(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6004914
(24)【登録日】2016年9月16日
(45)【発行日】2016年10月12日
(54)【発明の名称】ソフトシール仕切弁
(51)【国際特許分類】
F16K 3/314 20060101AFI20160929BHJP
F16K 3/28 20060101ALI20160929BHJP
F16K 3/00 20060101ALI20160929BHJP
F16K 3/12 20060101ALI20160929BHJP
【FI】
F16K3/314 C
F16K3/28
F16K3/00 B
F16K3/12 A
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-256526(P2012-256526)
(22)【出願日】2012年11月22日
(65)【公開番号】特開2014-105709(P2014-105709A)
(43)【公開日】2014年6月9日
【審査請求日】2015年11月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】390014074
【氏名又は名称】前澤工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(72)【発明者】
【氏名】杉田 雄基
【審査官】
加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−207728(JP,A)
【文献】
特許第4515906(JP,B2)
【文献】
特公昭48−20817(JP,B1)
【文献】
西独国特許出願公告第1255423(DE,B)
【文献】
英国特許出願公告第168260(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 3/00−3/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁箱の上部に、該弁箱に連通する開口部を備えた弁体収容部を連設し、前記開口部を介して弁体収容部と弁箱とに移動可能な弁体を設け、前記弁体の上部に設けられた雌ネジ部材に螺合する弁棒の回動操作により、弁体を弁体収容部に収容したときに全開状態となり、弁体を弁箱内に下降させて該弁体に装着されたゴム製のシール材の下部シール部を弁箱内周面下半部に設けられた下向き円弧状の下部弁座に当接させるとともに、該シール材の上部シール部を前記開口部の弁体収容部側の対向面にそれぞれ形成された上部弁座に当接させて全閉状態にする仕切弁において、前記弁体は、2枚の円盤状弁体部を中間連結部で接合した弁本体と、該弁本体の上部に装着される雌ネジ部材と、前記弁本体の下部に装着される弁下部材とを備え、前記シール材は、前記弁体の一側面及び他側面に設けられる一対のシール部材からなり、各シール部材は、前記弁本体の上半部に位置する上部シール部と、前記弁本体の下半部に位置する下部シール部とが一体に形成され、上部シール部は、前記円盤状弁体部の上部と前記雌ネジ部材との間にそれぞれ挟着され、下部シール部は、前記円盤状弁体部の下部と前記弁下部材との間にそれぞれ挟着され、前記雌ネジ部材は、該雌ネジ部材の両側部に弁棒に直交する方向にそれぞれ突設した上部連結部を備え、前記弁下部材は、該弁下部材の両側部に弁棒に直交する方向にそれぞれ突設して前記上部連結部に対向する下部連結部を備え、前記雌ネジ部材及び前記弁下部材で前記弁本体との間に前記シール材を挟着した状態で、前記上部連結部と前記下部連結部とを連結手段でそれぞれ連結することにより、前記弁本体、前記雌ネジ部材、前記弁下部材及び前記シール材を一体化したことを特徴とするソフトシール仕切弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソフトシール仕切弁に関し、詳しくは、弁本体の所定位置にシール材を装着した弁体を、管路を横切る方向に移動させて弁の開閉を行うソフトシール仕切弁における弁本体へのシール材の固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
