(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6006005
(24)【登録日】2016年9月16日
(45)【発行日】2016年10月12日
(54)【発明の名称】安定保持可能なピンキャップとピンキャップの点灯方法およびその装着方法
(51)【国際特許分類】
B43M 15/00 20060101AFI20160929BHJP
F16B 15/00 20060101ALI20160929BHJP
【FI】
B43M15/00 Z
F16B15/00 P
F16B15/00 Z
【請求項の数】13
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-130297(P2012-130297)
(22)【出願日】2012年6月7日
(65)【公開番号】特開2013-252671(P2013-252671A)
(43)【公開日】2013年12月19日
【審査請求日】2015年6月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】503125422
【氏名又は名称】廣瀬 弘典
(74)【代理人】
【識別番号】100148851
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 和弘
(72)【発明者】
【氏名】▲廣▼瀬 弘典
【審査官】
藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭59−182209(JP,U)
【文献】
実開平02−116822(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3127082(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3108722(JP,U)
【文献】
実開昭50−033117(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43M 15/00
A44B 9/00− 9/20
F16B 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
尖鋭な針先を備えるピンの少なくとも先端が挿入されて摩擦力により挿入された前記ピンの先端を保持するゲル状充填材と、前記ピンの先端が挿入され得る開口部を有し内部に前記充填材を保持する外郭ケースと、を備え、
前記ピンを係止する場合に、前記ピンの先端の前記針先による穿孔により前記ピンが前記ゲル状充填材に挿入される
ことを特徴とする舞台装飾用のピンキャップ。
【請求項2】
請求項1に記載のピンキャップにおいて、
前記ゲル状充填材と、挿入された前記ピンと、の間の最大静止摩擦力は、前記ピンの重さよりも大きい
ことを特徴とする舞台装飾用のピンキャップ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のピンキャップにおいて、
前記ゲル状充填材は、前記外郭ケースよりも柔らかい
ことを特徴とする舞台装飾用のピンキャップ。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のピンキャップにおいて、
前記ゲル状充填材は、シリコン樹脂またはゴムで形成される
ことを特徴とする舞台装飾用のピンキャップ。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のピンキャップにおいて、
前記外郭ケースは、プラスチックで形成される
ことを特徴とする舞台装飾用のピンキャップ。
【請求項6】
ピンの少なくとも先端が挿入されて摩擦力により挿入された前記ピンの先端を保持するゲル状充填材と、前記ピンの先端が挿入され得る開口部を有し内部に前記充填材を保持する外郭ケースと、を備え
前記外郭ケースは、前記ピンが挿入される開口部を除く部位に、ガイド部材を係止し得る少なくとも一つの貫通孔を備える
ことを特徴とするピンキャップ。
【請求項7】
ピンの少なくとも先端が挿入されて摩擦力により挿入された前記ピンの先端を保持するゲル状充填材と、前記ピンの先端が挿入され得る開口部を有し内部に前記充填材を保持する外郭ケースと、を備え
前記外郭ケースは光を透過する部材で形成され、外部からその光を視認可能な発光体を内部に備える
ことを特徴とするピンキャップ。
【請求項8】
請求項7に記載のピンキャップにおいて、
前記発光体は発光ダイオードである
ことを特徴とするピンキャップ。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載のピンキャップにおいて、
前記ピンの挿入により前記発光体を点灯させるスイッチを備える
ことを特徴とするピンキャップ。
【請求項10】
請求項7乃至請求項9のいずれか一項に記載のピンキャップの点灯方法において、
舞台幕に前記ピンキャップを装着する工程と、
