(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る可変容量形ポンプの実施形態を図面に基づいて詳述する。なお、本実施形態は、自動車用内燃機関の機関弁のバルブタイミングを可変にする可変動弁機構の作動源とすると共に、機関の摺動部、特にピストンとシリンダボアとの摺動部にオイルジェットによって潤滑油を供給し、またクランクシャフトの軸受に潤滑油を供給する可変容量形オイルポンプに適用したものを示している。
【0011】
図1は本実施形態の可変容量形オイルポンプを用いた油圧回路を示し、可変容量形のオイルポンプ10は、内燃機関のクランクシャフトから伝達された回転駆動力によって回転して、オイルパン01に貯留されたオイルを、ストレーナ02を介して吸入通路03から吸入して吐出部である吐出通路04から機関のメインオイルギャラリー05に吐出するようになっている。
【0012】
前記吐出通路04から分岐したリリーフ通路06には、ポンプ吐出圧が過上昇した際に、オイルをオイルパン01内に戻すチェックボール型のリリーフ弁07が設けられている。
【0013】
前記メインオイルギャラリー05は、前記機関の摺動部であるたとえばピストンに冷却オイルを噴射するオイルジェットやバルブタイミング制御装置、クランクシャフトの軸受にオイルを供給するようになっていると共に、吐出通路04側の上流側には、通流するオイル内の異物を捕集する第1オイルフィルタ1が設けられている。また、メインオイルギャラリー05の前記第1オイルフィルタ1をバイパスするバイパス通路08が設けられていると共に、該バイパス通路08には前記第1オイルフィルタ1が例えば目詰まりを起こしてオイルの通流が困難になった際に、開弁してバイパス通路08を介して下流側にオイルを流入させるチェックボール型のバイパス弁09が設けられている。
【0014】
さらに、前記メインオイルギャラリー05の第1オイルフィルタ1より下流側に第1分岐通路3が分岐されている。この第1分岐通路3は、下流側が制御機構であるパイロット弁50を介して前記オイルポンプ10の後述する第1制御油室30に第1給排通路6aを介して連通していると共に、途中には第2分岐通路4が分岐されている。この第2分岐通路4は、下流側が切換機構である電磁切換弁40が設けられている。この該電磁切換弁40は、中間通路60を介して前記パイロット弁50が接続され、この前記パイロット弁50が前記オイルポンプ10の後述する第2制御油室31に第2給排通路6bを介して連通するようになっている。
【0015】
前記電磁切換弁40は、図外のコントロールユニットによってオン(通電)−オフ(非通電)制御され、前記第2分岐通路4と給排通路60を連通させるか、該給排通路60とドレン通路5を連通させるようになっている。具体的な構成などは後述する。
【0016】
また、前記第1分岐通路1のメインオイルギャラリー05との分岐部付近には、第2オイルフィルタ2が設けられている。この第2オイルフィルタ2は、
図5に示すように、メインオイルギャラリー05と大径な第1分岐通路3の分岐箇所に圧入固定されたほぼ円筒状の本体2aと、該本体2aの一端部に結合された有底円筒状の金属製メッシュ部2bとから構成され、オイル内に混入したコンタミが特に前記電磁切換弁40へ流入するのを防止するものである。
【0017】
これら第1、第2オイルフィルタ1,2は、それぞれ例えば濾紙や金属製のメッシュ部が用いられ、濾紙やメッシュ部に目詰まりなどが発生した場合は交換可能なカートリッジ式か濾紙の交換が可能になっている。また、前記第2オイルフィルタ2のメッシュ部2bの網目は、第1オイルフィルタ1のメッシュ部の網目の径よりも大きくなっている。
【0018】
前記オイルポンプ10は、内燃機関のシリンダブロック35の前端部等に設けられ、
図2〜
図4に示すように、一端側が開口するように形成されて内部に円柱状の空間からなるポンプ収容室13を有する断面コ字形状のポンプボディ11及び該ポンプボディ11の一端開口を閉塞するカバー部材12からなるハウジングと、該ハウジングに回転自在に支持され、ポンプ収容室13のほぼ中心部を貫通して機関のクランク軸によって回転駆動される駆動軸14と、ポンプ収容室13内に回転自在に収容されて中心部が駆動軸14に結合されたロータ15及び該ロータ15の外周部に放射状に切欠形成された複数のスリット15a内にそれぞれ出没自在に収容されたベーン16からなるポンプ構成体と、該ポンプ構成体の外周側にロータ15の回転中心に対して偏心可能に配置され、ロータ15及び隣接するベーン16,16と共に複数の作動油室であるポンプ室20を画成するカムリング17と、ポンプボディ11内に収容され、ロータ15の回転中心に対するカムリング17の偏心量が増大する方向へ該カムリング17を常時付勢する付勢部材(制御ばね)であるスプリング18と、ロータ15の内周側の両側部に摺動自在に配置された当該ロータ15よりも小径な一対のリング部材19,19と、を備えている。
【0019】
前記ポンプボディ11は、アルミ合金材によって一体に形成されていて、
図3及び
図4にも示すように、ポンプ収容室13の底面13aのほぼ中央位置には、駆動軸14の一端部を回転自在に支持する軸受孔11aが貫通形成されている。また、ポンプボディ11の内側面となるポンプ収容室13の内周壁の所定位置には、
図4に示すように、カムリング17を揺動自在に支持するピボットピン24が挿入固定される支持孔11bが切欠形成されている。なお、前記軸受孔11aの内周面には、オイルを保持して前記駆動軸14の潤滑に供される保持溝11eが形成されている。
【0020】
さらに、ポンプ収容室13の内周壁には、軸受孔11aの中心と支持孔11bの中心とを結ぶ直線(以下「カムリング基準線」という。)Mを挟んで両側に、カムリング17の外周部に配設されるシール部材30,30がそれぞれ摺接する第1、第2シール摺接面11c,11dが形成されている。これら各シール摺接面11c,11dは、
