特許第6004953号(P6004953)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6004953
(24)【登録日】2016年9月16日
(45)【発行日】2016年10月12日
(54)【発明の名称】ガス化炉及びガス化炉の運転方法
(51)【国際特許分類】
   C10J 3/46 20060101AFI20160929BHJP
【FI】
   C10J3/46 E
   C10J3/46 L
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-7780(P2013-7780)
(22)【出願日】2013年1月18日
(65)【公開番号】特開2014-136791(P2014-136791A)
(43)【公開日】2014年7月28日
【審査請求日】2015年6月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(72)【発明者】
【氏名】大場 統洋
【審査官】 森 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−292181(JP,A)
【文献】 特開平10−325505(JP,A)
【文献】 特開平10−160645(JP,A)
【文献】 実開昭56−054220(JP,U)
【文献】 特開昭60−184622(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10J 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を酸化剤と反応させて可燃性ガスを発生させるガス化炉であって、
少なくとも前記燃料を反応させるバーナを含む高温・高圧部と、
前記高温・高圧部を冷却する冷却回路と、を備え、
前記冷却回路は、
前記高温・高圧部に接続された冷却水流路と、
前記ガス化炉の運転時に第1の冷却水を供給する水供給機器と、
前記水供給機器で供給された前記第1の冷却を前記冷却水流路に送り込む給水ポンプと、
第2の冷却水を貯留する冷却水貯留部と、
前記冷却水流路を経た前記第1の冷却水及び前記第2の冷却水を前記水供給機器に戻す戻し管と、
前記冷却水流路を経た前記第1の冷却水及び前記第2の冷却水を排出可能な大気解放された排出管と、
前記排出管に、前記冷却回路内の前記第1の冷却水及び前記第2の冷却水が沸騰しない為の圧力を維持する圧力調整部材と、
記給水ポンプが停止したときに、前記冷却水貯留部からその静水圧によって前記冷却水流路に前記第2の冷却水を供給させるとともに、前記冷却水流路の排出先を前記戻し管から前記排出管に切り替える制御部と、
を備えることを特徴とするガス化炉。
【請求項2】
前記冷却水貯留部前記第2の冷却水に対し、前記冷却水貯留部内の前記第2の冷却水が沸騰しない為の圧力を印加する圧力印加源をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のガス化炉。
【請求項3】
前記圧力印加源、前記ガス化炉において前記燃料を搬送する搬送ガスを前記冷却水貯留部に供給することを特徴とする請求項2に記載のガス化炉。
【請求項4】
請求項1からのいずれか一項に記載のガス化炉の運転方法であって、
通常時において、前記給水ポンプにより前記第1の冷却水を前記冷却水流路に送り込む第一運転モードと、
前記給水ポンプが停止したときに、前記冷却水貯留部から前記冷却水流路に前記第2の冷却水を供給するとともに、前記冷却水流路の排出先を前記戻し管から前記排出管に切り替える第二運転モードと、
を切り換えることを特徴とするガス化炉の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭ガス化複合発電(Integrated Gasification Combined Cycle/IGCC)プラントや化学プラント等に適用されるガス化炉及びガス化炉の運転方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガス化炉内に設置されるバーナのノズルやスラグタップ等の高温・高圧機器(以下、高圧機器)は、運転中、高温・高圧の厳しい環境下で使用される。
そこで、従来より、これらの高圧機器を常に冷却し、その損傷を防止する冷却水系統が備えられている(例えば、特許文献1参照。)。この冷却水系統は、サブクール状態で運転を行うため、および冷却水管に漏洩が生じた場合にも、炉内のガスが冷却水系統に流入しないようにするため、ガス化炉内よりも高圧に調整されている。
【0003】
