特許第6004916号(P6004916)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6004916車両用灯具の制御装置及び車両用灯具システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6004916
(24)【登録日】2016年9月16日
(45)【発行日】2016年10月12日
(54)【発明の名称】車両用灯具の制御装置及び車両用灯具システム
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/115 20060101AFI20160929BHJP
【FI】
   B60Q1/115
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-257130(P2012-257130)
(22)【出願日】2012年11月26日
(65)【公開番号】特開2014-104787(P2014-104787A)
(43)【公開日】2014年6月9日
【審査請求日】2015年10月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】笠羽 祐介
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 真嗣
(72)【発明者】
【氏名】後藤 和緒
【審査官】 當間 庸裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−030782(JP,A)
【文献】 特開2001−341578(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q1/00−1/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平面に対する路面の傾斜角度である路面角度と、路面に対する車両の傾斜角度である車両姿勢角度とを含む、水平面に対する車両の傾斜角度である合計角度を導出可能な傾斜センサの検出値を受信するための受信部と、
前記路面角度の基準値と前記車両姿勢角度の基準値とを保持し、車両停止中の前記検出値の変化に対しては、前記検出値と前記路面角度の基準値とから得られる車両姿勢角度を用いて、車両用灯具の光軸位置の調節を指示する調節信号を出力し、得られる車両姿勢角度を新たな基準値として保持し、車両走行中の前記検出値の変化に対しては、前記調節信号の出力を回避するか、光軸位置の維持を指示する維持信号を出力し、前記検出値と前記車両姿勢角度の基準値とから得られる路面角度を新たな基準値として保持する制御部と、
所定の初期化処理が終了してからの所定期間、当該所定期間における車両停止中の前記検出値の変化を前記車両姿勢角度の基準値及び前記路面角度の基準値の少なくとも一方に反映させない制御を前記制御部に指示する基準値算出制限部と、
を備えることを特徴とする車両用灯具の制御装置。
【請求項2】
前記基準値算出制限部は、前記所定期間における車両停止中の前記検出値の変化を、前記車両姿勢角度の基準値に反映させず、前記路面角度の基準値に反映させる制御を前記制御部に指示する請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記基準値算出制限部は、車両用灯具の所定の点消灯操作が実行された場合、制御装置の所定の起動動作が実行された場合、外部装置から解除信号を受信した場合、制御装置の起動回数が所定回数を越えた場合、又は車両の走行距離が所定距離を超えた場合に、前記指示を停止する請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項4】
光軸を調節可能な車両用灯具と、
水平面に対する路面の傾斜角度である路面角度と、路面に対する車両の傾斜角度である車両姿勢角度とを含む、水平面に対する車両の傾斜角度である合計角度を導出可能な傾斜センサと、
前記車両用灯具の光軸調節を制御するための制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記傾斜センサの検出値を受信するための受信部と、
前記路面角度の基準値と前記車両姿勢角度の基準値とを保持し、車両停止中の前記検出値の変化に対しては、前記検出値と前記路面角度の基準値とから得られる車両姿勢角度を用いて、車両用灯具の光軸位置の調節を指示する調節信号を出力し、得られる車両姿勢角度を新たな基準値として保持し、車両走行中の前記検出値の変化に対しては、前記調節信号の出力を回避するか、光軸位置の維持を指示する維持信号を出力し、前記検出値と前記車両姿勢角度の基準値とから得られる路面角度を新たな基準値として保持する制御部と、
制御装置の所定の初期化処理が終了してからの所定期間、当該所定期間における車両停止中の前記検出値の変化を前記車両姿勢角度の基準値及び前記路面角度の基準値の少なくとも一方に反映させない制御を前記制御部に指示する基準値算出制限部と、
