【実施例1】
【0029】
本発明の第1実施例であるガスタービン燃焼器及びガスタービン燃焼器の制御方法について
図1〜
図4を用いて説明する。
【0030】
図1は、本発明の第1実施例であるガスタービン燃焼器3を備えたガスタービンプラント1の概略構成図である。
【0031】
図1に示したように、本発明の第1実施例のガスタービン燃焼器3を備えたガスタービンプラント1においては、圧縮機2で圧縮された圧縮空気102がディフューザー9を通過後、本実施例のガスタービン燃焼器3へ流入し、外筒10とライナ12の間を通過して流下する。
【0032】
圧縮空気102の一部はライナ12の冷却空気103としてガスタービン燃焼器3の内部に形成された燃焼室5に流入する。
【0033】
そしてガスタービン燃焼器3の外筒10とライナ12の間を通過した圧縮空気102は、燃焼用空気104としてガスタービン燃焼器3に設置された空気孔プレート20に形成された多数の空気孔21に流入し、ガスタービン燃焼器3の燃焼室5に噴出する。
【0034】
燃焼用空気104は燃料ノズル22から噴出する燃料と混合してガスタービン燃焼器3の燃焼室5で燃焼し、火炎を形成する。
【0035】
本実施例のガスタービンプラント1では、ガスタービン燃焼器3の燃焼室5で燃料を燃焼用空気104と混合して燃焼させ、前記燃焼室5で発生した高温高圧の燃焼ガス110をガスタービン燃焼器3からタービン4に流入させて前記タービン4を駆動し、このタービン4の回転動力で発電機(図示せず)を駆動して電力として取り出す。
【0036】
本実施例のガスタービン燃焼器3は、
図1及び
図2のガスタービン燃焼器3の部分拡大図にそれぞれ示すように、ガスタービン燃焼器3の中心軸上に備えられたバーナ8は、ガスタービン燃焼器3と概略同軸に配置されて燃料を噴出する複数の燃料ノズル22と、前記燃料ノズル22の下流側に位置した空気孔プレート20に形成され、複数の燃料ノズル22と対応して概略同軸となるように空気孔プレート20の中心軸まわりに同心円状に1列目空気孔51、2列目空気孔52、及び3列目空気孔53を順次備え、燃焼用空気を噴出する、例えば3列配列の複数の空気孔21とから構成されている。
【0037】
そして、本実施例のガスタービン燃焼器3のバーナ8に燃料を供給する燃料供給系統は、ガスタービン燃焼器3の前記バーナ8を構成する複数の燃料ノズル22のうち、空気孔プレート20の内周側の空気孔列である1列目空気孔51に対応した燃料ノズル22に燃料を供給する燃料供給系統201と、空気孔プレート20の外周側の空気孔列である2列目空気孔52及び3列目空気孔53に対応した燃料ノズル22に燃料を供給する燃料供給系統202がそれぞれ配設されており、これらの燃料供給系統201及び燃料供給系統202は燃料遮断弁60を備えた燃料供給系統200から分岐して配設されている。
【0038】
燃料供給系統201および燃料供給系統202には燃料圧力調整弁61a、62aをそれぞれ備えており、燃料供給系統201および燃料供給系統202を通じて供給する燃料の圧力を個別に制御できるように構成されている。
【0039】
また、燃料供給系統201および燃料供給系統202の前記燃料圧力調整弁61a、62aの下流には燃料流量調整弁61b、62bをそれぞれ備えており、燃料供給系統201および燃料供給系統202を通じて供給する燃料の流量を個別に制御できるように構成されている。
【0040】
本実施例のガスタービン燃焼器3に設けたバーナ8は複数本の燃料ノズル22を備えており、それぞれの燃料ノズル22は燃料を分配する燃料ヘッダー23に接続されている。
【0041】
燃料ヘッダー23はガスタービン燃焼器3のエンドカバー7の内部に設けられており、この燃料ヘッダー23には燃料供給系統201、202から燃料がそれぞれ供給される。
【0042】
なお、本実施例のガスタービン燃焼器3では、燃料を燃料供給系統201および燃料供給系統202の2系統の燃料系統に分配して構成されているが、それ以上の数の燃料系統に分配して構成してもよい。
【0043】
このようにガスタービン燃焼器3に燃料を供給する燃料系統を複数に分配して構成すれば、燃料系統の系統数の増加により運転の自由度を拡大できる。
【0044】
