【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成24年度、総務省、マルチバンド・マルチモード対応センサー無線通信基盤技術に関する研究開発の委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態であるについて、図面を参照して説明する。なお、図面において、同一のものについては同一の符号を付して表示する。
【0014】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1について説明する。
【0015】
<受信機100の構成>
本発明の実施の形態1に係る受信機100の構成例について説明する。
図3は、受信機100のブロック図である。
【0016】
図3において、受信機100は、アンテナ1−1、1−2、LNA2−1、2−2、周波数変換器6−1、6−2、多相局部発振信号生成部7、可変利得増幅器(Variable Gain Amplifier:以下、VGAという)8−1、8−2、低域通過フィルタ(Low Pass Filter:以下、LPFという)9−1、9−2、アナログ−デジタル信号変換器(Analog Digital Converter:以下、ADCという)10−1、10−2、および位相選択信号生成部11と、デジタル信号処理部30と、を備える。
【0017】
アンテナ1−1で受信された受信信号1は、LNA2−1で増幅され、周波数変換器6−1〜2に入力される。同様に、アンテナ1−2で受信された受信信号2は、LNA2−2で増幅され、周波数変換器6−1〜2に入力される。受信信号1、2は、高周波信号である。
【0018】
多相局部発振信号生成部7は、それぞれ位相が異なる複数の局部発振信号を周波数変換器6−1〜2に出力する。位相選択信号生成部11は、位相選択信号を周波数変換器6−1〜2に出力する。
【0019】
周波数変換器6−1〜2は、受信信号1、2を複数の局部発振信号で周波数変換し、それぞれ位相が異なる複数のベースバンド信号を生成する。そして、周波数変換器6−1〜2は、位相選択信号に基づいてベースバンド信号を選択し、選択したベースバンド信号をVGA8−1〜2のそれぞれに出力する。このとき、周波数変換器6−1の出力信号と周波数変換器6−2の出力信号は、位相が90度異なる信号である。
【0020】
VGA8−1〜2は、周波数変換器6からのベースバンド信号を増幅し、LPF9−1〜2に出力する。LPF9−1〜2は、VGA8−1〜2からのベースバンド信号から不要な高周波成分を除去し、ADC10−1〜2に出力する。ADC10−1〜2は、LPF9−1〜2からのベースバンド信号をデジタル信号に変換する。
【0021】
ADC10−1〜2から出力されたデジタル信号は、デジタル信号処理部30に入力される。デジタル信号処理部30は、デジタル信号に対して所定の信号処理を行い、図示しない出力装置から音声または画像として出力する。また、デジタル信号処理部30は、信号処理の結果を、フィードバック信号として位相選択信号生成部11に出力する。例えば、デジタル信号処理部30は、受信信号のレベル検出処理を行い、レベル検出結果が最大となるようにフィードバック信号を、位相選択信号生成部11へ出力する。
【0022】
<多相局部発振信号生成部7の構成>
多相局部発振信号生成部7の構成例について説明する。
図4は、多相局部発振信号生成部7のブロック図である。
【0023】
図4において、多相局部発振信号生成部7は、多相局部発振信号生成回路12、および基準局部発振信号生成部13を有する。多相局部発振信号生成回路12は、一般的な回路であるDフリップフロップで構成される。多相局部発振信号生成回路12は、基準局部発振信号生成部13から出力された基準局部発振信号を多相化し、それぞれ位相が異なる複数の局部発振信号を出力する。
【0024】
図4において、複数の局部発振信号は、例えば、LO−000信号、LO−045信号、LO−090信号、LO−135信号、LO−180信号、LO−225信号、LO−270信号、およびLO−315信号である。
【0025】
図5は、複数の局部発振信号のタイミングチャートである。
図5において、LO−000〜315信号のHi期間は周期の1/8であり、位相がLO−000信号から順番に45度ずれている。
【0026】
<周波数変換器6−1の構成>
周波数変換器6−1の構成例について説明する。
図6は、周波数変換器6−1の構成図である。
【0027】
図6において、周波数変換器6−1は、Vin1端子、Vin2端子、LO−000〜315端子、P1−000〜315端子、P2−000〜315端子、Voutp端子、およびVoutn端子を有する。
【0028】