を備えることを特徴とする車両用灯具システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具の制御装置及び車両用灯具システムに関する。特に、自動車などに用いられる車両用灯具の制御装置及び車両用灯具システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の傾斜角度に応じて車両用前照灯の光軸位置を自動的に調節して、前照灯の照射方向を変化させるオートレベリング制御が知られている。一般にオートレベリング制御では、車高センサの出力値から導出される車両のピッチ角度に基づいて前照灯の光軸位置が調節される。これに対し、特許文献1及び2には、加速度センサ等の傾斜センサを用いてオートレベリング制御を実施する車両用灯具の制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−030782号公報
【特許文献2】特開2012−030783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
加速度センサ、ジャイロセンサ(角速度センサ、角加速度センサ)や地磁気センサ等の傾斜センサを用いた場合、車高センサを用いた場合に比べてオートレベリングシステムをより安価にすることができ、また軽量化を図ることもできる。その結果、車両の低コスト化及び軽量化を図ることができる。一方で、加速度センサ等の傾斜センサを用いた場合であっても、高精度にオートレベリング制御を実施したいという要求はある。
【0005】
本発明者らは、オートレベリング制御の高精度化を実現すべく鋭意検討した結果、従来の車両用灯具の制御装置には、オートレベリング制御のさらなる高精度化を図る余地があることを認識するに至った。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、車両用灯具のオートレベリング制御の精度を高める技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様は車両用灯具の制御装置である。当該制御装置は、水平面に対する路面の傾斜角度である路面角度と、路面に対する車両の傾斜角度である車両姿勢角度とを含む、水平面に対する車両の傾斜角度である合計角度を導出可能な傾斜センサの検出値を受信するための受信部と、前記路面角度の基準値と前記車両姿勢角度の基準値とを保持し、車両停止中の前記検出値の変化に対しては、前記検出値と前記路面角度の基準値とから得られる車両姿勢角度を用いて、車両用灯具の光軸位置の調節を指示する調節信号を出力し、得られる車両姿勢角度を新たな基準値として保持し、車両走行中の前記検出値の変化に対しては、前記調節信号の出力を回避するか、光軸位置の維持を指示する維持信号を出力し、前記検出値と前記車両姿勢角度の基準値とから得られる路面角度を新たな基準値として保持する制御部と、所定の初期化処理が終了してからの所定期間、当該所定期間における車両停止中の前記検出値の変化を前記車両姿勢角度の基準値及び前記路面角度の基準値の少なくとも一方に反映させない制御を前記制御部に指示する基準値算出制限部と、を備えることを特徴とする。この態様の制御装置によれば、車両用灯具のオートレベリング制御の精度を高めることができる。
【0008】
上記態様において、前記基準値算出制限部は、前記所定期間における車両停止中の前記検出値の変化を、前記車両姿勢角度の基準値に反映させず、前記路面角度の基準値に反映させる制御を前記制御部に指示してもよい。これによれば、オートレベリング制御の精度をより高めることができる。
【0009】
上記いずれかの態様において、前記基準値算出制限部は、車両用灯具の所定の点消灯操作が実行された場合、制御装置の所定の起動動作が実行された場合、外部装置から解除信号を受信した場合、制御装置の起動回数が所定回数を越えた場合、又は車両の走行距離が所定距離を超えた場合に、前記指示を停止してもよい。
【0010】
本発明の他の態様は、車両用灯具システムである。当該車両用灯具システムは、光軸を調節可能な車両用灯具と、水平面に対する路面の傾斜角度である路面角度と、路面に対する車両の傾斜角度である車両姿勢角度とを含む、水平面に対する車両の傾斜角度である合計角度を導出可能な傾斜センサと、前記車両用灯具の光軸調節を制御するための制御装置と、を備える。前記制御装置は、前記傾斜センサの検出値を受信するための受信部と、前記路面角度の基準値と前記車両姿勢角度の基準値とを保持し、車両停止中の前記検出値の変化に対しては、前記検出値と前記路面角度の基準値とから得られる車両姿勢角度を用いて、車両用灯具の光軸位置の調節を指示する調節信号を出力し、得られる車両姿勢角度を新たな基準値として保持し、車両走行中の前記検出値の変化に対しては、前記調節信号の出力を回避するか、光軸位置の維持を指示する維持信号を出力し、前記検出値と前記車両姿勢角度の基準値とから得られる路面角度を新たな基準値として保持する制御部と、制御装置の所定の初期化処理が終了してからの所定期間、当該所定期間における車両停止中の前記検出値の変化を前記車両姿勢角度の基準値及び前記路面角度の基準値の少なくとも一方に反映させない制御を前記制御部に指示する基準値算出制限部と、を備える。
【0011】