本実施例のガスタービン燃焼器3では、燃料としてコークス炉ガスや製油所オフガス、石炭ガス化プラントで生成した生成ガスなどの水素含有燃料を使用でき、液化天然ガス(LNG:Liquefied Natural Gas)をはじめとする多くのガス燃料にも適用できる。
【0045】
図3に本実施例のガスタービン燃焼器3に備えた前記バーナ8を、燃料ノズル22と共に構成する該燃料ノズル22の下流側に設置された空気孔プレート20を示す。
【0046】
バーナ8を構成するこの空気孔プレート20には、複数の燃料ノズル22に対応して略同軸となるように形成された複数の空気孔21が空気孔プレート20の中心軸まわりに同心円状に複数列配置されており、
図3に示した空気孔プレート20の空気孔21では3列配置された状況を示している。
【0047】
空気孔プレート20に配置された複数列の各空気孔21は、各列のピッチ円周方向にそれぞれ傾斜しており、前記各空気孔21から噴出する燃焼用空気104に空気孔プレート20の中心軸周りに旋回がかかるよう適度な旋回角を付与している。
【0048】
図2に示した本実施例のガスタービン燃焼器3の断面構造から理解できるように、ガスタービン燃焼器3に備えたバーナ8を構成する空気孔プレート20に形成した空気孔21は、ガスタービン燃焼器3の円筒状のライナ12と同軸に配設されているため、空気孔プレート20の各列の空気孔21をピッチ円周方向にそれぞれ傾斜するように形成することで、前記各空気孔21を通じてガスタービン燃焼器3の燃焼室5内に供給する燃焼用空気104に旋回を与えて、ライナ12内部の燃焼室5の中心軸周りに燃焼用空気104の旋回が作用した循環渦80を形成でき、ガスタービン燃焼器3の燃焼室5内に形成される火炎を安定化することが可能となる。
【0049】
尚、
図3に示した空気孔プレート20に配置された3列の各空気孔21は、空気孔プレート20の中心から半径方向外側に向けて、1列目空気孔51、2列目空気孔52、3列目空気孔53から成る3列の空気孔21の列で構成されているが、空気孔プレート20には、同心円状に配置した空気孔21の列が2列以上配設されていることが望ましく、更に、前記各列の空気孔21の空気孔数は4孔以上備えていることが望ましい。
【0050】
図1及び
図2に示した本実施例のガスタービン燃焼器3の部分拡大図において、ガスタービン燃焼器3のエンドカバー7には液体燃料の蒸発液滴を着火させる抵抗発熱体であるグロープラグ300が設置されている。
【0051】
この抵抗発熱体であるグロープラグ300は、燃料ノズル22と略平行に該グロープラグ300の中心軸が空気孔プレート20に配設した1列目空気孔51よりも軸心側となる空気孔プレート20の中心軸上に位置するように配置し、前記グロープラグ300先端が空気孔プレート20を貫通して燃焼室5に面した空気孔プレート20の出口面から前記燃焼室5側へ突出するように配設させている。
【0052】
即ち、本実施例のガスタービン燃焼器3では、空気孔プレート20の中心上に液体燃料の蒸発液滴を着火させるグロープラグ300を配置している構造である。
【0053】
次に、本実施例のガスタービン燃焼器3における作用効果を説明する。
【0054】
本実施例のガスタービン燃焼器3で燃料を燃焼させる場合、
図2に示したようにガスタービン燃焼器3に設置した空気孔プレート20の出口面に形成した空気孔21の空気孔列間の下流に後流と呼ばれる循環流を伴う低流速領域90が形成される。
【0055】
この低流速領域90は燃焼室5の内部に形成された循環流80である後流によって、空気孔プレート20の各空気孔21から噴出した燃料と空気の混合気を巻き込んでいるため、着火する可能性がある。
【0056】
本実施例のガスタービン燃焼器3において、例えば比較例のガスタービン燃焼器と同じ状況となるように、空気孔プレート20上に設置した抵抗発熱体であるグロープラグ300を稼働させていない態様のガスタービン燃焼器3では、水素含有燃料をガスタービン燃焼器3の燃料に使用する場合、水素は燃料を着火するために必要な最小着火エネルギが低く着火しやすくなる上に、可燃範囲が広がるため、ガスタービン燃焼器3の燃焼室5内の上流側に位置する空気孔プレート20に火炎が接近しやすくなり、燃焼室5内に形成される火炎面83aが
図2に破線で示した火炎面83bへ変化することになる。
