(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
燃焼筒の内壁面の近辺における予混合気の燃焼を防止するためには、予混合気濃度を可燃限界以下にする必要がある。しかしながら、NOxの低減のためには、圧縮空気を燃料との混合に用いる方がフィルム空気として用いるよりも好ましい。このため、燃焼機では、フィルム空気の供給量を十分に増加できず、フィルム空気として使用可能な圧縮空気の空気量が限られている。従って、予混合気は、出口外側リングの下流端付近から燃焼し、燃焼筒の内壁面の近辺でも燃焼している場合がある。
【0007】
また、予混合気は、出口外側リングの下流端付近のような燃焼器の上流領域から燃焼すると、高温燃焼ガスが燃焼器の出口に至るまでに滞留する滞留時間が長くなる。燃焼ガスの滞留時間に比例して、NOxの生成量は増加するので、NOxの低減のためには燃焼ガスの滞留時間は短い方が好ましい。
【0008】
また、NOxの生成量は、燃焼ガスの火炎温度の上昇に伴って増加する。
予混合気は、メインバーナで1次の混合が行われるが、メインバーナを出た後も燃焼するまで継続して混合が促進される。このため、燃焼器の下流側ほど燃料の濃度がより均一化されるので、燃焼ガスの最高火炎温度が低下する。すなわち、NOxの低減のためには、混合が完了してから燃焼させることが好ましい。また、混合が完了してからの燃焼は、燃焼ガスの滞留時間も短縮されることとなり、NOxの生成量がより低減される。一方、燃焼器の上流側(燃焼器頭部)の予混合気ほど、混合が十分ではなく、燃料の濃度が均一化されていない。このため燃焼器の上流側における燃焼ほど、最高火炎温度が高くなり、かつ高温燃焼ガスの滞留時間も長くなるので、NOxの生成量が増加する。
【0009】
さらに、燃焼器の上流側である燃焼器頭部で予混合気が燃焼するほど、燃焼筒の内壁面において温度が高くなる領域が広くなる。このため、燃焼筒の内壁面に対する冷却熱量を増加させるために用いるフィルム空気量を増加させる必要が生じ、燃焼用の空気量が減少される。または、冷却媒体との熱交換量が増加するため、温度が下がるので、燃焼器の出口ガス温度を高くする必要が生じる。これらの結果、NOxの生成量も増加する傾向となる。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、NOxの生成量をより低減できる燃焼火炎を実現する燃焼器及びガスタービンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の燃焼器及びガスタービンは以下の手段を採用する。
【0012】
本発明の第一態様に係る燃焼器は、パイロットノズルと、前記パイロットノズルの外周側で周方向に間隔を隔てて複数配置され予混合燃焼を行うメインノズルと、前記パイロットノズルと各前記メインノズルとを取り囲む内筒と、前記内筒の先端に設けられるリング部と、内面が前記内筒の外周に嵌合されると共に、前記リング部を取り囲む燃焼筒と、を備えた燃焼器であって、前記リング部は、前記燃焼筒の内壁面に対して平行、又は予混合気の流れの下流側ほど内径が小さく形成される。
【0013】
本構成に係る燃焼器は、パイロットノズルと、パイロットノズルの外周側で周方向に間隔を隔てて複数配置され予混合燃焼を行うメインノズルとを備える。また、本構成は、パイロットノズルと各メインノズルとを取り囲む内筒と、内筒の先端に設けられるリング部と、内面が内筒の外周に嵌合されると共に、リング部を取り囲む燃焼筒とを備える。
【0014】
メインノズルからの燃料と空気との予混合気は、混合及び保炎のために旋回流とされており、燃焼筒の内壁面側に流れて燃焼する傾向にある。そこで、本構成は、リング部を従来の円錐状ではなく、燃焼筒の内壁面に対して平行、又は予混合気の流れの下流側ほど内径が小さく形成される。これにより、本構成は、予混合気を燃焼筒の内周方向に供給することができる。
【0015】
