特許第6005488号(P6005488)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6005488
(24)【登録日】2016年9月16日
(45)【発行日】2016年10月12日
(54)【発明の名称】眼科用観察システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/117 20060101AFI20160929BHJP
【FI】
   A61B3/10 G
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-257812(P2012-257812)
(22)【出願日】2012年11月26日
(65)【公開番号】特開2014-104053(P2014-104053A)
(43)【公開日】2014年6月9日
【審査請求日】2015年4月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】513190726
【氏名又は名称】株式会社クリュートメディカルシステムズ
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【弁理士】
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(74)【代理人】
【識別番号】100090136
【弁理士】
【氏名又は名称】油井 透
(74)【代理人】
【識別番号】100105256
【弁理士】
【氏名又は名称】清野 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100161034
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 知洋
(74)【代理人】
【識別番号】100187632
【弁理士】
【氏名又は名称】橘高 英郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156834
【弁理士】
【氏名又は名称】橋村 一誠
(72)【発明者】
【氏名】江口 哲也
(72)【発明者】
【氏名】須藤 史敬
(72)【発明者】
【氏名】大仲 毅
【審査官】 安田 明央
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−089215(JP,A)
【文献】 特開2009−142313(JP,A)
【文献】 特開2005−334403(JP,A)
【文献】 特開2011−250822(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0044333(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0292340(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0149742(US,A1)
【文献】 特開2000−229067(JP,A)
【文献】 米国特許第07766480(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00−3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
虹彩、および観察者が認識可能な方位情報に対応する特徴を有する眼周辺領域を撮像した第1画像を取得する第1画像取得手段と、
眼球内部の前房隅角を直接観察可能な隅角鏡を用いて、前記前房隅角および前記虹彩を撮像した画像であって、前記方位情報が欠落した第2画像を取得する第2画像取得手段と、
前記前房隅角の画像に観察者が認識可能な方位情報を関連づける関連づけ手段と、を備え、
前記関連づけ手段は、
前記第1画像取得手段が取得した前記第1画像中の、前記虹彩の特徴と、前記眼周辺領域の特徴と、を関連づけることにより、観察者が認識可能な方位情報を取得する方位情報取得手段を有し、前記方位情報取得手段が取得した前記方位情報を前記第1画像に含まれる前記虹彩の特徴に関連づける第1関連づけ手段と、
前記第1画像中の前記虹彩の特徴と、前記第2画像中の前記虹彩の特徴と、を対応させることにより、前記第1関連づけ手段が前記第1画像に含まれる前記虹彩の特徴に関連づけた前記方位情報を、前記第2画像に含まれる前記前房隅角の画像に関連づける第2関連づけ手段と、
