(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の可変動弁装置を自動車のエンジンに適用した各実施形態について詳細に説明する。
【0016】
(第1実施形態)
第1実施形態に係るエンジンは、2つの吸気バルブと2つの排気バルブとを有する4バルブDOHC型のエンジンである。第1実施形態に係る可変動弁装置1は、1つの気筒に対応する2つの吸気バルブ2を駆動するためのものである。
図1及び
図2に示すように、可変動弁装置1は、図示しないシリンダヘッドに回転可能に支持されたカムシャフト4と、シリンダヘッドに回転不能に支持されたロッカーシャフト5と、主ロッカーアーム(第1ロッカーアーム)6及び左右一対の従ロッカーアーム(第2ロッカーアーム)7、8からなるロッカーアーム9とを有している。以下の説明では、
図1に示すようにロッカーシャフト5の延在方向を左右方向とする。主ロッカーアーム6及び従ロッカーアーム7、8は、それぞれの一の方向に延在し、一端部である基端部に断面円形状の貫通孔であるシャフト挿通孔11、12、13を有している。シャフト挿通孔11、12、13にロッカーシャフト5が挿通されることによって、ロッカーシャフト5に主ロッカーアーム6及び従ロッカーアーム7、8がそれぞれ回動可能に支持されている。主ロッカーアーム6は、左右の従ロッカーアーム7、8の間に配置され、ワッシャを介して互いに摺接している。
【0017】
図3に示すように、主ロッカーアーム6及び従ロッカーアーム7、8は、それぞれシャフト挿通孔11、12、13が形成された部分からシャフト挿通孔11、12、13の径方向(ロッカーシャフト5の径方向)に延在し、先端部を形成している。従ロッカーアーム7、8の先端部には、吸気バルブ2のステムの上端に当接するタペット調整ねじ16が進退可能に螺着されている。他の実施形態では、タペット調整ねじ16を省略し、従ロッカーアーム7、8の先端部が直接に吸気バルブ2、3を押圧するようにしてもよい。
図1に示すように、吸気バルブ2は、開弁方向及び閉弁方向の直線状に変位可能にシリンダヘッドに支持されており、シリンダヘッドとの間に介装された圧縮コイルばねであるバルブスプリング15によって閉弁方向に付勢されている。
【0018】
図3に示すように、主ロッカーアーム6及び従ロッカーアーム7、8は、長手方向における中間部に、シャフト挿通孔11、12、13と平行の軸線を有する円孔であるピン孔17、18、19を有している。ピン孔17、18、19は、互いに同軸と成り得る位置に配置されている。主ロッカーアーム6のピン孔17は、主ロッカーアーム6を左右方向に貫通し、従ロッカーアーム7、8のピン孔18、19は主ロッカーアーム側に開口し、他端が底壁によって閉塞されている。ピン孔17、18、19のそれぞれは、軸線方向における中間部に、段違いに拡径されて各ロッカーアーム6、7、8の上面(カムシャフト4側を向く面)に開口したローラ受容孔21、22、23を有している。
【0019】
ピン孔17、18、19のそれぞれには、両端が開口した円筒管であるスリーブ25、26、27が圧入されている。主ロッカーアーム6のピン孔17に圧入されたスリーブ25は、ピン孔17と長さが等しく、両端がピン孔17の両端と一致している。従ロッカーアーム7、8のピン孔18、19に圧入されたスリーブ26、27は、ピン孔18、19よりも長さが短く、外端がピン孔18、19の開口端に一致するように配置されている。
【0020】
各スリーブの外周面であって、ローラ受容孔21、22、23に対応する部分には、ベアリングを介して円筒状のローラ29、30、31が回転可能に支持されている。ローラ29、30、31は、ローラ受容孔21、22、23内において回転可能になっており、一部がローラ受容孔21、22、23の開口から外部に突出している。
【0021】
従ロッカーアーム7、8のそれぞれは、ピン孔18、19の底壁近傍と、シャフト挿通孔12、13とを連通する作動油路33、34を有している。また、従ロッカーアーム7、8のそれぞれは、ローラ受容孔22、23とシャフト挿通孔12、13とを連通する潤滑油路35、36を有している。作動油路33、34のシャフト挿通孔12、13側の開口端は、シャフト挿通孔12、13の周方向に所定の範囲で延在する作動油溝37、38の底部に連通している。潤滑油路35、36のシャフト挿通孔12、13側の開口端は、シャフト挿通孔12、13の周方向に所定の範囲で延在する潤滑油溝39、40の底部に連通している。
【0022】
