(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6004912
(24)【登録日】2016年9月16日
(45)【発行日】2016年10月12日
(54)【発明の名称】コンタクトレンズ用容器
(51)【国際特許分類】
G02C 11/00 20060101AFI20160929BHJP
G02C 7/04 20060101ALI20160929BHJP
A45C 11/04 20060101ALI20160929BHJP
【FI】
G02C11/00
G02C7/04
A45C11/04 B
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-255504(P2012-255504)
(22)【出願日】2012年11月21日
(65)【公開番号】特開2014-102434(P2014-102434A)
(43)【公開日】2014年6月5日
【審査請求日】2015年10月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000131245
【氏名又は名称】株式会社シード
(74)【代理人】
【識別番号】100118728
【弁理士】
【氏名又は名称】中野 圭二
(74)【代理人】
【識別番号】110000327
【氏名又は名称】特許業務法人 クラスター
(72)【発明者】
【氏名】三浦 佳奈子
(72)【発明者】
【氏名】名倉 克之
(72)【発明者】
【氏名】門岡 祐也
(72)【発明者】
【氏名】久保田 慎
【審査官】
植野 孝郎
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭54−75741(JP,U)
【文献】
国際公開第2009/069264(WO,A1)
【文献】
実公昭56−41534(JP,Y2)
【文献】
特表2007−508881(JP,A)
【文献】
特開昭53−72640(JP,A)
【文献】
特開2001−46134(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 1/00−13/00
A45C11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保存液及びコンタクトレンズを収容する一又は二以上の窪み部を有する容器本体部と、
前記窪み部内に収容され、前記コンタクトレンズを載置するレンズ載置部及び該レンズ載置部を上方に移動させるための摘み部を有する一又は二以上のコンタクトレンズ保持部材と、
前記窪み部を覆う蓋部と、を有し、
前記コンタクトレンズ保持部材が、前記レンズ載置部を上方に移動させる際に、前記容器本体部の窪み部と係合して回動支点となる支点部を備え、前記摘み部と前記支点部がそれぞれ前記レンズ載置部に連結して設けられたコンタクトレンズ用容器。
【請求項2】
前記レンズ載置部が複数の貫通孔を有する請求項1に記載のコンタクトレンズ用容器。
【請求項3】
前記レンズ載置部が上方に突出する球面形状に形成され、前記コンタクトレンズがフロントカーブ面を上方にして載置される請求項1又は2に記載のコンタクトレンズ用容器。
【請求項4】
前記コンタクトレンズ保持部材と前記容器本体部とが別体に設けられた請求項1乃至3の何れか一項に記載のコンタクトレンズ用容器。
【請求項5】
前記コンタクトレンズ保持部材と前記容器本体部とが一体的に設けられた請求項1乃至3の何れか一項に記載のコンタクトレンズ用容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取り出し性に優れたコンタクトレンズ用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
最近では、コンタクトレンズを市場へ流通する際、個別にコンタクトレンズを包装したブリスター容器が用いられている。
【0003】
一般的なブリスター容器は、コンタクトレンズとその保存液を収容する半球状の窪み部と、その開口部周辺に広がるフランジ部と、を有する合成樹脂製の本体部と、ポリプロピレンフィルムとアルミ箔の積層物からなる蓋部で構成されており、本体部と蓋部のシールには、加熱又は超音波による溶着方法が用いられている。
