特許第6006031号(P6006031)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6006031
(24)【登録日】2016年9月16日
(45)【発行日】2016年10月12日
(54)【発明の名称】蓄電装置の放電装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/033 20060101AFI20160929BHJP
   B60R 16/04 20060101ALI20160929BHJP
【FI】
   B60R16/033 Z
   B60R16/04 A
【請求項の数】5
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2012-170394(P2012-170394)
(22)【出願日】2012年7月31日
(65)【公開番号】特開2014-28595(P2014-28595A)
(43)【公開日】2014年2月13日
【審査請求日】2015年5月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000228578
【氏名又は名称】日本ケミコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 正悟
(72)【発明者】
【氏名】山下 丈晴
(72)【発明者】
【氏名】高橋 正好
(72)【発明者】
【氏名】大原 均
(72)【発明者】
【氏名】小原 譲治
【審査官】 菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0160578(US,A1)
【文献】 特開2007−030643(JP,A)
【文献】 特開2011−063234(JP,A)
【文献】 特開2001−337125(JP,A)
【文献】 特開2010−048800(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02
B60R 16/033
B60R 16/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両におけるコンデンサを含む蓄電装置の該コンデンサの放電を行う、蓄電装置の放電装置であって、
上記蓄電装置は、上記車両の前後方向に延びるフロントサイドフレームよりも車幅方向外側でかつ該車両のフロントホイールハウスよりも車両前側に配設されているとともに、該蓄電装置の少なくとも一部が上記フロントサイドフレームの下端よりも下側に位置するように配設されており
上記放電装置は、上記蓄電装置における上記フロントサイドフレームの下端よりも下側でかつ車幅方向外側の部分に取り付けられていることを特徴とする蓄電装置の放電装置。
【請求項2】
請求項1記載の蓄電装置の放電装置において、
上記コンデンサを放電させるための放電抵抗部と、
作業者が、上記放電抵抗部による上記コンデンサの放電を行う放電回路を形成するための操作を行う操作部とを備えていることを特徴とする蓄電装置の放電装置。
【請求項3】
請求項記載の蓄電装置の放電装置において、
上記放電抵抗部及び上記操作部を収容する箱状のケースを更に備え、
上記ケースは、該ケースの内部を外部に開放する開放部を有するケース本体と、該ケース本体の開放部を開閉可能に閉塞する蓋部材とを有し、
上記操作部は、上記ケース本体の開放部が開状態にあるときに、上記作業者が上記操作を行うことが可能となるように構成されていることを特徴とする蓄電装置の放電装置。
【請求項4】
請求項記載の蓄電装置の放電装置において、
上記蓋部材は、上記ケース本体の開放部が閉状態にあるときに該ケース本体の車幅方向外側に位置しているとともに、該ケース本体に対して着脱可能であって、該蓋部材を上記ケース本体から外すことで、上記ケース本体の開放部を開状態にすることが可能に構成され、
更に上記蓋部材は、上記ケース本体から外す際に、該蓋部材の車両後側端部において上下方向に延びる仮想の軸を中心にして、該蓋部材の車両前側端部が車幅方向外側でかつ車両後側に移動するように該蓋部材を回動させるよう構成されていることを特徴とする蓄電装置の放電装置。
【請求項5】
請求項又は記載の蓄電装置の放電装置において、
上記操作部は、互いに接続されることで上記放電回路を形成する2つのコネクタのうちの一方のコネクタで構成され、
上記両コネクタのうちの他方のコネクタは、上記ケース本体に固定されており、
上記一方のコネクタは、上記他方のコネクタから離れた位置に位置していて、上記作業者が、該位置から移動させて上記他方のコネクタに対して接続する操作が可能なように構成されていることを特徴とする蓄電装置の放電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両における蓄電装置のコンデンサの放電を行う、蓄電装置の放電装置に関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車等の車両に、二次電池(例えば、ニッケル水素二次電池、ニッカド二次電池、リチウムイオン二次電池、鉛蓄電池)のような、電気を蓄電する蓄電装置を搭載することはよく知られている。この蓄電装置としては、二次電池以外にも、キャパシタ(コンデンサ)が用いられることも知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−89040号公報
【特許文献2】特開2006−281806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来例のように、車両に、コンデンサを含む蓄電装置を搭載した場合、その蓄電装置の故障等により蓄電装置を新しいものと交換する際や、その車両を解体して廃棄する際には、蓄電装置のコンデンサの放電を十分に行うことが好ましい。
【0005】
そこで、車両に、蓄電装置のコンデンサの放電を行う放電装置を設けることが考えられる。この放電装置は、作業者の操作により上記コンデンサの放電を行う放電回路を形成するように構成しておけばよい。そして、放電装置は、予め蓄電装置と接続しておけば、作業者は、蓄電装置と放電装置とを接続する操作をしなくても済む。このことと、蓄電装置及び放電装置を接続するハーネスの配索及び保護を容易にする観点とから、放電装置は、蓄電装置に取り付けておくことが好ましい。また、作業者が、上記放電回路を形成するための操作も容易に行えるようにする必要がある。
【0006】
一方、上記蓄電装置は熱を発生するものであるので、車両走行風によって出来る限り冷却することが好ましく、また、エンジンからの熱の影響を受けないようにすることが望ましい。
