特許第6005655号(P6005655)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6005655
(24)【登録日】2016年9月16日
(45)【発行日】2016年10月12日
(54)【発明の名称】薬物検出のための方法およびキット
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/78 20060101AFI20160929BHJP
   G01N 33/14 20060101ALI20160929BHJP
【FI】
   G01N21/78 Z
   G01N33/14
【請求項の数】22
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-541473(P2013-541473)
(86)(22)【出願日】2011年12月6日
(65)【公表番号】特表2013-544367(P2013-544367A)
(43)【公表日】2013年12月12日
(86)【国際出願番号】IL2011050041
(87)【国際公開番号】WO2012077110
(87)【国際公開日】20120614
【審査請求日】2014年11月21日
(31)【優先権主張番号】61/420,121
(32)【優先日】2010年12月6日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509117872
【氏名又は名称】ラモット アット テル−アビブ ユニバーシティー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】パトルスキー,フェルナンド
(72)【発明者】
【氏名】ヨッフェ,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】フラクサー,エリ
【審査官】 伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/124999(WO,A1)
【文献】 特表2003−520942(JP,A)
【文献】 特表2009−523242(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/112541(WO,A1)
【文献】 特開2009−008639(JP,A)
【文献】 特表平09−510290(JP,A)
【文献】 特表2009−506345(JP,A)
【文献】 国際公開第2000/002534(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0076546(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0044989(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0243621(US,A1)
【文献】 米国特許第04128628(US,A)
【文献】 特開平04−026606(JP,A)
【文献】 特開平04−210681(JP,A)
【文献】 特開昭62−034038(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00−21/83
G01N 33/14
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料中の薬物の有無を判定するための方法において、
−あらかじめ設定された光学パラメータを有する1種以上の溶媒を提供するステップであって、前記溶媒が薬物の存在下で少なくとも1つの光学パラメータの変化を起こすことができる、ステップと、
−前記溶媒を、ある量の前記薬物を含むことが疑われる飲料の試料と接触させるステップと、を含み、
前記溶媒と前記飲料の試料との接触後の、前記溶媒の前記あらかじめ設定された光学パラメータの変化が前記飲料中における前記薬物の存在を示し、
前記あらかじめ設定された光学パラメータの変化が、前記薬物を含むことが疑われる飲料自体によるものではなく、前記溶媒における前記薬物の完全または部分不溶性によるものであり、
前記薬物が、GHBまたはGHBの誘導薬もしくはプロドラック、および、ケタミンから選択され、
前記薬物がGHBである場合には、前記溶媒がアセトニトリルおよび/またはエタノールを含んでおり、
前記薬物がケタミンである場合には、前記溶媒がイソプロパノールおよび/またはグリセリン、必要に応じて、更にNaOHを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記少なくとも1つの光学パラメータの変化を誘導する、または促進するために、前記飲料の試料を前記溶媒と混合させることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法において、前記飲料が、水、水性媒体、アルコール媒体または有機媒体を含むことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法において、前記飲料が、清涼飲料、または果汁であることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法において、前記飲料が発酵飲料の中から選択されることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法において、前記発酵飲料がワイン、ビールおよびエールから選択されることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法において、前記飲料がリキュールであることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法において、前記飲料がカクテルであることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法において、前記飲料が非アルコール飲料であることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法において、前記薬物がGHBであり、前記溶媒が、アセトニトリル(100%)、エタノール、またはエタノール:アセトニトリル(1:1)であることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法において、前記薬物がケタミンであり、前記溶媒がイソプロパノール:グリセリン:NaOH(1:10:0.25)を含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法において、前記少なくとも1つの光学パラメータが光学密度であることを特徴とする方法。
【請求項13】
飲料中における薬物の存在を判定するためのデバイスにおいて、
溶媒を保持するための少なくとも1つの検査用セルと、薬物を含むことが疑われる飲料の試料を前記少なくとも1つの検査用セル内に抜き取るための手段と、前記試料との接触後、前記検査用セル内の前記溶媒の少なくとも1つの光学パラメータの変化を検出するための検出ユニットと、を含んでおり、
前記光学パラメータの変化が、前記薬物を含むことが疑われる飲料自体によるものではなく、前記溶媒における前記薬物の完全または部分不溶性によるものであり、
前記薬物が、GHBまたはGHBの誘導薬もしくはプロドラック、および、ケタミンから選択され、
前記薬物がGHBである場合には、前記溶媒がアセトニトリルおよび/またはエタノールを含んでおり、
