媒の蒸発潜熱による蓄冷効果がある。一方、最上流パス101よりも冷媒流れ下流側の最下流パス103を構成するチューブ22内の冷媒は、最上流パス101を構成するチューブ21b内の冷媒よりも液相率が低く、殆どガス状態であるので蒸発潜熱による蓄冷効果は、最上流パス101を構成するチューブ21bよりも低い。よって、最上流パス101を構成するチューブ21bの表面温度の上昇速さは、最下流パス103を構成するチューブ22の表面温度の上昇速さよりも遅くなり、この実施形態では、最上流パスを構成するチューブ21bの風下側には蓄冷部110を配置せずに、最下流パス103を構成するチューブ22の風下側にのみ蓄冷部110を配置している。
【0059】
最下流パス103を構成するチューブ22は、本発明の第1の部分に相当するものであり、冷媒圧縮機の冷媒吐出量が減少したときに上昇する表面温度の上昇速さは第1の速さである。一方、最上流パス101を構成するチューブ21bは、本発明の第2の部分に相当するものであり、冷媒圧縮機の冷媒吐出量が減少したときに上昇する表面温度の上昇速さは第2の速さである。
【0060】
蓄冷部110は、最下流パス103を構成するチューブ22の風下側に配置されているので、最下流パス103を構成するチューブ22の表面温度が速く上昇しても、蓄冷部110に蓄えられた冷熱が放出されて冷風温度を低く維持することが可能になる。よって、冷媒圧縮機が停止した場合であっても快適性は良好に維持される。
【0061】
この実施形態では、蓄冷性能を向上させる場合には、蓄冷材の充填された風下側チューブ21aの本数を増やせばよく、具体的には、上側ヘッダタンク3の第2仕切板32を左側に移動させるとともに、下側ヘッダタンク4の第2仕切板42を同様に左側に移動させる。蓄冷性能を低下させる場合には、第2仕切板32,42を右側に移動させればよい。
【0062】
一方、最大冷房性能を向上させる場合には、冷媒の流通する風下側チューブ21bの本数を増やせばよく、具体的には、上側ヘッダタンク3の第2仕切板32を右側に移動させるとともに、下側ヘッダタンク4の第2仕切板42を同様に右側に移動させる。最大冷房性能を低下させる場合には、第2仕切板32,42を左側に移動させればよい。
【0063】
蓄冷性能や最大冷房性能を変更するにあたっては、上側ヘッダタンク3や下側ヘッダタンク4に大きな構造変更が伴わず、また、外部空気の流れ方向についてチューブの列数を変更する必要もなく、容易に行うことが可能となっている。
【0064】
また、この実施形態では、蓄冷材をチューブ21aに充填するようにしているので、フィン23を潰す必要はなく、蓄冷機能を付与するためにエバポレータ1の通風抵抗が増大することはない。
【0065】
以上説明したように、この実施形態1に係るエバポレータ1によれば、蓄冷部110を、冷媒吐出量が減少したときに表面温度の上昇速さの速い最下流パス103のチューブ22の風下側に配置し、上昇速度の遅い最上流パス101のチューブ21bの風下側には配置しないようにしている。これにより、蓄冷部110を設けることによる冷房性能の低下を抑制できるとともに、蓄冷部110を無用に大きくすることなく、必要最小限の大きさにしてコスト低減を図ることができる。
【0066】
また、蓄冷部110がエバポレータ1の本体部分に組み込まれているため、空調装置の製造時に空調ケーシング100に収容する際に、蓄冷部110をエバポレータ1の本体部分(チューブ21b、22,ヘッダタンク3,4、エンドプレート24,24等)と一緒に収容することが可能になる。よって、空調装置の製造時の作業性が良好になる。
【0067】
(実施形態2)
図4は、本発明の実施形態2に係る蓄冷機能付きエバポレータ1を示すものである。この実施形態2は、蓄冷部110の構造が実施形態1のものと異なるだけであり、他の部分は実施形態1と同様であるので、以下、実施形態1と異なる部分について説明する。
【0068】
