(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
(構成)
図1は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器を示す分解斜視図である。
図1に示すように、誘導加熱調理器100の上部には、鍋などの被加熱物5が載置される天板4を有している。天板4には、被加熱物5を誘導加熱するための加熱口として、第一の加熱口1、第二の加熱口2、第三の加熱口3とを備え、各加熱口に対応して、第一の加熱手段11、第二の加熱手段12、第三の加熱手段13を備えており、それぞれの加熱口に対して被加熱物5を載置して誘導加熱を行うことができるものである。
本実施の形態1では、本体の手前側に左右に並べて第一の加熱手段11と第二の加熱手段12が設けられ、本体の奥側ほぼ中央に第三の加熱手段13が設けられている。
なお、各加熱口の配置はこれに限るものではない。例えば、3つの加熱口を略直線状に横に並べて配置しても良い。また、第一の加熱手段11の中心と第二の加熱手段12の中心との奥行き方向の位置が異なるように配置しても良い。
【0011】
天板4は、全体が耐熱強化ガラス又は結晶化ガラス等の赤外線を透過する材料で構成されており、誘導加熱調理器100本体の上面開口外周との間にゴム製パッキン又はシール材を介して水密状態に固定される。天板4には、第一の加熱手段11、第二の加熱手段12及び第三の加熱手段13の加熱範囲(加熱口)に対応して、鍋の大まかな載置位置を示す円形の鍋位置表示が、塗料の塗布又は印刷等により形成されている。
【0012】
天板4の手前側には、第一の加熱手段11、第二の加熱手段12、及び第三の加熱手段13で被加熱物5を加熱する際の火力及び調理メニュー(湯沸しモード、揚げ物モード等)を設定するための入力装置として、操作部40a、操作部40b、及び操作部40c(以下、操作部40と総称する場合がある)が設けられている。また、操作部40の近傍には、報知手段42として、誘導加熱調理器100の動作状態及び操作部40からの入力・操作内容等を表示する表示部41a、表示部41b、及び表示部41cが設けられている。なお、操作部40a〜40cと表示部41a〜41cは加熱口毎に設けられている場合、または加熱口を一括して操作部40と表示部41を設ける場合など、特に限定するものではない。
【0013】
天板4の下方であって本体の内部には、第一の加熱手段11、第二の加熱手段12、及び第三の加熱手段13を備えており、各々の加熱手段は加熱コイル(図示せず)で構成されている。
【0014】
誘導加熱調理器100の本体の内部には、第一の加熱手段11、第二の加熱手段12、及び第三の加熱手段13の加熱コイルに高周波電力を供給する駆動回路50と、駆動回路50を含め誘導加熱調理器全体の動作を制御するための制御部45とが設けられている。
【0015】
加熱コイルは、略円形の平面形状を有し、絶縁皮膜された任意の金属(例えば銅、アルミなど)からなる導電線が円周方向に巻き付けることにより構成されており、駆動回路50により高周波電力が各加熱コイルに供給されることで、誘導加熱動作が行われている。
【0016】
図2は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器の駆動回路を示す図である。なお、駆動回路50は加熱手段毎に設けられているが、その回路構成は同一であっても良いし、加熱手段毎に変更しても良い。
図2では1つの駆動回路50のみを図示する。
図2に示すように、駆動回路50は、直流電源回路22と、インバータ回路23と、共振コンデンサ24aとを備える。
【0017】
入力電流検出手段25aは、交流電源(商用電源)21から直流電源回路22へ入力される電流を検出し、入力電流値に相当する電圧信号を制御部45へ出力する。
【0018】
直流電源回路22は、ダイオードブリッジ22a、リアクタ22b、平滑コンデンサ22cとを備え、交流電源21から入力される交流電圧を直流電圧に変換して、インバータ回路23へ出力する。
【0019】
インバータ回路23は、スイッチング素子としてのIGBT23a、23bが直流電源回路22の出力に直列に接続された、いわゆるハーフブリッジ型のインバータであり、フライホイールダイオードとしてダイオード23c、23dがそれぞれIGBT23a、23bと並列に接続されている。インバータ回路23は、直流電源回路22から出力される直流電力を20kHz〜50kHz程度の高周波の交流電力に変換して、加熱コイル11aと共振コンデンサ24aからなる共振回路に供給する。共振コンデンサ24aは加熱コイル11aに直列接続されており、この共振回路は加熱コイル11aのインダクタンス及び共振コンデンサ24aの容量等に応じた共振周波数となる。なお、加熱コイル11aのインダクタンスは被加熱物5(金属負荷)が磁気結合した際に金属負荷の特性に応じて変化し、このインダクタンスの変化に応じて共振回路の共振周波数が変化する。
【0020】
このように構成することで、加熱コイル11aには数十A程度の高周波電流が流れ、流れる高周波電流により発生する高周波磁束によって加熱コイル11aの直上の天板4上に載置された被加熱物5を誘導加熱する。スイッチング素子であるIGBT23a、23bは、例えばシリコン系からなる半導体で構成されているが、炭化珪素、あるいは窒化ガリウム系材料などのワイドバンドギャップ半導体を用いた構成でも良い。
【0021】
スイッチング素子にワイドバンドギャップ半導体を用いることで、スイッチング素子の通電損失を減らすことができ、またスイッチング周波数(駆動周波数)を高周波(高速)にしても駆動回路の放熱が良好であるため、駆動回路の放熱フィンを小型にすることができ、駆動回路の小型化および低コスト化を実現することができる。
【0022】
コイル電流検出手段25bは、加熱コイル11aと共振コンデンサ24aとの間に接続されている。コイル電流検出手段25bは、例えば、加熱コイル11aに流れる電流を検出し、加熱コイル電流値に相当する電圧信号を制御部45に出力する。
【0023】
温度検知手段30は、例えばサーミスタにより構成され、被加熱物5から天板4に伝熱した熱により温度を検出する。なお、サーミスタに限らず赤外線センサなど任意のセンサを用いても良い。
【0024】
図3は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器の制御部の一例を示す機能ブロック図である。
図3を参照して制御部45について説明する。
