(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6004955
(24)【登録日】2016年9月16日
(45)【発行日】2016年10月12日
(54)【発明の名称】球形タンクを備えた船舶およびその建造方法
(51)【国際特許分類】
B63B 25/16 20060101AFI20160929BHJP
B63B 9/06 20060101ALI20160929BHJP
【FI】
B63B25/16 101B
B63B9/06 107Z
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-12153(P2013-12153)
(22)【出願日】2013年1月25日
(65)【公開番号】特開2014-141222(P2014-141222A)
(43)【公開日】2014年8月7日
【審査請求日】2015年4月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(72)【発明者】
【氏名】塚本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】津村 健司
【審査官】
加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−058577(JP,A)
【文献】
実開昭62−027896(JP,U)
【文献】
特開平07−187056(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 25/16
B63B 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
球形タンクが、その上端部が前記球形タンクの赤道部に固定され、その下端部がファンデーションデッキ上に固定された円筒形のスカートを介して船体に支持される球形タンクを備えた船舶であって、
前記ファンデーションデッキ上に立設されて前記船体を構成する縦通隔壁が、前記スカートの外周面と前記縦通隔壁の下端側との間の距離が大きくなるように、下端が上端よりも船幅方向外側に位置して、下端から上端に向かって1/100〜1/5程度の傾斜角度を有していることを特徴とする球形タンクを備えた船舶。
【請求項2】
球形タンクが、その上端部が前記球形タンクの赤道部に固定され、その下端部がファンデーションデッキ上に固定された円筒形のスカートを介して船体に支持される球形タンクを備えた船舶であって、
前記ファンデーションデッキ上に立設されて前記船体を構成する縦通隔壁が、前記スカートの外周面と前記縦通隔壁の下端側との間の距離が大きくなるように、船首尾方向および鉛直線に沿うようにして前記ファンデーションデッキ上に立設された鉛直部と、その下端が前記鉛直部の上端に接続されるとともに、その下端がその上端よりも船幅方向外側に位置して、その下端からその上端に向かって1/100〜1/5程度の傾斜角度を有している傾斜部と、を有していることを特徴とする球形タンクを備えた船舶。
【請求項3】
球形タンクが、その上端部が前記球形タンクの赤道部に固定され、その下端部がファンデーションデッキ上に固定された円筒形のスカートを介して船体に支持される球形タンクを備えた船舶の建造方法であって、
縦通隔壁が前記ファンデーションデッキ上に立設された船体ブロックをつなぎ合わせて船体を建造する工程であって、前記縦通隔壁は、前記スカートの外周面と前記縦通隔壁の下端側との間の距離が大きくなるように、その下端がその上端よりも船幅方向外側に位置して、その下端からその上端に向かって1/100〜1/5程度の傾斜角度を有するものである工程と、
前記ファンデーションデッキの上方から前記スカートを降ろしていき、前記ファンデーションデッキ上に前記スカートを据え付ける工程と、
前記スカートの上方から前記球形タンクを降ろしていき、前記スカート上に前記球形タンクを据え付ける工程と、を備えていることを特徴とする球形タンクを備えた船舶の建造方法。
【請求項4】
球形タンクが、その上端部が前記球形タンクの赤道部に固定され、その下端部がファンデーションデッキ上に固定された円筒形のスカートを介して船体に支持される球形タンクを備えた船舶の建造方法であって、
縦通隔壁が前記ファンデーションデッキ上に立設された船体ブロックをつなぎ合わせて船体を建造する工程であって、前記縦通隔壁は、前記スカートの外周面と前記縦通隔壁の下端側との間の距離が大きくなるように、船首尾方向および鉛直線に沿うようにして前記ファンデーションデッキ上に立設される鉛直部と、その下端が前記鉛直部の上端に接続されるとともに、その下端がその上端よりも船幅方向外側に位置して、その下端からその上端に向かって1/100〜1/5の傾斜角度を有している傾斜部と、を有する工程と、
