特許第6004944号(P6004944)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6004944-鳥類D群ロタウイルス 図000012
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6004944
(24)【登録日】2016年9月16日
(45)【発行日】2016年10月12日
(54)【発明の名称】鳥類D群ロタウイルス
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20160929BHJP
   C12Q 1/68 20060101ALI20160929BHJP
   G01N 33/569 20060101ALI20160929BHJP
【FI】
   C12N15/00 AZNA
   C12Q1/68 A
   G01N33/569 L
【請求項の数】6
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2012-555512(P2012-555512)
(86)(22)【出願日】2011年3月4日
(65)【公表番号】特表2013-521766(P2013-521766A)
(43)【公表日】2013年6月13日
(86)【国際出願番号】IB2011000600
(87)【国際公開番号】WO2011107883
(87)【国際公開日】20110909
【審査請求日】2014年2月7日
(31)【優先権主張番号】1003630.9
(32)【優先日】2010年3月4日
(33)【優先権主張国】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504389991
【氏名又は名称】ノバルティス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ロート, ベルンハルト
【審査官】 田中 耕一郎
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第06187319(US,B1)
【文献】 MCNEAL M. M., et al.,UniProtKB/Swiss[online], Accession No. Q6PMI4,2015年 4月10日,インターネット<http://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/81986108?sat=12&satkey=7194534>15-Dec-2009 uploaded, Definition: RecName: Full=Intermediate capside protein VP6
【文献】 WU H., et al.,Database DDBJ/EMBL/GenBank[online], Accession No. AB008672,2015年 4月10日,インターネット<URL: http://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/AB008672>15-Feb-2008 uploaded, Definition:Human rotavirus C mRNA for VP6, complete cds.
【文献】 BARMAN P., et al.,Database DDBJ/EMBL/GenBank[online], Accession No. AY786570,2015年 4月10日,インターネット<http://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/AY786570>01-Nov-2005 uploaded, Definition:Human rotavirus C strain V469 major inner capsid protein VP6(VP6)
【文献】 AVIAN DISEASES,2006年,Vol.50,P.411-418
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00−C12N 15/90
C12Q 1/00−C12Q 3/00
C07K 1/00−C07K 19/00
A61K 39/00−A61K 39/44
A61K 49/00−A61K 49/22
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
WPIDS/WPIX(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)配列番号1または配列番号2に示す核酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有する核酸配列;
(b)配列番号1または配列番号2に示す核酸配列の逆相補体に対して少なくとも90%の同一性を有する核酸配列;
(c)配列番号1および/または2に示す核酸配列の断片であって、配列番号1および/または2からの少なくとも24個の連続的なヌクレオチドからなる、断片;
(d)配列番号1および/または2に示す核酸配列の逆相補体の断片であって、配列番号1および/または2の逆相補体の少なくとも16個の連続的なヌクレオチドからなり、該断片は、生物学的サンプルにおいてARVDウイルスの存在または非存在を検出することができる、断片;または
(e)配列番号1または配列番号2に示す核酸配列に、高いストリンジェンシーの条件下でハイブリダイズする核酸配列
を含む、核酸。
【請求項2】
検出可能な標識をさらに含む、請求項1に記載の核酸。
【請求項3】
請求項1に記載のARVDウイルス核酸に含まれる鋳型配列を増幅するためのプライマーを含むキットであって、該キットは、第1のプライマーおよび第2のプライマーを含み、ここで、該第1のプライマーは、該鋳型配列の一部に実質的に相補的な配列を含み、該第2のプライマーは、該鋳型配列の相補体の一部に実質的に相補的な配列を含み、ここで、実質的な相補性を有する該プライマー内の該配列は、増幅される該鋳型配列の末端を規定する、キット。
【請求項4】
前記鋳型配列の一部に実質的に相補的か、または該鋳型配列の逆相補体の一部に実質的に相補的であるプローブ配列をさらに含む、請求項3に記載のキット。
【請求項5】
前記鋳型配列が、配列番号1または配列番号2に示す核酸配列に含まれる、請求項3または請求項4に記載のキット。
【請求項6】
請求項1に記載の核酸分子をARVD感染の指標とするための、または生物学的サンプルにおいてARVDウイルスの存在もしくは非存在を同定するための方法であって、該核酸分子の存在または非存在を検出する工程を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
鳥類ロタウイルス
鳥類D群ロタウイルス
【背景技術】
【0002】
ロタウイルスは、ウイルスのレオウイルス科に属し、他の生物の中で、鳥類の胃腸系および気道に影響し得る。レオウイルス科は、オルトレオウイルス(鳥類および哺乳類レオウイルス)、オルビウイルス(ブルータングウイルス)、およびロタウイルス(AからG群)を含む異なる属からなる。
【0003】
ロタウイルスは、無エンベロープ、二重殻RNAウイルスである。そのゲノムは2本鎖RNAの11個のセグメントから構成され、それらは6個の構造的タンパク質および6個の非構造的タンパク質をコードする。ビリオンの3層正二十面体タンパク質カプシドを形成する、6個のウイルスタンパク質(VP)が存在する。これらの構造的タンパク質は、VP1、VP2、VP3、VP4、VP6、およびVP7と呼ばれる(非特許文献1[1])。VP6がカプシドの大部分を形成する。それは高度に抗原性であり、そしてロタウイルス種を同定するために使用し得る(非特許文献2[2])。VPに加えて、ロタウイルスによって感染した細胞においてのみ産生される、6個の非構造的タンパク質(NSP)が存在する。これらはNSP1、NSP2、NSP3、NSP4、NSP5およびNSP6と呼ばれる(非特許文献1[1])。
【0004】
鳥類ロタウイルス(ARV)は周知であり(非特許文献3、非特許文献4および非特許文献5[3、4および5])、そしてしばしば世界中で家禽の群れ、および特にニワトリの群れに影響を与える。感染したニワトリの症状は、下痢に続く体重増加の遅延、吸収不良症候群(MAS)または発育不全症候群(RSS)として公知である症候群である。