【0004】
このブリスター容器からコンタクトレンズを取り出す方法として、掌に保存液ごと出したコンタクトレンズを指先で摘む方法があるが、この方法では、コンタクトレンズが流失する危険性を有していると共に、摘み上げる際にコンタクトレンズが折り曲げられるため、レンズの光学特性に悪影響を及ぼしたり、レンズ表面に傷を発生させたりすることが懸念される。また、蓋部を本体部から引き剥がし、ブリスター容器を開封した後に、窪み部に手指を入れて指先でコンタクトレンズをすくい上げる方法も一般的に行われているが、指先ですくい上げ、コンタクトレンズを取り出す過程で、蓋部を本体部から引き剥がす際に発生する溶着部の剥がれ跡にコンタクトレンズが接触する可能性が高く、レンズを傷付ける恐れがある。
【0005】
コンタクトレンズ表面の傷は、擦り洗い時に破損の原因となったり、そこに汚れが蓄積しやすいことから、装用感や視力補正性の低下を引き起こす原因となったりするため、好ましくない。
【0006】
さらに、窪み部に手指を入れて指先ですくい上げる方法においては、指ですくい上げる際、装用時に角膜に接するコンタクトレンズのベースカーブ面に手指が接触するため、手指に付着した汚れや細菌によってコンタクトレンズが汚染される恐れがある。特に、手指の洗浄が不十分な場合には、この汚染を原因とした眼疾患を誘発する危険性も懸念される。
【0007】
これに対し、流通時のコンタクトレンズの保持性を向上すると共に、装用時のコンタクトレンズのベースカーブ面への手指の接触を抑止するようにしたコンタクトレンズ用パッケージが知られている(特許文献1参照)。この特許文献1に記載のコンタクトレンズ用パッケージは、コンタクトレンズとスプリングディスクをコンタクトレンズのカップの深さ(サジタルデプス)よりも浅いブリスター容器の収容空間において収容シートに挟み込み、コンタクトレンズが押圧された状態で収納されており、収容シートの開封により押圧されない状態に戻る際に、コンタクトレンズを元の形状に戻す補助をするようになっている。
【0008】
また、流通時のコンタクトレンズの保持性を向上するために、凹状内面を有する第一部材と、凸状内面を有する第二部材とを重ね合わせた際に生じる対向内面間にコンタクトレンズを保持し、当該部材を保存液と共に収容するコンタクトレンズ流通ケースも開示されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−250496号公報
【特許文献2】再表2009−069264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に記載のコンタクトレンズ用パッケージは、コンタクトレンズのカップの深さよりも浅いブリスター容器に、コンタクトレンズがスプリングディスクと共に挟み込まれて押圧された状態で保存されるため、収容シートからの外部応力によるコンタクトレンズの光学特性への悪影響や形状不良、また、コンタクトレンズのスプリングディスクとの接触部に傷が発生しやすいという、新たな問題が危惧される。
【0011】
特許文献2に記載のコンタクトレンズ流通ケースは、コンタクトレンズの形状を保持したまま収納されるものの、第一部材と第二部材を重ね合わせる際に、コンタクトレンズを挟み込むことが危惧される上、構造が複雑になる。また、保存液の液量を少なくした流通ケースでは、保存液の液量が極端に少なく、移送時の傾きにより、コンタクトレンズの一部或いは大半が液中に浸漬されない場合が考えられ、乾燥による光学特性への悪影響が生じる恐れがある。
【0012】
また、特許文献1に記載のコンタクトレンズ用パッケージ及び特許文献2に記載のコンタクトレンズ流通ケースは、いずれもコンタクトレンズが2枚のシート状体に挟まれて収容されているために、開封と同時にコンタクトレンズが露出するから、開封時に誤ってコンタクトレンズを落下させる恐れもある。
【0013】