【0057】
また高温化したガスタービンに水素含有燃料を使用する場合も、圧縮空気102の温度が高くなるため、着火しやすくなる上に可燃範囲が広がり、火炎が空気孔プレート20に接近しやすくなる。
【0058】
特にガス生成設備の負荷変動により燃料中の水素濃度が増加すると、水素は燃焼速度が速いため、空気孔プレート20へ接近した火炎が空気孔プレート20の空気孔列間の下流に形成する低流速領域90の着火源となって混合気が着火する可能性が高くなる。
【0059】
仮に混合気に着火した場合、混合気の着火は圧力波を発生させ、低流速領域90や空気孔21及び燃料ノズル22の出口における圧力が瞬間的に上昇する。
【0060】
燃料ノズル22の出口の圧力が上昇すると、燃料供給差圧が低下して、空気に対する燃料の比率(以下、燃空比と呼ぶ)が減少する。
【0061】
この燃空比が減少する燃料希薄の条件では、火炎面における燃空比の減少に伴い燃焼速度が減少するため、火炎面は燃焼室5下流に後退する。火炎面が燃焼室5下流に後退すると、燃料供給差圧の低下は解消され、火炎面は再び空気孔プレート20に接近する。
【0062】
この際、空気孔21の空気孔列間の下流に形成された低流速領域90に存在する混合気が着火し、上記の現象が繰り返された結果、圧力変動が周期的に発生する燃焼振動と呼ばれる不安定燃焼状態に陥る。
【0063】
また、燃焼振動発生時の火炎面は空気孔プレート20出口面に周期的に接近しており、空気孔プレート20の各空気孔21から噴出した燃料と空気の混合気が、火炎面に到達するまでの距離が短くなる。
【0064】
混合気の混合度が低下すると、混合気中の局所的な燃空比が増加するため、空気孔プレート20出口付近に局所高温部が発生し、周期的な熱負荷によりガスタービン燃焼器の構造物としての信頼性が低下するとともに、時間平均的なNOx排出量が増加することになる。
【0065】
そこで本実施例のガスタービン燃焼器3においては、前述した様に空気孔プレート20の軸心となる同心円に配置された空気孔21の同心円中心軸上に液体燃料の蒸発液滴を着火させる抵抗発熱体であるグロープラグ300を設けた構成を採用し、制御装置400の制御によって定電圧回路500からグロープラグ300に電圧を印加して該グロープラグ300の先端温度を高め、グロープラグ300の先端を保炎の基点として火炎を形成して燃料を燃焼させるようにしたことで、グロープラグ300の先端が燃焼室5内に形成される火炎面83aの保炎点となり、空気孔プレート20の出口面に対するグロープラグ300の先端位置までの距離Lだけ火炎面83aと空気孔プレート20出口面との間の距離を増加させている。
【0066】
燃焼室5内に形成される火炎面83aが空気孔プレート20出口面から離れているほど、空気孔プレート20出口面の下流で生じる低流速領域90に存在する混合気が着火する確率が低下するため、ガスタービン燃焼器3の燃焼振動の発生を抑制することができる。
【0067】
また、燃焼室5内に形成される火炎面83aと空気孔プレート20出口面との距離Lが増加することで、空気孔プレート20の各空気孔21から噴出した燃料と空気の混合気の混合度が増加し、混合気が火炎面83aに到達した際の燃空比は低下するため、局所高温部が減少することによりNOx排出量は低減する。
【0068】
同時に空気孔プレート20が火炎面83aから受ける熱負荷も低下するため、ガスタービン燃焼器3の構造物の信頼性を確保することが可能となる。
【0069】
図4に本実施例のガスタービン燃焼器3の空気孔プレート20の軸心に設置した抵抗発熱体であるグロープラグ300の先端温度に対する内部抵抗値の変化と、定電圧印加時の電流特性を示す。
【0070】
図4に示した先端温度に対する内部抵抗値の変化と、定電圧印加時の電流特性から理解できるように、本実施例のガスタービン燃焼器3に設置した抵抗発熱体であるグロープラグ300は、先端温度Tpの増加に伴い内部抵抗Rpが増加する特性を有している。
【0071】
したがってグロープラグ300に制御装置400の制御によって定電圧回路500から一定の電圧を印加した場合、グロープラグ300先端温度に応じて印加電流が変化し、(内部抵抗)×(印加電流)
2のジュール熱がグロープラグ300先端から放出される。
【0072】