制御部45は、マイコン又はDSP(デジタル・シグナル・プロセッサ)等からなる誘導加熱調理器100の動作を制御するものであって、駆動制御手段31、負荷判定手段32、駆動周波数設定手段33、電流変化検出手段34、期間計測手段35、入出力制御手段36を備えている。
【0025】
駆動制御手段31は、インバータ回路23のIGBT23a、23bに駆動信号DSを出力してスイッチング動作させることにより、インバータ回路23を駆動するものである。そして駆動制御手段31は、加熱コイル11aに供給する高周波電力を制御することにより、被加熱物5への加熱を制御する。この駆動信号DSは例えば所定のオンデューティ比(例えば0.5)の20〜50kHz程度の所定の駆動周波数からなる信号である。
【0026】
負荷判定手段32は、被加熱物5の負荷判定処理を行うものであって、負荷として被加熱物5の材質を判定するものである。なお、負荷判定手段32は、負荷となる被加熱物5(鍋)の材質は、例えば鉄、SUS430等の磁性材、SUS304等の高抵抗非磁性材、アルミニウム、銅等の低抵抗非磁性材に大別し判定される。
【0027】
駆動周波数設定手段33は、インバータ回路23から加熱コイル11aへ供給する際、インバータ回路23へ出力する駆動信号DSの駆動周波数fを設定するものである。特に、駆動周波数設定手段33は、負荷判定手段32の判定結果に応じて駆動周波数fを自動的に設定する機能を有している。具体的には、駆動周波数設定手段33には、例えば被加熱物5の材質と設定火力とに応じて駆動周波数fを決定するためのテーブルが記憶されている。そして、駆動周波数設定手段33は、負荷判定結果および設定火力が入力された際に、このテーブルを参照することで駆動周波数fの値fdが決定される。なお、駆動周波数設定手段33は、入力電流が過大とならないように共振回路の共振周波数よりも高い周波数を設定する。
【0028】
このように、駆動周波数設定手段33が負荷判定結果に基づき被加熱物5の材質に応じた駆動周波数fによりインバータ回路23を駆動させることにより、入力電流の増加を抑制することができるため、インバータ回路23の高温化を抑制して信頼性を向上することができる。
【0029】
電流変化検出手段34は、駆動周波数設定手段33において設定された駆動周波数f=fdでインバータ回路23を駆動した際に、所定時間当たりの入力電流の時間変化量ΔIを検出するものである。なお、所定時間とは予め設定された期間であってもよいし、操作部40の操作により変更可能な期間であってもよい。
【0030】
期間計測手段35は、加熱コイル11aへの電力供給開始から電流変化検出手段34において時間変化量ΔIが設定値以下になるまでの加熱時間t1を計測するものである。また、期間計測手段35は、加熱時間t1の間における、入力電流の電流変化量I1を計測するものである。
なお、加熱時間t1は、本発明における「第一の時間」に相当する。
【0031】
駆動制御手段31は、期間計測手段35により計測された加熱時間t1及び電流変化量I1に応じて、加熱コイル11aに供給する電力を低下させる。駆動制御手段31は、駆動周波数f=fdの固定を解除し、駆動周波数fを増加量Δfだけ増加させ(f=fd+Δf)、インバータ回路23を駆動する。特に、駆動制御手段31は、加熱時間t1が短く、電流変化量I1が小さいほど増加量Δfを大きく設定する。
【0032】
(動作)
次に、実施の形態1に係る誘導加熱調理器100の動作例について説明する。
まず、天板4の加熱口に載置された被加熱物5を、操作部40により設定された火力により誘導加熱する場合の動作について説明する。
【0033】
使用者により加熱口に被加熱物5が載置され、加熱開始(火力投入)の指示が操作部40に行われると、制御部45の負荷判定手段32は負荷判定処理を行う。
【0034】
図4は、
図3の駆動回路における、駆動周波数に対する入力電流が被加熱物の温度変化によって変化する様子を示すグラフである。
ここで、負荷となる被加熱物5(鍋)の材質は、鉄、SUS430等の磁性材と、SUS304等の高抵抗非磁性材と、アルミ、銅等の低抵抗非磁性材と、に大別される。
【0035】
図4に示すように、天板4に載置された鍋負荷の材質によってコイル電流と入力電流の関係が異なる。制御部45は、
図4に示すコイル電流と入力電流との関係をテーブル化した負荷判定テーブルを予め内部に記憶している。負荷判定テーブルを内部に記憶することで安価な構成で負荷判定手段32を構成することができる。
【0036】
負荷判定処理において、制御部45は、負荷判定用の特定の駆動信号でインバータ回路23を駆動し、入力電流検出手段25aの出力信号から入力電流を検出する。また同時に制御部45は、コイル電流検出手段25bの出力信号からコイル電流を検出する。制御部45は検出したコイル電流および入力電流と、
図4の関係を表した負荷判定テーブルから、載置された被加熱物(鍋)5の材質を判定する。このように、制御部45(負荷判定手段32)は、入力電流とコイル電流との相関に基づいて、加熱コイル11aの上方に載置された被加熱物5の材質を判定する。
【0037】
以上の負荷判定処理を行った後、制御部45は、負荷判定結果に基づいた制御動作を行う。
【0038】
負荷判定結果が、低抵抗非磁性材であった場合、本実施の形態1の誘導加熱調理器100では加熱不可能であるため、加熱不可能であることを報知手段42に報知して、使用者に鍋の変更を促す。この際、駆動回路50から加熱コイル11aには高周波電力を供給しない。
【0039】
また、負荷判定結果が、無負荷であった場合も、加熱不可能であることを報知手段42に報知して、使用者に鍋の載置を促す。この際も同様に加熱コイル11aには高周波電力を供給しない。
【0040】
負荷判定結果が、磁性材、または高抵抗非磁性材であった場合、これらの鍋は本実施の形態1の誘導加熱調理器100で加熱可能な材質であるため、制御部45は、判定した鍋材質に応じた駆動周波数を決定する。この駆動周波数は、入力電流が過大とならないよう共振周波数よりも高い周波数とする。この駆動周波数の決定は、例えば被加熱物5の材質と設定火力とに応じた周波数のテーブル等を参照することで決定することができる。制御部45は、決定した駆動周波数を固定してインバータ回路23を駆動して誘導加熱動作を開始する。
【0041】
図5は、
図3の駆動回路における、駆動周波数に対する入力電流が被加熱物の温度変化によって変化する様子を示すグラフである。
図5において、細線は被加熱物5(鍋)が低温のときの特性であり、太線は被加熱物5が高温のときの特性である。