前記薬物がケタミンである場合には、前記溶媒がイソプロパノールおよび/またはグリセリン、必要に応じて、更にNaOHを含むことを特徴とするデバイス。
【請求項14】
請求項13に記載のデバイスにおいて、前記検出ユニットが、あらかじめ設定された波長の光ビームを発生させることができる光源を含み、前記ビームが1つまたは複数の検査用セルを通過するように誘導され、前記検査用セル(複数可)が、溶媒と、薬物を含むことが疑われる試料飲料とを保持するのに好適であり、前記薬物の有無が前記溶媒のあらかじめ設定された光学パラメータの少なくとも1つの変化によって判定され、前記検出が光検出器によって実施されることを特徴とするデバイス。
【請求項15】
請求項13または14に記載のデバイスにおいて、視覚ディスプレイまたは音声ディスプレイの形態の表示ユニットをさらに含むことを特徴とするデバイス。
【請求項16】
請求項14に記載のデバイスにおいて、前記あらかじめ設定された波長が450nmおよび/または560nmおよび/または750nmであることを特徴とするデバイス。
【請求項17】
請求項14に記載のデバイスにおいて、試料の、前記検査用セル(複数可)内への連通を可能にする入口ユニットをさらに含むことを特徴とするデバイス。
【請求項18】
請求項14に記載のデバイスにおいて、視覚または音声表示器をさらに含むことを特徴とするデバイス。
【請求項19】
請求項14に記載のデバイスにおいて、前記光検出器が前記入射ビーム軸に沿って取り付けられている透過率測定モードにおいて作動可能であることを特徴とするデバイス。
【請求項20】
請求項14に記載のデバイスにおいて、前記光検出器が前記入射ビーム軸に垂直に取り付けられている散乱測定モードにおいて作動可能であることを特徴とするデバイス。
【請求項21】
請求項14に記載のデバイスにおいて、複数回使用および連続使用に好適であることを特徴とするデバイス。
【請求項22】
請求項14に記載のデバイスにおいて、複数回の同時使用に好適であることを特徴とするデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般的に、アルコール飲料および非アルコール飲料中のデートレイプ薬物などの種々の薬物の検出のための方法およびキットに関する。
【背景技術】
【0002】
麻薬乱用に絡む大きな社会問題のため、違法薬物の検出は主要な研究分野となっている。検出技術の広い分類のいくつかは一般に公知であり、これには、X線をベースとした技術等の画像法、訓練された犬の使用、比色試験および種々の「探知」技術を利用する微量化学物質検出法を含む。最後の分類には、微量の混入気体または粒子の採取および分析による薬物の間接検出を伴う。この種の用途のためのいくつかの技術が開発されているが、中でもイオン移動度分光法(IMS)がおそらく最も広く利用されている。
【0003】
また、薬物助長による性的暴行が世界中で増加しており、憂慮すべき問題となっている。レイプの助長に使用される薬物は、鎮静、催眠、解離および/または健忘作用を有し、被害者に無断で食品または飲料に容易に添加することができる。いわゆる「デートレイプ」薬物の既存の実証試験は、高く見積もっても、完全に信頼できるものでも高感度でもなく、また、固有の試験限界のため全種類の飲料に使用することはできない[1−6]。また、実際の状況においては、得られた結果の解釈が問題となることが多い。
【0004】
アルコール自体以外で、最も知られているデートレイプ薬物はγヒドロキシブチレート(GHB)およびケタミンである。γヒドロキシブチレート(GHB)は、「作成が容易」な、小さな内因性の極性化合物(C)で、無味、無色または無臭であり、飲料において検出することが困難なため、強姦者が選択する薬物となっている。GHBは本来人体中に微量に見られるものであり、神経伝達物質γアミノ酪酸(GABA)に化学的に酷似している。
【0005】
GHBは当初麻酔薬として利用されていたが、現在は、睡眠発作、脱力発作およびアルコール/阿片薬脱慣療法において利用されている。しかしながら、GHBは、また、その種々の「所望の」効果である多幸感、幻覚および催淫のため、娯楽的薬物として乱用されている。しかし、その副作用、攻撃的態度、悪心/嘔吐、幻覚、徐脈、意識喪失、呼吸不全、記憶喪失および高い投与量における死亡の可能性は全て現実のものとなっている。レイプ支援薬物(rape−assisting drug)として使用された場合、GHBは被害者を無力にし、被害者は、通常、「酒に酔っている」と誤って診断される。
【0006】
GHBは一般的な薬物スクリーニングにおいては検出されず、その検出は専門医の試験室においてのみ実施可能である。GHBの主な問題は、被害者を意識不明にする投与量と、死亡に至るおそれのある投与量との間にわずかな差しかないことである。GHBの大量投与量は約2.5グラムである。追加の0.25グラムが多幸感と意識喪失との差となりうる。危険な過剰投与はわずか2グラムで起こりうるが、これは体重および個人の代謝に依拠する。数回のGHB過剰投与は意識喪失、嘔吐および催吐反射の喪失につながり、被害者が誤嚥および死亡の重大な危険にさらされる。
【0007】
GHB、また同程度のケタミンが乱用に使用される事例の数が急速に増加しているにもかかわらず、そのような薬物、特にGHBの存在を検出するために利用可能な方法は感度が低く、煩雑であり、広範なアルコール飲料および非アルコール飲料において、および実際の状況で必要とされる濃度においてこれら薬物を検出するには信頼性が低い。したがって、広範かつ多様な飲料における「デートレイプ」薬物の迅速な現地検出のための簡単で、高感度かつ信頼性の高い方法の開発が必要とされている。
【0008】
参考文献
[1]Meyers,J.E.;Almirall,J.R.,A study of the effectiveness of commercially available drink test coasters for the detection of“date rape”drugs in beverages.J.Anal.Toxicol.,2004,28(8),685−688.
[2] Walker L.Identification of the potassium salt of gamma−hydroxybutyric acid(GHB).J.Clan.Lab.Invest.Chem.Assoc.,1999,9(1),17−18.
[3]Bommarito,C.;Analytical profile of gamma−hydroxybutyric acid(GHB).J.Clan.Lab.Invest.Chem.Assoc.,1993,3,10−12.
[4]Blackledge,R.D.;Miller,M.D.The identification of GHB.Microgram 1991,24,172−179.
[5]Hennessy,S.A.;Moane,S.M.;McDermott,S.D.The reactivity of gamma−hydroxybutyric acid(GHB)and gamma−butyrolactone(GBL)in alcoholic solutions.J.Forensic Sci.,2004,49(6),1220−1229.
[6]Meyers,J.E.;Almirall,J.R.,A study of the effectiveness of commercially available drink test coasters for the detection of“date rape”drugs in beverages.J.Anal.Toxicol.,2004,28(8),685−688.