を備えることを特徴とする眼科用観察システム。
【請求項2】
前記第2関連づけ手段において、方位情報が関連づけられた第1画像中の虹彩の全体の特徴と、第2画像中の虹彩の少なくとも一部の特徴と、を対応させることにより、方位情報を前記前房隅角の全体の画像に関連づけることを特徴とする請求項に記載の眼科用観察システム。
【請求項3】
眼球内部の前房隅角を直接観察可能な隅角鏡を用いて、前記前房隅角を撮像部により撮像した画像であって、観察者が認識可能な方位情報が欠落した画像を取得する画像取得手段と、
前記撮像部に取り付けられ、前記撮像部の動きに応じて変化する加速度を検出する加速度センサと、
前記加速度センサにより検出された加速度の変化に基づいて鉛直方向を検出するとともに、前記検出した鉛直方向に基づいて上下左右方向の方位情報を取得する方位情報取得手段を有し、前記方位情報取得手段が取得した前記方位情報を、前記画像取得手段が取得した前記前房隅角の画像に関連づける関連づけ手段と、
を備えることを特徴とする眼科用観察システム。
【請求項4】
前記方位情報取得手段は、観察者が認識可能な方位として観察者が被検者に正対したときの上下左右方向の方位情報を取得することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の眼科用観察システム。
【請求項5】
前記前房隅角の画像を表示する表示手段を有し、
前記表示手段に表示される画像上の方位が、前記関連づけ手段により前記前房隅角の画像に関連づけられた方位情報と一致するように、前記表示手段に表示される画像の表示を補正することを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の眼科用観察システム。
【請求項6】
前記関連づけ手段により得られる画像上に任意の場所を示す印を重畳表示させる機能を備えることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の眼科用観察システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼科用観察システムに関する。
【背景技術】
【0002】
緑内障は、眼の疾患の一つであり、視神経に障害が生じ、視野欠損・視野狭窄を生じる疾患である。この症状が悪化すると失明の恐れがある。緑内障の原因としては、眼球内の後房から前房へ循環する房水が眼球外へ排出されにくくなり、眼圧が上昇し、視神経を圧迫することが考えられる。
【0003】
房水の排出は、図1に示すように、虹彩103の根元と角膜102の根元との間の前房隅角104に存在する線維柱帯を通じてなされる。房水が排出されにくくなる原因としては、線維柱帯が目詰まりを起こす場合、あるいは、前房隅角104が狭くなるまたは閉塞する場合などが挙げられる。したがって、緑内障の治療・予防するためには、前房隅角104を観察し、異常部位を発見することが重要である。
【0004】
しかしながら、図1に示すように、前房隅角104は角膜102に遮られ、眼球101の正面から直接観察できない。そこで、通常、前房隅角104を観察する際には、隅角鏡と呼ばれる特殊なコンタクトレンズを被検者の眼球101に接触させて、細隙灯顕微鏡を用いて観察者(医師等)が目視で観察する。
【0005】
ところが、隅角鏡で観察できる範囲は狭いため、前房隅角104を全周囲に渡り観察するには、レンズの方向を変えて観察する必要があり、観察者および被検者の双方に負担となっていた。このような問題に対処するために、特許文献1および2に記載されているように、前房隅角104の全周囲あるいは広範囲を観察可能な隅角鏡が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3346775号明細書
【特許文献2】特開平5−15493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1および2に記載されている隅角鏡を用いることで、前房隅角を全周囲(環状)あるいは広範囲に渡り観察することができる。しかしながら、観察中に前房隅角に異常部位が発見され、その部分を拡大しようとしても、この観察像には方位情報が欠落しているため、その部分が前房隅角のどの場所に対応するのかが分からないという問題が生じた。また、通常の隅角鏡を用いる場合であっても、観察者が注意していなければ、観察している部分が前房隅角のどの場所なのかが分からないという問題があった。