右従ロッカーアーム7の作動油溝37と潤滑油溝39は、シャフト挿通孔12の内周面の主ロッカーアーム6側と相反する端部(右端部)であってバルブの開弁方向に対応する第1部分71(
図8参照)と、シャフト挿通孔12の内周面の主ロッカーアーム6側の端部(左端部)であってバルブの閉弁方向に対応する第2部分72(
図8参照)とを避けるように配置されている。ここで、シャフト挿通孔12のバルブの開弁方向に対応する部分とは、より詳細には、右従ロッカーアーム7がバルブ2を開閉させるべく、ロッカーシャフト5を中心として所定の範囲で回動する際に、シャフト挿通孔12の内で最も開弁方向側に配置され得る部分をいう。同様に、シャフト挿通孔12のバルブの閉弁方向に対応する部分とは、より詳細には、右従ロッカーアーム7がバルブ2を開閉させるべく、ロッカーシャフト5を中心として所定の範囲で回動する際に、シャフト挿通孔12の内で最も閉弁方向側に配置され得る部分をいう。より詳細には、第1部分71は、バルブ2が閉じられた状態の各ロッカーアーム6〜8の位置を基準位置とすると、シャフト挿通孔12の内周面の右端部であって、基準位置において最もバルブの開弁方向に位置する部分を中心として周方向に前後60°〜65°の範囲をいう。第2部分72は、シャフト挿通孔12の内周面の左端部であって、基準位置において最もバルブの閉弁方向に位置する部分を中心として周方向に前後60°〜65°の範囲をいう。
【0023】
具体的には、
図4、
図6及び
図7に示すように、作動油溝37は、シャフト挿通孔12の内周面の右端部であってバルブの閉弁方向に対応する部分に配置され、内周面の周方向に略180°の範囲の長さをもって延設されている。また、
図4、
図5及び
図7に示すように、潤滑油溝39は、シャフト挿通孔12の内周面の左端部であってバルブの開弁方向に対応する部分に配置され、内周面の周方向に略120°の範囲の長さをもって延設されている。他の実施形態では、作動油溝37及び潤滑油溝39は、内周面の周方向に30°〜180°の任意の範囲に延在させてよく、範囲が狭いほどシャフト挿通孔12とロッカーシャフト5との間の潤滑油の圧力を保持する観点で好ましく、例えば30°〜120°、30°〜90°、30°〜60°の範囲にあることが好ましい。以上のように配置された作動油溝37に連通するように作動油路33が配置され、潤滑油溝39に連通するように潤滑油路35が配置されている。
【0024】
左従ロッカーアーム8の作動油溝38と潤滑油溝40は、左従ロッカーアーム7と左右対称形をなすように、シャフト挿通孔13の内周面の主ロッカーアーム6側と相反する端部(左端部)であってバルブの開弁方向に対応する第3部分73(第1部分に対応)と、シャフト挿通孔12の内周面の主ロッカーアーム6側の端部(右端部)であってバルブの閉弁方向に対応する第4部分74(第2部分に対応)とを避けるように配置されている。より詳細には、第3部分73は、シャフト挿通孔13の内周面の左端部であって、基準位置において最もバルブの開弁方向に位置する部分を中心として周方向に前後60°〜65°の範囲をいう。第4部分74は、シャフト挿通孔12の内周面の右端部であって、基準位置において最もバルブの閉弁方向に位置する部分を中心として周方向に前後60°〜65°の範囲をいう。具体的には、作動油溝38は、シャフト挿通孔13の内周面の左端部であってバルブの閉弁方向に対応する部分に、内周面の周方向に略180°の範囲の長さをもって延設されている。また、潤滑油溝40は、シャフト挿通孔13の内周面の右端部であってバルブの開弁方向に対応する部分に、内周面の周方向に略120°の範囲の長さをもって延設されている。作動油溝38と潤滑油溝40の延在範囲は、作動油溝37及び潤滑油溝39と同様に所定の範囲で変更可能である。以上のように配置された作動油溝38に連通するように作動油路34が配置され、潤滑油溝40に連通するように潤滑油路36が配置されている。
【0025】
バルブの閉弁方向に対応する部分に配置された潤滑油溝39、40は、作動油溝37、38よりもシャフト挿通孔12、13の径方向における深さが浅く形成され、体積が小さくなっている。
【0026】
図2及び
図3に示すように、主ロッカーアーム6は、ローラ受容孔21とシャフト挿通孔11とを連通する潤滑油路41を有している。潤滑油路41のシャフト挿通孔11側の開口端は、シャフト挿通孔11の周方向に所定の範囲で延在する潤滑油溝42の底部に連通している。
【0027】