図4に示すように、支持孔11bの中心からそれぞれ所定の半径R1,R2により構成される円弧面状になっていると共に、カムリング17の偏心揺動範囲において前記各シール部材30,30が常時摺接可能な周方向長さに設定されている。これによって、カムリング17が偏心揺動する際に、前記各シール摺接面11c,11dに沿って摺動案内されることとなって、当該カムリング17の円滑な作動(偏心揺動)が得られるようになっている。
【0021】
また、前記ポンプ収容室13の底面13aには、
図2及び
図4に示すように、軸受孔11aの外周域に、前記ポンプ構成体のポンプ作用に伴ってポンプ室20の内部容積が増大する領域(吸入領域)に開口するようにほぼ円弧凹状の吸入部である吸入ポート21が、前記ポンプ構成体のポンプ作用に伴ってポンプ室20の内部容積が減少する領域(吐出領域)に開口するようにほぼ円弧凹状の吐出部である吐出ポート22が、それぞれ軸受孔11aを挟んでほぼ対向するように切欠形成されている。
【0022】
前記吸入ポート21は、当該吸入ポート21のほぼ中央位置から後述するスプリング収容室28側に延設された吸入孔21aがポンプボディ11の底壁を貫通して外部へと開口形成されている。これにより、機関のオイルパン01に貯留された潤滑油が、前記ポンプ構成体のポンプ作用に伴って発生する負圧に基づき吸入孔21a及び吸入ポート21を介して前記吸入領域の各ポンプ室20に吸入されるようになっている。
【0023】
なお、前記吸入孔21aは、ポンプ吸入側におけるカムリング17の外周域に臨むように構成されており、該カムリング17のポンプ吸入側の外周域に吸入圧を導くようになっている。これによって、前記吸入領域の各ポンプ室20に隣接するポンプ吸入側におけるカムリング17の外周域が吸入圧又は大気圧の低圧部となることから、吸入領域の各ポンプ室20からポンプ吸入側におけるカムリング17の外周域への潤滑油のリークを抑制するようになっている。
【0024】
前記吐出ポート22は、
図4中の上部位置にポンプボディ11の底壁を貫通して前記吐出通路04を介して前記メインオイルギャラリー05に連通する吐出部の一つである吐出孔22aが開口形成されている。
【0025】
かかる構成から、前記ポンプ構成体のポンプ作用により加圧されて前記吐出領域の各ポンプ室20から吐出されたオイルが、吐出ポート22及び吐出孔22aを介してメインオイルギャラリー05に供給されて機関内の各摺動部及びバルブタイミング制御装置などに供給されるようになっている。
【0026】
前記カバー部材12は、
図3に示すように、ほぼ板状を呈し、外側部におけるポンプボディ11の軸受孔11aに対応する位置が円筒状に形成されると共に、この円筒部の内周面に駆動軸14の他端側を回転自在に支持する軸受孔12aが貫通形成されている。このカバー部材12は、複数のボルト26によりポンプボディ11の開口端面に取り付けられている。
【0027】
なお、カバー部材12の内側面はほぼ平坦状となっているが、ポンプボディ11の底面と同様に吸入、吐出ポート21,22を形成することも可能である。
【0028】
前記駆動軸14は、クランク軸から伝達された回転力によってロータ15を
図2中の時計方向へ回転するように構成されている。
【0029】
前記ロータ15は、
図2に示すように、内部中心側から径方向外側へ放射状に形成された前記7つのスリット15aが切欠形成されていると共に、該各スリット15aの内側基端部には、前記吐出ポート22に吐出された吐出油を導入する断面ほぼ円形状の背圧室15bがそれぞれ形成されている。これにより、前記各ベーン16がロータ15の回転に伴うリング部材19、19の遠心力と背圧室15bの油圧とによって外方へ押し出されるようになっている。
【0030】
前記各ベーン16は、各先端面がそれぞれカムリング17の内周面に摺接すると共に、各基端部の内端面が各リング部材19,19の外周面にそれぞれ摺接するようになっている。これによって、機関回転数が低く、前記遠心力や背圧室15bの油圧が小さいときでも、ロータ15の外周面と、隣接するベーン16,16の各内側面と、カムリング17の内周面と、側壁であるポンプボディ11のポンプ収容室13の底面13a及びカバー部材12の内側面とによって、前記各ポンプ室20を液密的に画成している。
【0031】
前記カムリング17は、いわゆる焼結金属によって円環状に一体形成され、外周部の所定位置に、前記ピボットピン24に嵌合して偏心揺動支点を構成するほぼ円弧凹状のピボット部17aが軸方向に沿って突設されていると共に、該ピボット部17aに対しカムリング17の中心を挟んで反対側の位置に、前記スプリング18と連係するアーム部17bが軸方向に沿って突設されている。
【0032】
ここで、前記ポンプボディ11内には、前記支持孔11bと反対側の位置に形成された連通部27を介してポンプ収容室13と連通するようにスプリング収容室28が設けられており、このスプリング収容室28内に前記スプリング18が収容されている。
【0033】
このスプリング18は、前記連通部27を通じてスプリング収容室28内まで延出する前記アーム部17bの先端部の下面とスプリング収容室28の底面との間に、所定のセット荷重Wをもって弾性保持されている。前記アーム部17bの先端部の下面には、スプリング18の内周側に係合するほぼ円弧状に形成された支持突起17cが突設されており、該支持突起17cによってスプリング18の一端が支持されている。
【0034】
したがって、前記スプリング18は、前記ばね荷重Wに基づく弾性力をもって、前記アーム部17bを介してカムリング17を、その偏心量が増大する方向(
図2中の時計方向)へ常時付勢するようになっている。これにより、
図2に示すカムリング17の非作動状態において、当該カムリング17は、前記スプリング18のばね力によってアーム部17bの上面がスプリング収容室28の上壁下面に形成されたストッパ面28aに押し付けられた状態となり、ロータ15の回転中心に対するその偏心量が最大となる位置に保持されている。