なお、上述した各要素を適宜組み合わせたものも、本件特許出願によって特許による保護を求める発明の範囲に含まれうる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、車両用灯具のオートレベリング制御の精度を高める技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態1に係るレベリングECUの制御対象である車両用灯具を含む前照灯ユニットの概略鉛直断面図である。
図2】前照灯ユニット、車両制御ECU及びレベリングECUの動作連携を説明する機能ブロック図である。
図3】車両に生じる加速度ベクトルと、傾斜センサで検出可能な車両の傾斜角度を説明するための模式図である。
図4図4(A)〜図4(C)は、初期化処理の終了からユーザへの引き渡しまでの車両の状態を示す模式図である。
図5】実施形態1に係る車両用灯具の制御装置が実行するオートレベリング制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一又は同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0015】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係るレベリングECUの制御対象である車両用灯具を含む前照灯ユニットの概略鉛直断面図である。前照灯ユニット210は、左右対称に形成された一対の前照灯ユニットが車両の車幅方向の左右に1つずつ配置された構造である。右側の前照灯ユニット210R及び左側の前照灯ユニット210Lは実質的に同一の構成であるため、以下では、右側の前照灯ユニット210Rの構造を説明する。前照灯ユニット210Rは、車両前方側に開口部を有するランプボディ212と、この開口部を覆う透光カバー214とを有する。ランプボディ212は、車両後方側に着脱カバー212aを有する。ランプボディ212と透光カバー214とによって灯室216が形成されている。灯室216には車両用灯具としての灯具ユニット10が収納されている。
【0016】
灯具ユニット10には、灯具ユニット10の上下左右方向の揺動中心となるピボット機構218aを有するランプブラケット218が形成されている。ランプブラケット218は、ランプボディ212に支持されたエイミング調整ネジ220と螺合している。灯具ユニット10の下面には、スイブルアクチュエータ222の回転軸222aが固定されている。スイブルアクチュエータ222は、ユニットブラケット224に固定されている。ユニットブラケット224には、レベリングアクチュエータ226が接続されている。レベリングアクチュエータ226は、例えばロッド226aを矢印M,N方向に伸縮させるモータなどで構成されている。灯具ユニット10は、ロッド226aが矢印M,N方向に伸縮することで後傾姿勢、前傾姿勢となり、これにより光軸Oのピッチ角度を下方、上方に向けるレベリング調整ができる。
【0017】
灯具ユニット10は、回転シェード12を含むシェード機構18、光源14、リフレクタ16を内壁に支持する灯具ハウジング17、及び投影レンズ20を備える。光源14は、白熱球やハロゲンランプ、放電球、LEDなどが使用可能である。リフレクタ16は、少なくとも一部が楕円球面状であり、光源14から放射された光を反射する。光源14からの光及びリフレクタ16で反射した光は、一部が回転シェード12を経て投影レンズ20へと導かれる。回転シェード12は、回転軸12aを中心に回転可能な円筒部材であり、切欠部と複数のシェードプレート(図示せず)とを備える。切欠部又はシェードプレートのいずれかが光軸O上に移動されて、所定の配光パターンが形成される。投影レンズ20は、平凸非球面レンズからなり、後方焦点面上に形成される光源像を反転像として灯具前方の仮想鉛直スクリーン上に投影する。
【0018】
図2は、前照灯ユニット、車両制御ECU及びレベリングECUの動作連携を説明する機能ブロック図である。なお、図2では前照灯ユニット210R及び前照灯ユニット210Lをまとめて前照灯ユニット210としている。また、レベリングECU100は、ハードウェア構成としてはコンピュータのCPUやメモリをはじめとする素子や回路で実現され、ソフトウェア構成としてはコンピュータプログラム等によって実現されるが、図2ではそれらの連携によって実現される機能ブロックとして描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0019】
車両用灯具の制御装置としてのレベリングECU100は、受信部102、制御部104、送信部106、メモリ108、傾斜センサ110及び基準値算出制限部112を備える。レベリングECU100は、例えば車両300のダッシュボード付近に設置される。なお、レベリングECU100の設置位置は特に限定されず、例えば前照灯ユニット210内に設けられてもよい。また、傾斜センサ110は、レベリングECU100の外に設けられてもよい。レベリングECU100には、車両制御ECU302やライトスイッチ304が接続されている。車両制御ECU302やライトスイッチ304から出力される信号は、受信部102によって受信される。また、受信部102は、傾斜センサ110の検出値を受信する。
【0020】