【0007】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、蓄電装置及び放電装置を適切な位置に配設して、蓄電装置の熱による弊害を防止しつつ、作業者による放電作業の作業性を向上させようとすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、この発明では、車両におけるコンデンサを含む蓄電装置の該コンデンサの放電を行う、蓄電装置の放電装置を対象として、上記蓄電装置は、上記車両の前後方向に延びるフロントサイドフレームよりも車幅方向外側でかつ該車両のフロントホイールハウスよりも車両前側に配設されているとともに、該蓄電装置の少なくとも一部が上記フロントサイドフレームの下端よりも下側に位置するように配設されており、上記放電装置は、上記蓄電装置における上記フロントサイドフレームの下端よりも下側でかつ車幅方向外側の部分に取り付けられている、という構成とした。
【0009】
上記の構成により、蓄電装置が、フロントサイドフレームよりも車幅方向外側でかつフロントホイールハウスよりも車両前側に配設されているので、蓄電装置を車両走行風によって冷却することができるとともに、エンジンからの熱の影響を受け難くすることができる。この蓄電装置の車幅方向外側の部分に放電装置を取り付けることにより、作業者は、フロントホイールハウスを構成するマッドガードの前側下部を捲ってフロントホイールハウスの前側部分に開口部を形成し、この開口部から放電装置にアクセスして放電作業を容易に行うことができる。また、放電装置が蓄電装置に取り付けられていることで、予め蓄電装置と放電装置とを接続しておくことができ、これにより、作業者は、蓄電装置と放電装置とを接続する操作をしなくても済み、コンデンサの放電を行う放電回路を形成するための操作が容易になる。さらに、蓄電装置と放電装置とを接続するハーネスの配索及び保護が容易になる。
【0010】
また、上記放電装置は、上記蓄電装置における上記フロントサイドフレームの下端よりも下側でかつ車幅方向外側の部分に取り付けられていることで、マッドガードの前側下部の捲り量が少なくても、作業者は、放電装置にアクセスして放電作業を容易に行うことができる。
【0011】
上記蓄電装置の放電装置において、上記コンデンサを放電させるための放電抵抗部と、作業者が、上記放電抵抗部による上記コンデンサの放電を行う放電回路を形成するための操作を行う操作部とを備えている、ことが好ましい。
【0012】
このことで、作業者は、蓄電装置のコンデンサの放電を行うに際して、操作部による操作により放電回路を形成すれば、コンデンサの電荷が放電抵抗部により消費されてコンデンサの放電が行われる。よって、コンデンサの放電作業を容易に行うことができる。
【0013】
上記放電抵抗部及び上記操作部を収容する箱状のケースを更に備え、上記ケースは、該ケースの内部を外部に開放する開放部を有するケース本体と、該ケース本体の開放部を開閉可能に閉塞する蓋部材とを有し、上記操作部は、上記ケース本体の開放部が開状態にあるときに、上記作業者が上記操作を行うことが可能となるように構成されている、ことが好ましい。
【0014】
こうすることで、簡単な構成で、放電抵抗部及び操作部を保護することができるとともに、作業者が不用意に操作部を操作するのを防止することができる。
【0015】
上記蓋部材は、上記ケース本体の開放部が閉状態にあるときに該ケース本体の車幅方向外側に位置しているとともに、該ケース本体に対して着脱可能であって、該蓋部材を上記ケース本体から外すことで、上記ケース本体の開放部を開状態にすることが可能に構成され、更に上記蓋部材は、上記ケース本体から外す際に、該蓋部材の車両後側端部において上下方向に延びる仮想の軸を中心にして、該蓋部材の車両前側端部が車幅方向外側でかつ車両後側に移動するように該蓋部材を回動させるよう構成されている、ことが好ましい。
【0016】
このことにより、作業者が上記開口部から手を挿入して蓋部材をケース本体から外す際に、蓋部材の車両前側端部を車幅方向外側に移動させつつ作業者の側に引くことでケース本体から容易に取り外すことができる。
【0017】
上記操作部は、互いに接続されることで上記放電回路を形成する2つのコネクタのうちの一方のコネクタで構成され、上記両コネクタのうちの他方のコネクタは、上記ケース本体に固定されており、上記一方のコネクタは、上記他方のコネクタから離れた位置に位置していて、上記作業者が、該位置から移動させて上記他方のコネクタに対して接続する操作が可能なように構成されている、ことが好ましい。
【0018】
このことで、操作部がON/OFF切換えスイッチ等で構成されている場合とは異なり、作業者は、不用意に操作部を操作して放電回路を形成するようなことはない。しかし、作業者が放電回路を形成しようとする場合には、一方のコネクタを、固定された他方のコネクタに結合する操作を行うだけで両コネクタ同士を接続することができ、放電回路を容易に形成することができる。よって、誤操作を防止しつつ、放電回路の形成を容易に行うようにすることができる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明の蓄電装置の放電装置によると、蓄電装置が、フロントサイドフレームよりも車幅方向外側でかつフロントホイールハウスよりも車両前側に配設されているとともに、該蓄電装置の少なくとも一部が上記フロントサイドフレームの下端よりも下側に位置するように配設されており、放電装置が、上記蓄電装置における上記フロントサイドフレームの下端よりも下側でかつ車幅方向外側の部分に取り付けられていることにより、蓄電装置の熱による弊害を防止しつつ、作業者による放電作業の作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係る蓄電装置の放電装置が搭載された車両の前部の要部を示す、車両左斜め前側から見た斜視図である。
図2】上記車両の前部の要部を示す平面図である。
図3】上記車両の前部の要部を示す、車両左側から見た側面図である。
図4】上記車両の前部の要部(車両左側部分)を示す正面図である。
図5】上記車両の前部における左側のサイドフレームよりも左側の部分を、蓄電装置の上下方向中間位置で水平方向に沿って切断した断面図である。
図6】蓄電装置、放電装置、発電機、第1〜第3ハーネス及びバッテリの位置関係を示す、車両の前部の平面図である。
図7】蓄電装置付近における第1〜第3ハーネスの配索の様子を示す、車両左斜め後側から見た斜視図である。
図8】発電機、蓄電装置、放電装置、電力変換装置、バッテリ及び車両電気負荷の電気接続関係を示す図である。
図9】放電装置のケースのケース本体から蓋部材を外した状態を示す、車幅方向外側から見た図である。
図10】上記ケースのケース本体と蓋部材とを分解して示す下面図である。