Vin1端子は、LNA2−1と接続され、受信信号1を入力する。Vin2端子は、LNA2−2と接続され、受信信号2を入力する。LO−000〜315端子は、多相局部発振信号生成部7から出力されたLO−000〜315信号を入力する。Voutp端子およびVoutn端子は、それぞれ、VGA8−1と接続される。P1−000〜315端子およびP2−000〜315端子は、それぞれ、位相選択信号生成部11と接続される。
【0029】
ここで、P1−000〜315端子およびP2−000〜315端子に入力される位相選択信号は、それぞれ、「P1−000〜315信号」および「P2−000〜315信号」という。
【0030】
Vin1端子から入力された受信信号1は、各パッシブミキサで周波数変換される。各パッシブミキサは、ゲートがそれぞれLO−000〜315端子と接続されたNMOSで構成される。そして、受信信号1は、各パッシブミキサに接続された各カスコードアンプで増幅され、Voutp端子、Voutn端子から出力される。
【0031】
各カスコードアンプは、カスコードトランジスタのゲートに、P1−000〜315端子が接続され、出力はVoutp端子またはVoutn端子に接続されている。このとき、それぞれのパッシブミキサのゲートに入力されるLO−000〜315信号は、45度ずつ位相が異なるため、各パッシブミキサから各カスコードアンプに入力される信号も45度ずつ位相が異なる。
【0032】
よって、P1−000〜315端子に入力される位相選択信号に基づきカスコードトランジスタがオン、オフされることでカスコードアンプがオン、オフする。これにより、Vout端子に出力される信号の位相を選択的に調整することができる。
【0033】
具体例として、P1−000信号がHiであり、かつ、P1−045〜315信号がLowである場合を説明する。この場合、P1−000端子に接続されたカスコードトランジスタはオンとなる一方で、P1−045〜315端子に接続されたカスコードトランジスタはオフとなる。よって、LO−000信号とLO−180信号により周波数変換された信号が、Voutp端子、Voutn端子に出力される。
【0034】
このときのVoutp端子、Voutn端子に出力された信号を基準とすると、P1−045信号のみがHiの場合には、45度位相が遅れた信号が出力される。P1−090〜315信号についても同様である。したがって、
図6において、P1−000〜315信号のいずれかをHiにすることで、位相を選択的に調整することができる。
【0035】
また、Vin2端子から入力された受信信号2も上記同様に周波数変換され、その後、P2−000〜315信号により選択的に位相調整された信号がVoutp端子、Voutn端子に出力される。
【0036】
また、周波数変換された受信信号1を増幅するカスコードアンプと周波数変換された受信信号2を増幅するカスコードアンプの負荷は共通である。そのため、Voutp端子とVoutn端子には、周波数変換された受信信号1と周波数変換された受信信号2が合成された信号が出力される。さらに、これらの信号は、位相が等しくなるように位相調整されるので、最大比合成が可能となる。具体的には、デジタル信号処理部30が、受信信号のレベル検出処理を行い、レベル検出結果が最大となるように位相選択信号生成部11にフィードバック信号を出力することで、最大比合成となる。このときフィードの方法としては、例えば、以下の2つの方法がある。1つは、受信機100の起動時に各位相選択信号に対するレベル検出結果をデジタル信号処理部30で記憶し、レベル検出結果が最大となった位相選択信号を用いるようにフィードバック信号を出力するようにしても良い。もう1つは、一定期間ごとに位相選択信号を切り替えてデジタル信号処理部30で位相選択信号切り替え前後のレベル検出結果を比較し、切り替え後レベル検出結果の方が高い場合は今回の切り替え方向に位相選択信号の切り替えを続け、切り替え後レベル検出結果の方が低い場合は今回と逆方向に位相選択信号の切り替えを続けることで、レベル検出結果が最大となる設定を探索するようにフィードバック信号を出力するとしても良い。
【0037】
以上、周波数変換器6−1を例にその構成を説明したが、周波数変換器6−2も同様であるので、ここでの説明は省略する。ただし、周波数変換器6−2は、P1−000〜315端子の配置が周波数変換器6−1のそれと異なる。すなわち、周波数変換器6−2の場合、
図6において、例えば、P1−000端子がP1−090端子、P1−045端子がP1−135端子、P1−090端子がP1−180端子・・・というように、90度ずつずれた構成となる。
【0038】
<受信機100の作用効果>
以上説明したように、受信機100は、それぞれ位相が異なる複数の局部発振信号で受信信号を周波数変換し、それにより生成された複数のベースバンド信号の中から、位相選択信号に基づいて所定の位相のベースバンド信号を選択し、合成を行う。これにより、受信機100は、位相変化のための抵抗と容量を用いることがないので、回路規模の増大を抑えることができる。また、受信機100は、受信信号の振幅利得を最大化し、受信感度特性を改善することができる。
