特許第6006003号(P6006003)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6006003
(24)【登録日】2016年9月16日
(45)【発行日】2016年10月12日
(54)【発明の名称】カード搬出装置およびカード発行装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 3/06 20060101AFI20160929BHJP
   B65H 83/02 20060101ALI20160929BHJP
   G06K 13/103 20060101ALI20160929BHJP
【FI】
   B65H3/06 330A
   B65H83/02
   G06K13/103 F
【請求項の数】11
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-127805(P2012-127805)
(22)【出願日】2012年6月5日
(65)【公開番号】特開2013-252908(P2013-252908A)
(43)【公開日】2013年12月19日
【審査請求日】2015年5月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100090170
【弁理士】
【氏名又は名称】横沢 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】檜山 千里
【審査官】 藤井 眞吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−086184(JP,A)
【文献】 特開平10−218392(JP,A)
【文献】 特開2005−309017(JP,A)
【文献】 特開2009−173375(JP,A)
【文献】 実開昭60−142246(JP,U)
【文献】 実開昭63−194829(JP,U)
【文献】 特開平01−299135(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 3/06
B65H 83/02
G06K 13/103
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚のカードが積層されて収容されるカード収容部から前記カードを搬出するカード搬出装置において、
前記カード収容部よりも上側に配置され前記カードに当接して前記カードを搬送する搬送ローラと、環状に形成されるとともに外周面に一定ピッチで複数の歯が形成される歯付きベルトと、前記歯付きベルトを回転させるベルト駆動機構とを備え、
前記歯付きベルトの一部は、前記カード収容部内に配置され、
前記歯付きベルトが一方向へ回転すると、前記カード収容部に収容された前記カードの一端部が前記歯付きベルトの前記歯の間に形成される歯溝に係合するとともに前記歯溝に係合している前記カードの一端部が前記搬送ローラまで持ち上げられることを特徴とするカード搬出装置。
【請求項2】
前記カードの他端部に当接して前記カードを前記歯付きベルトに向かって押す羽根車を備えることを特徴とする請求項1記載のカード搬出装置。
【請求項3】
環状に形成される前記歯付きベルトの周方向における前記歯溝の幅は、前記カードの1枚分の厚さ以上でかつ前記カードの2枚分の厚さよりも狭くなっていることを特徴とする請求項1または2記載のカード搬出装置。
【請求項4】
前記カード収容部内に配置される前記歯付きベルトの一部は、前記カードの一端部が前記歯溝に係合していないときには、前記歯付きベルトの外周側へ膨らんでおり、前記カードの一端部が前記歯溝に係合すると、前記歯付きベルトの内周側へ撓むことを特徴とする請求項3記載のカード搬出装置。
【請求項5】
前記歯付きベルトの幅方向の両側から前記歯付きベルトをガイドするガイド部材を備えることを特徴とする請求項4記載のカード搬出装置。
【請求項6】
前記ベルト駆動機構は、前記歯付きベルトの外周面の前記歯に係合する歯付きプーリと、前記歯付きプーリを回転させるモータとを備え、
前記モータは、前記搬送ローラも回転させることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のカード搬出装置。
【請求項7】
前記搬送ローラによって搬送された前記カードを前記搬送ローラによる前記カードの搬送方向と直交する方向へ搬送する第2搬送機構を備えることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のカード搬出装置。
【請求項8】
前記搬送ローラおよび前記歯付きベルトは、前記カード収容部から前記カードを搬出するときの回転方向と逆方向へ回転して、前記カード収容部へ前記カードを搬入することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のカード搬出装置。
【請求項9】
前記搬送ローラに対向配置されるとともに前記搬送ローラに向かって付勢され前記搬送ローラで搬送される前記カードに当接する対向ローラと、前記搬送ローラおよび前記対向ローラを駆動するモータと、前記モータの動力を前記対向ローラへ伝達する動力伝達機構とを備え、
前記動力伝達機構は、前記モータの動力によって前記搬送ローラの回転方向と同方向へ前記対向ローラが回転可能となるように構成されるとともに、
前記動力伝達機構は、前記カードを搬出する方向へ前記搬送ローラが回転するときに、前記モータから前記対向ローラへ伝達される動力の大きさに応じて前記モータから前記対向ローラへの動力伝達を断続するトルクリミッタと、前記カードを搬入する方向へ前記搬送ローラが回転するときに、前記モータから前記対向ローラへの動力伝達を切断するワンウェイクラッチとを備えることを特徴とする請求項8記載のカード搬出装置。
【請求項10】
