(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。本実施形態では上下方向を規定して説明する場合があるが、これは構成要素の相対関係を便宜的に説明するものであり重力方向の上下を必ずしも意味しない。
【0015】
本発明の実施形態にかかる配線基板の製造方法(以下、本方法という場合がある)を複数の工程に分けて説明する場合があるが、その記載の順番は、各工程を実行する順番やタイミングを必ずしも限定するものではない。本方法を実施するときには、その複数の工程の順番は内容的に支障のない範囲で変更することができ、また複数の工程の実行タイミングの一部または全部が互いに重複していてもよい。
【0016】
はじめに、本方法に用いられるスクリーン印刷版10の概要について説明する。
図1(a)は本発明の実施形態のスクリーン印刷版10を示す平面模式図である。
図1(b)は
図1(a)に示す領域Bの拡大図である。
【0017】
本実施形態のスクリーン印刷版10は、一列または複数列のライン状に並んで離散的に配設された複数個のドット状の貫通孔30によりラインパターン20が開口形成されていることを特徴とする。
図1(b)に示すように、本実施形態のスクリーン印刷版10では、X軸方向に2列に並ぶ貫通孔30により一本のラインパターン20が形成されている。それぞれのラインパターン20はY軸方向に延在している。また、本実施形態のスクリーン印刷版10は多数の線分状のラインパターン20を有している。
【0018】
スクリーン印刷版10の材質および寸法は特に限定されない。一例として、厚み寸法は10μm以上200μm以下が好ましく、20μm以上50μm以下がより好ましい。本実施形態のスクリーン印刷版10は、メタルマスクが好適に用いられる。ラインパターン20は、エッチング法、レーザー法または電鋳(アディティブ)法のいずれの方法でスクリーン印刷版10に形成してもよい。貫通孔30の寸法および位置の精度が高いという観点からアディティブ法でスクリーン印刷版10にマスクパターンを形成することが好ましい。スクリーン印刷版10の材料はニッケル系合金が例示される。このほか、スクリーン印刷版10には、金属メッシュ織物の開口の一部を乳剤で封止したスクリーンメッシュを用いてもよい。ただし、開口内に織物の縦糸と横糸が存在せずインクの塗布量が安定するという観点から、メタルマスクがより好適に用いられる。
【0019】
ラインパターン20は、一列または複数列のライン状に並ぶラインパターン20で構成されている。本実施形態では、幅方向に複数列(N列)のライン状に貫通孔30が並んでいる。ラインの長手方向には、幅方向の貫通孔30の並び個数(N個)よりも多くの貫通孔30が並んでいる。
図1(b)では、8個の貫通孔30がY軸方向に並んでラインパターン20を構成している様子を示しているが、貫通孔30の並び個数は任意である。
【0020】
次に、
図2(a)から(d)を用いて本方法の概要を説明する。
図2(c)は
図2(b)の部分拡大図である。本方法は配線基板50の製造方法である。
【0021】
本方法は、準備工程、塗布工程(
図2(a))、吐出工程(
図2(b))、乾燥工程(
図2(d))を含む。
準備工程では、一列または複数列のライン状に並んで離散的に穿設された複数個のドット状の貫通孔30によりラインパターン20が開口形成されているスクリーン印刷版10を基材200に対向させて設置する。貫通孔30の並び方向すなわちラインパターン20の延在方向は、
図2(a)の右方である。塗布工程では、水分散型導電性ペーストを含むインク150をスクリーン印刷版10の表面に塗布する。インク150の塗布はスクレーパー160を用いて行う。スクレーパー160を用いてインク150をスクリーン印刷版10に塗布することをスクレーパーコートという。
吐出工程では、スキージ170をスクリーン印刷版10の表面に摺接させてスクリーン印刷版10を基材200に押し当てる。これにより、スクレーパーコートされたインク150を、ドット状の貫通孔30を通じて基材200の表面にインクドット152として吐出するとともに、隣接する貫通孔30を通じて吐出されたインク(インクドット152)同士を基材200の表面で互いに連結させてライン状とする。インクドット152同士がライン状に連結した状態を
図2(d)に示す。乾燥工程では、ライン状のインク150を乾燥させて、基材200の表面に導電パターン100を形成する。
【0022】
次に、本方法をより詳細に説明する。
本方法に用いるスクリーン印刷版10はメタルマスクである。
図2(a)に示す準備工程では、スクリーン印刷版10を基材200に対し、僅かなクリアランスをもって離間して対向した状態で治具またはスクリーン印刷装置(図示せず)により張設する。このクリアランスは、スクリーン印刷版10の辺長に比して無視しうる寸法であり、かつスクリーン印刷版10の厚み寸法よりも大きく設定することが一般的である。