車両制御ECU302には、ステアリングセンサ310、車速センサ312、ナビゲーションシステム314等が接続されている。これらのセンサ等から出力された信号は、車両制御ECU302を介してレベリングECU100の受信部102によって受信される。ライトスイッチ304は、運転者の操作内容に応じて、前照灯ユニット210の点消灯を指示する信号やオートレベリング制御の実行を指示する信号等を、電源306、車両制御ECU302、レベリングECU100等に送信する。
【0021】
受信部102が受信した信号は、制御部104に送信される。制御部104は、傾斜センサ110の検出値を用いて、灯具ユニット10の光軸Oを制御する。制御部104は、角度演算部1041及び調節指示部1042を有する。角度演算部1041は、傾斜センサ110の検出値と必要に応じてメモリ108が保持する情報を用いて車両300のピッチ角度情報を生成する。調節指示部1042は、角度演算部1041で生成されたピッチ角度情報を用いて灯具ユニット10の光軸位置の調節を指示する調節信号を生成し出力する。
【0022】
制御部104は、調節指示部1042で生成した調節信号を送信部106を介してレベリングアクチュエータ226に出力する。レベリングアクチュエータ226は、受信した調節信号をもとに駆動する。これにより、灯具ユニット10の光軸Oがピッチ角度方向について調整される。基準値算出制限部112は、制御部104による基準値算出を制限する。制御部104及び基準値算出制限部112の動作については、後に詳細に説明する。
【0023】
車両300には、レベリングECU100、車両制御ECU302及び前照灯ユニット210に電力を供給する電源306が搭載されている。ライトスイッチ304の操作により前照灯ユニット210の点灯が指示されると、電源306から電源回路230を介して光源14に電力が供給される。
【0024】
続いて、上述の構成を備えるレベリングECU100によるオートレベリング制御について詳細に説明する。図3は、車両に生じる加速度ベクトルと、傾斜センサで検出可能な車両の傾斜角度を説明するための模式図である。
【0025】
例えば、車両後部の荷室に荷物が載せられたり後部座席に乗員がいる場合、車両姿勢は後傾姿勢となり、荷室から荷物が下ろされたり後部座席の乗員が下車した場合、車両姿勢は後傾姿勢の状態から前傾する。車両が後傾姿勢あるいは前傾姿勢になると、灯具ユニット10の照射方向も上下に変動し、前方照射距離が長くなったり短くなったりする。そこで、レベリングECU100は、傾斜センサ110の検出値から車両のピッチ方向の傾斜角度又はその変化を導出し、光軸Oのピッチ角度(以下では適宜、この角度を光軸角度θoという)を車両姿勢に応じた角度とする。車両姿勢に基づき灯具ユニット10のレベリング調整をリアルタイムで行うオートレベリング制御を実施することで、車両姿勢が変化しても前方照射の到達距離を最適に調節することができる。
【0026】
傾斜センサ110は、例えば互いに直交するX軸、Y軸、Z軸を有する3軸加速度センサである。傾斜センサ110は、任意の姿勢で車両300に取り付けられ、車両300に生じる加速度ベクトルを検出する。走行中の車両300には、重力加速度と車両300の移動により生じる運動加速度とが生じる。そのため、傾斜センサ110は、図3に示すように、重力加速度ベクトルGと運動加速度ベクトルαとが合成された合成加速度ベクトルβを検出することができる。また、車両300の停止中、傾斜センサ110は、重力加速度ベクトルGを検出することができる。傾斜センサ110は、検出した加速度ベクトルの各軸成分の数値を出力する。傾斜センサ110から出力されるX軸、Y軸、Z軸の各成分の数値は、制御部104によって車両300の前後軸、左右軸、上下軸の成分に変換される。例えば、メモリ108には傾斜センサ110の軸位置と車両300の軸位置とを対応付けた変換テーブルが記録されており、制御部104は、この変換テーブルを用いてセンサ座標系の数値を車両座標系の数値に変換する。
【0027】
車両停止中の傾斜センサ110の検出値からは、重力加速度ベクトルGに対する車両300の傾きを導出することができる。すなわち、傾斜センサ110の検出値から、水平面に対する路面の傾斜角度である路面角度θrと、路面に対する車両の傾斜角度である車両姿勢角度θvとを含む、水平面に対する車両の傾斜角度である合計角度θを導出可能である。なお、路面角度θr、車両姿勢角度θv及び合計角度θは、車両300のピッチ方向の角度である。
【0028】
これに対し、オートレベリング制御は、車両300のピッチ方向の傾斜角度の変化にともなう車両用灯具の前方照射距離の変化を吸収して、照射光の前方到達距離を最適に保つことを目的とするものである。したがって、オートレベリング制御に必要とされる車両300の傾斜角度は、車両姿勢角度θvである。すなわち、オートレベリング制御では、車両姿勢角度θvが変化した場合に灯具ユニット10の光軸位置が調節され、路面角度θrが変化した場合に灯具ユニット10の光軸位置が維持されることが望まれる。
【0029】