【0005】
1つのフィールド研究において、RSSを有する8個の群れからの6から18日齢のブロイラーのヒヨコを調査して、どのARVがRSSの病因に大きく寄与しているのかを決定した(非特許文献6[6])。この研究において、RSSを有する群れの34羽のうち32羽のヒヨコでARVが検出された。RSSを有する群れにおいて、4つの群のARV:AVR A、D、FおよびGが同定された。この研究の結果は、RSSの病因において、D群ARVが主要な役割を果たしていることを示した。
【0006】
ニワトリ飼育者に対するRSSの経済的影響は深刻である。全ての感染したニワトリは失われる。従って、ARVによる感染の初期の検出および予防が、非常に望ましい。
【0007】
現在、通常、RNA−PAGEを用いた11個のゲノムRNA断片の移動に基づいて、ARVを検出および同定する。D群ARVに特徴的なRNA−PAGEパターンは、5:2:2:2である(非特許文献7[7])。このRNAの移動の特徴的なパターンを使用して、D群ARVを同定し得る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Pesavento JB, Crawford SE, Estes MK, Prasad BV. Curr. Top. Microbiol. Immunol. (2006) 309:189−219
【非特許文献2】Bishop RF. Arch. Virol. Suppl. (1996) 12: 119-28
【非特許文献3】Songserm T, Pol JM, van Roozelaar D, Kok GL, Wagenaar F, ter Huurne AA. Avian Dis. (2000) 44(3):556−67
【非特許文献4】Page RK, Fletcher OJ, Rowland GN, Gaudry D, Villegas P. Avian Dis. (1982) 26(3):618−24
【非特許文献5】Bellinzoni R, Mattion N, Vallejos L, La Torre JL, Scodeller EA. Res Vet Sci. (1987) 43(1):130−1
【非特許文献6】Otto P, Liebler−Tenorio EM, Elschner M, Reetz J, Loehren U, Diller R. Avian Dis. (2006) 50(3):411−8
【非特許文献7】M. S. McNulty, G. M. Allan, D. Todd, J. B. McFerran and R. M. McCracken. J Gen Virol. (1981) 55:405−413
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ARVをまた、ELISA[8]、透過型電子顕微鏡、および逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)[6]を用いて検出し得る。PAGEのみが、異なるARV群の区別を可能にするが、低い程度の感度しか有さない。現在、PCR法は、A群ロタウイルスの検出のためにのみ利用可能である。優先日において、D群ARVに関してヌクレオチド配列データは存在しない。従って、他のロタウイルスおよび特にD群ロタウイルスを検出する代替方法を開発することへの、差し迫った必要性が存在する。特に、D群ARVの迅速で感度の高い検出方法を開発することへの、差し迫った必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、新規D群鳥類ロタウイルス(ARVD)[9]の同定に関連し、そして獣医学および医薬品分野においていくつかの機会を提供する。本発明は、以下のものを提供する:
・VP6ポリペプチドをコードする核酸、ならびにその断片および変異体、ならびにVP6ポリペプチドをコードする核酸に相補的な核酸の配列。
・上記で述べた核酸によってコードされるVP6ポリペプチド配列、ならびにその断片、変異体、および抗原性断片。
・プライマーおよびプローブを含む、高いストリンジェンシーの条件下で、VP6ポリペプチドをコードする核酸とハイブリダイズする核酸分子。
・VP6ポリペプチド、その断片、変異体、および/または抗原決定基に結合する抗体。
・生物学的サンプルにおいてARVDの存在または非存在を同定するための診断試薬およびそのような試薬を含むキット、およびARVD感染を診断するために、または生物学的サンプルにおいてARVDウイルスの存在または非存在を同定するために使用し得る方法。
・ARVD感染の処置またはARVD感染からの保護のためのワクチン。
・卵、特にワクチン産生のための発育鶏卵が、ARVDフリー(ARVD−free)であることを証明する方法。
【0011】
核酸
本発明は、配列番号1または配列番号2のヌクレオチド配列を含む核酸を提供する。本発明はまた、配列番号1または配列番号2と少なくともi%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む核酸を提供する。iの値を、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%から選択し得る。配列同一性は、ヌクレオチド配列の長さ全体にそって計算するべきである。
【0012】
配列番号2は、ARVD VP6をコードする配列全体を提供する。配列番号1は、配列番号2で示したようなVP6をコードする配列の断片を含み、さらに3’非翻訳配列を含む核酸を提供する。
【0013】
好ましくは、核酸は、ARVD VP6ポリペプチドをコードする。本発明の核酸は、配列番号3または配列番号4で示したような、ARVD VP6ポリペプチドをコードし得る。
【0014】
本発明はまた、配列番号1および/または2において示したような核酸配列の断片を含む。従って、本発明は、配列番号1および/または2の、少なくともn個の連続的なヌクレオチドの断片を含む核酸を提供し、ここでnは8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、50、またはそれ以上である。その核酸は、n+xヌクレオチドの全長を有し得、ここでx=0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、50、またはそれ以上である。1つの実施態様において、nの値は24である。
【0015】
さらなる実施態様において、本発明は、配列番号1または配列番号2の逆相補体(reverse complement)を含む核酸を提供する。本発明はまた、配列番号1または配列番号2で示された核酸配列の逆相補体と、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%またはそれ以上同一である核酸配列を含む核酸を提供する。本発明はまた、配列番号1および/または2の逆相補体由来の、少なくともn個の連続的なヌクレオチドからなる断片を含む核酸を提供し、ここでnは8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、50、またはそれ以上である。その核酸は、n+xヌクレオチドの全長を有し得、ここでx=0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、50、またはそれ以上である。1つの実施態様において、nの値は10である。
【0016】
さらなる実施態様において、本発明は、配列番号1および/または配列番号2からなる核酸に、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸を提供する。代表的なストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、0.1×SSC、0.1%のSDSで65℃で10分間であり、洗浄は2×SSC、0.1%SDSで10分間の後、0.1×SSC、0.1%SDSでさらに10分間である。
【0017】
本発明は、式5’−X−Y−Z−3’の核酸を提供し、ここで:−X−は、xヌクレオチドからなるヌクレオチド配列である;−Z−は、zヌクレオチドからなるヌクレオチド配列である;−Y−は、(a)配列番号1または2の断片、または(b)(a)の相補体のいずれかからなるヌクレオチド配列である;そして当該核酸5’−X−Y−Z−3’は、(i)配列番号1または2の断片でも、(ii)(i)の相補体でもない。−X−および/または−Z−部分は、例えばプロモーター配列(またはその相補体)を含み得る。