【0039】
なお、本実施の形態では、多相局部発振信号生成部から出力される局部発振信号の数を8としたが、その数はこれに限定されない。
【0040】
また、本実施の形態では、P1−000〜315信号のいずれか1つをHiとすることで選択的に位相調整を行うとしたが、2つ以上の信号を同時にHiとすることで選択的に位相調整を行うようにしてもよい。具体的には、位相関係が隣り合う信号を同時Hiにすることで、位相調整ステップを半分にでき、より高精度に位相調整することが可能となる。
【0041】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2について説明する。実施の形態1に係る受信機100は、周波数変換に用いる局部発振信号の奇数倍の周波数に存在する高調妨害波を受信信号と同じ帯域内に周波数変換してしまうことで、受信特性劣化を招くおそれがある。そこで、本実施の形態に係る受信機200は、高調妨害波の周波数変換を抑圧する高調波抑圧周波数変換器(Harmonic Rejection Mixer :以下HRMという)を用いる。
【0042】
<受信機200の構成>
受信機200の構成例について説明する。
図7は、受信機200のブロック図である。
【0043】
図7において、受信機200は、周波数変換器6−1〜2の代わりに、HRM14−1〜2を有する。
【0044】
<HRM14−1の構成>
HRM14−1の構成例について説明する。
図8は、HRM14−1のブロック図である。
【0045】
図8において、HRM14−1は、周波数変換器6−1のカスコードアンプの代わりに、出力信号選択部15−1、2を備えている。出力信号選択部15−1と15−2は同じ構成である。以下では、出力信号選択部15−1を例に説明する。
【0046】
出力信号選択部15−1は、カスコードアンプ部16を複数備える。
図8において、カスコードアンプ部16は、例えば、カスコードアンプ部16−000〜315の8つである。ここで、カスコードアンプ部16−000を例に説明する。カスコードアンプ部16−000は、ゲートにLO−000信号が入力されるパッシブミキサから信号を入力する。そして、カスコードアンプ部16−000は、位相選択信号P1−315信号、P1−000信号、P1−045信号、P1−135信号、P1−180信号、およびP1−225信号に基づいて、信号を選択する。そして、カスコードアンプ部16−000は、選択した信号を、Voutp端子またはVoutn端子に出力する。これと同様にして、カスコードアンプ部16−045〜315も、図示で接続された位相選択信号に基づいて信号を選択し、Voutp端子またはVoutn端子へ出力する。
【0047】
以上、HRM14−1を例にその構成を説明したが、HRM14−2も同様であるので、ここでの説明は省略する。ただし、HRM14−2は、P1−000〜315端子の配置がHRM14−1のそれと異なり、90度ずつずれた構成となる。
【0048】
<カスコードアンプ部16の構成>
カスコードアンプ部16の構成例について説明する。
図9は、カスコードアンプ部16のブロック図である。なお、ここで説明するカスコードアンプ部16は、
図8に示すカスコードアンプ部16−000〜315の任意の1つである。
【0049】
図9において、カスコードアンプ部16は、パッシブミキサと接続する入力端子、Voutp端子と接続する正相出力端子、Voutn端子と接続する逆相出力端子、および、位相選択信号が入力されるA〜F端子を備えている。
【0050】
入力端子は、増幅トランジスタM21、M22のゲートに接続している。増幅トランジスタM21のドレインは、カスコードトランジスタM23、M25のソースと接続している。増幅トランジスタM22のドレインは、カスコードトランジスタM24、M26のソースと接続している。カスコードトランジスタM23、M24のドレインは、正相出力端子と接続している。カスコードトランジスタM25、M26のドレインは、逆相出力端子と接続している。
【0051】
カスコードトランジスタM23のゲートは、B端子と接続している。カスコードトランジスタM24のゲートは、A〜C端子を入力とする論理和回路OR1の出力と接続している。カスコードトランジスタM25のゲートは、E端子と接続している。カスコードトランジスタM26のゲートは、D〜F端子を入力とする論理和回路OR2の出力と接続している。
【0052】
また、増幅トランジスタM21とM22のゲート幅の比は、およそ(√2−1):1である。また、カスコードトランジスタM23とM24のゲート幅の比も、およそ(√2−1):1である。また、カスコードトランジスタM25とM26のゲート幅の比も、およそ(√2−1):1である。これらのゲート幅の比は、カスコードアンプの利得比となる。
