【実施例】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明の実施例を詳細に説明する。
図1は本発明の一実施例に係る車両用シートの概略側面図、
図2は車両用シートにおけるアンカ及びブラケットの斜視図、
図3(A)(B)はアンカのサイドバーの変形の前後におけるチャイルドシート、アンカの一部破断の側面図をそれぞれ示す。なお、前後左右はドライバーシートに着座したドライバーから見た方向をいい、Fr、Rr、L、Rで示す。
【0016】
図1に示すように、車両用シート10は、シートバック12と、シートクッション14とを有し、シートバックの下端とシートクッションの後端との間にシートリクライニング装置(図示しない)を配置してシートクッションに対してシートバックがリクライニング可能に構成されている。
【0017】
シートクッション14は、その骨格となるシートクッションフレームに発泡ウレタン等の発泡材からなるパッドを被せ、パッドをトリムカバーで被覆して構成されている。そして、たとえば、シートクッションフレームは、左右一対のサイドフレーム(図示しない)と、サイドフレームの前端間、後端間にそれぞれ架設した前後の連結パイプとからなり、平面略矩形形状に形成されている。実施例では、サイドフレームの後端間で左右方向に架設された後方の連結パイプ16のみを図示する。連結パイプ16は、通常、円形断面のパイプ材から形成されるが、必ずしも円形断面のパイプ材に限定されない。
【0018】
シートクッション14の後端には、シートクッション上にチャイルドシート20を保持するための左右一対のISO−FIX対応のアンカ30が、車両用シート10の左右方向に所定の間隔をあけて配設されている。
図1に示すように、チャイルドシート20は、後方へ延びた左右一対の係合部材24を背面22の下部に持ち、長溝状の切欠き24aが係合部材の先端に形成されている。また、
図2に示すように、アンカ30は、直立位置から斜め前方に互いに平行に延びた左右一対のサイドバー30aの前端をフロントバー30bで連結した平面視略コ字形状にワイヤ材を折曲加工して成形されている。
【0019】
図1に矢視するようにチャイルドシートの左右一対の係合部材24を対応するアンカ30に前方から近づけ、係合部材の切欠き24aをフロントバー30bに係合させることによって、チャイルドシート20がアンカに保持されてシートクッション14上に配置される。
【0020】
アンカ30は、左右方向に架設された連結パイプ16に、直立位置から斜め前方に延出するようにブラケット32を介して固定されている。ブラケット32は、左右一対のサイド壁32aの前端をフロント壁32bで連結した平面視略コ字形状に、たとえば鋼板をプレス加工して成形され、ブラケットの内面にアンカの左右一対のサイドバー30aの後端が固定されている。サイドバー30aのブラケット32の内面への固定は、たとえば溶接により行われるが、これに限定されない。
【0021】
実施例では、
図2に示すように、サイドバー30aの後端は、サイド壁32a、フロント壁32bの角部でそれぞれの内面に固定しているが、これに限定されず、たとえばサイド壁から離反した位置でフロント壁の内面(背面)に固定してもよい。しかしながら、サイドバー30aの後端をサイド壁32a、フロント壁32bの角部に配置する構成では、サイド壁、フロント壁の両方に溶接できるので強固に固定できる。
【0022】
ブラケットのサイド壁32aの後端には、連結パイプ16の前周面に対応した形状の切欠き32cが形成されている。アンカ30の固定されたブラケット32は、その切欠き32cが連結パイプ16の前周面を抱持するように、係合部材24と対応する位置に前方から連結パイプに取り付けられる。このとき、サイドバー30aが直立位置から斜め前方に延出するとともに、サイドバーが変形してサイドバーとともに係合部材24が下降したとき、係合部材が当接する位置で、ブラケット32は連結パイプ16にたとえば溶接によって固定される。
【0023】
図3(A)に示すように、実施例ではアンカのサイドバー30aは直立位置より15°前方へ傾斜して延出しているが、この前傾角αは15°に限定されない。前傾角αは、サイドバー30aが主として曲げ変形でなく座屈変形を生じる角度であれば足り、たとえば、10〜25°とされる。