【0018】
本発明はまた、本発明の核酸および断片を含み、さらなるヌクレオチド、修飾ヌクレオチド、または1つもしくはそれ以上の検出可能な標識も含む核酸を提供する。そのような核酸は、LCR、PCR、RT−PCR、リアルタイムPCR、リアルタイムRT−PCR、qPCR、qRT−PCR、ノーザンブロッティング、およびサザンブロッティングを含む方法において、プライマーおよび/またはプローブとして有用であり得る。
【0019】
代表的な標識は、放射性同位体、蛍光分子、ビオチン、塩基対ミスマッチ、ヘアピン構造等を含む。多くの適当なフルオロフォアが公知であり、そして使用し得、例としては、フルオレセイン、特に5−FAM(5−カルボキシフルオレセインとも呼ばれる;スピロ(イソベンゾフラン−1(3H),9’−(9H)キサンテン)−5−カルボン酸,3’,6’−ジヒドロキシ−3−オキソ−6−カルボキシフルオレセインとも呼ばれる);リサミン;フィコエリトリン;ローダミン(Perkin Elmer Cetus);Cy2、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy7;FluorX(Amersham)および参考文献[10]において記載されたようなさらなる標識が挙げられるがこれらに限らない。そのような標識を、核酸分子に組込むことは、分子生物学の当業者の技術の範囲内である。1つの特定の実施態様において、その核酸は、蛍光標識および消光剤(quencher)を含む。適当な消光剤は、6−TAMRA(6−カルボキシテトラメチルローダミン);Xanthylium、9−(2,5−ジカルボキシフェニル)−3,6−ビス(ジメチルアミノ);およびDABCYL(4−((4−(ジメチルアミノ)フェニル)アゾ)安息香酸)を含むがこれに限らない。核酸を、FAM(例えば5’において)およびDABCYL(例えば3’において)の両方で標識することが好ましい。
【0020】
さらなる実施態様において、本発明は、本発明の核酸を含むベクターを提供する。例えば、本発明は、本発明の核酸を含むクローニングまたは発現ベクターを含む。本発明はまた、本発明の核酸を含み、そしてさらなる核酸、例えばさらなるポリペプチドをコードする核酸、プロモーターまたはターミネーター配列、制限エンドヌクレアーゼ認識部位等をさらに含むベクターを提供する。
【0021】
本発明による核酸は、様々な形態(例えば1本鎖、2本鎖、ベクター、プライマー、プローブ、標識化等)を取り得る。上記で記載したいずれの実施態様においても、その核酸およびポリヌクレオチドは、DNA、RNA、ハイブリッドDNA/RNA分子、および/または修飾DNAもしくはRNA、またはPNA(ペプチド核酸)であり得る。その核酸およびポリヌクレオチドはまた、少なくとも1つの修飾糖および/または塩基部分を含み得、または修飾バックボーンもしくは非天然ヌクレオシド間結合を含み得る。
【0022】
核酸がDNAである場合、RNA配列の「U」は、DNAにおいて「T」に置換されることが認識される。同様に、例えばARVのゲノムにおけるように、核酸がRNAである場合、DNA配列(配列番号1または配列番号2におけるような)の「T」は、RNAにおいて「U」に置換されることが認識される。
【0023】
本発明の核酸およびポリヌクレオチドをまた、そのオリゴヌクレオチドを1つまたはそれ以上の部分または結合体に化学的に結合することによって修飾して、そのオリゴヌクレオチドの活性、安定性、または検出を増強し得る。そのような部分または結合体は、上記で記載したような発色団およびフルオロフォアを含み、そしてさらにコレステロールのような脂質、コール酸、チオエーテル、脂肪族鎖、リン脂質、ポリアミン、ポリエチレングリコール(PEG)、パルミチル部分、および例えば参考文献11から18において開示されるような他のものを含む。
【0024】
本発明の核酸は、好ましくは、精製されたかまたは実質的に精製された形態で提供される。すなわち実質的に他の核酸、特に他のARVDまたは宿主細胞核酸を含まず(例えば天然に存在する核酸を含まない)、一般的に少なくとも約50%純粋(重量で)、および通常少なくとも約90%純粋である。本発明の核酸は、好ましくはARVD核酸である。
【0025】
本発明の核酸を、多くの方法で、例えば全部または部分的な化学的合成(例えばDNAのホスホラミダイト合成)によって、ヌクレアーゼ(例えば制限酵素)を用いて長い核酸を消化することによって、短い核酸またはヌクレオチドを結合することによって(例えばリガーゼまたはポリメラーゼを用いて)、ゲノムまたはcDNAライブラリー等から調製し得る。
【0026】
本発明の核酸を、固体支持体(例えばビーズ、プレート、フィルター、フィルム、スライド、マイクロアレイ支持体、レジン等)に結合し得る。本発明の核酸を、例えば放射性もしくは蛍光標識、またはビオチン標識で標識し得る。その核酸を、検出技術において使用する場合、例えばその核酸がプライマーまたはプローブである場合に、これは特に有用である。
【0027】
「核酸」という用語は、一般的な意味において、あらゆる長さのヌクレオチドのポリマー形態を含み、それはデオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、および/またはそのアナログを含む。それはDNA、RNA、DNA/RNAハイブリッドを含む。それはまた、修飾バックボーン(例えばペプチド核酸(PNA)またはホスホロチオエート)、または修飾塩基を含むもののような、DNAまたはRNAアナログを含む。従って、本発明は、mRNA、tRNA、rRNA、リボザイム、DNA、cDNA、組換え核酸、分岐核酸、プラスミド、ベクター、プローブ、プライマー等を含む。本発明の核酸がRNAの形態をとる場合、それは5’キャップを有しても有さなくてもよい。
【0028】
ポリペプチド
本発明は、配列番号3または配列番号4のアミノ酸配列を含むポリペプチドを提供する。本発明はさらに、配列番号3および/または4で示されたポリペプチド配列と少なくともj%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチドを提供する。jの値を、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または99.9%から選択し得る。配列同一性は、アミノ酸配列の長さ全体にそって計算するべきである。
【0029】
好ましくは、そのポリペプチドはARVD VP6ポリペプチドである。配列番号3は、配列番号1によってコードされるポリペプチドに対応し、配列番号4は、配列番号2によってコードされるポリペプチドに対応する。配列番号3および4を、図3に並べる。
【0030】
本発明はまた、配列番号3または配列番号4の少なくとも1つの断片を含むポリペプチドを提供し、ここでその断片は、配列番号3および/または配列番号4の少なくともw個の連続的なアミノ酸からなり、ここでwは6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、50、またはそれ以上である。そのポリペプチドは、w+xアミノ酸の全長を有し得、ここでx=0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、50、またはそれ以上である。
【0031】
本発明はまた、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換、挿入、または欠失を含む、本発明のポリペプチドおよび断片の変異体を提供する。例えば、配列番号3は、1つのアミノ酸置換を含む、配列番号4のC末端断片の変異体である(図3)。
【0032】