ロッカーシャフト5は、軸線方向に延在するシャフト側低リフト油路45、シャフト側高リフト油路46及びシャフト側潤滑油路47を有している。シャフト側低リフト油路45、シャフト側高リフト油路46及びシャフト側潤滑油路47のそれぞれからは、ロッカーシャフト5の外周面に開口する径方向油路が形成されている。これらの径方向油路を介して、シャフト側低リフト油路45は作動油溝37に連通し、シャフト側高リフト油路46は作動油溝38に連通し、シャフト側潤滑油路47は潤滑油溝39、40,42に連通している。これにより、シャフト側低リフト油路45から作動油路33にオイルが供給され、シャフト側高リフト油路46から作動油路34にオイルが供給され、シャフト側潤滑油路47から各潤滑油路35、36、41にオイルが供給される。
【0028】
図1及び
図3に示すように、右従ロッカーアーム7のスリーブ26内には第1切換ピン50が、主ロッカーアーム6のスリーブ25内には第2切換ピン51が、左従ロッカーアーム8のスリーブ27には第3切換ピン52が、それぞれスリーブ26、25、27の軸線方向に摺動自在に挿入されている。第1切換ピン50は、右従ロッカーアーム7のピン孔19の底壁と対向する端部にばね受孔53を有している。ばね受孔53の底部とピン孔19の底壁との間には圧縮コイルばね54が介装され、第1切換ピン50は左方(ピン孔19から突出する側)に付勢されている。
【0029】
作動油路33、34のいずれにもオイルが供給されていない状態では、
図3に示すように、圧縮コイルばね54の付勢力によって第1切換ピン50、第2切換ピン51、第3切換ピン52は左方へと移動し、第3切換ピン52が左従ロッカーアーム8のピン孔19の底壁に突き当たった状態となる。この状態では、第1切換ピン50が右従ロッカーアーム7内のみに配置され、第2切換ピン51が主ロッカーアーム6内のみに配置され、第3切換ピン52が左従ロッカーアーム8内のみに配置され、3つのロッカーアーム6、7、8の連結が解除された状態となり、各ロッカーアーム6、7、8はそれぞれ独立して回動する。また、作動油路33にオイルが供給された状態では、圧縮コイルばね54の付勢力に加えて第1切換ピン50を左方へと押圧する油圧が加わり、
図3と同様の状態になる。以上のように作動油路33、34のいずれにもオイルが供給されていない状態及び作動油路33にオイルが供給された状態を低リフトモードという。
【0030】
作動油路34にオイルが供給された場合は、
図1に示すように、オイルが第3切換ピン52を右方へと押圧し、圧縮コイルばね54の付勢力に抗して第1切換ピン50、第2切換ピン51、第3切換ピン52が右方へと移動し、第1切換ピン50が右従ロッカーアーム7のピン孔18の底壁に突き当たった状態となる。この状態では、第2切換ピン51が右従ロッカーアーム7と主ロッカーアーム6を跨ぐ位置に配置され、かつ第3切換ピン52が主ロッカーアーム6と左従ロッカーアーム8とを跨ぐ位置に配置され、3つのロッカーアーム6、7、8が互いに連結された状態となり、一体に回動する。以上のような作動油路34にオイルが供給された状態を高リフトモード(第1モード)という。
【0031】
カムシャフト4は、主ロッカーアーム6のローラ29を押圧する高リフト用カム56と、従ロッカーアーム7、8のローラ30、31を押圧する低リフト用カム57、58とを有している。
【0032】
低リフトモードでは、高リフト用カム56及び低リフト用カム57、58が各ロッカーアーム6、7、8を押圧し、回動させる。このとき、主ロッカーアーム6は、従ロッカーアーム7、8と連結されていないため、従ロッカーアーム7、8が低リフト用カム57、58によって直接に駆動され、吸気バルブ2を開閉する。一方、各ロッカーアーム6、7、8が互いに連結された高リフトモードでは、従ロッカーアーム7、8が主ロッカーアーム6及び切換ピン50、46を介して高リフト用カム56に間接的に駆動され、吸気バルブ2を開閉する。高リフト用カム56が主ロッカーアーム6を押圧し、3つのロッカーアーム6、7、8が一体となって回動する際には、低リフト用カム57、58は従ロッカーアーム7、8に接触しないようになっている。
【0033】
図8に示すように、高リフトモードでは、従ロッカーアーム7、8はシャフト挿通孔12、13の軸線がロッカーシャフト5の軸線に対して傾斜し易くなる。