弁箱の上部に、該弁箱に連通する開口部を備えた弁体収容部を連設し、前記開口部を介して弁体収容部と弁箱とに移動可能な弁体を設け、弁体を弁体収容部に収容したときに開弁状態となり、弁体を弁箱内に下降させて弁本体に設けたシール材の下部を弁箱内周面下半部に当接させるとともに、前記シール材の上部を前記開口部の開口縁に設けた弁座に当接させたときに閉弁状態となる仕切弁が知られている。
【0003】
前記シール材を弁本体の両面に固定する構造として、弁本体及びシール材の所定位置に複数のボルト挿通孔を形成し、弁本体の両面にシール材をそれぞれ配置して前記ボルト挿通孔にボルトを挿通し、ボルト先端にナットを螺着することにより、ボルト頭とナットとで両シール材を弁本体に固定することが行われている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4515906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載されたシール材の固定構造では、シール材を固定するためのボルトが弁体に形成したボルト挿通孔を貫通しているため、閉弁時にボルト挿通孔を通って流体が下流側に漏れ出すおそれがあった。
【0006】
そこで本発明は、確実なシール性を得ることができるシール材の固定構造を備えたソフトシール仕切弁を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明のソフトシール仕切弁は、弁箱の上部に、該弁箱に連通する開口部を備えた弁体収容部を連設し、前記開口部を介して弁体収容部と弁箱とに移動可能な弁体を設け、前記弁体の上部に設けられた雌ネジ部材に螺合する弁棒の回動操作により、弁体を弁体収容部に収容したときに全開状態となり、弁体を弁箱内に下降させて該弁体に装着されたゴム製のシール材の下部シール部を弁箱内周面下半部に設けられた下向き円弧状の下部弁座に当接させるとともに、該シール材の上部シール部を前記開口部の弁体収容部側の対向面にそれぞれ形成された上部弁座に当接させて全閉状態にする仕切弁において、前記弁体は、2枚の円盤状弁体部を中間連結部で接合した弁本体と、該弁本体の上部に装着される雌ネジ部材と、前記弁本体の下部に装着される弁下部材とを備え、前記シール材は、前記弁体の一側面及び他側面に設けられる一対のシール部材からなり、各シール部材は、前記弁本体の上半部に位置する上部シール部と、前記弁本体の下半部に位置する下部シール部とが一体に形成され、上部シール部は、前記円盤状弁体部の上部と前記雌ネジ部材との間にそれぞれ挟着され、下部シール部は、前記円盤状弁体部の下部と前記弁下部材との間にそれぞれ挟着され、前記雌ネジ部材は、該雌ネジ部材の両側部に弁棒に直交する方向にそれぞれ突設した上部連結部を備え、前記弁下部材は、該弁下部材の両側部に弁棒に直交する方向にそれぞれ突設して前記上部連結部に対向する下部連結部を備え、前記雌ネジ部材及び前記弁下部材で前記弁本体との間に前記シール材を挟着した状態で、前記上部連結部と前記下部連結部とを連結手段でそれぞれ連結することにより、前記弁本体、前記雌ネジ部材、前記弁下部材及び前記シール材とを一体化したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明のソフトシール仕切弁によれば、ゴムの弾力性を利用してシール材を弁本体に装着した後、雌ネジ部材を上方から弁本体の上部に装着するとともに、弁下部材を下方から弁本体の下部に装着し、雌ネジ部材に設けた上部連結部と弁下部材に設けた下部連結部とを連結手段で連結することにより、ソフトシール仕切弁の弁体を形成することができるので、弁本体にボルト挿通孔のような貫通孔を設ける必要がなく、閉弁時のシール性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明のソフトシール仕切弁の一形態例を示す弁体の分解側面図である。
【
図18】閉弁状態のソフトシール仕切弁を示す断面側面図である。
