(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基材フィルムと、請求項1〜3のいずれかに記載のエチレン系重合体組成物(γ)を前記基材フィルム上に押出ラミネート処理して得られるエチレン系重合体組成物層とを有する押出ラミネートフィルム。
請求項4に記載の押出ラミネートフィルムを前記エチレン系重合体組成物層同士が向かい合うように折り曲げ、前記エチレン系重合体組成物層同士の一部をヒートシールして形成された請求項5または6に記載の包装袋。
2枚の請求項4に記載の押出ラミネートフィルムを前記エチレン系重合体組成物層同士が向かい合うように重ね合わせ、前記エチレン系重合体組成物層同士の一部をヒートシールして形成された請求項5または6に記載の包装袋。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係るエチレン系重合体組成物(γ)およびその用途について、その構成成分であるエチレン系重合体(α)およびエチレン系重合体(β)とともに具体的に説明する。
【0022】
<構成成分>
エチレン系重合体(α);
本発明で用いられるエチレン系重合体(α)は、エチレンと炭素数4以上10以下のα-オレフィン、好ましくはエチレンと炭素数6〜10のα-オレフィンとの共重合体である。炭素数4のα-オレフィンを使用する場合には、炭素数6〜10のα-オレフィンもあわせて使用することが好ましい。エチレンとの共重合に用いられる炭素数4〜10のα-オレフィンとしては、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセンなどが挙げられる。
エチレン系重合体(α)は下記要件(I)〜(VII)に示す特性を有している。
【0023】
要件(I);
190℃における2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFR)が0.1g/10分以上30g/10分以下である。下限は好ましくは0.3g/10分、より好ましくは0.5g/10分であり、上限は好ましくは25g/10分、より好ましくは20g/10分である。メルトフローレート(MFR)が上記下限値以上の場合、エチレン重合体組成物(γ)においてせん断粘度が高すぎず、押出特性および薄膜加工性が良好である。メルトフローレート(MFR)が上記上限値以下の場合、エチレン重合体組成物(γ)は引張強度やヒートシール強度などの機械的強度が良好であり、耐ネックイン性が優れる。
【0024】
メルトフローレート(MFR)は分子量に強く依存しており、メルトフローレート(MFR)が小さいほど分子量は大きく、メルトフローレート(MFR)が大きいほど分子量は小さくなる。また、エチレン系重合体の分子量は、重合系内における水素とエチレンとの組成比(水素/エチレン)により決定されることが知られている(例えば、曽我和雄他編、「Catalytic Olefin Polymerization」、講談社サイエンティフィク、1990年、p.376)。このため、水素/エチレンを増減させることで、エチレン系重合体(α)のメルトフローレート(MFR)を増減させることが可能である。
【0025】
メルトフローレート(MFR)は、ASTM D1238-89に従い、190℃、2.16kg荷重の条件下で測定される。
なお、エチレン系重合体(α)についての上記MFRは、後述するエチレン系重合体(β)についてのMFRとの区別のため、「MFRα」と記載する場合がある。
【0026】
要件(II);
密度が890kg/m
3以上970kg/m
3以下である。下限は好ましくは900kg/m
3、より好ましくは905kg/m
3であり、上限は好ましくは964kg/m
3、より好ましくは940kg/m
3である、特に好ましくは935kg/m
3である。密度が上記下限値以上の場合、エチレン重合体組成物(γ)から成形されたフィルムは表面べたつきが少なく耐ブロッキング性に優れ、エチレン重合体組成物(γ)から成形された包装袋は耐ボイル性に優れる。密度が上記上限値以下の場合、エチレン重合体組成物(γ)から成形されたフィルムは、衝撃強度が良好であり、ヒートシール強度、破袋強度などの機械的強度が良好であり、低温シール性にも優れる。
【0027】
密度はエチレン系重合体のα-オレフィン含量に依存しており、α-オレフィン含量が少ないほど密度は高く、α-オレフィン含量が多いほど密度は低くなる。また、エチレン系重合体中のα-オレフィン含量は、重合系内におけるα-オレフィンとエチレンとの組成比(α-オレフィン/エチレン)により決定されることが知られている(例えば、Walter Kaminsky, Makromol.Chem. 193, p.606(1992))。このため、α-オレフィン/エチレンを増減させることで、上記範囲の密度を有するエチレン系重合体を製造することができる。
【0028】
密度は、JIS K7112に準拠し、MFR測定時に得られるストランドを100℃で1時間熱処理し、更に室温で1時間放置した後に密度勾配管法で測定することができる。
【0029】
要件(III);
190℃における溶融張力〔MT(g)〕と、200℃、角速度1.0rad/秒におけるせん断粘度〔η
*(P)〕との比〔MT/η
*(g/P)〕が1.00×10
-4以上9.00×10
-4以下である。すなわち、本発明で用いられるエチレン系重合体(α)では、MTとη
*が下記式(Eq-III):
1.00×10
-4≦MT/η
*≦9.00×10
-4 --------(Eq-III)
を満たす。ここで、上限値は好ましくは8.00×10
-4、より好ましくは7.00×10
-4である。
【0030】
〔MT/η
*(g/P)〕は単位せん断粘度あたりの溶融張力を示し、この値が大きいと、せん断粘度の割に溶融張力が大きくなる。
〔MT/η
*(g/P)〕はエチレン系重合体の長鎖分岐含量に依存すると考えられており、長鎖分岐含量が多いほど〔MT/η
*(g/P)〕は大きく、長鎖分岐含量が少ないほど〔MT/η
*(g/P)〕は小さくなる傾向がある。
【0031】
一般的に溶融張力とネックイン及びドローダウンとには相関関係があることが知られている(荒木正義、最新ラミネート加工便覧、加工技術研究会、1989、p.266-p.267)。
溶融張力は分子量(せん断粘度)が大きくなるほど大きくなる傾向にあるところ、押出ラミネート成形では、押出性と耐ネックイン性および耐ドローダウン性とのバランスが重要になるため、単位せん断粘度見合いで溶融張力が大きい樹脂が好まれる。分子量(せん断粘度)以外に溶融張力を増大させるものとしては、長鎖分岐の含有量が挙げられ、〔MT/η
*(g/P)〕はエチレン系重合体の長鎖分岐含量に依存しており、長鎖分岐含量が多いほど〔MT/η
*(g/P)〕は大きく、長鎖分岐含量が少ないほど〔MT/η
*(g/P)〕は小さくなる。このためエチレン系重合体(α)を含む本発明のエチレン重合体組成物(γ)は、エチレン系重合体(α)の〔MT/η
*(g/P)〕が上記下限値以上であることから、エチレン系重合体(α)の替わりに要件(III)を満たさずせん断粘度が同程度であるエチレン系重合体を含む組成物と比べて、耐ネックイン性に優れ、〔MT/η
*(g/P)〕が上記上限値以下であることから、耐ドローダウン性(耐サージング性)に優れる。
【0032】
ここで、長鎖分岐とはエチレン系重合体中に含まれる絡み合い点間分子量(Me)以上の長さの分岐構造と定義され、長鎖分岐の導入によりエチレン系重合体の溶融物性、及び成形加工性は著しく変化することが知られている(例えば、松浦一雄他編、「ポリエチレン技術読本」、工業調査会、2001年、p.32, 36)。
【0033】
後述のようにエチレン系重合体(α)は、成分(A)、成分(B)、成分(C)を含んでなるオレフィン重合用触媒の存在下、エチレンと、炭素数4〜10のα-オレフィンを重合することによって製造することができる。本発明者らは、エチレン系重合体(α)が生成する機構において、成分(A)と成分(C)、ならびに必要に応じて成分(S)を含むオレフィン重合用触媒成分の存在下で、エチレンまたはエチレンと炭素数4〜10のα−オレフィン、好ましくはエチレンと炭素数4〜10のα−オレフィンとを重合させることによって数平均分子量が4000〜20000程度、好ましくは4000〜15000の末端ビニルを有する重合体である「マクロモノマー」を生成させ、次いで、成分(B)および成分(C)、ならびに必要に応じて成分(S)を含むオレフィン重合用触媒成分により、エチレンおよび炭素数4〜10のα−オレフィンの重合と競争的に該マクロモノマーを共重合させることにより、エチレン系重合体(α)中に長鎖分岐が生成すると考えている。エチレン系重合体(α)中の長鎖分岐含量は、重合系中のマクロモノマーとエチレンとの組成比([マクロモノマー]/[エチレン])に依存しており、[マクロモノマー]/[エチレン]が高いほどエチレン系重合体中の長鎖分岐含量は多くなる。オレフィン重合用触媒中の成分(A)の比率([A]/[A+B])高くすることで[マクロモノマー]/[エチレン]を高くできることから、[A]/[A+B]を増減することで上記範囲のMT/η
*を有するエチレン系重合体(α)を製造することができる。
【0034】
溶融張力(MT)の値は、以下の方法または同等の方法で測定したときのものである。
溶融張力(MT)は、溶融されたポリマーを一定速度で延伸したときの応力を測定することにより決定される。東洋精機製作所社製キャピラリーレオメーター:キャピログラフ1Bを用い、樹脂温度190℃、溶融時間6分、バレル径9.55mmφ、押し出し速度15mm/分、巻取り速度24m/分(溶融フィラメントが切れてしまう場合には、巻取り速度を5m/分ずつ低下させる)、ノズル径2.095mmφ、ノズル長さ8mmの条件下で測定する。
【0035】
また、200℃、角速度1.0rad/秒におけるせん断粘度(η
*)は、測定温度200℃におけるせん断粘度(η
*)の角速度〔ω(rad/秒)〕分散を0.01≦ω≦100の範囲で測定する。測定にはアントンパール社製粘弾性測定装置Physica MCR301または同等の装置を用いる。サンプルホルダーは25mmφのパラレルプレートを用い、サンプル厚みは約2.0mmとする。測定点はω一桁当たり5点とする。歪み量は、測定範囲でのトルクが検出可能で、かつトルクオーバーにならないよう、3〜10%の範囲で適宜選択する。せん断粘度測定に用いたサンプルは、成形機(たとえば、神藤金属工業所製プレス成形機)を用い、予熱温度190℃、予熱時間5分間、加熱温度190℃、加熱時間2分間、加熱圧力100kgf/cm
2、冷却温度20℃、冷却時間5分間、冷却圧力100kgf/cm
2の条件にて、測定サンプルを厚さ2mmにプレス成形することで調製する。
【0036】
要件(IV);
13C−NMRにより測定された炭素原子1000個当たりのメチル分岐数〔Me (/1000C)〕とエチル分岐数〔Et(/1000C)〕との和〔(Me+Et)(/1000C)〕が1.80以下、好ましくは1.30以下、より好ましくは0.80以下、さらにより好ましくは0.50以下である。なお、本発明で定義したメチル分岐数およびエチル分岐数は、後述するように1000カーボン当たりの数で定義される。
【0037】
エチレン系重合体中にメチル分岐、エチル分岐などの短鎖分岐が存在すると、短鎖分岐が結晶中に取り込まれ、結晶の面間隔が広がってしまうため、樹脂の機械的強度が低下することが知られている(例えば、大澤善次郎他監修、「高分子の寿命予測と長寿命化技術」、(株)エヌ・ティー・エス、2002年、p.481)。そのため、メチル分岐数とエチル分岐数との和(Me+Et)が1.80以下の場合、エチレン重合体組成物(γ)の機械的強度およびシール強度が良好である。また、エチレン重合体組成物(γ)から形成された包装袋は、要件(IV)を満たすエチレン系重合体(α)を含むため、耐油性等の耐内容物性に優れる。メチル分岐数とエチル分岐数との和(Me+Et)が上記範囲内にあると、結晶と結晶とをつなぐ「タイ分子」が生成されやすくなるため、エチレン重合体組成物(γ)からなるフィルムにおいては、フィルム中に存在する結晶が効率よく連結されていく。フィルムの破壊は結晶と結晶との間が引裂かれることによって起こるとされていることから、結晶同士の連結はフィルム強度、シール強度を増加させることとなる。油によるシール部の破壊は、結晶と結晶との間に油が染み込み、結晶の連結を引き剥がすことが原因と考えられることから、タイ分子の存在による、強固な結晶同士をつなぎ合わせが存在することで耐油性が向上すると推測される。