そこで、本実施形態に係るレベリングECU100は、車両停止中の合計角度θの変化を車両姿勢角度θvの変化と推定し、車両走行中の合計角度θの変化を路面角度θrの変化と推定する。車両走行中は、積載荷量や乗車人数が増減して車両姿勢角度θvが変化することは稀であるため、車両走行中の合計角度θの変化を路面角度θrの変化と推定することができる。一方、車両停止中は車両300が移動して路面角度θrが変化することは稀であるため、車両停止中の合計角度θの変化を車両姿勢角度θvの変化と推定することができる。
【0030】
そして、レベリングECU100の制御部104は、車両停止中の合計角度θの変化、すなわち傾斜センサ110の検出値の変化に対して光軸調節を実施し、車両走行中の合計角度θの変化に対して光軸位置を維持するよう制御する。光軸位置を維持する場合、光軸調節を指示する調節信号の出力を回避するか、光軸位置の維持を指示する維持信号を出力することで、光軸位置を維持することができる。なお、調節信号の出力の回避は、調節信号を生成しないことで回避してもよいし、調節信号を生成した上で生成した調節信号の出力を回避してもよい。
【0031】
具体的には、まず車両メーカの製造工場等で、車両300が水平面に置かれて基準状態とされる。そして、初期化処理装置のスイッチ操作やCAN(Controller Area Network)システムの通信等により、レベリングECU100に初期化信号が送信される。制御部104は、初期化信号を受けると初期エイミング調整を開始し、灯具ユニット10の光軸Oを初期設定位置に合わせる。また、制御部104は、基準状態における傾斜センサ110の出力値を、路面角度θrの基準値(θr=0°)、車両姿勢角度θvの基準値(θv=0°)として、メモリ108に記憶することで保持する。
【0032】
車両300が実際に使用されている状況において、制御部104の調節指示部1042は、車両走行中の合計角度θの変化に対して光軸位置を維持する。車両が走行中であることは、例えば車速センサ312から得られる車速により判断することができる。そして車両停止時に、角度演算部1041は、現在(車両停止時)の合計角度θから車両姿勢角度θvの基準値を減算して路面角度θrを得る。そして、得られた路面角度θrを新たな基準値としてメモリ108に保持する。これにより、路面角度θrの変化と推定される車両走行中の合計角度θの変化が、路面角度θrの基準値に取り込まれる。なお、角度演算部1041は、車両停止時に走行前後での合計角度θの差分を算出し、この差分を路面角度θrの基準値に算入して新たな路面角度θrの基準値を算出してもよい。
【0033】
車両停止中、角度演算部1041は、所定のタイミングで繰り返し車両姿勢角度θvを計算する。角度演算部1041は、現在の合計角度θから路面角度θrの基準値を減算して車両姿勢角度θvを得る。そして、得られた車両姿勢角度θvを新たな基準値としてメモリ108に保持する。これにより、車両姿勢角度θvの変化と推定される車両停止中の合計角度θの変化が、車両姿勢角度θvの基準値に取り込まれる。なお、角度演算部1041は、例えば前回検出した合計角度θと現在の合計角度θとの差分を算出し、この差分を車両姿勢角度θvの基準値に算入して新たな車両姿勢角度θvの基準値を算出してもよい。
【0034】
調節指示部1042は、得られた車両姿勢角度θv(更新した車両姿勢角度θvの基準値を含む)を用いて調節信号を生成し、出力する。例えば、調節指示部1042は、予めメモリ108に記憶されている車両姿勢角度θvと光軸角度θoとを対応付けた変換テーブルを用いて光軸角度θoを決定し、この光軸角度θoとなるよう光軸Oの調節を指示する調節信号を生成する。調節信号は、送信部106を介してレベリングアクチュエータ226に送信され、レベリングアクチュエータ226の駆動により、決定された光軸角度θoに光軸Oが調節される。なお、制御部104は、イグニッションがオンにされてレベリングECU100が起動する際に、合計角度θと路面角度θrの基準値とを用いて車両姿勢角度θvを算出する。
【0035】
前記「車両走行中」は、例えば車速センサ312の検出値が0を越えたときから、車速センサ312の検出値が0となるまでの間である。前記「車両停止時」は、例えば車速センサ312の検出値が0となった後、傾斜センサ110の出力値が安定したときである。この「安定したとき」は、傾斜センサ110の検出値の単位時間あたりの変化量が所定量以下となったときとしてもよいし、車速センサ312の検出値が0になってから所定時間経過後(例えば1〜2秒後)としてもよい。前記「車両停止中」は、例えば傾斜センサ110の出力値が安定したとき(車両停止時)から車速センサ312の検出値が0を越えるまでの期間である。前記「車両走行中」、「車両停止時」、「所定量」、「所定時間」及び「車両停止中」は、設計者による実験やシミュレーションに基づき適宜設定することが可能である。
【0036】
(基準値算出制限部による制御)
図4(A)〜図4(C)は、初期化処理の終了からユーザへの引き渡しまでの車両の状態を示す模式図である。通常、車両300は、初期化処理において灯具ユニット10の光軸Oが初期設定位置に合わせられた後(図4(A))、トラック等の搬送車両に積載されて工場から出荷される(図4(B))。車両搬送中、車両300は搬送車両上で停止している。ここで、車両300が搬送車両に積載される際の路面が水平であり、搬送車両から下ろされた路面が角度θr1だけ傾いた路面であったとする。この場合、実際は路面角度θrの変化によって合計角度θが角度θr1だけ変化したにもかかわらず、制御部104は、この合計角度θの変化を車両姿勢角度θvの変化と認識してしまう。すなわち、制御部104は、上述した車両停止中の制御を実行し、合計角度θから路面角度θrの基準値を減算して車両姿勢角度θvを算出する。これにより、車両姿勢角度θvの基準値に、路面角度θrの変化である角度θr1が取り込まれてしまう。