ブラケットのフロント壁の上端32b’が連結パイプ16から最も離反した位置にあるから、通常、下降する係合部材の下面24’がフロント壁の上端に当接するようにブラケット32は位置決めされる。しかしながら、係合部材の下面24’とブラケットのフロント壁上端32b’との当接に限定されず、下降する係合部材24が当接してその下降を阻止する位置(係合部材の下方位置)にブラケットがあればよい。
【0024】
通常、チャイルドシート20は、アンカ30への係合部材24の係合とともに、テザーベルトを利用してシート10に保持されるが、テザーベルトは本発明と直接関係しないのでその説明は省略する。
【0025】
係合部材24に設けられる切欠き24aは、実施例では長溝形状としているが、アンカ30(フロントバー30b)と係合して、チャイルドシート20をシートクッション14に保持可能であれば足り、長溝形状に限定されない。
【0026】
後突、急停車などにより荷重がチャイルドシート20に作用すると、その荷重がチャイルドシートの係合部材24を介してアンカのフロントバー30bに伝達され、アンカ30は曲げ剛性のもとでその荷重を受ける。そして、アンカのサイドバー30aの後端が連結パイプ16に固定され、フロントバー30bがサイドバー前端に連結された片持ち形状にアンカ30は成形されているため、アンカに大きな荷重が作用して、曲げ剛性で荷重を支え切れないと、アンカの変形、具体的には、サイドバーの変形が避けられない。
【0027】
しかしながら、本発明では、アンカのサイドバー30aは直立位置から斜め前方に延出して設けられているため(
図3(A)参照)、サイドバーは、曲げ変形ではなく座屈変形し(
図3(B)参照)、曲げ変形に比較してその変形量は小さい。
さらに、フロントバー30bに係合されたチャイルドシートの係合部材24はサイドバー30aの変形に伴って下降するが、ブラケット32は係合部材の下方に位置して、下降する係合部材の下面24’がフロント壁の上端32b’に当接して、ブラケットが荷重を受けて係合部材の下降、つまりは、サイドバーの変形を阻止する。
そのため、後突、急停車などによって大きな荷重がチャイルドシート20に作用して係合部材を介してアンカ30に伝達されても、アンカの過度の変形が、アンカを大径化することなく、確実に防止される。
【0028】
また、連結パイプ16の前周面を抱持する切欠き32cをブラケットのサイド壁32aの後端に設けているため、十分な固定長さ(溶接長さ)が確保される。そのため、ブラケット32は連結パイプ16に強固に固定され、チャイルドシート20からアンカ30に伝達された荷重に十分に耐えられる。
さらに、ブラケットのフロント壁32bは、係合部材24の延出方向(前後方向)と直交する方向(左右方向)に位置するため、チャイルドシート20が左右方向にずれてシート10に載せられても、係合部材の下面24’がフロント壁上端32b’に確実に当接される。
【0029】
上記のように、本発明によれば、アンカのサイドバーは、ブラケットに支持されて直立位置から斜め前方に延出し、サイドバーが変形したとき、係合部材と当接可能にブラケットは位置している。そのため、サイドバーの変形は座屈変形となり、曲げ変形に比較してその変形量は小さく、さらに、チャイルドシートの係合部材はサイドバーの変形に伴って下降するがブラケットに当接して、ブラケットが荷重を受けて係合部材の下降、つまりは、サイドバーの変形を阻止する。したがって、アンカに大きな荷重が作用してもアンカの過度の変形が、アンカを大径化することなく、確実に防止される。
【0030】
上述した実施例は、この発明を説明するためのものであり、この発明を何等限定するものでなく、この発明の技術範囲内で変形、改造等の施されたものも全てこの発明に包含されることはいうまでもない。
【0031】
たとえば、実施例では、アンカはシートクッション側に設けられている。すなわち、シートバックフレームの左右一対のサイドフレームの下端間に架設された連結パイプにブラケットを介してアンカが固定されている。しかしながら、アンカをシートバック側に設けてもよく、シートバックフレームの左右一対のサイドフレームの下端間で左右方向に架設された連結パイプにブラケットを介して固定してもよい。