【0035】
そして、このように、ピボット部17aと反対側にアーム部17bを延設して、該アーム部17bの先端部をスプリング18によって付勢することによって、カムリング17に対し最大限のトルクを発生させることができるため、スプリング18の小型化が図れ、この結果、ポンプ自体の小型化に供される。
【0036】
また、前記カムリング17の外周部には、前記第1、第2シール摺接面11c,11dと対向するように形成された第1、第2シール面を有する横断面ほぼ3角形状の一対の第1、第2シール構成部17d,17eがそれぞれ突設されていると共に、該各シール構成部17d,17eのシール面に、横断面ほぼ矩形状の第1、第2シール保持溝が軸方向に沿って切欠形成され、該各シール保持溝にカムリング17の偏心揺動時に各シール摺接面11c,11dに摺接する前記一対のシール部材30,30がそれぞれ収容保持されている。
【0037】
ここで、前記第1、第2シール面は、それぞれ前記ピボット部17aの中心からこれに対応する前記各シール摺接面11c,11dを構成する半径R1,R2よりも僅かに小さい所定の半径によって構成されており、該各シール面と前記各シール摺接面11c,11dとの間には、それぞれ微小なクリアランスCが形成されるようになっている。
【0038】
前記各シール部材30,30は、例えば低摩擦特性を有するフッ素系樹脂材によりカムリング17の軸方向に沿って直線状に細長く形成され、前記各シール保持溝の底部に配設されたゴム製の弾性部材の弾性力により各シール摺接面11c,11dに押し付けられるようになっている。これにより、後述する各制御油室31,32の良好な液密性が常時確保されるようになっている。
【0039】
そして、前記ポンプ吐出側となるピボット部17a側におけるカムリング17の外周域には、
図2に示すように、カムリング17の外周面とポンプボディ11の内側面との間に、カムリング17の外周面とピボット部17a、前記各シール部材30,30とポンプボディ11の内側面をもって、前記ピボット部17aを挟んだ両側に、第1制御油室31及び第2制御油室32がそれぞれ画成されている。
【0040】
前記第1制御油室31には、前記吐出ポート22に吐出されたポンプ吐出圧が前記メインオイルギャラリー05と第1分岐通路3から前記パイロット弁50、及びポンプボディ11の側部に形成された第1連通孔25aを介して適宜供給されるようになっており、この第1制御油室31に面するカムリング17の外周面によって構成された第1受圧面33が、前記スプリング18の付勢力に抗して前記メインオイルギャラリー05からの油圧を受けて、
図7及び
図9に示すように、カムリング17の偏心量を減少させる方向(
図2中の反時計方向)へ揺動力(移動力)を付与するようになっている。
【0041】
すなわち、この第1制御油室31は、前記第1受圧面33を介してカムリング17の中心がロータ15の回転中心と同心に近づく方向、つまり偏心量が減少する方向へカムリング17を常時付勢することによって、このカムリング17の同心方向の移動量制御に供されている。
【0042】
一方、前記第2制御油室32には、同じくポンプボディ11の側部に第1連通孔25aと平行に貫通形成された第2連通孔25bを介して連通した前記第2分岐通路4の吐出圧が前記パイロット弁50を介して電磁切換弁40のオン、オフ作動により適宜導入されるようになっている。
【0043】
また、この第2制御油室32に面するカムリング17の外周面には第2受圧面34が形成され、この第2受圧面34に吐出圧を作用させることによって、スプリング18の付勢力をアシストする方向に作用する力となり、これにより、カムリング17に対しその偏心量を増大させる方向(
図2中の時計方向)へ揺動力を付与するようになっている。
【0044】
ここで、
図2に示すように、前記第2受圧面34の受圧面積は、前記第1受圧面33の受圧面積よりも小さく設定されており、第2制御油室32の内圧に基づく付勢力とスプリング18の付勢力とによるカムリング17の偏心方向の付勢力と、第1制御油室31による付勢力が所定の力関係をもってバランスするように構成され、第2制御油室32内の油圧が、前述のように、スプリング18の付勢力をアシストするようになっている。すなわち、前記第2制御油室32は、前記電磁切換弁40とパイロット弁50を介して必要に応じて供給された吐出圧を第2受圧面34に作用させてスプリング18の付勢力を適宜アシストすることによって、カムリング17が偏心する方向への移動量を制御するようになっている。
【0045】
また、前記電磁切換弁40は、内燃機関を制御するコントロールユニットからの励磁電流に基づき機関の運転状態に応じて作動するようになっており、この電磁切換弁40を介して前記第2分岐通路4と第2連通孔25bとが適宜連通、あるいは連通が遮断されるようになっている。
【0046】
前記電磁切換弁40は、
図2及び
図5に示すように、3方向切換弁であって、機関のシリンダブロック35の側壁内に形成されたバルブ収容孔35aに圧入固定され、内部軸方向に作動孔41aが形成されたバルブボディ41と、前記作動孔41aの先端部に圧入され、中央に第2分岐通路4の下流側と連通したソレノイド開口ポート42aが形成されたバルブシート42と、該バルブシート42の内側に離着座自在に設けられて、前記ソレノイド開口ポート42aを開閉する金属製のボール弁43と、バルブボディ41の一端側に設けられたソレノイドユニット44と、から主として構成されている。
【0047】
前記バルブボディ41は、周壁の上端部側に前記第2分岐通路4にソレノイド開口ポート42aを介して連通する連通ポート45が径方向から貫通形成されていると共に、周壁の下端部側には、前記作動孔41aと連通するドレンポート46が径方向から貫通形成されている。