すなわち、本構成は、従来では燃焼筒の内壁面近辺の低流速領域でも起こっていた燃焼を、内壁面から離れた高流速場に移動させることができる。これにより、予混合気は、より下流側に移動しやすくなり、燃焼領域が従来の位置より下流側に移動することとなる。その結果、燃焼による発熱及び高温領域が従来に比べて全体的に下流側に移動し、燃焼ガスの高温滞留時間が短縮する。また、燃焼までの混合距離が長くなり、燃料の濃度が均一かされるので最高火炎温度が低下する。これらのために、NOxの生成量が減少する。
また、予混合気は、リング部によって燃焼筒の内周方向に供給されるので、燃焼筒の中心軸付近に形成される高温の再循環流のサイズが小さくなる。その結果、再循環領域で生成されるNOxが低減する。
また、再循環流は、リング部によって燃焼筒のより内側に拘束される(絞り込まれる)。このため、再循環流の外周側の流れが加速されて、再循環流領域とその外周側の半径方向への速度勾配が大きくなる。その結果、燃焼に至るまでに外周側の予混合気の均一化がより促進されるので、燃焼ガスの最高火炎温度が低下して、NOxの生成量が低減する。
さらに、燃焼領域の下流側への移動に伴い、燃焼筒の内壁面での発熱及び高温領域が従来に比べて下流側に移動するので、温度が高くなる内壁面が減少する。このため、内壁面を冷却させるための空気量を減少でき、燃焼に用いる空気量を増加できる。その結果、火炎温度が低下し、NOxの生成量が減少する。
【0016】
以上のように、本構成は、燃焼筒の内壁面近辺の上流側で予混合気が燃焼することを抑制すると共に、燃焼筒の中心軸付近に形成される高温の再循環流のサイズを小さくするので、NOxの生成量をより低減できる燃焼火炎を実現できる。
【0017】
上記第一態様では、前記リング部の外径が、前記リング部の端部に向けて縮小することが好ましい。
【0018】
本構成によれば、リング部の端部に保炎が生じ、リング部が損傷することを防止できる。
【0019】
上記第一態様では、前記燃焼筒の内径が、前記リング部の端部よりも下流側で段差を持って広がり、前記リング部と前記燃焼筒との間隙に設けられた空気流路から、前記段差近辺に空気が排出されることが好ましい。
【0020】
本構成によれば、燃焼筒の内径は、リング部の端部よりも下流側で段差を持って広がる。このため、燃焼火炎がこの段差近辺に逆火する可能性がある。そこで、本構成は、リング部と燃焼筒との間隙に設けられた空気流路から、段差近辺に空気を排出し、逆火を抑制する。また、空気流路を流れる空気によって、リング部が対流冷却されることで、リング部の温度がより低下し、これによりリング部近辺での逆火が抑制される。
【0021】
上記第一態様では、燃焼筒の内壁面から空気を排出する排出孔が、前記燃焼筒の前記段差よりも下流側に設けられることが好ましい。
【0022】
本構成によれば、燃焼筒の段差よりも下流側に対して冷却を行い、この段差よりも下流側で保炎されることを防止する。
【0023】
上記第一態様では、前記燃焼筒の周方向に複数の孔が穿設された共鳴空間が形成された音響箱が、前記燃焼筒の前記段差内に設けられることが好ましい。
【0024】
本構成によれば、燃焼筒の段差部分に対して冷却を行うと共に、音響的な減衰効果を与えることで、燃焼領域における圧力変動を抑制する。また、本構成は、音響箱が段差内に設けられることで、空き領域を有効に利用でき、燃焼筒の外周に音響箱を設ける必要が無くなる。
【0025】
上記第一態様では、前記空気流路が、流通する空気に旋回成分を与えることが好ましい。
【0026】
本構成によれば、予混合気の旋回方向と順方向の旋回成分を、空気流路を流通する空気に与えることにより、燃焼筒の内壁面を冷却することとなる。一方、予混合気の旋回方向と逆方向の旋回成分を、空気流路を流通する空気に与えることにより、燃焼火炎の燃焼筒の内壁面へ到達を抑制する。
【0027】
上記第一態様では、前記燃焼筒が、前記リング部の端部よりも下流側で内径が徐々に拡大することが好ましい。
【0028】
本構成によれば、燃焼筒の内壁面近辺の低流速領域を排除することができる。これにより、燃焼を燃焼筒の内壁面から離れた高流速場に移動させることができ、燃焼領域が従来の位置より下流側に移動する。その結果、燃焼による発熱及び高温領域が下流側に移動することにより、燃焼ガスの高温滞留時間の短縮、燃焼までの混合距離が長くなることによる最高火炎温度の低下が生じ、NOxの生成量が減少する。