【0037】
また、車両の製造工場において、車両300は初期化処理後に車両検査用のローラ台上で走行させられる。ローラ台は、車両300の車輪が載置されるローラを有し、車両300が走行状態になるとローラが回転する。これにより、車両300を定常位置に留まらせることができ、走行状態にある車両に対して各種の検査を容易に実施することができる。車両300が自走してローラ台上に移動する間、ローラ台のローラは回転しないように固定されている。そして、車両300がローラ台上の決められた位置に停止すると、ローラの固定が解除される。
【0038】
ローラは、固定が解除されると位置がずれることがあり、このずれによって傾斜センサ110の検出値が変化する場合がある。この合計角度θの変化は、路面角度θrの変化に相当する。しかしながらローラの固定解除時、車両300は停止している。そのため、実際は路面角度θrの変化によって合計角度θが変化したにもかかわらず、制御部104は、上述した車両停止中の制御を実行して、ローラの固定解除に起因する路面角度θrの変化を車両姿勢角度θvの基準値に取り込んでしまう。
【0039】
すなわち、初期化処理後、車両停止中であるにもかかわらず路面角度θrが変化し、この変化が車両姿勢角度θvの変化として車両姿勢角度θvの基準値に取り込まれれてしまう場合がある。この場合、取り込まれた路面角度θrの変化分だけ車両姿勢角度θv及び光軸角度θoに誤差が発生してしまう。そこで、基準値算出制限部112は、初期化処理が終了してからの所定期間、当該所定期間における車両停止中(車両300が自走していない状態)の傾斜センサ110の検出値の変化、言い換えれば合計角度θの変化を車両姿勢角度θvの基準値に反映させない制御を制御部104に指示する(以下では適宜、この指示を制限指示という)。
【0040】
制御部104は、基準値算出制限部112から制限指示を受けると、上述した車両停止中の車両姿勢角度θvの基準値の更新を回避する。これにより、車両停止中の路面角度θrの変化が車両姿勢角度θvの基準値に取り込まれることを回避できる。基準値の更新は、車両姿勢角度θvの計算を停止することで回避してもよいし、車両姿勢角度θvを算出した上で、得られた車両姿勢角度θvをメモリ108中の基準値と置き換えないことで回避してもよい。
【0041】
前記「所定期間」は、例えば、初期化処理の終了から車両300がユーザに引き渡されるまでの期間である。車両300がユーザに引き渡されたことは、例えば所定のライトスイッチ304の操作、所定のレベリングECU100の起動操作、車両診断装置等の外部装置からの解除信号の受信、レベリングECU100の起動回数、走行距離等に基づいて判断することができる。
【0042】
前記「所定のライトスイッチ304の操作」としては、所定時間内での所定回数以上連続したライトスイッチ304のオン/オフの切り替え等の、特定のスイッチ操作を挙げることができる。また、前記「所定のレベリングECU100の起動操作」としては、所定時間内での所定回数以上連続したイグニッションのオン/オフの切り替え等の、特定のイグニッション操作を挙げることができる。これらのスイッチ操作及びイグニッション操作、また外部装置からの解除信号の送信操作は、例えばディーラで実施されることが想定される。前記「レベリングECU100の起動回数」は、例えば、ユーザへの車両300の引き渡しが済んだと推定されるイグニッションのオン/オフの切り替え回数である。前記「走行距離」は、ユーザへの車両300の引き渡しが済んだと推定される距離である。
【0043】
したがって、基準値算出制限部112は、灯具ユニット10の所定の点消灯操作が実行された場合、レベリングECU100の所定の起動動作が実行された場合、車両診断装置等の外部装置から解除信号を受信した場合、レベリングECU100の起動回数が所定回数を越えた場合、又は車両300の走行距離が所定距離を超えた場合に、制限指示を停止する。前記「所定の点消灯操作」、「所定の起動操作」、「起動回数」及び「走行距離」は、設計者による実験やシミュレーションに基づき適宜設定することが可能である。
【0044】
所定期間における車両停止中の合計角度θの変化を車両姿勢角度θvの基準値に反映させないことで、自ずと当該変化を路面角度θrの基準値に反映させないことになる。すなわち、上述した基準値算出制限部112からの制限指示がない場合、初期化処理後の所定期間内に発生した車両停止中の路面角度θrの変化(誤差)が車両姿勢角度θvの基準値に取り込まれる。また、初期化処理後の所定期間内に車両300が走行すると、車両停止時に合計角度θと、誤差が取り込まれた車両姿勢角度θvの基準値とを用いて路面角度θrの基準値が算出される。このとき、路面角度θrの基準値に誤差が取り込まれてしまう。これに対し、本実施形態では、基準値算出制限部112から制御部104に制限指示がなされる。そのため、車両停止時に合計角度θと、誤差を含まない車両姿勢角度θvの基準値とを用いて路面角度θrの基準値が算出される。したがって、路面角度θrの基準値に誤差が取り込まれない。すなわち、路面角度θrの基準値に、所定期間における車両停止中の合計角度θの変化が反映されない。