【0048】
前記ソレノイドユニット44は、ケーシングの内部に図外の電磁コイルや固定鉄心や可動鉄心等が収容配置され、該可動鉄心の先端部に前記作動孔41a内に所定隙間をもって摺動して先端が前記ボール弁43を押圧するか、あるいは押圧を解除するプッシュロッド47が設けられている。
【0049】
前記プッシュロッド47の外周面と前記作動孔41aの内周面との間には、前記連通ポート45とドレンポート46を適宜連通する筒状の通路48が形成されている。
【0050】
前記電磁コイルには、機関のコントロールユニットからオン−オフ的に電流が通電あるいは通電が遮断されるようになっている。
【0051】
つまり、前記電磁コイルにコントロールユニットからオフ信号(非通電)が出力されると、前記可動鉄心が図外のリターンスプリングのばね力によって後退移動してプッシュロッド47によってボール弁43の押圧を解除して前記ソレノイド開口ポート42aを開成する。これによって、
図8,
図9に示すように、第2分岐通路4からの吐出圧によってボール弁43が後退移動して第2分岐通路4と給排通路6を連通させて第2制御油室32に油圧を供給すると同時に、前記筒状通路48の一端を閉塞して該筒状通路48とドレンポート46との連通を遮断するようになっている。
【0052】
一方、前記電磁コイルへコントロールユニットからオン信号(通電)が出力されると、可動鉄心がリターンスプリングのばね力に抗して進出移動して前記プッシュロッド47により前記ボール弁43を押圧する。これによって、
図2、
図7に示すように、ボール弁43がソレノイド開口ポート42aを閉止すると共に、連通ポート45と筒状通路48を連通させる。これによって、第2制御油室32内の油圧が、パイロット弁50と中間通路60から前記連通ポート45,筒状通路48及びドレンポート46を通ってオイルパン01に排出されるようになっている。
【0053】
前記コントロールユニットは、機関の油温や水温、機関回転数や負荷等から現在の機関運転状態を検出して、特に機関回転数が所定以下では前記電磁切換弁40の電磁コイルへオフ信号(非通電)を出力し、所定より高い場合はオン信号(通電)を出力するようになっている。
【0054】
但し、機関回転数が所定以下でも、機関が高負荷域の場合などには、電磁コイルへオフ信号が出力されて、第2制御油室32に油圧が供給されるようになっている。
【0055】
したがって、前記オイルポンプ10は、基本的に、メインオイルギャラリー05から油圧が供給される第1制御油室31の内圧と、スプリング18のばね付勢力によってカムリング17の偏心量を制御し、ポンプ駆動時における前記ポンプ室20の内部容積の変化量を制御することによって、オイルポンプ10の吐出圧特性を低圧制御する状態と、前記電磁切換弁40により第2制御油室32の内圧を加えてカムリング17の偏心量を制御し、オイルポンプ10の吐出圧特性を高圧制御する状態の2種類の吐出圧特性を得るようになっている。
【0056】
また、前記パイロット弁50を設けることによって、前記オイルポンプ10の前記低圧制御と高圧制御の安定化を図ることができるようになっている。
【0057】
すなわち、前記パイロット弁50は、
図2に示すように、円筒状のバルブボディ51の内部に形成された摺動用孔52内にスプール弁53が摺動自在に設けられていると共に、該スプール弁53を図中上方へ付勢するバルブスプリング54のばね荷重が与えられた状態でプラグ49がバルブボディ51の下部開口端を封止している。
【0058】
前記バルブボディ51は、前記摺動用孔52の上方に位置する上端開口に、前記摺動用孔52より小径なパイロット圧導入ポート55が形成されており、このパイロット圧導入ポート55と摺動用孔52の間の段差テーパ面51aが、前記スプール弁53に対して前記パイロット圧導入ポート55からの油圧が作用しないときに、該スプール弁53が前記バルブスプリング54のばね力によって上方へ付勢されて着座する着座面となっている。
【0059】
前記バルブボディ51のパイロット圧導入孔55には、前記メインオイルギャラリー05から分岐した第1分岐通路3が第2オイルフィルタ2を介して連通している。
【0060】
前記バルブボディ51の前記摺動用孔52が臨む周壁には、前記第1給排通路6aを介して第1制御油室31に連通する第1制御ポートである第1給排ポート57aと、前記第2給排通路6bを介して第2制御油室32に連通する第2制御ポートである第2給排ポート57bが径方向に沿って貫通形成されていると共に、該第2給排ポート57bよりも下側の反対位置には、前記中間通路60の一端に接続された接続ポート56が径方向に沿って貫通形成されている。さらに、該接続ポート56よりも下側には背圧逃がしポートを兼ねたドレンポート58が径方向に沿って貫通形成されている。
【0061】
前記スプール弁53は、上端が閉止されたほぼ円筒状に形成され、前記第1分岐通路3の内部にバルブスプリング54の一部が収容される通路孔53iが形成されており、パイロット圧導入ポート55側である図中最上端側の第1ランド部53aと、該第1ランド部53aの下側に形成された第1小径軸部53bと、該第1小径軸部53bの下側に形成された第2ランド部53cと、該第2ランド部53cの下側に形成された軸方向に長い第2小径軸部53eと、該第2小径軸部53eの下側に形成された第3ランド部53fとを有している。
【0062】
前記第1ランド部53aと第2ランド部53c及び第3ランド部53fは同径に設定されて、各外周面が前記摺動用孔52の内周面と微小隙間をもって摺動するようになっている。
【0063】
前記第1ランド部53aは、有蓋筒状に形成されて、上面が前記パイロット圧導入ポート55に導入された吐出圧を受ける受圧面として構成されていると共に、スプール弁53の上下移動に伴って前記第1給排ポート57aを開閉するようになっている。
【0064】