【0038】
エチレン系重合体中のメチル分岐数、エチル分岐数はエチレン系重合体の重合方法に強く依存し、高圧ラジカル重合により得られたエチレン系重合体は、チーグラー型触媒を用いた配位重合により得られたエチレン系重合体に比べ、メチル分岐数、エチル分岐数が多い。配位重合の場合、エチレン系重合体中のメチル分岐数、エチル分岐数は、重合系内におけるプロピレン、1−ブテンとエチレンとの組成比(プロピレン/エチレン、1−ブテン/エチレン)に強く依存する。このため、1−ブテン/エチレンを増減させることで、エチレン系重合体のメチル分岐数とエチル分岐数の和(Me+Et)を増減させることが可能である。
【0039】
13C-NMRにより測定されたメチル分岐数およびエチル分岐数は下記のように決定することができる。
測定は日本電子(株)製ECP500型核磁気共鳴装置(
1H:500MHz)を用い、積算回数1万〜3万回にて測定する。なお、化学シフト基準として主鎖メチレンのピーク(29.97ppm)を用いる。直径10mmの市販のNMR測定石英ガラス管中に、サンプル250〜400mgと和光純薬工業(株)製特級o−ジクロロベンゼン:ISOTEC社製ベンゼン-d6=5:1(体積比)の混合液3mlを入れ、120℃にて加熱、均一分散させることにより行う。NMRスペクトルにおける各吸収の帰属は、化学領域増刊141号 NMR−総説と実験ガイド[I]、p.132〜133に準じて行う。1,000カーボン当たりのメチル分岐数、すなわち、エチレン系重合体の重合体鎖を構成する炭素原子1000個当たりのメチル分岐数は、5〜45ppmの範囲に現れる吸収の積分総和に対する、メチル分岐由来のメチル基の吸収(19.9ppm)の積分強度比より算出する。また、エチル分岐数は、5〜45ppmの範囲に現れる吸収の積分総和に対するエチル分岐由来のエチル基の吸収(10.8ppm)の積分強度比より算出する。
【0040】
要件(V);
200℃におけるゼロせん断粘度〔η
0(P)〕と、GPC-粘度検出器法(GP
C-VISCO)により測定された重量平均分子量の6.8乗(Mw
6.8)との比、η
0/Mw
6.8が、0.03×10
-30以上7.5×10
-30以下である。すなわち、本発明で用いられるエチレン系重合体(α)では、η
0とMwが下記式(Eq-V-1)
0.03×10
-30≦η
0/Mw
6.8≦7.5×10
-30 --------(Eq-V-1)
を満たす。ここで、下限値は好ましくは0.05×10
-30、より好ましくは0.1×10
-30であり、上限値は好ましくは6.0×10
-30、より好ましくは5.0×10
-30である。
【0041】
η
0/Mw
6.8が、0.03×10
-30以上7.5×10
-30以下であることは、η
0とMwとを両対数プロットした際に、log(η
0)とlogMwが下記式(Eq-V-2)で規定される領域に存在することと同義である。
6.8Log(Mw) -31.523≦Log(η
0)≦6.8Log(Mw) -29.125 --------(Eq-V-2)
【0042】
重量平均分子量(Mw)に対してゼロせん断粘度〔η
0(P)〕を両対数プロットしたとき、長鎖分岐がなく直鎖状で、伸長粘度がひずみ硬化性を示さないエチレン系重合体は、傾きが3.4のべき乗則に則る。一方、比較的短い長鎖分岐を数多く有し、伸長粘度がひずみ速度硬化性を示すエチレン系重合体は、べき乗則よりも低いゼロせん断粘度〔η
0(P)〕を示し、さらにその傾きは3.4よりも大きな値となることが知られており(C. Gabriel, H. Munstedt, J. Rheol., 47(3), 619(2003)、H. Munstedt, D. Auhl, J. Non-Newtonian Fluid Mech. 128, 62-69, (2005) )、傾き6.8は経験的に選択し得る。η
0とMw
6.8との比をとることについては特開2011-1545号公報にも開示されている。
【0043】
エチレン系重合体(α)の200℃におけるゼロせん断粘度〔η
0(P)〕が20×10
-13×Mw
6.8以下の場合、エチレン系重合体組成物(γ)において引取サージングの発生が抑制される。
【0044】
ゼロせん断粘度〔η
0(P)〕と重量平均分子量(Mw)との関係は、エチレン系重合体中の長鎖分岐含量、及び長鎖分岐の長さに依存していると考えられ、長鎖分岐含量が多いほど、また長鎖分岐の長さが短いほどゼロせん断粘度〔η
0(P)〕は上記範囲の下限に近い値を示し、長鎖分岐含量が少ないほど、また長鎖分岐の長さが長いほどゼロせん断粘度〔η
0(P)〕は上記範囲の上限に近い値を示すと考えられる。前述のようにオレフィン重合用触媒中の成分(A)の比率([A]/[A+B])を高くすることで長鎖分岐含量は多くなる。また、本発明のエチレン系重合体において、重合系中の水素とエチレンとの組成比(水素/エチレン)を高くするとマクロモノマーの分子量が小さくなる為、エチレン系重合体中に導入される長鎖分岐の長さは短くなる。このことから、[A]/[A+B]、及び水素/エチレンを増減させることで、上記範囲のゼロせん断粘度〔η
0(P)〕を有するエチレン系重合体を製造することができる。
【0045】
200℃におけるゼロせん断粘度〔η
0(P)〕は以下のようにして、または同等の方法で求める。
測定温度200℃におけるせん断粘度(η
*)の角速度〔ω(rad/秒)〕分散を0.02512≦ω≦100の範囲で測定する。測定にはレオメトリックス社製ダイナミックストレスレオメーターSR-5000を用いる。サンプルホルダーは25mmφのパラレルプレートを用い、サンプル厚みは約2.0mmとした。測定点はω一桁当たり5点とする。歪み量は、測定範囲でのトルクが検出可能で、かつトルクオーバーにならないよう、3〜10%の範囲で適宜選択する。せん断粘度測定に用いたサンプルは、神藤金属工業所製プレス成形機を用い、予熱温度190℃、予熱時間5分間、加熱温度190℃、加熱時間2分間、加熱圧力100kg重/cm
2、冷却温度20℃、冷却時間5分間、冷却圧力100kg重/cm
2の条件にて、測定サンプルを厚さ2mmにプレス成形することで調製する。
【0046】
ゼロせん断粘度η
0は、下記数式(Eq-V-3)のCarreauモデルを非線形最小二乗法により実測のレオロジー曲線〔せん断粘度(η
*)の角速度(ω)分散〕にフィッティングさせることで算出する。
【0047】
【数1】
ここで、λは時間の次元を持つパラメーター、nは材料の冪法則係数(power law index)を表す。なお、非線形最小二乗法によるフィッティングは下記数式(Eq-V-4)におけるdが最小となるよう行われる。
【0048】
【数2】
ここで、η
exp(ω)は実測のせん断粘度、η
calc(ω)はCarreauモデルより算出したせん断粘度を表す。
【0049】
GPC-VISCO法による重量平均分子量(Mw)は、たとえばウォーターズ社製GPC/V2000を用い、以下のようにして測定する。ガードカラムはShodex AT-G、分析カラムはAT-806MSを2本使用し、カラム温度は145℃とし、移動相にはo-ジクロロベンゼンおよび酸化防止剤としてBHT0.3重量%を用い、1.0ml/分で移動させ、試料濃度は0.1重量%とし、検出器として示差屈折計、3キャピラリー粘度計を用いる。標準ポリスチレンは、東ソー社製を用いた。分子量計算は、粘度計と屈折計から実測粘度を算出し、実測ユニバーサルキャリブレーションより重量平均分子量(Mw)を算出する。
【0050】
要件(VI);
GPC測定により得られた分子量分布曲線における最大重量分率での分子量(peak top M)が1.0×10
4.30以上1.0×10
4.50以下である。
【0051】
エチレン系重合体の機械的強度には、低分子量成分が強く影響を及ぼすことが知られている。低分子量成分が存在すると、破壊の起点になると考えられている分子末端が増加するため、機械的強度が低下すると考えられている(松浦一雄・三上尚孝編著、「ポリエチレン技術読本」、株式会社工業調査会、2001年、p.45)。GPC測定により得られた分子量分布曲線における最大重量分率での分子量(peak top M)が1.0×10
4.30以上の場合、機械的強度に悪影響を及ぼす低分子量成分が少ないため、エチレン系重合体(α)を含む本発明のエチレン重合体組成物(γ)から形成されるフィルムは機械的強度及びシール強度に優れる。
【0052】
GPC測定により得られた分子量分布曲線における最大重量分率での分子量(peak top M)は、重合系内における水素とエチレンとの組成比(水素/エチレン)により決定されることが知られている(例えば、曽我和雄他編、「Catalytic Olefin Polymerization」、講談社サイエンティフィク、1990年、p.376)。このため、水素/エチレンを増減させることで、分子量分布曲線における最大重量分率での分子量(peak top M)を増減させることが可能である。
【0053】
分子量分布曲線における最大重量分率での分子量(peak top M)は、たとえばウォーターズ社製ゲル浸透クロマトグラフ alliance GPC2000型(高温サイズ排除クロマトグラフ)を用い、以下のようにして算出する。
【0054】
[使用装置および条件]
解析ソフト:クロマトグラフィデータシステムEmpower(Waters社)
カラム:TSKgel GMH
6- HT×2+TSKgel GMH
6-HTL×2
(内径7.5mm×長さ30cm,東ソー社)
移動相:o−ジクロロベンゼン(和光純薬 特級試薬)
検出器:示差屈折計(装置内蔵)
カラム温度:140℃
流速:1.0mL/分
注入量:500μL
サンプリング時間間隔:1秒
試料濃度:0.15%(w/v)
分子量較正:単分散ポリスチレン(東ソー社)/分子量495〜分子量2060万
【0055】
Z. Crubisic, P. Rempp, H. Benoit, J. Polym. Sci.,
B5, 753 (1967) に記載された汎用較正の手順に従い、ポリエチレン分子量換算として分子量分布曲線を作成する。この分子量分布曲線から最大重量分率での分子量(peak top M)を算出する。
【0056】
要件(VII);
135℃デカリン中で測定した極限粘度〔[η](dl/g)〕と、GPC-粘度検出器法(GPC-VISCO)により測定された重量平均分子量の0.776乗(Mw
0.776)の比、[η]/Mw
0.776が、0.80×10
-4以上1.65×10
-4以下である。すなわち、本発明で用いられるエチレン系重合体(α)では、[η]とMwが下記式(Eq-VII-1)
0.80×10
-4≦[η]/Mw
0.776≦1.65×10
-4 --------(Eq-VII-1)
を満たす。ここで、下限値は好ましくは0.85×10
-4、より好ましくは0.90×10
-4であり、上限値は好ましくは1.55×10
-4、より好ましくは1.45×10
-4である。
【0057】
エチレン系重合体中に長鎖分岐が導入されると、長鎖分岐の無い直鎖型エチレン系重合体に比べ、分子量の割に極限粘度[η](dl/g)が小さくなることが知られている(例えばWalther Burchard, ADVANCES IN POLYMER SCIENCE, 143, Branched PolymerII, p.137(1999))。
【0058】
また、Mark-Houwink-桜田式に基づき、ポリエチレンの[η]はMvの0.7乗、ポリプロピレンの[η]はMwの0.80乗、ポリ−4−メチル−1−ペンテンの[η]はMnの0.81乗に比例することが報告されている(例えばR. Chiang, J. Polym. Sci., 36, 91 (1959): P.94、R. Chiang, J. Polym. Sci., 28, 235 (1958): P.237、A. S. Hoffman, B. A. Fries and P. C. Condit, J. Polym. Sci. Part C, 4, 109 (1963): P.119 Fig. 4)。
【0059】