【発明の概要】
【0009】
本明細書中では、種々の薬物を、広範なアルコール飲料および非アルコール飲料から直接、迅速に、確実に、高感度で検出するための方法およびキットを開示する。本発明の方法では、検出のための手段として酵素試薬の使用または化学反応の生成を必要とせず、複雑な解析または事前の科学的理解を要することなくその場で使用することができる。本発明の方法は、全般的に、溶媒/非溶媒法に基づくものであり、これは、少量の薬物を含有する試料を参照溶液(いわゆる溶媒混合物)に添加すると、薬物を含有しない参照溶液に関連しかつ参照溶液においてあらかじめ設定された光学パラメータの変化(例えば、透過、散乱)に至る。光学パラメータの変化は、薬物が溶解した媒体、例えば、飲料によるものではなく、むしろ参照溶液中における薬物の完全または部分不溶性によるものであると想定される。参照溶液中における薬物の不溶性は、したがって、混濁またはコロイド状態または多相状態の形成につながり、したがって、薬物を含まない参照溶液においてあらかじめ設定された光学パラメータの変化につながる。
【0010】
光学パラメータの変化は飲料中の疑わしい薬物の存在を示すものであり、肉眼によって、または任意の光学的手段によって検出されうる。本発明の方法による、試料、例えば、飲料中における薬物の有無を判定する能力は、検査下の試料の色、pHまたは濃度などの因子に影響されない。
【0011】
したがって、本発明の第1の態様では、液体媒体中の薬物の有無を判定するための方法が提供される。この方法は、
−あらかじめ設定された光学パラメータを有する1種以上の溶媒混合物(複数可)を提供するステップであって、前記溶媒混合物が薬物の存在下で少なくとも1つの光学パラメータの変化を起こすことができる、ステップと、
−前記溶媒混合物を、ある量の前記薬物を含むことが疑われる液体媒体と接触させるステップと、を含み、
前記溶媒混合物の、ある量の前記薬物を含むことが疑われる前記液体媒体との接触後の前記溶媒混合物のあらかじめ設定された光学パラメータの変化が前記液体媒体中における前記薬物の存在を示すことを特徴とする。
【0012】
いくつかの実施形態では、例えば、混濁の形成、およびその後の前記少なくとも1つの光学パラメータの変化を誘導する、または促進するため、媒体を前記溶媒混合物試料と(例えば、振り混ぜることによって)混合することを可能とする。
【0013】
さらなる実施形態では、溶媒混合物に液体媒体試料を添加する前に液体媒体試料が測定され、溶媒混合物との接触後に得られる光学パラメータとの比較のための少なくとも1つの光学パラメータが決定される。したがって、本発明の方法は、
−あらかじめ設定された光学パラメータを有する1種以上の溶媒混合物(複数可)を提供するステップであって、前記溶媒混合物が薬物の存在下で少なくとも1つの光学パラメータの変化を起こすことができる、ステップと、
−薬物を含むことが疑われる液体媒体の試料を得るステップと、任意選択で、その少なくとも1つの光学パラメータを測定するステップと、
−前記溶媒混合物を液体媒体試料と接触させるステップと、を含み、
前記溶媒混合物の、ある量の前記薬物を含むことが疑われる前記液体媒体との接触後の、前記溶媒混合物のあらかじめ設定された光学パラメータの変化、または前記溶媒混合物の、前記溶媒混合物との接触後の前記液体媒体試料のあらかじめ設定された光学パラメータの変化が前記液体媒体中における前記薬物の存在を示すことを特徴とする。
【0014】
本明細書中に開示される方法は、液体媒体、例えば、飲料中に含まれる任意の種類の薬物または薬物の混合物を検出するために使用することができる。いくつかの実施形態では、薬物は、「娯楽的薬物」または「違法薬物」、すなわち、合成されうる、または自然に得られうるあらゆる物質または化学物質である。本発明によりその存在が検出される薬物は、抑制薬、抗ヒスタミン薬、鎮痛薬、精神安定薬、幻覚薬、幻覚発動薬、せん妄発生薬および興奮薬などの向精神薬であってもよい。
【0015】
いくつかの非限定的な実施形態では、薬物は、アロバルビタール、またはアモバルビタール、またはアプロバルビタール、またはアルフェナール、またはバルビタール、またはブラロバルビタール、またはフェノバルビタール、アルプラゾラム、またはブレタゼニル、またはブロマゼパム、またはブロチゾラム、またはクロルジアゼポキシド、またはシノラゼパム、またはクロナゼパム、またはクロラゼペート、またはクロチアゼパム、またはクロキサゾラム、またはデロラゼパム、またはジアゼパム、またはエスタゾラム、またはエチゾラム、またはフルラゼパム、またはフルトプラゼパム、またはハラゼパム、またはケタゾラム、またはロプラゾラム、またはロラゼパム、またはロルメタゼパム、またはメダゼパム、またはミダゾラム、またはニメタゼパム、またはニトラゼパム、またはノルダゼパム、またはオキサゼパム、またはフェナゼパム、またはピナゼパム、またはプラゼパム、またはプレマゼパム、またはクアゼパム、またはテマゼパム、またはテトラゼパム、またはトリアゾラム、臭化イプラトロピウム(Atrovent)、または臭化オキシトロピウム(Oxivent)、またはチオトロピウム(Spiriva)、またはグリコピロレート(Robinul)、またはオキシブタイニン(oxybutinin)(Ditropan、Lyrinel XL)、またはトルテロジン(Detrol)、またはアゼラスチン、またはセチリジン、またはシクリジン、またはクロルフェニラミン、またはクレマスチン、またはデスロラタジン、またはデキスクロルフェニラミン、またはジメンヒドリナート(制吐薬として最も一般的に使用される)、またはジメチンデン、またはジフェンヒドラミン(benadryl)、またはドキシラミン、またはエバスチン、またはエンブラミン、またはフェキソフェナジン、またはレボセチリジン、またはロラタジン、またはメクリジン、またはオロパタジン、またはフェニラミン、またはプロメタジン、またはクエチアピン、またはルパタジン、またはシメチジン、またはファモチジン、またはラフチジン、またはニザチジン、またはラニチジン、またはロキサチジン、パラセタモール、またはサリチル酸塩などの非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、またはヒドロコドンまたはコデインまたはヘロインまたはオキシコドンなどのオピオイド薬である。