【0023】
本方法の塗布工程で用いるインク150は水分散型導電性ペーストを主成分として含む。水分散型導電性ペーストは、有機系導電性ポリマーを水性溶媒に分散させてなるものである。
【0024】
有機系導電性ポリマーとしては、PEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン)、ポリアニリンまたはポリピロールを例示することができる。導電パターン100の成形安定性から、PEDOTが特に好ましく用いられる。PEDOTとは、一般的にはPEDOTにPSS(ポリスチレンスルホン酸)を混和したものをいい、PEDOT/PSSとも表記することができる。本明細書では、この混和物の略称を単にPEDOTまたはPEDOTペーストと呼称する。
【0025】
吐出工程では、スキージ170をスクリーン印刷版10の表面で接触させて摺動させる。これにより、貫通孔30を通じてインク150を基材200に押し出しながら、余分なインク150が掻き取られる。スクリーン印刷版10は弾性を有するため、スキージ170をスクリーン印刷版10に摺接させることでスクリーン印刷版10は撓んで基材200に押し当てられる。スキージ170の走行方向とラインパターン20の延在方向との関係は任意であるが、ラインパターン20の長手方向に対して平行または斜めにスキージ170を走行させることが好ましい。
図2(b)に示すように、インク150は、離散的に穿設された貫通孔30を通過することでインクドット152となって基材200に吐出される。図示するように、インク150の一部は貫通孔30の内部に残留する場合がある。スキージ170が貫通孔30を通過するとスクリーン印刷版10は弾性的に復元し、基材200との間に元のクリアランスが形成される。貫通孔30に充填されたインク150は、スキージ170で押圧されることにより粘性が低下して基材200の表面に密着する。スキージ170が通過すると、インク150は基材200の表面に残留してインクドット152になるとともに粘性が回復する。
【0026】
図2(c)および(d)に示すように、吐出工程においてインク150は、貫通孔30aを通じて、スクリーン印刷版10と基材200との間隙Vに、スキージ170の摺接方向の前方に向かって滲出する。スクリーン印刷版10の裏面側に滲出するインク150を滲出インクと総称し、特にスキージ170の摺接方向の前方に滲出するインクを前方滲出インク154と呼称する。インク150は、スクリーン印刷版10の裏面のうち、スキージ170の摺接方向の前方のみならず、後方や側方にも滲出する。これらの前方以外の滲出インクを周囲滲出インク155と呼称することとする。貫通孔30aから滲出した前方滲出インク154は、スキージ170の摺接方向の前方に隣接する他の貫通孔30b(
図2(c)にて破線で図示)を通じて吐出されたインク(インクドット152)と連結する。より具体的には、貫通孔30aの裏面前方に滲出した前方滲出インク154は、前方に隣接する他の貫通孔30bの後方に滲出した周囲滲出インク155と連結する。これは主に二つの理由による。第一は、
図2(a)に示すスクレーパーコートの際に、インク150が貫通孔30を通じてスクリーン印刷版10の裏面にわずかにまわり込んで、貫通孔30の裏面の全周囲に周囲滲出インク155が生じているためである。第二は、上述のようにスキージ170に押圧されたインク150は粘性が低下し、また間隙Vに生じる毛管力の作用と、スクリーン印刷版10および基材200の濡れ性により、貫通孔30から間隙Vに滲出して前方滲出インク154となるためである。これらの現象が複合的に作用することで、滲出インクは、主としてスキージ170の摺接方向の前方(
図2(c)における右方)に隣接するインクドット152と連結する。なお、貫通孔30の隣接縁間の距離を増減させる場合も、種々のパラメータの調整により、隣接するインクドット152同士を好適に連結させることが可能である。パラメータとしては、ドット径Dd、ラインピッチPdおよび幅ピッチPw、スクリーン印刷版10の厚さTm、インク150の粘性、基材200の表面の濡れ性などが挙げられる。貫通孔30のライン方向の隣接縁間の距離はPd−Ddで表され、貫通孔30の幅方向の隣接縁間の距離はPw−Ddで表される。また、スキージ170の摺動方向の前後方向に並ぶインクドット152同士を連結してもよく、または摺動方向に対し交差する方向に並ぶインクドット152同士を連結させて導電パターン100を形成してもよい。すなわち、スクリーン印刷版10のラインパターン20が幅方向に複数列に形成されている場合において、この幅方向に並ぶインクドット152同士を連結させて、複数本のラインパターン20から、それよりも少ない本数(たとえば1本)の導電パターン100をパターニングしてもよい。具体的には、ラインパターン20の延在方向に対し直交する方向にスキージ170を摺動させた場合も、ラインパターン20に沿って並ぶインクドット152同士を連結して一続きの導電パターン100を形成することができる。また、
