特許第6005512号(P6005512)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6005512-ヘッドレスト 図000002
  • 特許6005512-ヘッドレスト 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6005512
(24)【登録日】2016年9月16日
(45)【発行日】2016年10月12日
(54)【発明の名称】ヘッドレスト
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/48 20060101AFI20160929BHJP
   A47C 7/38 20060101ALI20160929BHJP
   A47C 31/02 20060101ALI20160929BHJP
【FI】
   B60N2/48
   A47C7/38
   A47C31/02 B
【請求項の数】1
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2012-286641(P2012-286641)
(22)【出願日】2012年12月28日
(65)【公開番号】特開2014-128989(P2014-128989A)
(43)【公開日】2014年7月10日
【審査請求日】2015年7月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000133098
【氏名又は名称】株式会社タチエス
(74)【代理人】
【識別番号】100141221
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 和明
(74)【代理人】
【識別番号】100091764
【弁理士】
【氏名又は名称】窪谷 剛至
(74)【代理人】
【識別番号】100103366
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 礼至
(72)【発明者】
【氏名】宮田 敬
(72)【発明者】
【氏名】吉川 淳平
【審査官】 佐々木 一浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−069286(JP,A)
【文献】 特開平07−313287(JP,A)
【文献】 特表2011−529353(JP,A)
【文献】 特開2002−240058(JP,A)
【文献】 特開2002−347043(JP,A)
【文献】 特開2002−120237(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/48
A47C 7/38
A47C 31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
袋状に縫製したトリムカバー内の前部側に配置されるとともにトリムカバーの内側に固定される繊維成形体と、トリムカバー内の繊維成形体の後部側に配置されトリムカバーおよび前記繊維成形体と一体発泡成形されたパッドと、を有するヘッドレストであって、
前記繊維成形体は熱溶融性の樹脂を主体繊維にするとともに、その周囲を熱圧着により形成された縫い代を一体的に有し、
この縫い代を前記トリムカバーに一体縫製することにより、前記トリムカバーに前記繊維成形体を固定してなる
ことを特徴とするヘッドレスト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用シートのヘッドレストに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術として、特許第4490213号公報がある。この公報に記載されたヘッドレストは、発泡体製パッドと、そのパッド内に上端部が埋設され、シートに支持されるステーとを備えている。ステーは、パッドから露出して所定間隔をおいて平行に延びる一対の脚部と、脚部の上端部間で逆に逆U字状に形成された荷重受け部と、により形成されている。パッドにあっては、袋状をなす表皮の前方側内面に低反発弾性材を接合するとともに、表皮内にステーを挿入し、成形型にセットした状態で、表皮内に発泡ウレタン等の発泡原料を注入充填して発泡膨張させることにより、発泡弾性材と低反発弾性材とを表皮と一体に成形する。そして、パッドの前面部に低反発弾性材を配置させることにより、パッドに乗員の頭部との接触により大きく沈み込んだり、その後に乗員頭部が前方側へ大きく跳ね返ったりするのを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4490213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した従来のヘッドレストに採用されている低反発弾性体は、密度が高く、これによって、パッドが重くなり、ヘッドレストの取り扱い性が悪くなるといった問題点がある。
【0005】
本発明は、乗員の頭部が当たる部分の安全性と快適性を担保しつつ、軽量化をも可能にしたヘッドレストを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、袋状に縫製したトリムカバー内の前部側に配置されるとともにトリムカバーの内側に固定される繊維成形体と、トリムカバー内の繊維成形体の後部側に配置されトリムカバーおよび前記繊維成形体と一体発泡成形されたパッドと、を有するヘッドレストであって、