【0016】
さらなるいくつかの例には、バルビツレート、バルビタール酸塩、またはベンゾジアゼピン、または非ベンゾジアゼピン系薬、またはカリソプロドール(soma)、または抱水クロラール、またはジエチルエーテル、またはエトクロルビノール、またはギャバペンチン(neurontin)、またはγブチロラクトン(GBL)またはγヒドロキシブチレート(GHB)、またはグルテチミド(doriden)、またはカバ、またはカバラクトンまたはメプロバメート(miltown)、またはメタカロン、またはプレガバリン(lyrica)、またはプロポフォール(diprivan)、またはテアニンまたはカノコソウ、またはアトロピン、またはジメンヒドリナート(Dramamine)、またはジフェンヒドラミン、またはヒヨスチアミン、またはスコポラミン、またはミリスチシン、またはイボテン酸、またはムシモール、またはデキストロメトルファンデキストロメトルファン、またはデキストロメトルファン、またはクロルフェニラミン、またはケタミン、またはメトキセタミン、またはフェンシクリジンまたは亜酸化窒素、またはフェネチルアミン、またはMDMA、またはメスカリン、またはトリプタミン、またはαメチルトリプタミン、またはブフォテニン、またはジメチルトリプタミン、またはリゼルグ酸アミド、またはリゼルグ酸ジエチルアミド(LSD)、またはサイロシン、またはサイロシビン、またはイボガイン、またはサルビノリンA、または交感神経作用薬(カテコールアミン作動薬)、またはエンタクトゲン、またはアレコリン、またはラウオルシン、またはヨヒンビンを含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、薬物は、カフェインまたはテトラヒドロカナビノール(THC)またはヒドロコドン、またはオキシコドン、またはモルヒネ、またはジアセチルモルフィン(ヘロイン)、またはコカイン、またはリドカイン、またはノボカインである。
【0018】
いくつかの実施形態では、前記薬物は、GHB(またはGHBの誘導薬またはプロドラック、例えば、GBL)およびケタミンから選択される少なくとも1つの薬物である。
【0019】
「液体媒体」は、飲料、または薬物がその所望の成分でない任意の液体を意味する。液体媒体、例えば、飲料は、水であっても、水性媒体であっても、アルコール媒体、例えば、エタノール、エタノール性溶液または任意の他の有機溶剤であってもよい。本明細書では、液体媒体試料は、前記、例えば、飲料から取り出され、本発明による溶媒混合物に添加される所望の量の一部分である。
【0020】
いくつかの実施形態では、液体媒体は飲み物または飲料である。他の実施形態では、液体媒体は、水、または水含有飲料、またはアルコール飲料、または非アルコール飲料、または清涼飲料、または果汁、またはホット飲料である。いくつかの実施形態では、液体媒体は、アルコール飲料であり、例えば、ワイン、ベアおよびエールなどの発酵飲料である。いくつかの実施形態では、発酵飲料であるエールは、バーレーワイン、ビターエール、マイルドエール、ペールエール、ポーター、スタウト、カスクエール、サンドトック(sand tock)エールから選択される。いくつかの実施形態では、発酵飲料は、フルーツビール、ラガービール、ボック、ドライビール、メルツェン/オクトーバーフェストビール、ピルスナー、シュヴァルツビア、サーティ、スモールビール、ウィートビール、ヴィットビア白ビールおよびヘーフェヴァイツェンから選択されるビールである。
【0021】
いくつかの実施形態では、発酵飲料は、フルーツワイン、テーブルワイン、サングリア、スパークリングワイン、シャンパン、強化ワイン、ポート、マデイラ、マルサラ、シェリー、ベルモットおよびヴィンサントから選択されるワインである。
【0022】
いくつかの実施形態では、液体媒体は蒸留飲料である。蒸留飲料は、アブサン、アクアビット、アラック、アラック、パイチュウ、カシャーサカ、ジン、ダムソンジン、スロージン、ホリールカ、コウリャン、茅台酒、メスカル酒、中性グレーンスピリッツ、オゴゴロ、ウゾー、パリンカ、ピスコ、ラキヤ、スリボビッツ、ラム、焼酒、テキーラ、ウォッカ、メタクサ、ウイスキー(バーボン、スコッチ、テネシーウイスキー)およびブランデー(アルマニャック、コニャック、フルーツブランデー、ダマシン、ヒンベアガイスト、キルシュ、ポワールウィリアムス、ウィリアムス、ツヴェチュゲンヴァッサー)などの蒸留酒の中から選択してもよい。
【0023】
いくつかの実施形態では、蒸留飲料はリキュールである。リキュールは、ベリーリキュール、コーヒーリキュール、クリームリキュール、フラワーリキュール、フルーツリキュール、薬草系リキュール(アニス風味のリキュールなど)、蜂蜜リキュール、ナッツ風味のリキュール、ウイスキーリキュールおよびその他から選択してもよい。
【0024】
いくつかの実施形態では、アルコール飲料カクテルである。カクテルは、アブサンのカクテル、ビールのカクテル、ブランデー、コニャックのカクテル、またはカシャーサのカクテル、ジンのカクテル、ラムのカクテル、酒のカクテル、テキーラのカクテル、ウォッカのカクテル、ウイスキー、ライまたはバーボンのカクテル、ワイン、スパークリングワインまたはポートのカクテル、およびリキュールのカクテルから選択してもよい。
【0025】