そこで、本願発明は、取り出し時や収納時にコンタクトレンズに傷を発生させないと共に、コンタクトレンズの光学特性に影響を及ぼさないコンタクトレンズ用容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本願発明者らは、収納時に光学特性を損ねることなく、且つ、取り出し時に容器のフランジ部と接触することなくコンタクトレンズを取り出す方法を鋭意検討し、装用時と同様の形状を保持した状態のコンタクトレンズと保存液を収納する窪み部を有する容器本体部と、窪み部内にあって可動式のコンタクトレンズ保持部材を組み合せることを考案した。
【0015】
本発明は、保存液及びコンタクトレンズを収容する一又は二以上の窪み部を有する容器本体部と、前記窪み部内に収容され、前記コンタクトレンズを載置するレンズ載置部及び該レンズ載置部を上方に移動させるための摘み部を有する一又は二以上のコンタクトレンズ保持部材と、前記窪み部を覆う蓋部と、を備えたコンタクトレンズ用容器を提供するものである。
【0016】
また、本発明のコンタクトレンズ用容器は、前記コンタクトレンズ保持部材が、前記レンズ載置部を上方に移動させる際に、前記容器本体部の窪み部と係合して回動支点となる支点部を備え、前記摘み部と前記支点部がそれぞれ前記レンズ載置部に連結して設けられたことを特徴とする。
【0017】
また、本発明のコンタクトレンズ用容器は、前記レンズ載置部が複数の貫通孔を有することを特徴とする。
【0018】
また、本発明のコンタクトレンズ用容器は、前記レンズ載置部が上方に突出する球面形状に形成され、前記コンタクトレンズがフロントカーブ面を上方にして載置されることを特徴とする。
【0019】
また、本発明のコンタクトレンズ用容器は、前記コンタクトレンズ保持部材と前記容器本体部とが別体に設けられたことを特徴とする。
【0020】
また、本発明のコンタクトレンズ用容器は、前記コンタクトレンズ保持部材と前記容器本体部とが一体的に設けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明のコンタクトレンズ用容器は、保存液及びコンタクトレンズを収容する一又は二以上の窪み部を有する容器本体部と、前記窪み部内に収容され、前記コンタクトレンズを載置するレンズ載置部及び該レンズ載置部を上方に移動させるための摘み部を有する一又は二以上のコンタクトレンズ保持部材と、前記窪み部を覆う蓋部と、を備えた構成を有することにより、窪み部内においてコンタクトレンズが装用時と同様の形状を保持してレンズ載置部に載置されるから、収納時にレンズの光学特性を損ねることがない。また、取り出し時には、開蓋後に摘み部を操作することによってレンズ載置部が上方に移動し、コンタクトレンズが保存液中より持ち上げられるから、コンタクトレンズを容器本体部に接触させたり落下させたりすることなく確実に取り出すことができ、レンズ表面に傷が発生せず、これに起因する破損の発生、装用感や視力補正性の低下を抑止することができる効果がある。
【0022】
また、本発明のコンタクトレンズ用容器は、前記コンタクトレンズ保持部材が、前記レンズ載置部を上方に移動させる際に、前記容器本体部の窪み部と係合して回動支点となる支点部を備え、前記摘み部と前記支点部がそれぞれ前記レンズ載置部に連結して設けられたことにより、摘み部を指で引く又は押すなどの操作をすることによって、支点部を回動支点としてコンタクトレンズ保持部材が回動し、安定してレンズ載置部を上方に移動させることができる効果がある。
【0023】
また、本発明のコンタクトレンズ用容器は、前記レンズ載置部が複数の貫通孔を有することにより、保存液が充填された窪み部内にコンタクトレンズ保持部材を収容する際に、貫通孔を保存液が通過して内側に保存液や空気を閉じ込めることがないから、レンズ載置部が浮遊することなく定位置に安定させることができる効果がある。
【0024】
また、本発明のコンタクトレンズ用容器は、前記レンズ載置部が上方に突出する球面形状に形成され、前記コンタクトレンズがフロントカーブ面を上方にして載置されることにより、取り出し時にコンタクトレンズのフロントカーブ面を把持して、そのまま装着することができるから、コンタクトレンズのベースカーブ面に手指が接触することがなく、手指に付着した汚れや細菌によるコンタクトレンズの汚染を予防でき、さらには、コンタクトレンズの汚染を原因とした眼疾患の発生も予防することができる効果がある。