図5に示すように、被加熱物5の温度によって特性が変化するのは、温度上昇によって被加熱物5の電気抵抗率が増加し、また透磁率が低下することで、加熱コイル11aと被加熱物5の磁気結合が変化するためである。
【0042】
本実施の形態1に係る誘導加熱調理器100の制御部45においては、
図5に示す入力電流が最大となる周波数よりも高い周波数を駆動周波数として決定し、この駆動周波数を固定してインバータ回路23を制御する。
【0043】
図6は、
図5のグラフ中の破線で示した部分を拡大したグラフである。
前述の負荷判定処理で判定した鍋材質に応じた駆動周波数を固定してインバータ回路23を制御すると、被加熱物5が低温から高温になるにつれて、当該駆動周波数における入力電流値(動作点)が、点Aから点Bに変化し、被加熱物5の温度上昇に伴い、入力電流が徐々に低下していく。
このとき、制御部45は、インバータ回路23の駆動周波数を固定した状態で、入力電流の時間当たりの変化量(時間変化量ΔI)を求め、この時間変化量ΔIに基づき、被加熱物5の温度変化を検出する。
【0044】
このため、被加熱物5の材質によらず、被加熱物5の温度変化を検出することができる。また、入力電流の変化により被加熱物5の温度変化を検出することができるので、温度センサ等と比較して高速に被加熱物5の温度変化を検出することができる。
【0045】
また、加熱コイル11aの上方に載置された被加熱物5の材質を判定し、被加熱物5の材質に応じて、インバータ回路23の駆動周波数を決定し、該駆動周波数によりインバータ回路23を駆動させる。このため、被加熱物5の材質に応じた駆動周波数によりインバータ回路23を固定して駆動させることができ、入力電流の増加を抑制することができる。よって、インバータ回路23の高温化を抑制でき、信頼性を向上することができる。
【0046】
(湯沸しモード1)
次に、操作部40により調理メニュー(動作モード)として、被加熱物5に投入された水の湯沸し動作を行う湯沸しモードが選択された場合の動作について説明する。
【0047】
制御部45は、上述した動作と同様に、負荷判定処理を行い、判定した鍋材質に応じた駆動周波数を決定し、決定した駆動周波数を固定してインバータ回路23を駆動して誘導加熱動作を実施する。そして、制御部45は、入力電流の時間変化量ΔIにより沸騰完了を判断する。ここで、水の湯沸しを行う際の経過時間と各特性の変化について
図7により説明する。
【0048】
図7は、
図3の所定の駆動周波数で駆動した際の温度、入力電流の時間経過を示すグラフである。
図7においては、被加熱物5内に水が投入され、湯沸しモードで動作させた時の経過時間と各特性の変化を示しており、
図7(a)は駆動周波数、
図7(b)は温度(水温)、
図7(c)は入力電流を示す。
【0049】
図7(a)に示すように、駆動周波数を固定してインバータ回路23の制御を行うと、
図7(b)に示すように、被加熱物5の温度(水温)は沸騰するまで徐々に上昇し、沸騰すると温度は約100℃一定となる。この時、
図7(c)に示すように、被加熱物5の温度の上昇に応じて、入力電流は徐々に低下していき、水が沸騰して温度が一定となると、入力電流も一定となる。すなわち、入力電流が一定となれば、水が沸騰して湯沸しが完了したこととなる。
【0050】
このようなことから、本実施の形態1における制御部45は、インバータ回路23の駆動周波数を固定した状態で入力電流の時間当たりの変化量(時間変化量ΔI)を求め、この時間変化量ΔIが設定値以下となった場合、湯沸しが完了したと判断する。
なお、設定値の情報は予め制御部45に設定しても良いし、操作部40等から入力可能としても良い。
【0051】
そして、制御部45は、報知手段42を用いて湯沸しが完了した旨を報知する。ここで報知手段42としては、表示部41に沸騰完了などの表示を行ったり、スピーカ(図示せず)を用いて音声で使用者に報知したり、その方式は特に限定しない。
【0052】
以上のように、水の湯沸し動作を設定する湯沸しモードにおいて、インバータ回路23の駆動周波数を固定した状態で、入力電流の時間変化量ΔIを求め、この時間変化量ΔIが、設定値以下となったとき、湯沸しが完了した旨を報知手段42により報知させる。
このため、水の湯沸し完了を速やかに報知することができ、使い勝手の良い誘導加熱調理器を得ることができる。
【0053】
また制御部45は入力電流の時間変化量ΔIを求める際、高精度のマイコンは不要であるため、安価な方式で湯沸し検知が可能な誘導加熱調理器を得ることができる。
【0054】
(湯沸しモード2)
次に、操作部40により湯沸しモードが選択された場合の別の制御動作について説明する。
【0055】
制御部45は、上述した動作と同様に、負荷判定処理を行い、判定した鍋材質に応じた駆動周波数を決定し、決定した駆動周波数を固定してインバータ回路23を駆動して誘導加熱動作を実施する。そして、制御部45は、入力電流の時間変化量ΔIにより沸騰完了を判断する。
さらに、制御部45は、インバータ回路23の駆動周波数を固定した状態で求めた時間変化量ΔIが、設定値以下となった場合、駆動周波数の固定を解除する。そして、制御部45は、時間変化量ΔIが設定値以下になるまでの加熱時間t1と、加熱時間t1の間における入力電流の電流変化量I1とに応じて、インバータ回路23の駆動周波数を可変して、加熱コイル11aに供給される高周波電力を可変させる。このような動作の詳細を
図8〜
図11により説明する。
【0056】
図8は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器の湯沸モード2における駆動周波数、温度、入力電流と時間との関係を示す図である。
図8においては、被加熱物5内に水が投入され湯沸しを行った際の経過時間と各特性の変化を示している。
図8(a)〜(c)は、被加熱物5内に投入された水の初期温度が高い時の特性であり、
図8(a)は駆動周波数、
図8(b)は温度(水温)、
図8(c)は入力電流を示している。
図8(d)〜(f)は、被加熱物5内に投入された水の初期温度が低い時の特性であり、
図8(d)は駆動周波数、
図8(e)は温度(水温)、
図8(f)は入力電流を示している。
図9は、
図5の破線で示した部分を拡大した図である。
ここで、初期温度とは、加熱を開始してから所定の期間までの範囲における温度を指し、加熱開始時に限定するものではない。
なお、