図11】上記ケース本体に蓋部材を取り付けた状態を、ケース内の部品を省略して示す、図9のXI−XI線に相当する線に沿って切断した断面図である。
図12】上記ケース本体に蓋部材を取り付けた状態を、ケース内の部品を省略して示す、図9のXII−XII線に相当する線に沿って切断した断面図である。
図13】蓋部材のケース外側を示す、車幅方向外側から見た図である。
図14】蓋部材のケース内側を示す、車幅方向内側から見た図である。
図15】蓋部材を示す車両前側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0022】
図1図3は、本発明の実施形態に係る放電装置150が搭載された車両1の前部の要部を示す。この車両1の前部におけるエンジンルーム2内には、当該車両1の左右の前輪3を駆動する不図示のエンジン及びトランスミッションが配設されている。以下、上記車両1についての前、後、左、右、上及び下を、それぞれ単に前、後、左、右、上及び下という。
【0023】
上記エンジン及びトランスミッションは、後述の左右一対のフロントサイドフレーム5間において車幅方向(左右方向)に並んでいて、本実施形態では、エンジンは、トランスミッションに対して右側に位置している。
【0024】
上記エンジンルーム2の車幅方向両端部には、前後方向に延びる左右一対のフロントサイドフレーム5が配設されている。各フロントサイドフレーム5の後部は、その高さ位置が後側に向かって徐々に低くなるキック部5aとされている。このキック部5aと略同じ前後位置には、上記エンジンルーム2と車室とを仕切るダッシュパネル9が設けられている。
【0025】
左右のフロントサイドフレーム5の車幅方向外側には、ホイールハウスパネル12(マッドガード)及びサスペンションタワー13がそれぞれ設けられている。各ホイールハウスパネル12は、可撓性のものであって、前輪3の上側を覆うように円弧状に形成されて、その円弧内側にフロントホイールハウス11を構成する。左右のサスペンションタワー13の下端部は、左右のフロントサイドフレーム5にそれぞれ固定され、左右のサスペンションタワー13の上端部は、左右のエプロンレインメンバー16にそれぞれ固定されている。
【0026】
上記車両1の前端部には、フロントバンパー19(図5参照)が設けられ、このフロントバンパー19内に、車幅方向に延びるバンパービーム18が設けられている。上記フロントバンパー19の左右両端部は後側にそれぞれ延びて、それらの後端部は、左右のフロントホイールハウス11の直前にそれぞれ位置している。そして、左右のホイールハウスパネル12の車幅方向外側の端部における前側かつ下側部分が、上記フロントバンパー19の左右両端部の後端部にそれぞれ係合ピンを介して係合固定されている。
【0027】
左右のフロントサイドフレーム5の前端には、クラッシュカン6がそれぞれ配設されている。具体的には、各フロントサイドフレーム5の前端にフランジ部5bが形成され、クラッシュカン6の後端にもフランジ部6aが形成されている。これら互いのフランジ部5b,6aが合わされた状態で、締結部材7(ボルト及びナット)によって固定されている。
【0028】
上記バンパービーム18の左右両端部は、左右のクラッシュカン6の前端にそれぞれ締結固定されている。これら左右のクラッシュカン6は、バンパービーム18が車両の前面衝突時の衝突荷重を前側から受けたときに、前後方向に潰れることで、その衝撃吸収を行うようになっている。
【0029】
バンパービーム18の後方における左右のクラッシュカン6の間には、不図示のラジエータを支持する枠状のシュラウド20が配設されている。このシュラウド20の上側部分を構成するアッパーメンバー21が車幅方向外側かつ後方に延び、アッパーメンバー21の両端部が連結部材22を介して左右のエプロンレインメンバー16の前端にそれぞれ結合されている。これにより、シュラウド20は、左右のエプロンレインメンバー16に支持されることになる。
【0030】
上記シュラウド20の下側部分には、歩行者保護用のスティフナー25が前側に突出するように固定されている。このスティフナー25は、車両の前面に衝突した歩行者の脚部の下部に接触して該脚部を払うことで、該歩行者を車両1のボンネット上に転倒させ、これにより歩行者の脚部における骨折等の傷害の発生を可及的に防止するものである。尚、スティフナー25の前側は、上記フロントバンパー19により覆われている。
【0031】
サスペンションタワー13と略同じ前後位置には、車幅方向に延びかつ左右両端部にて左右の前輪3をそれぞれ支持するサスペンションクロスメンバ31が配設されている(図2参照)。このサスペンションクロスメンバ31は、車幅方向に延びる本体部31aと、この本体部31aの左右両端部の前縁から前方へ延びる左右の前方延設部31b(図2及び図7参照)とを有している。上記本体部31aの左右両端部に、不図示の左右の前輪サスペンションアーム(ロアアーム)がそれぞれ支持されており、該前輪サスペンションアームを介して前輪3がサスペンションクロスメンバ31に支持される。本体部31aの上面における左右両端部には、上方へ延びる上方延設部31c(図2及び図7参照)がそれぞれ設けられ、左右の上方延設部31cの上端部が、左右のフロントサイドフレーム5の下面にそれぞれ固定されている。
【0032】
左右の前方延設部31bの下面における前端部同士は、車幅方向に延びる連結クロスメンバ32によって連結されている。こうして、サスペンションクロスメンバ31の本体部31a及び左右の前方延設部31b並びに連結クロスメンバ32は、平面視で略矩形枠状をなすペリメータフレームを構成している。
【0033】
上記各前方延設部31bの上面における前端部には、上方へ延びる円筒部材35(図4参照)がそれぞれ固定され、各円筒部材35の上端が、各フロントサイドフレーム5のフランジ部5bの下部において略水平状に折り曲げられて形成された固定部5cの下面にそれぞれ締結固定される。また、各前方延設部31bの前端には、上記スティフナー25の左右両端部に結合される結合部材36が締結固定されている。
【0034】
上記スティフナー25の左端から左側のホイールハウスパネル12の前側下端にかけての部分(車両1の左前角部の下部)、及び、スティフナー25の右端から右側のホイールハウスパネル12の前側下端にかけての部分(車両1の右前角部の下部)には、それぞれ、当該角部の下面を覆うアンダーカバー41が配設されている(図1及び図2参照)。
【0035】