【0029】
上記第一態様では、前記燃焼筒の前記内径が拡大する領域に、前記燃焼筒の内壁面へ空気を排出する排出孔が設けられることが好ましい。
【0030】
本構成によれば、燃焼筒の内径が拡大した領域における燃焼を抑制することができる。
【0031】
上記第一態様では、前記燃焼筒の前記内径が拡大する領域の内部に、前記燃焼筒の周方向に複数の孔が穿設された共鳴空間が形成された音響箱が設けられることが好ましい。
【0032】
本構成によれば、空き領域を有効に利用でき、燃焼筒の外周に音響箱を設ける必要が無くなる。
【0033】
上記第一態様では、前記パイロットノズルの先端周囲を覆うパイロットコーンが設けられ、前記パイロットノズルの先端が、前記パイロットコーンの端部付近に位置することが好ましい。
【0034】
本構成によれば、従来に比べ、パイロットノズルがより下流側に配置されるので、パイロット燃料と空気との予混合気の再循環に起因した低流速領域が縮小され、再循環流によるNOxの生成が抑制される。また、パイロット保炎の基部がより下流側に移動するため、燃焼火炎がより下流側へ移動し、NOxの生成量が少なくなる。
【0035】
本発明の第一態様に係るガスタービンは、空気を圧縮して圧縮空気を生成する圧縮機と、前記圧縮機から導入された圧縮空気に燃料を噴射して燃焼ガスを発生させる上記記載の燃焼器と、前記燃焼器で発生した燃焼ガスによって回転駆動するタービンと、を備える。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、NOxの生成量をより低減できる燃焼火炎を実現する、という優れた効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下に、本発明に係る燃焼器及びガスタービンの一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0039】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態について説明する。
【0040】
図1は、本第1実施形態に係る燃焼器を備えるガスタービン10の構成図である。
ガスタービン10は、圧縮機12、燃焼器14、及びタービン16を備える。
【0041】
圧縮機12は、回転軸18により駆動されることで、取り込んだ空気を圧縮して圧縮空気を生成する。
【0042】
燃焼器14は、予混合燃焼器であり、圧縮機12から導入された圧縮空気に燃料を噴射して燃焼させることで、高温・高圧の燃焼ガスを発生させる。
【0043】
タービン16は、燃焼器14で発生した燃焼ガスによって回転駆動する。
【0044】
タービン16、圧縮機12、及び発電機20は、回転軸18によって連結され、タービン16に生じる回転駆動力は、回転軸18によって圧縮機12及び発電機20に伝達される。そして、発電機20は、タービン16の回転駆動力によって発電する。
【0045】
図2は、本実施形態に係る燃焼器14の縦断面図である。
燃焼器14は、パイロットバーナ30、メインバーナ32、内筒34、及び燃焼筒(尾筒ともいう)36を備える。なお、圧縮機12で圧縮された圧縮空気は、燃焼器14の外周側へと導かれる。そして、燃焼器14内のパイロットバーナ30及びメインバーナ32へ導かれる圧縮空気は、燃焼器14の外周側から空気流入口38に導かれることで、燃焼器14内へと供給されて、
図1の矢印Aのように右端部で折り返した後に左側から右側へ流れる。
【0046】
パイロットバーナ30は、パイロットノズル40が燃焼器14の軸心に沿って配置され、燃料を噴射し、燃焼領域において燃焼を行う。
【0047】
パイロットノズル40の先端には、その周囲を覆うようにパイロットコーン42が設けられている。パイロットコーン42は、流れの下流側に向かって径が拡大する略ファンネル状に形成されている。パイロットコーン42により、パイロットノズル40から噴射された燃料混合気及びその燃焼火炎が遠心方向に拡散することが防止され、メインノズル44からの燃料混合気に干渉することが防止される。
【0048】