【
図19】開弁状態のソフトシール仕切弁を示す断面正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1乃至
図19は、本発明のソフトシール仕切弁の一形態例を示すもので、まず、
図18及び
図19に示すように、ソフトシール仕切弁11は、前後の配管に接続される弁箱12と、該弁箱12の上部に開口部13を介して連設される弁体収容部14と、前記開口部13を介して弁体収容部14と弁箱12とに弁箱12の軸線に対して直交する上下方向に移動可能な弁体15と、前記弁体収容部14の上部に設けられた操作部16とを備えている。前記操作部16に接続されるハンドルなどを操作して弁棒17により弁体15を弁体収容部14に収容したときに全開状態(
図19)となり、弁体15を弁箱12内に下降させたときに、弁箱内周面下半部に設けられた下向き円弧状の下部弁座12a及び前記開口部13の弁体収容部側の対向面にそれぞれ形成された上部弁座13aに弁体15が当接することによって全閉状態(
図16)となる。また、鋳物によって形成した弁箱12は、弁箱内に設けられる弁座を含めて全体に粉体塗装を施すことにより、弁箱12の耐久性を大幅に向上させることができる。
【0011】
弁体15は、弁本体21と、該弁本体21の上部に装着される雌ネジ部材22と、前記弁本体21の下部に装着される弁下部材23とを備えており、弁体15の全体には、ゴム製の十分な弾力性、伸縮性を有するシール材24が装着されるとともに、弁体15の両側部には、弁箱12から弁体収容部14にわたって設けられたガイド溝18に摺接するガイド部材25が取り付けられている。
【0012】
弁本体21は、2枚の円盤状弁体部21a,21aを中間連結部21bで接合した形状を有しており、弁本体21の中央上下方向には、前記弁棒17を収容するための弁棒収納筒部21cが設けられている。円盤状弁体部21aの上半部外周内面部には、シール材24の上部を保持するための上部保持段部21dが設けられ、円盤状弁体部21aの下半部外周内面部には、シール材24の下部を保持するための下部保持段部21eが設けられている。
【0013】
シール材24は、弁体15の一側面及び他側面に設けられる一対のシール部材24a,24aからなるもので、各シール部材24a上半部には、前記弁本体21の上部保持段部21dに嵌合する上部嵌合部24b及び該上部嵌合部24bの外周側から弁本体21の外側方に向かって突出する上部シール部24cが設けられ、各シール部材24aの下半部には、前記下部保持段部21eに嵌合する下部嵌合部24d及び該下嵌合部24dの外周側から弁本体21の下方に向かって突出する下部シール部24eが設けられており、上部嵌合部24bと下部嵌合部24dとの間のシール部材24aの中央部には、偏平円形状の開口24fが設けられている。また、前記下部嵌合部24dの内面には、弁下部材23の外面に係合する複数の係合凹凸部24gが設けられている。
【0014】
雌ネジ部材22は、上部中央に前記弁棒17が螺合する雌ねじ部22aが設けられ、該雌ねじ部22aの下部には、弁本体21の前記弁棒収納筒部21cに対応した弁棒挿通部22bが設けられている。雌ネジ部材22の上半部外周には、弁本体21の側方に向かって突出した前記上部シール部24cの外周面を覆う円弧状の保持凸部22cが設けられ、該保持凸部22cの内周側には、前記上部保持段部21dの内側に挿入され、前記上部保持段部21dとの間でシール部材24aの上部嵌合部24bを挟着する上部挟着部22dが設けられている。また、保持凸部22cの両側下端同士の間には、弁下部材23が嵌合する嵌合凹状部22eが設けられ、該嵌合凹状部22eの上方には、弁棒に直交する水平方向に突設した上部連結部22fがそれぞれ設けられている。
【0015】