【0025】
また、本発明のコンタクトレンズ用容器は、前記コンタクトレンズ保持部材と前記容器本体部とが別体に設けられたことにより、摘み部を把持してコンタクトレンズ保持部材を容器本体部の窪み部内から取り出すことができる効果がある。
【0026】
また、本発明のコンタクトレンズ用容器は、前記コンタクトレンズ保持部材と前記容器本体部とが一体的に設けられたことにより、コンタクトレンズ保持部材の紛失を防止することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明のコンタクトレンズ用容器の一実施例を示す断面図。
【
図2】本発明のコンタクトレンズ用容器の一実施例を示す平面図。
【
図3】そのコンタクトレンズ保持部の一実施例を示す断面図。
【
図4】そのコンタクトレンズ保持部の一実施例を示す平面図。
【
図5】本発明のコンタクトレンズ用容器の使用状態を示す断面図。
【
図6】本発明のコンタクトレンズ用容器の一実施例を示す斜視図。
【
図7】本発明のコンタクトレンズ用容器の別の実施例を示す断面図。
【
図8】本発明のコンタクトレンズ用容器のさらに別の実施例を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明に係るコンタクトレンズ用容器は、保存液及びコンタクトレンズ7を収容する一又は二以上の窪み部8を有する容器本体部1と、前記窪み部8内に収容され、前記コンタクトレンズ7を載置するレンズ載置部3及び該レンズ載置部3を上方に移動させるための摘み部4を有する一又は二以上のコンタクトレンズ保持部材2と、前記窪み部8を覆う蓋部6と、を備えている。このコンタクトレンズ用容器は、一の窪み部8内に一のコンタクトレンズ保持部材2を備えて一のコンタクトレンズ7を収容する構成の他、一の窪み部8内に二以上のコンタクトレンズ保持部材2を備えて二以上のコンタクトレンズ7を収容する構成、一又は二以上のコンタクトレンズ保持部材2を収容した二以上の窪み部8を備えて二以上のコンタクトレンズ7を収容する構成としてもよい。
【0029】
本願発明者らは、特に、流通の際に用いるブリスター容器からコンタクトレンズを取り出す際の簡便性を改善すべく、ブリスター容器の態様と、開封時に生じる接着部の剥がれ跡による悪影響の低減に着眼した。
【0030】
本発明のコンタクトレンズ用容器は、摘み部4を操作することによってレンズ載置部3を保存液中より持ち上げることで、レンズ載置部3に載置されたコンタクトレンズ7を容器本体部1より簡便に取り出せることを特徴としている。
【0031】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
【0032】
[容器の第一態様]
図1及び
図2において、容器本体1は、コンタクトレンズ7及び保存液を収容する窪み部8を有しており、窪み部8内にはレンズ載置部3及び摘み部4を有するコンタクトレンズ保持部材2が収容されている。コンタクトレンズ7は、形状が変化しないようにレンズ載置部3上に載置される。コンタクトレンズ7は、装用時と同様の形状を保持した状態で容器本体部1内に収容されるから、窪み部8の深さは、コンタクトレンズ7及びコンタクトレンズ保持部材2の全体が収容できるサイズに形成されている。11は、容器本体部1の底部であり、コンタクトレンズ保持部材2の形状に合わせて任意の形状を採用することができるが、容器本体部1を静置した際の安定性、移送中のコンタクトレンズ7の位置性を考慮し、矩形状の平面に形成してあることが好ましい。
【0033】
容器本体部1は、窪み部の周囲にフランジ部9を形成してある。また、容器本体部1の一方には、フランジ部9より僅かに高さが低い容器把持部10を延設してあり、蓋部6を開封したりコンタクトレンズ7を取り出したりする際に容器本体部1を把持しやすくしてある。
【0034】