さらに、パイロットノズル40の外周には、複数の翼状のパイロットスワラ46が配置されている。パイロットスワラ46には、同一の方向に傾斜するピッチ角が付与されている。これにより、圧縮空気の流れは、旋回流(スワール流)となり、圧縮空気と噴射されるパイロット燃料との混合が促進される。
【0049】
メインバーナ32は、パイロットノズル40の外周側の周方向に等間隔となるように複数配置され、メイン燃料を噴射する。そして、メイン燃料と圧縮空気とが混合され、予混合燃焼が行われる。
【0050】
また、各メインバーナ32には、メインノズル44が設けられている。メインノズル44には、メインバーナ32へ向かうように突出する複数の翼状のメインスワラ48が配置されている。各メインスワラ48には、メイン燃料を噴出する複数の噴出孔が設けられている。これらのメインスワラ48には、同一の方向に傾斜するピッチ角が付与されているため、メイン燃料と圧縮空気との混合気の流れに同一回転方向の旋回流(スワール流)が発生し、混合が促進される。
【0051】
内筒34は、パイロットノズル40と略同軸であり、パイロットノズル40及びメインノズル44を全体的に覆うように形成される。そして、内筒34の先端には、燃焼ガス下流側で開口し、予混合気を下流側に導く出口外側リング50が設けられている。
【0052】
燃焼筒36は、内面が内筒34の外周にスプリングクリップ52を用いて嵌合されると共に、出口外側リング50を取り囲む。そして、燃焼筒36は、パイロットノズル40及びメインノズル44によって発生した燃焼ガスをタービン16へ誘導する。
【0053】
なお、本第1実施形態に係る出口外側リング50は、燃焼筒36の壁面に対して平行に延在し、軸線方向にわたって一定の径を有する円筒形状となっている。このため、燃焼筒36の内径は、出口外側リング50の端部よりも下流側で段差54を持って広がることとなる。
【0054】
燃焼筒36には、圧縮空気の一部を取り込む空気取込口56が設けられている。空気取込口56から取り込まれた圧縮空気の一部は、出口外側リング50と燃焼筒36との間隙に設けられた空気流路58を流通し、段差54近辺に設けられた空気排出口60から排出される。なお、空気流路58には、その流路断面積を保つためのスペーサ62が設けられている。
【0055】
また、
図3(a)に示されるように、空気排出口60は、燃焼筒36の中心軸に向かって傾斜している。これに伴い、出口外側リング50の外径は、出口外側リング50の端部に向けて縮小する。
【0056】
また、燃焼筒36には、段差54よりも下流側にフィルム空気排出孔64が設けられる。フィルム空気排出孔64は、燃焼器14の外側に導かれた圧縮空気の一部を内壁面66からフィルム空気として排出し、内壁面66に対してフィルム冷却を行う。
【0057】
さらに、燃焼筒36には、燃焼筒36の周方向に複数の孔が穿設された共鳴空間が形成された音響箱(音響ライナーともいう。)68が、段差54内に設けられる。
【0058】
次に、上記のように構成された燃焼器14における燃焼の過程を説明する。
【0059】
まず、圧縮機12において圧縮された圧縮空気が燃焼筒36内に流入し、パイロットバーナ30及びメインバーナ32の上流端側から下流端側に矢印Aの方向へ流れる。
【0060】
パイロットバーナ30では、パイロットスワラ46によって旋回流を与えられた圧縮空気と、パイロットノズル40から噴射されるパイロット燃料とが混合されて予混合気になる。予混合気は、パイロットコーン42から燃焼領域に向かって噴出され、図示しない種火によって着火され、パイロットコーン42の内部及び下流で燃焼が行われる。
【0061】
一方、メインバーナ32では、メインノズル44に沿って流れる際にメインスワラ48によって旋回流を与えられた圧縮空気と、メインスワラ48から噴射されるメイン燃料とが混合されて予混合気になる。予混合気は、メインバーナ32から燃焼領域に向かって噴出され、パイロットコーン42から噴出して燃焼する予混合気の燃焼ガス(火炎)に触れることにより着火されて燃焼する。
【0062】
このように燃焼する予混合気の燃焼ガスの膨張圧力によってガスタービン10のタービン16が駆動され、出力として取り出される。それと共に、タービン16の主軸と同軸的に設けられた圧縮機12が駆動されて圧縮空気が燃焼器14に供給される。