本発明のポリペプチドは、配列番号3または4と比較して、1つまたはそれ以上の(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10等)保存的アミノ酸置換、すなわち1つのアミノ酸の、関連する側鎖を有する別のものとの置換を含み得る。遺伝的にコードされたアミノ酸は、一般的に4つのファミリーに分けられる:(1)酸性、すなわちアスパラギン酸、グルタミン酸;(2)塩基性、すなわちリシン、アルギニン、ヒスチジン;(3)非極性、すなわちアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン;および(4)無電荷極性、すなわちグリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、スレオニン、チロシン。フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンは、一緒に芳香族アミノ酸と分類されることもある。一般的に、これらのファミリー内の単一のアミノ酸の置換は、生物学的活性に対して大きな影響を有さない。さらに、そのポリペプチドは、配列番号3または4と比較して、1つまたはそれ以上(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10等)の単一のアミノ酸の欠失を有し得る。さらに、そのポリペプチドは、配列番号3または4と比較して、1つまたはそれ以上(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10等)の挿入(例えばそれぞれ1、2、3、4、または5つのアミノ酸)を含み得る。
【0033】
1つの特定の実施態様において、その断片は、被験体において免疫反応を誘導し得る。その被験体は、鳥類または哺乳類であり得る。1つの特定の実施態様において、その被験体は、家禽、例えばニワトリまたはシチメンチョウである。
【0034】
その断片は、少なくとも1つのT細胞、または好ましくはB細胞エピトープを含み得る。TおよびB細胞エピトープを、経験的に同定し得る(例えばPEPSCAN[19、20]または同様の方法を用いて)か、またはそれらを予測し得る(例えばJameson−Wolf抗原インデックス[21]、マトリックスに基づくアプローチ[22]、TEPITOPE[23]、神経ネットワーク[24]、OptiMer&EpiMer[25、26]、ADEPT[27]、Tsites[28]、親水性[29]、抗原インデックス[30]、または参考文献31および32等において開示された方法を用いて)。配列番号4において見出され、そして参考文献32において記載された方法によって同定された、代表的なエピトープを表1に示す。
【0035】
ポリペプチドが、本明細書中で記載されたように、抗ARVD VP6抗体に特異的に結合し得る場合、そのポリペプチドも抗原と呼び得る。本発明は、ARVDウイルス抗原であるポリペプチド、およびこれらのARVDウイルス抗原をコードするポリヌクレオチドを含む。
【0036】
本発明のポリペプチドを、多くの方法で、例えば化学的合成によって(全部または部分的に)、プロテアーゼを用いて長いポリペプチドを消化することによって、RNAからの翻訳によって、細胞培養物からの精製によって(例えば組換え発現から)、生物自体から(例えば細菌培養後、または患者から直接)、等によって調製し得る。<40アミノ酸長のペプチドを産生するために好ましい方法は、インビトロ化学的合成を含む[33、34]。tBocまたはFmoc[35]化学に基づく方法のような、固相ペプチド合成が特に好ましい。さらに、部分的にまたは完全に、酵素的合成[36]を使用してもよい。化学的合成の代替として、生物学的合成を使用し得る。例えばそのポリペプチドを翻訳によって産生し得る。これを、インビトロまたはインビボにおいて行い得る。生物学的方法は、一般的に、L−アミノ酸に基づくポリペプチドの産生に限られるが、翻訳機構(例えばアミノアシルtRNA分子)の操作を使用して、D−アミノ酸(またはヨードチロシンまたはメチルフェニルアラニン、アジドホモアラニン等のような他の非天然アミノ酸)の導入を可能にし得る[37]。しかし、D−アミノ酸を含む場合、化学的合成を使用することが好ましい。本発明のポリペプチドは、C末端および/またはN末端において共有結合の修飾を有し得る。
【0037】
本発明のポリペプチドは、好ましくは精製されたかまたは実質的に精製された形態で提供される。すなわち他のポリペプチド、特に他のARVDまたは宿主細胞ポリペプチドを実質的に含まず(例えば天然に存在するポリペプチドを含まない)、そして一般的に少なくとも約50%純粋(重量で)、および通常少なくとも約90%純粋である。すなわち、組成物の約50%未満、そしてより好ましくは約10%未満(例えば5%またはそれより少ない)は、他の発現したポリペプチドで構成されている。本発明のポリペプチドは、好ましくはARVDポリペプチドである。
【0038】
本発明のポリペプチドを、固体支持体に結合し得る。本発明のポリペプチドは、検出可能な標識を含み得る(例えば放射性もしくは蛍光標識、またはビオチン標識)。
【0039】
「ポリペプチド」という用語は、あらゆる長さのアミノ酸ポリマーを指す。そのポリマーは直鎖状または分岐であり得、それは修飾アミノ酸を含み得、そしてそれは非アミノ酸によって中断され得る。その用語はまた、天然に、または介入;例えばジスルフィド結合の形成、グリコシル化、脂質付加、アセチル化、リン酸化、または標識成分との結合体化のような、あらゆる他の操作または修飾によって、修飾されたアミノ酸ポリマーを含む。例えば、1つまたはそれ以上のアミノ酸アナログ(例えば非天然アミノ酸等を含む)、および当該分野で公知の他の修飾を含むポリペプチドも、その定義の範囲内に含まれる。ポリペプチドは、1本鎖または結合した鎖として生じ得る。本発明のポリペプチドを、天然にまたは非天然にグリコシル化し得る(すなわち、そのポリペプチドは、対応する天然に存在するポリペプチドにおいて見出されるグリコシル化パターンとは異なるグリコシル化パターンを有する)。本発明のポリペプチドを、単離または精製し得る。
【0040】
本発明は、配列−X−Y−または−Y−X−を含むポリペプチドを提供し、ここで:−X−は上記で定義したようなアミノ酸配列であり、そして−Y−は上記で定義したような配列ではない。すなわち本発明は、融合タンパク質を提供する。
【0041】
本発明は、本発明の宿主細胞を、ポリペプチドの発現を誘導する条件下で培養する工程を含む、本発明のポリペプチドを産生するためのプロセスを提供する。
【0042】
本発明は、本発明のポリペプチドを産生するためのプロセスを提供し、ここでそのポリペプチドを、部分的にまたは全体として化学的手段を用いて合成する。
【0043】
ARDV核酸を検出するための方法およびキット
本発明はまた、生物学的サンプルにおいて、ARVDの存在または非存在を検出するためのキットおよび方法を提供する。特に、本発明は、本発明の核酸を検出するためのキットおよび方法を提供する。
【0044】
特定の実施態様において、本発明は、本発明の核酸に含まれる鋳型配列を増幅するためのプライマーを含むキットを提供し、そのキットは第1のプライマーおよび第2のプライマーを含む。ここで第1のプライマーは当該鋳型配列の一部に実質的に相補的な配列を含み、そして第2のプライマーは当該鋳型配列の相補体の一部に実質的に相補的な配列を含む。ここで当該プライマー内の配列が、増幅される鋳型配列の末端を規定する。
【0045】
プライマー配列に関して、「実質的に相補的な」によって、そのプライマーが鋳型配列またはその相補体に対して、45から65℃の温度で、例えば45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、または65℃で、50mMの一価陽イオンの塩濃度で、その鋳型配列またはその相補体にアニーリングするために十分な相補性を有することを意味する。
【0046】
その鋳型配列(プライマーに相補的な部分を含む)は、50ヌクレオチドから1500ヌクレオチドの長さであり得る。例えば、その鋳型配列は、50、75、100、150、200、250、300、400、500、600、700、800、900、1000、1250、または1500ヌクレオチドの長さであり得る。1つの実施態様において、その鋳型核酸は、配列番号1または配列番号2で示された核酸配列内に含まれる。1つの実施態様において、その鋳型核酸は、配列番号1または配列番号2で示されたような核酸配列である。本発明のプライマーはまた、配列番号1または配列番号2と異なる鋳型配列の検出において使用するために適当である。
【0047】
本発明はまた、当該鋳型配列の一部に実質的に相補的なプローブ配列、または当該鋳型配列の逆相補体の一部に実質的に相補的なプローブ配列をさらに含むキットを提供する。そのプローブ配列はまた、検出可能な標識を含み得る。プローブ配列に関して、「実質的に相補的な」によって、そのプローブが、鋳型配列またはその相補体に対して、45から65℃の温度で、例えば45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、または65℃で、50mMの一価陽イオンの塩濃度で、その鋳型配列またはその相補体にアニーリングするために十分な相補性を有することを意味する。