前記第2ランド部53cは、スプール弁53の上下移動に伴って、前記第2給排ポート57bを開閉するようになっている。
【0065】
前記第1小径軸部53bの外周には、テーパ円環状に形成された第1環状溝53gが形成されている一方、第2小径軸部53eの外周にはほぼ円筒状の第2環状溝53hがそれぞれ形成されている。
【0066】
前記第1環状溝53gは、第1小径軸部53bを径方向に貫通した貫通孔53jを介して通路孔53iから摺動用孔52及び前記ドレンポート58に連通している。一方、前記第2環状溝53hは、スプール弁53の摺動位置に応じて前記第2給排ポート57bと接続ポート56を適宜連通するようになっている。
【0067】
なお、前記バルブスプリング54は、前記オイルポンプ10のスプリング18のばね力よりも小さく設定されている。
【0068】
前記中間通路60は、電磁切換弁40の前記連通ポート45とパイロット弁50の前記接続ポート56を接続している。
【0069】
前記第1給排通路6aは、パイロット弁50の第1給排ポート57aとオイルポンプ10の第1連通孔25aを接続している。第2給排通路6bは、パイロット弁50の第2給排ポート57bとオイルポンプ10の第2連通孔25bを接続している。
【0070】
なお、前記第1分岐通路3と前記パイロット圧導入ポート55、第1給排ポート57a及び第1給排通路6aによって導入通路が構成されている。
【0071】
また、前記中間通路60と接続ポート56、第2給排通路6b及び第2給排ポート57bなどによって連通路が構成されている。
〔本実施形態の作用〕
以下、本実施形態の前記電磁切換弁40とパイロット弁50の作用を、
図10の油圧特性と合わせて説明する。
【0072】
図2は
図10に示す機関の始動から低回転aの領域状態である。この状態では電磁切換弁40はコントロールユニットからのオン信号が出力されて通電状態になっているから、連通ポート45とドレンポート46が連通している。
【0073】
前記パイロット弁50は、機関低回転数で低油圧であることからスプール弁53の第1ランド部53aが前記着座面51aに着座した状態になっている。このとき、第1制御油室31は、第1給排通路6aと第1給排ポート57a、第1環状溝53g、貫通孔53j及び通路孔53iによってドレンポート58と連通している。一方、第2制御油室32は、第2給排通路6bと第2給排ポート57b、第2環状溝53hによって、接続ポート56と電磁切換弁40の連通ポート45が連通し、さらにドレンポート46を介してドレン通路5に連通している。
【0074】
したがって、第1制御油室31と第2制御油室32は、ともにドレンポート58、46と連通するため油圧が導入されず、カムリング17は、スプリング18のばね力によって図中反時計方向、つまり、アーム部17bがストッパ面28aに当接した最大偏心量を維持し、ポンプ回転数が上昇すると油圧もほぼ比例して上昇する。
【0075】
その後、オイルポンプ10によってメインオイルギャラリー05の吐出圧が
図10に示すP1に達すると、パイロット弁50のパイロット圧導入ポート55から油圧がスプール弁53の第1ランド部53a上面に作用し、該スプール弁53がバルブスプリング54のばね力に抗して
図7に示す位置まで後退移動する。
【0076】
このように、前記スプール弁53が下降移動すると、パイロット圧導入ポート55と第1給排ポート57aの互いの開口面積が絞られた状態で連通し、該第1給排ポート57aとドレンポート58との連通が遮断されることから、第1制御油室31に吐出圧が導入される。このため、カムリング17は、スプリング18のばね力に抗して図示のように、反時計方向へ回転移動を開始して
図10の機関回転数bに示す低圧制御の状態となる。
【0077】
そして、本実施形態のようなパイロット弁50を有さない従来の可変容量形オイルポンプでは、前記低圧制御の状態でも、油圧特性が
図6の実線で示すように、油圧制御時に機関回転数の上昇と共にポンプ吐出圧が上昇してしまい、特に、cに示すほぼ垂直に立ち上がった状態からさらに右肩上がりで上昇してしまう。なお、
図6中、aは機関始動時から低回転域、bは低、中回転域、cは高回転域を示していると共に、VTCは吸気弁や排気弁のバルブタイミング制御装置、OJはピストンに冷却オイルを噴射するオイルジェット、CMはクランクシャフトの軸受を示し、機関回転数に対応したこれらの要求吐出圧特性を明示している。
【0078】
これに対して、本実施形態のように、パイロット弁50が設けられている場合は、このパイロット弁50によって第1制御油室31の油圧を制御することにより過度に油圧が上昇することを抑制することができる。
【0079】
前記パイロット弁50は、吐出圧が下がり過ぎるとスプール弁53がバルブスプリング54のばね力で着座方向に移動して、前述の場合と同じく、第1ランド部53aによりパイロット圧導入ポート55と第1給排ポート57aを遮断すると共に、第1給排ポート57aがドレンポート58と連通して、第1制御油室31を減圧してカムリング17の偏心量を大きくして油圧を上げる。
【0080】
この状態で吐出圧が上がり過ぎると、前記スプール弁53がバルブスプリング54のばね力に抗してプラグ49方向へ下降移動して、パイロット圧導入ポート55と第1給排ポート57aを連通させて第1制御油室31に油圧を供給して前記カムリング17の偏心量を小さくして、吐出圧を下降させる。
【0081】
これらの制御が前記スプール弁53の微小な移動で制御できるので、バルブスプリング54のばね定数の影響が小さく、吐出圧をほぼP1に制御することが可能となる。
【0082】
特に、前記パイロット圧導入ポート55と第1給排ポート57aは、互いの開口面積が小さい状態で連通して、前記スプール弁53の第1ランド部53aの上端縁によって絞られた状態で制御されることから、前記吐出圧のほぼP1に安定に保持させることができる。
【0083】
次に、機関回転数がさらに上昇すると、前記電磁切換弁40への通電が遮断されて、