前記ファンデーションデッキの上方から前記スカートを降ろしていき、前記ファンデーションデッキ上に前記スカートを据え付ける工程と、
前記スカートの上方から前記球形タンクを降ろしていき、前記スカート上に前記球形タンクを据え付ける工程と、を備えていることを特徴とする球形タンクを備えた船舶の建造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モス方式球形タンク内に低温にて液化された天然ガス(LNG)を貯蔵して運搬するLNG船(液化天然ガス運搬船)等の球形タンクを備えた船舶およびその建造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
モス方式球形タンク内に低温にて液化された天然ガス(LNG)を貯蔵して運搬する液化ガス運搬船としては、例えば、特許文献1に開示されたもの、
図3(a)、
図3(b)および
図4に示すもの、
図5(a)、
図5(b)および
図6に示すものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平5−49519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図3(a)、
図3(b)および
図4に示す液化天然ガス運搬船1は、例えば、四個のアルミニウム製の球形タンク(「モス方式球形タンク」ともいう。)2を備えた船舶であり、これらアルミニウム製の球形タンク2はそれぞれ、その内部に、低温にて液化された天然ガスを貯蔵することができるように構成されたものである。
また、
図4に示すように、これら球形タンク2はそれぞれ、その上端部が球形タンク2の赤道部に固定され、その下端部がファンデーションデッキ4上に固定された円筒形のスカート3を介して船体5に支持されている。すなわち、これら球形タンク2の重量は、スカート3を通して船体5で受けられるようになっている。
【0005】
さらに、
図3(a)、
図3(b)および
図4に示すように、これら球形タンク2の上半部は、その下端部が上甲板6上に固定されるとともに、船首尾方向および船幅方向に沿って延びる一つの連続したタンクカバー7により覆われている。また、タンクカバー7と上甲板6との間に、伸縮継手は一切設けられておらず、タンクカバー7は剛体構造になっている。すなわち、タンクカバー7は、船体5とともに、船級協会のルール等で要求される船舶の縦強度(船首尾方向(縦方向)に対し、自重、積載される貨物、波の力により生じる曲げの力およびせん断力に対する強度)を確保する構造となっている。
なお、
図3(a)および
図4中の符号8,9,10,11はそれぞれ、縦通隔壁、船側外板、バラストタンク、船底外板を示している。
【0006】
一方、
図5(a)、
図5(b)および
図6に示す液化天然ガス運搬船21は、例えば、四個のアルミニウム製の球形タンク(「モス方式球形タンク」ともいう。)22を備えた船舶であり、これらアルミニウム製の球形タンク22はそれぞれ、その内部に、低温にて液化された天然ガスを貯蔵することができるように構成されたものである。
また、
図6に示すように、これら球形タンク22はそれぞれ、その上端部が球形タンク22の赤道部に固定され、その下端部がファンデーションデッキ24上に固定された円筒形のスカート23を介して船体25に支持されている。すなわち、これら球形タンク22の重量は、スカート23を通して船体25で受けられるようになっている。
【0007】
さらに、
図5(a)、
図5(b)および
図6に示すように、各球形タンク22の上半部は、その下端部が上甲板26上に固定された半球状のタンクカバー27により覆われている。
なお、
図5(a)および
図6中の符号28,29,30,31はそれぞれ、縦通隔壁、船側外板、バラストタンク、船底外板を示している。
【0008】
ここで、
図4および
図6に示すように、従来の縦通隔壁8,28は、船首尾方向および鉛直線に沿うようにしてファンデーションデッキ4,24上に立設されている。
また、ターミナルから
図4および
図6に示す上甲板6,26にギャングウェイを架け渡すため、
図4および
図6に示す上甲板6,26の幅、すなわち、両舷側において船首尾方向に延びる上甲板6,26を船幅方向に2500mm程度確保する必要がある。
さらに、スカート3,23の外周面に断熱材を巻くため、スカート3,23の外周面に周方向に沿って設けられた骨(補強材)12,32と、縦通隔壁8,28との隙間を人が歩ける程度、例えば400〜500mm程度確保する必要がある。