【0063】
なお、燃焼ガスは、
図1に示されるように燃焼領域において、矢印Bのように下流側から上流側に向けて循環(再循環流)する。再循環流は、燃焼ガスの安定燃焼には好ましいが、燃焼ガスの滞留時間も長くなるために、NOxの生成量を減少させるためには小さい方が好ましい。
また、メイン燃料と空気との予混合気は、混合及び保炎のために旋回流とされている。このため、この予混合気は、
図2の矢印Cのように燃焼筒36の内壁面側を流れて燃焼する傾向にあり、燃焼筒36の内壁面66の温度が上昇することとなるため、好ましくはない。
【0064】
そこで、本第1実施形態に係る燃焼器14は、出口外側リング50を従来の円錐状(テーパ状)ではなく、燃焼筒36の内壁面66に対して平行となるように形成されている。これにより、燃焼器14は、予混合気を燃焼筒36の内周方向に供給することができる。
すなわち、本第1実施形態に係る燃焼器14は、従来では燃焼筒36の内壁面66近辺の低流速領域でも起こっていた燃焼を、内壁面66から離れた高流速場に移動させることができる。これにより、予混合気は、より下流側に移動しやすくなり、燃焼領域が従来の位置より下流側に移動することとなる。その結果、燃焼による発熱及び高温領域が従来に比べて全体的に下流側に移動し、燃焼ガスの高温滞留時間が短縮する。また、燃焼までの混合距離が長くなり、燃料の濃度が均一かされるので最高火炎温度が低下する。これらのために、NOxの生成量が減少する。
【0065】
また、予混合気は、出口外側リング50によって燃焼筒36の内周方向に供給されるので、燃焼筒36の中心軸付近に形成される高温の再循環流(矢印B)のサイズが小さくなる。その結果、再循環領域で生成されるNOxが低減する。
【0066】
また、再循環流は、出口外側リング50によって燃焼筒36のより内側に拘束される(絞り込まれる)。このため、再循環流の外周側の流れが加速されて、再循環領域とその外周側の半径方向への速度勾配が大きくなる。その結果、燃焼に至るまでに外周側の予混合気の均一化がより促進されるので、燃焼ガスの最高火炎温度が低下して、NOxの生成量が低減する。
【0067】
さらに、燃焼領域の下流側への移動に伴い、燃焼筒36の内壁面66での発熱及び高温領域が従来に比べてより下流側に移動するので、温度が高くなる内壁面66が減少する。このため、内壁面66を冷却させるための空気量を減少でき、燃焼に用いる空気量を増加できる。その結果、火炎温度が低下し、NOxの生成量が減少する。
【0068】
また、上述したように出口外側リング50の外径は、出口外側リング50の端部に向けて縮小している。
図3(b)は、出口外側リング50の外径が縮小していない形状を示している。
図3(b)に示されるように、外径が縮小していない形状では、出口外側リング50の端部近辺に(
図3(b)の破線領域)に保炎が生じ、出口外側リング50が損傷する可能性がある。
一方、出口外側リング50の外径が縮小させることで、端部に保炎が生じて、出口外側リング50が損傷することを防止できる。
【0069】
また、本第1実施形態に係る燃焼器14は、上述のように段差54を有している。このため、燃焼火炎がこの段差54近辺に逆火する可能性がある。そこで、本第1実施形態に係る燃焼器14は、出口外側リング50と燃焼筒36との間隙に設けられた空気流路58から、段差54近辺に空気を排出することで、段差54付近に強制的な流れを形成して逆火を抑制する。
さらに、出口外側リング50は、従来に比べて肉厚が薄くなっている(従来は
図10の出口外側リング102を参照)。このため、空気流路58を流れる空気によって、対流冷却されやすい。このように、出口外側リング50が対流冷却されることで、出口外側リング50の温度がより低下し、出口外側リング50近辺での逆火が抑制される。
【0070】
フィルム空気排出孔64から排出された空気は、燃焼筒36の内周壁面に沿って薄い空気層を形成することで、燃焼筒36を冷却し、壁面の焼損を防止する。
【0071】