前記トルクリミッタは、前記搬送ローラと前記対向ローラとの間に1枚の前記カードが挟まれているときには、前記モータから前記対向ローラへの動力伝達を切断し、前記搬送ローラと前記対向ローラとの間に2枚の前記カードが挟まれているときには、前記モータから前記対向ローラへ動力を伝達するように構成されていることを特徴とする請求項9記載のカード搬出装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載のカード搬出装置と、前記カード搬出装置の下方に配置される前記カード収容部と、前記カード収容部内の前記カードを昇降させるカード昇降装置とを備えることを特徴とするカード発行装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カードが積層されて収容されるカード収容部からカードを搬出するカード搬出装置に関する。また、本発明は、かかるカード搬出装置を備えるカード発行装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数枚のカードが積層されて収容されるカード収容部からカードを1枚ずつ搬出するカード搬出搬入装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のカード搬出搬入装置は、カードに当接してカードを搬送する搬送ローラと、搬送ローラに対向配置される対向ローラと、カードの搬出時にカード収容部から搬送ローラに向かってカードを送り出す取出ローラとを備えている。このカード搬出搬入装置では、取出ローラが、カード収容部に積層されるカードのうちの最上位のカードの上面に当接して、最上位のカードを搬送ローラおよび対向ローラに向かって送り出す。取出ローラによって送り出されたカードは、搬送ローラおよび対向ローラによって搬送されて、カード搬出搬入装置から搬出される。
【0003】
また、特許文献1に記載のカード搬出搬入装置は、カード収容部に収容されたカードを発行するカード発行機能と、カードを再利用するためにカードをカード収容部へ回収するカード回収機能とを備えるカード発行回収装置に搭載されて使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−86184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のカード搬出搬入装置が搭載されるカード発行回収装置では、カード収容部から発行されたカードがカード収容部に回収され、再び、カード収容部から発行されて、再利用される。そのため、特許文献1に記載のカード搬出搬入装置では、カード収容部から搬出されるカードの表面が汚れて、取出ローラとカードとの間の摩擦力が低下するおそれがある。したがって、このカード搬出搬入装置では、取出ローラとカードとの間でスリップが発生して、カード収容部から搬送ローラまでカードを移動させることができないといった状況が生じるおそれがある。
【0006】
そこで、本発明の課題は、カードが積層されて収容されるカード収容部から搬出されるカードの表面が汚れていても、カード収容部からカードに当接してカードを搬送する搬送ローラまでカードを適切に移動させることが可能なカード搬出装置を提供することにある。また、本発明の課題は、このカード搬出装置を備えるカード発行装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明のカード搬出装置は、複数枚のカードが積層されて収容されるカード収容部からカードを搬出するカード搬出装置において、カード収容部よりも上側に配置されカードに当接してカードを搬送する搬送ローラと、環状に形成されるとともに外周面に一定ピッチで複数の歯が形成される歯付きベルトと、歯付きベルトを回転させるベルト駆動機構とを備え、歯付きベルトの一部は、カード収容部内に配置され、歯付きベルトが一方向へ回転すると、カード収容部に収容されたカードの一端部が歯付きベルトの歯の間に形成される歯溝に係合するとともに歯溝に係合しているカードの一端部が搬送ローラまで持ち上げられることを特徴とする。
【0008】
本発明のカード搬出装置では、外周面に一定ピッチで複数の歯が形成される歯付きベルトの一部がカード収容部内に配置され、歯付きベルトが一方向へ回転すると、カード収容部に収容されたカードの一端部が歯付きベルトの歯溝に係合してカードの一端部が搬送ローラまで持ち上げられる。そのため、本発明では、カード収容部から搬出されるカードの表面が汚れていても、カードの一端部を歯溝に係合させて、カード収容部から搬送ローラまでカードを適切に移動させることが可能になる。また、本発明では、カード収容部から搬出されるカードが変形していたり、損傷していたりしても、カードの一端部を歯溝に係合させて、カード収容部から搬送ローラまでカードを適切に移動させることが可能になる。なお、本明細書において、「カードの一端部が歯溝に係合する」には、歯溝にカードの一端部が引っ掛かる場合も含まれるものとする。
【0009】
本発明において、カード搬出装置は、カードの他端部に当接してカードを歯付きベルトに向かって押す羽根車を備えることが好ましい。このように構成すると、カードの一端部を歯付きベルトの歯溝に確実に係合させることが可能になる。したがって、カード収容部から搬出されるカードの表面が汚れていても、また、カード収容部から搬出されるカードが変形していたり、損傷していたりしても、カード収容部から搬送ローラまでカードを確実に移動させることが可能になる。
【0010】
本発明において、環状に形成される歯付きベルトの周方向における歯溝の幅は、カードの1枚分の厚さ以上でかつカードの2枚分の厚さよりも狭くなっていることが好ましい。このように構成すると、カードを1枚ずつカード収容部から搬送ローラまで移動させることが可能になる。したがって、搬送ローラによってカードを1枚ずつ搬送することが可能になる。すなわち、搬送ローラによって2枚のカードが同時に搬出されるカードの二重送りを防止することが可能になる。
【0011】
本発明において、カード収容部内に配置される歯付きベルトの一部は、カードの一端部が歯溝に係合していないときには、歯付きベルトの外周側へ膨らんでおり、カードの一端部が歯溝に係合すると、歯付きベルトの内周側へ撓むことが好ましい。このように構成すると、カード収容部に積層されるカードのうちの一番上のカード(最上位のカード)の一端部が歯溝に係合すると、カード収容部に積層されるカードのうちの上から2枚目のカードの一端部が歯溝に係合しにくくなる。したがって、最上位のカードと一緒に上から2枚目のカードが搬送ローラの近くまで持ち上げられるのを防止することが可能になり、その結果、搬送ローラによってカードを1枚ずつ搬送することが可能になる。すなわち、カードの二重送りを防止することが可能になる。
【0012】
本発明において、カード搬出装置は、歯付きベルトの幅方向の両側から歯付きベルトをガイドするガイド部材を備えることが好ましい。このように構成すると、カード収容部内に配置される歯付きベルトの一部が歯付きベルトの外周側へ膨らむように、歯付きベルトが緩んだ状態で配置されていても、歯付きベルトの幅方向における歯付きベルトのずれを抑制することが可能になる。
【0013】
本発明において、ベルト駆動機構は、歯付きベルトの外周面の歯に係合する歯付きプーリと、歯付きプーリを回転させるモータとを備え、モータは、搬送ローラも回転させることが好ましい。このように構成すると、共通のモータによって、歯付きベルトおよび搬送ローラを回転させることができるため、カード搬出装置の構成を簡素化することが可能になる。