【0008】
特に、隅角鏡にビデオカメラを取り付けて観察する場合には、画面に表示される画像の向きと、観察している部分の方位とが対応していないため、上記の問題が顕著となると考えられる。
【0009】
本発明は、上記の問題を鑑みてなされ、方位情報が欠落した前房隅角の観察画像に、観察者が容易に認識可能な方位情報を関連づけることができる眼科用観察システムを提供することを、主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、前房隅角以外の領域の観察画像あるいはセンサ等から、観察者が容易に認識可能な程度の方位情報を取得して、この情報を前房隅角の観察像に対応づけることで、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明の態様は、
眼球内部の前房隅角を直接観察可能な撮像部を用いて撮像された前房隅角の画像に、観察者が認識可能な方位情報を関連づける関連づけ手段を備えることを特徴とする眼科用観察システムである。
【0012】
前記関連づけ手段は、虹彩の特徴を利用することが好ましい。
【0013】
好ましくは、少なくとも前記虹彩を撮像した第1画像を取得する第1画像取得手段と、
眼球内部の前房隅角を直接観察可能な撮像部を用いて、前記前房隅角および前記虹彩を撮像した第2画像を取得する第2画像取得手段と、をさらに有し、
前記関連づけ手段は、第1関連づけ手段と、第2関連づけ手段と、を有しており、
前記第1関連づけ手段は、前記第1画像中の前記虹彩の特徴に、観察者が認識可能な方位情報を関連づける手段であり、
前記第2関連づけ手段は、第1画像中の前記虹彩の特徴と、前記第2画像中の前記虹彩の特徴と、を対応させることにより、前記方位情報を前記前房隅角の画像に関連づける手段であることを特徴とする。
【0014】
好ましくは、前記第1画像取得手段は、前記虹彩、および観察者が認識可能な方位情報に対応する特徴を有する眼周辺領域を撮像した第1画像を取得し、
前記第1関連づけ手段は、前記虹彩の特徴と、前記眼周辺領域の特徴と、を関連づけることにより、観察者が認識可能な方位情報を取得する方位情報取得手段を有し、
前記第2関連づけ手段は、前記方位情報取得手段により取得された方位情報を有する前記第1画像中の前記虹彩の特徴と、前記第2画像中の前記虹彩の特徴と、を対応させることにより、前記方位情報を前記前房隅角の画像に関連づける手段であることを特徴とする。
【0015】
好ましくは、前記第2関連づけ手段において、方位情報が関連づけられた第1画像中の虹彩の全体の特徴と、第2画像中の虹彩の少なくとも一部の特徴と、を対応させることにより、方位情報を前記前房隅角の全体の画像に関連づけることを特徴とする。
【0016】
好ましくは、前記前房隅角の画像を表示する表示手段を有し、
前記表示手段に表示される画像上の方位が、前記関連づけ手段により得られる画像に関連づけられた方位情報と一致するように、表示部に表示される画像の表示を補正することを特徴とする。
【0017】
好ましくは、前記関連づけ手段により得られる画像上に任意の場所を示す印を重畳表示させる機能を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、方位情報が欠落した前房隅角の観察画像に、観察者が認識可能な方位情報を関連づけることができる眼科用観察システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は眼球の平面的な断面構造を説明する図である。
図2図2は本発明の一実施形態に係る眼科用観察システムの概略構成図である。
図3図3は本発明の一実施形態において、第1関連づけ手段を説明するための図である。
図4図4は本発明の一実施形態において、第2関連づけ手段を説明するための図である。
図5図5は本発明の変形例に係る眼科用観察システムの概略構成図である。
図6図6は本発明の変形例において、関連づけ手段を説明するための図である。
図7図7は本発明の変形例に係る眼科用観察システムを用いて、前房隅角の画像に方位情報を関連づける手段を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき、以下の順序で詳細に説明する。
1.眼科用観察システムの構成