図1(b)に示すようにラインパターン20の幅方向に複数列に亘って貫通孔30が形成されている場合、スキージ170の摺動方向によらず、幅方向および長手方向にそれぞれ隣接するインクドット152同士を連結して一本の導電パターン100を形成してもよい。
【0027】
貫通孔30から吐出されたインク(インクドット152)を、基材200の表面との濡れ性および貫通孔30の裏面側からの滲出により拡散させることにより他のインク(インクドット152)と連結させるとよい。この場合、貫通孔30のドット径(Dd)、隣接する貫通孔30の中心間距離(Pd,Pw)、スクリーン印刷版の厚さ(Tm)、インク150の粘性、インク150の溶媒の揮発速度、スクリーン印刷版10に対するスキージ170の押圧力、基材200の表面の濡れ性、などのパラメータを調整することにより、基材200に吐出されたインクドット152同士を好適に連結させることができる。
【0028】
より具体的には、スクリーン印刷版10としてメタルマスクを用いる場合において、スクリーン印刷版10の厚さ(Tm)と、貫通孔30のドット径(Dd)と、スキージ170の走行方向に隣接する貫通孔30の中心間距離(P1)とが、下記の数式(1)を満たすことが好ましい。右辺は、隣接する貫通孔30同士が互いに離間していることを意味している。
2.5×Tm≧P1−Dd>0 数式(1)
【0029】
ここで、スキージ170をラインパターン20の延在方向に走行させる場合は、中心間距離(P1)はラインピッチ(Pd)である。スキージ170をラインパターン20の幅方向に走行させる場合は、中心間距離(P1)は幅ピッチ(Pw)である(Dd、PdおよびPwは、
図6から
図8を参照)。
【0030】
さらに、スキージ170の走行方向に対する直交方向に隣接する貫通孔30の中心間距離(P2)は下記の数式(2)を満たすことが好ましい。
1.5×Tm≧P2−Dd>0 数式(2)
【0031】
また、スクリーン印刷版10の加工性から、下記の数式(3)を満たすことが好ましい。
Pd−Dd≧Tm 数式(3)
【0032】
さらに本方法においては、下記の数式(4)を満たすことがより好ましい。
Pd>2×Tm 数式(4)
【0033】
ここで、貫通孔30が円形の場合、ドット径(Dd)は貫通孔30の直径をいう。貫通孔30が非円形の場合は、貫通孔30の重心を通りラインパターン20に沿う直線で切ったときの貫通孔30の幅寸法の平均をいう。貫通孔30の中心間距離(Pd)とは、隣接する貫通孔30の重心(面心)の間隔の平均をいう。
【0034】
数式(1)および(2)に関し、スクリーン印刷版10の厚さ(Tm)が大きいほど、貫通孔30の隣接縁間の距離(P1−Dd)および(P2−Dd)を大きくしても、隣接するインクドット152同士を連結することが可能になる。
【0035】
数式(4)に関し、インクドット152の未乾燥厚さはスクリーン印刷版10の厚さ(Tm)と同程度となる。有機系導電性ポリマーを主成分とするインク150を用いて導電パターン100を形成する場合、スクリーン印刷版10の厚さ(Tm)を抑制し、ドット径(Dd)を大きくすることで、導電パターン100の電気抵抗を所望以下に抑えるとともに薄膜効果によって導電パターン100ひいては配線基板50の可撓性を高めることができる。したがって、下記の数式(5)を満たすことが好ましい。
ドット径(Dd)≧スクリーン印刷版10の厚さ(Tm) 数式(5)
【0036】
本方法によれば、導電パターン100の設計寸法と等しい開口形状のスクリーン印刷版を用いてインク150を塗布するのではなく、導電パターン100を離散的なドットの集合体に置換し、そのドット位置にインクドット152を形成し、かつインクドット152同士を連結することにより導電パターン100を形成する。このようにインク150を多数のインクドット152に分散して塗布することにより、基材200に塗布されたインク150に生じる液寄り現象の及ぶ範囲を各インクドット152の内部に限定することができる。また、隣接するインクドット152同士が連結できる程度に貫通孔30を近接させることで導電パターン100の導通性が確保される。そして本方法では、作製したい導電パターン100の幅寸法に応じて、貫通孔30を複数本のライン状に穿設し、複数列のインクドット152を幅方向および長手方向に連結して、所望の寸法の一本の導電パターン100を形成するとよい。なお、導電パターン100がライン状であるとは、その長さ寸法が幅寸法よりも大きいことを意味し、たとえば長さ/幅の比を3以上とすることができる。導電パターン100の具体的な寸法は特に限定されない。導電パターン100の幅寸法は10μm以上とすることができ、1mm以上でもよい。一例として、長さ500μm以上、幅100μm以上、かつ長さ/幅の比を5以上とすることができる。