そして、エチレンと炭素数4以上10以下のα−オレフィンとの共重合体の代表的な指標としてMwの0.776乗を設定することとし、従来のエチレン系重合体に比べて分子量の割に[η]が小さいことを表したのが前記した要件(VII)であり、この考え方は国際公開WO2006/80578に開示されている。
【0060】
よって、エチレン系重合体組成物(γ)は、[η]/Mw
0.776が上記上限値以下であり多数の長鎖分岐を有するエチレン系重合体(α)を含むことから、エチレン系重合体(α)の替わりに要件(VII)を満たさずMFRが同程度であるエチレン系重合体を含む組成物と比べて溶融張力に優れ、押出成形によりフィルムを製造する際に、ネックインを抑制でき、また、高速成形性と耐ドローダウン性にバランス良く優れる。また、エチレン系重合体(α)の[η]/Mw
0.776が上記下限値以上であることから、必要以上の長鎖分岐の存在によるフィルム強度、シール強度の低下を引き起こすことがないと考えられる。
【0061】
前述のようにオレフィン重合用触媒中の成分(A)の比率([A]/[A+B])を高くすることで長鎖分岐含量は多くなることから、[A]/[A+B]を増減させることで、上記範囲の極限粘度[η]を有するエチレン系重合体(α)を製造することができる。
【0062】
なお、極限粘度[η] (dl/g)はデカリン溶媒を用い、以下のように測定する。
サンプル約20 mgをデカリン15mlに溶解し、135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定する。このデカリン溶液にデカリン溶媒を5ml追加して希釈後、同様にして比粘度ηspを測定する。この希釈操作をさらに2回繰り返し、濃度(C)を0に外挿した時のηsp/C値を極限粘度[η]とする。(下式(Eq-VII-2)参照)
[η]=lim(ηsp/C) (C→0) ----------(Eq-VII-2)
【0063】
エチレン系重合体(β);
本発明で用いられるエチレン系重合体(β)は、エチレンと炭素数4以上10以下のα-オレフィン、好ましくはエチレンと炭素数6〜10のα-オレフィンとの共重合体である。炭素数4のα-オレフィンを使用する場合には、炭素数6〜10のα-オレフィンもあわせて使用することが好ましい。エチレンとの共重合に用いられる炭素数4〜10のα-オレフィンとしては、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセンなどが挙げられる。
【0064】
エチレン系重合体(β)は下記要件(1)〜(3)に示す特性を有している。
要件(1);
190℃における2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFR)が7.0g/10分以上30g/10分以下である。ここで、下限値は好ましくは25g/10分であり、上限値は好ましくは20g/10分である。メルトフローレート(MFR)が上記下限値以上の場合、エチレン重合体組成物(γ)せん断粘度が高すぎず、押出性および薄膜加工性が良好である。メルトフローレート(MFR)が上記上限値以下の場合、エチレン重合体組成物(γ)の引張強度やヒートシール強度が良好であり、またネックインや機械強度に優れる。
なお、エチレン系重合体(β)についての上記MFRは、上記エチレン系重合体(α)についてのMFRとの区別のため、「MFRβ」と記載する場合がある。
【0065】
要件(2);
密度が880kg/m
3以上915kg/m
3以下である。下限は好ましくは885kg/m
3であり、上限は好ましくは913kg/m
3である。密度が上記下限値以上の場合、エチレン重合体組成物(γ)から成形されたフィルムは表面べたつきが少なく耐ブロッキング性に優れ、エチレン重合体組成物(γ)から成形された包装袋は耐ボイル性に優れる。密度が上記上限値以下の場合、エチレン重合体組成物(γ)から成形されたフィルムは、衝撃強度が良好であり、ヒートシール強度、破袋強度などの機械的強度が良好であり、低温シール性に優れる。
【0066】
要件(3);
135℃デカリン中で測定した極限粘度〔[η](dl/g)〕と、GPC-粘度検出器法(GPC-VISCO)により測定された重量平均分子量の0.776乗(Mw
0.776)の比、[η]/Mw
0.776が、1.90×10
-4以上2.80×10
-4以下である。すなわち、本発明で用いられるエチレン系重合体(β)では、[η]とMwが下記式(Eq-3-1)
1.90×10
-4≦[η]/Mw
0.776≦2.80×10
-4 --------(Eq-3-1)
を満たす。
【0067】
[η]/Mw
0.776が、1.90×10
-4以上2.80×10
-4以下であることは、[η]とMwを両対数プロットした際に、log([η])とlog(Mw)が下記式(Eq-3-2)で規定される領域に存在することと同義である。
【0068】
0.776Log(Mw) -3.721≦Log([η])≦0.776Log(Mw) -3.553 --------(Eq-3-2)
前述のとおり、エチレン系重合体中に長鎖分岐が存在しないと、長鎖分岐を有するエチレン系重合体と比較して分子量の割に極限粘度[η](dl/g)が大きくなることが知られている。そのため、[η]/Mw
0.776が1.90×10
-4以上のエチレン系重合体は実質的に長鎖分岐の存在しない直鎖状のエチレン系重合体である。このようなエチレン系重合体(β)を含む本発明のエチレン系重合体組成物(γ)は、溶融張力が強すぎず、ヒートシールを行う際の熱による溶融時に分子同士の絡み合いが起こりやすくなり、より低温でのシールが可能となる。エチレン系重合体組成物(γ)は、加えてシール強度も強くなることから低温シーラント性能に優れる。
エチレン系重合体(β)は、上記要件(1)〜(3)に加えて、好ましくは下記要件(4)〜(6)のすべてをさらに満たす。
【0069】
要件(4);
GPCで測定した重量平均分子量と数平均分子量との比(Mw/Mn)が1.50以上3.00以下である。下限値は、好ましくは1.50、より好ましくは1.60であり、上限値は、好ましくは2.50、より好ましくは2.20、特に好ましくは2.10である。
【0070】
エチレン系重合体(β)を含む本発明のエチレン重合体組成物(γ)は、エチレン系重合体(β)のMw/Mnが上記下限値以上であることから押出性に優れ、Mw/Mnが上記上限値以下であることから油に溶解し難い。
【0071】
本発明において、重量平均分子量と数平均分子量との比(Mw/Mn)の値は、ウォーターズ社製GPC-150Cを用い、以下のようにして測定した場合のものである。分離カラムは、TSKgel GMH6-HT及びTSKgelGMH6-HTLであり、カラムサイズはそれぞれ内径7.5mm、長さ600 mmであり、カラム温度は140℃とし、移動相にはo-ジクロロベンゼン(和光純薬工業)および酸化防止剤としてBHT(武田薬品)0.025重量%を用い、1.0ml/分で移動させ、試料濃度は0.1重量%とし、試料注入量は500μLとし、検出器として示差屈折計を用いた。標準ポリスチレンは、分子量がMw≦1000およびMw≧4×10
6については東ソー社製を用い、1000≦Mw≦4×10
6についてはプレッシャーケミカル社製を用いる。分子量は、ユニバーサル校正して、ポリエチレンに換算する。
【0072】
要件(5);
温度上昇溶離分別(TREF)によって得られる溶出曲線において、最もピーク強度の強いピークの高さ(H)と、最もピーク強度の強いピークの1/2の高さにおける幅(W)との比(H/W)と前記密度(D(kg/m
3))とが、下記関係式(Eq-5-1)を満たし、好ましくは下記関係式(Eq-5-2)を満たす。
0.0163×D−14.10 ≦ Log
10(H/W) ≦ 0.0163×D−13.40 … (Eq-5-1)
0.0163×D−14.10 ≦ Log
10(H/W) ≦ 0.0163×D−13.30 … (Eq-5-2)
【0073】
温度上昇溶離分別(TREF)では、α-オレフィン含量の多い成分ほど低温にて溶出し、α-オレフィン含量の少ない成分ほど高温にて溶出する。H/Wは温度上昇溶離分別(TREF)によって得られる溶出曲線において、最もピーク強度の強いピークの高さ(H)と、最もピーク強度の強いピークの1/2の高さにおける幅(W)との比で表されるので、同等の密度のエチレン系重合体で比較した場合、H/Wが大きいほどα-オレフィンは均一に分子鎖中に導入されており、組成分布は狭くなる。このため、エチレン系重合体(β)を含む本発明のエチレン重合体組成物(γ)は、エチレン系重合体(β)の上記H/Wが上記下限値以上であると溶出成分が少なく油への溶解性が低く、上記H/Wが上記上限値以下であると低温溶融成分が少なすぎず、低温シール性が優れる。
【0074】
上記H/Wの値は特願2008−230068号公報の段落[0022]に記載の方法で調整することができる。また、H/Wの値は、同公報の[0023]〜[0025]に記載の手順で決定することができる。
【0075】
要件(6);
13C−NMRにより測定された炭素原子1000個当たりのメチル分岐数〔Me(/1000C)〕とエチル分岐数〔Et(/1000C)〕との和〔(Me+Et)(/1000C)〕が1.80以下、好ましくは1.30以下、より好ましくは0.80以下、さらにより好ましくは0.50以下である。メチル分岐数とエチル分岐数との和(Me+Et)が上記数値以下の場合、エチレン重合体組成物(γ)の機械的強度が良好である。
【0076】
<エチレン系重合体組成物(γ)>
本発明に係るエチレン系重合体組成物(γ)は、
上記エチレン系重合体(α)と、上記エチレン系重合体(β)を含み、
前記エチレン系重合体(α)の重量分率〔Wα〕と前記エチレン系重合体(β)の重量分率〔Wβ〕との合計を1.00として、Wαが0.01以上0.99以下であり、Wβが0.01以上0.99以下である。ここで、Wαは、好ましくは0.05以上0.75以下、より好ましくは0.05以上0.50以下である。該範囲内において、エチレン系重合体組成物(γ)の機械的強度と成型加工性のバランスが優れる。
【0077】
また、本発明に係るエチレン系重合体組成物(γ)は、実質的に上記エチレン系重合体(α)および上記エチレン系重合体(β)のみからなるものであっても良いが、これに限られるものではなく、上記エチレン系重合体(α)および上記エチレン系重合体(β)に加えて、上記エチレン系重合体(α)および上記エチレン重合体(β)のいずれでもない熱可塑性樹脂(以下、「他の熱可塑性樹脂(ω)」ともいう。)を含むことができる。上記エチレン系重合体(α)および上記エチレン系重合体(β)に対して「他の熱可塑性樹脂」をブレンドすることにより熱可塑性樹脂組成物として得られるエチレン系重合体組成物(γ)は、成形性に優れ、かつ機械的強度に優れる。上記エチレン系重合体(α)および上記エチレン系重合体(β)の合計と、「他の熱可塑性樹脂(ω)」とのブレンド比率は、((α)、(β)の合計/(ω)=)99.9/0.1〜0.1/99.9、好ましくは99.0/1.0〜1.0/99.0、さらに好ましくは90/10〜10/90である。
【0078】
他の熱可塑性樹脂(ω);
上記エチレン系重合体組成物(γ)においてブレンドし得る「他の熱可塑性樹脂(ω)」としては、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステルおよびポリアセタールなどの結晶性熱可塑性樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキサイド、ポリアクリレートなどの非結晶性熱可塑性樹脂が用いられる。また、ポリ塩化ビニルも好ましく用いられる。
【0079】
上記ポリオレフィンとして具体的には、エチレン系重合体、プロピレン系重合体、ブテン系重合体、4-メチル-1-ペンテン系重合体、3-メチル-1-ブテン系重合体、ヘキセン系重合体などが挙げられる。なかでも、エチレン系重合体、プロピレン系重合体、4-メチル-1-ペンテン系重合体が好ましく、エチレン系重合体である場合は本発明に係るエチレン系重合体であっても従来のエチレン系重合体であってもよく、エチレン・極性基含有ビニル共重合体であってもよいが、従来のエチレン系重合体がより好ましい。
【0080】