図9の説明図に示すように、高リフトモードにおいては、従ロッカーアーム7、8は、高リフト用カム56から主ロッカーアーム6に加わる荷重60を切換ピン51、52から荷重61、62として受けると共に、バルブスプリング15によって付勢されたバルブ2から荷重63、64を受ける。切換ピン51、52は、左右方向において従ロッカーアーム7,8とオーバーラップしている範囲が比較的小さいことから、切換ピン51、52からの荷重は、左右方向において従ロッカーアーム7、8の主ロッカーアーム6側の端部に主として加わる。一方、バルブ2からの荷重は、従ロッカーアーム7,8の左右方向における中央部に加わる。そのため、切換ピン51、52から受ける荷重61、62と、バルブ2から受ける荷重63、64とが、互いにオフセットし、従ロッカーアーム7、8にモーメント65、66が生じる。このモーメント65によって、従ロッカーアーム7は、シャフト挿通孔12の内周面の主ロッカーアーム6側と相反する端部(右端部)であって開弁方向に対応する第1部分71がロッカーシャフト5に接触し易くなると共に、シャフト挿通孔12の内周面の主ロッカーアーム6側の端部(左端部)であって閉弁方向に対応する第2部分72がロッカーシャフト5に接触し易くなる。また、従ロッカーアーム8は、シャフト挿通孔13の内周面の主ロッカーアーム6側と相反する端部(左端部)であって開弁方向に対応する第3部分73がロッカーシャフト5に接触し易くなると共に、シャフト挿通孔12の内周面の主ロッカーアーム6側の端部(右端部)であって閉弁方向に対応する第4部分74がロッカーシャフト5に接触し易くなる。
【0034】
本実施形態に係る可変動弁装置1では、従ロッカーアーム7、8のシャフト挿通孔12、13の内周面のうちで、ロッカーシャフト5に接触し易くなる第1〜第4部分71〜74を避けて、作動油溝37、38及び潤滑油溝39、40を配置したため、第1〜第4部分71〜74においてロッカーシャフト5との間に保持する潤滑油の圧力を高め、ロッカーシャフト5との接触を抑制することができる。作動油溝37、38及び潤滑油溝39、40を設けた部分は、シャフト挿通孔12、13とロッカーシャフト5との間隙の体積が増大するため、間隙に保持された潤滑油の圧力を増大させることが困難である。
【0035】
また、バルブ2からの荷重により、シャフト挿通孔12、13の内周面のうちでバルブの開弁方向に対応する部分の方が、バルブの閉弁方向に対応する部分よりもロッカーシャフト5に接触し易くなるため、バルブの開弁方向に対応する部分に配置された潤滑油溝39、40の体積をバルブの閉弁方向に対応する部分に配置された作動油溝37、38よりも小さくし、バルブの開弁方向に対応する部分の潤滑油の圧力低下を抑制している。
【0036】
ロッカーシャフト5と従ロッカーアーム7、8とは、エンジン回転数が低いときほど、接触し易くなる。エンジン回転数が低い場合、カムシャフト4がロッカーアーム6〜8を押すストロークが最大になるとき、すなわち、カムシャフト4のカム56〜58の頂点がロッカーアームに接触するときに、カムシャフト4からロッカーアーム6〜8に加わる荷重が最大になる。このとき、カム56〜58の頂点は勾配(突出長さの変化量)が最小となっているため、カム56〜58の頂点がロッカーアーム6〜8に接触する際には、ロッカーアーム6〜8の回転速度が小さくなる。ロッカーアーム6〜8の回転速度が小さい場合には、ロッカーアーム6〜8のシャフト挿通孔11〜13とロッカーシャフト5との間に引き込まれる潤滑油が少なくなる。すなわち、シャフト挿通孔11〜13とロッカーシャフト5との間の油膜が薄化する。以上のように、エンジン回転数が低い場合には、カムシャフト4からロッカーアーム6〜8に加わる荷重が最大になるタイミングと、ロッカーアーム6〜8及びロッカーシャフト5間の油膜が薄化するタイミングとが一致するため、ロッカーアーム6〜8がロッカーシャフト5に接触し易くなる。これに対して、エンジン回転数が高い場合には、カムシャフト4がロッカーアーム6〜8を押し込む際の加速度が最大になるとき、すなわちカムシャフト4のカム山56〜58の勾配が最も大きい部分がロッカーアーム6〜8に接触するときに、カムシャフト4からロッカーアーム6〜8に加わる荷重が最大になるため、カムシャフト4からロッカーアーム6〜8に加わる荷重が最大になるタイミングと、ロッカーアーム6〜8及びロッカーシャフト5間の油膜が薄化するタイミングとが一致せず、ロッカーアーム6〜8がロッカーシャフト5に接触し難くなる。以上より、本実施形態の可変動弁装置1は、低リフトモードから高リフトモードへの切り替えをエンジン回転数が比較的低い状態(例えば1000rpm)に行う場合において、特に有効である。
【0037】
(第2実施形態)