コンタクトレンズ保持部材2は、レンズ載置部3を上方に移動させる際に、容器本体部1の窪み部8と係合して回動支点となる支点部5を備え、摘み部4と支点部5がそれぞれレンズ載置部3に連結して設けられ、容器本体部1に対して可動式になっている。支点部5は、矩形状の容器底部11の一辺と係合する棒状体を成し、レンズ載置部3の底部に連結して一体的に形成されている。摘み部4は、レンズ載置部3に対して支点部5と同じ側に設けられ、レンズ載置部3の周縁部から斜め上方に向かって突出して形成されている。コンタクトレンズ保持部材2は、摘み部4を手指により手前(レンズ載置部3と反対側)に引くことにより、支点部5を中心にして回動するから、
図5に示すようにレンズ載置部3が上方に移動して保存液中より持ち上がる。
【0035】
コンタクトレンズ用容器において、コンタクトレンズ保持部材2は、コンタクトレンズ7の取り出し時に、レンズ載置部3の全体又は大部分が保存液の液面より持ち上がるような可動式であればよい。コンタクトレンズ保持部材2は、容器本体部1との一体成形による連結態様、容器本体部1とコンタクトレンズ保持部材2を独立成形後に支点部5において溶着又は嵌合した連結態様、或いは、各々独立したままの態様が考えられ得る。本発明においては、成形性及び可動性などを考慮して、図示の実施例のように、容器本体部1とコンタクトレンズ保持部材2の各々が独立していることが好ましい。なお、窪み部8の支点部5と係合する部分に溝部を設けることによって、コンタクトレンズ保持部材2の回動をさらに安定させることも可能である。
【0036】
本発明のコンタクトレンズ用容器において、コンタクトレンズ7は、ベースカーブ面に手指が接触しないように、フロントカーブ面を上方にしてレンズ載置部3に載置されることが好ましい。レンズ載置部3は、コンタクトレンズ保持部材2において上方に突出する球面形状に形成されており、コンタクトレンズ7のベースカーブと同様の曲率を有していることが好ましい。さらに、移送時や保存時のコンタクトレンズ7の移動を抑止するために、コンタクトレンズ保持部材2は、窪み部8内の容器底部11に安定して収容されていることが重要である。一つの手段として、コンタクトレンズ保持部材2におけるレンズ載置部3を複数の貫通孔を有した形状とすることが挙げられる。レンズ載置部3が当該形状を採用することにより、保存液が充填された窪み部8内にコンタクトレンズ保持部材2を収容する際に、内側に保存液や空気を閉じ込めることがないため、コンタクトレンズ保持部材2が浮遊することなく容器底部11に接した定位置で安定することができる。
【0037】
レンズ載置部3は、具体的な形状の一態様として、
図2に示すように、曲面の頂点部となる中心部に環状部12を有し、この環状部12より放射状に延伸した骨部13を有する。骨部13は、コンタクトレンズ7のベースカーブと同様の曲率を有している。また、コンタクトレンズ7の安定性を考慮し、骨部13の本数は4以上12以下に形成されていることが好ましく、左右対称となるように偶数本配することがより好ましい。
【0038】
容器底部11の横幅は、コンタクトレンズ保持部材2を容器本体部1の底部に接して安定的に収容するために、レンズ載置部3の横幅h(
図4参照)より大きく設けることが好ましい。この窪み部8の横幅は、レンズ載置部3の横幅hに合わせることで、移送時及び保存時のレンズ載置部3の安定性を向上させることが可能となる。
【0039】
図1及び
図2において、31はズレ防止部であり、コンタクトレンズ7がレンズ載置部3からズレ落ちるのを防止している。ズレ防止部31は、図示の実施例のように、支点部5を設けた側及びその反対側に設けることにより、コンタクトレンズ保持部材2が回動してレンズ載置部3が保存液から持ち上げられる際に、コンタクトレンズ7がズレ落ちるのを確実に防止することができる。
【0040】
摘み部4は、レンズ載置部3と連結して一体成形されており、