そのため、球形タンク2,22の赤道部における径を船幅方向に沿って拡げるには、船幅も拡げなければならないといった問題点があった。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、一定の船幅を保ったまま球形タンクの赤道部における径を船幅方向に沿って拡げることができ、タンク容量を増大させて、積載量を増大させることができる、球形タンクを備えた船舶およびその建造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するため、下記の手段を採用した。
本発明に係る球形タンクを備えた船舶は、球形タンクが、その上端部が前記球形タンクの赤道部に固定され、その下端部がファンデーションデッキ上に固定された円筒形のスカートを介して船体に支持される球形タンクを備えた船舶であって、前記ファンデーションデッキ上に立設されて前記船体を構成する縦通隔壁が、下端が上端よりも船幅方向外側に位置して、下端から上端に向かって1/100〜1/5程度の傾斜角度を有していることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る球形タンクを備えた船舶は、球形タンクが、その上端部が前記球形タンクの赤道部に固定され、その下端部がファンデーションデッキ上に固定された円筒形のスカートを介して船体に支持される球形タンクを備えた船舶であって、前記ファンデーションデッキ上に立設されて前記船体を構成する縦通隔壁が、船首尾方向および鉛直線に沿うようにして前記ファンデーションデッキ上に立設された鉛直部と、その下端が前記鉛直部の上端に接続されるとともに、その下端がその上端よりも船幅方向外側に位置して、その下端からその上端に向かって1/100〜1/5程度の傾斜角度を有している傾斜部と、を有していることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る球形タンクを備えた船舶によれば、球形タンクの赤道部における径を一定とした場合、スカートの外周面に周方向に沿って設けられた骨(補強材)と、縦通隔壁との隙間が(人が歩ける程度、例えば400〜500mmよりも)拡がることになる。
これにより、スカートの外周面に周方向に沿って設けられた骨(補強材)と、縦通隔壁との隙間を従来通り(人が歩ける程度、例えば400〜500mm)確保するとすれば、スカートの径および球形タンクの赤道部における径を前記拡がった分だけ大きくすることができる。すなわち、船幅を拡げることなく一定の船幅を保ったまま球形タンクの赤道部における径を船幅方向に沿って拡げることができ、タンク容量を増大させて、積載量を増大させることができる。
【0013】
本発明に係る球形タンクを備えた船舶の建造方法は、球形タンクが、その上端部が前記球形タンクの赤道部に固定され、その下端部がファンデーションデッキ上に固定された円筒形のスカートを介して船体に支持される球形タンクを備えた船舶の建造方法であって、その下端がその上端よりも船幅方向外側に位置して、その下端からその上端に向かって1/100〜1/5程度の傾斜角度を有する縦通隔壁が前記ファンデーションデッキ上に立設された船体ブロックをつなぎ合わせて船体を建造する工程と、前記ファンデーションデッキの上方から前記スカートを降ろしていき、前記ファンデーションデッキ上に前記スカートを据え付ける工程と、前記スカートの上方から前記球形タンクを降ろしていき、前記スカート上に前記球形タンクを据え付ける工程と、を備えていることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る球形タンクを備えた船舶の建造方法は、球形タンクが、その上端部が前記球形タンクの赤道部に固定され、その下端部がファンデーションデッキ上に固定された円筒形のスカートを介して船体に支持される球形タンクを備えた船舶の建造方法であって、船首尾方向および鉛直線に沿うようにして前記ファンデーションデッキ上に立設される鉛直部と、その下端が前記鉛直部の上端に接続されるとともに、その下端がその上端よりも船幅方向外側に位置して、その下端からその上端に向かって1/100〜1/5程度の傾斜角度を有している傾斜部と、を有する縦通隔壁が前記ファンデーションデッキ上に立設された船体ブロックをつなぎ合わせて船体を建造する工程と、前記ファンデーションデッキの上方から前記スカートを降ろしていき、前記ファンデーションデッキ上に前記スカートを据え付ける工程と、前記スカートの上方から前記球形タンクを降ろしていき、前記スカート上に前記球形タンクを据え付ける工程と、を備えていることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る球形タンクを備えた船舶の建造方法によれば、球形タンクの赤道部における径を一定とした場合、スカートの外周面に周方向に沿って設けられた骨(補強材)と、縦通隔壁との隙間が(人が歩ける程度、例えば400〜500mmよりも)拡がることになる。
