【実施例】
【0031】
以下、本発明の内容を以下の実施例、比較例等を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。なお、処方中、特に記載がない限り単位は「質量%」とする。
【0032】
下記の処方に基づき、本発明にかかるカロテノイド色素含有製剤を調製した(実施例1〜7)。処方中、実施例に用いたガティガム、並びに比較例に用いた界面活性剤、アラビアガム、加工澱粉、ゼラチン、ジェランガムを「付着防止剤」と称する。添加量などの詳細については、表1に示す。
【0033】
<カロテノイド色素含有製剤の調製>
・リコピン
調製方法1
結晶のリコピン25gをエタノール225gに添加混合し、湿式摩砕機ダイノミル(WAB社製ダイノミル)を用い2時間粉砕しリコピン結晶粉砕物を調製した。
【0034】
調製方法2
下記表1に従い、水にガティガムRD(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)を配合して90℃に過熱溶解後冷却したものにリコピン結晶粉砕物を添加し、高圧ホモジナイザーにて圧力350kg/cm
2で分散均一化処理して、カロテノイド色素含有製剤を調製した。カロテノイド色素含有製剤の粒度分布をレーザー解析式粒度分布計(SALD−2100 島津製作所社製)にて測定した。
【0035】
【表1】
【0036】
比較例1:
着色料製剤「リコピンベースNO.34824(三栄源エフ・エフ・アイ社製)」(リコピン結晶をアラビアガムで分散した製剤。リコピン含有量1質量%)
【0037】
比較例2:
着色料製剤「リコピンベースNO.35153(三栄源エフ・エフ・アイ社製)」(リコピン結晶をグリセリン脂肪酸エステルで分散した製剤。リコピン含有量2.5質量%)
【0038】
比較例3:
上述のリコピン結晶粉砕物100gを水700gに加工澱粉(NSC社製、ピュリティBE)200gを配合して溶解したものに添加し、高圧ホモジナイザーにて圧力350kg/cm
2で分散均一化処理して、比較例3の製剤を調製した。比較例3の製剤の粒度分布をレーザー解析式粒度分布計(SALD−2100 島津製作所社製)にて測定したところ0.50μmであった。リコピン含量は1質量%であった。
【0039】
比較例4:
上述のリコピン結晶粉砕物50gを水900gにゼラチン(ゼライス株式会社、ゼラチンF−3578)50gを配合して溶解したものに添加し、高圧ホモジナイザーにて圧力350kg/cm
2で分散均一化処理して、比較例4の製剤を調製した。比較例4の製剤の粒度分布をレーザー解析式粒度分布計(SALD−2100 島津製作所社製)にて測定したところ0.55μmであった。リコピン含量は0.5質量%であった。
【0040】
比較例5:
上述のリコピン結晶粉砕物10gを水988gにジェランガム(CP KELCO社製、ケルコゲルLT−100)2gを配合して溶解したものに添加し、高圧ホモジナイザーにて圧力350kg/cm
2で分散均一化処理して、比較例5の製剤を調製した。比較例5の製剤の粒度分布をレーザー解析式粒度分布計(SALD−2100 島津製作所社製)にて測定したところ0.65μmであった。リコピン含量は0.1質量%であった。
【0041】
・β−カロチン
実施例8:
結晶のβ−カロチン25gをプロピレングリコール225gに添加混合し、湿式摩砕機ダイノミル(WAB社製ダイノミル)を用い1時間粉砕し、カロチン結晶粉砕物を調製した。水750gにガティガムRD(三栄源エフ・エフ・アイ社製)150gを配合して90℃に過熱溶解後冷却したものにカロチン結晶粉砕物100g、を添加し、高圧ホモジナイザーにて圧力350kg/cm
2で分散均一化処理して、実施例8の製剤を調製した。得られた実施例8の製剤の粒度分布を、レーザー解析式粒度分布計(SALD−2100 島津製作所社製)にて測定したところ0.45μmであった。β−カロチン含量は1質量%であった。
【0042】
比較例6:
水740gにアラビアガム250gを配合して溶解した。ここにβ-カロチン結晶10gを添加混合し、湿式摩砕機ダイノミル(WAB社製ダイノミル)を用い1時間粉砕し、比較例6の製剤を調製した。比較例6の製剤の粒度分布をレーザー解析式粒度分布計(SALD−2100 島津製作所社製)にて測定したところ0.48μmであった。β−カロチン含量は1質量%であった。
【0043】
・アスタキサンチン
実施例9:
水700gにガティガムRD(三栄源エフ・エフ・アイ社製)150gを配合して90℃に過熱溶解後冷却したものにヘマトコッカス藻色素(アスタキサンチン含量10質量%)50g、中鎖トリグリセライド100gを混合したものを添加し、撹拌機にて5000rpmで5分間混合した。この液を高圧ホモジナイザーにて圧力350kg/cm
2で3回乳化し、乳化組成物(実施例9)を調製した。この実施例9の製剤の粒度分布をレーザー回折式粒度分布測定装置マイクロトラックMT−3000II(MicrotoracINC.製)にて測定したところ、0.55μmであった。またアスタキンサンチン含量は0.5質量%であった。