上記実施形態1では、蓄冷材をチューブ21aに充填していたが、実施形態2では、このチューブ21aを省略し、一部のフィン23を、蓄冷材が充填された蓄冷材容器109に置き換えている。従って、蓄冷材容器109はエバポレータ1の幅方向に並ぶことになる。蓄冷材容器109は、上側ヘッダタンク3の下面から下側ヘッダタンク4の上面まで延びている。複数の蓄冷材容器109によって蓄冷部110が構成されている。エバポレータ1の幅方向に並ぶ蓄冷材容器109の間には、フィン23が配設されている。
【0069】
この実施形態2のエバポレータ1も実施形態1と同様に、蓄冷部110を、冷媒吐出量が減少したときに表面温度の上昇速さの速い最下流パス103のチューブ22の風下側に配置し、上昇速度の遅い最上流パス101のチューブ21の風下側には配置しないようにしている。
【0070】
これにより、蓄冷部110を設けることによる冷房性能の低下を抑制できるとともに、蓄冷部110を無用に大きくすることなく、必要最小限の大きさにしてコスト低減を図ることができる。
【0071】
(実施形態3)
図5は、本発明の実施形態3に係る蓄冷機能付きエバポレータ1を示すものである。この実施形態3は、蓄冷部110の構造が実施形態2のものと異なるだけであり、他の部分は実施形態2と同様であるので、以下、実施形態2と異なる部分について説明する。
【0072】
実施形態2では、蓄冷材容器109が下側ヘッダタンク4の上面に達していたが、この実施形態3では、蓄冷材容器109の下側が下側ヘッダタンク4の上面から上方に離れている。
【0073】
空気を冷却する際、チューブ21,22の表面に発生した結露水は、チューブ21,22が上下方向に延びているので、チューブ21,22の表面における下側部分に流れ落ちることになり、フィン23の隙間等で保水される。この保水された結露水は冷却されているので、冷媒圧縮機からの冷媒吐出量が減少しても結露水の持つ冷熱によってチューブ21,22の下側部分の表面温度の上昇速さがチューブ21,22の上側部分(保水していない領域)に比べて遅くなる。風上側チューブ22の上側部分は、表面温度の上昇速さが第1の速さである第1の部分である。風上側チューブ22の下側部分は、表面温度の上昇速さが第1の速さよりも遅い第2の速さで上昇する第2の部分である。
【0074】
蓄冷材容器109の下側を下側ヘッダタンク4の上面から上方に離すことで、蓄冷部110は、風上側チューブ22の上側部分の風下側にのみ配置され、風上側チューブ22の下側部分の風下側に配置されないことになる。風上側チューブ22の下側部分とは、チューブ22の下端から上に、該チューブ22の上下寸法の1/4〜1/3程度の範囲である。
【0075】
したがって、この実施形態3のエバポレータ1では、蓄冷部110を、冷媒吐出量が減少したときに表面温度の上昇速さの速い最下流パス103の風下側、かつ、風上側チューブ22の上側部分にのみ配置し、上昇速度の遅い最上流パス101のチューブ21の風下側、かつ、風上側チューブ22の下側部分には配置しないようにしている。これにより、蓄冷部110を設けることによる冷房性能の低下を抑制できるとともに、蓄冷部110を無用に大きくすることなく、必要最小限の大きさにしてコスト低減を図ることができる。
【0076】
(実施形態4)
図6は、本発明の実施形態6に係る蓄冷機能付きエバポレータ1を示すものである。この実施形態4は、蓄冷部110の構造が上記実施形態1〜3のものと異なっている。以下、実施形態1〜3と異なる部分について説明する。
【0077】
実施形態4では、蓄冷部110がエバポレータ1の本体部分とは別体とされ、該本体部分に取り付けられている。蓄冷部110は、蓄冷材が充填された蓄冷材容器109と、フィン108とが交互に配設されて一体化されたものである。蓄冷部110は、エンドプレート24やヘッダタンク3,4に固定することができ、エバポレータ1の本体部分から突出している。
【0078】
また、蓄冷部110は、実施形態3と同様に、冷媒吐出量が減少したときに表面温度の上昇速さの速い風上側チューブ22の上側部分にのみ配置し、上昇速度の遅い風上側チューブ22の下側部分には配置しないようにしている。
【0079】