【0045】
所定のレベリングECU100の起動操作、車両診断装置等の外部装置からの解除信号の受信、又はレベリングECU100の起動回数を、基準値算出制限部112が制御部104への指示を終了するトリガとする場合、通常、車両停止中に制限指示が停止されることになる。この場合、制限指示の停止後の最初の角度計算は、車両姿勢角度θvの計算となる。しかしながら、制限指示の停止時に車両300が位置する路面は、水平路面でない可能性がある。そのため、制御部104は、制限指示の停止後にまず合計角度θから車両姿勢角度θvの基準値を減算して路面角度θrの基準値を算出し、得られた路面角度θrの基準値を用いて車両姿勢角度θvを算出することが好ましい。
【0046】
なお、車両停止中に基準値算出制限部112の制限指示が停止される場合であって、制限指示停止時の路面が水平路面であり、所定期間内の車両300の自走による合計角度θの変化がないと推定可能な場合、制限指示停止後の最初の計算で車両姿勢角度θvを求めてもよい。車両姿勢角度θvの計算は、合計角度θから路面角度θrの基準値を減算するものであるため、車両姿勢角度θvの基準値は用いられない。したがってこの場合、基準値算出制限部112は、初期化処理終了からの所定期間、所定期間における車両停止中の合計角度θの変化を路面角度θrの基準値のみに反映させない制御を制御部104に指示してもよい。制御部104は、基準値算出制限部112からこの指示を受けると、車両停止中の合計角度θの変化に対して車両姿勢角度θvを計算する。一方、制御部104は、所定期間内に車両300が自走した場合であっても、車両停止時の路面角度θrの計算を回避する。これにより、所定期間における車両停止中の合計角度θの変化が、車両姿勢角度θvの基準値を介して路面角度θrの基準値に取り込まれることを回避できる。
【0047】
基準値算出制限部112によって制御部104に制限指示がなされている間、制御部104は、レベリングアクチュエータ226による光軸Oの調節を停止してもよい。これにより、レベリングアクチュエータ226の駆動回数の増加を抑制することができる。
【0048】
図5は、実施形態1に係る車両用灯具の制御装置が実行するオートレベリング制御のフローチャートである。このフローは、例えばライトスイッチ304によってオートレベリング制御モードの実行指示がなされ、且つイグニッションがオンにされた場合に制御部104及び基準値算出制限部112により所定のタイミングで繰り返し実行され、イグニッションがオフにされた場合に終了する。なお、ここでは、外部装置からの解除信号の受信を、制限指示の停止トリガとする場合を例に挙げて説明する。
【0049】
まず、基準値算出制限部112は、初期化処理が終了したか判断する(S101)。初期化処理の終了は、例えば制御部104から初期化処理終了信号を受信することで検知することができる。初期化処理が終了していない場合(S101のN)、基準値算出制限部112は本ルーチンを終了する。初期化処理が終了している場合(S101のY)、基準値算出制限部112は、制御部104への制限指示が済んでいるか判断する(S102)。制限指示が済んでいない場合(S102のN)、基準値算出制限部112は、制御部104への制限指示を実施する(S103)。すなわち、基準値算出制限部112は、合計角度θの変化を基準値に反映させない制御の実行を指示する信号を制御部104に送信する。
【0050】
続いて、基準値算出制限部112は、外部装置から解除信号を受信したか判断する(S104)。また、制限指示が済んでいる場合(S102のY)、基準値算出制限部112は、制限指示を実施することなく解除信号を受信したか判断する。解除信号を受信していない場合(S104のN)、基準値算出制限部112は、解除信号を受信したか否かの判断を繰り返す。解除信号を受信した場合(S104のY)、基準値算出制限部112は、制限指示を停止する(S105)。
【0051】
制限指示が停止されると、制御部104は、車両走行中であるか判断する(S106)。車両走行中である場合(S106のY)、制御部104は本ルーチンを終了する。車両走行中でない場合(S106のN)、制御部104は、車両停止時であるか判断する(S107)。車両停止時である場合(S107のY)、制御部104は、現在の合計角度θから車両姿勢角度θvの基準値を減算して路面角度θrを算出する(S108)。そして、路面角度θrの基準値を算出された路面角度θrに更新し(S109)、本ルーチンを終了する。
【0052】
車両停止時でない場合(S107のN)、この場合は車両停止中であることを意味するため、制御部104は、現在の合計角度θから路面角度θrの基準値を減算して車両姿勢角度θvを算出する(S110)。そして、得られた車両姿勢角度θvを用いて光軸角度θoを調節するとともに、車両姿勢角度θvの基準値を得られた車両姿勢角度θvに更新し(S111)、本ルーチンを終了する。