左側のフロントサイドフレーム5よりも車幅方向外側(左側)つまりエンジンルーム2の左外側でかつ左側のフロントホイールハウス11よりも車両前側の位置に、電気を蓄電する蓄電装置70が配設されている。この蓄電装置70は、左側のフロントサイドフレーム5(詳細には、フランジ部5b)に支持されている。また、蓄電装置70は、車両正面視で、左側の前輪3に対して車幅方向内側にずれた位置に配設されている(図4及び図5参照)。さらに、蓄電装置70は、前後方向において後述の発電機85と略同じ位置に配設されている(図6参照)。尚、蓄電装置70は、左側のクラッシュカン6のフランジ部6aに支持されるようにしてもよい。
【0036】
蓄電装置70は、保持部材77を有していて、この保持部材77により、左側のフロントサイドフレーム5のフランジ部5bに取付固定されている。蓄電装置70は、複数のコンデンサ(キャパシタ)を有するものである。尚、蓄電装置70は、1つのコンデンサを有するものであってもよい。
【0037】
蓄電装置70は、上下方向に延びる形状をなしていて、左側のフロントサイドフレーム5の上端と略同じ高さ位置から左側のアンダーカバー41の上面近傍の高さ位置まで延びている。すなわち、蓄電装置70は、その一部が左側のフロントサイドフレーム5の下端よりも下側に位置するように配設されている。尚、蓄電装置70の全体が、左側のフロントサイドフレーム5の下端よりも下側に位置するようにしてもよい。
【0038】
図6に示すように、上記エンジンルーム2における右前部には、上記エンジンにより駆動されて発電する発電機85(オルタネータ)が配設されている。この発電機85は、上記エンジンの前部に設けられていて、該エンジンのクランク軸により、エンジンの右側の端面に設けられたベルトを介して回転駆動されて発電する。この発電機85による発電電力が蓄電装置70に供給されて蓄電される。発電機85は、特に、車両1の減速時に車両1の運動エネルギーを電力(回生電力)に変換し、この回生電力が蓄電装置70に蓄えられる。上記発電機85と蓄電装置70とは、第1ハーネス86により繋がれており(図6及び図7参照)、この第1ハーネス86を介して発電機85による電力が蓄電装置70に供給される。
【0039】
発電機85は、エンジンルーム2内の右前部において、フロントサイドフレーム5と略同じ高さ位置で連結クロスメンバ32の後側に位置している。そして、第1ハーネス86は、発電機85から連結クロスメンバ32の車幅方向中央に向かって斜め下側に延びる垂下部87と、連結クロスメンバ32に沿って車幅方向に延びる水平部88(図7参照)とを有し、この水平部88の左側端部が、サスペンションクロスメンバ31の前方延設部31bの車幅方向内側近傍で上側に折れ曲がって、上記保持部材77に設けられた接続部78に接続されている。
【0040】
連結クロスメンバ32の後面には、第1ハーネス86の水平部88を保護する第1プロテクタ部材89(図6及び図7参照)が設けられている。この第1プロテクタ部材89は、第1ハーネス86の水平部88が挿通される角パイプ状のプロテクタ本体部90と、このプロテクタ本体部90に設けられた取付ブラケット91とを有している。この取付ブラケット91が、連結クロスメンバ32の上面に、ボルトや係合固定具等の固定部材を介して固定されることにより、第1ハーネス86の水平部88が、第1プロテクタ部材89により保持された状態で連結クロスメンバ32の後面に止着される。このように水平部88を連結クロスメンバ32に止着することで、第1ハーネス86を安定して支持することができる。また、第1ハーネス86(水平部88)を連結クロスメンバ32の後面に止着することで、車両1の前面衝突時に、その衝撃荷重から第1ハーネス86を効果的に保護することができるとともに、シュラウド20又はシュラウド20に支持されたラジエータの後方変位が第1ハーネス86により阻害されるという事態の発生を防止することができる。
【0041】
詳細な図示は省略するが、上記車両1の車室内における左側のフロントシートのシートクッションと車室フロアとの間には、蓄電装置70からの電力を変換する電力変換装置92(図8参照)が配設されている。図8に示すように、本実施形態では、蓄電装置70から、電力変換装置92を介して、一般的な鉛蓄電池で構成されたバッテリ121と車両1の車両電気負荷130とに、上記蓄電した電気(電力)が供給されるように構成されている。車両電気負荷130は、例えばオーディオ装置、ナビゲーション装置、照明装置等である。蓄電装置70からの、車両電気負荷130で使い切れない余剰分の電気(電力)が、車両電気負荷130に電気(電力)を供給するバッテリ121に供給されて蓄電される。
【0042】
電力変換装置92は、蓄電装置70からの電力を降圧してバッテリ121及び車両電気負荷130へ出力するDC/DCコンバータを含む。すなわち、本実施形態では、発電機85及び蓄電装置70側の電圧(例えば25V)が、バッテリ121及び車両電気負荷130側の電圧(12V)よりも高いために、蓄電装置70からバッテリ121及び車両電気負荷130へ電力を供給する際に変圧する必要があり、そのためにDC/DCコンバータを含む電力変換装置92が設けられる。このように発電機85及び蓄電装置70側の電圧を高くした方が、発電機85による発電電力を効率良く蓄電装置70に蓄えることが可能になる。尚、これに限らず、バッテリ121及び車両電気負荷130側の電圧の方が高い場合であってよく、この場合には、電力変換装置92としては、蓄電装置70からの電力を昇圧してバッテリ121及び車両電気負荷130へ出力するものとすればよい。
【0043】
電力変換装置92は、蓄電装置70と同様に、車両1の左側部分に配設されている。また、蓄電装置70は、左側のフロントホイールハウス11よりも前側に配設されている一方、電力変換装置92は、左側のフロントホイールハウス11よりも後側に配設されている。これら蓄電装置70と電力変換装置92とは、第2ハーネス94により繋がれており、この第2ハーネス94を介して蓄電装置70から電力が電力変換装置92に供給される。第2ハーネス94の蓄電装置70側の端部は、上記接続部78に接続される。
【0044】
上記電力変換装置92と上記バッテリ121とは、第3ハーネス95により繋がれており、この第3ハーネス95を介して電力変換装置92から電力がバッテリ121に供給される。
【0045】
第2及び第3ハーネス94,95は、蓄電装置70の後側近傍で1つに束ねられて、電力変換装置92へ向かう。すなわち、第2及び第3ハーネス94,95は、左側のフロントホイールハウス11の上側(ホイールハウスパネル12とその上方に設置されたホイールエプロンメンバ16との間)を通り、その後、ダッシュパネル9の左側端部の前面に沿って下側に延びた後、車室フロアの下面に沿って後側へ延び、そこから、車室フロアに設けられた挿通孔より車室内に導入されて上記電力変換装置92に接続される。第2及び第3ハーネス94,95は、左側のフロントホイールハウス11の上側位置においては、ホイールエプロンメンバ16に複数個の係合固定具109を介して固定された1つの被覆チューブ108により覆われている(図7参照)。