図8においては、初期温度が高い場合と低い場合の水(内容物)の量が略同等であるものとして説明する。即ち、加熱初期段階における被加熱物5の内容物の熱負荷は、内容物の温度と量とによって定まるものであるが、内容物の量が同等であれば熱負荷は初期温度に依存する。
【0057】
図10は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器の湯沸モード2の動作例を示すフローチャートである。
図11は、
図11の初期水温検知の動作例を示すフローチャートである。
以下、
図10、
図11のフローチャートに基づき、
図8、
図9を参照しつつ説明する。
【0058】
まず、使用者により天板4の加熱口に被加熱物5が載置され、加熱開始(火力投入)の指示が操作部40に行われる。すると、負荷判定手段32において、入力電流とコイル電流との関係を示す負荷判定テーブルを用いて、載置された被加熱物(鍋)5の材質が負荷として判定される(ステップST1)。なお、負荷判定結果が、加熱不可能な材質もしくは無負荷であると判定した場合、その旨を報知手段42から報知され、駆動回路50から加熱コイル11aに高周波電力が供給されないように制御される。
【0059】
次に、駆動周波数設定手段33において、負荷判定手段32の負荷判定結果に基づき判定した鍋材質に応じた駆動周波数fの値fdが決定される(ステップST2)。このとき、駆動周波数fは、入力電流が過大とならないように共振回路の共振周波数よりも高い周波数f=fdに設定される。
【0060】
その後、駆動制御手段31により、駆動周波数fをfdに固定してインバータ回路23が駆動されることにより誘導加熱動作が開始される(ステップST3)。電力供給開始による誘導加熱動作の開始とともに期間計測手段35による加熱時間t1と電流変化量I1の計測が開始される。
【0061】
駆動周波数を固定して加熱を開始すると(
図8(a)、(d))、被加熱物5の温度(水温)は沸騰するまで徐々に上昇する(
図8(b)、(e))。この駆動周波数の固定での制御においては、
図9に示すように、当該駆動周波数における入力電流値(動作点)が、点Aから点Bに変化し、被加熱物5の温度上昇に伴い、入力電流が徐々に低下していく。
【0062】
誘導加熱動作が行われている間、電流変化検出手段34において所定のサンプリング間隔で時間変化量ΔIが算出される(ステップST4)。
そして、時間変化量ΔIが設定値(Iref)以下であるか否かが判断される(ステップST5)。被加熱物5が低温から高温になるにつれて、時間変化量ΔIが小さくなっていく(
図8(c)、(f))。水が沸騰して温度が一定となると、入力電流も一定となる(
図8(c)、(f))。これにより、加熱時間t1において、制御部45は、入力電流の時間変化量ΔIが設定値(Iref)以下となったと判定する。
【0063】
そして、時間変化量ΔIが設定値以下となったとき、期間計測手段35において加熱時間t1が検出される(ステップST6)。また、期間計測手段35において、加熱開始から加熱時間t1の間の、入力電流の電流変化量I1が検出される(ステップST7)。
その後、駆動制御手段31は、初期水温検知の処理を実施し、加熱時間t1と電流変化量I1とから駆動周波数fの増加量Δfが決定される(ステップST8)。
【0064】
加熱時間t1の間は駆動周波数を固定して駆動しているため、被加熱物5に投入された水の初期温度によって、加熱時間t1および電流変化量I1は変化する。即ち、水の初期温度(T0)が高い場合(
図8(b))では、加熱時間t1は短く、電流変化量I1は小さくなる。一方、水の初期温度が低い場合(
図8(e))では、加熱時間t1は長く、電流変化量I1は大きくなる。
このことから、加熱時間t1と電流変化量I1とに基づき、水の初期温度(加熱初期段階の熱負荷)を判定することができる。
【0065】
この初期水温検知の処理の詳細を
図11により説明する。
制御部45は、加熱時間t1が所定の参照時間t_ref1よりも短く、かつ、電流変化量I1が所定の参照電流変化量I_ref1よりも小さいか否かを判定する(ステップST81)。
【0066】
ステップST81の条件を満たす場合、制御部45は、水の初期温度が高い(強ホットスタート)と判定する(ステップST82)。例えば水の量が既知であれば、水の初期温度(T0)がT_ref1以上であると推定できる。
【0067】
一方、ステップST81の条件を満たさない場合、制御部45は、加熱時間t1が所定の参照時間t_ref2以下、かつ、電流変化量I1が所定の参照電流変化量I_ref2以下であるか否かを判定する(ステップST83)。ここで、参照時間t_ref2は、参照時間t_ref1よりも長い時間である。参照電流変化量I_ref2は、参照電流変化量I_ref1よりも大きい値である。
【0068】
ステップST83の条件を満たす場合、制御部45は、水の初期温度が、上記強ホットスタートよりも低い(弱ホットスタート)と判定する(ステップST84)。例えば水の量が既知であれば、水の初期温度(T0)がT_ref2以上、T_ref1未満であると推定できる。
【0069】
一方、ステップST83の条件を満たさない場合、制御部45は、水の初期温度が、上記弱ホットスタートよりもさらに低い(通常加熱)と判定する(ステップST85)。例えば水の量が既知であれば、水の初期温度(T0)がT_ref2未満であると推定できる。
【0070】
図12は、参照時間及び参照電流変化量と加熱初期段階の熱負荷との関係を示す図である。
図12に示すように、ステップST81〜ST85の初期水温判定の処理により、加熱時間t1及び電流変化量I1に応じて、制御部45は、加熱時間t1が短く、電流変化量I1が小さい程、加熱初期段階における被加熱物5の内容物の熱負荷が小さい(水の温度が高い)と推定する。
なお、ここでは、参照時間及び参照電流変化量がそれぞれ2つ場合について説明したが、3つ以上の参照時間及び参照電流変化量を設定して判定してもよい。
【0071】
ここで、加熱時間t1及び電流変化量I1は、初期温度のみならず水の量によっても変化するため、ステップST81〜ST85の初期水温判定の処理における各参照時間及び各参照電流変化量は、水の量に応じて設定する必要がある。このため、例えば予め水の量(内容物の量)に応じた各参照時間及び各参照電流変化量の情報をテーブルとして記憶しておき、水の量(内容物の量)の情報を取得することで、各参照時間及び各参照電流変化量を決定するようにしても良い。これにより、水の初期温度(熱負荷)を、より精度良く検出することができる。なお、水の量の情報は、操作部40等から入力可能としても良いし、例えば重力センサ等により被加熱物5の重量から水の量を判定しても良い。なお、水の量は、厳密な値を求める必要はなく、例えば、少、中、多の3段階などでも良い。