また、万が一、停電等の原因により高圧機器の冷却水ポンプが停止した場合においても、高圧機器それぞれにおいて、付着金物等のメタル温度が規定の耐熱温度以下となるよう、数分間は冷却水を供給し続け、高圧機器の損傷を防止する必要がある。
そこで、図4(a)に示すように、例えばIGCCプラント1において、通常時は、ポンプ2を経て、排熱回収ボイラ側の節炭器3、中圧蒸気ドラム4へと送る水の一部を分岐し、冷却水ポンプ6によって高温機器の冷却水系統5に供給する。また、緊急時において冷却水ポンプ6が停止した場合には、図4(b)に示すように、中圧蒸気ドラム4の缶水を冷却水として利用し、高圧機器の冷却水系統5に供給することが行われていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3746591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図4に示したような構成においては、中圧蒸気ドラム4から冷却水系統5まで、冷却水(缶水)を送るための供給管7,8が必要である。この供給管7,8は、プラントの規模および設備配置計画にもよるが、100〜200mといった長さとなることがあり、当然、コストがかかるという問題がある。
また、プラントが化学プラントである場合、そもそもガスタービンおよび排熱回収ボイラを有さず、当然、中圧蒸気ドラム4を備えていないために、ガス化炉内よりも高圧の冷却水を確保できないこともある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、緊急時においても高圧機器を確実に冷却することのできるガス化炉及びガス化炉の運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のガス化炉及びガス化炉の運転方法は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明は、微粉炭(石炭)等の炭素質固体からなる燃料を、空気、酸素富化空気、酸素、水蒸気等の酸化剤と反応させて可燃性ガスを発生させるガス化炉であって、少なくとも前記燃料を反応させるバーナを含む高温・高圧部と、前記高温・高圧部を冷却する冷却回路と、を備え、前記冷却回路は、前記高温・高圧部に接続された冷却水流路と、前記ガス化炉の運転時に第1の冷却水を供給する水供給機器と、前記水供給機器から供給された前記第1の冷却を前記冷却水流路に送り込む給水ポンプと、第2の冷却水を貯留する冷却水貯留部と、前記冷却水流路を経た前記第1の冷却水及び前記第2の冷却水を前記水供給機器に戻す戻し管と、前記冷却水流路を経た前記第1の冷却水及び前記第2の冷却水を排出可能な大気解放された排出管と、前記排出管に、前記冷却回路内の前記第1の冷却水及び前記第2の冷却水が沸騰しないための圧力を維持する圧力調整部材と、前記給水ポンプが停止したときに、前記冷却水貯留部から前記冷却水流路に前記冷却水貯留部からその静水圧によって前記第2の冷却水を供給させるとともに、前記冷却水流路の排出先を前記戻し管から前記排出管に切り替える制御部と、を備えることを特徴とする。
このようなガス化炉は、通常時においては、給水ポンプにより水供給機器より供給された水を冷却水として冷却水流路に送り込むことによって高温・高圧部を冷却し、給水ポンプが停止したときには、冷却水貯留部から冷却水流路に静水圧により冷却水を供給する。これにより、給水ポンプが停止しても、高温・高圧部を一定期間冷却し続け、残熱による焼損を未然に防止することができる。
本発明のガス化炉は、前記冷却水流路を経た前記第1の冷却水及び前記第2の冷却水を大気解放されたフラッシュ管(排出管)に排出し、前記制御部は、前記給水ポンプが停止したときに、前記冷却水流路の排出先を前記戻し管から前記排出管に切り替えるようにする。
これによって、冷却水貯留部側と冷却水の排出側との差圧を大きくすることができ、冷却水の流れを良好なものとすることができる。
さらに、本発明のガス化炉は、前記排出管に、前記冷却回路内の前記第1の冷却水及び前記第2の冷却水の圧力を該冷却水が沸騰(フラッシュ)しない為の圧力を維持する圧力調整部材が備えられている。排出管内の冷却水圧力が低すぎると、冷却水が排出管内で沸騰し、冷却水の流れを妨げるので、圧力調整部材によって圧力を維持する必要がある。
【0008】
本発明は、前記冷却水貯留部前記第2の冷却水に対し、前記冷却水貯留部内の前記第2の冷却水が沸騰しない為の圧力を印加する圧力印加源をさらに備えることができる。
これにより、緊急時に冷却水貯留部から前記冷却水流路への冷却水の供給をアシストすることができる。
ここで、前記圧力印加源は、前記ガス化炉において前記燃料を搬送する搬送ガスを前記冷却水貯留部に供給する。この搬送ガスには、窒素等を用いることができる。