【0014】
本発明において、カード搬出装置は、たとえば、搬送ローラによって搬送されたカードを搬送ローラによるカードの搬送方向と直交する方向へ搬送する第2搬送機構を備えている。この場合には、搬送ローラによって搬送されたカードを搬送ローラの搬送方向と直交する方向へ搬送することができる。
【0015】
本発明において、搬送ローラおよび歯付きベルトは、カード収容部からカードを搬出するときの回転方向と逆方向へ回転して、カード収容部へカードを搬入することが好ましい。このように構成すると、カード搬出装置を用いて、カード収容部へカードを搬入することができる。また、このように構成すると、搬送ローラで搬入されたカードの一端部に歯付きベルトの歯溝を係合させて、カード収容部へカードを押し込むことが可能になる。したがって、たとえば、カードが変形していても、カード収容部の上端側等にカードが引っ掛かるのを防止して、カード収容部内でカードを整然と積層させることが可能になる。
【0016】
本発明において、カード搬出装置は、搬送ローラに対向配置されるとともに搬送ローラに向かって付勢され搬送ローラで搬送されるカードに当接する対向ローラと、搬送ローラおよび対向ローラを駆動するモータと、モータの動力を対向ローラへ伝達する動力伝達機構とを備え、動力伝達機構は、モータの動力によって搬送ローラの回転方向と同方向へ対向ローラが回転可能となるように構成されるとともに、動力伝達機構は、カードを搬出する方向へ搬送ローラが回転するときに、モータから対向ローラへ伝達される動力の大きさに応じてモータから対向ローラへの動力伝達を断続するトルクリミッタと、カードを搬入する方向へ搬送ローラが回転するときに、モータから対向ローラへの動力伝達を切断するワンウェイクラッチとを備えることが好ましい。この場合には、トルクリミッタは、たとえば、搬送ローラと対向ローラとの間に1枚のカードが挟まれているときには、モータから対向ローラへの動力伝達を切断し、搬送ローラと対向ローラとの間に2枚のカードが挟まれているときには、モータから対向ローラへ動力を伝達するように構成されている。
【0017】
このように構成すると、搬送ローラと対向ローラとの間に1枚のカードが挟まれて、対向ローラが当接するカードと搬送ローラとの間の摩擦抵抗が大きくなるときには、トルクリミッタを作用させて、モータから対向ローラへの動力伝達を切断することが可能になる。すなわち、搬送ローラの回転方向と逆方向へ対向ローラを回転させて(すなわち、搬送ローラに追従するように対向ローラを回転させて)、搬送ローラと対向ローラとの間に挟まれる1枚のカードを適切に搬出することが可能になる。また、搬送ローラと対向ローラとの間に2枚のカードが挟まれて、対向ローラが当接するカードともう1枚のカードとの間の摩擦抵抗が小さくなるときには、トルクリミッタを作用させずに、モータから対向ローラへ動力を伝達することが可能になる。すなわち、搬送ローラの回転方向と同方向へ対向ローラを回転させて(すなわち、カードを搬入する方向へ対向ローラを回転させて)、対向ローラに当接するカードをカード収容部に戻すことが可能になる。また、搬送ローラに当接するカードをそのまま搬出することが可能になる。したがって、カードの二重送りを防止することが可能になる。
【0018】
また、このように構成すると、動力伝達機構が、カードを搬入する方向へ搬送ローラが回転するときに、モータから対向ローラへの動力伝達を切断するワンウェイクラッチを備えているため、カードを搬入する際には、対向ローラは、搬送ローラに追従してカードの搬入方向に空転する。したがって、対向ローラによってカードの搬入が妨げられることがなくなる。
【0019】
本発明のカード搬出装置は、カード搬出装置の下方に配置されるカード収容部と、カード収容部内のカードを昇降させるカード昇降装置とを備えるカード発行装置に用いることができる。このカード発行装置では、カード収容部から搬出されるカードの表面が汚れていても、また、カード収容部から搬出されるカードが変形していたり、損傷していたりしても、カードの一端部を歯溝に係合させて、カード収容部から搬送ローラまでカードを適切に移動させることが可能になる。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明のカード搬出装置では、カードが積層されて収容されるカード収容部から搬出されるカードの表面が汚れていても、カード収容部からカードに当接してカードを搬送する搬送ローラまでカードを適切に移動させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施の形態にかかるカード発行装置の斜視図である。
図2図1に示すカード搬出装置の要部の斜視図である。
図3図1に示すカード搬出装置の要部の側面図である。
図4図2に示すカード搬出装置から搬送ローラ等を取り外した状態の斜視図である。
図5図4に示す歯付きベルトおよびその周辺部分の構成を説明するための斜視図および分解斜視図である。
図6図2に示すカード搬出装置でのカードの搬出動作および搬入動作を説明するための図である。
図7図2に示すカード搬出装置でのカードの搬入動作を説明するための図である。
図8図1に示すカード発行装置を用いたカード発行システムの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0023】
(カード発行装置の概略構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかるカード発行装置1の斜視図である。以下の説明では、図1等のX1方向側を「右」側、X2方向側を「左」側、Y1方向側を「前」側、Y2方向側を「後(後ろ)」側または「奥」側、Z1方向側を「上」側、Z2方向側を「下」側とする。
【0024】
本形態のカード発行装置1は、複数枚のカード2が積層されて収容されるカード収容部としてのカートリッジ3からカード2を発行するカード発行機能と、発行されたカード2を再利用するためにカード2をカートリッジ3に回収するカード回収機能とを備えている。このカード発行装置1は、カートリッジ3が着脱可能に取り付けられる本体部4と、カートリッジ3とによって構成されている。
【0025】
本体部4は、カートリッジ3に収容されたカード2をカートリッジ3から搬出するとともにカートリッジ3に向けてカード2を搬入するカード搬出装置5と、カートリッジ3に収容されたカード2を昇降させるカード昇降装置6とを備えている。カートリッジ3およびカード昇降装置6は、カード搬出装置5の下側に配置されている。また、カートリッジ3は、本体部4の前側から本体部4に着脱される。
【0026】