上記ポリエステルとして具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどの芳香族系ポリエステル;ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシブチレートなどが挙げられる。
【0081】
上記ポリアミドとして具体的には、ナイロン−6、ナイロン−66、ナイロン−10、ナイロン−12、ナイロン−46などの脂肪族ポリアミド、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジアミンより製造される芳香族ポリアミドなどが挙げられる。
【0082】
上記ポリアセタールとして具体的には、ポリホルムアルデヒド(ポリオキシメチレン)、ポリアセトアルデヒド、ポリプロピオンアルデヒド、ポリブチルアルデヒドなどを挙げることができる。中でも、ポリホルムアルデヒドが特に好ましい。
【0083】
上記ポリスチレンは、スチレンの単独重合体であってもよく、スチレンとアクリロニトリル、メタクリル酸メチル、α-メチルスチレンとの二元共重合体であってもよい。
上記ABSとしては、アクリロニトリルから誘導される構成単位を20〜35モル%の量で含有し、ブタジエンから誘導される構成単位を20〜30モル%の量で含有し、スチレンから誘導される構成単位を40〜60モル%の量で含有するABSが好ましく用いられる。
【0084】
上記ポリカーボネートとしては、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタンなどから得られるポリマーが挙げられる。なかでも、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンから得られるポリカーボネートが特に好ましい。
【0085】
上記ポリフェニレンオキシドとしては、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンオキシド)を用いることが好ましい。
上記ポリアクリレートとしては、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルアクリレートを用いることが好ましい。
【0086】
上記のような熱可塑性樹脂(ω)は、単独で用いてもよく、また2種以上組み合わせて用いてもよい。特に好ましい熱可塑性樹脂はポリオレフィンであって、エチレン系重合体がより特に好ましい。
他の熱可塑性樹脂(ω)の190℃における2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFR)は、好ましくは0.1g/10分以上7.0g/10分以下である。
【0087】
その他の配合成分;
本発明のエチレン系重合体組成物(γ)には、本発明の目的を損なわない範囲で、耐候安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、スリップ防止剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、顔料、染料、核剤、可塑剤、老化防止剤、塩酸吸収剤、酸化防止剤などの添加剤をさらに配合してもよい。
【0088】
これら「その他の配合成分」の総配合量は、エチレン系重合体組成物(γ)100重量部に対して、一般的には10重量部以下、好ましくは1重量部以下、より好ましくは0.5重量部以下である。
次に、本発明におけるエチレン系重合体(α)、エチレン系重合体(β)およびエチレン系重合体組成物(γ)の製造方法に関して説明する。
【0089】
<エチレン系重合体(α)の製造方法>
本発明で用いられるエチレン系重合体(α)は、後述するエチレン系重合体製造用触媒の存在下、エチレンと炭素数4以上10以下のα−オレフィンとを重合することにより製造することができる。
【0090】
本発明では、溶解重合や懸濁重合などの液相重合法、または気相重合法などの重合方法が用いられるが、好ましくは懸濁重合法や気相重合法が用いられる。
液相重合法で用いられる不活性炭化水素媒体としては、具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカンおよび灯油などの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサンおよびメチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエンおよびキシレンなどの芳香族炭化水素;ならびにエチレンクロリド、クロロベンゼンおよびジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素またはこれらの混合物などが挙げられる。また、α−オレフィン自身を溶媒として用いることもできる。
【0091】
エチレン系重合体(α)製造用触媒;
本発明のエチレン系重合体(α)は、成分(A)、成分(B)および成分(C)を含む触媒の存在下、エチレンと炭素数4以上10以下のα−オレフィンとを重合することによって効率的に製造することができる。
【0092】
本発明で用いられるエチレン系重合体(α)製造用触媒は、以下に述べる成分(A)、成分(B)および成分(C)に加えて、固体状担体(S)ならびに成分(G)を含んでもよい。
上記オレフィン重合用触媒で用いられる各成分について説明する。
【0093】
成分(A);
本発明で用いることができる成分(A)は、下記一般式(I)で表される架橋型メタロセン化合物である。
【0094】
【化1】
一般式(I)中、Mは周期表第4族遷移金属原子を示し、具体的には、チタン、ジルコニウムおよびハフニウムから選ばれる遷移金属原子であり、好ましくはジルコニウムである。
【0095】
R
1〜R
8は、水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、ハロゲン含有基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、硫黄含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、およびスズ含有基から選ばれ、互いに同一でも異なっていてもよいが、すべてが同時に水素原子ではない。また、R
1〜R
8は、隣接する基が互いに結合して脂肪族環を形成してもよい。
【0096】
炭化水素基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基およびアリールアルキル基などが挙げられる。アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、ノニル基、ドデシル基およびエイコシル基などが挙げられる。シクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基およびアダマンチル基などが挙げられる。アルケニル基としては、ビニル基、プロペニル基およびシクロヘキセニル基などが挙げられる。アリール基としては、フェニル、トリル、ジメチルフェニル、トリメチルフェニル、エチルフェニル、プロピルフェニル、ビフェニル、α−またはβ−ナフチル、メチルナフチル、アントラセニル、フェナントリル、ベンジルフェニル、ピレニル、アセナフチル、フェナレニル、アセアントリレニル、テトラヒドロナフチル、インダニルおよびビフェニリルが挙げられる。アリールアルキル基としては、ベンジル、フェニルエチルおよびフェニルプロピルなどが挙げられる。
【0097】
R
1〜R
8に好ましい基は、水素原子または炭素数1〜15のアルキル基であり、さらに好ましくは、R
1〜R
8の置換基のうち6つ以上が水素原子であり、特に好ましくは、R
1〜R
8の置換基のうち7つが水素原子であり、残りの1つが炭素数3〜15のアルキル基である。
【0098】
Q
1は二つの配位子を結合する二価の基であって、アルキレン基、置換アルキレン基およびアルキリデン基などの炭素数1〜20の炭化水素基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基およびスズ含有基から選ばれる基であり、特に好ましくはケイ素含有基である。
【0099】
アルキレン基、置換アルキレン基およびアルキリデン基の具体例としては、メチレン、エチレン、プロピレンおよびブチレンなどのアルキレン基;イソプロピリデン、ジエチルメチレン、ジプロピルメチレン、ジイソプロピルメチレン、ジブチルメチレン、メチルエチルメチレン、メチルブチルメチレン、メチル−t−ブチルメチレン、ジヘキシルメチレン、ジシクロヘキシルメチレン、メチルシクロヘキシルメチレン、メチルフェニルメチレン、ジフェニルメチレン、ジトリルメチレン、メチルナフチルメチレン、ジナフチルメチレン、1−メチルエチレン、1,2−ジメチルエチレンおよび1−エチル−2−メチルエチレンなどの置換アルキレン基;シクロプロピリデン、シクロブチリデン、シクロペンチリデン、シクロヘキシリデン、シクロヘプチリデン、ビシクロ[3.3.1]ノニリデン、ノルボルニリデン、アダマンチリデン、テトラヒドロナフチリデンおよびジヒドロインダニリデンなどのシクロアルキリデン基ならびにエチリデン、プロピリデンおよびブチリデンなどのアルキリデン基などが挙げられる。
【0100】
ケイ素含有基としては、シリレン、メチルシリレン、ジメチルシリレン、ジイソプロピルシリレン、ジブチルシリレン、メチルブチルシリレン、メチル−t−ブチルシリレン、ジシクロヘキシルシリレン、メチルシクロヘキシルシリレン、メチルフェニルシリレン、ジフェニルシリレン、ジトリルシリレン、メチルナフチルシリレン、ジナフチルシリレン、シクロジメチレンシリレン、シクロトリメチレンシリレン、シクロテトラメチレンシリレン、シクロペンタメチレンシリレン、シクロヘキサメチレンシリレンおよびシクロヘプタメチレンシリレンなどが挙げられ、特に好ましくは、ジメチルシリレン基およびジブチルシリレン基などのジアルキルシリレン基が挙げられる。
【0101】
Xは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン含有炭化水素基、ケイ素含有基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基およびリン含有基から選ばれる原子または基であり、好ましくはハロゲン原子または炭化水素基である。ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素が挙げられ、特に好ましくは塩素が挙げられる。炭化水素基としては、上述したR
1〜R
8の炭化水素基と同様のものが挙げられ、炭素数1〜20のアルキル基が特に好ましい。
【0102】
一般式(I)で表される成分(A)の好ましい化合物の具体例として、ジメチルシリレンビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2-メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(3-メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−エチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−n−プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−n−オクチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジブチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−n−プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−n−オクチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、トリフルオロメチルブチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−n−プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、トリフルオロメチルブチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、トリフルオロメチルブチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−n−オクチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドなどが挙げられ、より好ましい具体例として、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−n−プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドおよびジメチルシリレン(3−n−ブチルシクロペンタジエニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドなどが挙げられる。