したがって、実施形態4のエバポレータ1では、蓄冷部110を設けることによる冷房性能の低下を抑制できるとともに、蓄冷部110を無用に大きくすることなく、必要最小限の大きさにしてコスト低減を図ることができる。
【0080】
また、蓄冷部110をエバポレータ1の本体部分とは別体にしたので、エバポレータ1の本体部分の冷媒のフローパターンや結露水の排水構造等に影響を与えることなく、蓄冷部110の大きさを自由に設定することができる。
【0081】
また、蓄冷部110が不要なエバポレータ1では、エバポレータ1の本体部分には殆ど構造変更を施すことなく、蓄冷部110を省略するだけで簡単に対応することができる。
【0082】
(実施形態5)
図7は、本発明の実施形態5に係る蓄冷機能付きエバポレータ1を示すものである。この実施形態5は、蓄冷部110の構造が上記実施形態4のものと異なっている。以下、実施形態4と異なる部分について説明する。
【0083】
実施形態5の蓄冷部110は、実施形態4の蓄冷部110に比べて幅が狭くなっている。そして、蓄冷部110は、冷媒吐出量が減少したときに表面温度の上昇速さの速い最下流パス103のチューブ22の風下側にのみ配置し、上昇速度の遅い最上流パス101のチューブ21bの風下側には配置しないようにしている。
【0084】
したがって、この実施形態5のエバポレータ1では、蓄冷部110を、冷媒吐出量が減少したときに表面温度の上昇速さの速い最下流パス103の風下側、かつ、風上側チューブ22の上側部分にのみ配置し、上昇速度の遅い最上流パス101のチューブ21の風下側、かつ、風上側チューブ22の下側部分には配置しないようにしている。これにより、蓄冷部110を設けることによる冷房性能の低下を抑制できるとともに、蓄冷部110を無用に大きくすることなく、必要最小限の大きさにしてコスト低減を図ることができる。
【0085】
(実施形態6)
図8は、本発明の実施形態6に係る蓄冷機能付きエバポレータ1を示すものである。この実施形態6のエバポレータ1は、1本のチューブ20が屈曲形成されたサーペンタイン型のエバポレータである。
【0086】
チューブ20の間には、フィン23が配設されている。また、チューブ20の上流端には、冷媒を供給する供給管50が取り付けられている。チューブ20の下流端には、冷媒を排出する排出管51が取り付けられている。
【0087】
チューブ20のうち、供給管50に近い側を流通する冷媒は、排出管51に近い側を流通する冷媒に比べて液相率が高いので、蒸発潜熱が大きい。エンジンのアイドリングが自動停止した場合に、エバポレータ1への冷媒流入量が0になっても、しばらくの間は、チューブ20の供給管50に近い側の冷媒の液相率が高い状態であるため、液冷媒の蒸発潜熱による蓄冷効果がある。
【0088】
一方、チューブ20の排出管51側の冷媒は、供給管50側よりも液相率が低く、殆どガス状態であるので蒸発潜熱による蓄冷効果は、供給管50側よりも低い。よって、チューブ20の供給管50側の表面温度の上昇速さは、チューブ20の排出管51側の表面温度の上昇速さよりも遅くなり、この実施形態では、チューブ20の供給管50側の風下側には蓄冷部110を配置せずに、チューブ20の排出管51側の風下側にのみ蓄冷部110を配置している。蓄冷部110の構成は実施形態5と同様である。
【0089】
チューブ20の排出管51側は、本発明の第1の部分に相当するものであり、冷媒圧縮機の冷媒吐出量が減少したときに上昇する表面温度の上昇速さは第1の速さである。一方、チューブ20の供給管50側は、本発明の第2の部分に相当するものであり、冷媒圧縮機の冷媒吐出量が減少したときに上昇する表面温度の上昇速さは第1の速さよりも遅い第2の速さである。
【0090】
以上説明したように、この実施形態6に係るエバポレータ1によれば、蓄冷部110を、冷媒吐出量が減少したときに表面温度の上昇速さの速いチューブ20の排出管51側の風下側に配置し、上昇速度の遅いチューブ20の供給管50側の風下側には配置しないようにしている。これにより、実施形態1と同様に、蓄冷部110を設けることによる冷房性能の低下を抑制できるとともに、蓄冷部110を無用に大きくすることなく、必要最小限の大きさにしてコスト低減を図ることができる。