【0044】
比較例7:
水650gにアラビアガム(三栄源エフ・エフ・アイ社製、スーパーガムEM2)200gを配合して90℃に過熱溶解後冷却したものにヘマトコッカス藻色素(アスタキサンチン含量10質量%)50g、中鎖トリグリセライド100gを混合したものを添加し、撹拌機にて5000rpmで5分間混合した。この液を高圧ホモジナイザーにて圧力350kg/cm
2で3回乳化し、乳化組成物(比較例7)を調製した。この比較例7の製剤の粒度分布をレーザー回折式粒度分布測定装置マイクロトラックMT-3000II(Microtorac INC.製)にて測定したところ、0.53μmであった。アスタキサンチン含量は0.5質量%であった。
【0045】
比較例8:
水650gにデカグリセリンオレイン酸エステル150gを配合して90℃に過熱溶解後冷却したものにヘマトコッカス藻色素(アスタキサンチン含量10質量%)50g、中鎖トリグリセライド100gを混合したものを添加し、撹拌機にて5000rpmで5分間混合した。この液を高圧ホモジナイザーにて圧力350kg/cm
2で3回乳化し、乳化組成物(比較例8)を調製した。この比較例8の粒度分布をレーザー回折式粒度分布測定装置マイクロトラックMT-3000II(Microtorac INC.製)にて測定したところ、0.15μmであった。アスタキサンチン含量は0.5質量%であった。
【0046】
<飲料の調製方法>
先に調製した実施例1〜9および比較例1〜8のカロテノイド色素含有製剤を、カロテノイド含量が0.1質量%となるように希釈し、下記の組成の飲料を調製した。
【0047】
(組成)
果糖ブドウ糖液糖(Brix75) 13.3(g)
クエン酸(無水) 0.2
クエン酸三ナトリウム 0.08
ビタミンC 0.02
カロテノイド色素含有製剤 1.15
イオン交換水 85.25
合計 100
【0048】
イオン交換水にクエン酸(無水)、クエン酸三ナトリウム、ビタミンCを加え、撹拌溶解し、果糖ブドウ糖液糖、カロテノイド色素含有製剤を添加した。93℃達温にて殺菌し、500mlペットボトルに500gホットパック充填した。
【0049】
<評価方法>
実際の飲料が製造され市場に流通する状況を想定し、次の条件による試験を行ってカロテノイド色素の付着の程度を測定した。
(1)振とう試験:調製した飲料を縦置き、140ストローク、12時間振とうした。
(2)輸送試験:調製した飲料をトラック輸送にて大阪−東京間を往復した。
(3)通気試験:3Lステンレスジョッキに2L飲料を充填し、93℃達温後87℃まで温度を下げ、通気量1.8L/Min、1時間通気した。
【0050】
<付着量測定>
上記試験を経た各飲料を容器から排出し、水20mlですすぎ洗いをした後、60℃にて乾燥した。ヘキサンを添加しながら付着したカロテノイド色素を溶解し、硫酸ナトリウムを加えて脱水後、綿栓ろ過し、エバポレーターにて濃縮した。
【0051】
<リコピンの測定>
得られた濃縮物をヘキサンにて10mlにメスアップした液を、ヘキサンを対照として、470nm付近の極大吸収波長における吸光度を測定し、次式によりリコピンの付着量を算出した(リコピン吸光係数(1%、1cm)=3450)。その結果を表2に示す。
【0052】
リコピン付着量(μg/1本)=(吸光度A×104×メスアップ量(ml)/3450)
【0053】
<β−カロチンの測定>
得られた濃縮物をシクロヘキサンにて10mlにメスアップした液を、シクロヘキサンを対照として、450nm付近の極大吸収波長における吸光度を測定し、次式によりβ−カロチンの付着量を算出した(β−カロチン吸光係数(1%、1cm)=2500)。その結果を表2に示す。
【0054】
β−カロチン付着量(μg/1本)=(吸光度A×104×メスアップ量(ml)/2500)
【0055】
<アスタキサンチンの測定>
得られた濃縮物をアセトンにて10mlにメスアップした液を、478nm付近の極大吸収波長における吸光度を測定し、次式によりアスタキサンチン付着量を算出した(アスタキサンチン吸光係数(1%、1cm)=2100)。その結果を表2に示す。
【0056】
アスタキサンチン付着量(μg/1本)=(吸光度A×104×メスアップ量(ml)/2100)
【0057】
【表2】
【0058】
<結果>
上記処方及び調製方法に基づき飲料を調製したところ、表2に示すように、ガティガムを付着防止剤として使用したもの(実施例1〜4)は、比較例1〜8に比べ付着量が明らかに低い結果が得られた。視覚的にも、調製時に使用したステンレスジョッキや、ペットボトルまたはステンレスジョッキへ充填した際にカロテノイド色素が付着することもなかったが、一般的な界面活性剤(比較例2、8)、多糖類(比較例1、3〜7)を使用して調製した飲料では、容易に視認できる程度に付着が発生していた。
【0059】