【0103】
成分(B);
本発明で用いることができる成分(B)は、下記一般式(II)で表される架橋型メタロセン化合物である。
【0104】
【化2】
一般式(II)中、Mは周期表第4族遷移金属原子を示し、具体的には、チタン、ジルコニウムおよびハフニウムから選ばれる遷移金属原子であり、好ましくはジルコニウムである。
【0105】
R
9〜R
20は、水素原子、炭化水素基、ハロゲン含有基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、硫黄含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基およびスズ含有基から選ばれ、互いに同一でも異なっていてもよく、また隣接する2個の基が互いに連結して環を形成してもよい。R
9〜R
20に好ましい基は、水素原子および炭化水素基であり、より好ましくはR
9〜R
12が水素原子であり、R
13〜R
20が水素原子または炭素数1〜20のアルキル基である。
【0106】
Q
2は、二つの配位子を結合する二価の基であって、アルキレン基、置換アルキレン基およびアルキリデン基などの炭素数1〜20の炭化水素基ならびにハロゲン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基およびスズ含有基から選ばれる基であり、好ましくは、アルキレン基、置換アルキレン基およびアルキリデン基などの炭素数1〜20の炭化水素基ならびにケイ素含有基であり、特に好ましくはアルキレン基、置換アルキレン基およびアルキリデン基などの炭素数1〜10の炭化水素基である。
【0107】
Xは、上記式(I)中のXと同様のものが挙げられる。
一般式(II)で表される成分(B)の好ましい化合物の具体例として、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジ−t−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドリドジベンズフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジブチルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジブチルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジブチルメチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジ−t−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジブチルメチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドリドジベンズフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、シクロヘキシリデン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、シクロヘキシリデン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、シクロヘキシリデン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジ−t−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、シクロヘキシリデン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドリドジベンズフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリル(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリル(シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリル(シクロペンタジエニル)(3,6−ジ−t−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリドおよびジメチルシリル(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドリドジベンズフルオレニル)ジルコニウムジクロリドが挙げられ、より好ましい具体例として、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリドなどが挙げられる。
【0108】
成分(C);
本発明で用いることができる成分(C)は、下記(c−1)〜(c−3)よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である。
【0109】
(c−1)下記一般式(III)、(IV)または(V)で表される有機金属化合物、
R
amAl(OR
b)
nH
pX
q・・・(III)
〔一般式(III)中、R
aおよびR
bは、炭素数が1〜15の炭化水素基を示し、互いに同一でも異なっていてもよく、Xはハロゲン原子を示し、mは0<m≦3、nは0≦n<3、pは0≦p<3、qは0≦q<3の数であり、かつm+n+p+q=3である。〕
M
aAlR
a4・・・(IV)
〔一般式(IV)中、M
aはLi、NaまたはKを示し、R
aは炭素数が1〜15の炭化水素基を示す。〕
R
arM
bR
bsX
t・・・(V)
〔一般式(V)中、R
aおよびR
bは、炭素数が1〜15の炭化水素基を示し、互いに同一でも異なっていてもよく、M
bはMg、ZnまたはCdを示し、Xはハロゲン原子を示し、rは0<r≦2、sは0≦s≦1、tは0≦t≦1であり、かつr+s+t=2である。〕
【0110】
(c−2)有機アルミニウムオキシ化合物、および、
(c−3)成分(A)および成分(B)と反応してイオン対を形成する化合物、
から選ばれる少なくとも1種の化合物である。
【0111】
一般式(III)、(IV)または(V)で表される有機金属化合物(c−1)の中では、一般式(III)で示されるものが好ましく、具体的には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウムおよびトリオクチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム;ならびにジメチルアルミニウムハイドライド、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソプロピルアルミニウムハイドライド、ジ−n−ブチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライドおよびジイソヘキシルアルミニウムハイドライドなどのアルキルアルミニウムハイドライドなどが挙げられる。これらは、1種単独または2種以上を組み合わせて用いられる。
【0112】
有機アルミニウムオキシ化合物(c−2)としては、トリアルキルアルミニウムまたはトリシクロアルキルアルミニウムから調製された有機アルミニウムオキシ化合物が好ましく、トリメチルアルミニウムまたはトリイソブチルアルミニウムから調製されたアルミノキサンが特に好ましい。このような有機アルミニウムオキシ化合物は、1種単独または2種以上を組み合わせて用いられる。
【0113】
成分(A)および成分(B)と反応してイオン対を形成する化合物(c−3)としては、特開平1−501950号公報、特開平1−502036号公報、特開平3−179005号公報、特開平3−179006号公報、特開平3−207703号公報、特開平3−207704号公報およびUS5321106などに記載されたルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物およびカルボラン化合物や、さらにはヘテロポリ化合物およびイソポリ化合物を制限無く使用することができる。
【0114】
固体状担体(S);
本発明で所要により用いることができる固体状担体(S)は、無機または有機の化合物であって、顆粒状または微粒子状の固体である。
【0115】
このうち無機化合物としては、多孔質酸化物、無機塩化物、粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物が挙げられ、好ましくは多孔質酸化物が挙げられる。
多孔質酸化物としては、SiO
2、Al
2O
3、MgO、ZrO、TiO
2、B
2O
3、CaO、ZnO、BaOおよびThO
2など、またはこれらを含む複合物または混合物、具体的には、天然または合成ゼオライト、SiO
2−MgO、SiO
2−Al
2O
3、SiO
2−TiO
2、SiO
2−V
2O
5、SiO
2−Cr
2O
3およびSiO
2−TiO
2−MgOなどが用いられる。これらのうち、SiO
2を主成分とするものが好ましい。
【0116】
このような多孔質酸化物は、種類および製法によりその性状は異なるが、本発明で用いられる固体状担体としては、粒径が通常0.2〜300μm、好ましくは1〜200μmであって、比表面積が通常50〜1200m
2/g、好ましくは100〜1000m
2/gの範囲にあり、細孔容積が通常0.3〜30cm
3/gの範囲にあるものが好ましい。このような担体は、必要に応じて、例えば、100〜1000℃、好ましくは150〜700℃で焼成して用いられる。
【0117】
成分(G);
本発明で所要により用いることができる成分(G)として、下記(g−1)〜(g−6)よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げられる。
【0118】
(g−1)ポリアルキレンオキサイドブロック、
(g−2)高級脂肪族アミド、
(g−3)ポリアルキレンオキサイド、
(g−4)ポリアルキレンオキサイドアルキルエーテル、
(g−5)アルキルジエタノールアミン、および
(g−6)ポリオキシアルキレンアルキルアミン。
【0119】
本願発明において、このような成分(G)は、反応器内でのファウリングを抑制し、あるいは生成重合体の粒子性状を改善する目的で、エチレン系重合体(α)製造用触媒中に共存させることができる。成分(G)の中では、(g−1)、(g−2)、(g−3)および(g−4)が好ましく、(g−1)および(g−2)が特に好ましい。ここで、(g−2)の例として、高級脂肪酸ジエタノールアミドなどが挙げられる。
【0120】
エチレン系重合体(α)製造用触媒の調製方法;
本発明で用いられるエチレン系重合体(α)製造用触媒の調製方法について記載する。
上記エチレン系重合体(α)製造用触媒は、成分(A)、成分(B)および成分(C)を不活性炭化水素中または、不活性炭化水素を用いた重合系中に添加することにより調製することができる。
【0121】
各成分の添加順序は任意であるが、好ましい順序としては、例えば、
i)成分(A)と成分(B)を混合接触させた後に、成分(C)を接触させ、重合系中に添加する方法
ii)成分(A)と成分(C)を混合接触させた接触物および成分(B)と成分(C)を混合接触させた接触物を重合系内に添加する方法
iii)成分(A)、成分(B)および成分(C)それぞれを連続的に重合系中に添加する方法、
などが挙げられる。
【0122】
また固体状担体(S)を含む場合、成分(A)、成分(B)および成分(C)の少なくとも1つの成分と、固体状担体(S)とを不活性炭化水素中で接触させ、固体触媒成分(X)を調製することができる。各成分の接触順序は任意であるが、好ましい順序としては、例えば、