図3に示すように、上方へ延伸した構造を有する。レンズ載置部3の底辺(容器底部11)に対する摘み部4の角度eは、1°〜90°で形成されることが好ましく、摘み部4の長さに係るコンタクトレンズ保持部材2の安定性の面から45°〜80°に形成することがより好ましい。また、摘み部4の長さが、窪み部8の深さを決定することとなる。摘み部4の長さが長すぎる場合、窪み部8を深く形成しなければならず、窪み部8の容積が大きくなることで、保存液中でレンズ載置部3やコンタクトレンズ7が移動しやすくなり、移送時や保存時にコンタクトレンズ7を定位置に保持することが困難になる。一方、摘み部4の長さが短すぎる場合、手指で摘み部4を操作してコンタクトレンズ保持部材2を回動させることが困難になる。このため、摘み部4の長さは、
図3において、コンタクトレンズ保持部材2の高さcに対し、摘み部4の高さdが110〜130%となるように形成されていることが好ましい。さらに好ましくは、窪み部8の深さと、摘み部4の高さdが等しくなる状態であり、当該構成とすることで、コンタクトレンズ保持部材2は、蓋部6に抑えられ、移送時の安定性が向上する。また、コンタクトレンズ7の取り出し時において、
図5に示すようにレンズ載置部3が持ち上げられた状態におけるバランス性を考慮し、レンズ載置部3と摘み部4とは二点で連結するように形成することが好ましい。摘み部4は、この二点の連結部をレンズ載置部3に対して左右対照となるように配することで、バランス性をさらに向上させることが可能となる。
図4に示すように、摘み部4は、この二点間の距離fをレンズ載置部3の横幅hよりも小さく形成することで、コンタクトレンズ7の取り出し時に摘み部4を手前に引く際の力が加わり易くなる。
【0041】
支点部5は、レンズ載置部3と連結して一体成形されており、レンズ載置部3の底部より水平方向へ延伸した構造を有する。
図3において、支点部5とレンズ載置部3の全長の合計であるコンタクトレンズ保持部材2の全長bが、窪み部8の容器底部11の全長を決定することとなる。容器底部11の全長は、コンタクトレンズ保持部材2を容器本体部1の底部に接して安定的に収容するために、コンタクトレンズ保持部材2の全長bより大きくすることが好ましい。また、容器底部11の全長は、コンタクトレンズ保持部材2の全長bと合わせることにより、移送時及び保存時のコンタクトレンズ保持部材2の安定性を向上させることができる。支点部5が長すぎる場合、摘み部4を手前に引き、コンタクトレンズ保持部材2全体を保存液中より持ち上げる際の安定性が悪く、保持体勢を維持しにくくなる。このため、コンタクトレンズ保持部材2の全長bは、レンズ載置部3の全長aに対し、110〜150%となるように形成されていることが好ましい。また、窪み部8へ収容された際のコンタクトレンズ保持部材2の安定性を考慮し、レンズ載置部3と支点部5とは二点で連結するように形成することが好ましい。支点部5は、この二点の連結部をレンズ載置部3に対して左右対照となるように配することで、安定性をさらに向上させることが可能となる。
図4に示すように、支点部5は、この二点間の距離gをレンズ載置部3の横幅hと同じ幅に形成することで、移送時及び保存時の安定性及び、コンタクトレンズ保持部材2を持ち上げる際の支点としての効果が向上する。
【0042】
コンタクトレンズ保持部材2は、摘み部4及び支点部5が容器把持部10側に位置するように、容器本体部1の窪み部8内に収容されている。この構成により、コンタクトレンズ7を取り出す際には、容器把持部10と摘み部4を手指で摘まんで摘み部4を容器把持部10側に引き寄せることで、コンタクトレンズ保持部材2が支点部5を支点として安定的に回動し、レンズ載置部3を保存液中から確実に持ち上げることができる。また、容器底部11及びコンタクトレンズ保持部材2の形状は、非対称形状にして、容器本体部1に対してコンタクトレンズ保持部材2が反転した場合に、コンタクトレンズ保持部材2が窪み部8内に誤って収容されないようにすることも可能である。
【0043】
