(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
一般に、紙幣を取り扱う自動販売機等の機器本体内部には、投入された紙幣が真券であるか否かを判別するとともに、真券と判別された紙幣のみを積載収容するようにした紙幣処理装置が搭載されている。
【0003】
この紙幣処理装置は、大別すると、紙幣投入口から投入された紙幣を装置本体内部へ搬送する紙幣搬送手段および紙幣搬送路と、搬送された紙幣の真偽を識別する紙幣識別手段を有する紙幣識別部と、真券と判別された紙幣を積載収容する紙幣収納手段を有する紙幣収納部とを有して構成されるものであり、例えば、特許文献1(特開平7−272063号公報)等に示すように、紙幣識別部と紙幣収納部とが一体的に設けられるものが開発されている。
【0004】
上記紙幣処理装置の紙幣収納手段は、紙幣搬送路に連通するリフトテーブルと、該リフトテーブルの水平姿勢を維持したまま垂直方向へ上下動させるパンタグラフ構造のリンク機構と、該リンク機構を駆動させる駆動手段とからなるものが一般的であり、前記リンク機構における交叉するリンクアームの交叉点にスタックローラを配し、該スタックローラに接する傾斜面を有したスタックアームを具え、該スタックアームを往復スライド移動させた際に、前記スタックローラが前記傾斜面によって、前記往復スライド移動の方向に垂直な方向に移動して、前記リフトテーブルを往復運動させるものである。
【0005】
そして、該リフトテーブルが、前記紙幣搬送路内の収納待機位置にある紙幣を押圧することによって、前記リフトテーブルの前記紙幣搬送路に対して対向する位置に配設した紙幣収納部に収納するものである。
【0006】
ところで、紙幣受入および搬送可能な待機状態において、前記リフトテーブルは、前記紙幣搬送路に突出しないことが重要であり、前記リフトテーブルの初期位置に維持するために、前記リフトテーブルと装置内部の所定の位置との間に引張スプリングを設けている。
【0007】
前記リフトテーブルの初期位置を確実に維持するためには、各部の組立誤差を極力小さくし、前記引張スプリングの引張力を大きくする必要がある。
【0008】
しかしながら、前記リフトテーブルの待機状態において、外部から悪戯等による衝撃が加わった場合は、前記リフトテーブルが引張スプリングの引張力に抗して紙幣搬送路内に突出し、紙幣詰まりになる虞がある。
【0009】
また、上記リフトテーブルの紙幣搬送路内への突出を防止するために、前記引張スプリングの引張力を大きくした場合、紙幣収納時における前記スタックアームの駆動力を大きくする必要が生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明は、上述した事情に鑑み、リフトテーブルによる押圧で紙幣を収納する紙幣処理装置において、外部からの衝撃あるいは組立誤差によって、前記リフトテーブルの待機位置が移動することなく、その待機状態を確実に維持することが可能である紙幣処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決するために、本発明の紙幣処理装置は、紙幣を収納待機位置まで搬送する紙幣搬送手段および紙幣搬送路と、紙幣を前記収納待機位置
において水平姿勢で停止するように前記紙幣搬送手段を制御する紙幣停止位置制御手段と、前記収納待機位置にある紙幣を該紙幣の
上面側から略垂直下方に押し込んで積載収納する紙幣収納手段および紙幣収納部とを具え、前記紙幣収納手段は、前記収納待機位置にある紙幣の
上面に当接するリフトテーブルと、該リフトテーブルを
略垂直上下方向に移動するためのパンタグラフ構造の交叉するリンク機構と、該リンク機構を駆動するための駆動手段と、前記リフトテーブルを常時
上方に付勢する付勢手段とからなり、前記駆動手段は、
水平方向に往復スライド移動して、かつ、前記リンク機構の交叉点に配したスタックローラを移動させるスタックアームを有し、
水平方向に突出するリブ状の突起部を
該スタックアームに形成し、前記突起部と嵌合する門形状の受部を前記リフトテーブルの