図8に示すように、該電磁切換弁40側では、前記ソレノイド開ロポート42aと連通ポート45が連通され、パイロット弁50側では、前記スプール弁53がパイロット圧導入ポート55と第1給排ポート57aを僅かに連通した状態のままでバルブスプリング54のばね力に抗して下降移動している(絞り状態)一方、前記第2環状溝53eを介して接続ポート56と第2給排ポート57bの連通が維持されている。
【0084】
したがって、第1制御油室31と第2制御油室32には、ともにメインオイルギャラリー05の吐出圧が第1分岐通路3と第2分岐通路4から導入されて、前記カムリング17がスプリング18のばね力とこれをアシストする第2制御油室32の油圧によって時計方向へ、つまり偏心量が大きくなる方向へ移動することから、
図10のcに示す高圧制御の状態に移行する。この
図10のcに示す機関回転数では、高圧制御に切換っても吐出圧がP2に達していないため、カムリング17の偏心量は再び最大となり、機関回転数の上昇にほぼ比例して吐出圧も上昇する。
【0085】
その後、機関回転数の上昇により吐出圧がP2に達すると、前記パイロット弁50のスプール弁53は、
図9に示すように、パイロット圧導入ポート55に作用する油圧によってバルブスプリング54のばね力に抗してさらに下降移動する。したがって、第2ランド部53cによって接続ポート56と第2給排ポート57bの連通が遮断されると同時に、第2給排ポート57bと第1環状溝53b(貫通孔53j)が互いの開口面積が小さな状態で連通を開始して通路孔53iを介してドレンポート58と連通するので、第2給排ポート57bとドレンポート58が連通を開始する。
【0086】
これよって、第2制御油室32は、ドレンポート58と連通するため、第2制御油室32が低圧になってカムリング17はスプリング18のばね力のみの付勢力となる。このため、第1制御油室31内の吐出圧がスプリング18のばね力に打ち勝ってカムリング17は
図9に示すように反時計方向へ回転移動し、つまり、偏心量を小さくする方向に移動し、
図10の機関回転数dに示す平坦かつ均一な高圧制御の状態となる。
【0087】
このように、前記パイロット弁50の作動によって、ポンプ吐出圧の高圧制御時に過度に油圧が上昇するのを抑制することができる。
【0088】
すなわち、パイロット弁50を有さない従来の可変容量形オイルポンプの場合は、前述した
図6の実線で示すように、油圧制御時に機関の回転数上昇と共に油圧が上昇してしまう。これは、機関回転数が上昇するとカムリング17の偏心量をさらに小さくする必要が生じるが、スプリング18のばね定数の分だけ吐出圧が上昇するからである。
これに対し、本実施形態では、前記パイロット弁50を有することから、ポンプ吐出圧が下がり過ぎると、スプール弁53が上方(着座方向)に移動して、接続ポート56と第2給排ポート57bを連通させ、第2制御油室32に油圧を導入してスプリング18のばね力をアシストして前記カムリング17を偏心量が大きくなる方向移動させることから吐出圧が上昇する。
【0089】
ポンプ吐出圧が上がり過ぎると、スプール弁53がバルブスプリング54のばね力に抗して下降移動して、ドレンポート58と第2給排ポート57bを連通させ、第2制御油室32を減圧してカムリング17の偏心量を小さく制御して油圧を下げる。これらの制御がスプール弁53の微小な移動で制御できるので、バルブスプリング54のばね定数の影響が小さく、油圧を
図10のd領域に示すように、ほぼP2の吐出圧に平坦な状態に制御することが可能となる。
【0090】
しかも、本実施形態では、
図10に示す機関回転数がb領域状態とd領域状態では、
図8及び
図9に示すように、前記スプール弁53の第1ランド部53aと第2ランド部53cが第1給排ポート57aの開口面積と第2給排ポート57bの開口面積を相対的に逆の大きさに変化させるようになっている。つまり、第1制御油室31への吐出圧の導入量と、第2制御油室32から油圧を排出する排出量を相対的に変化させるようになっていることから、前記P1とP2の平坦な吐出圧制御の安定化が図れる。
【0091】
また、本実施形態では、スプール弁53の第1ランド部53aと第2ランド部53cによって各ポート切換える時期を同時としているが、両方同時に連通していたり、両方同時に遮断している状態があっても良い。
【0092】
また、スプール弁53の第1、第2ランド部53a、53cと第1小径軸部53bの境は面取りやR形状としても良い。これらは切換え時のスプール弁53のストロークと開口面積の特性を変更する要素であり、ポンプ容量や切換え圧力によって調整される。
【0093】
図11A〜Cは前記第1給排通路6aと連通する第1給排ポート57aの一端開口の開口幅W1と第1ランド部53aの幅W2との種々異なる構成を示し、
図11Aに示すものは、第1給排ポート57aの開口幅W1と第1ランド部53aの幅W2はほぼ同等に設定されている。
図11Bに示すものは、第1ランド部53aの幅W2が第1給排ポート57aの開口幅W1より僅かに大きく形成されている。
図11Cに示すものは、第1ランド部53aの幅W2よりも第1給排ポート57aの開口幅W1の方がやや大きく形成されている。
【0094】
このように、第1給排ポート57aの開口幅W1と第1ランド部53aの幅W2を相対的に変えることによって、前記スプール弁53のストローク量に応じて前記第1制御油室31への油圧の供給量を任意に制御することが可能になる。
【0095】
図12A〜Cは
図11と同じく前記第1給排ポート57aの一端開口の開口幅W1が大小変更されている一方、第1ランド部53aの外周面の上下部位に面取り部53k、53lが形成され、この面取り部53k、53lとの間の中央部位53mの幅W1が同一に設定されたものである。
【0096】
すなわち、
図12Aに示すものは、第1給排ポート57aの一端開口の開口幅W1が第1ランド部53aの中央部位53mの幅W3とほぼ同一に設定され、