【0037】
図1(b)に示すように、本方法は、幅方向に隣接する複数列のライン状の貫通孔30によりラインパターン20が開口形成されているスクリーン印刷版10を用いて行う配線基板50の製造方法である。そして吐出工程において、幅方向に隣接する貫通孔30を通じて吐出されたインク(インクドット152)同士を互いに連結させて一本のライン状とすることを特徴とする。
【0038】
図2(d)に示すように、形成される導電パターン100は、貫通孔30に対応するインクドット領域153と、間隙Vに対応する滲出インク(前方滲出インク154、周囲滲出インク155)領域157とで仕上がりの厚さが相違してもよい。滲出インク領域157は、前方滲出インク154や周囲滲出インク155が互いに連結したのち、レベリングしてインクドット領域153との高低差の一部が低減された状態で乾固した領域である。粘性の低いインク150を用いることで、インクドット領域153と滲出インク領域157との高低差をより緩和または解消することができる。
【0039】
図3は本方法により形成される導電パターン100を模式的に表す平面模式図である。すなわち本方法によれば、有機系導電性ポリマーからなる導電パターン100が基材200の表面にライン状に形成された配線基板50が作製される。導電パターン100の幅方向(
図3の上下方向)に計数した有機系導電性ポリマーの粒子数が多い高領域R1と、当該粒子数が少ない低領域R2と、が導電パターン100の長手方向(
図3の左右方向)に交互に繰り返し配置されている。この高領域R1は、吐出工程において貫通孔30の位置に吐出されたインクドット152に対応している。すなわち、高領域R1はインクドット領域153にあたる。
図3では、高領域R1と低領域R2のライン幅の差異を強調して図示している。吐出されたインクドット152は経時的にレベリングして、ライン幅の差異は減少する。この低領域R2は、吐出工程において貫通孔30から間隙Vに滲出した滲出インク(前方滲出インク154、周囲滲出インク155)に対応している。すなわち、低領域R2は滲出インク領域157にあたる。導電パターン100の未乾燥状態において、滲出インク領域157はインクドット領域153に比べて、流動性の高い溶媒の比率が高く、PEDOTなどの有機導電性ポリマーの比率が低い。言い換えると、乾燥後の導電パターン100の平面視において、インクドット領域153は滲出インク領域157に比べて、単位面積あたりの有機系導電性ポリマーの粒子数が多い。有機系導電性ポリマーの粒子数の多寡は導電パターン100の光学的な観察によって確認することができる。
【0040】
図4(a)は、本方法により作製される配線基板50を備えるタッチパネルセンサシート250の模式図である。
図4(b)は
図4(a)に示す領域Bの拡大図である。
図5は、タッチパネルセンサシート250をY軸方向に切った断面模式図であり、
図4(b)のV−V線断面図にあたる。タッチパネルセンサシート250は、第一電極300および第二電極320からそれぞれ配線により引き出された引出配線260と、この引出配線260に連結された外部接続用の取出電極270を備えている。
【0041】
本実施形態のタッチパネルセンサシート250を構成する配線基板50は基材200および導電パターン100を含む(
図2(d)を参照)。また、
図4(b)および
図5に示すように、基材200は、透明シート202、第一下地領域としての第一電極300および第二電極320、そして第二下地領域としての絶縁パターン340を含む。透明シート202は可視光透過性の樹脂材料またはフィルムガラスなどからなる。第一電極300および第二電極320は、この透明シート202の一方面側、すなわち同一面側に設けられている。導電パターン100は絶縁パターン340の上、具体的には第一電極300および絶縁パターン340を跨ぐように形成されている。
図4(b)においては、説明のため導電パターン100にハッチングを付してある。第一電極300は、第一の方向(X軸方向)に繰り返し配置された複数の第一電極パターン310を有している。第二電極320は、第一の方向と交差する第二の方向(Y軸方向)に第一電極300と離間して配置された複数の第二電極パターン330を有している。絶縁パターン340は、隣接する第一電極パターン310同士の境界部312を被覆している。そして導電パターン100は、隣接する第二電極パターン330同士を接続するジャンパーパターンを構成している。