舞台演者または観客の少なくともいずれか一方が前記ピンキャップを視認できるように点灯させる工程と、を有する
ことを特徴とするピンキャップの点灯方法。
【請求項11】
請求項7乃至請求項9のいずれか一項に記載のピンキャップの点灯方法において、
舞台幕に前記ピンキャップを所望の形状に対応するように複数個装着する工程と、 前記所望の形状を舞台演者または観客の少なくともいずれか一方が前記所望の形状を視認できるように点灯させる工程と、を有する
ことを特徴とするピンキャップの点灯方法。
【請求項12】
請求項6に記載のピンキャップの装着方法において、
舞台幕に前記ピンキャップを装着する工程と、
舞台演者または観客の少なくともいずれか一方が視認できるように前記貫通孔にガイド部材を係止する工程と、を有する
ことを特徴とするピンキャップの装着方法。
【請求項13】
請求項6に記載のピンキャップの装着方法において、
舞台幕に前記ピンキャップを所望の形状に対応するように複数個装着する工程と、
舞台演者または観客の少なくともいずれか一方が前記所望の形状を視認できるように前記貫通孔にガイド部材を係止する工程と、を有する
ことを特徴とするピンキャップの装着方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、針先を収納するだけではなく、挿入された針先との摩擦力で安定保持可能なピンキャップとピンキャップの点灯方法およびその装着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
画鋲や虫ピン、待ち針等の尖鋭な針先を有する各種ピン類は、衣類や布、壁やカーテン等の任意の箇所に適宜差し込み、固定したり仮止めすることが可能である一方、その針先が尖鋭であるが故に、適切な安全対策や保護対策も必要とされるところである。
【0003】
例えば下記特許文献1には、虫ピンの針先にキャップをかぶせて危険を少なくし、針先の保護をするために、磁石でなる円筒状のキャップ中央部に虫ピンの針先収納部を設ける虫ピンキャップが開示されている。
【0004】
特許文献1によれば、従来、虫ピンの針先がむき出しの状態であり、危険であるという問題点に鑑みてなされたものであり、虫ピンの針先にキャップをかぶせ危険を少なくしようとするために、磁石でなる円筒状のキャップの中央部に虫ピンの針先を収納する針先収納部を設けることとされる。
【0005】
すなわち、キャップの針先収納部に虫ピンの針先を挿入するが、キャップは磁石でなるので磁石の作用により針先より抜け落ちず、虫ピンを使用するときは、キャップを針先から外せばよい。より具体的には、
図5に示すように、磁石でなる円筒状のキャップ51の中央部に虫ピン53の針先を収納する針先収納部52を設ける構成とする発明が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】登録実用新案公報第3021747号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来、尖鋭な針先を有する各種ピンや釘等の針先保護と安全対策とを兼ね備えたキャップであって、針先との適切な摩擦力で安定して保持され、繰り返し利用が可能なピンキャップは用いられていない。また、好ましくは、布等に通された使用状態のピンに装着されることが可能なピンキャップであり、さらに好ましくはピンキャップの位置を使用者に通知したり、または/およびピンキャップをマーカーや表示手段、あるいはガイド紐等の係止手段として利用できることが望ましい。
【0008】
本発明は、上述のような問題点に鑑み為されたものであって、針先を収納するだけではなく、挿入された針先との摩擦力で安定保持可能なピンキャップ等を提案することを目的とする。
【0009】
また、好ましくは、暗闇でも視認者に容易に視認されるとともに、視認者に所望の情報を提供し得るピンキャップを提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のピンキャップは、ピンの少なくとも先端が挿入されて摩擦力により挿入されたピンの先端を保持するゲル状充填材と、ピンの先端が挿入され得る開口部を有し内部に充填材を保持する外郭ケースと、を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明のピンキャップは、好ましくはゲル充填材と、挿入されたピンと、の間の最大静止摩擦力は、ピンの重さよりも大きいことを特徴とする。
【0012】
本発明のピンキャップは、さらに好ましくはゲル状充填材が、外郭ケースよりも柔らかいことを特徴とする。
【0013】
本発明のピンキャップは、さらに好ましくはゲル状充填材が、シリコン樹脂またはゴムで形成されることを特徴とする。
【0014】
本発明のピンキャップは、さらに好ましくは外郭ケースが、プラスチックで形成されることを特徴とする。
【0015】
本発明のピンキャップは、さらに好ましくは外郭ケースが、ピンが挿入される開口部を除く部位に、ガイド部材を係止し得る少なくとも一つの貫通孔を備えることを特徴とする。