図12Bに示すものは、第1給排ポート57aの開口幅W1が第1ランド部53a中央部位53mの幅W3よりも小さく設定され、さらに
図12Cに示すものは、第1給排ポート57aの開口幅W1が第1ランド部53aの中央部位53mの幅W3より大きく設定されている。前記第1ランド部53aの中央部位53mの幅W3の方が開口幅W1より大きい場合でも、中央部位53mと第1給排ポート57aの一端開口とは微小な隙間があり、三方が完全に遮断されることはない。これらはスプール弁53の変位と連通開口面積変化の関係を変えているものであり、パイロット圧導入ポート55側の開口面積が変化すると他方のポ第1環状溝53g側の開口面積が逆に変化するようになっており、ポンプ本体の仕様や作動圧の大きさによって適時選択して使うものである。
【0097】
第1給排ポート57aの孔径と第1ランド部53aの幅が同じ場合、あるいは第1ランド部53aの幅が広い場合に摺動用孔52との微小隙間の長さが同様に変化することも同じ意味である。
【0098】
そして、第2ランド部53cと第2給排ポート57bの関係と変形例も同様である。
【0099】
また、前記電磁切換弁40の通電切換えのタイミングは、機関の運転状態に応じて前記コントロールユニットが判断するが、
図10に示す状態に限らず機関回転数aの状態からcの状態に移行することも、bの状態からdの状態に移行することも可能である。
【0100】
通常、オイルジェットの噴射圧やクランク軸受けの要求油圧は高回転時に要求されるため、機関低回転時には電磁切換弁40に通電して低圧制御として油圧の上昇を防止し消費動力の低減を図ると共に、高回転時には、電磁切換弁40を非通電として高圧制御に切換えて吐出圧を必要なレベルまで上昇させる
図6の実線で示すような特性を得る。
【0101】
そして、前記電磁切換弁40の通電を切換える機関回転数は、内燃機関の運転状態によって変更することが可能であって、前記コントロールユニットが、前述したように、機関回転数や負荷、油水温などをパラメータとして判断する。
【0102】
例えば、高負荷時や高油温時には低回転より高圧制御に切換えてオイルジェットを噴射させてノッキングを防止できるので、点火タイミングを早めて燃費を向上することができる。また、低油温時には低圧制御に維持して消費動力を低減したり、オイルジェットからの噴射を止めて暖機時間を短縮しHC(炭化水素)排出を低減できる。
【0103】
ところで、機関高回転域で高油圧制御の状態では、メインオイルギャラリー05の脈圧が大きくなり、第1、第2制御油室31、32に脈圧が作用するとカムリング17が振動してポンプの吐出脈圧が増幅されて騒音や振動が発生して問題となることがある。
【0104】
前記第1制御油室31と第2制御油室32の両方に高油圧が供給されている状態では、脈圧も同様に作用するので、位相が合わさった脈圧によりカムリング17が振動して安定しないことがある。
【0105】
しかしながら、本実施形態では、第2オイルフィルタ2をメインオイルギャラリー05から分岐した第1分岐通路3の下流側で、かつ、第1分岐通路3と第2分岐通路4の分岐前に設けているため、分岐する前の脈動を第2オイルフィルタ2の抵抗によって減衰することができる。
【0106】
この結果、第1制御油室31と第2制御油室32の脈圧を同等に低減できる。このように、両制御油室31、32の脈圧を同等に低減できることから、どちらかの制御油室31、32の脈圧が大きくなってバランスを崩すようなことも無く、カムリング17の移動を安定化させることができる。
【0107】
また、電磁切換弁40の故障などの異常時においては、機関高回転、高負荷、高油温の状態でポンプ吐出圧は高圧制御とするようにフェールセーフを考える必要がある。すなわち、まず、電磁切換弁40のコイルやハーネスの断線などの故障時には第2制御油室32へ油圧が導入されるように、電磁コイルは非通電でソレノイド開ロポート42aと連通ポート45が連通する構成としている。
【0108】
前記電磁切換弁40の上流に第2オイルフィルタ2を設けたので、コンタミが詰まって電磁切換弁40の作動不良を起こすことを防止でき、非通電時に第2制御油室32がドレン通路5と連通することを防止できる。
【0109】
オイルポンプ10とメインオイルギャラリー03との間に、第1オイルフィルタ1を設けているので、通常はメインオイルギャラリー05や第1分岐通路3にコンタミが流れてくることはない。
【0110】
ところが、第1オイルフィルタ1はフィルタ詰まりが起きたときなどに、機関の保護のためにバイパス弁09が開かれるので、このときに第1分岐通路3側にコンタミが流入する可能性がある。
【0111】
しかし、設定されている第1オイルフィルタ1の交換期間ではそれほど起きることではないので、第2オイルフィルタ2は第1オイルフィルタ1に比較して小型で無交換のものとすることができる。
【0112】
また、前述した場合でも、第2オイルフィルタ2は、電磁切換弁40内でボール弁43に引っ掛かってロックさせる大きさのコンタミを捕集すればよいので、第1オイルフィルタ1より大きなメッシュサイズとすることが可能である。
【0113】
仮に、第1オイルフィルタ1がバイパスされた状態で長時間運転され、第2オイルフィルタ2も詰った場合には、第1分岐通路3と第2分岐通路4の分岐前で通路が遮断されることとなるので、第1制御油室31、第2制御油室32には共に油圧が導入されなくなる。
【0114】
この場合には、スプリング18のばね荷重によってカムリング17は最大偏心量となり、最大容量のままとなるので高油圧を維持することができる。
【0115】
前記電磁切換弁40の通電、非通電に関わらず高油圧を維持するので、電磁切換弁40の故障が重なっても高油圧を維持できる。
【0116】
そして、過大な油圧に対しては、バイパス弁09のチェックバルブが作動してオイルポンプ10や油圧回路中の各部品の破損を抑制することができる。