2.処理部で行われる処理
3.本実施形態の効果
4.変形例等
【0021】
(1.眼科用観察システムの構成)
本実施形態では、観察者が認識可能な方位情報を前房隅角の画像に関連づけるために、虹彩の特徴を利用する眼科用観察システムについて述べる。図2は、本実施形態に係る眼科用観察システム1の概略構成図である。眼科用観察システム1は、図2に示すように、撮像部(カメラ)10とコンピュータ部20とを備えている。以下、各構成要素について説明する。
【0022】
撮像部10は、第1光学系11、第2光学系12および撮像素子13を有している。撮像部10としては、静止画像を撮像するものでもよいし、動画像を撮像するものでもよい。
【0023】
第1光学系11は、観察対象の光学像を撮像素子の受光面上に結像させるための撮像光学系を有しており、本実施形態では、所定の枚数のレンズから構成されている。第1光学系11は、必要に応じて、フィルタや観察対象を照明する光源等の照明光学系、絞りやズーム等の光学的機能、収差等を抑制する手段等をさらに有していてもよい。
【0024】
本実施形態では、第1光学系11は、被検者の眼(以下、被検眼ともいう。)の周辺領域を撮像する。具体的には、第1光学系11は、虹彩と、観察者が認識可能な方位情報に対応する特徴を含む眼周辺領域とを含む画像を撮像する。画像は1枚だけでなく複数枚撮像してもよい。
【0025】
第2光学系12は、第1光学系11と同様に、観察対象の光学像を撮像素子の受光面上に結像させるための撮像光学系を有しており、撮影光学系には、前房隅角の少なくとも一部を直接観察可能な隅角鏡が含まれている。また、第2光学系12は、第1光学系11と同様に、必要に応じて、照明光学系等を有していてもよい。本実施形態では、隅角鏡を被検眼に接触させ、隅角鏡を構成するプリズム等を用いて前房隅角から発せられる光を屈折させることにより、通常、観察できない前房隅角の像を受光面上に結像させる。前房隅角の少なくとも一部を直接観察可能な隅角鏡としては特に制限されず、たとえば、上述した特許文献1および2に開示されている隅角鏡を用いてもよい。
【0026】
本実施形態では、第2光学系12は、前房隅角および虹彩を含む画像を撮像する。画像は1枚だけでなく複数枚撮像してもよい。
【0027】
撮像素子13は、受光面に到達した光を電気信号に変換し、処理部21に送る。なお、撮像素子13の代わりにフィルムを用いてもよいが、後述する画像処理等を考慮すると、撮像素子13を用いることが好ましい。
【0028】
本実施形態では、第1光学系11と第2光学系12とは撮像素子13を共有している。すなわち、第1光学系11および第2光学系12は、撮像する画像の種類に応じて切り替えて用いることができる。なお、第1光学系11と第2光学系12とを切り替えるのではなく、第1光学系11に第2光学系12を取り付ける構造となっていてもよい。
【0029】
コンピュータ部20は、本実施形態では、処理部21、表示部22、記憶部23および操作部24を有しており、公知のコンピュータで構成される。
【0030】
処理部21は、撮像部10から送られる観察画像(第1画像、第2画像等)の電気信号を受信し、観察画像を取得あるいは処理する。処理部21は種々の機能を有しているが、その詳細は後述する。
【0031】
表示部22は、撮像部10で撮像した画像、処理部21で処理した画像等を表示できる機能を有していれば特に制限されず、公知のモニタを用いればよい。
【0032】
記憶部23は、処理部21における機能を実行するためのプログラムが格納されており、各種機能の実行の際にプログラムが起動される。また、取得される画像等を格納することができる。また、メモリーカード等の外部記憶手段を有していてもよい。
【0033】
操作部24は、撮像部10、処理部21等に対する命令を外部から入力する機能を有している。なお、表示部22と操作部24とが一体化したタッチパネル等であってもよい。
【0034】
(2.処理部で行われる処理)
(第1画像取得部41)
第1光学系11を用いて撮像された場合、撮像された画像は電気信号に変換され、処理部21の第1画像取得部41に送られ、図3(a)に示すように、虹彩103と、観察者が認識可能な方位情報に対応する特徴(図3(a)では、まぶた105、まつげ106、内眼角107等)とを含む画像(第1画像51)が取得される。この第1画像51は、必要に応じて、表示部22で表示することができる。
【0035】