【0046】
図6に示すように、上記バッテリ121は、エンジンルーム2内における左側フロントサイドフレーム5の車幅方向内側の面に接するように配設されている。このバッテリ121は、左側のフロントサイドフレーム5に固定されている。こうして、バッテリ121も、蓄電装置70及び電力変換装置92と同様に、車両1の左側部分に配設される。
【0047】
このように第3ハーネス95により電力変換装置92とバッテリ121とが接続されることによって、電力変換装置92から降圧された電圧でもって電力がバッテリ121に供給されて蓄電される。尚、バッテリ121と車両電気負荷130とは、不図示のハーネスを介して接続されており、バッテリ121から該ハーネスを介して車両電気負荷130に電力が供給されるととともに、蓄電装置70から第2ハーネス94、電力変換装置92、第3ハーネス95及び上記不図示のハーネスを介して車両電気負荷130に電力が供給される。
【0048】
ここで、蓄電装置70の故障等により蓄電装置70を新しいものと交換する際や、車両1を解体して廃棄する際には、蓄電装置70のコンデンサの放電を十分に行うことが好ましい。そこで、本実施形態では、蓄電装置70に、該蓄電装置70のコンデンサの放電を行う放電装置150が取り付けられている。本実施形態では、後述の如く、上記コンデンサの放電作業に際して、作業者は、左側のホイールハウスパネル12の前側下部を上側かつ車幅方向内側へ捲って左側のフロントホイールハウス11の前側部分に開口部を形成し、この開口部から放電装置150にアクセスして放電作業を行う必要があるので、放電装置150は、蓄電装置70において放電作業がし易い位置、つまり蓄電装置70の車幅方向外側(左側)の部分に取り付けられている。また、左側のフロントホイールハウス11の前側下部の捲り量を出来る限り少なくする観点から、放電装置150は、蓄電装置70における左側のフロントサイドフレーム5の下端よりも下側でかつ車幅方向外側の部分(本実施形態では、蓄電装置70の下端部近傍における車幅方向外側の部分)に取り付けられている。
【0049】
放電装置150は、箱状のケース151を備えている。このケース151は、ケース151の内部を外部に開放する開放部161a(図9図11及び図12参照)を有する樹脂製のケース本体161と、該ケース本体161の開放部161aを開閉可能に閉塞する樹脂製の蓋部材162とを有する。ケース本体161aの開放部161aは、車幅方向外側(左側)を向いており、蓋部材162は、ケース本体161の開放部161aが閉状態にあるときに該ケース本体161の車幅方向外側に位置してケース本体161に係合固定されている。また、蓋部材162は、ケース本体161に対して着脱可能に構成されていて、蓋部材162をケース本体161から外す(蓋部材162とケース本体161との係合を解除する)ことで、ケース本体161の開放部161aを開状態にすることが可能に構成されている。
【0050】
図9図12に示すように、ケース本体161は、略直方体形状をなしており、ケース本体161の開放部161aは、ケース本体161の車幅方向外側(図9で手前側)の面の略全体に亘って設けられていて、車幅方向外側から見て略矩形状をなしている。すなわち、ケース本体161は、車幅方向外側から見て略矩形状の車幅方向内側壁面部161vと、この車幅方向内側壁面部161vの前後及び上下の周縁部に車幅方向外側へ延びるようにそれぞれ立設された前側壁面部161w、後側壁面部161x、上側壁面部161y及び下側壁面部161zとを有している。
【0051】
ケース本体161の前側壁面部161vには、車幅方向外側から見て該前側壁面部161vと共に矩形枠状をなす枠状部161bが形成されている。この枠状部161bにおいて前側壁面部161vと平行に上下方向に延びる上下延設部161cの車幅方向外側の端面には、突起部161dが突出形成されている。また、上下延設部161cにおける枠状部161b内側の面(後面)には、第1係合爪161eが形成されている。さらに、ケース本体161の後側壁面部161wの後面における上下に離れた2箇所には、第2及び第3係合爪161f,161gがそれぞれ形成されている。
【0052】
ケース本体161の下側壁面部161zの車幅方向外側の端面(開放部161a側の端面)における前後両端部には、排水用切欠き部161hがそれぞれ形成されている。これら排水用切欠き部161hは、蓋部材162により開放部161aが閉塞されているときにおいて、ケース151の内部に浸入した水を外部に排出する排水孔の役割を果たす。ここで、蓋部材162により開放部161aが閉塞されているときには、排水用切欠き部161hの下側は、蓋部材162における後述の下側縁部162zにより覆われて外部からは見えないが、蓋部材162の下側縁部162zとケース本体161の下側壁面部161zとの間には隙間が形成されているので、ケース151内の水は排水用切欠き部161hから外部に排出される。一方、排水用切欠き部161hの下側が蓋部材162の下側縁部162zにより覆われていることで、車両1の走行時に跳ね上げられた水しぶき等が、排水用切欠き部161hを通してケース151内に浸入するのを防止することができる。
【0053】
ケース本体161の上側壁面部161yにおける車幅方向外側の端面の後部には、後述のプラス側及びマイナス側ハーネス171,172がケース151の外部から内部に進入するために挿通されるハーネス挿通用切欠き部161iが形成されている。また、ケース本体161の上側壁面部161yの上面には、プラス側及びマイナス側ハーネス171,172を支持するハーネス支持部161jが上側に突出形成されている。
【0054】
ケース本体161の上側壁面部161yの上面及び下側壁面部161zの下面には、締結部材164によってケース本体161を蓄電装置70に取り付けるための取付部161kがそれぞれ形成されている。
【0055】
ケース本体161の上側壁面部161y及び下側壁面部161zにおける車幅方向外側の端面の後部は、後側に向かって車幅方向内側に傾斜しており、後側壁面部161xの車幅方向外側の端面は、前側壁面部161wの車幅方向外側の端面よりも車幅方向内側に位置している。
【0056】
図10図15に示すように、蓋部材162は、ケース本体161の開放部161aを車幅方向外側から覆うようにケース本体161に係合固定されている。具体的に、蓋部材162は、ケース本体161の開放部161aを覆う、車幅方向外側(図13の手前側)から見て略矩形状の板状の基部162vと、この基部162vの前後及び上下の周縁部(前側縁部162w、後側縁部162x、上側縁部162y及び下側縁部162z)が、ケース本体161の前側壁面部161w、後側壁面部161x、上側壁面部161y及び下側壁面部161zの車幅方向外側の端部を、ケース本体161の外側から囲むように、ケース本体161側(車幅方向内側)に突出している。