iv)成分(C)と固体状担体(S)とを接触させ、次いで成分(A)および成分(B)を接触させて固体触媒成分(X)を調製する方法
v)成分(A)、成分(B)および成分(C)を混合接触させた後に、固体状担体(S)を接触させて調製する方法
vi)成分(C)と固体状担体(S)とを接触させ、次いで成分(A)と接触させて調製した固体触媒成分(X1)と、成分(C)と固体状担体(S)とを接触させ、次いで成分(B)と接触させて調製した固体触媒成分(X2)とを用いる方法、
などが挙げられ、より好ましいのはiv)である。
【0123】
不活性炭化水素として、具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカンおよび灯油などの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサンおよびメチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエンおよびキシレンなどの芳香族炭化水素;ならびにエチレンクロリド、クロロベンゼンおよびジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素またはこれらの混合物などが挙げられる。
【0124】
成分(C)と固体状担体(S)との接触時間は、通常0〜20時間、好ましくは0〜10時間であり、接触温度は、通常−50〜200℃、好ましくは−20〜120℃である。また、成分(C)と固体状担体(S)との接触のモル比(成分(C)/固体状担体(S))は、通常0.2〜2.0、特に好ましくは0.4〜2.0である。
【0125】
成分(C)および固体状担体(S)の接触物と、成分(A)および成分(B)との接触時間は、通常0〜5時間、好ましくは0〜2時間であり、接触温度は、通常−50〜200℃、好ましくは−50〜100℃である。成分(A)と成分(B)との接触量は、成分(C)の種類と量に大きく依存し、成分(c−1)を使用する場合は、成分(A)および成分(B)中の全遷移金属原子(M)と、成分(c−1)とのモル比[(c−1)/M]が、通常0.01〜100000、好ましくは0.05〜50000となる量で用いられ、成分(c−2)を使用する場合は、成分(c−2)中のアルミニウム原子と、成分(A)および成分(B)中の全遷移金属原子(M)とのモル比[(c−2)/M]が、通常10〜500000、好ましくは20〜100000となる量で用いられ、成分(c−3)を使用する場合は、成分(c−3)と、成分(A)および成分(B)中の全遷移金属原子(M)とのモル比[(c−3)/M]が、通常1〜10、好ましくは1〜5となる量で用いられる。なお、成分(C)と、成分(A)および成分(B)中の全遷移金属原子(M)との比は、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法により求められる。
【0126】
成分(A)および成分(B)の使用量比は、エチレン系重合体の分子量および分子量分布から任意に決定できるが、好ましい範囲として、成分(A)から生成するポリマーと成分(B)から生成するポリマーとの比率(以下、「成分(A)および成分(B)由来のポリマー生成比率」ともいう。)[=成分(A)の生成ポリマー量/成分(B)の生成ポリマー量]が、通常40/60〜95/5、好ましくは50/50〜95/5、より好ましくは60/40〜95/5である。
【0127】
成分(A)および成分(B)由来のポリマー生成比率の算出方法について説明する。
GPC測定により得られる、エチレン系重合体(α)の分子量分布曲線は、実質的に3つのピークから構成される。この3つのピークのうち、1番低分子量側のピークは成分(A)由来ポリマーに起因するピークであり、2番目のピークは成分(B)由来ポリマーに起因するピークであり、3番目のピーク、すなわち最も高分子側にあるピークは成分(A)および成分(B)の両方用いたときのみに生成するピークである。そして、成分(A)由来ポリマーに起因するピーク(すなわち、上記1番低分子量側のピーク)と成分(B)由来ポリマーに起因するピーク(すなわち、上記2番目のピーク)との比率[=成分(A)由来ポリマーに起因するピーク/成分(B)由来ポリマーに起因するピーク]を、成分(A)および成分(B)由来のポリマー生成比率[=成分(A)の生成ポリマー量/成分(B)の生成ポリマー量]として定義する。
【0128】
各ピークの比率は、
エチレン系重合体(α)の分子量分布曲線(G1)と、
成分(A)、成分(C)、固体状担体(S)からなる触媒(すなわち、成分(B)を含まない触媒)を用いたことを除き、エチレン系重合体(α)を得るときと同様の重合条件にて重合して得られたエチレン系重合体の分子量分布曲線(G2)と、
成分(B)、成分(C)、固体状担体(S)からなる触媒(すなわち、成分(A)を含まない触媒)を用いたことを除き、エチレン系重合体(α)を得るときと同様の重合条件にて重合して得られたエチレン系重合体の分子量分布曲線(G3)と
を用いて、下記の方法により実施した。なお、本明細書において、「分子量分布曲線」というときは、特に別の記載がない限り、微分分子量分布曲線を指していい、また、分子量分布曲線について「面積」というときは、分子量分布曲線とベースラインとの間に形成される領域の面積をいう。
【0129】
[1](G1)、(G2)、(G3)の各数値データにおいて、Log(分子量)を0.02間隔に分割し、さらに(G1)、(G2)、(G3)のそれぞれについて、面積が1となるように強度[dwt/d(log分子量)]を正規化する。
【0130】
[2](G2)と(G3)との合成曲線(G4)を作成する。このとき、各分子量における(G1)の強度と(G4)の強度との差の絶対値が概ね0.0005以下となるように、(G2)および(G3)の各分子量における強度を一定の比率で任意に変更する。なお、高分子量側では生成する第3ピークの影響により、(G1)の強度と(G4)の強度との差の絶対値が0.0005より大きくなってしまうため、より低分子量側で(G1)の強度と(G4)の強度との差の絶対値が0.0005以下となるように、(G2)および(G3)の強度を変更していく。
【0131】
[3](G1)における最大重量分率での分子量をピークトップとしたときに、当該ピークトップより高分子量側における(G1)と(G4)との重なり合わない部分、すなわち、(G1)と(G4)との差分曲線(G5)を作成したときに、当該差分曲線(G5)において、(G1)における最大重量分率での分子量より高分子量側に現れるピーク部分(P5)[(G1)−(G4)]を第3ピーク(すなわち、上記「3番目のピーク」)とする。
【0132】
[4] 成分(A)由来ポリマーに起因するピークの比率Wa、成分(B)由来ポリマーに起因するピークの比率Wbを以下の通り算出する。
Wa=S(G2)/S(G4)
Wb=S(G3)/S(G4)
ここで、S(G2)、S(G3)はそれぞれ強度を変更した後の(G2)、(G3)の面積であり、S(G4)は(G4)の面積である。
【0133】
たとえば、(G4)が、(G2)の強度をx倍したものに、(G3)の強度をy倍したものを加算することにより得られた場合、上記[1]で上述した正規化によって元の(G2)および(G3)の面積が共に1とされていることから、S(G2)、S(G3)、S(G4)は、それぞれx、y、(x+y)となる。したがって、上記WaおよびWbは、上記xおよびyを用いて、それぞれ以下のように表すことができる。
Wa=x/(x+y)
Wb=y/(x+y)
【0134】
成分(A)由来のポリマーの生成量が多い方が長鎖分岐を生成するのに有利であり、成分(A)および成分(B)の遷移金属化合物当たりのモル比は、生成ポリマーが上記の比率を満たす範囲内において任意に選ぶことができる。
【0135】
エチレン系重合体(α)の製造には、上記のような固体触媒成分(X)をそのまま用いることができるが、この固体触媒成分(X)にオレフィンを予備重合させ、予備重合触媒成分(XP)を形成してから用いることもできる。
【0136】
予備重合触媒成分(XP)は、上記固体触媒成分(X)の存在下、通常、不活性炭化水素溶媒中、オレフィンを導入させることにより調製することができ、回分式、半連続式および連続式のいずれの方法でも使用することができ、また減圧、常圧または加圧下のいずれでも行うことができる。この予備重合によって、固体状触媒成分(X)1g当たり、通常0.01〜1000g、好ましくは0.1〜800g、より好ましくは0.2〜500gの重合体を生成させる。
【0137】
不活性炭化水素溶媒中で調製した予備重合触媒成分は、懸濁液から分離した後、再び不活性炭化水素中に懸濁させ、得られた懸濁液中にオレフィンを導入してもよく、また、乾燥させた後オレフィンを導入してもよい。
【0138】
予備重合に際して、予備重合温度は、通常−20〜80℃、好ましくは0〜60℃であり、また予備重合時間は、通常0.5〜100時間、好ましくは1〜50時間である。
予備重合に使用する固体触媒成分(X)の形態としては、すでに述べたものを制限無く利用することができる。また、必要に応じて成分(C)が用いられ、特に(c−1)中の上記式(III)に示される有機アルミニウム化合物が好ましく用いられる。成分(C)が用いられる場合は、該成分(C)中のアルミニウム原子(Al−C)と遷移金属化合物とのモル比(成分(C)/遷移金属化合物)で、通常0.1〜10000、好ましくは0.5〜5000の量で用いられる。
【0139】
予備重合系における固体触媒成分(X)の濃度は、固体触媒成分(X)/重合容積1リットル比で、通常1〜1000グラム/リットル、好ましくは10〜500グラム/リットルである。
【0140】
成分(G)は、上記エチレン系重合体(α)製造用触媒の調製におけるいずれの工程に共存させてもよく、接触順序も任意である。また予備重合によって生成した予備重合触媒成分(XP)に接触させてもよい。
【0141】
上記、エチレン系重合体(α)製造用触媒を用いて、エチレン、または、エチレンと炭素数4〜20のα−オレフィンとの重合を行うに際して、成分(A)および成分(B)は、反応容積1リットル当たり、通常10
-12〜10
-1モル、好ましくは10
-8〜10
-2モルになる量で用いられる。
【0142】
また、重合温度は、通常−50〜200℃、好ましくは0〜170℃、特に好ましくは60〜170℃の範囲である。重合圧力は、通常、常圧〜100kgf/cm
2、好ましくは常圧〜50kgf/cm
2の条件下であり、重合反応は、回分式、半連続式および連続式のいずれの方法においても行うことができる。さらに重合を反応条件の異なる2段以上に分けて行うこともできる。
【0143】
得られるエチレン系重合体(α)の分子量は、重合系に水素を存在させるか、または重合温度を変化させることによって調節することができる。さらに重合系には、ファウリング抑制あるいは粒子性状改善を目的として、前記の成分(G)を共存させることができる。
【0144】
物性値のばらつきを抑制するため、重合反応により得られたエチレン系重合体(α)粒子および所望により添加される他の成分は、任意の方法で溶融され、混練、造粒などを施される。
【0145】
<エチレン系重合体(β)の製造方法>
本発明で用いられるエチレン系重合体(β)は、エチレンと炭素数4以上10以下のα-オレフィンとを重合することによって得ることができるが、上記要件を満たすものが得られる限りにおいて、用いる重合触媒や重合条件は特に限定されない。エチレン系重合体(β)としては、例えば、直鎖低密度ポリエチレンやエチレン−α−オレフィンコポリマーや高密度ポリエチレン等の市販品を用いることができる。具体的な例としては、プライムポリマー製LLDPEエボリュー(登録商標)やウルトゼックス(登録商標)等から要件を満たすものを選択することができる。
【0146】
<エチレン系重合体組成物(γ)の製造方法>
エチレン系重合体組成物(γ)は、上記エチレン系重合体(α)と上記エチレン系重合体(β)とを溶融混練することによって製造することができるし、あるいはエチレン系重合体(α)を造粒したペレットと、エチレン系重合体(β)のペレットとをドライブレンドすることによっても製造することができる。好適には、溶融混練により製造する方法を用いることができ、このとき、連続式押出機や密閉式混練機を用いることができる。例えば、一軸押出機、二軸押出機、ミキシングロール、バンバリーミキサー、ニーダー等の装置を挙げることができる。これらのうち、経済性、処理効率等の観点から一軸押出機及び/または二軸押出機を用いることが好ましい。