そのため、ガス生成設備の負荷変動により燃料中の水素濃度が減少し、目標温度Tpよりガスタービン燃焼器3の火炎温度が低下する場合においても、目標温度Tpを実現する一定電圧の印加電圧を抵抗発熱体であるグロープラグ300に印加することにより、グロープラグ先端から放出するジュール熱が増加し、目標温度Tpへグロープラグ300の先端温度を高めることが可能である。
【0073】
また、グロープラグ300の先端温度が目標温度Tpを超える状況では、内部抵抗の増加によりジュール熱は著しく低下するため、一定電圧を印加してもグロープラグ300の先端が内部回路の発熱により過熱されることはない。
【0074】
グロープラグ300への印加電圧は、常に一定の電圧を加える、もしくは一定電圧を特定の周波数で間欠的に加えればよく、制御装置400によってグロープラグ300への印加電圧の電流値(印加電流)Ipを出力として抽出して、定電圧回路500の印加電圧を前記制御装置400によってグロープラグ300に対して一定の電圧を加える、もしくは一定電圧を特定の周波数で間欠的に加えるように制御することで、グロープラグ300の先端温度及び火炎基部の温度を監視し、前記グロープラグ300の先端温度を適切な温度に制御することが可能となる。
【0075】
また、ガスタービン燃焼器3の燃焼室5へ供給する燃焼用空気104の温度が低く、ガス燃料が着火困難な場合においても、制御装置400で制御した定電圧回路500の印加電圧をグロープラグ300に一定電圧を印加することで、グロープラグ300先端の温度を目的の燃焼ガス110と同等の温度まで加熱することができるため、グロープラグ300先端を火炎の基点として安定に着火することが可能となる。
【0076】
なお、前記したグロープラグ300に限らず、温度上昇に対して内部抵抗が増加する特性を有する高温部材であれば抵抗発熱体であるグロープラグ300に代えて使用しても同様の作用効果が得られる。
【0077】
本実施例によれば、抵抗発熱体の先端を保炎の基点として火炎を形成して燃焼安定性を維持するとともに、NOx排出量を低減できるガスタービン燃焼器及びガスタービン燃焼器の制御方法が実現できる。
【実施例2】
【0078】
本発明の第2実施例であるガスタービン燃焼器及びガスタービン燃焼器の制御方法について
図5〜
図7を用いて説明する。
【0079】
本実施例であるガスタービン燃焼器及びガスタービン燃焼器の制御方法は、
図1〜
図4に示した第1実施例のガスタービン燃焼器及びガスタービン燃焼器の制御方法と基本的な構成は類似しているので、両実施例に共通した構成の説明は省略し、相違する部分についてのみ以下に説明する。
【0080】
図5〜
図7に示したように、本発明の第2実施例であるガスタービン燃焼器3においては、高水素濃度の水素含有燃料を燃料のガスタービン発電プラントや、大出力、高温化のガスタービン発電プラント等との多様な運用形態に対応するため、第1実施例のガスタービン燃焼器に示す概略同軸に配置された空気孔プレート20に形成された3列の空気孔21と燃料ノズル22から構成されるバーナ8として、ガスタービン燃焼器3の軸心近傍の中央に1個の中央バーナ32を配置し、ガスタービン燃焼器3の軸心の中央バーナ32の周囲に6個の外周バーナ33を配置した構造を採用することよって、多様なガスタービン負荷に対応できるガスタービン燃焼器3として構成されている。
【0081】
また、本実施例のガスタービン燃焼器3では、ガスタービン燃焼器3の軸心近傍の中央に設けられた中央バーナ32の軸心中央にガスタービン起動用燃料ノズル24を有しており、ガスタービン燃焼器3のエンドカバー7には6個の外周バーナ33に対して抵抗発熱体であるグロープラグ300がそれぞれ設置されている。
【0082】
そして前記グロープラグ300は、6個の各外周バーナ33において、燃料ノズル22と略平行に該グロープラグ300の中心軸が空気孔プレート20に配設した1列目空気孔51よりも軸心側となる空気孔プレート20の中心軸上に位置するように配置し、前記グロープラグ300先端が空気孔プレート20を貫通して燃焼室5に面した空気孔プレート20の出口面から前記燃焼室5側へ突出するように配設させている。即ち、本実施例のガスタービン燃焼器3では、空気孔プレート20上に6個の各外周バーナ33に対応してグロープラグ300をそれぞれ配置している構造である。