カード2は、たとえば、厚さが0.7〜0.8mm程度の長方形の塩化ビニール製のカードである。また、カード2は、たとえば、非接触式のICカードであり、カード2の内部には、ICチップおよび通信用のアンテナが内蔵されている。なお、カード2の表面には、磁気ストライプが形成されても良い。また、カード2は、IC接点を有する接触式のICカードであっても良い。また、カード2は、厚さが0.18〜0.36mm程度のPET(ポリエチレンテレフタレート)カードであっても良いし、所定の厚さの紙カード等であっても良い。
【0027】
カートリッジ3は、上下方向に細長い略四角筒状に形成されており、その上端は開口している。カード2は、長方形状に形成されるカード2の長手方向が左右方向と一致し、カード2の短手方向が前後方向と一致し、カード2の厚さ方向が上下方向と一致するように、カートリッジ3に収容されている。
【0028】
カートリッジ3の奥側面の左右方向の中間位置には、カード昇降装置6を構成するカード搭載部が通過する通過溝(図示省略)が上端から下端まで形成されている。カートリッジ3の前側面は、開閉可能となっており、図示を省略する鍵によって、カートリッジ3の前側面が開閉される。また、カートリッジ3の上端側には、ロックレバー7が回動可能に取り付けられている。ロックレバー7を奥側へ回動させると、本体部4に対してカートリッジ3がロックされ、ロックレバー7を前側へ回動させると、本体部4からのカートリッジ3の取外しが可能になる。
【0029】
カード昇降装置6は、カートリッジ3に収容されるカード2が搭載されるカード搭載部と、カード搭載部を昇降させる昇降機構とを備えている。カード搭載部は、奥側からカートリッジ3の内部に入り込んでおり、カートリッジ3に収容されるカード2のうちの一番下のカード2の下面に当接している。このカード搭載部が昇降すると、カートリッジ3に収容される複数枚のカード2がカード搭載部とともに昇降する。
【0030】
(カード搬出装置の構成)
図2は、図1に示すカード搬出装置5の要部の斜視図である。図3は、図1に示すカード搬出装置5の要部の側面図である。図4は、図2に示すカード搬出装置5から搬送ローラ11等を取り外した状態の斜視図である。図5は、図4に示す歯付きベルト16およびその周辺部分の構成を説明するための斜視図および分解斜視図である。なお、以下の説明では、図3における時計回りの方向を「時計方向」とし、反時計回りの方向を「反時計方向」とする。
【0031】
カード搬出装置5は、カード2に当接してカード2を搬送する搬送ローラ11と、搬送ローラ11に対向配置される対向ローラ12と、カード2に当接して搬送ローラ11とともにカード2を搬送する搬送ローラ13と、搬送ローラ13に対向配置されるパッドローラ14とを備えている。また、カード搬出装置5は、搬送ローラ11、13によって搬送されたカード2を搬送ローラ11、13によるカード2の搬送方向と直交する方向へ搬送する第2搬送機構としての搬送機構15を備えている。
【0032】
さらに、カード搬出装置5は、環状に形成されるとともに外周面に一定ピッチで複数の歯が形成される歯付きベルト(歯付きの無端ベルト)16(以下、「ベルト16」とする)と、カートリッジ3からのカード2の搬出時にカートリッジ3内の一番上のカード(最上位のカード)2の上面に当接して最上位のカード2を支持する支持ローラ17と、カートリッジ3からのカード2の搬出時に最上位のカード2をベルト16に向かって押す羽根車18とを備えている。
【0033】
搬送ローラ11は、カートリッジ3の上側に配置されている。具体的には、搬送ローラ11は、カートリッジ3に収容されるカード2の後端側部分の上側に配置されており、カード2の後端側部分の上面に当接可能となっている。この搬送ローラ11は、カード搬出装置5のフレームに回転可能に支持される回転軸20に固定されている。回転軸20は、その軸方向と左右方向とが一致するように配置されている。本形態では、左右方向に所定の間隔をあけた状態で2個の搬送ローラ11が回転軸20に固定されている。搬送ローラ11は、樹脂製または金属製の芯金の外周側にゴム輪が嵌め込まれたゴムローラである。
【0034】
対向ローラ12は、斜め後ろ下側から搬送ローラ11に対向している。また、対向ローラ12は、回転軸21に固定されている。回転軸21は、カード搬出装置5のフレームに回動可能に支持される軸保持部材(図示省略)に回転可能に支持されている。この軸保持部材は、図示を省略する付勢部材によって、その回動方向の一方向へ付勢されている。軸保持部材が付勢部材によって付勢されることで、対向ローラ12は搬送ローラ11に向かって付勢されており、カード2の下面に当接可能となっている。また、回転軸21は、その軸方向と左右方向とが一致するように配置されている。本形態では、搬送ローラ11と同様に、左右方向に所定の間隔をあけた状態で2個の対向ローラ12が回転軸21の両端側に固定されている。対向ローラ12は、樹脂製または金属製の芯金の外周側にゴム輪が嵌め込まれたゴムローラである。
【0035】
搬送ローラ13は、対向ローラ12の斜め後ろ上側に配置されており、カード2の下面に当接可能となっている。この搬送ローラ13は、カード搬出装置5のフレームに回転可能に支持される回転軸22に固定されている。回転軸22は、その軸方向と左右方向とが一致するように配置されている。本形態では、左右方向に所定の間隔をあけた状態で2個の搬送ローラ13が回転軸22に固定されている。搬送ローラ13は、樹脂製または金属製の芯金の外周側にゴム輪が嵌め込まれたゴムローラである。
【0036】
パッドローラ14は、斜め前上側から搬送ローラ13に対向している。また、パッドローラ14は、図示を省略する付勢部材によって、搬送ローラ13に向かって付勢されている。このパッドローラ14は、支持軸23に回転可能に支持されている。支持軸23は、その軸方向と左右方向とが一致するように配置されている。本形態では、左右方向に所定の間隔をあけた状態で2個のパッドローラ14が支持軸23に回転可能に支持されている。パッドローラ14は、樹脂製の樹脂ローラである。
【0037】
支持軸23は、カード搬出装置5のフレームに回動可能に保持される保持部材(図示省略)に保持されている。この保持部材には、ソレノイド等の駆動源が連結されている。パッドローラ14が搬送ローラ13に接触している状態で、カード搬出装置5のフレームに対してこの保持部材が回動すると、パッドローラ14は、搬送ローラ13から離れる方向へ移動する。具体的には、パッドローラ14は、斜め前上側へ移動する(図6(B)参照)。
【0038】