【0010】
本発明は、上記したようなガス化炉の運転方法であって、通常時において、前記給水ポンプにより前記第1の冷却水を前記冷却水流路に送り込む第一運転モードと、前記給水ポンプが停止したときに、前記冷却水貯留部から前記冷却水流路に前記第2の冷却水を供給するとともに、前記冷却水流路の排出先を前記戻し管から前記排出管に切り替える第二運転モードと、を切り換えることを特徴とする。
これにより、給水ポンプが停止したときには、前記冷却水貯留部から前記冷却水流路に前記冷却水を供給することによって、高温・高圧部を一時的に冷却し続けることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、給水ポンプが停止したときには、冷却水貯留部から冷却水流路に静水圧によって冷却水を供給することで、緊急時においても高温機器を確実に冷却することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明のガス化炉を備えた石炭ガス化複合発電プラントの概略構成図である。
図2】本発明の冷却回路の構成を示す図である。
図3】本発明の冷却回路の動作状態を示す図であり、(a)は通常運転時の冷却水の流れを示す図、(b)は緊急運転時の冷却水の流れを示す図である。
図4】従来の冷却回路の動作状態を示す図であり、(a)は通常運転時の冷却水の流れを示す図、(b)は緊急運転時の冷却水の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明に係るガス化炉及びガス化炉の運転方法の一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1には、本発明の一実施形態に係る石炭ガス化複合発電プラントの概略構成図が示されている。
図1に示されているように、石炭を燃料とする石炭ガス化複合発電プラント100は、主として、石炭(燃料)をガス化する石炭ガス化炉(ガス化炉)101と、石炭ガス化炉101によってガス化された生成ガスからダストおよび硫黄分を取り除くガス精製設備(図示せず)と、ガス精製設備によって精製された精製ガスを燃焼して駆動されるガスタービン106と、ガスタービン106から導出される排ガス(排気)の熱を回収する排熱回収ボイラ(水供給機器)107と、排熱回収ボイラ107により発生した蒸気が導かれる蒸気タービン109と、ガスタービン106および蒸気タービン109によって駆動される発電機(図示せず)と、を備えている。
【0014】
石炭ガス化炉101の石炭ガス化部には、下方から、コンバスタ120及びリダクタ121が設けられている。コンバスタ120は、石炭及びチャーの一部分を燃焼させている。
【0015】
コンバスタ120及びリダクタ121には、それぞれ、コンバスタバーナ(図示せず)及びリダクタバーナ(図示せず)が設けられている。これらのバーナに対して石炭供給経路から石炭が供給される。
コンバスタバーナには、後述するガスタービン106の圧縮機106Bにより圧縮された空気が供給されるようになっている。すなわち、本実施形態の石炭ガス化複合発電プラント(ガス化発電プラント)100は、いわゆる空気吹きとなっているが、本発明は空気吹きに限定されることはなく、酸素吹き石炭ガス化複合発電システムに適用されても本発明の要旨を逸脱することはない。
【0016】
リダクタ121は、コンバスタから導かれた高温のガスによって石炭をガス化させている。これにより、石炭から一酸化炭素や水素等の可燃性の粗ガスが生成される。石炭ガス化反応は、石炭及びチャー中の炭素が高温ガス中の二酸化炭素及び水分と反応して一酸化炭素や水素を生成する吸熱反応である。
【0017】
石炭ガス化炉101のシンガスクーラ59には、高圧給水ポンプ113によって昇圧された水が供給され、高温の粗ガスと熱交換することによって過熱蒸気が生成され、蒸気配管67を通じ排熱回収ボイラ107へと導かれる。
【0018】
シンガスクーラ59を通過して温度が下げられた生成ガスには、不純物であるダストや、硫化水素または硫化カルボニルといった硫黄化合物が含まれており、これらを除去するためにガス精製設備へと導かれる。ちなみに、ガス精製設備は、脱塵装置104と、脱硫装置105とを備えている。
【0019】
脱塵装置104は、生成ガス中の不純物であるダストを取り除くものである。脱硫装置105は、生成ガス中の不純物である硫黄化合物を取り除くものである。生成ガスは、脱塵装置104および脱硫装置105により、脱塵と脱硫とが行われて精製されたクリーンな精製ガスとしてガスタービン106へと導かれる。
【0020】