いくつかの実施形態では、液体媒体は非アルコール飲料である。いくつかの実施形態では、非アルコール飲料は、非アルコールカクテル(ジンジャーエールとオレンジジュースのコクテル(coktail)等)、アグアスフレスカス、アグアパネラ、アルムドゥードゥラー、アプフェルショーレ、アトレ、アイラン、ベビーチーノ、ペスク、バンドレック、バンドン、大麦湯、バーチサップ、パンドリンク、チェンドル、チャラップ、チャンプラド、シャンパス、チャス(chass)、チョラド、チャイ、コーヒー、エッグノッグ、エルダーフラワーコーディアル、ファルーダ、ガラパ、ショウガ茶、ハワイアンパンチ、オルチャタ、ホットチョコレート、ファチェ、チンダルファチェ、紅茶キノコ、ラッシー、リクアド、マッタ、マサモラ、ミルクセーキ、モコチンチ、モテコンウエシージョ、ネクター、オレンジ飲料またはオレンジ清涼飲料、ピーナッツミルク、ピーナッツパンチ、シャーベット、シカンジ、スムージー、スバクファチェ、スジョングァ、スウィッチェル、茶、タダル、ユジャファチェおよびコーラである。
【0026】
液体媒体は、着色剤、味覚変革物質およびその他などの1つまたは複数のさらなる物質を含んでもよい。
【0027】
前記薬物の存在下で少なくとも1つの光学的変化を起こすことができる溶媒混合物は、特定の薬物/薬物類(化学構造または溶解性に基づく)の既定の混合物である。液体媒体試料の添加前の混合物は、単一溶媒、例えば、アセトニトリル、エタノールであっても、2つ以上の溶媒の混合物であってもよい。いくつかの実施形態では、混合物は、薬物を可溶化する少なくとも1つの溶媒と、薬物不溶性の、いわゆる非溶媒である少なくとも1つの他の溶媒とを含む溶媒/非溶媒の混合物である。薬物が前記溶媒混合物に添加されると、溶媒混合物の少なくとも1つの測定可能な光学パラメータが変化する。このような変化は液体媒体自体によっては影響されない。したがって、光学パラメータのいかなる変化も薬物の存在によるものとされる。
【0028】
他の実施形態では、溶媒混合物は、単一溶媒、例えば、アセトニトリルを含む。単一溶媒は、前記液体媒体試料(1種以上の溶媒)の少なくとも1つの成分に接触すると、薬物(同様に、液体媒体溶媒中に含まれる)が部分的にまたは完全に溶解しない溶媒/非溶媒媒体を生成する。
【0029】
いくつかの実施形態では、薬物はGHBであり、溶媒混合物はアセトニトリルを含む。いくつかの実施形態では、薬物はGHBであり、溶媒混合物はエタノールを含む。薬物がGHBであるさらなる実施形態では、溶媒混合物はエタノール:アセトニトリルである。いくつかの実施形態では、薬物はGHBであり、溶媒混合物は、アセトニトリル(100%)、エタノール、またはエタノール:アセトニトリル(1:1)である。
【0030】
いくつかの実施形態では、薬物はケタミンであり、溶媒混合物はイソプロパノールおよび/またはグリセリンおよび/またはNaOHを含む。いくつかの実施形態では、薬物はケタミンであり、溶媒混合物は、イソプロパノールおよびグリセリンおよびNaOHを含む。いくつかの実施形態では、薬物はケタミンであり、溶媒混合物はイソプロパノール:グリセリン:NaOH(1:10:0.25)を含む。
【0031】
薬物の検出は、薬物の存在と関連する光学パラメータの変化を観察することによって実施される。光学パラメータの変化は、薬物を含まない、または液体媒体、例えば、薬物を含まない飲料を含む溶媒混合物と比較した溶媒混合物の光学パラメータの変化である。
【0032】
少なくとも1つの光学特性は光透過に関連するものであってもよい。
【0033】
いくつかの実施形態では、測定される光学パラメータは透過率(または光学密度)である。いくつかの実施形態では、測定される光学パラメータは散乱である。
【0034】
本発明は、また、液体媒体中の薬物の有無を判定するためのデバイスを提供する。デバイスは、溶媒混合物を保持するための、少なくとも1つの、任意選択で着脱可能な検査用セル(検査用セルアセンブリ内)と、薬物を含むことが疑われる試料(飲料試料)を前記少なくとも1つの検査用セル内に抜き取るための手段と、試料と接触後、前記検査用セル内の液体の少なくとも1つの光学パラメータの変化を検出するための検出ユニットと、を含む。
【0035】
理解されうるように、試料の添加後の光学パラメータの測定は、検出デバイスの一部でない検出ユニットによって実施してもよい。
【0036】
上述したように、検査用セル(複数可)または前記セル(複数可)を保持するアセンブリは、前記デバイスから任意に係脱するよう構成してもよい。アセンブリは、飲料が検査された後、取り外され、廃棄され、その後、別個のセル内に、本発明による、1つまたは複数の溶媒混合物をすでに含んでいる別のそのような検査用セルまたはアセンブリと交換されてもよい。
【0037】
本発明による、液体媒体中における薬物の存在を判定するためのデバイスの全般的なスキームを図1に示す。本発明のデバイス1には光源20が設けられている。前記光源20からの光ビームが試料保持器40内に収容された検査用セル30を通過する。試料保持器40は、本発明によるいくつかの実施形態では、1を超える検査用セル、すなわち、2、3、4、5またはそれを超える数の検査用セル(マルチセル)を含んでもよい。検査用セル30は、溶媒混合物と、薬物含有量が判定されることになる試料液体媒体とを含む。検査用セル(複数可)30は入口(図示せず)を有し、そこから、試料、例えば、飲料を当技術分野において公知の任意の手段によって送達してもよい。いくつかの実施形態では、光路に、またはそれに対してあらかじめ設定された角度(垂直)に配置された光検出器50が、前記検査用セル内の試料を通過後の透過光または散乱光を測定する。
【0038】
本発明のデバイスは、その設計のいくつかによれば、光検出器が入射ビーム軸に沿って取り付けられている透過率測定モード(モードI)において動作してもよい。別の散乱測定モード(モードII)では、光検出器を入射ビーム軸に垂直に取り付けてもよい。
【0039】
光検出器50はデータ処理デバイス60に連結されている。データ処理デバイス60は、データを処理し、それを前記1つまたは複数の検査用セル(複数可)30内の溶媒混合物についてあらかじめ得た参照値と比較する。本発明によれば、液体媒体、例えば、飲料中に薬物が存在する場合、警告システム70がオンにされる。表示システムは任意の視覚または音声ディスプレイの形態であってもよい。
【0040】