上面に形成し、待機状態においては、前記突起部が前記受部に嵌合し、前記スタックアームが移動して前記スタックローラに当接するまでの間に、
前記スタックアームの移動に伴って前記突起部
が前記受部
から外れて嵌合が解除されるようにしている。
【発明の効果】
【0013】
このように、スタックアームに形成したリブ状の突起部と、スタックアームに形成したリブ状の突起部とのロックおよびロックの解除は、スタックアームのスライド運動に伴うものであり、このスタックアームのスライド運動の方向は、リフトテーブルが紙幣搬送路内に突出する方向と略直交する方向であるので、リフトテーブルの待機状態を維持する力は、引張スプリングの引張力に比べて非常に大きなものとなる。
【0014】
したがって、本発明の紙幣処理装置は、外部からの衝撃や組立誤差によってリフトテーブルが待機状態から移動するのを確実に防止することができるものであり、さらに、引張スプリングの引張力を大きくする必要がないので、スタックアームの駆動力を大きくする必要がなく、装置全体の小型軽量化に寄与し、収納紙幣を増加させることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る紙幣処理装置の実施例を示して詳述する。
図1乃至
図3に示す紙幣処理装置1は、紙幣投入口2から投入された紙幣を搬送する紙幣搬送手段3および紙幣搬送路4と、この紙幣搬送路4の途中に配設されて紙幣の位置を検出および紙幣の真偽を識別する図示せぬ紙幣識別手段を有する紙幣識別部5と真券と判別された紙幣を紙幣搬送路4の下流端における所定の位置(収納待機位置と称す)に停止させる紙幣停止位置制御手段6と、商品が購入された際に収納待機位置にある紙幣を上方から押し込んで水平に積載収納する紙幣収納手段7および紙幣収納部8とから主に構成される。
【0017】
紙幣搬送手段3は、紙幣の両面にそれぞれ当接する搬送ベルト31および搬送ローラ32と、これらを駆動する図示せぬモータ等の搬送駆動手段とから構成されるものであり、対向する搬送ベルト31および搬送ローラ32によって、紙幣投入口2を上流端とし、紙幣の待機位置を下流端とする紙幣搬送路4を形成している。
【0018】
そして、紙幣搬送路4の下流端である収納待機位置において、紙幣の搬送方向に対して左右側には、紙幣の長手方向側縁を把持してガイドするスリット(凹溝)を有する一対のスタックガイド9が配設されている。
【0019】
紙幣収納部8は、紙幣処理装置1本体の下部であってスタックガイド9の下方に設けられ、筐体からなるスタッカー81と、スタッカー81内に水平に配置される矩形の板状であって上面に紙幣を積載するスタックプレート82と、このスタックプレート82を下面から紙幣搬送路4方向に常時押圧する圧縮スプリング83とを具備している。
【0020】
他方、紙幣収納手段7は、スタックガイド9の上方に設けられ、紙幣長と略同一の長さ寸法と一対のスタックガイド9の距離幅よりも狭い幅寸法とを持つ矩形の板状に形成されてスタックプレート82に対向するよう水平に配置されるリフトテーブル71と、リフトテーブル71の水平姿勢を維持したまま垂直方向へ上下動させるパンタグラフ構造のリンク機構72と、リンク機構72を駆動する駆動手段73とから主に構成される。
【0021】
リンク機構72は、図示奥行方向に並列して配置される2組のリンク機構72からなり、それぞれのリンク機構72は、それぞれ交叉した第1のリンクアーム74と第2のリンクアーム75とを有するパンタグラフ方式の機構であって、第1のリンクアーム74の基端74aと、第2のリンクアーム75の基端75aとは、それぞれ紙幣収納装置1本体内部の所定の位置に回転自在に支持され、第1のリンクアーム74の自由端74bは、リフトテーブル71の所定の位置に回転自在に支持され、第2のリンクアーム75の自由端75bは、リフトテーブル71に沿って図示左右方向にスライド自在かつ回転自在に支持されている。
【0022】