第2実施形態に係るエンジンは、2つの吸気バルブと2つの排気バルブとを有する4バルブSOHC型のエンジンである。第2実施形態に係る可変動弁装置100は、1つの気筒に対応する2つの吸気バルブ101を駆動するためのものである。
図10に示すように、可変動弁装置100は、ロッカーシャフト103と、右主ロッカーアーム(第1ロッカーアーム)106、左主ロッカーアーム(第1ロッカーアーム)107及び従ロッカーアーム(第2ロッカーアーム)108からなるロッカーアームとを有している。
図11及び
図12に示すように、主ロッカーアーム106、107及び従ロッカーアーム108は、基端部に断面円形状の貫通孔であるシャフト挿通孔111、112、113を有している。シャフト挿通孔111、112、113にロッカーシャフト103が挿通されることによって、ロッカーシャフト103に主ロッカーアーム106、107及び従ロッカーアーム108がそれぞれ回動可能に支持されている。従ロッカーアーム108は、左右の主ロッカーアーム106、107の間に配置され、互いに摺接している。バルブ101は、開弁方向及び閉弁方向の直線状に変位可能にシリンダヘッドに支持されており、シリンダヘッドとの間に介装された圧縮コイルばねであるバルブスプリング109によって閉弁方向に付勢されている。
【0038】
図11及び
図12に示すように、主ロッカーアーム106、107は、それぞれシャフト挿通孔111、112が形成された部分からシャフト挿通孔111、112の一の径方向に突出し、その先端部に回転可能にローラ115、116を支持している。従ロッカーアーム108は、シャフト挿通孔113が形成された部分から、シャフト挿通孔113の径方向であって、主ロッカーアーム106、107のローラ115、116を有する突出端と略相反する方向に突出し、その先端部に吸気バルブ101の2つのステムの上端にそれぞれ当接するタペット調整ねじ117が進退可能に螺着されている。主ロッカーアーム106、107は、ローラ115、116が後述するカムシャフト150に接触する回転方向へとロストモーションスプリング130によって付勢されている。
【0039】
図12〜
図15に示すように、主ロッカーアーム106、107及び従ロッカーアーム108は、シャフト挿通孔111、112、113の径方向であって、主ロッカーアーム106、107のローラ115、116を有する突出端と略直交し、バルブ101側と相反する側に突出し、その突出部分にシャフト挿通孔111、112、113と平行の軸線を有する円孔であるピン孔117、118、119を有している。従ロッカーアーム108のピン孔119は、従ロッカーアーム108を貫通し、左右方向に開口している。一方、左右の主ロッカーアーム106、107のピン孔117、118は、従ロッカーアーム108側に開口し、他端が底壁によって閉塞されている。各ピン孔117、118、119は、互いに同軸と成り得る位置に形成されている。
【0040】
右主ロッカーアーム106のピン孔117は、左主ロッカーアーム107のピン孔118よりも大径に形成されている。従ロッカーアーム108のピン孔119は、左端部にピン孔118と同径となる小径部120を有し、他の部分にピン孔117と同径となる大径部121を有し、小径部120と大径部121の境界に段部122を有している。
【0041】
従ロッカーアーム108のピン孔119の大径部121には、右端が底壁によって閉塞される一方、左端が開口した円筒状の第1切換ピン123が摺動可能に受容されている。第1切換ピン123は、大径部121と左右方向の長さが一致するように形成されており、その左端面が段部122に当接した状態で、その底壁がピン孔119の右端開口に一致するようになっている。第1切換ピン123の内孔には、左端が底壁によって閉塞される一方、右端が開口した円筒状の第2切換ピン124が摺動可能に受容されている。第2切換ピン124は、第1切換ピン123の内孔の左右方向長さ以下に形成されており、第1切換ピン123の内孔に全てが没入可能となっている。
【0042】
右主ロッカーアーム106のピン孔117内には、左端が底壁によって閉塞される一方、右端が開口した円筒状の第3切換ピン125が摺動可能に受容されている。第3切換ピン125は、ピン孔117よりも左右方向長さが短く形成されている。左主ロッカーアーム107のピン孔118内には、右端が底壁によって閉塞される一方、左端が開口した円筒状の第4切換ピン126が摺動可能に受容されている。第4切換ピン126は、ピン孔118と左右方向長さが一致するように形成されており、その左端面がピン孔118の底壁に当接した状態で、その底壁がピン孔118の右端開口に一致するようになっている。