【0072】
次に、制御部45の駆動制御手段31は、駆動周波数の固定を解除し、インバータ回路23の駆動周波数を増加させることで入力電流を低下させて、加熱コイル11aに供給される高周波電力(火力)を低下させる。つまり、被加熱物5の保温時には温度を上昇させる程の火力は不要であるため、加熱コイル11aから被加熱物5への加熱量を抑える。
このとき、制御部45の駆動制御手段31は、推定した初期温度(熱負荷)に応じて加熱コイル11aに供給される高周波電力を制御する。駆動制御手段31においてインバータ回路23の駆動周波数f=fdからf=fd+Δfに変更され、低下した高周波電力がインバータ回路23から加熱コイル11aに供給される(ステップST86、
図8(a)(d))。
【0073】
ここで駆動周波数の増加量(Δf)について説明する。
加熱時間t1が短く、電流変化量I1が小さい場合、即ち、強ホットスタートの場合、
図8(a)に示すように、駆動制御手段31は、駆動周波数fを大きく増加させ、駆動周波数f=fd+Δf1の駆動信号DSでインバータ回路23を駆動する。
一方、加熱時間t1が長く、電流変化量I1が大きい場合、即ち、弱ホットスタートの場合、
図8(d)に示すように、駆動制御手段31は、駆動周波数fを小さく増加させ、駆動周波数f=fd+Δf2の駆動信号DSでインバータ回路23を駆動する。
なお、加熱時間t1がさらに長く、電流変化量I1がさらに大きい場合、即ち、通常加熱の場合、駆動制御手段31は、駆動周波数fをΔf2よりも小さく増加させてインバータ回路23を駆動する。
なお、駆動周波数の増加量Δf1、Δf2の情報は予め制御部45に設定しても良いし、操作部40等から入力可能としても良い。
【0074】
図9に示すように、駆動周波数fを上げて火力を低下させても水温が殆ど低下せず一定の温度を保ち続けるように増加量Δf1、Δf2が設定され、動作点が点Bから点C1(もしくは点C2)に変化する。すると、駆動周波数fを上げて火力を低下させても、水温は殆ど低下せず保温状態を維持することになる。
【0075】
このように、加熱時間t1以降に投入する高周波電力(火力)について、加熱初期段階の熱負荷が小さい(初期温度が高い)場合は火力を低めに設定し、加熱初期段階の熱負荷が大きい(初期温度が低い)場合には火力を高めに設定する。
このため、無駄な電力供給を抑えつつ、保温動作を行うことができる省エネで使い勝手の良い誘導加熱調理器を得ることができる。
特に、湯沸し(水の沸騰)モードの場合では、必要以上に火力を上げても水温が100℃以上になることはないため、駆動周波数fを上げて火力を低下させても、沸騰状態を維持することができる。
【0076】
このように、入力電流の時間変化量ΔIが、設定値以下となった場合、インバータ回路23の駆動を制御して、加熱コイル11aに供給される高周波電力を低下させるため、入力電力を抑えて省エネルギー化を図ることができる。
すなわち、従来のように、設定値になった際に所定の駆動周波数fまで単に増加させた場合、内容物の熱負荷(温度及び量)に応じて最適な保温状態を保つことができないという問題がある。例えば、被加熱物5の内容物の初期温度が低い場合には熱量が足りずに温度が徐々に低下してしまい再加熱が必要となってしまう。一方で被加熱物5の内容物の初期温度が高い場合には過剰な電力を消費してしまう。
本実施の形態1においては、被加熱物5の内容物の熱負荷(温度及び量)が異なれば駆動周波数fが同一(火力が同一)であっても加熱時間t1及び電流変化量I1が異なる点に着目し、駆動制御手段31が加熱時間t1及び電流変化量I1に応じて増加量Δfを決定し、保温する際の駆動周波数fを変化させる。これにより、被加熱物5の熱負荷に即して必要十分な電力を加熱コイル11aに供給することができるため、効率よく省エネ化を図ることができる。
【0077】
再び
図10を参照する。ステップST8の後、駆動制御手段31は、時間変化量ΔIが設定値以下になってから所定の付加時間Δtを経過した後(t2=t1+Δt)に、報知手段42により使用者に湯沸し完了の報知を行う(ステップST9)。
なお、制御部45は、加熱時間t1が参照時間t_ref1(時間基準値)より短く、かつ、電流変化量I1が参照電流変化量I_ref1(電流基準値)より小さい場合(強ホットスタート)には、時間変化量ΔIが設定値以下となった時に、湯沸しが完了した旨を報知手段42により報知させても良い。
【0078】
(湯沸しモード3)
次に、操作部40により湯沸しモードが選択された場合の別の制御動作について説明する。
【0079】
制御部45は、上述した動作と同様に、負荷判定処理を行い、判定した鍋材質に応じた駆動周波数を決定し、決定した駆動周波数を固定してインバータ回路23を駆動して誘導加熱動作を実施する。そして、制御部45は、入力電流の時間変化量ΔIにより沸騰完了を判断する。
さらに、制御部45は、インバータ回路23の駆動周波数を固定した状態で求めた時間変化量ΔIが、設定値以下となった後、所定時間継続して同じ制御を行い、所定時間経過後、駆動周波数の固定を解除し、インバータ回路23の駆動周波数を可変して、加熱コイル11aに供給される高周波電力を可変させる。このような動作の詳細を
図9及び
図13により説明する。
【0080】
図13は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器の湯沸モード3における駆動周波数、温度、入力電流と時間との関係を示す図である。
図13においては、被加熱物5内に水が投入され湯沸しを行った際の経過時間と各特性の変化を示している。
図13(a)〜(c)は、被加熱物5内に投入された水の初期温度が高い時の特性であり、
図13(a)は駆動周波数、
図13(b)は温度(水温)、
図13(c)は入力電流を示している。
図13(d)〜(f)は、被加熱物5内に投入された水の初期温度が低い時の特性であり、
図13(d)は駆動周波数、
図13(e)は温度(水温)、
図13(f)は入力電流を示している。
なお、
図13においては、初期温度が高い場合と低い場合の水(内容物)の量が略同等であるものとして説明する。即ち、加熱初期段階における被加熱物5の内容物の熱負荷は、内容物の温度と量とによって定まるものであるが、内容物の量が同等であれば熱負荷は初期温度に依存する。
【0081】
上述した湯沸しモード1の動作と同様に、駆動周波数を固定して加熱を開始すると(