【0083】
そして本実施例のガスタービン燃焼器3では、1個の中央バーナ32と、6個の外周バーナ33に供給する燃料系統を分割し、よりきめ細かく燃料配分を制御できるように工夫していることが第1実施例のガスタービン燃焼器とは異なっている。
【0084】
このため本実施例のガスタービン燃焼器3は、第1実施例のガスタービン燃焼器よりも高水素濃度の水素含有燃料を燃料とするガスタービン発電プラントや、大出力、高温化のガスタービン発電プラントに好適である。
【0085】
図6は本実施例のガスタービン燃焼器3の燃焼器軸方向断面を示す。
図6に示した本実施例のガスタービン燃焼器3は、エンドカバー7、共通のバーナ8を構成する1個の中央バーナ32及び6個の外周バーナ33と、前記各バーナ32、33に対応して設置された燃料ノズル22及び空気孔プレート20の配置を示した部分断面構造である。
【0086】
本実施例のガスタービン燃焼器3では、
図6に共通のバーナ8を構成する中央バーナ32及び外周バーナ33に対応して、空気孔プレート20を燃焼室5側からみた正面図で示すように、第1実施例のガスタービン燃焼器3における空気孔プレート20と同じ構成のものを複数個配置して構成している。
【0087】
すなわち、本実施例のガスタービン燃焼器3では、共通のバーナ8を構成するバーナとして、ガスタービン燃焼器3の中心に位置する1個の中央バーナ32と、中央バーナ32の外側に位置する6個の外周バーナ33を備えている。
【0088】
そして前記した1個の中央バーナ32と6個の外周バーナ33に対応した空気孔プレート20の構造として、
図6に示したように前記空気孔プレート20には複数の空気孔21が、中央バーナ32及び外周バーナ33に対応した空気孔プレート20の位置に、その中心軸まわりに同心円状に複数列それぞれ配置されており、
図6に示した本実施例のガスタービン燃焼器3における空気孔プレート20の空気孔21では、1個の中央バーナ32及び6個の外周バーナ33に対応して空気孔21を中心から半径方向外側に向けて、それぞれ、1列目空気孔51、2列目空気孔52、3列目空気孔53から成る3列の空気孔21の列で構成された構成を示している。
【0089】
更に、空気孔プレート20に設けた各空気孔21の中心軸は各列のピッチ円周方向に傾斜して形成されており、空気孔21を通過した流れは空気孔21の下流で螺旋状に旋回し、旋回流が形成される。
【0090】
本実施例のガスタービン燃焼器3は、
図6に示すように中央バーナ32は2つの燃料系統203、206に接続されており、また、6個の外周バーナ33は、別の2つの燃料系統204、205にそれぞれ接続されており、それぞれ独立に燃料流量を制御できるようになっている。
【0091】
即ち、本実施例のガスタービン燃焼器3に燃料を供給する燃料供給系統は、ガスタービン燃焼器3の前記中央バーナ23を構成する複数の燃料ノズル22のうち、軸心に設置された起動用燃料ノズル24に燃料を供給するガスタービン起動用燃料供給系統206と、空気孔プレート20の2列目空気孔52及び3列目空気孔53に対応した燃料ノズル22に燃料を供給する中央バーナ燃料供給系統203がそれぞれ配設されており、これらのガスタービン起動用燃料供給系統206及び中央バーナ燃料供給系統203は燃料遮断弁60を備えた燃料供給系統200から分岐して配設している。
【0092】
また、ガスタービン燃焼器3の前記外周バーナ33を構成する複数の燃料ノズル22のうち、空気孔プレート20の1列目空気孔51に対応した燃料ノズル22に燃料を供給する外周バーナ内周燃料供給系統204と、複数の燃料ノズル22のうち、空気孔プレート20の2列目空気孔52及び3列目空気孔53に対応した燃料ノズル22に燃料を供給する外周バーナ外周燃料供給系統205がそれぞれ配設されており、これらの外周バーナ内周燃料供給系統204及び外周バーナ外周燃料供給系統205は燃料遮断弁60を備えた燃料供給系統200から分岐して配設している。
【0093】
本実施例のガスタービン燃焼器3の軸心に1個備えた中央バーナ32に対しては中央バーナ燃料系統203とガスタービン起動用燃料系統206が接続されており、主にガスタービンの起動運転に使用するとともに、負荷運転の際には燃焼器全体の燃焼安定性を確保するための運用をする。