【0053】
図10は、出力信号選択部15−1のカスコードアンプ部16−000〜315のそれぞれのA〜B端子に接続される位相選択信号の関係を示す。
【0054】
例えば、P1−000信号のみHiの場合、
図10に示すように、カスコードアンプ部16−000のB端子、カスコードアンプ部16−045のA端子、カスコードアンプ部16−315のC端子、カスコードアンプ部16−135のF端子、カスコードアンプ部16−180のE端子、およびカスコードアンプ部16−225のD端子がHiとなる。したがって、Voutp端子には、カスコードアンプ部16−000から利得比√2の信号、カスコードアンプ16−045から利得比1の信号、およびカスコードアンプ部16−315から利得比1の信号が出力される。このときのVoutp端子に出力される信号のベクトル図を、
図11に示す。
【0055】
図11Aは、受信信号の周波数がパッシブミキサのゲートに入力される局部発振信号の周波数とほぼ同じときのベクトル図である。
図11Aにおいて、各出力は45度位相差を持ち、利得比が1:√2:1である。
【0056】
図11Bは、受信信号の周波数がパッシブミキサのゲートに入力される局部発振信号の周波数の3倍であるときのベクトル図である。
図11Bにおける受信信号は、受信特性劣化を招く高調妨害波であるが、局部発振信号の3次高調波と周波数変換を行うため、
図11Aと比べて位相差が3倍となる。このとき、それぞれの出力信号ベクトルを合成すると相殺されることから、高調妨害波が受信信号と同じ帯域に周波数変換されることを抑えることができる。
【0057】
P1-045〜315信号のいずれかがHiとなったときも同様な位相、利得関係を持った出力信号となり、合成後の信号は、P1−000信号がHiのときを基準にして45度ずつ調整することが可能である。また、出力信号選択部15−2もP2−000〜315により同様の動作を行う。これにより、出力信号選択部15−1と15−2から出力される信号の位相が等しくなるように位相調整することで、最大比合成が可能となる。
【0058】
<受信機200の作用効果>
以上説明したように、受信機200は、受信機100と同じ作用効果を得ることができる。また、受信機200は、高調妨害波の周波数変換を抑圧するHRM14−1〜2を用いることで、受信機100のように、周波数変換に用いる局部発振信号の奇数倍の周波数に存在する高調妨害波を受信信号と同じ帯域内に周波数変換してしまい、受信特性劣化を招くということがない。
【0059】
なお、本実施の形態では、多相局部発振信号生成部から出力される局部発振信号の数を8としたが、その数はこれに限定されない。
【0060】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3について説明する。本実施の形態に係る受信機300は、受信機200に比べて位相調整を高精度にしたHRMを用いる。
【0061】
<受信機300の構成>
受信機300の構成例について説明する。
図12は、受信機300のブロック図である。
【0062】
図12において、受信機300は、HRM14−1〜2の代わりに、HRM17−1〜2を有する。
【0063】
<HRM17−1の構成>
HRM17−1の構成例について説明する。
図13は、HRM17−1のブロック図である。
【0064】
図13において、HRM17−1は、出力選択部15−1〜2の代わりに、出力選択部18−1〜2を備えている。出力信号選択部18−1と18−2は同じ構成である。以下では、出力信号選択部18−1を例に説明する。
【0065】
出力信号選択部18−1は、カスコードアンプ部19を複数備える。
図13において、カスコードアンプ部19は、例えば、カスコードアンプ部19−000〜315の8つである。ここで、カスコードアンプ部19−000を例に説明する。カスコードアンプ部19−000は、ゲートにLO−000信号が入力されるパッシブミキサから信号を入力する。そして、カスコードアンプ部19−000は、位相選択信号P1−000信号、P1−022.5信号、P1−045信号、P1−067.5信号、P1−090信号、P1−112.5信号、P1−135信号、P1−157.5信号、P1−180信号、P1−202.5信号、P1−225信号、P1−247.5信号、P1−270信号、P1−292.5信号、P1−315信号、およびP1−337.5信号に基づいて、信号を選択する。そして、カスコードアンプ部19−000は、選択した信号を、Voutp端子またはVoutn端子に出力する。これと同様にして、カスコードアンプ部19−045〜315も、図示で接続された位相選択信号に基づいて信号を選択し、Voutp端子またはVoutn端子へ出力する。