(第1関連づけ部31)
取得された第1画像51は第1関連づけ部31の特徴検出部43に送られ、第1画像51中の虹彩103の特徴を検出する。虹彩103の特徴を検出する方法としては、特に制限されず、虹彩パターンマッチングに関する公知の技術を用いることができる。本実施形態では、図3(c)に示すように、眼全体の画像53から虹彩103の部分のみを抽出し、特定のアルゴリズム等を用いて、虹彩103の特徴を特定のパターンとして認識する。
【0036】
また、得られた虹彩103の特徴(特定のパターン)が検出される前、あるいは後に、第1画像51に方位情報が設定される。そして、第1関連づけ部31の方位情報取得部44において、その方位情報が取得され、第1画像51に方位情報が関連づけられる。方位情報を設定する方法としては特に制限されないが、本実施形態においては、図3(a)に示すように、眼周辺領域100において特徴を有する部位が観察者の認識可能な方位に対応していることを利用して、観察者が認識可能な方位を設定し、第1画像51に方位情報を関連づける。
【0037】
図3(a)を参照して、観察者が認識可能な方位として、上下左右方向を画像上に設定する場合について述べる。すなわち、被検者に正対して、被検者の頭方向を上とし、足方向を下とすると、被検者の右手側が左となり、左手側が右となる。この上下左右方向を第1画像51に設定する際には、第1画像51の眼周辺領域100において、主に上下方向に対応する特徴である眉毛、上まぶた(上まつげ)、下まぶた(下まつげ)等の各部位を認識することにより、上下方向を設定することができる。また、主に左右方向に対応する特徴である目頭(内眼角)、目尻(外眼角)、鼻筋等の各部位を認識することにより、左右方向を設定することができる。各部位の特徴を認識する方法としては特に制限されず、画像認識等の公知の方法を用いればよい。
【0038】
図3(b)では、上まぶた105やまつげ106を、主に上下方向に関する特徴(C1)として認識する。また、内眼角107を、主に左右方向に関する特徴(C2)として認識する。このような特徴に基づき、図3(d)に示すように、方位情報(上下左右方向)を第1画像51に設定することができる。また、図3(c)に示すように、第1画像51では、虹彩103の特徴が検出されているため、方位情報が虹彩103の特徴に関連づけられた画像54が得られる。
【0039】
なお、上下方向および左右方向の両方について特徴を認識する必要はない。いずれか一方を認識し、その方向に垂直な方向をもう一方の方位とすることもできる。また、観察者が認識して手動で方位情報を設定してもよい。
【0040】
(第2画像取得部42)
一方、第2光学系12を用いて撮像された場合、撮像された画像は、第2画像取得部42に送られ、前房隅角104および虹彩103を含む画像(第2画像61)が生成される。図4(a)では、前房隅角104の全周囲の観察像が得られると共に虹彩103の全周囲の観察像も得られている。この第2画像61は、必要に応じて、表示部22で表示することができる。生成された第2画像61は、第1画像51と同様に、特徴検出部43において虹彩103の特徴が検出される。第1画像51中の虹彩103と、第2画像61中の虹彩103とは同一の虹彩を撮像したものであるため、検出される特徴も同じとなる。
【0041】
(第2関連づけ部32)
続いて、方位情報取得部44により得られた方位情報(上下左右方向)を有する第1画像54(図4(b))と、虹彩103の特徴が検出された第2画像61(図4(a))とが、第2関連づけ部32の画像対比部45において対比される。画像対比部45において、双方の画像において検出されている虹彩103の特徴を照合することで、第1画像54と第2画像61とを対応させることができる。その結果、図4(c)に示すように、虹彩103の特徴に基づく第1画像54の方位情報が、第2画像61に関連づけられる。すなわち、第2画像61に含まれる前房隅角104の画像に方位情報が関連づけされることになる。
【0042】
具体例を挙げると、前房隅角104を含む第2画像61のみが得られた場合、第2画像61において白三角印90は図4(a)に示す位置にあるが、その位置が実際の方位に対応しているかどうかは不明である。しかしながら、上述したように、第1画像54と第2画像61とを対比することにより、第2画像61に方位情報が関連づけられた第3画像62が生成される。その結果、第3画像62中の実際の方位(観察者が認識可能な方位)においては、図4(a)に示す白三角印90は、図4(c)において、対比する前(第2画像61)に比べて、時計回りに30°回転した位置に存在していることが分かる。