回転軸20、22には、たとえば、プーリが固定されており、回転軸20、22は、プーリやベルト等を介してモータに連結されている。また、回転軸21には、プーリ24が固定されており、回転軸21は、プーリ24、ベルトおよびトルクリミッタ等を介して、回転軸20、22が連結されるモータに連結されている。回転軸21とモータとを連結するためのトルクリミッタは、モータから対向ローラ12に伝達される動力の大きさに応じてモータから対向ローラ12に伝達される動力を断続する。すなわち、このトルクリミッタは、モータからの所定値を超えるトルクを対向ローラ12に伝達せずに、モータと対向ローラ12との間でスリップするように構成されている。また、プーリ24は、内部にワンウェイクラッチが内蔵されたワンウェイプーリである。具体的には、プーリ24は、回転軸21に対して時計方向へ空転するように構成されたワンウェイプーリである。本形態では、プーリ24、回転軸21とモータとを連結するためのトルクリミッタおよびベルト等によって、モータの動力を対向ローラ12に伝達する動力伝達機構が構成されている。
【0039】
対向ローラ12は、モータの動力によって搬送ローラ11の回転方向と同方向へ回転可能となっている。すなわち、搬送ローラ11が時計方向に回転するときには、モータは、対向ローラ12を時計方向に回転するための動力を発生させ、搬送ローラ11が反時計方向に回転するときには、モータは、対向ローラ12を反時計方向に回転するための動力を発生させている。
【0040】
ただし、プーリ24は、回転軸21に対して時計方向へ空転するように構成されたワンウェイプーリであるため、搬送ローラ11が時計方向に回転するときには、搬送ローラ11に向かって付勢される対向ローラ12は、搬送ローラ11に追従して反時計方向に回転する。すなわち、搬送ローラ11が時計方向に回転するときには、プーリ24がモータから対向ローラ12への動力伝達を切断するため、対向ローラ12は、搬送ローラ11に追従して反時計方向に回転する。
【0041】
また、回転軸21とモータとを連結するためのトルクリミッタは、搬送ローラ11が反時計方向に回転する場合において、搬送ローラ11と対向ローラ12との間にカード2が挟まれていないとき、および、搬送ローラ11と対向ローラ12との間に1枚のカード2が挟まれているときには、モータから対向ローラ12への動力伝達を切断し、搬送ローラ11と対向ローラ12との間に2枚(あるいは2枚以上)のカード2が挟まれているときには、モータから対向ローラ12へ動力を伝達するように構成されている。
【0042】
すなわち、このトルクリミッタは、搬送ローラ11と対向ローラ12との間にカード2が挟まれておらず、対向ローラ12が搬送ローラ11に当接して対向ローラ12と搬送ローラ11との間の摩擦抵抗が大きくなるとき、および、搬送ローラ11と対向ローラ12との間に1枚のカード2が挟まれており、対向ローラ12が当接するカード2と搬送ローラ11との間の摩擦抵抗が大きくなるときには、モータから対向ローラ12への動力伝達を切断する。また、このトルクリミッタは、搬送ローラ11と対向ローラ12との間に2枚のカード2が挟まれており、対向ローラ12が当接するカード2ともう1枚のカード2との間の摩擦抵抗が小さくなるときには、モータから対向ローラ12へ動力を伝達する。
【0043】
したがって、本形態では、搬送ローラ11が反時計方向に回転する場合において、搬送ローラ11と対向ローラ12との間に1枚のカード2が挟まれているときには、対向ローラ12は、搬送ローラ11に追従して時計方向に回転する。一方、搬送ローラ11と対向ローラ12との間に2枚のカード2が挟まれているときには、対向ローラ12にモータの動力が伝達され、対向ローラ12は、搬送ローラ11と同じ反時計方向に回転する。
【0044】
また、搬送ローラ13は、モータの動力によって搬送ローラ11の回転方向と逆方向へ回転する。すなわち、搬送ローラ11が反時計方向に回転するときには、搬送ローラ13は、時計方向に回転し、搬送ローラ11が時計方向に回転するときには、搬送ローラ13は、反時計方向に回転する。
【0045】
本形態では、搬送ローラ11が反時計方向に回転し、搬送ローラ13が時計方向へ回転するときに、カード2は、斜め後ろ上方向へ搬送されてカートリッジ3から搬出される。また、搬送ローラ11が時計方向に回転し、搬送ローラ13が反時計方向へ回転するときに、カード2は、斜め前下方向に搬送されてカートリッジ3に向けて搬入される。
【0046】
搬送機構15は、カード2の上面に当接して、左右方向へカード2を搬送する搬送ローラ25と、搬送ローラ25に対向配置されるパッドローラ26とを備えている。搬送ローラ25は、パッドローラ14の斜め後ろ上側に配置されている。本形態では、左右方向に所定の間隔をあけた状態で2個の搬送ローラ25が配置されている。搬送ローラ25は、樹脂製または金属製の芯金の外周側にゴム輪が嵌め込まれたゴムローラである。2個の搬送ローラ25の芯金には、ベルト27が架け渡されている。搬送ローラ25は、図示を省略するモータにプーリやベルト等を介して連結されている。
【0047】
パッドローラ26は、斜め後ろ下側から搬送ローラ25に対向している。また、パッドローラ26は、図示を省略する付勢部材によって、搬送ローラ25に向かって付勢されている。本形態では、左右方向に所定の間隔をあけた状態で2個のパッドローラ26が配置されている。パッドローラ26は、樹脂製の樹脂ローラである。また、パッドローラ26は、図示を省略する支持軸に回転可能に支持されている。この支持軸は、カード搬出装置5のフレームに回動可能に保持される保持部材(図示省略)に保持されている。この保持部材には、ソレノイド等の駆動源が連結されている。パッドローラ26が搬送ローラ25に接触している状態で、カード搬出装置5のフレームに対してこの保持部材が回動すると、パッドローラ26は、搬送ローラ25から離れる方向へ移動する。具体的には、パッドローラ26は、斜め後ろ下側へ移動する(図6(A)、図7参照)。
【0048】
搬送ローラ25およびパッドローラ26の奥側には、ガイド部材28が配置されている。ガイド部材28には、搬送ローラ13によって斜め後ろ上方向へ搬送されたカード2の後端が当接する当接面28aが形成されている。
【0049】
ベルト16の外周面には、上述のように、一定ピッチで複数の歯が形成されている。ベルト16の複数の歯の間には、歯溝が形成されている。すなわち、ベルト16の複数の歯の間は、歯溝となっている。環状に形成されるベルト16の周方向における歯溝の幅は、カード2の1枚分の厚さ以上で、かつ、カード2の2枚分の厚さよりも狭くなっている。
【0050】
ベルト16は、ベルト16の幅方向となる左右方向の両側からベルト16をガイドするガイド部材30、31の間に配置されている。図5(B)、(C)に示すように、ガイド部材30とガイド部材31との間には、歯付きベルト16の内周側に挿通される略円筒状のベルト保持部材32、33が配置されている。ベルト保持部材32は、ガイド部材30、31の上端側に配置され、ベルト保持部材33は、ガイド部材30、31の下端側に配置されている。また、ベルト保持部材32、33は、ガイド部材30、31に回転可能に保持されている。略円筒状に形成されるベルト保持部材32の内周側には、回転軸21が挿通されており、ベルト保持部材32の軸中心と回転軸21の軸中心とが略一致している。なお、ベルト保持部材32、33は、ガイド部材30、31に固定されていても良い。