【0042】
第一電極300および第二電極320は基材200の表面に形成されている。本実施形態の第一電極300は、複数箇所の矩形状(菱形)の第一電極パターン310が、これよりも細幅の境界部312によって一続きに連なったものである。Y軸方向は、離散配置された矩形状(菱形)の複数の第二電極パターン330の集合である。Y軸方向に隣接する第二電極パターン330同士は導電パターン100によって電気的および物理的に接続されている。絶縁パターン340は、導電パターン100と第一電極300と互いにを絶縁している。導電パターン100の上には、図示しない保護膜が塗工形成される場合もある。
【0043】
透明シート202には、高透明性を有するPET(Polyethylene terephthalate)フィルムや、ポリカーボネートフィルム、透明ポリイミドフィルムなどのフィルム材料や、薄く成型されたガラス基板が用いられる。透明シート202は、可撓性を有するかぎりその厚さは特に限定されない。透明シート202の表面には、第一電極300や第二電極320との密着性や塗工均一性を向上させるためのコート層を形成してもよい。
【0044】
絶縁パターン340は、一例として、高透明性を有する樹脂材料をインク化またはペースト化し、インクジェット印刷やスクリーン印刷などの手法によって所望のパターン形状に印刷した後、加熱工程や紫外線照射工程を経て乾固させることによって得られる。
【0045】
第一電極パターン310および第二電極パターン330は、透明でありながら導電性と有するパターンであり、人の手指が近接した場合に、その箇所において局部的に変化する静電容量の値を検出して位置特定をするためのセンサ機能を奏する。
【0046】
第一電極パターン310および第二電極パターン330は、透明かつ導電性の金属材料または樹脂材料からなる。一例として、ITO(錫ドープ酸化インジウム)、ATO(アンチモンドープ酸化錫)またはFTO(フッ素ドープ酸化錫)に代表される金属酸化物系材料や、PEDOT、ポリピロールまたはポリアニリンに代表される透明導電ポリマー系材料、導電性ナノワイヤを基材200の上に不規則な網目状に分散させて樹脂中に定着させたナノワイヤ系材料等が挙げられる。導電性ナノワイヤの材料としては、銀、金属合金またはカーボンを例示することができる。
【0047】
引出配線260は、第一電極パターン310と第二電極パターン330から出力される位置検出信号を、外部基板や回路へ伝達するための配線である。引出配線260は、スパッタ製膜された金属箔をフォトリソグラフィの手法によってパターンニングしたり、導電性ペーストやインクをスクリーン印刷、グラビア印刷またはフレキソ印刷等の印刷手段によってパターンニングしたりすることで形成される。
【0048】
絶縁パターン340は、導電パターン100と、その下地となる第一電極パターン310との間、すなわち第二電極パターン330と第一電極パターン310とを電気的に絶縁する。絶縁パターン340は境界部312よりも太幅のライン状をなし、第一電極300の並び方向(X軸方向)に延在している。すなわち、絶縁パターン340と導電パターン100との延在方向は互いに交差している。
図5に示すように、本実施形態の絶縁パターン340は、隣接する第二電極パターン330同士の近接縁に乗り上げるように形成されている。絶縁パターン340は、透明性が高ければ所望の絶縁材料を用いることができ、たとえば、加熱硬化・乾燥タイプやUV硬化タイプの樹脂材料が好適に使用される。
【0049】
タッチパネルセンサシート250の透明性に係る要求を満足するため、導電パターン100も透明であることが望ましい。導電パターン100には、透明導電ポリマー系材料の一つであるPEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン)にスクリーン印刷適性を付与したPEDOTペーストを使用することができる。
【0050】
本方法によれば、導電パターン100の下地の濡れ性が、第二電極パターン330、絶縁パターン340および透明シート202と、部位毎に相違しても導電パターン100を細幅かつ高品質で形成することができる。
【0051】
図5に示すように、基材200は、導電性の第一下地領域210である第二電極パターン330と、絶縁性の第二下地領域220である絶縁パターン340とを有している。導電パターン100は、第一下地領域210と第二下地領域220とに亘って連続的に形成されている。
【0052】
ジャンパーパターンを構成する導電パターン100は、一本のライン状でもよく、複数本の並行するライン状でもよく、または他の形状でもよい。