いくつかの実施形態では、デバイスは、携帯電話、コンピュータ等に搭載された受信機に警報を(例えば、無線周波数によって)送信することができる送信ユニットをさらに含んでもよい。受信機は、本発明の方法が実施される位置にあっても、離れた位置にあってもよい。
【0041】
デバイスは複数回の使用および連続使用のために設計してもよい。さらに、または代わりに、デバイスは複数回の同時使用のために設計してもよい。
【0042】
液体媒体中における薬物の存在を判定するためのデバイスは、試料保持器と、光源と、光検出器と、データ処理デバイスとを含む。試料保持器は液体押し出し構成要素(pumping liquid component)に連結してもよく、かつ液体媒体の、溶媒混合物(溶媒/非溶媒の混合物)を含むリザーバへの通過を可能にする膜または半透過膜を含んでもよい。
【0043】
検査用セルは、複数の溶媒混合物による、薬物を含む液体媒体の同時検査を可能にするマルチセルアセンブリであってもよい。各溶媒混合物はマルチセルアセンブリの異なるセル内に収容されている。
【0044】
いくつかの実施形態では、マルチセルアセンブリ内のセルの数は少なくとも2つのセルである。いくつかの実施形態では、セルの数は10またはそれを超える。さらなる実施形態では、セルの数は、1または2または3または4または5または6または7または8または9または10個のセルである。
【0045】
抜き出す必要がある液体媒体の量、すなわち被験試料のサイズは最小である。いくつかの実施形態では、試料採取量は0.1μL超であってもよい。いくつかの実施形態では、試料採取量は、0.1μL超、1μL超、100μL超または1mL超である。いくつかの実施形態では、被験液体媒体の試料採取量は1〜100μLの範囲である。いくつかの実施形態では、被験液体媒体の試料採取量は、100μL〜1mLの範囲である。
【0046】
本発明によるデバイスに用いられる溶媒混合物は、観察された(試験された)光学パラメータの変化を可能にするのに適切なものとすべきである。いくつかの実施形態では、試料採取量は、0.1μL超、1μL超、100μL超、または1mL超である。いくつかの実施形態では、被験液体媒体の試料採取量は、1〜100μLの範囲である。いくつかの実施形態では、被験液体媒体の試料採取量は、100μL〜1mLの範囲である。
【0047】
いくつかの実施形態では、デバイスは、例えば、ピペッタ(1つまたは複数)またはマイクロピペッタ(1つまたは複数)の形態の分注システムをさらに含む。
【0048】
光源ユニットは、1つまたは複数の光源を含んでもよい。いくつかの実施形態では、光源ユニットは2〜10個の光源を含む。いくつかの実施形態では、光源ユニットは、1または2または3または4または5または6または7または8または9または10個の光源を含む。
【0049】
いくつかの実施形態では、光源照射は、赤外線(IR)(NIR−IR、FAR−IRを含む)方式であってもよい。他の実施形態では、光源照射は、450nmおよび/または560nmおよび/または750nmであってもよい。
【0050】
光学的変化検出するために用いられる光源は、Arレーザー、He−Neレーザーおよび色素レーザーなどのレーザー、水銀ランプなどの光ランプ、固体ダイオード、有機LEDなどの発光ダイオードなどの任意の光源および他の入手可能な光源であってもよい。
【0051】
光検出器ユニットは任意の1つまたは複数の光検出器(複数可)を含んでもよい。いくつかの実施形態では、光検出器は、フォトダイオード、光導電セル、アベランシェフォトダイオード(avelanche photodiode)(APD)、電荷結合デバイス(CCD)、光依存抵抗器(LDR)、光電管または光電子倍増管(PMT)である。いくつかの実施形態では、検出器はフォトダイオードである。
【0052】
表示システムは、液体媒体(試料)中の薬物の存在を警告する表示器を含んでもよい。表示システムは、1つまたは複数の表示器(複数可)を含んでもよい。表示器は、特定の薬物に限定されるものであってもなくてもよく、視覚(電球、LED)または音声デバイスであってもよい。
【0053】
本発明のデバイスは、物品に取り付けることも組み込むこともできる。物品は、液体媒体キャリア、飲料のグラス、カップ、ボウル、皿、ストロー、飲料撹拌棒、刃物類、カクテルナプキン、飲料コースター、プレースマット、メニュー、パーソナルカードまたはペンであってもよい。
【0054】
本発明の検出方法を実施するためのキットも提供される。
【0055】
本発明を理解し、それを実際にどのように実施するかを確認するため、ここで、添付の図面を参照し、非限定的な例のみを用いて実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0056】
図1図1は、本発明によるプロセスを実施するためのデバイスの全体概略図である。
図2図2は、溶媒/非溶媒光検出法の全体概略図である。
図3図3は、アセトニトリル(左)および純粋エタノール(右)中におけるGHBの沈殿を示す。
図4図4A〜4Dは、純粋な飲料試料およびGHBを添加した試料の添加前および後のアセトニトリル非溶媒溶液の視覚的結果を示す。図4Aは、試料添加前の非溶媒を示す。図4Bは、純粋なFinlandiaウォッカ試料(左)およびGHBを添加したFinlandiaウォッカ(右)の添加後の視覚的結果を示す。図4Cは、純粋なRed labelウイスキー試料(左)およびGHBを添加したRed labelウイスキー(右)の添加後の視覚的結果を示す。図4Dは、純粋なKeglevichウォッカ試料(左)およびGHBを添加したKeglevich(右)の添加後の視覚的結果を示す。
図5図5A〜5Bは、清浄な飲料試料およびGHBを添加した試料の添加後のエタノール非溶媒溶液の視覚的結果を示す。図5Aは、純粋なTavor赤ワイン試料(左)およびGHBを添加したTavor赤ワイン(右)の添加後の視覚的結果を示す。図5Bは、純粋なシャルドネ白Tavor試料(左)およびGHBを添加したシャルドネ白Tavor(右)の添加後の視覚的結果を示す。