【0048】
そのプライマーおよびプローブは、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、50、またはそれ以上のヌクレオチドの長さであり得る。そのプローブおよびプライマーは、5’末端、3’末端のいずれか、またはその両方で、さらなるヌクレオチドまたは他の修飾を含み得る。さらなるヌクレオチドは、プロモーター配列、制限エンドヌクレアーゼ認識部位、または他の核酸配列を含み得る。一般的に、そのプローブおよびプライマーは、100ヌクレオチド以下の長さ、例えば≦75ヌクレオチドである。
【0049】
そのプライマーおよびプローブはまた、例えばその鋳型配列に部位特異的変異を導入するために、1つまたはそれ以上のミスマッチヌクレオチドを含み得る。
【0050】
本発明のキットおよび方法において使用し得る、1つの特定のプライマーペアは、ARVDフォワード(
【0051】
【化1】
−配列番号24)およびARVDリバース(
【0052】
【化2】
−配列番号25)の配列を含む。このプライマーペアを、あらゆるプローブ配列と共に使用し得るが、特にqRT−PCRにおいて
【0053】
【化3】
(配列番号26)を含むプローブ配列と共に使用し得る。
【0054】
さらなるプライマー配列を、下記の表2で提供する。1つの実施態様において、そのプライマーを、以下のペアで使用する:配列番号27および28;配列番号29および30;配列番号31および32;配列番号33および34;配列番号35および36。
【0055】
本発明はまた、本発明の核酸分子の存在または非存在を検出する工程を含む、ARVD感染を診断するための、または生物学的サンプルにおいてARVDウイルスの存在または非存在を同定するための方法を提供する。特定の実施態様において、その方法は、配列番号1および/または配列番号2で示された核酸配列を含む核酸の存在または非存在の検出を含む。
【0056】
その検出工程の前に、例えば当該分野で公知のあらゆる核酸増幅技術、および特にLCR、PCR、RT−PCR、リアルタイムPCR、リアルタイムRT−PCR、qPCR、およびqRT−PCRを用いた、増幅工程が先行し得る。本発明の核酸の存在または非存在を検出するために、サザンブロッティング、ノーザンブロッティング、およびアガロースまたはポリアクリルアミドゲル電気泳動と続くエチジウムブロミドを用いた核酸の視覚化を含むがこれに限らない、あらゆる適当な方法を使用し得る。本発明の核酸をまた、リアルタイムアッセイ(例えば「qPCR」;TaqmanTM、LightcyclerTM;ScorpionTM等)を用いて検出し得る。
【0057】
ARVDはRNAゲノムを有するので、本発明の1つの特定の実施態様において、増幅工程のためにRT−PCRを使用する。しかし、当業者に公知であるような、同等のRNA増幅方法も適用可能である(NASBATM;3SRTM;TMATM等)。特定の実施態様において、ワンステップRT−リアルタイムPCRアッセイを適用する(「ワンステップRT−qPCR」)。市販で入手可能なRT−PCRキット、例えばQiagen QuantiTectTM VirusキットまたはInvitrogen Super Script TM III PlatinumTMキットを使用し得る。生じた蛍光シグナルを、当該分野で公知であるように、それぞれのリアルタイムサイクラーソフトウェアを用いて分析し得る。従って本発明のキットは、逆転写酵素を含み得る。
【0058】
上記で記載したようなプライマーおよびプローブを、本発明の方法のいずれにおいても使用し得る。
【0059】
生物学的サンプルにおいてARVDの存在または非存在を検出するための、上記で記載した本発明の方法は、家禽の群れ、および特にニワトリの群れを、ARVDによる感染に関してスクリーニングするために特に有用である。ARVDの存在または非存在に関する家禽のスクリーニングを、RSSおよびMASの大発生を制御または予防するための方法において使用し得る。
【0060】
上記で記載した本発明の方法は、ARVDの存在または非存在に関して、家禽の卵をスクリーニングするために有用である。ARVDの存在または非存在に関する卵のスクリーニングを、ワクチン産生に使用する卵がARVDフリーであることを保証するために使用し得る。
【0061】
本発明はまた、卵においてARVDの存在または非存在を検出することを含む、卵がARVDを含まないことを証明するための方法を提供する。本発明の核酸の存在または非存在を検出するための、上記で記載したいずれの方法も、卵がARVDフリーであることを証明するために使用し得る。
【0062】
上記で記載した方法において、その卵はニワトリ卵であり得る。さらなる実施態様において、その卵は発育鶏卵であり、そして特にワクチン産生に使用する発育鶏卵である。産生するワクチンは、インフルエンザワクチンであり得る。
【0063】
抗体およびイムノアッセイ
1つの実施態様において、本発明は、本発明のポリペプチドに特異的に結合する抗体を提供する。特に、本発明の抗体は、配列番号3および/または配列番号4のアミノ酸配列からなるポリペプチドに特異的に結合する。「特異的に結合する」によって、その抗体が、本発明のポリペプチドに、実質的にBSAより高い親和性で結合することを意味する。好ましくは、その親和性は、本発明のポリペプチドに関して、BSAよりも少なくとも100倍、10倍、10倍、10倍、10倍等高い。
【0064】
1つの実施態様において、その抗体は、本発明のポリペプチドに、任意の他のレオウイルス由来のVP6ポリペプチドに対するその結合親和性より、少なくとも10倍、100倍、10倍、10倍、10倍、10倍等高い親和性で結合する。別の実施態様において、その抗体は、本発明のポリペプチドに、別のロタウイルス由来のVP6ポリペプチドに対するその結合親和性より、少なくとも10倍、100倍、10倍、10倍、10倍、10倍等高い親和性で結合する。
【0065】
本発明の抗体に特異的に結合する本発明のポリペプチドは、抗原と呼ばれる。
【0066】
当該分野で公知の「抗体」は、化学的または物理的手段によって、目的のポリペプチドのエピトープに結合し得る、1つまたはそれ以上の生物学的部分を含む。本発明の抗体は、本発明のVP6ポリペプチド由来のARVDウイルス抗原に特異的に結合する抗体を含む。「抗体」という用語は、ポリクローナル調製物およびモノクローナル調製物の両方から得られる抗体、および以下のものを含む:ハイブリッド(キメラ)抗体分子[38および39];F(ab’)2およびF(ab)断片;Fv分子[40および41];1本鎖Fv分子(sFv)[42];二量体および三量体抗体断片構築物;およびそのような分子から得られる、任意の機能的な断片。そのような断片は、親抗体分子の免疫学的結合性質を保持する。「抗体」という用語はさらに、ファージディスプレイのような、非従来型のプロセスによって得られる抗体を含む。
【0067】
本明細書中で使用される場合、「モノクローナル抗体」という用語は、均質な抗体集団を有する抗体組成物を指す。その用語は、抗体の種または供給源に関して制限されず、それが作られた様式によって制限されることも意図しない。
【0068】
抗体を、当業者に周知であり、そして例えば参考文献43および44において開示された技術を用いて産生する。例えば、ポリクローナル抗体を、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ニワトリ、またはヤギのような適当な動物を、目的の抗原で免疫化することによって産生する。免疫原性を増強するために、その抗原を、免疫化の前にキャリアに結合し得る。そのようなキャリアは当業者に周知である。一般的に、その抗原を生理食塩水、好ましくはフロイント完全アジュバントのようなアジュバント中で混合または乳化し、そしてその混合物またはエマルジョンを非経口的に(一般的に皮下または筋肉内に)注射することによって、免疫化を行う。一般的に2〜6週間後に、生理食塩水中(好ましくはフロイント不完全アジュバントを用いる)の抗原を1回またはそれ以上注射することによって、その動物を追加免疫化する。抗体をまた、当該分野で公知の方法を用いて、インビトロ免疫化によって産生し得る。次いでポリクローナル抗血清を、免疫した動物から得る。