図13(a)、(d))、被加熱物5の温度(水温)は沸騰するまで徐々に上昇する(
図13(b)、(e))。この駆動周波数の固定での制御においては、
図9に示すように、当該駆動周波数における入力電流値(動作点)が、点Aから点Bに変化し、被加熱物5の温度上昇に伴い、入力電流が徐々に低下していく。
【0082】
前述のように、被加熱物5の温度上昇に伴い、入力電流が徐々に低下するのは、温度上昇によって被加熱物5の電気抵抗率、透磁率が変化することで、加熱コイル11aと被加熱物5の磁気結合が変化するためである。すなわち入力電流が一定となる状態は、被加熱物5(特に加熱コイル11aと近接する部位)の温度が一定になることを意味する。
【0083】
図13(c)、(f)において入力電流が一定となる加熱時間t1では、被加熱物5の温度は約100℃に達しているが、被加熱物5の内部に投入された水は温度ムラがあり、水全体としては沸騰に至っていない場合となることがある。
この湯沸しモード3では、加熱時間t1に付加時間Δtを加えた加熱時間t2まで、駆動周波数を固定した状態で駆動することで、短時間で確実に水全体を沸騰させることができる。加熱時間t2において、制御部45は湯沸しが完了したと判断する。
なお、付加時間Δtは、本発明における「第二の時間」に相当する。
【0084】
ここで加熱時間t2と付加時間Δtについて説明する。
付加時間Δtは、加熱時間t2と加熱時間t1との差分であり、Δt=t2−t1で表させる。湯沸しモード3では、制御部45により、加熱開始から入力電流が一定となるまでの加熱時間t1を計測し、加熱時間t1の長さと、加熱時間t1までの電流変化量I1の大きさに応じて付加時間Δtを変化させる。
【0085】
湯沸しモード3の加熱初期段階では、駆動周波数を固定して駆動しているため、被加熱物5に投入された水の熱負荷(初期温度及び量)によって、加熱時間t1及び電流変化量I1は変化する。即ち、水の初期温度が高い場合(
図13(b))では加熱時間t1は短くなり、電流変化量I1は小さくなる。また、水の初期温度が低い場合(
図13(e))では加熱時間t1は長くなり、電流変化量I1は大きくなる。加熱時間t1が短く、電流変化量I1が大きい場合、
図13(c)に示すように、制御部45は、付加時間Δtを短く設定する。一方、加熱時間t1が長く、I1が大きい場合、
図13(f)に示すように、制御部45は、付加時間Δtを長く設定する。
【0086】
水の初期温度が低い場合は高い場合と比べて、被加熱物5の内部の水の温度ムラが大きくなることが多く、水全体を確実に沸騰させるためにはより多くの時間が必要となる。
そこで、湯沸しモード3では、加熱時間t1及び電流変化量I1を計測することで被加熱物5の内部の水の初期温度を検出し、水の初期温度に応じた付加時間Δtを設定することで、沸騰に必要な無駄な電力供給を抑制すると共に、短時間で確実に水全体を沸騰させることができる省エネでかつ使い勝手の良い誘導加熱調理器を得ることができる。
【0087】
次に、制御部45は、加熱時間t1から付加時間Δtを経過したあとに、駆動周波数の固定を解除し、インバータ回路23の駆動周波数を増加させることで入力電流を低下させて、加熱コイル11aに供給される高周波電力(火力)を低下させる。駆動周波数を増加させる制御は上記湯沸しモード2と同様である。駆動周波数を上げて火力を低下させても、水温は殆ど低下しないため、
図9に示すように動作点が点Bから点C1(点C2)に移動(変化)する。
【0088】
また、加熱時間t2において、制御部45は、インバータ回路23の駆動周波数を上げると共に、報知手段42により使用者に湯沸し完了の報知を行う。なお使用者への報知は、駆動周波数を上げる前でも上げた後でも良い。
【0089】
なお、上記の説明では、駆動周波数を変更することで高周波電力(火力)を制御する方式について述べたが、インバータ回路23のスイッチング素子のオンデューティ(オンオフ比率)を変更することで火力を制御する方式を用いても良い。
【0090】
また温度検知手段30で検知した温度情報を活用することで、より信頼性の高い誘導加熱調理器を得ることができる。
【0091】
(別の駆動回路の構成例)
続いて別の駆動回路を使用した例について説明する。
図14は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器の別の駆動回路を示す図である。
図14に示す駆動回路50は、
図2に示した構成に、共振コンデンサ24bを付加したものである。なお、その他の構成は
図2と同様であり、同一部分には同一の符号を付する。
【0092】
前述の通り、加熱コイル11aと共振コンデンサにより共振回路を構成しているため、誘導加熱調理器に必要とされる最大火力(最大入力電力)によって、共振コンデンサの容量は決定される。
図10に示す駆動回路50では、共振コンデンサ24aおよび24bを並列接続することで、それぞれの容量を半分にすることができ、共振コンデンサを2個使用した場合でも安価な制御回路を得ることができる。
【0093】
またコイル電流検出手段25bを並列接続した共振コンデンサのうちの共振コンデンサ24a側に配置することで、コイル電流検出手段25bに流れる電流は、加熱コイル11aに流れる電流の半分になるため、小型で小容量のコイル電流検出手段25bを用いることが可能となり、小型で安価な制御回路を得ることができ、安価な誘導加熱調理器を得ることができる。
【0094】
なお、本実施の形態1では、入力電流検出手段25aで検出した入力電流の時間変化量を検出する例について説明したが、入力電流に代えて、コイル電流検出手段25bで検出したコイル電流の時間変化量ΔIを検出しても良いし、入力電流とコイル電流の両方の時間変化量ΔIを検出しても良い。
【0095】
なお、本実施の形態1では、ハーフブリッジ型のインバータ回路23について説明したが、フルブリッジ型又は一石電圧共振型のインバータなどを用いた構成でも良い。
【0096】
更に負荷判定手段32での負荷判定処理でコイル電流と一次電流の関係を用いる方式について説明したが、共振コンデンサの両端の共振電圧を検出することで負荷判定処理を行う方式を用いても良く、負荷判定の方式は特に問わない。
【0097】
また、被加熱物に投入される水の初期温度を、以上の実施の形態により、判定する場合について記載したが、負荷判定手段32の判定結果ごとに閾値を設定するなどして、負荷判定手段32の判定結果に応じて、被加熱物に投入される水の初期温度を推定してもよい。
【0098】
実施の形態2.