容器本体部1及びコンタクトレンズ保持部材2は、成形性や液密性がよいことから合成樹脂で形成してある。容器本体部1及びコンタクトレンズ保持部材2に用いる合成樹脂は、コンタクトレンズ7と保存液を封入した後に滅菌工程を行う必要があるので、オートクレーブ滅菌に耐えうる程度の耐熱性や耐薬品性を有するものが好ましい。一般的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、脂環式ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、熱可塑性エラストマー等が挙げられる。本発明のコンタクトレンズ用容器においては、取扱いの簡便性から、容器本体部1及びコンタクトレンズ保持部材2の双方ともにポリプロピレンが最も好ましく用いられる。さらに、本容器は、耐熱性を有する生分解性の樹脂を使用することで、使用後の廃棄処理を容易にするという利点も得られる。
【0044】
本発明のコンタクトレンズ用容器において、蓋部6は、開封時に、蓋部6の全体が取り除き可能な一体のシート構造により形成されたシートタイプ、又は、窪み部8の開口部のみが取り除き可能なプルトップ構造により形成されたプルトップタイプなど、窪み部8を密閉可能な種々の構成を採用することができる。
図2に示す容器は、蓋部6がシートタイプのものであり、通常のブリスター容器と同様に、窪み部8周辺のフランジ部9において蓋部6と容器本体部1とを溶着することにより密閉される。蓋部6は、容器本体部1との溶着部位がフランジ部9に連続する容器把持部10まで至ると、蓋部6の開封性が低下するため好ましくない。シートタイプを採用した蓋部6の構造は、ポリプロピレンフィルムとアルミ箔の積層物で形成してあることが好ましい。蓋部6と容器本体部1の接合には、熱溶着、超音波溶着、高周波溶着などの通常のプラスチックの溶着方法を用いることができ、蓋部6と容器本体部1の材質によっては接着剤や溶剤による接着方法を用いることも可能であるが、熱溶着を用いることが最も好ましい。
【0045】
蓋部6は、プルトップ構造を採用した場合、容器本体部1と同一の合成樹脂で形成してあることが好ましく、射出成型により形成することができる。なお、本発明のコンタクトレンズ用容器は、出荷用容器に限られず、保存用容器としても使用することができる。保存用容器としての蓋部6は、ねじ込み方式やフックによる係止方式など、着脱自在な構造であることが好ましい。
【0046】
[容器の第二態様]
図7は、本発明のコンタクトレンズ用容器の別の実施例を示す断面図である。
図7に示す容器本体部1は、容器底部1において、レンズ載置部3が位置する部分の底面にレンズ載置部3の球面形状より半径の小さい球面形状からなる椀部14を形成してある。容器本体部1は、椀部14によって容量が小さくなり、収容する保存液の液量を少なくすることができる。また、
図7に示す容器本体部1は、容器底部11がコンタクトレンズ保持部材2より大きい場合でも、椀部14の球面形状をレンズ載置部3の球面形状に合わせることによって、窪み部8内でコンタクトレンズ保持部材2を定位置に安定して収容することができる。本容器の他の構成は、第一態様と同様である。
【0047】
[容器の第三態様]
図8は、本発明のコンタクトレンズ用容器のさらに別の実施例を示す斜視図である。
図8に示す容器本体部1は、窪み部8に該窪み部8を二つに分ける仕切部15を形成してある。
図8に示す容器は、それぞれの窪み部8にコンタクトレンズ保持部材2を収容してあり、それぞれのレンズ載置部3にコンタクトレンズ7を載置することができ、2枚のレンズを収容可能であるから、保存用容器として好適である。また、容器把持部10には、「L」及び「R」の文字が刻印してある。本容器の他の構成は、第一態様と同様である。
【0048】
また、
図8に示す容器において、コンタクトレンズ保持部材2自体に仕切部を設けることにより、容器本体部1に仕切部15を設けない構成にすることも可能である。コンタクトレンズ保持部材2に設けた仕切部は、複数の貫通孔を有することが好ましい。
【符号の説明】
【0049】
1 容器本体部
2 コンタクトレンズ保持部材
3 レンズ載置部
4 摘み部
5 支点部
6 蓋部
7 コンタクトレンズ
8 窪み部
9 フランジ部
10 容器把持部
11 容器底部
12 環状部
13 骨部
14 椀部
15 仕切部
31 ズレ防止部
a レンズ載置部の全長
b コンタクトレンズ保持部材の全長
c トレンズ載置部の高さ
d 摘み部の高さ
e 摘み部の角度
f 摘み部の横幅
g 支点部の横幅
h レンズ載置部の横幅