【0043】
第1切換ピン123の底壁と第2切換ピン124の底壁との間には、圧縮コイルばね127が介装されており、第1切換ピン123は第2切換ピン124に対して右方に、第2切換ピン124は第1切換ピン123に対して左方に付勢されている。第1切換ピン123は、その外周面と内周面とを連通する貫通孔128を有している。
【0044】
右主ロッカーアーム106は、ピン孔117の底壁近傍と、シャフト挿通孔112とを連通する休止油路131を有している。左主ロッカーアーム107は、ピン孔118の底壁近傍と、シャフト挿通孔113とを連通する高リフト油路132を有している。従ロッカーアーム108は、ピン孔119の大径部121とシャフト挿通孔113とを連通する低リフト油路133を有している。低リフト油路133の大径部121側の開口端は、大径部121の周方向に沿って延設された周溝136の底部に連続している。周溝136には、貫通孔128が対向している。
【0045】
休止油路131のシャフト挿通孔112側の開口端は、シャフト挿通孔112の周方向に所定の範囲で延在する休止油溝141の底部に連通している。高リフト油路132のシャフト挿通孔113側の開口端は、シャフト挿通孔113の周方向に所定の範囲で延在する高リフト油溝142の底部に連通している。低リフト油路133のシャフト挿通孔113側の開口端は、シャフト挿通孔113の周方向に所定の範囲で延在する低リフト油溝143の底部に連通している。
【0046】
低リフト油溝143は、シャフト挿通孔113の内周面の右主ロッカーアーム106側と相反する端部(左端部)であってバルブの開弁方向に対応する第5部分161と、シャフト挿通孔113の内周面の右主ロッカーアーム106側の端部(右端部)であってバルブの閉弁方向に対応する第6部分162とを避けるように配置されている。より詳細には、第5部分161は、バルブ101が閉じられた状態の各ロッカーアーム106〜108の位置を基準位置とすると、シャフト挿通孔113の内周面の左端部であって、基準位置において最もバルブの開弁方向に位置する部分を中心として周方向に前後60°〜65°の範囲をいう。第6部分162は、シャフト挿通孔113の内周面の右端部であって、基準位置においてバルブの閉弁方向に位置する部分を中心として周方向に前後60°〜65°の範囲をいう。具体的には、
図16及び
図17に示すように、低リフト油溝143は、シャフト挿通孔113の内周面の左端部であってバルブの閉弁方向に対応する部分に配置され、内周面の周方向に略180°の範囲の長さをもって延設されている。他の実施形態では、低リフト油溝143は、内周面の周方向に30°〜180°の任意の範囲に延在させてよく、範囲が狭いほどシャフト挿通孔113とロッカーシャフト5との間の潤滑油の圧力を保持する観点で好ましく、例えば30°〜120°、30°〜90°、30°〜60°の範囲にあることが好ましい。以上のように配置された低リフト油溝143に連通するように低リフト油路133が配置されている。
【0047】
ロッカーシャフト103は、軸線方向に延在するシャフト側休止油路146、シャフト側高リフト油路147及びシャフト側低リフト油路148を有している。シャフト側休止油路146、シャフト側高リフト油路147及びシャフト側低リフト油路148のそれぞれからは、ロッカーシャフト103の外周面に開口する径方向油路が形成されている。これらの径方向油路を介して、シャフト側休止油路146は休止油溝141に連通し、シャフト側高リフト油路147は高リフト油溝142に連通し、シャフト側低リフト油路148は低リフト油溝143に連通している。これにより、シャフト側休止油路146から休止油路131にオイルが供給され、シャフト側高リフト油路147から高リフト油路132にオイルが供給され、シャフト側低リフト油路148から低リフト油路133にオイルが供給される。
【0048】
休止油路131にオイルが供給された場合は、
図13に示すように、圧縮コイルばね127の付勢力に抗して、第1切換ピン123が段部122に突き当たるまで、第3切換ピン125及び第1切換ピン123が左方に移動する。また、圧縮コイルばね127の付勢力によって、第2切換ピン124が第4切換ピン126を左方に押圧し、第4切換ピン126が左主ロッカーアーム107のピン孔118の底壁に突き当たる。この状態では、第1切換ピン123及び第2切換ピン124が従ロッカーアーム108のピン孔119内のみに配置され、第3切換ピン125が右主ロッカーアーム106のピン孔117内のみに配置され、第4切換ピン126が左主ロッカーアーム107のピン孔118内のみに配置され、3つのロッカーアーム106、107、108の連結が解除された状態となり、各ロッカーアーム106、107、108はそれぞれ独立して回動する。以上のような休止油路131にオイルが供給された状態を休止モードという。