これにより、スカートの外周面に周方向に沿って設けられた骨(補強材)と、縦通隔壁との隙間を従来通り(人が歩ける程度、例えば400〜500mm)確保するとすれば、スカートの径および球形タンクの赤道部における径を前記拡がった分だけ大きくすることができる。すなわち、船幅を拡げることなく一定の船幅を保ったまま球形タンクの赤道部における径を船幅方向に沿って拡げることができ、タンク容量を増大させて、積載量を増大させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る球形タンクを備えた船舶およびその建造方法によれば、一定の船幅を保ったまま球形タンクの赤道部における径を船幅方向に沿って拡げることができ、タンク容量を増大させて、積載量を増大させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る球形タンクを備えた船舶の断面図であって、
図4と同様の図である。
【
図2】本発明の第2実施形態に係る球形タンクを備えた船舶の断面図であって、
図6と同様の図である。
【
図3】従来の液化天然ガス運搬船の図であって、(a)は右側面図、(b)は平面図である。
【
図5】従来の液化天然ガス運搬船の図であって、(a)は右側面図、(b)は平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態に係る球形タンクを備えた船舶およびその建造方法について、
図1を用いて説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る球形タンクを備えた船舶(本実施形態では液化天然ガス運搬船)41は、
図4に示す球形タンク2、スカート3、船体5および縦通隔壁8の代わりに、球形タンク42、スカート43、船体45および縦通隔壁48を備えているという点で
図3および
図4に示す液化天然ガス運搬船1と異なる。
【0019】
船体45は、船側外板9と縦通隔壁48との間に位置するファンデーションデッキ4の幅が少なくとも1500mm程度確保され、骨(補強材)52と縦通隔壁48との隙間が少なくとも人が歩ける程度、例えば400〜500mm程度確保されるようにして、ファンデーションデッキ4上にスカート43および縦通隔壁48が立設されたものである。
【0020】
縦通隔壁48は、下端が上端よりも船幅方向外側に位置して、下端から上端に向かって1/100(好ましくは、1/50)〜1/5程度(本実施形態では、1/30程度)の傾斜角度を有している。また、縦通隔壁48の上端は、鉛直線に沿って上甲板6上に立設されたタンクカバー7の側面7aの下端近傍に位置している。
【0021】
なお、
図1に示す球形タンク42を備えた船舶41の船幅と、
図4に示す船舶1の船幅とは同じであり、
図1中のスカート43の径および球形タンク42の赤道部における径は、縦通隔壁48が傾斜して、スカート43の外周面に周方向に沿って設けられた骨(補強材)52と、縦通隔壁48との隙間が(人が歩ける程度、例えば400〜500mmよりも)拡がった分だけ、
図4に示すスカート3および球形タンク2よりも大きくなっている。
【0022】
本実施形態に係る球形タンク42を備えた船舶41の建造方法は、その下端がその上端よりも船幅方向外側に位置して、その下端からその上端に向かって1/100〜1/5程度の傾斜角度を有する縦通隔壁48がファンデーションデッキ4上に立設された船体ブロックをつなぎ合わせて船体を建造する工程と、ファンデーションデッキ4の上方からスカート43を降ろしていき、ファンデーションデッキ4上にスカート43を据え付ける工程と、スカート43の上方から球形タンク42を降ろしていき、スカート43上に球形タンク42を据え付ける工程と、を備えている。
【0023】
本実施形態に係る球形タンク42を備えた船舶41およびその建造方法によれば、球形タンク42の赤道部における径を一定とした場合、スカート43の外周面に周方向に沿って設けられた骨(補強材)52と、縦通隔壁48との隙間が(人が歩ける程度、例えば400〜500mmよりも)拡がることになる。
これにより、スカート43の外周面に周方向に沿って設けられた骨(補強材)52と、縦通隔壁48との隙間を従来通り(人が歩ける程度、例えば400〜500mm)確保するとすれば、スカート43の径および球形タンク42の赤道部における径を前記拡がった分だけ大きくすることができる。すなわち、船幅を拡げることなく一定の船幅を保ったまま球形タンク42の赤道部における径を船幅方向に沿って拡げることができ、タンク容量を増大させて、積載量を増大させることができる。
【0024】
〔第2実施形態〕
本発明の第2実施形態に係る球形タンクを備えた船舶およびその建造方法について、