【0053】
以上説明したように、本実施形態に係るレベリングECU100において、制御部104は、車両停止中の傾斜センサ110検出値の変化に対して、検出値と路面角度θrの基準値とから得られる車両姿勢角度θvを用いて調節信号を出力し、得られる車両姿勢角度θvを新たな基準値として保持する。また、車両走行中の検出値の変化に対して光軸位置を維持するよう制御し、検出値と車両姿勢角度θvの基準値とから得られる路面角度θrを新たな基準値として保持する。また、基準値算出制限部112は、レベリングECU100の初期化処理が終了してからの所定期間、当該所定期間における車両停止中の検出値の変化を車両姿勢角度θvの基準値及び路面角度θrの基準値の少なくとも一方に反映させることを回避する制御を制御部104に指示する。すなわち、レベリングECU100は、初期化処理後の所定期間、車両停止中の検出値の変化を車両姿勢角度θvの変化として扱わない制御を実施する。これにより、初期化処理後に起こり得る、車両停止中の路面角度θrの変化が車両姿勢角度θvの基準値及び/又は路面角度θrの基準値に取り込まれることを回避できる。したがって、オートレベリング制御の精度を高めることができる。
【0054】
(実施形態2)
実施形態2に係る車両用灯具の制御装置は、初期化処理後の所定期間における合計角度θの変化を、路面角度θrの基準値に反映させる点が異なることを除き、実施形態1の構成と共通する。以下、実施形態2に係る車両用灯具の制御装置について、実施形態1と異なる構成を中心に説明する。なお、実施形態1と同様の構成については同一の符号を付し、その説明及び図示は適宜省略する。
【0055】
上述したように、車両姿勢角度θvの基準値に取り込まれる誤差の原因は、車両停止中に生じる路面角度θrの変化である。そこで、本実施形態の基準値算出制限部112は、初期化処理後の所定期間における車両停止中の検出値の変化を、車両姿勢角度θvの基準値に反映させず、路面角度θrの基準値に反映させる制御を制御部104に指示する。制御部104は、基準値算出制限部112から指示を受けると、車両走行中の合計角度θの変化に対してだけでなく、車両停止中の合計角度θの変化に対しても路面角度θrを計算し、路面角度θrの基準値を更新する。
【0056】
本実施形態に係るレベリングECU100は、初期化処理後の所定期間、本来であれば車両姿勢角度θvの変化として扱われる車両停止中の合計角度θの変化を路面角度θrの変化として扱い、この変化を路面角度θrの基準値に取り込んでいる。これにより、搬送車両への車両積載時の路面と、搬送車両から下ろされた路面とで路面角度θrが異なる場合であっても、この路面角度θrの差分を路面角度θrの基準値に取り込むことができる。したがって、オートレベリング制御の精度をより高めることができる。
【0057】
本発明は、上述の各実施形態に限定されるものではなく、各実施形態を組み合わせたり、当業者の知識に基づいて各種の設計変更などの変形を加えることも可能であり、そのような組み合わせられ、もしくは変形が加えられた実施形態も本発明の範囲に含まれる。上述の各実施形態同士、及び上述の各実施形態と変形との組合せによって生じる新たな実施形態は、組み合わされる実施形態及び変形それぞれの効果をあわせもつ。
【0058】
上述の各実施形態では、傾斜センサ110として加速度センサを用いているが、傾斜センサ110は、ジャイロセンサ(角速度センサ、角加速度センサ)や地磁気センサ等であってもよい。
【0059】
なお、上述の各実施形態に係る発明は、以下に記載する項目によって特定されてもよい。
[項目1]
光軸を調節可能な車両用灯具と、
水平面に対する路面の傾斜角度である路面角度と、路面に対する車両の傾斜角度である車両姿勢角度とを含む、水平面に対する車両の傾斜角度である合計角度を導出可能な傾斜センサと、
前記車両用灯具の光軸調節を制御するための制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記傾斜センサの検出値を受信するための受信部と、
前記路面角度の基準値と前記車両姿勢角度の基準値とを保持し、車両停止中の前記検出値の変化に対しては、前記検出値と前記路面角度の基準値とから得られる車両姿勢角度を用いて、車両用灯具の光軸位置の調節を指示する調節信号を出力し、得られる車両姿勢角度を新たな基準値として保持し、車両走行中の前記検出値の変化に対しては、前記調節信号の出力を回避するか、光軸位置の維持を指示する維持信号を出力し、前記検出値と前記車両姿勢角度の基準値とから得られる路面角度を新たな基準値として保持する制御部と、
所定の初期化処理が終了してからの所定期間、当該所定期間における車両停止中の前記検出値の変化を前記車両姿勢角度の基準値及び前記路面角度の基準値の少なくとも一方に反映させない制御を前記制御部に指示する基準値算出制限部と、
を備えることを特徴とする車両用灯具システム。
【符号の説明】
【0060】
10 灯具ユニット、 100 レベリングECU、 102 受信部、 104 制御部、 110 傾斜センサ、 112 基準値算出制限部、 300 車両、 θ 合計角度、 θr 路面角度、 θv 車両姿勢角度、 O 光軸。
図1
図2
図3
図4
図5