【0049】
休止油路131、高リフト油路132及び低リフト油路133のいずれにもオイルが供給されていない場合は、
図14に示すように、圧縮コイルばね127の付勢力によって第1切換ピン123及び第3切換ピン125は右方に移動し、第3切換ピン125が右主ロッカーアーム106のピン孔117の底壁に突き当たり、第1切換ピン123が右主ロッカーアーム106と従ロッカーアーム108とを跨ぐ位置に配置される。一方、第2切換ピン124及び第4切換ピン126は左方に移動し、第4切換ピン126が左主ロッカーアーム107のピン孔118の底壁に突き当たり、第4切換ピン126がピン孔118内に全て収容された状態となる。この状態では、右主ロッカーアーム106と従ロッカーアーム108とが第1切換ピン123を介して連結され、一体となって回動する。一方、左主ロッカーアーム107は、右主ロッカーアーム106及び従ロッカーアーム108と独立して回動する。以上のような休止油路131、高リフト油路132及び低リフト油路133のいずれにもオイルが供給されていない状態を低リフトモード(第1モード)という。なお、低リフト油路133にオイルが供給された場合にも、低リフトモードと同様の状態となる。
【0050】
高リフト油路132にオイルが供給された場合は、
図15に示すように、第4切換ピン126が右方に移動し、圧縮コイルばね127の付勢力に抗して第2切換ピン124の全てが第1切換ピン123の内孔内に収容され、第1切換ピン123が右主ロッカーアーム106のピン孔117内に突入し、第3切換ピン125が右主ロッカーアーム106のピン孔117の底壁に突き当たる。この状態では、第4切換ピン126が左主ロッカーアーム107と従ロッカーアーム108との境界を跨ぎ、第1切換ピン123が右主ロッカーアーム106と従ロッカーアーム108との境界を跨ぎ、3つのロッカーアーム106、107、108が互いに連結された状態となり、一体に回動する。以上のような高リフト油路132にオイルが供給された状態を高リフトモード(第1モード)という。
【0051】
図11に示すように、カムシャフト150は、右主ロッカーアーム106のローラ115を押圧する低リフト用カム151と、左主ロッカーアーム107のローラ116を押圧する高リフト用カム152とを有している。
【0052】
低リフトモードでは、高リフト用カム152及び低リフト用カム151が主ロッカーアーム106、107をそれぞれ押圧し、回動させる。このとき、左主ロッカーアーム107は、従ロッカーアーム108と連結されていないため、従ロッカーアーム108が右主ロッカーアーム106及び第1切換ピン123を介して低リフト用カム151によって駆動され、吸気バルブ101を開閉する。一方、高リフトモードでは、高リフト用カム152が左主ロッカーアーム107を押圧し、従ロッカーアーム108が左主ロッカーアーム107及び第4切換ピン126を介して高リフト用カム152によって駆動され、吸気バルブ101を開閉する。このとき、右主ロッカーアーム106が従ロッカーアーム108と一体に回動することによって、低リフト用カム151は右主ロッカーアーム106に接触しないようになっている。休止モードでは、高リフト用カム及び低リフト用カムが主ロッカーアーム106、107をそれぞれ押圧し、回動させるが、従ロッカーアーム108は主ロッカーアーム106、107のいずれにも連結されていないため、従ロッカーアーム108は駆動されない。
【0053】
図18の(A)及び(B)に示すように、低リフトモード及び高リフトモードのいずれの場合も、従ロッカーアーム108はシャフト挿通孔113の軸線がロッカーシャフト103の軸線に対して傾斜し易くなる。