図2を用いて説明する。
図2に示すように、本実施形態に係る球形タンクを備えた船舶(本実施形態では液化天然ガス運搬船)61は、
図6に示す球形タンク22、スカート23、船体25および縦通隔壁28の代わりに、球形タンク62、スカート63、船体65および縦通隔壁68を備えているという点で
図5および
図6に示す液化天然ガス運搬船21と異なる。
【0025】
船体65は、船側外板29と縦通隔壁68との間に位置するファンデーションデッキ24の幅が少なくとも1500mm程度確保され、骨(補強材)72と縦通隔壁68との隙間が少なくとも人が歩ける程度、例えば400〜500mm程度確保されるようにして、ファンデーションデッキ24上にスカート63および縦通隔壁68が立設されたものである。
【0026】
縦通隔壁68は、下方に位置する鉛直部68aと、上方に位置する傾斜部68bと、を備えている。
鉛直部68aは、下端が上端の真下に位置するとともに、船首尾方向および鉛直線に沿うようにしてファンデーションデッキ24上に立設されており、鉛直部68aの上端は、傾斜部68bの下端に接続されている。
傾斜部68bは、下端が上端よりも船幅方向外側に位置して、下端から上端に向かって1/100(好ましくは、1/50)〜1/5程度(本実施形態では、1/30程度)の傾斜角度を有している。また、傾斜部68bの上端は、船幅方向において最も外側に位置する、上甲板26上に立設されたタンクカバー27の下端近傍に位置している。
【0027】
なお、
図2に示す球形タンク62を備えた船舶61の船幅と、
図6に示す船舶21の船幅とは同じであり、
図2中のスカート63の径および球形タンク62の赤道部における径は、縦通隔壁68の傾斜部68bが傾斜して、スカート63の外周面に周方向に沿って設けられた骨(補強材)72と、縦通隔壁68の傾斜部68bとの隙間が(人が歩ける程度、例えば400〜500mmよりも)拡がった分だけ、
図6に示すスカート23および球形タンク22よりも大きくなっている。
【0028】
本実施形態に係る球形タンク62を備えた船舶61の建造方法は、船首尾方向および鉛直線に沿うようにしてファンデーションデッキ24上に立設される鉛直部68aと、その下端が鉛直部68aの上端に接続されるとともに、その下端がその上端よりも船幅方向外側に位置して、その下端からその上端に向かって1/100〜1/5程度の傾斜角度を有している傾斜部68bと、を有する縦通隔壁68がファンデーションデッキ24上に立設された船体ブロックをつなぎ合わせて船体を建造する工程と、ファンデーションデッキ24の上方からスカート63を降ろしていき、ファンデーションデッキ24上にスカート63を据え付ける工程と、スカート63の上方から球形タンク62を降ろしていき、スカート63上に球形タンク62を据え付ける工程と、を備えている。
【0029】
本実施形態に係る球形タンク62を備えた船舶61およびその建造方法によれば、球形タンク62の赤道部における径を一定とした場合、スカート63の外周面に周方向に沿って設けられた骨(補強材)72と、縦通隔壁68との隙間が(人が歩ける程度、例えば400〜500mmよりも)拡がることになる。
これにより、スカート63の外周面に周方向に沿って設けられた骨(補強材)72と、縦通隔壁68との隙間を従来通り(人が歩ける程度、例えば400〜500mm)確保するとすれば、スカート63の径および球形タンク62の赤道部における径を前記拡がった分だけ大きくすることができる。すなわち、船幅を拡げることなく一定の船幅を保ったまま球形タンク62の赤道部における径を船幅方向に沿って拡げることができ、タンク容量を増大させて、積載量を増大させることができる。
【0030】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜必要に応じて変形・変更して実施することもできる。
例えば、上述した実施形態では、本発明を液化天然ガス運搬船に適用したものを一具体例として挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、球形タンクを備えた液化天然ガス運搬船と同様の構成を有する船舶であれば、いかなる船舶にも適用可能である。
【0031】
また、第1実施形態のところで説明した隔壁48を、
図5および
図6に示す液化天然ガス運搬船21に適用することもできるし、第2実施形態のところで説明した隔壁68を、
図3および
図4に示す液化天然ガス運搬船1に適用することもできる。
【符号の説明】
【0032】
4 ファンデーションデッキ
24 ファンデーションデッキ
41 船舶
42 球形タンク
43 スカート
45 船体
48 縦通隔壁
61 船舶
62 球形タンク
63 スカート
65 船体
68 縦通隔壁
68a 鉛直部
68b 傾斜部