【0094】
なお、本実施例のガスタービン燃焼器3ではガスタービン起動用燃料系統206に供給する燃料は軽油、重油をはじめとする液体燃料とする。
【0095】
一方、本実施例のガスタービン燃焼器3における中央バーナ32の外周側に6個備えた外周バーナ33には、空気孔プレート20の1列目空気孔51に対応した燃料ノズル22に燃料を供給する外周バーナ内周燃料供給系統204と、空気孔プレート20の2列目空気孔52及び3列目空気孔53に対応した燃料ノズル22に燃料を供給する外周バーナ外周燃料供給系統205が接続されている。
【0096】
本実施例のガスタービン燃焼器3において、外周バーナ33の空気孔プレート20の1列目空気孔51に対応した同心円上に配置された同軸噴流群は、火炎の起点を形成するので、特に燃焼安定性に関係する。
【0097】
そこで本実施例のガスタービン燃焼器3のように、外周バーナ32の1列目空気孔51(内周側)に対応した燃料ノズル22に供給するため、外周バーナ内周燃料供給系統204を通じて供給する燃料流量を独立に制御することで、火炎の起点を形成でき、より広い負荷範囲に対して安定な燃焼を維持することができる。
【0098】
つまり、本実施例のガスタービン燃焼器3においては、1つの中央バーナ32と、この中央バーナ32の外周側に複数(6個)設置した外周バーナ33を備える空気孔プレート20に対して、各外周バーナ33に同心円状に複数列(3列)設けられた空気孔21の同心円中心軸上に液体燃料の蒸発液滴を着火させる抵抗発熱体であるグロープラグ300の中心軸を設け、グロープラグ300の先端が燃焼室5へ突出するように配設していることである。
【0099】
本実施例のガスタービン燃焼器3においても、
図1〜
図3に示した第1実施例のガスタービン燃焼器3と同様に、6項配設した各外周バーナ33に同心円に配置された空気孔21の同心円中心軸上に液体燃料の蒸発液滴を着火させる抵抗発熱体であるグロープラグ300をそれぞれ設けた構成とすることで、各々の外周バーナ33で第1実施例のガスタービン燃焼器3と同様の作用効果の他、以下の効果が得られる。
【0100】
図5及び
図6に示した構成の本実施例のガスタービン燃焼器3と、この抵抗発熱体であるグロープラグ300を備えていずに燃焼室の下流側に点火栓を備えた構成の比較例のガスタービン燃焼器におけるガスタービン回転数及びガスタービン負荷に対する燃料流量の変化、並びにガスタービン燃焼器の燃焼形態A、B、Cを
図7に示す。
【0101】
尚、
図7の下部に示したガスタービン燃焼器の燃焼形態A、B、Cにおいて、空気孔プレート20に形成した中央バーナ32の起動用燃料ノズル24と各空気孔52〜53および外周バーナ33の各空気孔51〜53をそれぞれ黒く表示しているのは、対応する前記燃料ノズルが稼働している状態を示している。
【0102】
図7に示したように、ガス燃料を燃焼する本実施例のガスタービン燃焼器3の中央バーナ32および外周バーナ33は、安定に運用できる範囲が液体燃料を拡散燃焼する起動用燃料ノズル24に比較して狭いので、ガスタービンの回転数が定格まで昇速するまでは、
図7にガスタービン燃焼器の燃焼形態Aとして実線で示したように、ガスタービン起動用燃料供給系統206を通じて液体燃料を供給し、抵抗発熱体であるグロープラグ300に制御装置400の制御によって定電圧回路500から電圧を印加して該グロープラグ300の先端温度を高め、グロープラグ300の先端を保炎の基点として火炎を形成して燃料を燃焼させ、中央バーナ32の軸心に設置した起動用燃料ノズル24を単独で稼働してガスタービン燃焼器3を起動する。
【0103】
次に、タービン回転数が定格まで昇速した以降のガスタービンの負荷が所定の部分負荷に達するまでのガスタービン燃焼器の運転は、燃焼形態Aから切り替えて
図7に実線で燃焼形態Bとして示したように、中央バーナ32を構成する空気孔プレート20の2列目空気孔52及び3列目空気孔53に対応した燃料ノズル22に中央バーナ燃料供給系統203を通じて中央バーナ32に燃料を供給し、同時に、6個の外周バーナ33を構成する空気孔プレート20の1列目空気孔51に対応した燃料ノズル22に外周バーナ内周燃料供給系統204を通じて外周バーナ33の内周列に保炎に必要な燃料流量を供給して燃焼させる。