【0053】
図6から
図8は、スクリーン印刷版10のラインパターン20と、このスクリーン印刷版10によりパターニングされる導電パターン100を示す模式図である。高領域R1と低領域R2のライン幅の差異を強調して図示してある。
図6(a)に示すように、ラインパターン20は一列に並ぶ複数個の貫通孔30の集合によって構成してもよい。かかるラインパターン20をもつスクリーン印刷版10(
図1を参照)を用いてスクリーン印刷することにより、
図6(b)に例示される一本の導電パターン100がパターニングされる。この導電パターン100は、インクドット152に対応する太径のインクドット領域153(高領域R1)と、滲出インクに対応する細径の滲出インク領域157(低領域R2)とが交互に複数回に亘って繰り返し形成されている。
【0054】
図7(a)は、複数列(図示は上下二列)に格子配列された貫通孔30によりラインパターン20を構成している例を示している。図示のように、貫通孔30のライン方向のピッチ(中心間距離)をラインピッチPdと表し、貫通孔30のライン方向と直交する幅方向のピッチ(中心間距離)を幅ピッチPwと表すものとする。
図7(b)は、複数列のライン状のインクドット152(
図3を参照)が未乾燥の状態で幅方向および長手方向にそれぞれ連結して、一本の導電パターン100が形成されている状態を示している。ドット径Ddに比してラインピッチPdおよび幅ピッチPwが共に所定以下であって、スクリーン印刷版10の厚さTmが所定以上の場合に、このように複数列のラインパターン20で一本の導電パターン100がパターニングされることが本発明者らの知見により明らかとなっている。ドット径Ddに比して貫通孔30の幅ピッチPwが所定以上である場合は、複数本の並行するライン状に導電パターン100はパターニングされる。
【0055】
図8(a)は、複数列(図示は二列)に千鳥配列された貫通孔30によりラインパターン20を構成している例を示している。千鳥状に配列することで、貫通孔30の隣接縁間距離を所望の十分な長さに維持しつつ、ラインパターン20の幅ピッチPwを低減することができ好適である。
図8(b)は、複数列のライン状のインクドット152(
図3を参照)が幅方向および長手方向に連結して一本の導電パターン100が形成されている状態を示している。
【0056】
図9(a)は、スクリーン印刷版10の第一変形例を示す模式図である。
図9(b)は、このスクリーン印刷版10を用いて導電パターン100を基材200に作製した状態を示す模式図である。説明のため、
図9(a)においてはスクリーン印刷版10に、
図9(b)においては導電パターン100にハッチングを付してある。このスクリーン印刷版10は、ラインパターン20が実質的に閉じたループ状に形成されたメタルマスクである。実質的に閉じたループ状とは、ある領域を囲う矩形の3辺または当該領域の周長の4分の3以上が閉じている状態をいう。本実施形態のラインパターン20は、複数の屈曲部または湾曲部を有する長尺状をなしている。本実施形態のようにラインパターン20を離散的な貫通孔30で構成することにより、メタルマスクは実質的に全面で縦横に繋がった板状を為すためスクリーン印刷版10の強度を維持することができる。よって、図示するように複数巻きに巻回された螺旋状の導電パターン100をメタルマスクのスクリーン印刷によって形成することも可能である。
【0057】
図10(a)は、スクリーン印刷版10の第二変形例を示す模式図である。
図10(b)は、このスクリーン印刷版10を用いて導電パターン100を基材200に作製した状態を示す模式図である。便宜上、導電パターン100にハッチングを付してある。この基材200は、濡れ性が互いに異なる第一下地領域210と第二下地領域220とを表面に備えている。
【0058】
第一下地領域210と第二下地領域220との境界部240において、第一下地領域210または第二下地領域220の中間部212,222に比べて導電パターン100の幅寸法が大きくなっている。言い換えると、境界部240に形成されている導電パターン110は、第一下地領域210の中間部212および第二下地領域220の中間部222に形成されている導電パターン112に比べて太幅である。これにより、下地表面の性状が変化する境界部240における導電パターン100の接着不良が低減され、全体として基材200と導電パターン100との密着性および電気的な接続性が向上する。なお、導電パターン110を導電パターン112よりも太幅にするにあたっては、ラインパターン20の幅方向に並ぶ貫通孔30の個数を多くしてもよく、個々の貫通孔30のドット径を大きくしてもよい。
【実施例】