そして、第1のリンクアーム74と第2のリンクアーム75とを、交叉点において回転自在に連結しており、2組のリンクにおけるそれぞれの交叉点を鉛直軸で結ぶようにして、該鉛直軸にはスタックローラ76を配設している。
【0023】
駆動手段73は、図示右方側の先端に傾斜面77aを有するスタックアーム77と、スタックアーム77を図示左右方向に往復スライドさせるモーターカム78と、モーターカム78を回転させる図示せぬモータとを有し、スタック―アーム77が図示右方向に移動した際に、傾斜面77aがスタックローラ76に当接し(
図2)、さらにスタックアーム77が図示右方に移動した際に、傾斜面77aがスタックローラ76を押圧することによって、スタックローラ76が下方に移動し、リフトテーブル71が下方に移動するようにしている(
図3)。
【0024】
このリフトテーブル71が下方に移動すると、収納待機位置にある紙幣は、スタックガイド9の下面側に押し込められて、スタッカー81内に収納された状態になるようにしている。
【0025】
ここで、リフトテーブル71が、
図3に示す最大移動位置に到達した後、逆行を開始し、スタックガイド9まで至ると、前記紙幣の長手方向側縁部は、スタックガイド9の下面に当接してスタッカー81内に留まる。
【0026】
そして、スタッカー81内に積載収納された紙幣は、圧縮スプリング83に付勢されるスタックプレート82により、スタックガイド9の下面に押し付けられて、スタックプレート82の上面とスタックガイド9の下面によって押圧挟持されて、収納状態が保持されるものである。
【0027】
さらに、リフトテーブル71と紙幣処理装置1内部の所定の位置との間には引張スプリング79を配設して、リフトテーブル71の下面がスタックガイド9より上方に位置するように常時付勢しており、これによって、スタックローラ76が傾斜面77aによって押圧されていない状態においては、リフトテーブル71が紙幣搬送路4内に突出しないようにしている。
【0028】
上述のとおり、本発明のスタックアーム77は、
図1に示す待機状態において、スタックローラ76との間に間隙を設けており、スタックアーム77の図示右方向への移動開始から遅れて、傾斜面77aがスタックローラ76に当接するようにしている。
【0029】
また、スタックアーム77にリフトテーブル71の移動方向に直交する方向に突出するリブ状の突起部77bを形成し、リフトテーブル71の上面に門形状の受部77aを形成しており、待機状態においては、突起部77bが受部71aに嵌合してリフトテーブル71が下方に移動しないようにロックし、スタックアーム77が図示左方にスライド移動することによってロックを解除するようにしている。
【0030】
次に、上述の如く構成された紙幣処理装置1の各部の作用を紙幣収納動作として説明する。
【0031】
紙幣挿入口2内に挿入された紙幣が、図示せぬセンサによって紙幣の挿入を検出されると、図示せぬモータ等の搬送駆動手段によって、搬送ベルト31および搬送ローラ32が図示矢印方向に駆動し、紙幣は紙幣搬送路4に沿って紙幣処理装置1内部に搬送される。
【0032】
紙幣搬送路4を通過する紙幣は、紙幣搬送路4途中に設けられる紙幣識別部5において、図示せぬ紙幣識別手段によって真偽を判別される。
【0033】
ここで、紙幣が偽券と判断された場合は、その判定信号に基づいて、搬送ベルト31および搬送ローラ32が逆転し、偽券と判断された紙幣を紙幣挿入口2から返却される。
【0034】
紙幣識別部5において真券と判断された紙幣は、紙幣搬送手段3によって紙幣搬送路4のさらに下流へ搬送され、収納待機位置における一対のスタックガイド9の図示せぬスリットによって、紙幣の長手方向側縁を把持されながら収納待機位置に達する。
【0035】
紙幣が収納待機位置に達すると、紙幣停止位置制御手段6が、搬送紙幣の位置を検出する図示せぬセンサからの情報に基づいて、紙幣搬送手段3の動作を制御し、紙幣を収納待機位置に停止させる。
【0036】
そして、搬送紙幣が収納待機位置に停止している状態において、図示せぬ自動販売機の商品の購入が可能になる。
【0037】