【0057】
蓋部材162の前側縁部162wには、車幅方向内側に延びた後に車幅方向外側かつ前側に折れ曲がる、上下方向から見て略V字状をなす可撓部162aが形成されている。この可撓部162aは、ケース本体161の枠状部161b内に車幅方向外側から挿入される。
【0058】
可撓部162aの前側部分(上記折れ曲がった部分よりも前側の部分)の上下方向中間部には、可撓部162aの挿入が略完了する時点でケース本体161の第1係合爪161eと係合する係合用切欠き部162bが形成されている。可撓部162aが枠状部161b内に挿入されると、可撓部162aの前側部分が第1係合爪161eによって後側に撓み、可撓部162aの挿入が略完了する時点で、第1係合爪161eが係合用切欠き部162b内に入り込むことで、可撓部162aの前側部分が復元力により僅かに前側に復元して、第1係合爪161eと係合用切欠き部162bにおける車幅方向外側を向く面とが係合する。
【0059】
可撓部162aの前側部分における係合用切欠き部162bの上下両側には、第1係合爪161eと係合用切欠き部162bとの係合を解除するための係合解除操作部162cがそれぞれ設けられている。作業者が係合解除操作部162cを後側(基部162vに近付く側)に押圧すれば、可撓部162の前側部分が後側に撓んで、第1係合爪161eと係合用切欠き部162bとの係合を解除することができるようになっている。
【0060】
蓋部材162の後側縁部162xには、第2及び第3係合爪161f,161gとそれぞれ係合する2つの係合用孔162dが設けられている。蓋部材162によりケース本体161の開放部161aを閉塞する際には、蓋部材162の2つの係合用孔162dと第2及び第3係合爪161f,161gとをそれぞれ係合させた状態で、蓋部材162を、該蓋部材162の後側端部(係合用孔162dの部分)において上下方向に延びる仮想の軸を中心にして回動させながら、蓋部材162の可撓部162aを枠状部161b内に挿入して、第1係合部161eと係合用切欠き部162bとを係合させる。こうして蓋部材162がケース本体161に取り付けられて(係合固定されて)、ケース本体161の開放部161aが閉状態となる(蓋部材162により閉塞される)。
【0061】
蓋部材162をケース本体161から外すには、係合解除操作部162cを後側に押圧して第1係合部161eと係合用切欠き部162bとの係合を解除した状態で、係合解除操作部162cを車幅方向外側に移動させて可撓部162aを枠状部161bから引き抜く。そして、その引き抜く動作に続けて、上記取付け時とは逆に、上記仮想の軸を中心にして、蓋部材162の前側端部(可撓部162a)が車幅方向外側でかつ後側に移動するように蓋部材162を回動させる。これにより、蓋部材162をケース本体161から外すことができる。
【0062】
蓋部材162の後部は、ケース本体161の上側壁面部161y及び下側壁面部161zにおける車幅方向外側の端面の上記傾斜に対応して、後側に向かって車幅方向内側に傾斜している。これにより、蓄電装置70と左側のホイールハウスパネル12の前側下部との間のスペースが狭い場合であっても、放電装置150(ケース151)を、蓄電装置70の車幅方向外側の部分に容易に取り付けることができるようになる。
【0063】
放電装置150のケース151内には、上記コンデンサを放電させるための放電抵抗部152(図8参照)と、作業者が、この放電抵抗部152による上記コンデンサの放電を行う放電回路を形成するための操作を行う操作部153(図8図9参照)と、上記コンデンサの放電状態を上記作業者が目視で確認するために該作業者が視認可能な視認部154(図8及び図9参照)とが収容されている。
【0064】
上記放電抵抗部152は、不図示の基板上に配設された複数の抵抗(本実施形態では、チップ抵抗)が直列に接続されてなる。放電抵抗部152は、1つの抵抗で構成することも可能である。上記基板は、ケース本体161に固定されている。上記基板及び放電抵抗部152は、ケース本体161内の車幅方向内側部分に位置していて、ケース本体161内の車幅方向内側部分の略全体に亘って設けられた樹脂モールド165により密閉されており、このため、図9では、上記基板及び放電抵抗部152は、樹脂モールド165に隠れて見えない。このように上記基板及び放電抵抗部152は、樹脂モールド165により密閉されていることで、ケース151内に浸入した水による漏電を防止することができる。尚、図11及び図12では、ケース151内の部品は省略している。
【0065】
上記操作部153は、作業者により操作されて、上記コンデンサの放電を行う放電回路を形成(閉成)するスイッチと見做すことができる。本実施形態では、操作部153は、後に詳細に説明するように、互いに接続されることで上記放電回路を形成するプラス側及びマイナス側コネクタ173,174のうちのマイナス側コネクタ174で構成されている。これら両コネクタ173,174は、作業者による操作の前では非接続状態にあり、このことで、上記スイッチがOFF状態となっている。両コネクタ173,174が互いに接続されれば、上記スイッチがON状態となって、上記放電回路が形成(閉成)されることになる。
【0066】
上記視認部154は、本実施形態では、上記基板上に設けられかつ放電抵抗部152の複数の抵抗に直列に接続されたLEDからなる。このLEDは、上記樹脂モールド165から車幅方向外側に突出しており、ケース本体161の開放部161aが開状態にあれば、作業者が視認可能となる。
【0067】
放電抵抗部152、操作部153及び視認部154は、回路図で示すと、図8のような関係にある。放電抵抗部152の視認部154とは反対側は、プラス側ハーネス171(図9参照)を介して、蓄電装置70のプラス端子である上記接続部78に接続されている。一方、上記操作部153の視認部154とは反対側(マイナス側コネクタ174)は、マイナス側ハーネス172(図9参照)を介して、蓄電装置70のマイナス端子(図示せず)に接続されている。このマイナス端子は、上記保持部材77を介して、車体部材(フロントサイドフレーム5)に接続されて接地される。
【0068】
上記プラス側及びマイナス側ハーネス171,172は、ケース本体161の上側壁面部161yにおけるハーネス挿通用切欠き部161iを通ってケース151内(ケース本体161内)に進入するとともに、ケース本体161内の上部において、下側に延びた後にUターンして上側へ延びるように屈曲する屈曲部171a,172aをそれぞれ有している。これら屈曲部171a,172aは水切りの役割を果たすものである。