図6図6A〜6Cは、本発明の診断的方法を実施するために構成された実験システムおよびGHB検出実験において得られた結果を示す。図6Aは、1光源、2光ファイバワイヤ、3管ホルダ、4フォトダイオードおよび5データカードを含む実験システムを示す。図6Bは、純粋なウォッカ試料(曲線a)およびGHBを添加したウォッカ試料(曲線b)に対し、本発明によるデバイスを用いて実施した試験から得られた光学曲線を示す。図6Cは、異なるGHB濃度を有する異なる飲料を非溶媒物質を含む管内に添加した際の信号変化を示す。対照はゼロ変化とした。GHB濃度は被験飲料のものである。
図7図7A〜7Bは、GHB検出実験において得られた結果を示す。図7Aは、光散乱試験における飲料のケタミン投与反応(ketamine−dosage response)による信号の変化を示すグラフである。図7Bは、異なる濃度のケタミンを異なる飲料に添加した際の信号変化を示す。対照はゼロ変化とした。ケタミン濃度は被験飲料のものである。
【発明を実施するための形態】
【0057】
多種多様なアルコール飲料および非アルコール飲料およびこれらの混合物はこれら液体試料に添加された化学薬物の検出を極めて困難にしている。極端なpH差、着色された飲料、飲料に添加された低濃度の薬物およびさらなる多数の要因により、検出物質としての酵素の使用および検出手段としての視覚的色彩の開発に基づく従来の手法の使用性および信頼性は限定されている。
【0058】
したがって、薬物を添加した飲料を検出するための、新規の、簡単かつ一般的な手法を見いだすことは、薬物助長による暴行の予防および科学捜査のケースにおいて非常に重要なこととなる。
【0059】
ここで、広範囲のアルコール飲料および非アルコール飲料ならびにそれら混合物において近頃使用されている最も多くの「デートレイプ」薬物のうちのいくつかの検出のための極めて簡単、迅速、高感度かつ低コストの手法の開発について説明する。
【0060】
全般的な検出方式は化学原理に基づくものであり、(i)第1に、関心化学薬物が溶解しないが、なお被験飲料と混和可能な、溶媒または溶媒混合物、いわゆる「非溶媒」を見いだし、(ii)次に、既定の量の、薬物を添加した飲料をより多くの量の「非溶媒」に添加し、簡単な光学的手段によって容易に検出することができるコロイド状の混濁した混合物を形成する。「混濁」効果は、明確な光学的変化および光の散乱の強化につながり、添加された飲料中における薬物の検出を可能にする。飲料に添加された化学薬物の溶媒−非溶媒検出法の全体の概要は図2に記載されている。
【0061】
まず、薬物助長による暴行において最も広く使用されている化学物質であるGHBの検出について実験した。200mlの飲料において検出される実際的なGHB濃度範囲を表1に示す。
【0062】
広範なスクリーニング実験後、アセトニトリルおよび純粋エタノールが、広範囲のアルコール飲料および非アルコール飲料に添加されたGHBを、溶媒(飲料自体)−非溶媒検出方式を使用して検出するための最有力候補であることが判明した。GHBはこれら溶媒(非溶媒)にほとんど不溶性であり、GHBの添加後、沈殿するか、混濁したコロイド溶液になることが示された(図3)。少量の添加飲料をより多くの量の非溶媒に添加することにより(溶媒成分と非溶媒成分各々の体積比1:10)、広範囲の、GHBを添加したアルコール飲料を試験した。図4Aおよび図4Bは、純粋なウォッカ試料およびGHBを添加したウォッカ試料(GHB10mg/ml(1mlの非溶媒量中に100mlの飲料試料))各々の添加前および添加後のアセトニトリル非溶媒溶液の視覚的結果を示す。明らかに、アセトニトリル非溶媒純粋溶液は、少量の、GHBを添加した飲料の添加直後に混濁した。この劇的な結果は濃度GHB10mg/mlの飲料における目視検査で明確に検出された。その他のアルコール飲料も類似の結果を示した(図4Cおよび図4D)。この手法は広範なGHB濃度におけるGHBの検出を可能とし、この場合、検出限界はGHB約0.2〜0.4g/100〜120mlの飲料である。この検出の下限は鎮静に必要な最低GHB濃度よりも大幅に低い。したがって、本明細書中に開示される手法は、GHBの低濃度に起因する偽陰性結果のリスクなく、飲料に添加されたGHBを非常に迅速に検出するために安全かつ確実に使用することができる。アセトニトリルを「非溶媒」として使用した場合、コカコーラなどの非アルコール軽飲料、ワインなどの軽アルコール飲料およびカクテルなどの混合物は結果の観測に至らなかった。注目すべきは、清涼飲料、カクテル、非アルコール飲料、および軽アルコール飲料中のGHB検出用に純粋エタノールを非溶媒として使用すると、類似の結果につながる、は前に示したものである(図5Aおよび図5B)。しかし、この検出は、現在開発されている複数隔室デバイスおよび試料の分離(図5C)を使用して容易に実施することができるため、この、異なる飲料群における非溶媒物質の違いは検出目的における問題と解釈すべきではない。
【0063】
異なる性質を有する、添加された飲料中におけるGHBの存在を確実に検出するため、ならびにその検出を定量化することができるように、対象の少量の飲料の添加時における非溶媒量の光学特性の変化を可能にするためのデバイスが構成された。このデバイスは、図6Aに示すように、(i)試料保持器と、(ii)光源と、(iii)光検出器と、(iv)電子基板およびソフトウェアとを含む。このデバイスは、光散乱変化または被験添加済飲料中のGHBの存在に起因する混濁作用による光路の遮断を、簡単かつリアルタイムに迅速に監視することを可能にする。図6Bは、本発明人が新規に開発したデバイスを使用して、純粋なウォッカ試料(曲線a)およびGHBを添加したウォッカ試料(曲線b)に実施した試験から得た光学曲線を示す。観察されたように、非溶媒溶液にGHBを含まない飲料試料を少量添加すると、純粋な非溶媒において観察された基準値と比較していかなる光学的変化も生じない。それに比べ、GHBを添加した溶液は明確で急激かつ迅速な光学的変化に至った。このデバイスは、犯罪現場のケースにおいて通常要求される濃度よりもかなり低い濃度で飲料中のGHBを非常に高感度に検出することを可能とする。飲料中のGHBの検出は明確に濃度に依存する。GHB濃度が高いほど光学的変化が高くなり、かつ明白になる。これは、観察された光学的結果が被験飲料にGHBを添加した結果によることを明確に証明するものである。