【0069】
モノクローナル抗体を、一般的にKohlerおよびMilstein[45]の方法、またはそれを改変した方法を用いて調製する。典型的には、マウスまたはラットを、上記で記載したように免疫化する。ウサギも使用し得る。しかし、血清を抽出するために動物から採血するのではなく、脾臓(および任意でいくつかの大きなリンパ節)を取り出し、そして単一の細胞に分離する。望ましい場合、細胞懸濁物を、抗原をコーティングしたプレートまたはウェルに加えることによって、その脾臓細胞をスクリーニングし得る(非特異的接着細胞を除去した後に)。抗原に特異的な膜結合免疫グロブリンを発現するB細胞は、プレートに結合し、懸濁物の残りと共に洗い流されることはない。結果として生じたB細胞、または全ての分離した脾臓細胞を、次いで骨髄腫細胞と融合するように誘導して、ハイブリドーマを形成し、そして選択培地(例えばヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン培地、「HAT」)で培養する。結果として生じたハイブリドーマを、限界希釈によってプレートに入れ、そして免疫抗原に特異的に結合する(そして無関係な抗原に結合しない)抗体の産生に関してアッセイする。次いで選択したモノクローナル抗体分泌ハイブリドーマを、インビトロ(例えば組織培養ビンまたは中空繊維リアクターで)、またはインビボ(例えばマウスの腹水で)のいずれかで培養する。
【0070】
本発明はまた、本発明のポリペプチドを検出するためのキットおよび方法を提供する。ポリペプチドを検出するための当該分野で公知のあらゆる方法を使用し得る。そのような方法は、質量分析、免疫拡散法、免疫電気泳動、免疫化学的方法、バインダー−リガンドアッセイ、免疫組織化学的技術、凝集および補体アッセイを含むがこれに限らない[46]。
【0071】
本発明はまた、天然抗体または本発明の抗体のいずれかの抗ARVD VP6抗体のARVD VP6抗原との相互作用を検出することを含む、生物学的サンプルにおいてARVD VP6抗原または抗ARVD VP6抗体の存在または非存在を検出することによって、生物学的サンプルにおいてARVDの存在または非存在を決定するための方法を提供する。
【0072】
「天然抗体」は、被験体から得た生物学的サンプルに存在する抗体であり、ここで、その被験体は、ARVD VP6に曝露され、そしてそれに対する免疫反応を起こし、結果として抗ARVD VP6抗体を産生した。その被験体は、哺乳類または鳥類であり得る。1つの実施態様において、その被験体はニワトリである。別の実施態様において、その被験体は発育鶏卵である。
【0073】
イムノアッセイのデザインには、非常に多くのバリエーションがあり、そして多くの方式が当該分野で公知である。プロトコールは、例えば固体支持体、または免疫沈降を使用し得る。ほとんどのアッセイは、標識した抗体またはポリペプチドの使用を含む;その標識は、例えば酵素、蛍光、化学発光、放射性、または色素分子であり得る。免疫複合体からのシグナルを増幅するアッセイも公知である;その例は、ビオチンおよびアビジンを利用するアッセイ、およびELISAアッセイのような酵素標識および媒介イムノアッセイである。
【0074】
そのイムノアッセイは、制限無しに、不均質な、または均質な方式であり得、そして標準的な、または競合的な型であり得る。不均質な方式において、そのポリペプチドを、典型的には固体マトリックスまたは支持体に結合して、インキュベーション後のサンプルのポリペプチドからの分離を容易にする。使用し得る固体支持体の例は、ニトロセルロース(例えば膜、またはマイクロタイターウェルの形態で)、ポリ塩化ビニル(例えばシートまたはマイクロタイターウェルで)、ポリスチレンラテックス(例えばビーズまたはマイクロタイタープレートで)、フッ化ポリビニリデン(polyvinylidine)、ジアゾ化紙、ナイロン膜、マイクロチップ、高または低密度バイオチップ、組換えイムノアッセイ(RIBA)、微小流動デバイス、マイクロ磁気ビーズ、活性化ビーズ、およびプロテインAビーズである。例えば、Dynatech ImmunlonまたはImmunlon2マイクロタイタープレートまたは0.25インチポリスチレンビーズ(Precision Plastic Ball)を、不均質な方式で使用し得る。抗原性ポリペプチドを含む固体支持体を、典型的にはそれをテストサンプルと分離した後に、および結合した抗体の検出の前に洗浄する。標準的なおよび競合的な方式の両方が、当該分野で公知である。
【0075】
均質な方式において、そのテストサンプルを、溶液中で抗原の組み合わせとインキュベートする。例えば、それは、形成された任意の抗原抗体複合体が沈殿する条件下であり得る。これらのアッセイの標準的および競合的方式の両方が、当該分野で公知である。
【0076】
標準的な方式において、抗体−抗原複合体における抗ARVD VP6抗体の量を検出する。これを、抗ARVD VP6抗体上のエピトープを認識する標識した抗異種(例えば抗ニワトリ)抗体が、複合体形成を原因として結合するか否かを決定することによって達成し得る。競合的な方式において、サンプル中の抗ARVD VP6抗体の量を、複合体における公知の量の標識抗体(または他の競合リガンド)の結合に対する競合的効果をモニターすることによって推測する。
【0077】
抗ARVD VP6抗体を含む形成された複合体(または競合的アッセイの場合は、競合する抗体の量)を、方式に依存して、多くの公知の技術のいずれかによって検出する。例えば、複合体における非標識抗ARVD VP6抗体を、標識(例えば酵素標識)と複合体化した抗異種Igの結合体を用いて検出し得る。
【0078】
免疫沈降または凝集アッセイ方式において、ARVD抗原と抗体との間の反応は、溶液または懸濁物から沈殿するネットワークを形成し、そして沈殿の目に見える層またはフィルムを形成する。テスト検体に抗ARVD VP6抗体が存在しない場合、目に見える沈殿は形成されない。
【0079】
少なくとも3つの特異的な型の粒子凝集(PA)アッセイが存在する。これらのアッセイを、支持体にコーティングされた様々な抗原に対する抗体を検出するために使用する。このアッセイの1つの型は、RBCへの抗原(または抗体)の受動的吸着で感作した赤血球(RBC)を用いた赤血球凝集アッセイである。体の成分に存在する特異的抗原抗体(あれば)の添加は、精製抗原でコーティングされたRBCの凝集を引き起こす。
【0080】
赤血球凝集アッセイにおいて、潜在的な非特異的反応を排除するために、PAにおいてRBCの代わりに2つの人工的キャリアを使用し得る。これらのうち最も一般的なものは、ラテックス粒子である。しかし、ゼラチン粒子も使用し得る。これらのキャリアのいずれかを利用するアッセイは、精製抗原でコーティングされた粒子の受動的な凝集に基づく。
【0081】
抗ARVD VP6抗原を、典型的にはこれらのイムノアッセイにおいて使用するためのキットの形態にパッケージングする。そのキットは通常、別々の容器に、ARVD VP6抗原、コントロール抗体処方物(ポジティブおよび/またはネガティブ)、アッセイ形態がそれを必要とする場合は標識抗体、およびその標識が直接シグナルを生じない場合にシグナル産生試薬(例えば酵素基質)を含む。ARVD VP6抗原は、既に固体マトリックスに結合していてもよく、またはそれをマトリックスに結合する試薬を伴って、別々であってもよい。アッセイを行うための説明書(例えば書いたもの、CD−ROM等)が、通常そのキットに含まれる。
【0082】
本発明の代替の実施態様において、生物学的サンプルにおけるARVDの存在または非存在を、免疫組織化学的な手段によって決定し得る(サンプル中の特異的抗原を調べるために抗体を使用する)。当該分析は、当分野において標準的であり、ここで、組織における抗原の検出は、免疫組織化学として公知であり、一方培養細胞における検出は、一般的に免疫細胞化学と呼ばれる。簡単には、その特異的抗原への結合によって検出される一次抗体がある。その抗体−抗原複合体に、次いで酵素結合二次抗体を結合させる。必要な基質および色素原の存在下で、結合した酵素は、抗体−抗原結合部位における着色した沈着物によって検出される。幅広い範囲の適当なサンプルの型、抗原−抗体親和性、抗体の型、および検出増強法が存在する。従って、免疫組織化学的または免疫細胞化学的検出のための最適な条件を、個々の場合それぞれに関して、当業者が決定しなければならない。