【0104】
更に、ガスタービンの負荷が所定の部分負荷から増加して定格負荷に達するまでのガスタービン燃焼器の運転は、燃焼形態Bからガスタービンが所定の部分負荷に到達した時点で切り替えて、
図7に実線で燃焼形態Cとして示したように、中央バーナ32を構成する空気孔プレート20の2列目空気孔52及び3列目空気孔53に対応した燃料ノズル22に中央バーナ燃料供給系統203を通じて燃料を供給して燃焼させる。
【0105】
同時に、6個の外周バーナ33を構成する空気孔プレート20の1列目空気孔51に対応した燃料ノズル22に外周バーナ内周燃料供給系統204を通じて外周バーナ33の内周列に燃料を供給して燃焼させると共に、外周バーナ33を構成する空気孔プレート20の2列目空気孔52及び3列目空気孔53に対応した燃料ノズル22に外周バーナ外周燃料供給系統205を通じて外周バーナ33の外周列に燃料を供給して燃焼させて、外周バーナ33の保炎を担う内周列の火炎を外周列に渡して、ガスタービン燃焼器の運転形態を燃焼形態Bから燃焼形態Cに切替える。
【0106】
そしてこの燃焼形態Cで定格負荷に至るまでガスタービン負荷を増加させて運転するので、ガスタービン燃焼器の前記燃焼形態Cがガスタービン燃焼器3の運用負荷帯となる。
【0107】
ところで、
図7に破線で示した比較例のガスタービン燃焼器では、ガスタービン起動時に起動用燃料ノズルから液体燃料を燃焼室へ噴射し、点火栓の先端から発生する火花を用いて着火させる構成となっている。
【0108】
点火栓先端が常時燃焼室に突出した状態では信頼性が低下する可能性があるため、点火栓に設けた稼動部で着火時のみ点火栓を燃焼室へ挿入する構成となっている。
【0109】
そして比較例のガスタービン燃焼器では、ガスタービン回転数が
図7に破線で燃焼形態Aとして示したように、ガスタービンが定格まで昇速した後、ガス燃料の安定運用範囲に到達した段階で中央バーナ32及び外周バーナ33の内周列にガス燃料を供給して燃焼させ、その後、
図7に破線で示したように、ガスタービン燃焼器を燃焼形態Aから燃焼形態Bへ切替えてガスタービンの低負荷運転を行う。
【0110】
図7に破線で示した比較例のガスタービン燃焼器の運転形態においては、燃焼状態Bから燃焼状態Cへの切替えは、外周バーナ33の外周列空気孔21へ供給するガス燃料がガスタービンの負荷がある程度上昇した安定運用範囲に到達した後に行うので、この燃焼状態Cの領域が狭くなり、ガスタービン燃焼器の運用負荷帯が狭くならざるを得ない。
【0111】
これに対して、前述した
図5及び
図6に示した構成の本実施例のガスタービン燃焼器3においては、点火栓の設置は不要であり、外周バーナ33の中心軸上に設けられた抵抗発熱体であるグロープラグ300に制御装置400の制御によって定電圧回路500から電圧を印加して該グロープラグ300の先端温度を高め、グロープラグ300の先端を保炎の基点として火炎を形成するようにしているので、ガスタービン燃焼器3がガスタービンを昇速させる燃焼形態Aの段階から、中央バーナ32の起動用燃料ノズル24から燃焼室5内に噴霧する液体燃料の液滴をグロープラグ300によって着火させて燃焼させ、ガスタービンを昇速するガスタービン燃焼器3の燃焼形態Aの運転を行っている。
【0112】
また本実施例のガスタービン燃焼器3では、抵抗発熱体であるグロープラグ300は、燃焼室5の内部の外周側においてライナ12近傍を通過する外側循環流81によってグロープラグ300の先端へ到達した液体燃料の蒸発液滴を着火させて燃焼させている。
【0113】
本実施例のガスタービン燃焼器3においては、
図7に実線で示したように、タービン回転数が定格まで昇速した以降のガスタービン燃焼器3の運転は、比較例のガスタービン燃焼器と同様に、ガスタービンを定格速度まで昇速させた後に所望の部分負荷に達するまで運転させる燃焼形態Bにおいては、ガスタービン燃焼器3の中央バーナ32と外周バーナ33の内周列に保炎に必要な燃料流量を供給して燃焼させる。
【0114】