音響箱68は、圧縮空気の一部を取り込んで、段差54部分に排出することで、燃焼筒36の段差54部分に対して冷却を行うと共に、音響的な減衰効果を与えることで、燃焼領域における圧力変動を抑制する。また、燃焼器14は、音響箱68が段差54内に設けられることで、空き領域を有効に利用でき、燃焼筒36の外周に音響箱68を設ける必要が無くなる。
【0072】
さらに、空気排出口60、音響箱68、及びフィルム空気排出孔64は、燃焼筒36の内壁面66近辺に空気を供給するので、予混合気の外周の燃料濃度そのものを低くし、燃焼筒36の内壁面66における燃焼温度を低下させる。
【0073】
図4は、本第1実施形態に係る燃焼器14の変形例である。
図4に示される燃焼器14が備える出口外側リング50は、予混合気の流れの下流側ほど内径が小さく形成される。
図4に示される出口外側リング50は、メインバーナ32及びパイロットバーナ30が備えられる位置よりも下流側で段差を有することで、その内径が小さくなっている。なお、これに限らず、出口外側リング50の内径が逆テーパ状とされ、内径が徐々に小さくなってもよい。
【0074】
また、空気流路58は、流通する空気に旋回成分を与えてもよい。
【0075】
より具体的には、空気流路58に設けられるスペーサ62の形状が、例えばガイドベーン(案内翼)形状とされることで、流通する空気に旋回成分が与えられる。
例えば、メイン燃料の予混合気の旋回方向と順方向の旋回成分を、空気流路58を流通する空気に与える。これにより、空気流路58を流通する空気によるフィルム冷却の効果が高まり、燃焼筒36の内壁面66をより冷却することとなる。一方、メイン燃焼の予混合気の旋回方向と逆方向の旋回成分を、空気流路58を流通する空気に与えることにより、旋回成分を緩和させて、燃焼火炎の燃焼筒36の内壁面66へ到達を抑制する。
【0076】
以上説明したように、本第1実施形態に係る燃焼器14は、パイロットノズル40と、パイロットノズル40の外周側で周方向に間隔を隔てて複数配置され予混合燃焼を行うメインノズル44と、パイロットノズル40と各メインノズル44とを取り囲む内筒34と、内筒34の先端に設けられる出口外側リング50と、内面が内筒34の外周に嵌合されると共に、出口外側リング50を取り囲む燃焼筒36と、を備える。そして、出口外側リング50は、燃焼筒36の内壁面66に対して平行となるように形成される。
【0077】
従って、本第1実施形態に係る燃焼器14は、燃焼筒36の内壁面66近辺の上流側で予混合気が燃焼することを抑制すると共に、燃焼筒36の中心軸付近に形成される高温の再循環流のサイズを小さくするので、NOxの生成量をより低減できる燃焼火炎を実現できる。
【0078】
〔第2実施形態〕
以下、本発明の第2実施形態について説明する。
図5は、本第2実施形態に係る燃焼器14の構成を示す。なお、
図5における
図2と同一の構成部分については
図2と同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0079】
本第2実施形態に係る燃焼器14が備える燃焼筒36は、内筒34の外周に嵌合される領域から燃焼領域に至るまで、内径が一定とされている。
本第2実施形態に係る燃焼器14は、燃焼筒36の構成が簡略化されるので、燃焼器14の加工性が向上すると共にコスト低減となる。
【0080】
図6は、本第2実施形態の変形例に係る燃焼器14の構成を示す。
図6に示される燃焼器14は、空気流路58の下流端部に、空気流路58に流れる空気量を制限する制限部材である垂直リング70が設けられる。垂直リング70は、空気流路58の出口を堰き止めるように配置された円環形状とされている。垂直リング70には、燃焼筒36の内壁面66を冷却するための空気を排出する空気排出口60Aが設けられる。
図6に示される燃焼器14は、垂直リング70が設けられることにより、空気流路58に流れる空気量を制御でき、かつ空気流路58の上流側へ燃焼火炎が逆火することを防止できる。
【0081】
また、出口外側リング50の端部近辺に、空気流路58から空気を排出する空気排出口60Bが設けられてもよい。空気排出口60Bから排出される空気によって、出口外側リング50の端部が冷却されることとなる。