【0043】
したがって、仮に、白三角印90が前房隅角104の異常部位である場合には、第2画像61上の方位に基づき、白三角印90(異常部位)を観察しようとしても、実際の方位では、図4(c)の第3画像62中に示す場所にあるため、白三角印90を発見できない場合もあると考えられる。あるいは、発見できた場合であっても、発見するまでに時間が掛かると考えられる。
【0044】
これに対し、本実施形態では、第1画像54および第2画像61に共通する虹彩103の特徴を利用して、方位情報が欠落している前房隅角104の画像に実際の方位(観察者が認識可能な方位)を関連づけることができる。すなわち、第1画像54と第2画像61との対比により得られる第3画像62上の方位と実際の方位とが対応しているため、第3画像62中における前房隅角104の任意の場所が、実際の方位において、どの場所に対応しているのかを容易に理解でき、白三角印90(異常部位)をすぐに観察することができる。また、異常部位近傍のみを拡大観察することも容易となる。
【0045】
このとき、処理部21は、表示部22に表示される画像上の方位が、関連づけ手段により得られる画像に関連づけられた方位情報と一致するように、表示部22に表される画像の表示を補正する機能を有していることが好ましい。
【0046】
また、処理部21は、操作部24を用いて、任意の場所、方位を示す印等を第3画像62上に重畳表示する機能を有していてもよい。
【0047】
(3.本実施形態の効果)
本実施形態によれば、方位情報が欠落した前房隅角104の観察画像に、観察者が容易に認識可能な方位情報を関連づけることができる。したがって、前房隅角104の観察場所を容易に特定できる。特に、前房隅角104の全周囲あるいは広範囲を観察している場合には、画像中の前房隅角104の任意の場所が、実際の方位にどのように対応しているかが容易に理解することができる。そのため、たとえば、観察終了後の画像診断において前房隅角104に異常部位を発見した場合、あるいは定期的な観察を行う場合であっても、方位情報が既に関連づけられた観察画像に基づき、異常部位、あるいは以前観察した部位等をすぐに特定することができる。また、隅角鏡により得られる像が正立像であっても倒立像であっても任意の場所を特定することができる。
【0048】
また、本実施形態では、虹彩103の特徴を利用して、前房隅角104の画像に方位情報を関連づけている。具体的には、眼周辺領域100において観察者が認識可能な方位に対応する特徴を有する部位(まぶた105、内眼角107等)と虹彩103とが含まれる画像(第1画像51)、および前房隅角104と虹彩103とが含まれる画像(第2画像61)を取得し、まず、当該特徴を有する部位の位置関係を利用して、第1画像51中の虹彩103に方位情報を関連づける。そして、方位情報が関連づけられた第1画像54と第2画像61とに共通する虹彩103の特徴を照合して、第1画像54と第2画像61とを対応させることにより、前房隅角104の画像に方位情報を容易に関連づけることができる。
【0049】
また、表示部22に表示される画像上の方位が、関連づけ手段により得られる画像に関連づけられた方位情報と一致するように、表示部に表示される画像の表示を補正する機能を有することで、表示部に表示される画像の方位を一定に保てるため、観察部位の観察がより容易となる。
【0050】
第2画像61に方位情報が関連づけられた画像(第3画像62)上において、任意の場所を示す印を重畳表示することで、前房隅角104の場所をより容易に認識しやすくなる。
【0051】
(4.変形例等)
上記の実施形態では、眼周辺領域の特徴を認識して第1画像51中の虹彩103の特徴に方位情報を関連づけているが、観察者が手動で第1画像51中の虹彩103の特徴に方位情報を関連づけてもよい。
【0052】
具体的には、表示部22あるいは撮像部10のファインダー等に撮像部10の方位を示す印等を予め表示等しておき、観察時に、観察者が表示部等の印と、画像上の方位とを対応させる。すなわち、表示部等に上下左右の印が表示されている場合には、それらの印と実際の方位とが一致するように観察者が調整して撮像すればよい。このようにすることで、観察者が認識可能な方位(実際の方位)が、第1画像51に方位情報として設定され、虹彩103の特徴に関連づけることができる。