前記繊維成形体は熱溶融性の樹脂を主体繊維にするとともに、その周囲を熱圧着により形成された縫い代を一体的に有し、
この縫い代を前記トリムカバーに一体縫製することにより、前記トリムカバーに前記繊維成形体を固定してなる
ことを特徴とする。
【0007】
このヘッドレストにおいては、袋状に縫製したトリムカバー内で、パッドの前部側に、前後方向の厚さが異なる繊維成形体を配置させることで、乗員の頭部が当たる部分の安全性と快適性を担保し、且つ、重いパッドの使用量を低減でき、軽量化が可能になる。しかも、この繊維成形体は、厚さを自由に変えることができるので、ヘッドレスト内でのステーの配置の自由度を高めることができる。
【0008】
また、前記繊維成形体は熱溶融性の樹脂を主体繊維にするとともに、その周囲を熱圧着により形成された縫い代を一体的に有し、この縫い代を前記トリムカバーに一体縫製することにより、前記トリムカバーに前記繊維成形体を固定しているため、繊維成形体の周囲を熱圧着するだけで、縫い代を容易に作り出すことができ、その縫い代をトリムカバーに縫製することで、トリムカバー内繊維成形体をしっかり固定させることができる。従って、トリムカバー内にパッド成形用発泡液を注入した際に、トリムカバー内で繊維成形体が位置ズレを起こすことがなく、繊維成形体とパッドとを確実に一体化させることができる。



【0009】
また、前記トリムカバー内に前記繊維成形体を固定した状態で、前記トリムカバー内にパッド成形用発泡液を注入して、パッドを前記繊維成形体、トリムカバーと一体成形させると好適である。
このようにして成形されたパッドは、繊維成形体とパッドとをトリムカバー内で確実に一体化させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、乗員の頭部が当たる部分の安全性と快適性を担保しつつ、軽量化をも可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係るヘッドレストの一実施形態を示す断面図である。
図2図1の符号Aの要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ本発明に係るヘッドレストの好適な実施形態について詳細に説明する。
【0013】
図1に示されるように、一体発泡成形品としてのヘッドレスト1は、袋状に縫製したトリムカバー2と、このトリムカバー2内に注入されたパッド成形用発泡液(例えば発泡性ウレタン)が硬化してなるパッドPと、パッドP内のヘッドレストフレームに固定されたステー4とからなる。
【0014】
トリムカバー2は、乗員の頭部側(前側)に配置される前側部2aと、前側部2aの周縁で縫着される後側部2bと、で立体的に縫製されている。そして、前側部2aの裏面に繊維成形体10が配置され、繊維成形体10の周縁は、前側部2aの周縁に縫製部Sによって一体縫製され、縫製部Sによって後側部2bの周縁も縫着されている(図2参照)。
【0015】
弾性を有する繊維成形体10は、例えば、ポリエステル等の短繊維を素材とし、この短繊維を空気とともにモールド内へ吹き込む充填法によって繊維集合体に成形することにより製造される。この繊維成形体10は、熱溶融性の樹脂を主体繊維としているので、その周囲を熱圧着するだけで、縫い代10aを容易に作り出すことができる。
【0016】
このようにして、袋状に縫製されたトリムカバー2内に繊維成形体10を縫製によって固定した状態で、金型内にトリムカバー2をセットする。そして、トリムカバー2内にノズルを介してパッド成形用発泡液を注入して、パッドPを繊維成形体10,トリムカバー2と一体成形させる。
【0017】
その結果、パッドPは、トリムカバー2内で、前部側に繊維成形体10が配置され、後部側にパッドPが配置され、パッドPにおいて、繊維成形体10とパッドPとはトリムカバー2内で接合層Bが形成されることで、確実に一体化させることができる。
【0018】
そして、繊維成形体10の縫い代10aは、トリムカバー2に縫製されているので、トリムカバー2内で繊維成形体10をしっかり固定させることができ、トリムカバー2内にパッド成形用発泡液を注入した際に、トリムカバー2内で繊維成形体10が位置ズレを起こすことがなく、繊維成形体10とパッドPとを確実に一体化させることができる。
【0019】
このようなヘッドレスト1においては、袋状に縫製したトリムカバー2で、パッドPの前部側に繊維成形体10を配置させ、後部側にパッドPを配置させているので、乗員の頭部が当たる部分の安全性と快適性を担保し、乗員の頭部が当たる部分にパッドや低反発弾性体が配置されている従来の場合に比して、軽量化が可能になる。ヘッドレスト1の軽量化によって取り扱い性が良好になる。しかも、この繊維成形体10は、その前後方向の厚みを自由に調節することができるので、パッドP内でのステー4の配置の自由度を高めることができる。
【0020】
本発明は、前述した実施形態に限定されないことは言うまでもない。例えば、繊維成形体10としては、軽量化を促進させるためには、低密度が好ましく、たとえば、不特定形状の繊維塊で、その構成繊維が熱溶融する不織布などでもよい。
【0021】
なお、繊維成形体10はトリムカバー2の裏面に固定できるものであれば、接着剤での接着による固定、高周波などによる溶着による固定でもよい。
【符号の説明】
【0022】
1…ヘッドレスト 2…トリムカバー 2a…前側部 2b…後側部 4…ステー 10…繊維成形体 10a…縫い代 S…縫製部 P…パッド
図1
図2