【0051】
また、ガイド部材30とガイド部材31との間には、ベルト16の外周面に形成される歯に係合して、ベルト16を回転させる歯付きプーリ34が配置されている。歯付きプーリ34は、ガイド部材30、31に回転可能に保持されている。また、歯付きプーリ34は、ベルト16の後ろ側に配置されている。歯付きプーリ34には、歯車34aが一体で形成されている。歯車34aには、回転軸22に固定される歯車35が噛み合っている。
【0052】
ベルト保持部材32、33に架け渡されるとともに歯付きプーリ34が係合するベルト16は弛んでおり、その一部は、ガイド部材30、31の前端よりも前側へ突出している。ガイド部材30、31の前端よりも前側に突出しているベルト16の一部は、カートリッジ3の上端側の内部に奥側から入り込んで、カートリッジ3の上端側の内部に配置されている。本形態では、カートリッジ3の上端側の内部に配置されるベルト16の歯溝にカード2の後端部が係合可能となっている。また、カートリッジ3内でカード2が下降しており、カートリッジ3内のカード2の後端部がベルト16の歯溝に係合していないときには、図3の実線で示すように、カートリッジ3の内部に配置されるベルト16の一部は、ベルト16の外周側へ膨らんでいる。一方、カートリッジ3内のカード2の後端部がベルト16の歯溝に係合すると、図3の二点鎖線で示すように、カートリッジ3の内部に配置されるベルト16の一部は、ベルト16の内周側へ撓む。
【0053】
回転軸20〜22が連結されるモータが回転すると、回転軸22とともに歯車35が回転し、歯車35が回転すると、歯付きプーリ34が回転して、ベルト16が回転する。本形態では、搬送ローラ11が反時計方向に回転するようにモータが回転すると、ベルト16がベルト保持部材32、33の周りを時計方向へ回転する。ベルト16が時計方向へ回転すると、カートリッジ3に収容された最上位のカード2の後端部がベルト16の歯溝に係合して、搬送ローラ11と対向ローラ12との間まで持ち上げられる。本形態では、歯付きプーリ34、歯車35、回転軸22および回転軸20〜22が連結されるモータ等によって、ベルト16を回転させるベルト駆動機構が構成されている。
【0054】
支持ローラ17は、搬送ローラ11の斜め前下側に配置されている。また、支持ローラ17は、カートリッジ3の上端側に配置されている。具体的には、支持ローラ17は、カートリッジ3に収容されるカード2の前端側部分の上側に配置されており、カード2の前端側部分の上面に当接可能となっている。この支持ローラ17は、カートリッジ3のフレームに回転可能に支持される回転軸38に固定されている。回転軸38は、その軸方向と左右方向とが一致するように配置されている。本形態では、左右方向に所定の間隔をあけた状態で2個の支持ローラ17が回転軸38に固定されている。支持ローラ17は、樹脂製または金属製の芯金の外周側にゴム輪が嵌め込まれたゴムローラである。
【0055】
羽根車18は、回転軸38に固定されている。また、羽根車18は、左右方向において支持ローラ17の間に配置されている。この羽根車18は、可撓性を有するゴムや樹脂等で形成される複数の羽根を備えている。羽根車18の最大外径(羽根の先端の径)は、支持ローラ17の外径よりも大きくなっている。すなわち、羽根の先端は、支持ローラ17よりも径方向の外側へ突出している。羽根車18は、反時計方向へ回転すると、カード2の前端部に当接する。
【0056】
回転軸38には、たとえば、トルクリミッタの出力側が取り付けられている。このトルクリミッタの入力側には、たとえば、歯車が固定されており、トルクリミッタは、歯車等を介して、回転軸20〜22が連結されるモータまたはこのモータと別に設けられたモータに連結されている。また、このトルクリミッタは、モータからの所定値を超えるトルクを支持ローラ17および羽根車18に伝達せずに、モータと支持ローラ17および羽根車18との間でスリップするように構成されている。
【0057】
支持ローラ17および羽根車18は、モータの動力によって搬送ローラ11の回転方向と同方向へ回転可能となっている。すなわち、搬送ローラ11が時計方向に回転するときには、支持ローラ17および羽根車18は時計方向に回転し、搬送ローラ11が反時計方向に回転するときには、支持ローラ17および羽根車18は反時計方向に回転する。また、回転軸38に取り付けられるトルクリミッタは、搬送ローラ11が反時計方向に回転する場合において、支持ローラ17によるカード2の搬送速度が搬送ローラ11によるカード2の搬送速度よりも速くなったときに、搬送ローラ11によるカード2の搬送速度に追従して支持ローラ17が回転するようにスリップする。
【0058】
(カードの搬出動作、搬入動作)
図6は、図2に示すカード搬出装置5でのカード2の搬出動作および搬入動作を説明するための図である。図7は、図2に示すカード搬出装置5でのカード2の搬入動作を説明するための図である。
【0059】
以上のように構成されたカード搬出装置5では、以下のように、カートリッジ3内からのカード2の搬出動作およびカートリッジ3内へのカード2の搬入動作が行われる。以下、カード2の搬出動作と搬入動作とをこの順番で説明する。
【0060】
カード2を搬出する際には、支持ローラ17にカートリッジ3内の最上位のカード2が所定の接触力で当接するように、カード昇降装置6のカード搭載部が上昇する。また、図6(A)に示すように、パッドローラ14は、搬送ローラ13に接触する位置に配置され、パッドローラ26は、搬送ローラ25から離れた位置に退避している。この状態で、回転軸20〜22が連結されるモータが回転して、搬送ローラ11が反時計方向へ回転すると、搬送ローラ13は時計方向へ回転し、支持ローラ17および羽根車18は反時計方向へ回転し、ベルト16は時計方向へ回転する。また、この状態で、搬送ローラ11が反時計方向へ回転すると、対向ローラ12は、搬送ローラ11に追従して時計方向へ回転する。
【0061】
ベルト16が時計方向へ回転すると、カートリッジ3に収容された最上位のカード2の後端部がベルト16の歯溝に係合して、搬送ローラ11と対向ローラ12との間まで持ち上げられる。このときには、羽根車18の羽根がカード2の前端部に当接して、カード2をベルト16に向かって押すため、カード2の後端部はベルト16の歯溝に確実に係合する。また、支持ローラ17によってカード2が搬送ローラ11と対向ローラ12との間に向かって送られるため、最上位のカード2の後端部が搬送ローラ11と対向ローラ12との間まで持ち上げられると、カード2は、搬送ローラ11と対向ローラ12との間に挟まれて斜め後ろ上方へ搬送される。このときには、対向ローラ12は、上述のように、搬送ローラ11に追従して時計方向に回転している。