【0082】
図7は、本第2実施形態の他の変形例に係る燃焼器14の構成を示す。
図7に示される燃焼器14は、垂直リング70に空気排出口60Aを兼ねた音響箱68が設けられる。これによりまた、燃焼器14は、空き領域を有効に利用でき、燃焼筒36の外周に音響箱68を設ける必要が無くなる。
【0083】
〔第3実施形態〕
以下、本発明の第3実施形態について説明する。
図8は、本第3実施形態に係る燃焼器14の構成を示す。なお、
図8における
図2と同一の構成部分については
図2と同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0084】
本第3実施形態に係る燃焼器14が備える燃焼筒36は、出口外側リング50の端部よりも下流側で内径が徐々に拡大する。すなわち、燃焼筒36は、出口外側リング50の端部よりも下流側でコーン状(円錐状)となっている。
【0085】
燃焼筒36の内径が拡大する領域には、フィルム空気排出孔64及び音響箱68が設けられる。なお、本第3実施形態では、音響箱68が圧縮空気を取り込み、圧縮空気を排出する複数の排出孔を備えることで、フィルム空気排出孔64を兼ねた構成とされる。なお、
図8に示される音響箱68の形状は一例であり、これに限られない。
【0086】
本第3実施形態に係る燃焼器14は、燃焼筒36の内壁面66近辺の低流速領域を排除することができる。これにより、燃焼を燃焼筒36の内壁面66から離れた高流速場に移動させることができ、燃焼領域が従来の位置より下流側に移動する。その結果、燃焼による発熱及び高温領域が下流側に移動することにより、燃焼ガスの高温滞留時間の短縮、燃焼までの混合距離が長くなることによる最高火炎温度の低下が生じ、NOxの生成量が減少する。
【0087】
また、燃焼筒36の拡大する内径の軸心に対する傾斜角は、空気が燃焼筒36の内壁面66から剥離しない角度、例えば7〜45度の範囲が好ましい。すなわち、
図8に示されるように、軸方向長さLと突出長さHとの関係は、L=1〜8Hである。
例えばL=8Hのように、軸方向長さLがより長い場合、より逆火が抑制されることとなるので、フィルム空気等の冷却用の空気を減少できる。
【0088】
〔第4実施形態〕
以下、本発明の第4実施形態について説明する。
図9は、本第4実施形態に係る燃焼器14の構成を示す。なお、
図9における
図8と同一の構成部分については
図2と同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0089】
本第4実施形態に係る燃焼器14が備えるパイロットノズル40の先端は、パイロットコーン42の端部付近に位置する。
なお、本第4実施形態に係る燃焼器14は、パイロットスワラ46もパイロットコーン42の端部付近に位置すると共に、パイロットノズル40とパイロットスワラ46との間には、圧縮空気の排出孔80が設けられる。圧縮空気の排出孔80から排出される空気により、パイロットスワラ46とパイロットノズル40との間が冷却される。
【0090】
本第4実施形態に係る燃焼器14は、従来の構成で生じていたパイロットコーン42の端部とパイロットノズル40の先端との段差(凹領域)が小さくなり、かつ従来に比べ、パイロットノズル40がより下流側に配置されることとなる。
このため、本第4実施形態に係る燃焼器14は、パイロット燃料と圧縮空気との予混合気の再循環に起因した低流速領域が縮小され、再循環流によるNOxの生成が抑制される。また、パイロット保炎の基部がより下流側に移動するため、燃焼火炎がより下流側へ移動し、NOxの生成量が少なくなる。
【0091】
なお、本第4実施形態では、第3実施形態に係る燃焼器14に、本発明を適用する形態について説明したが、これに限らず、第1実施形態又は第2実施形態に適用してもよい。
【0092】
以上、本発明を、上記各実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記各実施形態に多様な変更又は改良を加えることができ、該変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。