【0069】
すなわち、ハーネス挿通用切欠き部161iとプラス側及びマイナス側ハーネス171,172との間の隙間から水がケース151内に浸入する場合、その隙間を十分に小さくすることで、その水は両ハーネス171,172のうちの少なくとも一方を伝ってケース151内に浸入する。ここで、両ハーネス171,172がケース151内において下側又は斜め下側に延びていたとすると、ケース151内に浸入した水は、プラス側ハーネス171及び/又はマイナス側ハーネス172を伝って後述の接続端子166及び/又はマイナス側コネクタ174のところまで到達し、このことが漏電の要因となる。
【0070】
しかし、本実施形態では、屈曲部171a,172aまで伝ってきた水は、屈曲部171a,172aに沿って上側に上がることができずに下側に落下する。このことから、屈曲部171a,172aは水切りの役割を果たし、上記水が接続端子166及びマイナス側コネクタ174のところまで到達するのを防止する。上記屈曲部171a,172aから落下した水は、排水用切欠き部161hから外部に排出される。プラス側及びマイナス側コネクタ173,174、視認部154のLED並びに接続端子166は、屈曲部171a,172aから落下した水がかからないように、屈曲部171a,172aの真下の位置からずらして配置するようにしている。
【0071】
プラス側及びマイナス側ハーネス171,172は、ケース本体161内における上記樹脂モールド165の車幅方向外側において、上記屈曲部171a,172aから上側壁面部161yに沿って前側にそれぞれ延びて、上側壁面部161yと前側壁面部161wとの隅部で下側にそれぞれ折れ曲がる。この後、プラス側ハーネス171は、下側かつ後側へ延び、上記基板上に設けられかつ上記樹脂モールド165から車幅方向外側に突出した接続端子166に接続される。この接続端子166は、上記基板上で上記放電抵抗部152及び視認部154を介してプラス側コネクタ173と電気的に接続されている。プラス側コネクタ173は、上記基板上に固定されている。このことで、プラス側コネクタ173は、上記基板を介して、ケース本体161に移動不能に固定されていることになる。プラス側コネクタ173は、その先端側が車幅方向外側を向いた状態で、上記樹脂モールド165から車幅方向外側に突出している。
【0072】
マイナス側ハーネス172は、上記隅部から、プラス側ハーネス171よりも前側において下側に延びた後にUターンして上側へ延びて上記マイナス側コネクタ174と接続される。マイナス側コネクタ174は、ケース本体161の前側壁面部161wと、車幅方向内側壁面部161vの上下方向中央部において前側壁面部161wからケース内側に離れた位置に形成された立壁部161lとの間の隙間に挿入されて、前側壁面部161wの弾性力により前側壁面部161w及び立壁部161lに係合されている。すなわち、マイナス側コネクタ174は、プラス側コネクタ173から離れた位置にて、ケース本体161に係合されている。この係合状態では、マイナス側コネクタ174の先端側が上側を向いている。これにより、マイナス側コネクタ174の先端側には、水がかかり難くなる。
【0073】
上記係合は、作業者がマイナス側コネクタ174を持って上記隙間から引き抜くことで解除可能であり、作業者は、マイナス側コネクタ174を、上記係合を解除して該係合位置から移動させてプラス側コネクタ173に対して接続する操作を行うことができる。マイナス側コネクタ174をプラス側コネクタ173に接続するには、マイナス側コネクタ174の先端をプラス側コネクタ173の先端と対向させた状態で、マイナス側コネクタ174を車幅方向内側に移動させながらプラス側コネクタ173に結合させる。この結合は、プラス側及びマイナス側コネクタ173,174のうちの一方を他方に挿入嵌合する形式で行われる。
【0074】
尚、プラス側及びマイナス側ハーネス171,172は、ケース151内において、ハーネス挿通用切欠き部161iから接続端子166及びマイナス側コネクタ174までの間で曲がりくねっているが、これは、両ハーネス171,172に余長を持たせておいて、両ハーネス171,172に張力が作用しても両ハーネス171,172が切断するのを防止するためである。
【0075】
上記操作部153の操作(マイナス側コネクタ174のプラス側コネクタ173への接続操作)により上記スイッチがON状態になると、上記放電回路が形成され、これにより、上記コンデンサの電荷が上記放電抵抗部152へと流れて、放電抵抗部152でコンデンサの電荷が消費され、こうして上記コンデンサの放電が行われる。尚、上記操作部153は、上記のような構成に限らず、作業者の操作により上記放電回路を形成できて上記コンデンサの放電を、その終了まで継続して行えるものであれば、どのような構成のものであってもよい。上記操作部153を、例えばON/OFF切換えスイッチで構成することも可能である。
【0076】
上記視認部154のLEDは、該LEDへの印加電圧(つまり上記コンデンサの電圧)が所定電圧以上であるときには点灯する一方、該所定電圧よりも低いときには消灯するようになっている。上記所定電圧は、上記コンデンサの放電が十分に行われて、その放電が終了したと見做すことが可能な電圧である。これにより、作業者は、上記LEDの点灯/消灯により上記コンデンサの放電状態が分かり、上記LEDが消灯すれば、放電が終了したと判断することができる。尚、視認部154は、LEDに限らず、上記コンデンサの放電状態を上記作業者が目視で確認することができるものであれば、どのようなものであってもよい。例えば、視認部154を、上記コンデンサの電圧を数値表示したりバー表示したりする液晶で構成してもよい。バー表示の場合、上記コンデンサの放電が進む(上記コンデンサの電圧が低下する)に従って、点灯するバーの長さを短くするようにする。
【0077】
上記操作部153は、ケース本体161の開放部161aが開状態にあるときに、作業者が上記操作を行うことが可能となるように構成され、上記視認部154は、ケース本体161の開放部161aが開状態にあるときに、作業者が視認可能となるように構成されている。すなわち、作業者は、放電作業をする際には、蓋部材162をケース本体161から外して、ケース本体161の開放部161aを開状態にする必要がある。
【0078】
蓋部材162の基部162vのケース内側の面(裏面)には、上記作業者が上記コンデンサの放電作業の内容(放電作業の手順)を把握するための説明が記載された説明部163が設けられている。本実施形態では、蓋部材162の成形型の成形面に凹凸を設けることで、説明部163を、蓋部材162の基部162vのケース内側の面に直接設けるようにしている。尚、これに限らず、説明部163を、例えば、蓋部材162に貼り付けられたラベルで構成してもよい。また、説明部163を、蓋部材162の基部162vのケース表側の面に設けてもよい。