【0062】
なお、最上位のカード2に上から2枚目のカード2が貼り付いた状態で最上位のカード2の後端部が搬送ローラ11と対向ローラ12との間まで持ち上げられて、2枚のカード2が搬送ローラ11と対向ローラ12との間に挟まれると、上述のように、対向ローラ12は、搬送ローラ11と同じ反時計方向に回転する。すなわち、対向ローラ12は、カード2を搬入する方向に回転する。そのため、対向ローラ12に接触する上から2枚目のカード2は、カートリッジ3内に戻される。
【0063】
搬送ローラ11と対向ローラ12との間に挟まれて斜め後ろ上方向へ搬送されたカード2は、その後、搬送ローラ13とパッドローラ14との間に挟まれて、カード2の後端が当接面28aに当接するまで、斜め後ろ上方向へ搬送される。
【0064】
カード2の後端が当接面28aに当接すると、回転軸20〜22が連結されるモータが停止して、搬送ローラ11、13等が停止する。その後、図6(B)に示すように、まず、パッドローラ26が搬送ローラ25に近づく方向へ移動してから、パッドローラ14が搬送ローラ13から離れる方向へ退避する。その後、搬送ローラ25が回転し、搬送ローラ25とパッドローラ26との間に挟まれたカード2は、搬送ローラ25とパッドローラ26とによって、左右方向へ搬送されて、カード2の搬出動作が終わる。なお、カード2の後端が当接面28aに当接したときには、カード2の前端は、搬送ローラ11と対向ローラ12との間から抜けている。また、カード2の後端が当接面28aに当接したか否かは所定のセンサによって検出される。
【0065】
ここで、上述のように、カートリッジ3内のカード2の後端部がベルト16の歯溝に係合すると、カートリッジ3の内部に配置されるベルト16の一部は、ベルト16の内周側へ撓むため、カートリッジ3内の最上位のカード2の後端部がベルト16の歯溝に係合すると、上から2枚目のカード2の後端部はベルト16の歯溝に係合しにくい。したがって、ベルト16が時計方向へ回転しても、上から2枚目のカード2の後端部は、ベルト16によって持ち上げられにくい。しかしながら、所定の条件下で、上から2枚目のカード2がベルト16によって持ち上げられてしまう場合には、図6(B)に示すように、カード昇降装置6のカード搭載部が下降するとともに、搬送ローラ11、支持ローラ17および羽根車18が時計方向へ回転し、ベルト16が反時計方向へ回転する。そのため、ベルト16の歯溝に係合して後端部が持ち上げられた上から2枚目のカード2は、カートリッジ3内へ戻される。
【0066】
カード2を搬入する際には、カード昇降装置6のカード搭載部が下降する。また、図6(B)に示すように、パッドローラ14は、搬送ローラ13から離れた位置に退避し、パッドローラ26は、搬送ローラ25に接触する位置に配置されている。この状態で、搬送ローラ25が回転して、カード2が左右方向における所定の位置まで搬送されると、搬送ローラ25が停止する。その後、図7に示すように、まず、パッドローラ14が搬送ローラ13に近づく方向へ移動してから、パッドローラ26が搬送ローラ25から離れる方向へ退避する。
【0067】
その後、回転軸20〜22が連結されるモータが回転して、搬送ローラ11が時計方向へ回転すると、搬送ローラ13は反時計方向へ回転し、支持ローラ17および羽根車18は時計方向へ回転し、ベルト16は反時計方向へ回転する。また、この状態で、搬送ローラ11が時計方向へ回転すると、対向ローラ12は、搬送ローラ11に追従して反時計方向へ回転する。
【0068】
カード2は、搬送ローラ13とパッドローラ14との間に挟まれて斜め前下方へ搬送された後、搬送ローラ11と対向ローラ12との間に挟まれて、さらに、斜め前下方へ搬送される。また、搬送ローラ11と対向ローラ12との間から後端が抜ける位置までカード2が搬送されると、カード2の後端部は、ベルト16の歯溝に係合して、カートリッジ3に収容されるカード2の上面に当接するまで降下する。ベルト16の歯溝に係合するカード2の後端部が降下すると、カード2の搬入動作が終わる。
【0069】
(カード発行システムの構成)
図8は、図1に示すカード発行装置1を用いたカード発行システム50の斜視図である。
【0070】
カード発行装置1は、たとえば、図8に示すカード発行システム50において使用される。カード発行システム50は、カートリッジ3からカード2を発行するカード発行機能と、発行されたカード2をカートリッジ3に回収するカード回収機能とを備えている。このカード発行システム50は、左右方向において隣接配置される複数のカード発行装置1と、カードリーダ51とを備えている。複数のカード発行装置1は、各カード発行装置1の搬送機構15間でカード2の受け渡しが可能になるように連結されており、左右方向において互いに接触している。また、各カード発行装置1を構成する搬送ローラ25は、たとえば、プーリやベルト等を介して、共通のモータに連結されており、このモータが回転すると、複数のカード発行装置1の全ての搬送ローラ25が回転する。
【0071】
カードリーダ51は、複数のカード発行装置1のうちの左端または右端に配置されるカード発行装置1に固定されている。また、カードリーダ51は、カードリーダ51が固定されるカード発行装置1の搬送機構15との間でカード2の受け渡しが可能になるように、カード発行装置1に固定されている。このカードリーダ51は、通信用のアンテナを備えている。なお、カードリーダ51は、磁気ヘッドやIC接点等を備えていても良い。
【0072】
カード発行システム50は、複数のカード発行装置1を備えているため、カード発行システム50では、複数種類のカード2を発行したり、複数種類のカード2を種類ごとにカートリッジ3に回収することが可能である。
【0073】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、ガイド部材30、31の前端よりも前側に突出しているベルト16の一部は、カートリッジ3の上端側の内部に配置され、ベルト16が時計方向へ回転すると、カートリッジ3に収容された最上位のカード2の後端部がベルト16の歯溝に係合して、搬送ローラ11と対向ローラ12との間まで持ち上げられる。そのため、本形態では、カートリッジ3から搬出されるカード2の表面が汚れていても、カード2の後端部をベルト16の歯溝に係合させて、カートリッジ3から搬送ローラ11と対向ローラ12との間までカード2を適切に移動させることが可能になる。また、本形態では、カートリッジ3から搬出されるカード2が変形していたり、損傷していたりしても、カード2の後端部をベルト16の歯溝に係合させて、カートリッジ3から搬送ローラ11と対向ローラ12との間までカード2を適切に移動させることが可能になる。