【0053】
なお、印と実際の方位とを合わせる場合には、観察者が撮像部10を動かして調整してもよいし、観察者が操作部24を通じて、光学系や撮像素子を駆動手段により動かして調整してもよい。
【0054】
上記の実施形態では、虹彩103の全周囲を含む第1画像51および第2画像61を取得して、虹彩103の特徴を検出し、第2画像61中の前房隅角104に方位情報を関連づけている。しかしながら、虹彩103の全周囲を含む第1画像と、虹彩103の一部を含む第2画像61と、を取得する場合であっても、第1画像51における虹彩103の特徴と、第2画像61における虹彩103の特徴とを照合することにより、前房隅角104に方位情報を関連づけることができる。このようにすることで、前房隅角104の一部しか直接観察できない隅角鏡を用いた場合であっても、第2画像61中の前房隅角104に虹彩103の特徴を関連づけることができる。
【0055】
上記の実施形態では、方位を画像の上下左右方向に設定したが、基準点(たとえば、眼の中心)を設定して直交座標系(xy座標系)、極座標系(rθ座標系)等の座標系を用いて設定してもよい。
【0056】
上記の実施形態では、虹彩103の特徴を利用して、前房隅角104の画像に方位情報を関連づけているが、虹彩103の特徴以外の手段を利用して、前房隅角104の画像に方位情報を関連づけてもよい。
【0057】
たとえば、加速度センサを用いて得られる方位情報を利用して、前房隅角104の画像にこの方位情報を関連づけることができる。図5に、変形例における眼科用観察システム1aの概略構成図を示す。この眼科用観察システム1aは、撮像部10が、第2光学系12および撮像素子13を有している。すなわち、眼科用観察システム1aは第1光学系を有していなくてもよい。なお、加速度センサ71は撮像部10に取り付けられている。
【0058】
加速度センサ71は、撮像部10の動き、ぶれ等に応じて変化する撮像部10の加速度を検出し、鉛直方向を検出することができる。この検出された鉛直方向の方位情報を、前房隅角104の画像に関連づけることができる。この眼科用観察システム1aを用いて、観察者が認識可能な方位情報を前房隅角104の画像に関連づける例について以下に説明する。
【0059】
まず、撮像部10の第2光学系12を用いて被検眼の前房隅角を撮像する。撮像された画像、すなわち、前房隅角の画像は電気信号に変換され、処理部21の画像取得部73へ送られ、図6(a)に示すように、前房隅角104を含む画像81が取得される。
【0060】
また、撮像時に加速度センサ71により検出された加速度の変化は方位検出部74に送られ、方位検出部74において加速度の変化に基づき鉛直方向が検出される。そして、方位情報取得部75により鉛直方向に関する方位情報が取得される。この鉛直方向(図6(a)の矢印95)は、観察者が認識可能な方位において下方向を示しているので、鉛直方向に基づき上下方向を設定することができる。また、画像上において鉛直方向に垂直な方向を左右方向とすることができる。したがって、検出された鉛直方向を下方向に設定することにより、方位情報(上下左右方向)を前房隅角104の画像81に関連づけた画像82が画像生成部76により生成される。これにより、上述した実施形態の効果と同様の効果を得ることができる。
【0061】
鉛直方向の検出について図7を用いて説明する。被検者が立位あるいは座位の姿勢の場合に被検眼を観察すると、図7に示すように、眼周辺領域100および撮像部10(第2光学系の光軸(図7のy方向))は、鉛直方向(図7のz方向)に対して略垂直となる。このとき、被検眼の観察画像(図7のx−z面上)は、鉛直方向(図7のz方向)に平行になる。したがって、加速度センサにより得られる鉛直方向の方位情報を、前房隅角104を含む観察画像に対して設定することができる。
【符号の説明】
【0062】
1…眼科用観察システム
10…撮像部
11…第1光学系
12…第2光学系
20…コンピュータ部
21…処理部
31…第1関連づけ部
43…特徴検出部
44…方位情報取得部
32…第2関連づけ部
45…画像対比部
41…第1画像取得部
42…第2画像取得部
100…眼周辺領域
103…虹彩
104…前房隅角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7