【0016】
本発明のピンキャップは、さらに好ましくは外郭ケースが光を透過する部材で形成され、外部からその光を視認可能な発光体を内部に備えることを特徴とする。
【0017】
本発明のピンキャップは、さらに好ましくは発光体が発光ダイオードであることを特徴とする。
【0018】
本発明のピンキャップは、さらに好ましくはピンの挿入により発光体を点灯させるスイッチを備えることを特徴とする。
本発明のピンキャップの点灯方法は、舞台幕にピンキャップを装着する工程と、舞台演者または観客の少なくともいずれか一方がピンキャップを視認できるように点灯させる工程と、を有することを特徴とする。
【0019】
本発明のピンキャップの点灯方法は、舞台幕にピンキャップを所望の形状に対応するように複数個装着する工程と、所望の形状を舞台演者または観客の少なくともいずれか一方が所望の形状を視認できるように点灯させる工程と、を有することを特徴とする。
【0020】
本発明のピンキャップの装着方法は、舞台幕にピンキャップを装着する工程と、舞台演者または観客の少なくともいずれか一方が視認できるように貫通孔にガイド部材を係止する工程と、を有することを特徴とする。
【0021】
本発明のピンキャップの装着方法は、舞台幕にピンキャップを所望の形状に対応するように複数個装着する工程と、舞台演者または観客の少なくともいずれか一方が所望の形状を視認できるように貫通孔にガイド部材を係止する工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
針先を収納するだけではなく、挿入された針先との摩擦力で安定保持可能なピンキャップ等を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の第一の実施形態にかかるピンキャップの構成概要を説明する概念図である。
【
図2】第二の実施形態にかかるピンキャップの構成概要を説明する概念図である。
【
図3】第三の実施形態にかかるピンキャップの構成概要を説明する概念図である。
【
図4】第四の実施形態にかかるピンキャップの構成概要を説明する概念図である。
【
図5】従来のピンキャップの構成概要を説明する図である。
【
図6】(a)は四つのピンキャップを舞台幕やカーテンに装着し、その間をガイド紐で連結することにより、観客や舞台演者に視認可能な矢印形状のマーカーを形成した例を説明する図であり、(b)は15個のピンキャップを比較的小さな間隔で舞台幕やカーテンに矢印形状に装着し、暗闇でも発光ダイオードの点灯により観客や舞台演者に視認可能な全体として矢印形状のマーカーを形成した例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、本発明の第一の実施形態にかかるピンキャップ200の構成概要を説明する概念図である。
図1に示すように、ピンキャップ200は、外郭ケース210と、その内部に充填された充填材220とを備える。以下の説明において、ピンとは画鋲に限定されるものではなく、釘や虫ピンや待ち針等尖鋭な針先を備える他の係止部品を含むものとする。
【0025】
外郭ケース210は、プラスチック系素材等の外形を保持し維持することが可能な比較的硬い素材で形成される。一方、充填材220は、シリコン樹脂やゴム系材料等の針先を繰り返し抜き差し可能な素材で形成され、典型的にはゲル素材で形成される。
【0026】
充填材220がゲル素材で構成されるため、外郭ケース210の開口部を介してピン100の針先が充填材220の内部に容易に挿入され得る。また、充填材220は、挿入されたピン200の針先と適度な摩擦力を生成し、ピン200がその向きに拘わらず抜け落ちることがないように保持する。
【0027】
好ましくは、充填材220が、ピン100の挿入部位との相互作用で生成する最大静止摩擦力により、ピン100が垂直下方に向けられた場合でも自重により抜け落ちることを防止できることが好ましい。
【0028】
これにより、ピンキャップ200は、ピン100の針先を保護するだけではなく、人体等への危害事故の懸念を低減させることができる。また、ピン100とピンキャップ200とは、布やカーテン、被服等をピン100とピンキャップ200との間に挟持するようにして使用してもよく、ピンキャップ200は仮止め位置を示すマーカーや目印、視認者への各種インジケータとして用いることができる。
【0029】
図2は、第二の実施形態にかかるピンキャップ300の構成概要を説明する概念図である。
図2から理解できるように、ピンキャップの外郭ケース310には充填材320が充填されており、そのピンが挿入される開口部の対向位置端には、ストラップやガイド紐等が挿入され係止され得るアーム330が備えられる。
【0030】
アーム330は、外郭ケース310と同一素材で一体的に形成されることができる。アーム330により、アーム330と外郭ケース本体とにより貫通孔340が形成されて、この貫通孔340にガイド紐等が挿入され得る。