【0079】
本実施形態では、説明部163は、放電作業の手順を図解したものであり、作業者が、丸数字の1番から4番まで順に作業を行うことを示している。
【0080】
上記説明部163とは別に、ボンネットを開けたときに作業者がよく見える箇所(例えばアッパーメンバー21の上面)に、蓄電装置70の交換前や車両1の解体前に、蓄電装置70の放電を行う必要がある旨と、蓄電装置70及び放電装置150の位置(特に放電装置150の位置)と、放電装置150へのアクセス方法とを記載したコーションラベルを貼り付けておくことが好ましい。また、本実施形態では、説明部163が蓋部材162の基部162vのケース内側の面に設けられているので、上記コーションラベルに、放電作業に際して蓋部材162を外す作業を行う旨も記載しておく。尚、説明部163を蓋部材162の基部162vのケース表側の面に設ける場合には、蓋部材162を外す作業を行う旨を、上記コーションラベルに代えて、その説明部163に記載するようにしてもよい。
【0081】
作業者が、放電装置150による蓄電装置70のコンデンサの放電を行うには、先ず、左側のホイールハウスパネル12とフロントバンパー19との係合を解除する。そして、左側のホイールハウスパネル12の前側下部を上側かつ車幅方向内側へ捲って左側のフロントホイールハウス11の前側部分に開口部を形成する。このとき、左側のホイールハウスパネル12の前側下部を上側かつ車幅方向内側へ捲り易くするために、予め車両1のハンドルを右側に切って左側の前輪3の前側部分を車両内側に向けておくことが好ましい。
【0082】
続いて、上記開口部からフロントバンパー19の内側に手を挿入し、係合解除操作部162cを後側に押圧して第1係合部161eと係合用切欠き部162bとの係合を解除した状態で、係合解除操作部162cを車幅方向外側に移動させて可撓部162aを枠状部161bから引き抜く。そして、その引き抜く動作に続けて、蓋部材162を、該蓋部材162の後側端部(係合用孔162dの部分)において上下方向に延びる仮想の軸を中心にして、蓋部材162の前側端部(可撓部162a)が車幅方向外側でかつ後側に移動するように回動させる。すなわち、作業者は、上記開口部から手を挿入して蓋部材162をケース本体161から外す際に、係合解除操作部162cの後側への押圧の後に係合解除操作部162c(蓋部材162の前側端部)を車幅方向外側に移動させつつ作業者の側(後側)に引くことでケース本体から容易に取り外すことができる。こうして、ケース151の蓋部材161をケース本体162から外して、ケース本体161の開放部を開状態にする。ケース本体161から外した蓋部材162は、上記開口部から車両1の外側に取り出す。この蓋部材151bに上記説明部163が設けられているので、作業者は、その説明部163を見ながら放電作業を容易に行える。
【0083】
次いで、ケース本体151a内の操作部153を操作して、放電抵抗部152による上記コンデンサの放電を行う放電回路を形成(閉成)する。すなわち、マイナス側コネクタ174を、前側壁面部161wと立壁部161lとの間の隙間から引き抜いてケース本体161との係合を解除し(説明部163の丸数字の1番)、そのマイナス側コネクタ174をその係合位置からプラス側コネクタ173の位置まで移動させ、マイナス側コネクタ174の先端をプラス側コネクタ173の先端と対向させた状態で、マイナス側コネクタ174を車幅方向内側に移動させながらプラス側コネクタ173に結合することによって、マイナス側コネクタ174をプラス側コネクタ173に接続する(説明部163の丸数字の2番)。
【0084】
これにより、上記コンデンサの放電が開始される。作業者は、視認部154のLEDを見て放電状態を確認する(説明部163の丸数字の3番)。すなわち、作業者は、LEDが点灯していれば、放電中であると判断し、そのLEDが消灯したとき、放電が終了したと判断し、蓄電装置70延いては車両1を廃棄することができる(説明部163の丸数字の4番)。尚、作業者は、LEDが最初から点灯しなければ、上記コンデンサが既に放電された状態にあると判断することができる。こうして上記コンデンサの放電作業が完了する。
【0085】
したがって、本実施形態では、蓄電装置70が、左側のフロントサイドフレーム5よりも車幅方向外側(左側)でかつ左側のフロントホイールハウス11よりも前側に配設されているので、蓄電装置70を車両走行風によって冷却することができるとともに、エンジンからの熱の影響を受け難くすることができる。この蓄電装置70の車幅方向外側の部分に放電装置150が取り付けられているので、作業者は、左側のフロントホイールハウス11を構成するホイールハウスパネル12の前側下部を捲って左側のフロントホイールハウス11の前側部分に開口部を形成し、この開口部から放電装置150にアクセスして放電作業を容易に行うことができる。特に、放電装置150が、蓄電装置70における左側のフロントサイドフレーム5の下端よりも下側でかつ車幅方向外側の部分に取り付けられているので、ホイールハウスパネル12の前側下部の捲り量が少なくても、作業者は、放電装置150にアクセスして放電作業を容易に行うことができる。また、放電装置150が蓄電装置70に取り付けられていることで、予め蓄電装置70と放電装置150とを接続しておくことができ、これにより、作業者は、蓄電装置70と放電装置150とを接続する操作をしなくても済み、コンデンサの放電を行う放電回路を形成するための操作が容易になる。また、蓄電装置70と放電装置150とを接続するプラス側及びマイナス側ハーネス171,172の配索及び保護が容易になる。
【0086】
本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である
【0087】
上述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本発明の範囲を限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明は、車両における蓄電装置のコンデンサの放電を行う、蓄電装置の放電装置に有用である。
【符号の説明】
【0089】
1 車両
5 フロントサイドフレーム
11 フロントホイールハウス
70 蓄電装置
150 放電装置
151 ケース
152 放電抵抗部
153 操作部
154 視認部
161 ケース本体
162 蓋部材
173 プラス側コネクタ
174 マイナス側コネクタ(操作部)
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