【0083】
生物学的サンプルにおけるARVDの存在または非存在に関する、本発明のイムノアッセイ、免疫組織化学的検出および免疫細胞化学的検出の方法は、家禽の群れ、および特にニワトリの群れにおいて、ARVDの感染に関してスクリーニングするために特に有用である。ARVDの存在に関する家禽のスクリーニングを、RSSおよびMASの大発生を制御または予防するための方法において使用し得る。
【0084】
本発明のイムノアッセイ、免疫組織化学的検出および免疫細胞化学的検出の方法はまた、ARVDの存在または非存在に関して家禽の卵をスクリーニングするために有用である。ARVDの存在または非存在に関する卵のスクリーニングを、ワクチン産生に使用する卵が、ARVDフリーであることを保証するために使用し得る。
【0085】
本発明はまた、卵におけるARVDの存在または非存在を検出することを含む、卵がARVDを含まないことを証明するための方法を提供する。本発明のポリペプチドまたは抗ARVD抗体の存在または非存在を検出するための、上記で記載したあらゆる方法を、卵がARVDフリーであることを証明するために使用し得る。
【0086】
上記で記載した方法において、その卵はニワトリ卵であり得る。さらなる実施態様において、その卵は発育鶏卵であり、そして特にワクチン産生に使用するための発育鶏卵である。産生されるワクチンは、インフルエンザワクチンであり得る。
【0087】
本発明の抗体は、好ましくは、精製されたかまたは実質的に精製された形態で提供される。典型的には、その抗体は、実質的に他のポリペプチドを含まない組成物中に存在し、例えばここで、組成物の90%未満(重量で)、通常60%未満、そしてより通常には50%未満が、他のポリペプチドから構成されている。
【0088】
ワクチン
本発明はまた、ARVDによる感染に対する処置または保護のためのワクチンを提供し、そして1つの実施態様において、RSSおよび/またはMASの処置または予防のために使用する。本発明のワクチン処方物は、本発明のポリペプチドを含む弱毒化ARVDウイルス、またはARVD VP6抗原を含む1つまたはそれ以上のARVDウイルス抗原の組換えまたは精製サブユニット処方物を含む。ワクチン処方物は、アジュバントをさらに含み得る。
【0089】
本発明は、本明細書中で記載したような、VP6ポリペプチド配列を有する弱毒化ARVDウイルスを含む組成物を含む。この組成物を、予防的または治療的ARVDウイルスワクチンとして使用し得る。ウイルスを弱毒化する方法は、当該分野で公知である。そのような方法は、ARVDウイルスが弱毒化した機能を示すまで、培養細胞物(例えば鳥類または哺乳類細胞培養物)においてARVDウイルスを連続継代することを含む。ウイルスが増殖する温度は、組織継代培養弱毒化が起こるあらゆる温度であり得る。細胞培養物における1回またはそれ以上の継代後に、ARVDウイルスの機能の弱毒化を、当業者が測定し得る。本明細書中で使用される場合、弱毒化は、家禽被験体、特にニワトリにおけるARVDウイルスのビルレンスの減少を指す。機能弱毒化の証拠を、ウイルス複製のレベルの減少、または動物モデルにおけるビルレンスの減少によって示し得る。
【0090】
特定の実施態様において、そのARVDを、VP6ポリペプチドをコードする核酸配列に変異を導入することによって弱毒化する。
【0091】
弱毒化ARVDウイルスを産生する他の方法は、最適以下または「冷たい」温度における細胞培養物におけるウイルスの継代、およびランダム変異誘発(例えば化学的変異誘発)または部位特異的変異誘発による、ARVDウイルスゲノムへの弱毒化変異の導入を含む。弱毒化RSVワクチンの調製および産生(その方法は一般的にARVDウイルスに適用可能である)が、例えば参考文献47から50において開示されている。
【0092】
本発明は、本発明のポリペプチド由来の単離または精製ARVDウイルス抗原を含む組成物を含む。特に、本発明は、本発明のポリペプチドまたはその抗原性断片を含むワクチン組成物を提供する。その組成物はさらに、1つまたはそれ以上のアジュバントを含み得る。
【0093】
ARVDウイルス抗原を、細胞培養物において増殖したARVDウイルスから単離または精製し得る。あるいは、ARVDウイルス抗原を、当該分野で公知の方法によって、組換え的に産生し得る。
【0094】
本発明で使用するARVDウイルス抗原を、当該分野で公知である、様々な異なる発現システム;例えば哺乳類細胞、バキュロウイルス、細菌、および酵母と共に使用されるものにおいて産生し得る。そのような発現システムは、典型的には本発明のウイルス抗原をコードするポリヌクレオチドを使用する。そのような配列を、本明細書中で列挙したアミノ酸配列を翻訳することを含む、分子生物学の標準的な技術を用いて得ることができる。よって、本発明は、本発明のウイルス抗原をコードするポリヌクレオチドを含む。それに加えて、本発明のウイルス抗原を、合成化学的方法によって産生し得る(少なくとも部分的に、好ましくは全部)。
【0095】
本発明のワクチンを、筋肉内もしくは皮下注射、眼内投与、鼻腔内投与、または経口投与を含む、ワクチン投与のための当該分野で公知のあらゆる経路によって投与し得る。1つの実施態様において、本発明のARVDワクチンは、経口投与のために適当である。特に、そのワクチンを、飲用水を用いて家禽の群れに投与し得る。
【0096】
一般
「含む(comprising)」という用語は、「含む(including)」および「〜からなる(consisting)」を包含する。例えばXを「含む(comprising)」組成物は、Xのみからなり得、または何かさらなるものを含み得る(例えばX+Y)。
【0097】
「実質的に」という用語は、「完全に」を排除しない。例えばYを「実質的に含まない」組成物は、完全にYを含まない場合もある。必要な場合、「実質的に」という用語を、本発明の定義から省略し得る。
【0098】
数値xに関連する「約」という用語は、任意であり、そして例えばx±10%を意味する。
【0099】
2つの配列間の配列同一性パーセントへの言及は、アラインメントさせた場合に、2つの配列を比較してそのパーセントのモノマーが同じであることを意味する。このアラインメントおよび相同性または配列同一性パーセントを、当該分野で公知のソフトウェアプログラム、例えば参考文献51の7.7.18節において記載されたものを用いて決定し得る。アミノ酸またはヌクレオチド配列間の同一性を、好ましくはSmith−Waterman相同性検索アルゴリズム[52]によって、ギャップオープンペナルティー=12およびギャップ伸長ペナルティー=1のデフォルトパラメーターで、アフィンギャップ検索を用いて決定する。BLOSUM62スコアリングマトリックスを使用し得る。
【0100】
上記の本文において示すように、本発明の核酸およびポリペプチドは、以下のような配列を含み得る:
(a)配列番号1から4由来の配列と同一である(すなわち100%同一);
(b)配列番号1から4由来の配列と、配列同一性を共有する;
(c)(a)または(b)の配列と比較して、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の単一のヌクレオチドまたはアミノ酸の変化(欠失、挿入、置換)を有し、それらは別々の位置にあっても、または隣接していてもよい;および
(d)ペアワイズアラインメントアルゴリズムを用いて、配列番号1から4由来の特定の配列とアラインメントさせた場合に、x個のモノマー(アミノ酸またはヌクレオチド)の移動ウィンドウが、開始(N末端または5’)から末端(C末端または3’)へ移動し、p個のモノマー(ここでp>x)にわたるアラインメントに関してp−x+1個のそのようなウィンドウが存在し、ここで、それぞれのウィンドウは少なくともx・y個の同一のアラインメントしたモノマーを有する。ここで:xは20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、150、200から選択される;yは0.50、0.60、0.70、0.75、0.80、0.85、0.90、0.91、0.92、0.93、0.94、0.95、0.96、0.97、0.98、0.99から選択される;そしてx・yが整数でない場合、それを一番近い整数に切り上げる。好ましいペアワイズアラインメントアルゴリズムは、デフォルトパラメーター(例えばギャップオープンペナルティー=10.0、およびギャップ伸長ペナルティー=0.5、EBLOSUM62スコアリングマトリックスを使用)を用いた、Needleman−Wunschグローバルアラインメントアルゴリズム[53]である。このアルゴリズムを、EMBOSSパッケージ[54]におけるneedleツールにおいて簡便に実行する。