【0031】
例えば、演劇場における舞台幕の任意の複数箇所に第二の実施形態のピンキャップを装着すれば、装着されたピンキャップの間をガイド紐で連結し、任意の形状の模様を舞台幕に描くことも可能となる。
【0032】
また、連結したガイド紐で、舞台上の演者や観客に視認可能なガイド矢印やマーク形状を形成し、舞台の所定位置を示すマーキングとして用いたり、観客への位置情報通知手段として用いることも可能である。また、舞台幕上において、観客や舞台演者に所望形状のサイン、目印、矢印、任意のマーク等を点灯表示することが可能である。
【0033】
また、
図3は、第三の実施形態にかかるピンキャップ400の構成概要を説明する概念図である。
図3に示すように、外郭ケース410とその内部に充填された充填材420とを備えるピンキャップは、さらにその内部に発光体450を備える。
【0034】
図3においては、発光体450の説明のために、外郭ケース410の約下半分は取り去って透過視状態を示している。発光体450は、好ましくは発光ダイオードであってもよい。また、発光体450に電力を供給するための蓄電池440を備える。蓄電池440は、例えばボタン電池等の小型・軽量の二次電池であることが好ましい。
【0035】
第三の実施形態においては、プラスチック等で形成された外郭ケース410は、LED等の発光体450の光を少なくとも視認者から視認可能な程度に、透過させる透明または半透明の素材とする。さらに、好ましくは、シリコン樹脂やゴム素材で形成される充填材420についても、発光体450の光を透過可能な透明または半透明な素材で形成する。
【0036】
発光体450と蓄電池440とは、外郭ケース410の最深部において充填材420の中に埋め込まれるように包含されてもよく、外郭ケース450の内壁に設けられた不図示の係止部に発光体450が係止されて固定されてもよい。
【0037】
また、
図4は、第四の実施形態にかかるピンキャップの構成概要を説明する概念図である。
図4においては、充填材520の記載は一部省略している。外郭ケース510内部に配置された発光体550は、ピン500が挿入されるとオンとなるスイッチ560により、蓄電池540から電気が供給されて点灯する。
【0038】
スイッチ560は
図5に示すように、ピン500の先端の押圧動作により、オンとなる形式のものでもよいし、挿入されたピン500によりピン500の先端が電流をバイパスする形式のものでもよい。一般にピン500は、導電性の素材が用いられていることが多いことから、その場合にはバイパス形式を用いてピン先が電気をいわば仲介することにより、電気的導通を完成することとできる。すなわち、ピン非挿入時にはオープン状態の配線の両端端子を、ピンの挿入に伴いピン先が電気的に導通させることが可能なように、スイッチを構成することができる。
【0039】
図6(a)は四つのピンキャップ300(1)〜300(4)を舞台幕やカーテンに装着し、その間をガイド紐610で連結することにより、観客や舞台演者に視認可能な矢印形状のマーカーを形成した例を説明する図であり、
図6(b)は15個のピンキャップ400(1)〜400(15)を比較的小さな間隔で舞台幕やカーテンに矢印形状に装着し、暗闇でも発光ダイオードの点灯により観客や舞台演者に視認可能な全体として矢印形状のマーカーを形成した例を説明する図である。
【0040】
図6に示すように、ピンキャップ300,400等自体は小型軽量であり持ち運びや保管が容易である一方、演劇場等のマーカー表示現場において、比較的大型のマーカー等を容易に構成することが可能となる。また、発光ダイオードにより夜間や上演中であっても容易に視認可能な表示構成とできる。
【0041】
特に、特設舞台やアリーナコンサート、野外コンサートのような移動を前提とした一時的な演劇場の場合には、固定された建屋のコンサートホールのように固定マーカーを建屋の壁等に埋め込むことには馴染まない。また、大型のサインボード等は持ち運びや保管が容易ではない。本実施形態で提案するピンキャップを複数用いることにより、比較的大きな任意形状のサインやマーカーであっても容易に形成することが可能であり、持ち運びや保管への負担は極めて少なくすることができる。また、舞台幕等に装着すれば、舞台幕で隔てられた演者または観客のいずれか一方にのみに対して、所望のマーカーを視認させることができるので、移動演劇場等における位置表示や各種情報表示に極めて有用である。また、発光ダイオードは装着使用時のみ発光することとできるので、電池の浪費を低減できる。
【0042】
上述した各実施形態のピンキャップとその点灯方法とは、上述した各実施形態での説明に限定されるものではなく、自明な範囲で適宜その形状や構造や使用方法を変更することができるとともに、自明な範囲で適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0043】
100・・ピン、200・・ピンキャップ、210・・外郭ケース、220・・充填材。