【0059】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明する。
【0060】
(スクリーン印刷版)
図6(a)示した一列のラインパターン(以下、単列パターン)および
図7(a)に示した二列のラインパターン(以下、二列パターン)のスクリーン印刷版10を用いて導電パターンをパターニングした。スクリーン印刷版には、厚さTm=20μmのメタルマスクを用いた。スキージにはメタルスキージを用いた。
【0061】
導電パターンの目標仕上がり寸法を、長さ1000μm以上、幅100μm乃至200μm程度のライン状に設定した。単列パターンに関しては、8連の貫通孔を設け、ドット径Ddを100μm、ラインピッチPdを130μmとした。二列パターンに関しては、ライン方向に10連の貫通孔30を設け、ドット径Ddを100μm、ラインピッチPdを130μm、幅ピッチPwを60μmとした。
【0062】
(PEDOTペースト)
インクとして、PEDOT−PSS混合物の水分散液に、結着剤としてのポリオレフィン樹脂と、その他添加剤としてのエチレングリコールを混合したPEDOTペーストを用いた。PEDOTペーストの粘度は100cP以上かつ1000cP以下に調製した。
【0063】
(下地層)
銀のナノワイヤをPETフィルム上に不規則な網目状に分散および定着させた透明導電フィルムを作成して導電性下地層とした。一方、絶縁性下地層には、易接着処理がなされていない無垢表面を有するPETフィルム上に、高透明性を有する樹脂ペーストを印刷して熱乾燥し、約3μmの厚みで塗膜化した層を適用した。
【0064】
導電性下地層および絶縁性下地層の上に、それぞれ上記の単列パターンと二列パターンのスクリーン印刷版を介してインクを塗工し、導電パターンをパターニングした。導電性下地層に単列パターンでパターニングした導電パターンを実施例1、絶縁性下地層に単列パターンでパターニングした導電パターンを実施例2とする。そして、導電性下地層に二列パターンでパターニングした導電パターンを実施例3、絶縁性下地層に二列パターンでパターニングした導電パターンを実施例4とする。
【0065】
図11(a)は、導電性下地層を基材200とし、単列パターンのスクリーン印刷版10を用いてPEDOTペーストを塗布した実施例1の導電パターン100を示す顕微鏡写真である。導電パターン100の長さは約1050μm、ライン幅は約130μmであった。PEDOTの粒子密度が比較的高い高領域R1と、これが低い低領域R2とのライン幅の差異が見られるものの、目標仕上がり寸法を満たし、一直線状で断線の無いライン状の導電パターン100が形成された。
【0066】
図11(b)は、絶縁性下地層を基材200とし、単列パターンのスクリーン印刷版10を用いてPEDOTペーストを塗布した実施例2の導電パターン100を示す顕微鏡写真である。絶縁性下地層は、導電性下地層に比べてPEDOTペーストの濡れ性が悪く、液寄りが生じ、導電パターン100が細幅になりやすいことが分かった。パターニングされた導電パターン100の長さは約1010μm、ライン幅は約90μmであった。PEDOTの粒子密度が比較的高い高領域R1と、これが低い低領域R2とのライン幅の差異が見られ、目標仕上がり寸法よりもやや細いライン幅となったものの、ほぼ一直線状で断線の無いライン状の導電パターン100が形成された。また、絶縁性下地層の表面に微細な凹凸が生じていた場合においても、その表面性状に影響されることなく、断線の無い良好な導電パターン100が形成されることがわかった。
【0067】
図12(a)は、導電性下地層を基材200とし、二列パターンのスクリーン印刷版10を用いてPEDOTペーストを塗布した実施例3の導電パターン100を示す顕微鏡写真である。導電パターン100の長さは約1340μm、ライン幅は約190μmであった。PEDOTの粒子密度が比較的高い高領域R1と、これが低い低領域R2とのライン幅の差異はほぼ見られなかった。目標仕上がり寸法を満たし、一直線状で断線の無い良好なライン状の導電パターン100が形成された。
【0068】
図12(b)は、絶縁性下地層を基材200とし、二列パターンのスクリーン印刷版10を用いてPEDOTペーストを塗布した実施例4の導電パターン100を示す顕微鏡写真である。導電パターン100の長さは約1300μm、ライン幅は約160μmであった。PEDOTの粒子密度が比較的高い高領域R1と、これが低い低領域R2とのライン幅の差異はほぼ見られなかった。目標仕上がり寸法を満たし、一直線状で断線の無い良好なライン状の導電パターン100が形成された。
【0069】