ガスタービン106に導かれた精製ガスは、まず、ガスタービン106に設けられている燃焼器(図示せず)へと送られる。ガスタービン106は、燃焼器と、燃焼器によって燃焼された排ガスによって駆動されるタービン106Aと、燃焼器へと高圧の空気を送り出す圧縮機106Bとを備えている。
【0021】
燃焼器では、導かれた精製ガスと、空気とが燃焼されて高温ガスが生成される。高温ガスは、タービン106Aへと導かれ、タービン106Aを回転駆動させる。タービン106Aが排ガスによって回転駆動されることによって、タービンに接続されている回転軸(図示せず)が回転される。回転されている回転軸上には、圧縮機106Bが接続されており、圧縮機106Bは、回転軸が回転されることによって回転駆動して空気を圧縮する。圧縮機によって圧縮された空気は、燃焼器と石炭ガス化炉101とに導かれる。また、回転軸には、発電機が接続されているため、回転軸を回転させることによって、発電機が駆動されて発電する。
【0022】
ガスタービン106を回転駆動させた排ガスは、排熱回収ボイラ107へと導かれる。排熱回収ボイラ107は、ガスタービン106から導かれた排ガスの熱によって過熱蒸気を発生するものである。排熱回収ボイラ107において熱が回収された排ガスは、煙突108から石炭ガス化複合発電プラント100の外へと排出される。
【0023】
排熱回収ボイラ107において発生された過熱蒸気は、蒸気タービン109へと導かれる。また、蒸気タービン109には、前述した石炭ガス化炉シンガスクーラ59より過熱蒸気が導かれる。蒸気タービン109は、ガスタービン106と同回転軸に接続されており、いわゆる一軸式のコンバインドシステムとなっている。なお、一軸式のコンバインドシステムに限らず、別軸式のコンバインドシステムであっても構わない。
【0024】
ガスタービン106によって駆動されている回転軸は、蒸気タービン109に蒸気が導かれることによって更に駆動力が増加する。そのため、回転軸に接続されている発電機の発電量が増加する。
蒸気タービン109を回転駆動した蒸気は、復水器111へと導かれる。復水器111に導かれた蒸気は、海水等によって冷却されて水(復水)に戻される。復水は、低圧給水ポンプ112によって排熱回収ボイラ107へと給水され、排熱回収ボイラ107に導かれた排ガスによって高温の水になる。高温の水は、高圧給水ポンプ113によって排熱回収ボイラ107内へ再度導かれて過熱蒸気とされる。
【0025】
さて、上記のような石炭ガス化炉101には、コンバスタ120のバーナ(図示せず)、リダクタ121のバーナ(図示せず)、スラグタップ(図示せず)等の高圧機器(高温・高圧部)を冷却するため、図2に示すような冷却回路200が備えられている。
この冷却回路200は、石炭ガス化炉101の運転時に中圧系統より水を供給する排熱回収ボイラ107から給水を受け、各高温機器を冷却した後の冷却水を、排熱回収ボイラ107の中圧系統に戻す。この冷却回路200は、排熱回収ボイラ107に接続された給水管201と、排熱回収ボイラ107からの給水量を制御する給水制御弁202と、排熱回収ボイラ107から供給される冷却水(第1の冷却水)を昇圧する給水ポンプ203と、給水ポンプ203で昇圧された冷却水を各高圧機器に送り込むことでそれぞれの高圧機器を冷却する冷却水流路204と、各冷却水流路204に設けられたニードル弁205と、各冷却水流路204を経た冷却水を排熱回収ボイラ107に戻す戻し管206と、図示しない制御部と、を備えている。
【0026】
排熱回収ボイラ107から給水管201を介して供給された冷却水を給水ポンプ203で昇圧し、各冷却水流路204に送り込む。各冷却水流路204においては、それぞれの冷却水流路204が設けられた高圧機器を、冷却水流路204内を流れる冷却水により冷却する。ニードル弁205の開度を適宜調整することによって、高圧機器それぞれに供給する冷却水流量を初期調整できるようになっている。
【0027】
上記冷却回路200は、停電等、緊急時に給水ポンプ203の動作が停止した場合等においても、各高圧機器を安定して冷却するため、以下の構成をさらに有している。
図2に示すように、冷却回路200は、各冷却水流路204の上流側に設けられた貯水タンク(冷却水貯留部)210と、戻し管206に設けられた遮断弁211と、遮断弁211の上流側で戻し管206から分岐し、終端が大気開放されたフラッシュ管(排出管)212と、フラッシュ管212に設けられた緊急排出弁213と、緊急排出弁213の下流側に設けられ、冷却回路200内の冷却水の圧力を維持し、冷却水が沸騰しない様に飽和温度を確保するオリフィス(圧力調整部材)214を備えている。
【0028】