【0066】
以上、HRM17−1を例にその構成を説明したが、HRM17−2も同様であるので、ここでの説明は省略する。ただし、HRM17−2は、P1−000〜315端子の配置がHRM17−1のそれと異なり、90度ずつずれた構成となる。
【0067】
<カスコードアンプ部19の構成>
カスコードアンプ部19の構成例について説明する。
図14は、カスコードアンプ部19のブロック図である。なお、ここで説明するカスコードアンプ部19は、
図13に示すカスコードアンプ部19−000〜315の任意の1つである。
【0068】
図14において、カスコードアンプ部19は、パッシブミキサと接続する入力端子、Voutp端子と接続する正相出力端子、Voutn端子と接続する逆相出力端子、および、位相選択信号が入力されるA〜N端子を備えている。
【0069】
入力端子は、増幅トランジスタM31、M32、M33のゲートに接続している。増幅トランジスタM31のドレインは、カスコードトランジスタM34、M37のソースと接続している。増幅トランジスタM32のドレインは、カスコードトランジスタM35、M38のソースと接続している。増幅トランジスタM33のドレインは、カスコードトランジスタM36、M39のソースと接続している。カスコードトランジスタM34、M35、M36のドレインは、正相出力端子と接続している。カスコードトランジスタM37、M38、M39のドレインは、逆相出力端子と接続している。
【0070】
カスコードトランジスタM34のゲートは、C〜E端子を入力とする論理和回路OR11の出力と接続している。カスコードトランジスタM35のゲートは、B〜F端子を入力とする論理和回路OR12の出力と接続している。カスコードトランジスタM36のゲートは、A〜G端子を入力とする論理和回路OR13の出力と接続している。カスコードアンプM37のゲートは、J〜L端子を入力とする論理和回路OR14の出力と接続している。カスコードアンプM38のゲートは、I〜M端子を入力とする論理和回路OR15の出力と接続している。カスコードアンプM39のゲートは、H〜N端子を入力とする論理和回路OR16の出力と接続している。
【0071】
また、増幅トランジスタM31とM32とM33のゲート幅比は、2:2:3である。また、カスコードトランジスタM34とM35とM36の比も、2:2:3である。また、カスコードトランジスタM37とM38とM39の比も、2:2:3である。これらのゲート幅の比は、カスコードアンプの利得比となる。
【0072】
図15は、出力信号選択部18−1のカスコードアンプ部19−000〜315のそれぞれのA〜N端子に接続される位相選択信号の関係を示す。
【0073】
例えば、P1−000信号のみHiの場合、
図15に示すように、カスコードアンプ部19−000のD端子、カスコードアンプ部19−045のB端子、カスコードアンプ部19−135のM端子、カスコードアンプ部19−180のK端子、カスコードアンプ部19−225のI端子、カスコードアンプ部19−315のF端子がHiとなる。したがって、Voutp端子には、カスコードアンプ部19−000から利得比7の信号、カスコードアンプ部19−045から利得比5の信号、カスコードアンプ部19−315から利得比5の信号が出力される。このときのVoutp端子に出力される信号のベクトル図を、
図16Aおよび
図16Bに示す。同様に、P1−022.5信号のみがHiのときのVoutp端子に出力される信号のベクトル図を、
図16Cおよび
図16Dに示す。
【0074】
図16Aと
図16Cは、受信信号の周波数がパッシブミキサのゲートに入力される局部発振信号の周波数とほぼ同じときのベクトル図である。
図16Bと
図16Dは、受信信号の周波数がパッシブミキサのゲートに入植される局部発振信号の周波数の3倍であるときのベクトル図である。
図13Bにおける受信信号は、受信特性劣化を招く高調妨害波であるが、局部発振信号の3次高調波と周波数変換を行うため、
図16Aと
図16Cと比べて位相差が3倍となる。このとき、それぞれの出力信号ベクトルを合成すると相殺されることから、高調妨害波が受信信号と同じ帯域に周波数変換されることを抑えることができる。
【0075】
P1-045〜337.5信号のいずれかがHiとなったときも同様な位相、利得関係を持った出力信号となり、合成後の信号は、P1−000信号がHiのときを基準にして22.5度ずつ調整することが可能である。また、出力信号選択部18−2もP2−000〜337.5により同様の動作を行う。これにより、出力信号選択部18−1と18−2から出力される信号の位相が等しくなるように位相調整することで、最大比合成が可能となる。
【0076】
<受信機300の作用効果>
以上説明したように、受信機300は、受信機100、受信機200と同じ作用効果を得ることができる。また、受信機300は、受信機200よりも高精度な位相調整が可能となる。