【0064】
多数の一般的なカクテル混合物についても同様に試験したが、GHBの添加後に明確な光学的変化を示した(図6C)。特に、本明細書中に開示される手法により、飲料の組成、それらの色、pH、密度等に関わらず、添加された飲料中におけるGHBの、確実で超高速かつ高感度の検出が可能となる。
【0065】
GHBに加えて、ケタミンなどの他の薬物も、薬物助長による性的暴行において使用される一般的な化学物質である。
【0066】
手法の一般性の証明のため、飲料中の、妥当な、必要とされる濃度のケタミンの検出を可能にするため、変更を施した手法による試験を実施した。鎮静的無効化作用に達するケタミンの活性濃度はGHBにおいて使用された活性濃度よりも大幅に低い。100mlの飲料中における一般的な範囲のケタミン投与量を表2に示す。
【0067】
潜在的試験溶液候補の系統的スクリーニングでは、イソプロパノール:グリセリン:NaOH(1:10:0.25)混合物(混濁溶液)が、ケタミンを添加した飲料の光検出に好適な候補であることを示した。この場合、少量のケタミンを添加した飲料をあらかじめ混濁した試験溶液に添加すると、透過が増加し(溶液の透明性が増加する)、本発明のデバイスによって容易に検出されるに至った(図7A)。ケタミンの検出は広範な飲料において容易に実施され、試験下のケタミンの濃度に依存した(図7B)。
【0068】
方法
方法では、添加された飲料(純粋な飲料−透明な試験混合物に添加し混濁させた)の場合の混濁の出現を基にする。
【0069】
実施例1:高アルコール度数飲料におけるGHB検出
GHBは2つの異なる方法において検出された。
【0070】
1.飲料の試料をアセトニトリル中に1:10(試料:MeCN)の割合で溶解させた。0.2g/100ml超の濃度のGHBの存在下で、最終溶液はコロイドに変化し、この変化を光散乱によって測定した。この方法は30%以上のアルコールを含有する飲料において有用であった。
【0071】
2.飲料の試料を、非アルコール清涼飲料、またはマティーニ/ベルモット/その他などの低アルコール混合物を含有する追加の混合物質中に1:1(試料:溶解溶液)の割合で溶解させ、新規に形成された溶液をEtOH(吸光度96%)中に1:10の割合で溶解させた。0.4g/100ml超の濃度のGHBの存在下で、最終溶液はコロイド/混濁状に変化し、この変化を光散乱または任意の他の比濁法によって測定した。この方法は、あらゆる清涼飲料から高アルコール度数の飲料の薬物含有量の試験において有用であった。
【0072】
代わりとして、混合物質(清涼飲料または低アルコール度数の飲料)を試験溶媒(EtOH)と1:10〜1:20(混合物質:EtOH)の割合で混合することもできる。結果は同じである。
【0073】
実施例2:低アルコール度数飲料、カクテルおよび非アルコール飲料におけるGHB検出
GHBそのような飲料は上記実施例1の方法2または以下の方法のいずれかによって検出することができる。
【0074】
飲料の試料をEtOH(吸光度96%)中に1:10の割合(試料:EtOH)で溶解させた。0.2g/100ml超の濃度のGHBの存在下で、最終溶液はコロイドに変化し、この変化は光散乱によって測定された。
【0075】
GHB検出用のデバイスでは、2つの試料チャンバを形成した。1つは高アルコール度数の飲料における検出用であり、もう一方は他のあらゆる飲料用である。
【0076】
ケタミン
方法は、添加された飲料の場合、最初から混濁している混合試験溶液からの透明性の上昇を基にするものである。
【0077】
実施例3:あらゆる種類の飲料におけるケタミンの検出
飲料/飲み物の試料を試験試薬に溶解させた。これはイソプロピルアルコール(IPA)、NaOHおよびベルモットを1:10(ベルモット:IPA+0.001MのNaOH)の割合で含むものであった。この溶液は初めからコロイド状(濁っている/混濁している)であった。ケタミンを含まない飲料の場合、コロイドが残る。妥当な濃度(80mg〜400mg)のケタミンの存在下で、最終溶液の透明性は増加した。
【0078】
実施例4:低アルコール度数飲料、カクテルおよび非アルコール飲料におけるケタミンの検出
そのような飲料中のケタミンは実施例3の方法または以下の方法のいずれかによって検出された。
【0079】
飲料の試料をIPA+0.001MのNaOH溶液に1:10の割合で溶解させた。「ケタミンを含まない」飲料ではコロイドが出現した。妥当な濃度のケタミンの存在下で、最終溶液の透明性は増加した。
【0080】
GHBの検出において観察された光学的変化はケタミンにおいて観察されたものと大きく異なる。ケタミンの検出では、コロイド構造が「純粋な」飲料において形成され、ケタミンの添加時に消失する。この相違は測定可能な光学パラメータに明らかに影響しない。
【0081】
実施例5:盲検試験概要
一連の飲料およびそれらの無作為混合物にGHBを無作為に添加した。飲料はそれらの配合、すなわちGHBの存在についての事前知識を有しない状態で試験された。GHB濃度は約1g/120mlであった。
【0082】
飲料の選択肢には、周知の飲料および無作為に用意された飲料(例えば、一般的なカクテルの混合物)が含まれた。
【0083】
以下、表3において各試料の配合の概要を示す。

【0084】
表3に認められるように、52の被験飲料全てにおいて、本発明の手法を用いることによりGHBの有無が効率的に判定された。偽陽性は発生しなかった。
【0085】
ケタミンについても同様の試験を実施し、同様の結果が得られた。
図1
図2
図3
図4A-D】
図5A-B】
図6
図6A
図7