【0091】
(実施形態7)
図9は、本発明の実施形態7に係る蓄冷機能付きエバポレータ1を示すものである。この実施形態7は、エバポレータ1の冷媒のフローパターン及び蓄冷部110の配置が実施形態1のものと異なっている。以下、実施形態1と異なる部分について詳細に説明する。
【0092】
実施形態7のエバポレータ1は、4つのパスを有している。すなわち、上側ヘッダタンク3の風下側空間Rの第2仕切板32と、風上側空間Sの第3仕切板33とは、左右方向について同じところに配置されている。上側ヘッダタンク3の第1仕切板31には、第2仕切板32よりも左側に連通孔31aが設けられている。また、下側ヘッダタンク4には、左右方向に仕切るための仕切板が設けられていない。
【0093】
蓄冷部110は、第2仕切板32よりも左側に配置されている。さらに、この蓄冷部110は、風上側チューブ22の上側部分の風下側にのみ配置され、風上側チューブ22の下側部分の風下側に配置されていない。
【0094】
次に、上記のように構成されたエバポレータ1の作用について説明する。冷媒は、供給管50から図9の矢印Aで示すように上側ヘッダタンク3の風下側空間Rの右側空間R1に流入した後、矢印Bで示すように右側空間R1に連通した風下側チューブ21を流通して、下側ヘッダタンク4の風下側空間Tに流入する。
【0095】
風下側空間Tに流入した冷媒は、矢印Cで示すように、上側ヘッダタンク3の風下側空間Rの左側空間R2に連通する風下側チューブ21を流通して左側空間R2に流入する。その後、矢印Dで示すように連通孔31aから上側ヘッダタンク3の風上側空間Sの左側空間S2に流入し、矢印Eで示すように左側空間S2に連通する風上側チューブ22を流通して下側ヘッダタンク4の風上側空間Uに流入する。
【0096】
風上側空間Uに流入した冷媒は、矢印Fで示すように、上側ヘッダタンク3の風上側空間Sの右側空間S1に連通する風上側チューブ22を流通して右側空間S1に流入する。上側ヘッダタンク3の風上側空間Sの右側空間S1に流入した冷媒は、矢印Gで示すように排出管51から外部へ排出される。
【0097】
この実施形態7において、実施形態3と同様に、風上側チューブ22の上側部分は、表面温度の上昇速さが第1の速さである第1の部分である。風上側チューブ22の下側部分は、表面温度の上昇速さが第1の速さよりも遅い第2の速さで上昇する第2の部分である。
【0098】
この実施形態7においても、実施形態3と同様に、蓄冷部110は、冷媒吐出量が減少したときに表面温度の上昇速さの速い風上側チューブ22の上側部分にのみ配置し、上昇速度の遅い風上側チューブ22の下側部分には配置しないようにしている。
【0099】
したがって、実施形態7のエバポレータ1では、蓄冷部110を設けることによる冷房性能の低下を抑制できるとともに、蓄冷部110を無用に大きくすることなく、必要最小限の大きさにしてコスト低減を図ることができる。
【0100】
また、風下側チューブ21のうち、上側ヘッダタンク3の風下側空間Rの右側空間R1に連通するチューブ21は、冷媒流れ最上流パスを構成しており、この最上流パスの風下側に蓄冷部110を配置しないようにすることで、高い最大冷房性能を得ることができる。
【0101】
尚、エバポレータ1の冷媒のフローパターンは上記したパターンに限られるものではなく、本発明は様々なフローパターンに対応することができる。
【0102】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0103】
以上説明したように、本発明に係る蓄冷機能付きエバポレータは、例えば自動車の空調装置に使用することができる。
【符号の説明】
【0104】
1 蓄冷機能付きエバポレータ
2 コア
3 上側ヘッダタンク
4 下側ヘッダタンク
21 風下側チューブ
22 風上側チューブ
24 エンドプレート
101 最上流パス(第2の部分)
103 最下流パス(第1の部分)
110 蓄冷部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9