貯水タンク210は、各冷却水流路204よりも高所に設置され、その高低差によって貯水タンク210から各冷却水流路204に供給される冷却水(第2の冷却水)には、ヘッド圧(静水頭)が作用している。貯水タンク210の容量は、停電等によって給水ポンプ203が停止した場合に、高温機器の損傷を防止するため、それぞれの高圧機器の付着金等のメタル温度が規定の耐熱温度以下となる様、数分間は冷却水を供給し続けることのできるだけ、例えば10m程度以下、とする。
この貯水タンク210は、給水ポンプ203の下流側に設けるのが好ましい。給水ポンプ203の上流側に設ける場合には、給水ポンプ203にバイパス管を設ける必要がある。
なお、この貯水タンク210は、所定の貯水量を確保できるのであれば、いかなる構成であってもよく、例えば所定長を有したパイプにより構成してもよい。
【0029】
また、貯水タンク210には、緊急時に各高圧機器へ冷却水を供給するための圧力印加源として、例えば、石炭ガス化炉101において石炭やチャーの搬送ガスとして用いられている窒素の一部を、背圧管215により貯水タンク210に接続するのが好ましい。なお、背圧管215で貯水タンク210に供給するガスは、窒素に限らず、停電等で給水ポンプ203が停止した場合にも貯水タンク210の冷却水を供給可能で、冷却水が沸騰しない為の圧力を確保できるものであれば、他のいかなるものを用いてもよい。
背圧管215には、遮断弁216が設けられており、通常時は背圧管215を閉じておき、緊急時のみ遮断弁216を開いて貯水タンク210に窒素を送り込むようにしてもよい。
【0030】
停電等が発生して給水ポンプ203等が停止した緊急運転時(第二運転モード)において、図3(b)に示すように、冷却回路200においては、この制御部により、背圧管215の遮断弁216を開くとともに、戻し管206の遮断弁211を閉じ、フラッシュ管212の緊急排出弁213を開く。
すると、貯水タンク210との圧差により、貯水タンク210に貯えられた冷却水が各冷却水流路204に供給され、戻し管206よりも低圧のフラッシュ管212に排出される。また、背圧管215から窒素ガスが貯水タンク210に送り込まれることによって、貯水タンク210からの冷却水の供給圧をさらに高めることができる。
このようにして、停電時においても、冷却水流路204に一定期間冷却水を供給して、各高圧機器を冷却し続ける。
また、オリフィス214は、終端が大気開放されたフラッシュ管212の流路を絞る。緊急時に貯水タンク210から冷却水を供給したときに、冷却回路200内の圧力が下がりすぎるのを防ぐ。これにより、冷却水の飽和温度を高く保ち、冷却水が沸騰するのを防ぎ、系統内の冷却水流量を確保する。
【0031】
上述したような構成によれば、緊急時においても、高圧機器を一定期間確実に冷却して、その損傷等を防ぐことができる。
供給管が不要となり、設備コスト、設置スペースを抑えることができる。
【0032】
なお、上記実施形態においては、通常運転時に冷却水を供給する機器として、排熱回収ボイラ107を例示したが、所要の圧力を有する水が生成できるのであれば、他の機器を用いても良い。
また、貯水タンク210の冷却水に大気圧以上の圧力を印加する圧力印加源として、石炭やチャーの搬送用ガスとして用いられている窒素を用いる構成としたが、所要の圧力を有するのであれば、他のガスを用いても良い。
さらに、冷却回路200内の冷却水の圧力を冷却水が沸騰しない為の圧力以上に維持する圧力調整部材として、オリフィス214を用いたが、圧力調整弁に代えることも可能である。
加えて、冷却水による冷却対象となる高温・高圧部は、バーナ・スラグタップ以外のいかなるものであっても良い。
また、上記実施形態においては、石炭ガス化複合発電プラントの石炭ガス化炉101を例示したが、化学プラントのガス化炉にも上記実施形態の冷却回路200の構成を同様に適用することができ、それによって、上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0033】
59 シンガスクーラ
100 石炭ガス化複合発電プラント
101 石炭ガス化炉(ガス化炉)
104 脱塵装置
105 脱硫装置
106 ガスタービン
107 排熱回収ボイラ(水供給機器)
109 蒸気タービン
111 復水器
112 低圧給水ポンプ
113 高圧給水ポンプ
120 コンバスタ
121 リダクタ
200 冷却回路
201 給水管
202 給水制御弁
203 給水ポンプ
204 冷却水流路
205 ニードル弁
206 戻し管
210 貯水タンク(冷却水貯留部)
211 遮断弁
212 フラッシュ管(排出管)
213 緊急排出弁
214 オリフィス(圧力調整部材)
215 背圧管
216 遮断弁
図1
図2
図3
図4