【0117】
さらに高油圧状態が続いた場合には、第1制御油室31と第2制御油室32が共に各リング部材19、19とポンプボディ1、カバー部材12の間の側面隙間を挟んで吐出ポート34と隣接しているので、第1制御油室31と第2制御油室32ヘオイルが洩れて流入するおそれがある。
【0118】
第2オイルフィルタ2が詰っているため、オイルは前記シール部材30、30から低圧部である吸入側へ流出するが、流入量のほうが多くなるので、第1制御油室31と第2制御油室32の油圧が上昇する。
【0119】
前記電磁切換弁40が非通電状態では、第1制御油室31と第2制御油室32が、電磁切換弁40及びパイロット弁50を介して第1、2分岐通路3、4と連通しているので同油圧となる。同油圧状態で前述のような所定油圧まで上昇すると、カムリング17が時計方向へ動き始めて高圧側で吐出圧を制御することができる。
【0120】
また、第1オイルフィルタ1が詰っているときは、メインオイルギャラリー05の油圧が低下しているので、第1、第2制御油室31、32油圧の方がメインオイルギャラリー05油圧より高くなり、第1、第2制御油室31、32からメインオイルギャラリー05ヘオイルが流れて、第2オイルフィルタ2に詰ったコンタミを1度取り除くことができる。
〔故障診断〕
前記実施形態では、メインオイルギャラリー05に設けた油圧センサまたは油圧スイッチにより故障診断ができるようになっている。電磁切換弁40の通電時には、所定の機関回転数と油温では所定の油圧以下となるように予め設定されている。また、電磁切換弁40非通電時には、所定の機関回転数と油温では所定の油圧以上となるように予め設定されている。
【0121】
前記電磁切換弁40への指令に対してあらかじめ設定された油圧と異なる場合には何らかの故障と判断し、警告等を点灯するとともに電磁切換弁40を非通電状態として、高圧制御状態とするようになっている。
【0122】
前記実施形態から把握される前記請求項以外の発明の技術的思想について以下に説明する。
〔請求項a〕
回転駆動されるロータと、
該ロータの外周に出没自在に設けられた複数のベーンと、
内周側に前記ロータとベーンを収容しつつ複数のポンプ室を形成すると共に、移動することによって前記ロータの回転中心に対する内周面の中心の偏心量が変化するカムリングと、
前記ロータの回転中心に対して前記カムリングが一方向へ偏心移動した際に容積が増大する前記ポンプ室に開口する吸入部と、
前記カムリングが他方向へ偏心移動した際に容積が減少する前記ポンプ室に開口する吐出部と、
前記ロータの回転中心に対して前記カムリングの偏心量が大きくなる一方向へ前記カムリングを付勢する付勢部材と、
前記吐出部から導入通路を介して吐出圧が導入されることによって前記付勢部材の付勢力に抗して前記カムリングを偏心量が小さくなる他方向へ偏心移動させる力を前記カムリングに付与する第1制御油室と、
作動油が導かれることによって前記付勢部材の付勢力と協働して前記カムリングを一方向へ移動させる力を付与する第2制御油室と、
前記吐出部と第2制御油室とを連通する連通路を介して前記第2制御油室に作動油を導く状態と、前記連通路を介して第2制御油室から作動油を排出する状態に切り換える切換機構と、
前記吐出部の吐出圧に応じて第1制御油室に吐出圧を供給あるいは供給を遮断すると共に、前記連通路を介して前記第2制御油室に油圧を供給するか排出する制御機構とを備え、
前記制御機構は、前記吐出部の吐出圧が要求吐出圧よりも高い場合に、吐出圧を第1制御油室に供給すると共に、第2制御油室内の作動油を排出するように構成したことを特徴とする可変容量形オイルポンプ。
〔請求項b〕請求項1に記載の可変容量形オイルポンプにおいて、
前記切換機構は、電気的に切換制御される電磁制御弁であることを特徴とする可変容量形オイルポンプ。
〔請求項c〕請求項2に記載の可変容量形オイルポンプにおいて、
前記第2の状態で、前記スプール弁が前記制御ばねのばね力に抗して他方向へ移動すると、前記第1給排ポートの開口面積が小さくなりように変化する一方、前記第2制御ポートからドレンポートまでの流通路の開口面積が大きく変化することを特徴とする可変容量形オイルポンプ。
〔請求項d〕請求項cに記載の可変容量形オイルポンプにおいて、
前記第2の状態で、前記スプール弁が前記制御ばねのばね力に抗して他方向へ移動すると、前記第1給排ポートの開口面積が小さくなりように変化する一方、前記第2制御ポートからドレンポートまでの流通路が開口した後にこの開口面積が大きく変化することを特徴とする可変容量形オイルポンプ。
〔請求項e〕請求項dに記載の可変容量形オイルポンプにおいて、
前記第2の状態でスプール弁が制御ばねのばね力に抗して他方向へ移動すると、前記第1給排ポートの開口面積が小さくなって閉じ、その後、前記第2制御ポートからドレンポートまでの流通路が開口すると共に、その開口面積が大きくなるように変化することを特徴とする可変容量形オイルポンプ。
〔請求項f〕請求項2に記載の可変容量形オイルポンプにおいて、
前記スプール弁は、軸方向の一端側が開放された中空状の通路孔が形成され、該通路孔の開放した一端側に前記制御ばねが配置されると共に、他端側に径方向から貫通形成された貫通孔が前記通路孔と連通しており、該貫通孔と通路孔によって前記第2制御ポートからドレンポートとの間の流通路が形成されていることを特徴とする可変容量形オイルポンプ。
〔請求項g〕請求項1〜fのいずれか一項に記載の可変容量形オイルポンプにおいて、
前記吐出部から吐出されるオイルは、内燃機関の潤滑用オイルであることを特徴とする可変容量形オイルポンプ。
〔請求項h〕請求項1〜gのいずれか一項に記載の可変容量形オイルポンプにおいて、
前記吐出部から吐出されるオイルは、内燃機関の可変動弁装置弁の駆動オイルやオイルジェットによって噴射されてピストンの冷却用に供されるオイルであることを特徴とする可変容量形オイルポンプ。