【0147】
ここで、上記溶融混練及びドライブレンドを行う際、上記エチレン系重合体(α)および上記エチレン系重合体(β)に加えて、上記「他の熱可塑性樹脂(ω)」をブレンドすることができる。また、「他の熱可塑性樹脂(ω)」に加えて、あるいは、「他の熱可塑性樹脂(ω)」に代えて、上記「その他の配合成分」をさらに配合してもよい。
【0148】
上記「他の熱可塑性樹脂(ω)」および上記「その他の配合成分」を加える順序は、特に限定されない。例えば、上記「他の熱可塑性樹脂」および上記「その他の配合成分」を、上記エチレン系重合体(α)および上記エチレン系重合体(β)のうちの一方または両方と同時にブレンドしてもよいし、あるいは、上記エチレン系重合体(α)と上記エチレン系重合体(β)とを混練してから加えてもよい。
【0149】
<押出ラミネートフィルム>
本発明の押出ラミネートフィルムは、基材フィルム上に、上記エチレン系重合体組成物(γ)を押出ラミネートして得られるフィルムである。
【0150】
エチレン系重合体組成物層(エチレン系重合体組成物(γ)からなる層)は、上記基材フィルムの一方面に設けられていてもよく、両面に設けられてもよい。また、上記基材フィルムは、単層であってもよく、積層体であってもよい。
【0151】
本発明の押出ラミネートフィルムは、最外層として上記エチレン系重合体組成物(γ)からなる層を有することにより、優れた低温ヒートシール性を発揮する。
上記基材の形態としては、フィルムやシートが好ましい。フィルムやシートの厚みは通常は10〜1,000μmである。
【0152】
また基材フィルムの材質としては、例えば、プラスチック、金属、ガラス、紙等が挙げられ、エチレン系重合体組成物(γ)からなる層を安定的に形成できるプラスチックが好ましく、プラスチックとしては、ポリオレフィン系重合体、アクリル系重合体、ポリエステル系重合体等が好ましい。
【0153】
基材フィルムとして、プラスチックフィルムを用いる場合には、プラスチックフィルムは、無配向であってもよく一軸または二軸に延伸されていてもよい。
また、このような基材フィルムの表面には、エチレン系重合体組成物(γ)からなる層を安定的に形成するために、コロナ放電処理等の表面活性処理をほどこしても良く、アンカーコート層を設けても良い。
【0154】
エチレン系重合体組成物(γ)からなる層は、低温ヒートシール性を発揮することから、好ましくはシール層として用いられる。
エチレン系重合体組成物(γ)からなる層をシール層として使用する場合には、該シール層の厚さは、適宜設定可能であり、好ましくは5〜100μm程度である。エチレン系重合体組成物(γ)からなるシール層は、ヒートシール強度に優れ、ヒートシール温度が比較的低温であっても高いヒートシール強度を示す。すなわち低温ヒートシール性に優れる。
【0155】
本発明に係る押出ラミネートフィルムは、例えば上記基材フィルム上にエチレン系重合体組成物(γ)を押出ラミネートすることにより製造することができる。押出ラミネートを行う際には、基材フィルムに直接エチレン系重合体組成物(γ)を押出ラミネートしてもよく、また基材フィルムとエチレン系重合体組成物(γ)との接着力を高めるために、基材フィルムに予め公知の方法、例えばアンカーコート剤を塗布したり、あるいは接着性ポリオレフィン、高圧法ポリエチレンなどの下貼樹脂層を設けた後にエチレン系重合体組成物(γ)を押出ラミネートしてもよい。
【0156】
押出ラミネートを行う際のエチレン系重合体組成物(γ)からなる層の厚みは、特に限定されないが、透明性、柔軟性を維持するという観点から好ましくは300μm以下であり、より好ましくは250μm以下であり、さらに好ましくは200μm以下である。一方、機械的特性や低温ヒートシール性を考慮すると、層の厚みは好ましくは5μm以上であり、より好ましくは10μm以上であり、さらに好ましくは15μm以上である。
【0157】
本発明の本発明の押出ラミネートフィルムを液体包装用フィルムとして使用する場合には、上記エチレン系重合体組成物(γ)からなる層を液体包装用フィルムのシール層として使用する。この場合の該シール層の厚さは適宜設定可能であるが、好ましくは5〜100μm程度である。
【0158】
液体包装用フィルムの構成としては、基材フィルムと基材フィルム上にシール層が形成された構成であり、基材フィルムを形成する素材としては、フィルム形成能を有するものであれば特に限定されず、任意の重合体あるいは紙、アルミ箔、セロハンなどを使用することができる。
【0159】
このような重合体としては、例えば、高密度ポリエチレン、中,低密度ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、アイオノマー、ポリプロピレン、ポリ-1-ブテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテンなどのオレフィン系重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリアクリロニトリルなどのビニル系重合体、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン10、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ポリメタキシリレンアジパミドなどのポリアミド系重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系重合体、ポリビニルアルコール、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリカーボネート系重合体などおよびこれらの混合物等が挙げられる。
【0160】
また基材フィルムが重合体からなるときには、この重合体フィルムは、無配向であってもよく一軸または二軸に延伸されていてもよい。さらに基材フィルムは、単層でも多層であってもよい。
【0161】
このような液体包装用フィルムは、例えば上述の押出ラミネートを行うことにより製造することができる。
液体包装用フィルムは適当な大きさに切断した後、シーラント面(上記エチレン系重合体組成物からなる層)同士が接触するように重ね合わせ、周囲をヒートシールすることにより液体包装容器とすることができる。このような液体包装容器は、例えば、液体スープ、液体調味料、ジュース、酒、水などの各種液体や、漬物、レトルト食品等、液体を含む製品の包装容器として好適に用いられる。
【実施例】
【0162】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、実施例等で得られたエチレン系重合体組成物の分析方法および評価方法の中で、以上の説明中に記述されていない方法は以下の通りである。
【0163】
<加工特性>
[ネックイン]
エチレン系重合体組成物(ただし、比較例5ではエチレン系重合体。以下も同様である。)を、65mmφの押出機とダイ幅500mmのTダイとを有する住友重機社製ラミネーターを用いて、基材である50g/m
2のクラフト紙上に下記条件にて押出ラミネートした。
・エアギャップ:130mm
・ダイ下樹脂温度:295℃
・引取速度:80m/分
・膜厚:20μm
・Tダイの幅をL
0、各引取速度にてクラフト紙上にラミネートされたフィルムの幅をLとしたときのL
0−Lの値をネックインとした。
【0164】
[膜切れ速度、引取サージング発生速度]
エチレン系重合体組成物を、65mmφの押出機とダイ幅500mmのTダイとを有する住友重機社製ラミネーターを用いて、基材である50g/m
2のクラフト紙上に、エアギャップ130mm、ダイ下樹脂温度295℃の条件にて押出ラミネートした。押出量は引取速度80m/分の時の膜厚が20μmになるよう設定した。
【0165】
引取速度を上昇させていき、溶融膜が切れたとき(溶融膜の端部のみが切れた時も含む)の引取速度を膜切れ速度とした。
また、引取速度を10m/分ずつ350m/分まで上昇させ、各引取速度におけるネックインを5回測定し、そのネックインの平均値に対して±1.5mm以上になる値が2回以上測定された時の引取速度を引取サージング発生速度とした。
【0166】
<フィルム物性>
エチレン系重合体組成物を、65mmφの押出機とダイ幅500mmのTダイとを有する住友重機社製ラミネーターを用いて、基材上にエアギャップ130mm、ダイ下樹脂温度295℃、引取速度80m/分の条件下で、膜厚25μmになるよう押出ラミネートした。
【0167】
基材としては、厚さ15μmの二軸延伸ナイロンフィルム(商品名:エンブレムONM、ユニチカ(株)製)の片面に、ウレタン系アンカーコート剤を塗布し、その後、チーグラー触媒を用いて製造された直鎖状低密度ポリエチレンと高圧法低密度ポリエチレンをそれぞれ50重量部ずつブレンドしたエチレン系混合樹脂を25μmの厚さで押出ラミネートした積層体を用い、エチレン系混合樹脂層の表面にエチレン系重合体組成物を押出ラミネートした。
【0168】
[ヒートシール強度]
得られた押出ラミネートフィルムを、エチレン系重合体組成物層同士が接触するように重ね合わせ、エチレン系重合体組成物層同士のヒートシール強度を、下記方法に従って測定ないし評価した。
片面加熱バーシーラーを使用
ヒートシール温度:120℃
ヒートシール圧力:2kg/cm
2
ヒートシール時間:0.5秒
シールバーの幅:10mm
試験片幅:15mm
剥離角度:180度
剥離速度:300mm/分。
【0169】
[ホットタック試験(低温シール性)]
各温度に設定した加熱バーを用い、下記の条件でフィルムのヒートシールを行った。ヒートシール後に加熱バーが外れたと同時に剥離試験を行い、剥離開始後0.25秒の剥離強度を記録した。
両面加熱バーシーラーを使用
ヒートシール温度:85℃、95℃
ヒートシール圧力:0.42MPa
ヒートシール時間:1.0秒
シール面積:25mm×12.7mm
試験片幅:15mm
剥離角度:180度
剥離速度:400mm/分。
【0170】
[破袋テスト]
2枚の上記押出ラミネートフィルムを、エチレン系重合体組成物層同士が接触するように重ね合わせ、これを160℃でヒートシールし、90mm×120mmの3包シール袋を作製した。袋の中にサラダ油または水道水を100g入れた後、袋の残りの辺を同様の方法でヒートシールして、内容物の入った4包シール袋を得た。得られた4包シール袋を90℃又は95℃のウォーターバス中で30分間ボイルし、終了直後に、袋に、面と垂直な方向に100kg荷重を1分間かけ、シールの後退状況を確認した。具体的には、4辺それぞれにおける後退の最大距離(mm)を測定し、それらの平均の値を算出した。
【0171】
[メタロセン化合物の合成]
下記構造式で表される(A−1)は、特開2009−144148号公報に記載の方法に基づいて合成し、下記構造式で表される(A−2)は、STREM社製のものを使用した。
【0172】
下記構造式で表される(B−1)は、特開平4−69394号公報に記載の方法に基づいて、また下記構造式で表される(B−2)は、特許第2813057号公報に記載の方法に基づいて合成した。
【0173】
【化3】
【0174】
[製造例1(エチレン系重合体(α−1)の製造)]
固体成分(S−1)の調製;
内容積270リットルの攪拌機付き反応器内で、窒素雰囲気下、固体状担体(S)として、富士シリシア株式会社製シリカ(SiO
2:平均粒径70μm、比表面積340m
2/g、細孔容積1.3cm
3/g、250℃焼成)10kgを77リットルのトルエンに懸濁させた後0〜5℃に冷却した。得られた懸濁液に、成分(C)として、メチルアルミノキサンのトルエン溶液(Al原子換算で3.5mmol/mL)19.4リットルを30分間かけて滴下した。この際、系内の温度を0〜5℃に保った。
【0175】