図18(A)に示すように、低リフトモードにおいては、従ロッカーアーム108は、低リフト用カム151から右主ロッカーアーム106に加わる荷重170を第1切換ピン123から荷重171として受けると共に、バルブスプリング109によって付勢されたバルブ101から荷重172を受ける。第1切換ピン123は、左右方向において従ロッカーアーム108とオーバーラップしている範囲が比較的小さいことから、第1切換ピン123からの荷重は、左右方向において従ロッカーアーム108の右主ロッカーアーム106側の端部に主として加わる。一方、バルブ101からの荷重は、従ロッカーアーム108の左右方向における中央部に加わる。そのため、第1切換ピン123から受ける荷重171と、バルブ101から受ける荷重172とが、互いにオフセットし、従ロッカーアーム108にモーメント173が生じる。このモーメント173によって、従ロッカーアーム108は、シャフト挿通孔113の内周面の右主ロッカーアーム106側と相反する端部(左端部)であって開弁方向に対応する第5部分161がロッカーシャフト103に接触し易くなると共に、シャフト挿通孔113の内周面の右主ロッカーアーム106側の端部(右端部)であって閉弁方向に対応する第6部分162がロッカーシャフト103に接触し易くなる。
【0054】
一方、
図18(B)に示すように、高リフトモードにおいては、従ロッカーアーム108は、高リフト用カム152から左主ロッカーアーム107に加わる荷重175を第4切換ピン126から荷重176として受けると共に、バルブスプリング109によって付勢されたバルブ101から荷重172を受ける。第4切換ピン126は、左右方向において従ロッカーアーム108とオーバーラップしている範囲が比較的小さいことから、第4切換ピン126からの荷重は、左右方向において従ロッカーアーム108の左主ロッカーアーム107側の端部に主として加わる。一方、バルブ101からの荷重は、従ロッカーアーム108の左右方向における中央部に加わる。そのため、第4切換ピン126から受ける荷重176と、バルブ101から受ける荷重172とが、互いにオフセットし、従ロッカーアーム108にモーメント177が生じる。このモーメント177によって、従ロッカーアーム108は、シャフト挿通孔113の内周面の左主ロッカーアーム107側と相反する端部(右端部)であって開弁方向に対応する第7部分163がロッカーシャフト103に接触し易くなると共に、シャフト挿通孔113の内周面の左主ロッカーアーム107側の端部(左端部)であって閉弁方向に対応する第8部分164がロッカーシャフト103に接触し易くなる。
【0055】
第2実施形態では、低リフト油溝143は、低リフトモード時において、従ロッカーアーム108のシャフト挿通孔113のうちで、ロッカーシャフト103との接触によって面圧が高くなる第5部分161及び第6部分162を避けて配置される一方、高リフトモード時において、面圧が高くなる第8部分164に配置されている。これは、自動車用エンジンのオイルポンプが、クランクシャフトによって駆動され、エンジン回転数の増加に応じて吐出量が増大することに起因する。高リフトモードが採用されるエンジン回転数が高い領域では、低リフトモードが採用されるエンジン回転数が低い領域よりもオイルポンプからのオイル供給量が多く、シャフト挿通孔113とロッカーシャフト103との間に供給される潤滑油圧力が増大する。そのため、低リフトモード時において、面圧が高くなる第5部分161及び第6部分162を優先的に避けて低リフト油溝143を配置することが好ましい。また、上述したように、エンジン回転数が低い場合には、カムシャフトから受ける荷重が最大となるタイミングとロッカーシャフト103とロッカーアーム106〜108との間の油膜が薄化するタイミングとが一致し、エンジン回転数が高い場合よりもロッカーシャフト103とロッカーアーム106〜108とが接触し易くなる。
【0056】
また、バルブ101からの荷重により、シャフト挿通孔113の内周面のうちでバルブの開弁方向に対応する部分の方が、バルブの閉弁方向に対応する部分よりもロッカーシャフト5に接触し易くなるため、閉弁方向に対応する部分に低リフト油溝143を配置することが好ましく、本実施形態の配置位置は最適といえる。
【0057】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。上記実施形態では、1つ主ロッカーアームと2つの従ロッカーアームからなる第1実施形態と、2つの主ロッカーアームと1つの従ロッカーアームからなる第2実施形態を例示したが、本発明は、少なくとも1つの主ロッカーアームと少なくとも1つの従ロッカーアームとを有する構成であれば成立することに留意されたい。また、実施形態では、吸気バルブを駆動するロッカーアームに適用した例について例示したが、排気バルブを駆動するロッカーアームにも適用できることに留意されたい。