【0077】
なお、本実施の形態では、多相局部発振信号生成部から出力される局部発振信号の数を8としたが、その数はこれに限定されない。
【0078】
(実施の形態4)
本発明の実施の形態4について説明する。本実施の形態に係る受信機400は、カスコードアンプの代わりに、オペアンプを用いたHRMを用いる。
【0079】
<受信機400の構成>
受信機400の構成例について説明する。
図17は、受信機400のブロック図である。
【0080】
図17において、受信機400は、HRM17−1〜2の代わりに、HRM20−1〜2を有する。
【0081】
<HRM20−1の構成>
HRM20−1の構成例について説明する。
図18は、HRM20−1のブロック図である。
【0082】
図18において、HRM20−1は、出力選択部18−1〜2の代わりに、出力選択部21−1〜2を備えている。出力信号選択部21−1と21−2は同じ構成である。出力選択部21−1〜2の出力信号は、オペアンプ(以下、OPという)23を介して、Voutp端子、Voutn端子に出力される。OP23は、フィードバック抵抗Rfを用いた構成である。以下では、出力信号選択部21−1を例に説明する。
【0083】
出力信号選択部21−1は、可変抵抗部22を複数備える。
図18において、可変抵抗部22は、例えば、可変抵抗部22−000〜315の8つである。ここで、可変抵抗部22−000を例に説明する。可変抵抗部22−000は、ゲートにLO−000信号が入力されるパッシブミキサから信号を入力する。そして、可変抵抗部22−000は、位相選択信号P1−000信号、P1−022.5信号、P1−045信号、P1−067.5信号、P1−090信号、P1−112.5信号、P1−135信号、P1−157.5信号、P1−180信号、P1−202.5信号、P1−225信号、P1−247.5信号、P1−270信号、P1−292.5信号、P1−315信号、およびP1−337.5信号に基づいて、信号を選択する。そして、可変抵抗部22−000は、選択した信号を、OP23を介して、Voutp端子、Voutn端子に出力する。これと同様にして、可変抵抗部22−045〜315も、図示で接続された位相選択信号に基づいて信号を選択し、OP23を介して、Voutp端子、Voutn端子に出力する。
【0084】
以上、HRM20−1を例にその構成を説明したが、HRM20−2も同様であるので、ここでの説明は省略する。ただし、HRM20−2は、P1−000〜315端子の配置がHRM20−1のそれと異なり、90度ずつずれた構成となる。
【0085】
<可変抵抗部22の構成>
可変抵抗部22の構成例について説明する。
図19は、可変抵抗部22の構成図である。なお、ここで説明する可変抵抗部22は、
図18に示す可変抵抗部22−000〜315の任意の1つである。
【0086】
可変抵抗部22は、パッシブミキサと接続する入力端子、OP23の正相入力端子と接続する正相出力端子、OP23の逆相入力端子と接続する逆相出力端子を備える。入力端子は、NMOSトランジスタで構成された抵抗切替スイッチM41〜46のソースに接続される。
【0087】
抵抗切替スイッチM41のドレインは、抵抗R41と接続される。抵抗切替スイッチM42〜46のドレインは、抵抗42〜46に接続される。抵抗R41〜43において、抵抗切替スイッチM41〜M43に接続されていない方の端子は、正相出力端子に接続される。抵抗R44〜46において、抵抗切替スイッチM44〜M46に接続されていない方の端子は、逆相出力端子に接続される。
【0088】
抵抗R41とR42とR43の抵抗比は、2:3:3である。また、抵抗R44とR45とR46の抵抗比も、2:3:3である。可変抵抗部22とOP23の利得は、Rf/(可変抵抗部の抵抗値)に比例し、出力信号の振幅・位相関係は、
図16と等しくなる。
【0089】
<受信機400の作用効果>
以上説明したように、受信機400は、受信機100、受信機300と同じ作用効果を得ることができる。
【0090】
なお、本実施の形態では、多相局部発振信号生成部から出力される局部発振信号の数を8としたが、その数はこれに限定されない。
【0091】
また、本実施の形態では、HRM構成について説明したが、可変抵抗部を用いず、高調妨害波を抑圧しない周波数変換としても構わない。
【0092】
また、本実施の形態は、実施の形態3の構成においてカスコードアンプの代わりにオペアンプを用いる例としたが、これに限定されない。例えば、実施の形態1または2の構成においてカスコードアンプの代わりにオペアンプを用いてもよい。
【0093】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、上記説明は一例であり、種々の変形が可能である。