本実施の形態2では、上記実施の形態1における駆動回路50の詳細について説明する。
【0099】
図15は、実施の形態2に係る誘導加熱調理器の駆動回路の一部を示す図である。なお、
図15においては、上記実施の形態1の駆動回路50の一部の構成のみを図示している。
図15に示すように、インバータ回路23は、正負母線間に直列に接続された2個のスイッチング素子(IGBT23a、23b)と、そのスイッチング素子にそれぞれ逆並列に接続されたダイオード23c、23dとによって構成されるアームを1組備えている。
【0100】
IGBT23aとIGBT23bは、制御部45から出力される駆動信号によりオンオフ駆動される。
制御部45は、IGBT23aをオンさせている間はIGBT23bをオフ状態にし、IGBT23aをオフさせている間はIGBT23bをオン状態にし、交互にオンオフする駆動信号を出力する。
これにより、IGBT23aとIGBT23bとにより、加熱コイル11aを駆動するハーフブリッジインバータを構成する。
【0101】
なお、IGBT23aとIGBT23bとにより本発明における「ハーフブリッジインバータ回路」を構成する。
【0102】
制御部45は、投入電力(火力)に応じて、IGBT23aおよびIGBT23bに高周波の駆動信号を入力し、加熱出力を調整する。IGBT23aおよびIGBT23bに出力される駆動信号は、加熱コイル11aおよび共振コンデンサ24aにより構成される負荷回路の共振周波数よりも高い駆動周波数の範囲で可変して、負荷回路に流れる電流が負荷回路に印加される電圧と比較して遅れ位相で流れるように制御する。
【0103】
次に、インバータ回路23の駆動周波数とオンデューティ比とによる投入電力(火力)の制御動作について説明する。
【0104】
図16は、実施の形態2に係るハーフブリッジ回路の駆動信号の一例を示す図である。
図16(a)は高火力状態における各スイッチの駆動信号の例である。
図16(b)は低火力状態における各スイッチの駆動信号の例である。
制御部45は、インバータ回路23のIGBT23aおよびIGBT23bに、負荷回路の共振周波数よりも高い高周波の駆動信号を出力する。
この駆動信号の周波数を可変することにより、インバータ回路23の出力が増減する。
【0105】
例えば、
図16(a)に示すように、駆動周波数を低下させると、加熱コイル11aに供給される高周波電流の周波数が、負荷回路の共振周波数に近づき、加熱コイル11aへの投入電力が増加する。
また、
図16(b)に示すように、駆動周波数を上昇させると、加熱コイル11aに供給される高周波電流の周波数が、負荷回路の共振周波数から離れ、加熱コイル11aへの投入電力が減少する。
【0106】
さらに、制御部45は、上述した駆動周波数の可変による投入電力の制御とともに、インバータ回路23のIGBT23aおよびIGBT23bのオンデューティ比を可変することで、インバータ回路23の出力電圧の印加時間を制御し、加熱コイル11aへの投入電力を制御することも可能である。
火力を増加させる場合には、駆動信号の1周期におけるIGBT23aのオン時間(IGBT23bのオフ時間)の比率(オンデューティ比)を大きくして、1周期における電圧印加時間幅を増加させる。
また、火力を低下させる場合には、駆動信号の1周期におけるIGBT23aのオン時間(IGBT23bのオフ時間)の比率(オンデューティ比)を小さくして、1周期における電圧印加時間幅を減少させる。
【0107】
図16(a)の例では、駆動信号の1周期T11におけるIGBT23aのオン時間T11a(IGBT23bのオフ時間)と、IGBT23aのオフ時間T11b(IGBT23bのオン時間)との比率が同じ場合(オンデューティ比が50%)の場合を図示している。
また、
図16(b)の例では、駆動信号の1周期T12におけるIGBT23aのオン時間T12a(IGBT23bのオフ時間)と、IGBT23aのオフ時間T12b(IGBT23bのオン時間)との比率が同じ場合(オンデューティ比が50%)の場合を図示している。
【0108】
制御部45は、上記実施の形態1で説明した、入力電流(又はコイル電流)の所定時間当たりの時間変化量ΔIを求める際に、インバータ回路23の駆動周波数を固定した状態においては、インバータ回路23のIGBT23aおよびIGBT23bのオンデューティ比を固定した状態にしている。
これにより、加熱コイル11aへの投入電力が一定の状態で、入力電流(又はコイル電流)の所定時間当たりの時間変化量ΔIを求めることができる。
【0109】
実施の形態3.
本実施の形態3においては、フルブリッジ回路を用いたインバータ回路23について説明を行う。
図17は、実施の形態3に係る誘導加熱調理器の駆動回路の一部を示す図である。なお、
図17においては、上記実施の形態1の駆動回路50との相違点のみを図示している。
本実施の形態3では、1つの加熱口に対して2つの加熱コイルが設けられている。2つの加熱コイルは、例えば、それぞれ直径が異なり、同心円状に配置されている。ここでは、直径の小さい加熱コイルを内コイル11bと称し、直径の大きい加熱コイルを外コイル11cと称する。
なお、加熱コイルの数及び配置は、これに限定されない。例えば、加熱口の中央に配置した加熱コイルの周囲に複数の加熱コイルを配置する構成でも良い。
【0110】
インバータ回路23は、正負母線間に直列に接続された2個のスイッチング素子(IGBT)と、そのスイッチング素子にそれぞれ逆並列に接続されたダイオードとによって構成されるアームを3組備えている。なお、これ以降、3組のアームのうち1組を共通アーム、他の2組を内コイル用アームおよび外コイル用アームと呼ぶ。
【0111】
共通アームは、内コイル11bおよび外コイル11cに接続されたアームで、IGBT232a、IGBT232b、ダイオード232c、及びダイオード232dで構成されている。
内コイル用アームは、内コイル11bが接続されたアームで、IGBT231a、IGBT231b、ダイオード231c、及びダイオード231dで構成されている。
外コイル用アームは、外コイル11cが接続されたアームで、IGBT233a、IGBT233b、ダイオード233c、及びダイオード233dで構成されている。
【0112】
共通アームのIGBT232aとIGBT232b、内コイル用アームのIGBT231aとIGBT231b、外コイル用アームのIGBT233aとIGBT233bは制御部45から出力される駆動信号によりオンオフ駆動される。
【0113】
制御部45は、共通アームのIGBT232aをオンさせている間はIGBT232bをオフ状態にし、IGBT232aをオフさせている間はIGBT232bをオン状態にし、交互にオンオフする駆動信号を出力する。
同様に、制御部45は、内コイル用アームのIGBT231aとIGBT231b、外コイル用アームのIGBT233aとIGBT233bを交互にオンオフする駆動信号を出力する。
これにより、共通アームと内コイル用アームとにより、内コイル11bを駆動するフルブリッジインバータを構成する。また、共通アームと外コイル用アームとにより、外コイル11cを駆動するフルブリッジインバータを構成する。
【0114】
なお、共通アームと内コイル用アームとにより本発明における「フルブリッジインバータ回路」を構成する。また、共通アームと外コイル用アームとにより本発明における「フルブリッジインバータ回路」を構成する。
【0115】
内コイル11bおよび共振コンデンサ24cにより構成される負荷回路は、共通アームの出力点(IGBT232aとIGBT232bの接続点)と、内コイル用アームの出力点(IGBT231aとIGBT231bの接続点)との間に接続される。