なお、搬送紙幣が紙幣搬送路4内を搬送されて収納待機位置に到達するまでの間、紙幣収納手段7はその作動を停止し、
図1に示した初期位置に待機した状態を維持している。
【0038】
この際、スタックアーム77の突起部77bは リフトテーブル71の受部71aに嵌合しているので、リフトテーブル71の上下方向の動作はロックされた状態を維持する。
【0039】
商品が購入されると、紙幣収納手段7の図示せぬモータが駆動してモーターカム78を回転させ、モーターカム78に連動してスタックアーム77が図示右方に移動を開始する。
【0040】
スタックアーム77が図示右方にスライド移動すると、スタックアーム77の突起部77bが、リフトテーブル71の受部71aから抜けて、リフトテーブル71のロックが解除され、
図2に示すように、スタックアーム77の傾斜面77aがスタックローラ76に当接する。
【0041】
さらにスタックアーム77が図示右方にスライド移動すると、スタックアーム77の傾斜面77aがスタックローラ76を押圧し、スタックローラ76が下方に移動することによって、リフトテーブル71が引張スプリング79の引張力に抗して下方に移動する。
【0042】
紙幣の上面がリフトテーブル71に当接し、紙幣がリフトテーブル71によって下方に押圧されると、紙幣の長手方向側縁部がスタックガイド9によって湾曲され、さらにリフトテーブル71が下方に移動してスタックプレート82に達すると、紙幣をリフトテーブル71とスタックプレート82とによって押圧挟持しながら移動を継続し、紙幣の長手方向側縁がスタックガイド9から外れて、紙幣全体がスタッカー81内に押し込まれる。
【0043】
紙幣の移動はさらに継続し、
図3に示すスタックアーム77およびリフトテーブル71の最大移動位置まで到達すると、スタックアーム77は最大移動位置から逆行を開始して図示左方にスライド移動し、スタックローラ76の下方への押圧力が減少して、引張スプリング79の引張力によってリフトテーブル71は上方に移動する。
【0044】
紙幣はリフトテーブル71とスタックプレート82とによって押圧挟持されながら上方に移動し、再度スタックガイド9に達すると、紙幣の長手方向側縁部の上面がスタックガイド9の下面に当接して、紙幣およびスタックプレート82は移動を停止し、紙幣はスタックプレート82によってスタックガイド9に押し付けられた状態でスタッカー81内に収納される。
【0045】
その後、スタックアーム77の傾斜面77aがスタックローラ76から離れると、リフトテーブル71はスタックガイド9のより上方の初期位置に復帰する(
図2参照)。
【0046】
さらに、スタックアーム77が図示左方にスライド移動すると、スタックアーム77の突起部77bが、リフトテーブル71の受部71aに嵌合し、リフトテーブルの上下動作がロックされて、紙幣収納手段7は、
図1に示す初期位置に復帰する。
【0047】
以上、詳述したが如く、真券であると判定された紙幣は上述した手順により順次スタッカー81内に積載収納される。
【0048】
このように、本発明の紙幣処理装置では、スタックアームのスライド運動に伴って、待機状態においては、スタックアームに形成したリブ状の突起部がリフトテーブルに形成した門形状の受部に嵌合して、リフトテーブルの待機状態を維持するようにしている。
【0049】
スタックアームのスライド運動の方向は、リフトテーブルが紙幣搬送路内に突出する方向と略直交する方向であるので、リフトテーブルの待機状態を維持する力は、引張スプリングの引張力に比べて非常に大きなものとなる。
【0050】
したがって、外部からの衝撃や組立誤差によってリフトテーブルが待機状態から移動するのを確実に防止することができる。
【0051】
また、引張スプリングの引張力を大きくする必要がないので、スタックアームの駆動力を大きくする必要がなく、装置全体の小型軽量化に寄与し、収納紙幣を増加させることが可能である。
【0052】
なお、本発明は、紙幣搬送路を鉛直方向に具え、リフトテーブルの移動方向が水平方向である紙幣収納手段を有する紙幣処理装置であっても適用可能である。