一般に、比較例2や8で使用した界面活性剤(グリセリン脂肪酸エステル等)は、乳化剤として飲料等で広く利用されているものであり、乳化力や乳化安定性に優れていることが知られている。同様に、比較例1のアラビアガムや加工澱粉、ゼラチン、ジェランガムは、乳化や増粘目的で使用されているが、これらは本発明の目的とする容器へのカロテノイド色素の付着を抑制するという観点においては、全くその効果が得られていなかった。このことから、乳化力や乳化安定性に優れているということと、容器への付着防止効果があることは相関関係になく、示唆すらされるものではないことが示された。
【0060】
<容器への充填試験>
先に調製したカロテノイド色素含有製剤の比較例1および実施例4を、10質量%濃度になるよう水にて希釈し下記の通り試験液を調製した。
【0061】
果糖ブドウ糖液糖 13.3(g)
クエン酸(無水) 0.2
クエン酸三ナトリウム 0.08
ビタミンC 0.02
10質量%カロテノイド色素含有製剤 1.15
イオン交換水 85.25
合計 100
【0062】
上記試験液を10kg調製しUHT殺菌機を用いて120℃ 30秒間殺菌し、2Lペットボトル、ステンレスジョッキ2L、1L紙パック、2Lビーカーに移した。25℃以下に冷却し、試験液を容器から排出し、前述の付着量測定方法に基づき色素の付着量を測定した。結果を表3に示す。
【0063】
【表3】
【0064】
表3より、本願発明に係る飲料においてのみ、容器の素材に影響を受けず色素の付着が顕著に抑えられていることが明らかとなった。比較例1を充填したペットボトル容器の写真を
図1に、実施例4を充填したペットボトル容器の写真を
図2に示す。
【0065】
以下に、本発明にかかる液状食品の例をあげるが、本発明はこれらの限定されるものではない。
【0066】
実施例10 調味液の調製
カロテノイド色素含有製剤
調製方法:パプリカ色素(パプリカオレオレジンNO.44489(三栄源エフ・エフ・アイ社製)300gを、水550gにガティガム(ガティガムRD(三栄源エフ・エフ・アイ社製)150gを配合して溶解したものに添加混合し、高圧ホモジナイザーにて圧力350kg/cm
2で乳化処理してカロテノイド色素含有製剤を調製した。カロテノイド色素含有製剤の粒度分布をレーザー回折式粒度分布測定装置マイクロトラックMT-3000II(Microtorac INC.製)にて測定したところ0.85μmであった。色濃度は30000CVであった。
【0067】
比較例9
着色料製剤「パプリカベースNO.34007(三栄源エフ・エフ・アイ社製)」(パプリカ色素をグリセリン脂肪酸エステルで乳化した製剤。30000CV)
【0068】
調味液方法:
濃口醤油 55
加工澱粉(スタビローズK 松谷化学社製) 6
水 38.3
カロテノイド色素含有製剤 0.7
合計 100
【0069】
濃口醤油と水に加工澱粉(スタビローズK)を90℃に加熱し、次いで60℃に冷却後カロテノイド色素含有製剤を添加し、200mlペットボトルに充填した。
【0070】
6時間静置後調味液を排出し、ペットボトルを水50mlにて軽くすすぎ洗浄した後、付着した色素をアセトンにて回収し、アセトンを対照として、458nm付近の極大吸収波長における吸光度Aから色濃度を算出した。
【0071】
結果を表4に、調味液を取り出した後のペットボトルの様子を
図3に示す。
【0072】
【表4】
表4の結果より、実施例10におけるパプリカ色素の付着が顕著に抑制されていた。これは
図3の写真からも明らかである。
実施例11 焼き肉のタレ
A:水 62
グアーガム 0.3
B:濃口醤油 15
クッキングワイン 5
ジンジャーペースト 1
ガーリックペースト 1.5
トマトペースト 9
オニオンエキス 3
アミノ酸系調味料 2.5
スクラロース 0.008
カロテノイド色素含有製剤(実施例10) 0.05
【0073】
Aの各成分を混合して80℃で10分間加熱した。そこにBの全成分を添加して80℃で5分間加熱後、全量を水にて100部に調製した。透明ビン容器に充填し、90℃で30分間殺菌して焼き肉のタレを調製した。中身を排出し水洗いすると、色素の付着が抑制されていた。
【0074】
実施例12 キムチ調味液
調味料(アミシン淡口 株式会社新進社製) 12 (g)
果糖ブドウ糖液糖 12
醸造酢(酸度10%) 2.8
トウガラシ粉末(株式会社ケー・アイ・エス社製) 2.2
L−グルタミン酸ナトリウム 5.5
食塩 3.5
キサンタンガム製剤(サンエース 三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)
0.3
カロテノイド色素含有製剤(実施例10) 0.6
水にて合計 100
【0075】
白菜を下準備として外側の枯れ葉を除き、1cm程度の大きさに裁断し、水洗いして半切りし、食塩6重量%の水溶液に1晩漬けておいたものに、上記キムチ調味液を添加後、透明ポリ容器に充填、密閉し、冷蔵にて10日間漬け込んだ。このポリ容器を開封し、中身を排出し水洗いすると、色素の付着が抑制されていた。