外コイル11cおよび共振コンデンサ24dにより構成される負荷回路は、共通アームの出力点と、外コイル用アームの出力点(IGBT233aとIGBT233bの接続点)との間に接続されている。
【0116】
内コイル11bは、略円形に巻回された外形の小さい加熱コイルであり、その外周に外コイル11cが配置されている。
内コイル11bに流れるコイル電流は、コイル電流検出手段25cにより検出する。コイル電流検出手段25cは、例えば、内コイル11bに流れる電流のピークを検出し、加熱コイル電流のピーク値に相当する電圧信号を制御部45に出力する。
外コイル11cに流れるコイル電流は、コイル電流検出手段25dにより検出する。コイル電流検出手段25d、例えば、外コイル11cに流れる電流のピークを検出し、加熱コイル電流のピーク値に相当する電圧信号を制御部45に出力する。
【0117】
制御部45は、投入電力(火力)に応じて、各アームのスイッチング素子(IGBT)に高周波の駆動信号を入力し、加熱出力を調整する。
共通アーム及び内コイル用アームのスイッチング素子に出力される駆動信号は、内コイル11bおよび共振コンデンサ24cにより構成される負荷回路の共振周波数よりも高い駆動周波数の範囲で可変して、負荷回路に流れる電流が負荷回路に印加される電圧と比較して遅れ位相で流れるように制御する。
また、共通アーム及び外コイル用アームのスイッチング素子に出力される駆動信号は、外コイル11cおよび共振コンデンサ24dにより構成される負荷回路の共振周波数よりも高い駆動周波数の範囲で可変して、負荷回路に流れる電流が負荷回路に印加される電圧と比較して遅れ位相で流れるように制御する。
【0118】
次に、インバータ回路23のアーム相互間の位相差による投入電力(火力)の制御動作について説明する。
【0119】
図18は、実施の形態3に係るフルブリッジ回路の駆動信号の一例を示す図である。
図18(a)は高火力状態における各スイッチの駆動信号と各加熱コイルの通電タイミングの例である。
図18(b)は低火力状態における各スイッチの駆動信号と各加熱コイルの通電タイミングの例である。
なお、
図18(a)及び(b)に示す通電タイミングは、各アームの出力点(IGBTとIGBTの接続点)の電位差に関係するものであり、内コイル用アームの出力点および外コイル用アームの出力点に対して共通アームの出力点が低い状態を「ON」で示している。また、内コイル用アームの出力点および外コイル用アームの出力点に対して共通アームの出力点が高い状態および同電位の状態を「OFF」で示している。
【0120】
図18に示すように、制御部45は、共通アームのIGBT232aおよびIGBT232bに、負荷回路の共振周波数よりも高い高周波の駆動信号を出力する。
また、制御部45は、共通アームの駆動信号より位相の進んだ駆動信号を、内コイル用アームのIGBT231aとIGBT231b、外コイル用アームのIGBT233aとIGBT233bに出力する。なお、各アームの駆動信号の周波数は同一周波数であり、オンデューティ比も同一である。
【0121】
各アームの出力点(IGBTとIGBTの接続点)には、IGBTとIGBTのオンオフ状態に応じて、直流電源回路の出力である正母線電位、あるいは負母線電位が高周波で切り替わって出力される。これにより、内コイル11bには、共通アームの出力点と、内コイル用アームの出力点との電位差が印加される。また、外コイル11cには、共通アームの出力点と、外コイル用アームの出力点との電位差が印加される。
したがって、共通アームへの駆動信号と、内コイル用アームおよび外コイル用アームへの駆動信号との位相差を増減することにより、内コイル11bおよび外コイル11cに印加する高周波電圧を調整することができ、内コイル11bと外コイル11cに流れる高周波出力電流と入力電流を制御することができる。
【0122】
火力を増加させる場合には、アーム間の位相αを大きくして、1周期における電圧印加時間幅を大きくする。なお、アーム間の位相αの上限は、逆相(位相差180°)の場合であり、このときの出力電圧波形はほぼ矩形波となる。
図18(a)の例では、アーム間の位相αが180°の場合を図示している。また、各アームの駆動信号のオンデューティ比が50%の場合、つまり、1周期T13におけるオン時間T13aとオフ時間T13bとの比率が同じ場合を図示している。
この場合、駆動信号の1周期T14における、内コイル11b、外コイル11cの通電オン時間幅T14aと、通電オフ時間幅T14bとが同じ比率となる。
【0123】
火力を低下させる場合には、高火力状態と比較してアーム間の位相αを小さくして、1周期における電圧印加時間幅を減少させる。なお、アーム間の位相αの下限は、例えば、ターンオン時に負荷回路に流れる電流の位相等との関係でスイッチング素子に過大電流が流れて破壊してしまわないレベルに設定する。
図18(b)の例では、アーム間の位相αを
図18(a)と比較して小さくした場合を図示している。なお、各アームの駆動信号の周波数及びオンデューティ比は、
図18(a)と同じである。
この場合、駆動信号の1周期T14における、内コイル11b、外コイル11cの通電オン時間幅T14aは、アーム間の位相αに応じた時間となる。
このように、アーム相互間の位相差によって、内コイル11b、外コイル11cへの投入電力(火力)を制御することができる。
【0124】
なお、上記の説明では、内コイル11bおよび外コイル11cを共に加熱動作させる場合を説明したが、内コイル用アーム又は外コイル用アームの駆動を停止し、内コイル11b又は外コイル11cの何れか一方のみを加熱動作させるようにしても良い。
【0125】
制御部45は、上記実施の形態1で説明した、入力電流(又はコイル電流)の所定時間当たりの時間変化量ΔIを求める際に、インバータ回路23の駆動周波数を固定した状態においては、アーム間の位相αと、各アームのスイッチング素子のオンデューティ比とを固定した状態にする。なお、その他の動作は上記実施の形態1と同様である。
これにより、内コイル11b、外コイル11cへの投入電力が一定の状態で、入力電流(又はコイル電流)の所定時間当たりの時間変化量ΔIを求めることができる。
【0126】
なお、本実施の形態3では、内コイル11b流れるコイル電流と、外コイル11c流れるコイル電流とを、コイル電流検出手段25cとコイル電流検出手段25dによってそれぞれ検出している。
このため、内コイル11bおよび外コイル11cを共に加熱動作させた場合において、コイル電流検出手段25c又はコイル電流検出手段25dの何れか一方が、故障などでコイル電流値が検出できない場合であっても、他方の検出値によって、コイル電流の所定時間当たり時間変化量ΔIを検出することが可能となる。
また、制御部45は、コイル電流検出手段25cで検出されたコイル電流の所定時間当たりの時間変化量ΔIと、コイル電流検出手段25dで検出されたコイル電流の所定時間当たりの時間変化量ΔIとをそれぞれ求め、それぞれ時間変化量ΔIのうち大きい方を用いて、上記実施の形態1で説明した各判断動作を行うようにしても良い。また、それぞれの時間変化量ΔIの平均値を用いて、上記実施の形態1で説明した各判断動作を行うようにしても良い。
このような制御を行うことで、コイル電流検出手段25c又はコイル電流検出手段25dの何れか検出精度が低い場合であっても、コイル電流の所定時間当たりの時間変化量ΔIを、より精度良く求めることができる。
【0127】
なお、上記実施の形態1〜3においては、本発明の誘導加熱調理器の一例として、IHクッキングヒーターを例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、誘導加熱により加熱調理を行う炊飯器など、誘導加熱方式を採用する任意の誘導加熱調理器に適用することが可能である。