【0074】
特に本形態では、カートリッジ3からのカード2の搬出時に、羽根車18の羽根がカード2の前端部に当接して、カード2をベルト16に向かって押すため、上述のように、カード2の後端部がベルト16の歯溝に確実に係合する。したがって、本形態では、カートリッジ3から搬出されるカード2の表面が汚れていても、また、カートリッジ3から搬出されるカード2が変形していたり、損傷していたりしても、カートリッジ3から搬送ローラ11と対向ローラ12との間までカード2を確実に移動させることが可能になる。
【0075】
また、本形態では、カートリッジ3へカード2を搬入する際に、ベルト16が反時計方向へ回転して、カード2の後端部がベルト16の歯溝に係合する。そのため、本形態では、ベルト16の歯溝を利用して、カートリッジ3へカード2を押し込むことが可能になる。したがって、本形態では、カートリッジ3へ搬入されるカード2が変形していても、カートリッジ3の上端側等にカード2が引っ掛かるのを防止して、カートリッジ3内でカード2を整然と積層させることが可能になる。
【0076】
本形態では、ベルト16の周方向における歯溝の幅は、カード2の1枚分の厚さ以上でかつカード2の2枚分の厚さよりも狭くなっている。そのため、本形態では、カード2を1枚ずつカートリッジ3から搬送ローラ11と対向ローラ12との間まで移動させることが可能になる。したがって、本形態では、搬送ローラ11と対向ローラ12とによってカード2を1枚ずつ搬送することが可能になる。すなわち、本形態では、搬送ローラ11と対向ローラ12とによって2枚のカード2が同時に搬出されるカード2の二重送りを防止することが可能になる。
【0077】
また、本形態では、カートリッジ3内のカード2の後端部がベルト16の歯溝に係合すると、カートリッジ3の内部に配置されるベルト16の一部がベルト16の内周側へ撓むため、カートリッジ3内の最上位のカード2の後端部がベルト16の歯溝に係合すると、上から2枚目のカード2の後端部はベルト16の歯溝に係合しにくい。したがって、本形態では、上から2枚目のカード2の後端部がベルト16によって持ち上げられにくくなり、その結果、搬送ローラ11によってカード2を1枚ずつ搬送することが可能になる。すなわち、本形態では、カード2の二重送りを防止することが可能になる。
【0078】
また、本形態では、対向ローラ12は、モータの動力によって搬送ローラ11の回転方向と同方向へ回転可能となっている。また、回転軸21とモータとを連結するためのトルクリミッタは、搬送ローラ11が反時計方向に回転する場合において(すなわち、カード2を搬出する場合において)、搬送ローラ11と対向ローラ12との間に1枚のカード2が挟まれているときには、モータから対向ローラ12への動力伝達を切断し、搬送ローラ11と対向ローラ12との間に2枚のカード2が挟まれているときには、モータから対向ローラ12へ動力を伝達するように構成されている。
【0079】
そのため、上述のように、カード2を搬出する場合において、搬送ローラ11と対向ローラ12との間に1枚のカード2が挟まれているときには、対向ローラ12は、搬送ローラ11に追従して回転する。したがって、本形態では、カートリッジ3からのカード2の適切な搬出が可能になる。また、搬送ローラ11と対向ローラ12との間に2枚のカード2が挟まれているときには、対向ローラ12にモータの動力が伝達され、対向ローラ12は、カード2を搬入する方向に回転する。したがって、本形態では、対向ローラ12に接触する上から2枚目のカード2をカートリッジ3に戻すことができ、カード2の二重送りを防止することができる。
【0080】
また、本形態では、プーリ24は、回転軸21に対して時計方向に空転するように構成されたワンウェイプーリである。そのため、カード2を搬入する際には、対向ローラ12は、搬送ローラ11に追従してカード2の搬入方向に空転する。したがって、本形態では、対向ローラ12によってカード2の搬入が妨げられることがない。
【0081】
本形態では、ベルト16は、ガイド部材30、31によって左右方向の両側からガイドされている。そのため、本形態では、カートリッジ3の内部に配置されるベルト16の一部がベルト16の外周側へ膨らむように、ベルト16が緩んだ状態で配置されていても、左右方向におけるベルト16のずれを抑制することが可能になる。
【0082】
本形態では、回転軸20〜22が連結されるモータの動力でベルト16が回転している。そのため、本形態では、ベルト16を回転させるためのモータを別途設ける場合と比較して、カード搬出装置5の構成を簡素化することが可能になる。
【0083】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0084】
上述した形態では、ベルト16の周方向における歯溝の幅は、カード2の1枚分の厚さ以上で、かつ、カード2の2枚分の厚さよりも狭くなっている。この他にもたとえば、カード2の後端部がベルト16の歯溝に係合するのであれば、ベルト16の周方向における歯溝の幅は、カード2の1枚分の厚さより狭くても良い。また、ベルト16の周方向における歯溝の幅は、カード2の2枚分の厚さより広くなっていても良い。また、上述した形態では、カード搬出装置5は、羽根車18を備えているが、カートリッジ3内のカード2の後端部をベルト16の歯溝に確実に係合させることができるのであれば、カード搬出装置5は、羽根車18を備えていなくても良い。
【0085】
上述した形態では、カード搬出装置5は、カートリッジ3に向けてカード2を搬入するカード2の搬入動作を行うが、カード搬出装置5は、カートリッジ3に収容されたカード2をカートリッジ3から搬出するカード2の搬出動作のみを行っても良い。また、カード搬出装置5は、搬送機構15を備えているが、カード搬出装置5は、搬送機構15を備えていなくても良い。
【符号の説明】
【0086】
1 カード発行装置
2 カード
3 カートリッジ(カード収容部)
5 カード搬出装置
6 カード昇降装置
11 搬送ローラ
12 対向ローラ
15 搬送機構(第2搬送機構)
16 ベルト(歯付きベルト)
18 羽根車
22 回転軸(ベルト駆動機構の一部)
24 プーリ(ワンウェイクラッチ)
30、31 ガイド部材
34 歯付きプーリ(ベルト駆動機構の一部)
35 歯車(ベルト駆動機構の一部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8