【0101】
本発明の核酸およびポリペプチドは、さらに、これらの配列(a)から(d)のN末端/5’および/またはC末端/3’に、さらなる配列を有し得る。
【0102】
本発明の実施は、他に示さなければ、当該分野の技術の範囲内である、化学、生化学、分子生物学、免疫学および薬理学の従来の方法を使用する。そのような技術は、文献において完全に説明されている。例えば、参考文献55〜62等を参照のこと。
したがって本発明は以下の項目を提供する:
(項目1)
(a)配列番号1または配列番号2に示す核酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有する核酸配列;
(b)配列番号1または配列番号2に示す核酸配列の逆相補体に対して少なくとも90%の同一性を有する核酸配列;
(c)配列番号1および/または2に示す核酸配列の断片であって、配列番号1および/または2からの少なくとも24個の連続的なヌクレオチドからなる、断片;
(d)配列番号1および/または2に示す核酸配列の逆相補体の断片であって、配列番号1および/または2の逆相補体の少なくとも10個の連続的なヌクレオチドからなる、断片;または
(e)配列番号1または配列番号2に示す核酸配列に、高いストリンジェンシーの条件下でハイブリダイズする核酸配列
を含む、核酸。
(項目2)
検出可能な標識をさらに含む、項目1に記載の核酸。
(項目3)
項目1に記載のARVDウイルス核酸に含まれる鋳型配列を増幅するためのプライマーを含むキットであって、該キットは、第1のプライマーおよび第2のプライマーを含み、ここで、該第1のプライマーは、該鋳型配列の一部に実質的に相補的な配列を含み、該第2のプライマーは、該鋳型配列の相補体の一部に実質的に相補的な配列を含み、ここで、実質的な相補性を有する該プライマー内の該配列は、増幅される該鋳型配列の末端を規定する、キット。
(項目4)
上記鋳型配列の一部に実質的に相補的か、または該鋳型配列の逆相補体の一部に実質的に相補的であるプローブ配列をさらに含む、項目3に記載のキット。
(項目5)
上記鋳型配列が、配列番号1または配列番号2に示す核酸配列に含まれる、項目3または項目4に記載のキット。
(項目6)
ARVD感染を診断するための、または生物学的サンプルにおいてARVDウイルスの存在もしくは非存在を同定するための方法であって、項目1に記載の核酸分子の存在または非存在を検出する工程を含む、方法。
(項目7)
(a)配列番号3または配列番号4に示すアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列;あるいは
(b)配列番号3および/または4に示すアミノ酸配列の断片であって、配列番号3および/または4に由来する少なくとも8個の連続的なアミノ酸からなる、断片
を含む、ポリペプチド。
(項目8)
項目7に記載のポリペプチドおよび/またはその抗原性断片に特異的に結合する抗体。
(項目9)
モノクローナル抗体である、項目8に記載の抗体。
(項目10)
鳥類の抗体である、項目8に記載の抗体。
(項目11)
生物学的サンプルにおいてARVD抗原の存在または非存在を検出するためのイムノアッセイであって、該サンプルを項目8から10のいずれか一項に記載の抗体と接触させる工程を含む、イムノアッセイ。
(項目12)
上記生物学的サンプルが卵である、項目6に記載の方法または項目11に記載のイムノアッセイ。
(項目13)
ARVDに対する処置またはARVDからの保護のためワクチンであって、項目7に記載のポリペプチドを含む、ワクチン。
【図面の簡単な説明】
【0103】
図1図1は、連続希釈物(2倍)中のARVDポジティブサンプルおよびネガティブコントロール(水)の増幅プロットである。
図2図2は、配列番号1および配列番号2のClustalWアラインメントである。
図3図3は、配列番号3および配列番号4のClustalWアラインメントである。
【発明を実施するための形態】
【0104】
材料および方法
腸内容物サンプル
腸内容物を、10日齢の発育阻害ヒヨコから収集した。このヒヨコの腸内容物において、多数のARVDの粒子が、PAGEによって同定された。サンプルの調製、ウイルスdsRNAの単離およびPAGEは、参考文献6において記載された。
【0105】
Qiagen QIAampウイルスRNA Miniキット、VP6ゲノムセグメントのゲル抽出
ウイルスdsRNAの増幅およびクローニング(参考文献63によって記載された改変された方法)
オリゴライゲーション:10μlのdsRNA、2.5μlのプライマーPC3 100μM、1μlのRNAse阻害剤、2.5μlのBSA、2.5μlのATP 10mM、4μlのRNAリガーゼ、2.75μlの緩衝液および2.5μlのPEG4000を、17℃で24時間インキュベートした。ライゲーションしたdsRNAを、TE緩衝液中で100μlに希釈し、そして製造会社によって記載されたように、エッペンドルフゲル抽出カラムで精製した。溶出液に、1μlのオリゴT17、100μMおよび1.5μlのDMSOを加え、そしてサーモサイクラーで2分間、99℃でインキュベートし、そして氷上で冷却した。この工程のすぐ後に、以下の試薬を加えた:2μlの水、1μlのRibolock、1.5μlのTRIS pH8.3 1M、6μlのMgCL2 50mM、2.1μlのKCl 1M、6μlのdNTP 2.5mM、0.35μlのAMV逆転写酵素。その反応物を、42℃で45分間インキュベートし、続いて50℃で15分間インキュベートした。1μlのEDTA 1Mを加えることによって、反応を停止させた。3.4μlのNaOH 1Mを加え、そして65℃で30分間インキュベートすることによって残りのRNAを除去した。
【0106】
4.3μlのTris(pH7.5、1M)および4.3μlのHCl(1M)を加えた後に、cDNAのアニーリングを、65℃で1時間行った。5μlのcDNA反応物を、5μlのExTaq緩衝液、4μlのdNTP 2.5mM、1μlのPC2プライマー 100μM、1μlのExTaqを含む50μlのPCR反応物に加えた。72℃で5分間のプレインキュベーションの間に、cDNAの部分的なオーバーハングが埋められる。これに続いて、94℃で2分間のインキュベーション、さらに94℃で30秒間、67℃で30秒間、および72℃で5分間の30サイクルを行う。PCR増幅産物の質および量を、アガロースゲル電気泳動によってチェックした。PCR産物をT/Aクローニングによってクローニングし、そして配列決定した。
【0107】
qRT−PCR
1〜4μlのdsRNA(QIAGEN QIAamp ウイルスRNA Mini キットで抽出した)に、3μlの各10μMのプライマーを加え(ARVDフォワード
【0108】
【化4】
(配列番号24)およびARVDリバース
【0109】
【化5】
(配列番号25))、そして99℃で10分間変性させた。PCRチューブを、氷上で冷却し、そしてマスターミックス(10μlのエッペンドルフRealMasterMix RTプローブ2.5×、0.5μlのARVD10μMプローブ(
【0110】
【化6】
(配列番号26))、0.25μlのrealMasterRT酵素、0.25μlのRNase阻害剤溶液)およびPCRグレードの水を、全部で25μlまで加えた。StratageneMx3000PリアルタイムPCR機で、逆転写を50℃で30分間行い、続いて最初の変性を95℃で2分間、さらに95℃で10秒間の変性および60℃で30秒間のアニーリング/増幅の2工程のサイクルを45回行った。
【0111】
結果
qRT−PCRの結果を図1に示す。増幅した断片の配列を、配列番号1に示す。
【0112】
完全なARVD VP6ヌクレオチド配列を、配列番号2に示す。コードされたポリペプチド配列を、配列番号4に示す。
【0113】
本発明を、ほんの一例によって説明した。本発明の範囲および精神の範囲内に留まりながら修飾を行い得ることが理解される。
【0114】
【表1】
【0115】
【表2】
【0116】
【数1】
【0117】
【数2】
図1
図2
図3
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]