引き続き固体状担体(S)と成分(C)とを0〜5℃で30分間反応させた後、約1.5時間かけて95〜100℃まで昇温して、引き続きこれらを95〜100℃で4時間反応させた。その後系内を常温まで降温して、上澄み液をデカンテーションにより除去し、さらに沈殿物をトルエンで2回洗浄した後、全量115リットルの固体成分(S−1)のトルエンスラリーを調製した。得られたスラリー成分の一部を採取し濃度を調べたところ、スラリー濃度:122.6g/L、Al濃度:0.62mol/Lであった。
【0176】
固体触媒成分(X−1)の調製;
内容積114リットルの撹拌機付き反応器(1)に、固体成分(S−1)のトルエンスラリーの内12.2リットルを窒素雰囲気下で装入し、全量が28リットルになるようトルエンを添加した。次に、内容積5リットルのガラス製反応器に窒素雰囲気下、成分(A)として、ジメチルシリレン(3−n−ブチルシクロペンタジエニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド2.58g(Zr原子換算で6.61mmol)、および成分(B)として、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド16.40g(Zr原子換算で30.10mmol)を採取し(成分(A)/成分(B)のモル比=19/81)、これらをトルエン5.0リットルに溶解させ、上記反応器(1)に圧送した。圧送後、前記トルエンスラリーと成分(A)および成分(B)のトルエン溶液とを、反応器内温73〜76℃で2時間反応させ、上澄み液をデカンテーションにより除去し、さらに沈殿物をヘキサンで3回洗浄した後、沈殿物にヘキサンを加えて全量30リットルとし、固体触媒成分(X−1)のヘキサンスラリーを調製した。
【0177】
予備重合触媒成分(XP−1)の調製;
引き続き、反応器(1)内で、10℃まで冷却した上記の固体触媒成分(X−1)のヘキサンスラリーに、ジイソブチルアルミニウムヒドリド(DiBAl−H)3.7molを添加した。さらに常圧下でエチレンを系内に連続的に数分間供給した。この間系内の温度は10〜15℃に保持した。次いで1−ヘキセン0.10リットルを添加した。1−ヘキセンの添加後、1.4kg/時間でエチレン供給を開始し、系内温度32〜37℃にて予備重合を行った。予備重合を開始してから30分毎に計5回、1−ヘキセン0.06リットルを添加し、予備重合開始から190分後にエチレン供給が4.3kgに到達したところで、エチレン供給を停止した。その後、上澄み液をデカンテーションにより除去し、沈殿物をヘキサンで4回洗浄した後、沈殿物にヘキサンを加えて全量を50リットルとした。
【0178】
次に、系内温度を34〜36℃にて、成分(G)としての三洋化成工業株式会社製ケミスタット2500(ヤシ脂肪酸ジエタノールアミド:60.8g)のヘキサン溶液を上記反応器(1)に圧送し、引き続き、34〜36℃で2時間反応を行った。その後、上澄み液をデカンテーションにより除去し、沈殿物をヘキサンで4回洗浄し、ヘキサンスラリー(1)を得た。
【0179】
次に、内容積43リットルの撹拌機付き蒸発乾燥機に、窒素雰囲気下、ヘキサンスラリー(1)を挿入した後、乾燥機内を約60分かけて−68kPaGまで減圧し、−68kPaGに到達したところで約4.3時間真空乾燥を行い、ヘキサンならびに予備重合触媒成分中の揮発分を除去した。さらに−100kPaGまで減圧し、−100kPaGに到達したところで8時間真空乾燥を行い、予備重合触媒成分(XP−1)6.1kgを得た。得られた予備重合触媒成分(XP−1)の一部を採取し、組成を調べたところ、Zr原子が、予備重合触媒成分1g当たり0.52mg含まれていた。
【0180】
エチレン系重合体(α−1)の製造;
内容積1.7m
3の流動層型気相重合反応器において、予備重合触媒成分(XP−1)を用いて、エチレン・1−ヘキセン共重合体の製造を行った。
【0181】
表1に示す条件に従い、連続的に反応器内に予備重合触媒成分(XP−1)、エチレン、窒素、1−ヘキセンなどを供給した。重合反応物を反応器より連続的に抜き出し、乾燥装置にて乾燥し、エチレン系重合体(α−1)の粉末を得た。
【0182】
得られたエチレン共重合体(α−1)には酸化防止剤などの添加剤の配合は行わず、エチレン共重合体(α−1)を、株式会社東洋精機製作所製の二軸異方向20mmφ押出機を用い、設定温度200℃、スクリュー回転数100rpmの条件で溶融混練した後、ストランド状に押し出し、カットしてペレットを得た。
【0183】
[製造例2(エチレン系重合体β−1)の製造]
国際公開WO2007/034920の実施例11に従いエチレン系重合体(β−1)を製造した。
【0184】
[実施例1]
製造例1で得られたエチレン系重合体α−1のペレットを20重量部、製造例2で得られたエチレン系重合体β−1を80重量部の割合でこれらをブレンドし、株式会社東洋精機製作所製の二軸異方向20mmφ押出機を用い、設定温度200℃、スクリュー回転数100rpmの条件で溶融混練した後、ストランド状に押し出し、カットしてペレットを得た。
【0185】
得られたペレットにさらに成分ω−1として、三井化学株式会社製タフマーA−4085(要件(III)、要件(1’)などを満たさない樹脂)を25重量部配合し、エチレン系重合体組成物を製造し、これを測定試料とした。
この測定試料を用いて押出ラミネート成形を行った結果を、表2に示す。
【0186】
[実施例2]
製造例1で得られたエチレン系重合体α−1のペレットを20重量部、製造例2で得られたエチレン系重合体β−1を80重量部の割合でこれらをブレンドし、株式会社東洋精機製作所製の二軸異方向20mmφ押出機を用い、設定温度200℃、スクリュー回転数100rpmの条件で溶融混練した後、ストランド状に押し出し、カットしてエチレン系重合体組成物のペレットを製造し、これを測定試料とした。
この測定試料を用いて押出ラミネート成形を行った結果を、表2に示す。
【0187】
[製造例3(エチレン系重合体(α−3)の製造)]
固体触媒成分(X−3)の調製;
内容積114リットルの撹拌機付き反応器(1)に、製造例1の“固体成分(S−1)の調製”で得られた固体成分(S−1)のトルエンスラリーの内、12.2リットルを窒素雰囲気下で装入し、全量が28リットルになるようトルエンを添加した。次に、内容積5リットルのガラス製反応器に窒素雰囲気下、メタロセン化合物(B−1)16.40g(Zr原子換算で30.10mmol)を採取し、トルエン5.0リットルに溶解させ、上記反応器(1)に圧送した。前記トルエンスラリーと成分(B−1)のトルエン溶液とを、反応器系内温度20〜25℃で1時間反応させた後、系内温度を95℃に昇温し、さらに2時間反応させた。30℃まで降温後、得られたスラリー溶液にメタロセン化合物(A−1)2.58g(Zr原子換算で6.61mmol)のトルエン溶液1.0リットルを加え、これらを系内温度20〜30℃で1時間反応させた。上澄み液をデカンテーションにより除去し、さらに沈殿物をヘキサンで3回洗浄した後、沈殿物にヘキサンを加えて全量30リットルとし、固体触媒成分(X−3)のヘキサンスラリーを調製した。
【0188】
予備重合触媒(XP−3)の調製;
固体触媒成分(X−1)のヘキサンスラリーを固体触媒成分(X−3)のヘキサンスラリーに変更したこと以外は製造例1の“予備重合触媒成分(XP−1)の調製”と同様の操作を行い、予備重合触媒(XP−3)6.1kgを得た。得られた予備重合触媒(XP−3)の一部を採取し、組成を調べたところ、Zr原子が、予備重合触媒成分1g当たり0.52mg含まれていた。
【0189】
エチレン系重合体α−3の製造;
内容積1.0m
3の流動層型気相重合反応器において、上記予備重合触媒(XP−3)を用いて、エチレン・1−ヘキセン共重合体の製造を行った。
【0190】
表1に示す条件に従い、連続的に反応器内に予備重合触媒成分(XP−3)、エチレン、窒素、1−ヘキセンなどを供給した。重合反応物を反応器より連続的に抜き出し、乾燥装置にて乾燥し、エチレン系重合体(α−3)の粉末を得た。
【0191】
得られたエチレン共重合体(α−3)には酸化防止剤などの添加剤の配合は行わず、エチレン共重合体(α−3)を、株式会社東洋精機製作所製の二軸異方向20mmφ押出機を用い、設定温度200℃、スクリュー回転数100rpmの条件で溶融混練した後、ストランド状に押し出し、カットしてペレットを得た。
【0192】
[実施例3]
エチレン共重合体(α‐1)のペレットをエチレン共重合体(α‐3)のペレット20重量部に変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行ってエチレン系重合体組成物を製造し、これを測定試料とした。
この測定試料を用いて押出ラミネート成形を行った結果を表2に示す。
【0193】
【表1】
【0194】
[比較例1]
エチレン系重合体α−1のペレットを三井・デュポンポリケミカル株式会社より市販されている高圧ラジカル重合法によるポリエチレン(商品名:ミラソン11)の製品ペレット20重量部に変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行い、エチレン系重合体組成物を製造し、これを測定試料とした。
【0195】
この測定試料を用いて押出ラミネート成形を行った結果を、表2に示す。
比較例1では、ミラソン11が要件(IV)(メチル分岐数とエチル分岐数との和)および要件(VII)([η]/Mw
0.776)を満たしておらず、油を内容物として入れたボイル試験で破袋が起こった。
【0196】
[比較例2]
エチレン系重合体α−1のペレットを三井・デュポンポリケミカル株式会社より市販されている高圧ラジカル重合法によるポリエチレン(商品名:ミラソン11)の製品ペレット20重量部に変更したこと以外は実施例2と同様の操作を行い、エチレン系重合体組成物のペレットを製造し、これを測定試料とした。
【0197】
この測定試料を用いて押出ラミネート成形を行った結果を、表2に示す。
比較例2でも、ミラソン11が要件(IV)(メチル分岐数とエチル分岐数との和)および要件(VII)([η]/Mw
0.776)を満たしておらず、油を内容物として入れたボイル試験で破袋が起こった。
【0198】
[比較例3]
エチレン系重合体α−1のペレットを三井・デュポンポリケミカル株式会社より市販されている高圧ラジカル重合法によるポリエチレン(商品名:ミラソン11)の製品ペレット20重量部に変更し、エチレン系重合体β−1を株式会社プライムポリマーより市販されている溶液重合法によるエチレン・4-メチル-1-ペンテン共重合体(商品名:ウルトゼックス20100J)の製品ペレット80重量部に変更したこと以外は実施例2と同様の操作を行い、エチレン系重合体組成物のペレットを製造し、これを測定試料とした。
【0199】
この測定試料を用いて押出ラミネート成形を行った結果を表2に示す。
比較例3では、ミラソン11が要件(IV)(メチル分岐数とエチル分岐数との和)および要件(VII)([η]/Mw
0.776)を満たしておらず、かつウルトゼックス20100Jの密度が要件(2)の範囲よりも大きく、ホットタック強度が著しく弱くなり、ホットタック性が劣った。
【0200】
[比較例4]
エチレン系重合体α−1のペレットを、株式会社プライムポリマーより市販されている溶液重合法によるエチレン・4-メチル-1-ペンテン共重合体(商品名:ウルトゼックス20100J)の製品ペレットを20重量部に変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行い、エチレン系重合体組成物を製造し、これを測定試料とした。
【0201】
この測定試料を用いて押出ラミネート成形を行った結果を、表2に示す。
比較例4では、ウルトゼックス20100JのMT/η
*値が要件(III)の範囲と比べて小さく、ゼロせん断粘度〔η
0(P)〕と重量平均分子量(Mw)の関係も要件(V)を満たしていないため、ネックインが大きく、さらに引取サージングも発生したため、押出ラミネートフィルムを作成する事ができなかった。
【0202】
[比較例5]
特開2009−197225の実施例6に記載されている方法に従いエチレン系重合体を製造し、これを測定試料とした。この測定試料を用いて押出ラミネート成形を行った結果を、表2に示す。
【0203】
比較例5では、油を内容物として入れたボイル試験(95℃)で著しいシール後退が起こり、ボイル後のシール強度および低温シール性が劣った。
【0204】
【表2-1】
【0205】
【表2-2】