その後、ガスタービンが所望の部分負荷から定格負荷に至るまで運転させる燃焼形態Cにおいては、制御装置400を制御して定電圧回路500から抵抗発熱体のグロープラグ300に継続して電圧を印加し、グロープラグ300によって燃焼室5内に噴霧された燃料に着火させて燃焼させるので、ガスタービン燃焼器3の運転形態を、ガスタービンが所望の部分負荷に到達した時点で燃焼状態Bから、中央バーナ32と外周バーナ33の内周列及び外周列の全てに燃焼に必要な燃料流量を供給する燃焼状態Cの運転態様に切替えてガスタービン燃焼器3の運転を行う。
【0115】
この結果、
図7に実線で示した本実施例のガスタービン燃焼器3においては、破線で示した比較例のガスタービン燃焼器と比べて、ガスタービン燃焼器3の運転を、より低いガスタービン負荷で燃焼状態Bから燃焼状態Cへの運転形態の切替えを行うことが可能となる。
【0116】
即ち、本実施例のガスタービン燃焼器3による運転では、制御装置400の制御によって定電圧回路500から抵抗発熱体であるグロープラグ300に継続的に電圧を印加して該グロープラグ300の先端温度を高めることにより、
図5に示したようにガスタービン燃焼器3の燃焼室5の外周側でライナ12近傍を通過する外側循環流81によりグロープラグ300先端へ到達した液体燃料の蒸発液滴を着火させることから、ガスタービン燃焼器3の運転形態を燃焼状態Bから燃焼状態Cへの切替えが、破線で示した比較例のガスタービン燃焼器の運転形態と比べて、実線で示した本実施例のガスタービン燃焼器3の運転形態では、より低い所望のガスタービン負荷で行うことが可能となる。
【0117】
そして、本実施例のガスタービン燃焼器3では、前記燃焼状態Cでガスタービンの負荷を所望の低負荷から定格負荷に至るまで運転を行うので、ガスタービン燃焼器の運用負荷帯を拡大させることが可能となる。
【0118】
また、
図7に示した本実施例のガスタービン燃焼器3では、運転形態を燃焼状態Bから燃焼状態Cへの切替えにおいても、抵抗発熱体であるグロープラグ300の先端の放熱で外周バーナ33の外周列へ熱を供給できるため、比較例のガスタービン燃焼器に比べて、より低いガスタービン負荷の段階で、燃焼状態Bから燃焼状態Cへ運転形態の切替えが可能となるので、前記燃焼状態Cの運転形態におけるガスタービン燃焼器の運用負荷帯を拡大することができる。
【0119】
上記したように、抵抗発熱体であるグロープラグ300を外周バーナ33の同心円中心軸上に設けた本実施例のガスタービン燃焼器では、前述した第1実施例のガスタービン燃焼器の作用効果と同様に、抵抗発熱体の先端を保炎の基点として火炎を形成して燃焼安定性を維持するとともに、NOx排出量を低減できるガスタービン燃焼器及びガスタービン燃焼器の制御方法が実現できる。
【0120】
本実施例のガスタービン燃焼器では、上記した作用効果に加えて、更に、ガスタービン燃焼器の運転形態である燃焼状態Bから燃焼状態Cへの切替え操作がガスタービン負荷が低負荷の段階で切り替えることが可能となるので、前記燃焼状態Cの領域が広がりガスタービン燃焼器の運用負荷帯をより拡大して運用することができる。
【0121】
尚、説明は省略するが、本実施例のガスタービン燃焼器においても、
図4に示した抵抗発熱体であるグロープラグ300の先端温度に対する内部抵抗値の変化と、定電圧印加時の電流特性は同じである。
【0122】
即ち、本実施例のガスタービン燃焼器3でも、ガスタービン燃焼器3の燃焼室5へ供給する燃焼用空気104の温度が低く、ガス燃料が着火困難な場合は、
図5の本実施例のガスタービン燃焼器3の構成に示したように、制御装置400で制御した定電圧回路500の印加電圧を抵抗発熱体である前記グロープラグ300に一定電圧を印加するように構成しているので、グロープラグ300先端の温度を目的の燃焼ガス110と同等の温度まで加熱することができるため、抵抗発熱体300の先端を火炎の基点として燃料に着火でき、燃料を安定して燃焼させることが可能となる。
【0123】
本実施例によれば、抵抗発熱体先端を保炎の基点として火炎を形成して燃焼安定性を維持するとともに、NOx排出量を低減できるガスタービン燃焼器及びガスタービン燃焼器の制御方法が実現できる。
【0124】
本実施例によれば、更に、ガスタービン燃焼器の運転形態である燃焼状態Bから燃焼状態Cへの切替え操作がガスタービン負荷が低負荷の段階で切り替えることが可能となるので、前記燃焼状態Cの領域が広がりガスタービン燃焼器の運用負荷帯をより拡大して運用することができる。