以上の実施例から、単列パターンおよび二列パターンとも、PEDOTペーストを離散的にドット状に吐出するとともに、インク同士を互いに連結させてライン状とすることで、ライン状の導電性パターンを細幅に形成できることが分かった。特に実施例3、4の結果から、複数列のラインパターンを用いることで、PEDOTペーストに対する濡れ性の良い導電性下地層はもちろんのこと、濡れ性の悪い絶縁性下地層に対しても、目標仕上がり寸法どおりにライン状の導電パターンが形成できることが分かった。
【0070】
上記実施形態および実施例は、以下の技術思想を包含するものである。
(1)一列または複数列のライン状に並んで離散的に穿設された複数個のドット状の貫通孔によりラインパターンが開口形成されているスクリーン印刷版を基材に対向させて設置する準備工程と、水分散型導電性ペーストを含むインクを前記スクリーン印刷版の表面に塗布する塗布工程と、スキージを前記スクリーン印刷版の前記表面に摺接させて前記スクリーン印刷版を前記基材に押し当てることにより、ドット状の前記貫通孔を通じて前記基材の表面に前記インクを吐出するとともに、隣接する前記貫通孔を通じて吐出された前記インク同士を前記基材の表面で互いに連結させてライン状とする吐出工程と、ライン状の前記インクを乾燥させて前記基材の表面に導電パターンを形成する乾燥工程と、を含む配線基板の製造方法。
(2)前記吐出工程において、前記貫通孔を通じて前記スクリーン印刷版と前記基材との間隙に前記スキージの摺接方向の前方に向かって滲出した前記インクを、前記摺接方向に隣接する他の前記貫通孔を通じて吐出された前記インクと連結させる上記(1)に記載の配線基板の製造方法。
(3)前記ラインパターンが、幅方向に隣接する複数列のライン状の前記貫通孔により開口形成されている前記スクリーン印刷版を用いて行う上記(1)または(2)に記載の配線基板の製造方法であって、前記吐出工程において、前記幅方向に隣接する前記貫通孔を通じて吐出された前記インク同士を互いに連結させて一本のライン状とすることを特徴とする配線基板の製造方法。
(4)前記貫通孔から吐出された前記インクを前記基材の表面との濡れ性および前記貫通孔の裏面側からの滲出により拡散させることにより他の前記インクと連結させる上記(1)から(3)のいずれかに記載の配線基板の製造方法。
(5)前記スクリーン印刷版の厚さTmと、前記貫通孔のドット径Ddと、スキージの走行方向に隣接する前記貫通孔の中心間距離P1とが、下記の数式(1)を満たすことを特徴とする上記(1)から(4)のいずれかに記載の配線基板の製造方法。
2.5×Tm≧P1−Dd>0 数式(1)
(6)前記水分散型導電性ペーストが、有機系導電性ポリマーを水性溶媒に分散させてなる上記(1)から(5)のいずれかに記載の配線基板の製造方法。
(7)前記有機系導電性ポリマーが、ポリエチレンジオキシチオフェン、ポリアニリンまたはポリピロールである上記(6)に記載の配線基板の製造方法。
(8)有機系導電性ポリマーからなる導電パターンが基材の表面にライン状に形成された配線基板であって、前記導電パターンの幅方向に計数した前記有機系導電性ポリマーの粒子数が多い高領域と、前記粒子数が少ない低領域と、が前記導電パターンの長手方向に交互に繰り返し配置されていることを特徴とする配線基板。
(9)前記導電パターンの幅寸法が300μm以下である上記(8)に記載の配線基板。
(10)前記基材が導電性の第一下地領域と絶縁性の第二下地領域とを有し、前記導電パターンが第一下地領域と第二下地領域とに亘って連続的に形成されている上記(8)または(9)に記載の配線基板。
(11)第一下地領域と第二下地領域との境界部において、第一下地領域または第二下地領域の中間部に比べて前記導電パターンの幅寸法が大きくなっていることを特徴とする上記(10)に記載の配線基板。
(12)上記(10)または(11)に記載の配線基板を備えるタッチパネルセンサシートであって、前記基材は、可視光透過性材料からなる可撓性の透明シート、前記透明シートの一方面側に設けられた前記第一下地領域としての第一電極および第二電極、および前記第二下地領域としての絶縁パターンを含み、前記第一電極は第一の方向に繰り返し配置された複数の第一電極パターンを有し、前記第二電極は第一の方向と交差する第二の方向に前記第一電極と離間して配置された複数の第二電極パターンを有し、かつ、前記絶縁パターンが、隣接する前記第一電極パターン同士の境界部を被覆しており、前記導電パターンが、隣接する前記第二電極パターン同士を接続するジャンパーパターンを構成していることを特徴とするタッチパネルセンサシート。
(13)一列または複数列のライン状に並んで離散的に配設された複数個のドット状の貫通孔によりラインパターンが開口形成されていることを特徴とするスクリーン印刷版。
(14)前記ラインパターンが実質的に閉じたループ状に形成されたメタルマスクである上記(13)に記載のスクリーン印刷版。