弁下部材23は、下部中央に、弁本体21の前記弁棒収納筒部21cに対応した弁棒挿入部23aが設けられており、該弁棒挿入部23aの外面を含む弁下部材23の下半部外面には、弁本体21の下部保持段部21eの内側に挿入されて下部保持段部21eとの間で前記シール部材24aの下部嵌合部24dを挟着する下部挟着部23bが設けられている。この下部挟着部23bの外面には、シール部材24aの前記係合凹凸部24gが係合する係合凹凸部23cが設けられている。また、弁下部材23の両側部には、雌ネジ部材22の上部連結部22fに対向する下部連結部23dが弁棒に直交する水平方向に突設されており、該下部連結部23dの下方には、雌ネジ部材22の嵌合凹状部22eに嵌合する嵌合凸状部23eが設けられている。
【0016】
このような形状に形成された弁本体21、雌ネジ部材22及び弁下部材23とシール材24との組み付けは、まず、各シール材24の内面側から、円盤状弁体部21aの上部を開口24f内に挿入し、両方の円盤状弁体部21aの上半部を、シール材24の内側から開口24fを通して外側に突出させた状態とし、上部嵌合部24bが弁本体21の中間連結部21bの上にかぶさった状態にする。次に、シール材24の下半部をゴムの弾力性を利用して下方に引き延ばし、円盤状弁体部21aの下部外周より下方に位置させる。円盤状弁体部21aの下部外周より下方に位置した状態で、両シール材24の下部の間に弁下部材23を挿入し、各下部嵌合部24dの内面にそれぞれ設けた係合凹凸部24gと、弁下部材23の両面に設けた係合凹凸部23cとをそれぞれ凹凸係合させる。
【0017】
このようにして弁下部材23を両側から下部嵌合部24dで挟んだ状態にしてから、両シール材24を弁本体21の上方に引上げ、弁下部材23を挟んだ下部嵌合部24dを、ゴムの弾力を利用して弁本体21の下部保持段部21eの内側に押し込むとともに、上部嵌合部24bを上部保持段部21dに嵌合させ、円盤状弁体部21aの上部外周に上部シール部24cを沿わせた状態にする。
【0018】
次に、上方から雌ネジ部材22を円盤状弁体部21a,21aの間に挿入し、上部挟着部22dと上部保持段部21dとで上部嵌合部24bを挟んだ状態にするとともに、保持凸部22cを上部シール部24cの外周面に当接させ、嵌合凹状部22eと嵌合凸状部23eとを嵌合させる。そして、上部連結部22f及び下部連結部23dに設けられている通孔22g,23fの軸線を合わせた状態で、両通孔22g,23fに連結手段となるリベット26を挿入し、該リベット26の端部をつぶして雌ネジ部材22と弁下部材23とを連結することにより、弁本体21、雌ネジ部材22、弁下部材23及びシール材24を一体化することができる。
【0019】
最後に、ガイド部材25は、連結片25aを上部連結部22fと下部連結部23dとの間に挿入し、連結片25aに設けられた二股状の係合爪25bをリベット26に係止させることにより、ガイド部材25を取り付けた弁体15を完成させることができる。
【0020】
閉弁時におけるシール材14は、弁体15の上半部から側方に向けて突出する上部シール部24cが弁箱12の上部弁座13aに密着し、弁体15の下半部から下方に向けて突出する下部シール部24eが下部弁座12aに密着することにより、ソフトシール仕切弁の密閉性を確保することができる。このようにして弁体15を形成することにより、弁本体21に従来のようなボルト挿通孔を貫通形成する必要がないので、全閉時のシール性を確保することができ、確実なシール状態を得ることができる。
【符号の説明】
【0021】
11…ソフトシール仕切弁、12…弁箱、12a…下部弁座、13…開口部、13a…上部弁座、14…弁体収容部、15…弁体、16…操作部、17…弁棒、18…ガイド溝、21…弁本体、21a…円盤状弁体部、21b…中間連結部、21c…弁棒収納筒部、21d…上部保持段部、21e…下部保持段部、22…雌ネジ部材、22a…雌ねじ部、22b…弁棒挿通部、22c…保持凸部、22d…上部挟着部、22e…嵌合凹状部、22f…上部連結部、22g…通孔、23…弁下部材、23a…弁棒挿入部、23b…下部挟着部、23c…係合凹凸部、23d…下部連結部、23e…嵌合凸状部、23f…通孔、24…シール材、24a…シール部材、24b…上部嵌合部、24c…上部シール部、24d…下部嵌合部、24e…下部シール部、24f…開口、24g…係合凹凸部、25…ガイド部材、25a…連結片、25b…係合爪、26…リベット