(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第一の態様は、前記光ファイバの前記出口端部を第一の方向に振動駆動するものであり、前記第二の態様は、前記光ファイバの前記出口端部を前記第一の方向と異なる第二の方向に振動駆動するものであることを特徴とする請求項1に記載の光走査型観察装置。
前記第二の偏向磁場発生用電流の前記第一の電流成分の振幅及び位相は、前記第一の電流供給手段により供給される前記第一の偏向磁場発生用電流に応じて定められることを特徴とする請求項3に記載の光走査型観察装置。
前記第一の振動駆動手段および前記第二の振動駆動手段は、圧電素子と該圧電素子を駆動する駆動電圧生成部とを備えることを特徴とする請求項1または2に記載の光走査型観察装置。
【背景技術】
【0002】
従来、光ファイバの出口端部から光を被観察物へ向けて照射して、被観察物で反射されあるいは散乱された光を検出する観察装置において、光ファイバの出口端部を振動させることにより、光が被観察物の全体に渡って走査される光ファイバ走査装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この技術によれば、光ファイバの出口端部寄りに、光ファイバを貫通させる開口を有する永久磁石が取り付けられ、この永久磁石を離隔して取り囲むように、4つの電磁コイルが配置される。これら4つの電磁コイルは、それぞれ、対向する電磁コイルどうしが組を形成する。対向する第一の組の2つの電磁コイルに、光ファイバの共振周波数により高速で振動する正弦波状の電流を印加することにより、電磁力により光ファイバの出口端部は第一の方向に共振的に振動する。また、第二の組の2つの電磁コイルに、共振周波数とは異なる低周波数で振動する電流を印加することによって、光ファイバの出口端部は、電磁力により第2の方向に非共振的に低速で振動する。これにより、ラスター走査に近い走査パターンで被観察物を走査することができる。
【0004】
一般的に、共振駆動により光ファイバを走査する場合には、走査線がひずむという現象が生じる。とくに、光ファイバを共振的駆動により一軸方向(第一の方向)に正弦振動する場合には、これと直交する方向(第二の方向)にも共振周波数による正弦振動が惹起され、走査線は直線ではなく
図12(a)のように楕円形状になりやすいことが知られている。
【0005】
このように、第二の方向の正弦振動が惹起される原因としては、製造上の誤差などにより電磁コイルに対して光ファイバが僅かに傾いて配置されることや、共振の不安定性により第一の方向の振動が第二の方向の振動と結合することなどを挙げることができる。また、第二の方向に正弦振動が生じると、共振効果や振動の非線形効果により、第1の方向の振動と第2の方向の振動との間に位相差が発生する。その結果、光ファイバの振動は、直線運動から楕円運動に変化すると考えられる。
【0006】
光ファイバが共振周波数で楕円軌道を描く状態で、この光ファイバを非共振的駆動により第二の方向に直線振動させる場合には、
図12(b)に示すように走査線はラスター状ではなく螺旋形状になるため、走査線が重複し、また、走査線周縁部においては走査線密度が疎になるという問題が生じる。このため、特許文献1では、第二の方向の磁石の振動によって、第二の組の電磁コイルに誘導された電圧を検出し、これを増幅して帯域フィルタを通過させ、第二の組の電磁コイルの駆動電流の負帰還に用いることによって、第二の方向の振動を抑制している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、引用文献1に記載されるような、共振駆動される方向に直交する方向の不所望な共振振動を検出して、共振駆動される方向に直交する方向への駆動電流に対して負帰還をかける方法では、光ファイバ走査装置の制御用の回路が複雑となるうえ、不所望な共振振動が抑制されるまで遅延時間が生じ、観察の効率が低下することが懸念される。
【0009】
したがって、これらの点に着目してなされた本発明の目的は、簡単な構成で、走査線の不所望な重複や歪みの影響を素早く抑制し、共振周波数による安定した走査が可能な光走査型観察装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成する本発明の光走査型観察装置は、
光ファイバの出口端部を振動駆動することにより偏向させ、光源からの光を被観察物上で二次元走査する光走査型観察装置であって、
前記光ファイバの前記出口端部を、第一の周波数を有する第一の駆動信号により第一の態様で略共振駆動する第一の振動駆動手段と
前記光ファイバの前記出口端部を、前記第一の周波数を含む少なくとも二つの周波数成分を有する第二の駆動信号により、前記第一の態様と異なる第二の態様で振動駆動する第二振動駆動手段と、
前記光ファイバからの光の走査により、前記被観察物と相互作用した光または前記被観察物から発した光を検出する信号検出手段と
を備え、
前記第二の駆動信号の前記第一の周波数成分は、前記第一の駆動信号に対し予め定められた位相差を有し、前記第一の振動駆動手段による前記光ファイバの振動により生じる、前記第二の態様の前記第一の周波数の振動を低減することを特徴とするものである。
【0011】
この光走査型観察装置において、
前記第一の態様は、前記光ファイバの前記出口端部を第一の方向に振動駆動するものであり、前記第二の態様は、前記光ファイバの前記出口端部を前記第一の方向と異なる第二の方向に振動駆動するようにすることができる。
【0012】
一実施形態では、光走査型観察装置は、
前記光ファイバに結合された磁性体を備え、
前記第一の振動駆動手段は、前記磁性体に対して前記第一の方向の磁力を及ぼす第一の偏向磁場発生用コイル、及び、該第一の偏向磁場発生用コイルに、前記第一の周波数を有する第一の偏向磁場発生用電流を、前記第一の駆動信号として供給する第一の電流供給手段を含み、
前記第二の振動駆動手段は、前記磁性体に対して前記第二の方向の磁力を及ぼす第二の偏向磁場発生用コイル、及び、該第二の偏向磁場発生用コイルに、前記第一の周波数を有する第一の電流成分と第二の周波数を有する第二の電流成分とを含む第二の偏向磁場発生用電流を、前記第二の駆動信号として供給する第二の電流供給手段を含む。
【0013】
好適には、前記第二の偏向磁場発生用電流の前記第一の電流成分の振幅及び位相は、前記第一の電流供給手段により供給される前記第一の偏向磁場発生用電流に応じて定められるようにすることができる。
【0014】
また、前記第二の電流供給手段は、三角波の波形を有する前記第一の電流成分を含む前記第二の偏向磁場発生用電流を供給するようにしても良い。
【0015】
また、前記第一の方向と前記第二の方向とは略直交することが好ましい。
【0016】
あるいは、前記第一の振動駆動手段および前記第二の振動駆動手段は、圧電素子と該圧電素子を駆動する駆動電圧生成部とを備えても良い。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、第二の駆動信号の第一の周波数成分は、第一の駆動信号に対し予め定められた位相差を有し、第一の振動駆動手段による光ファイバの振動により生じる、第二の態様の第一の周波数の振動を低減するようにしたので、簡単な構成で、走査線の不所望な重複や歪みの影響を素早く抑制し、共振周波数による効率的で安定した走査が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1実施の形態に係る光走査型観察装置の一例である光走査型内視鏡装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図2】
図1の光走査型内視鏡本体を概略的に示す概観図である。
【
図3】
図2の光走査型内視鏡本体の先端部を示す拡大図であり、
図3(a)は同先端部の断面図、
図3(b)は
図3(a)の角型チューブおよびシングルモード光ファイバを拡大して示す斜視図であり、
図3(c)は、
図3(b)の偏向磁場発生用コイルおよび永久磁石を含む部分の光ファイバの軸に垂直な面による断面図である。
【
図4】
図1の光走査型内視鏡装置の光源部の概略構成を示す図である。
【
図5】
図1の光走査型内視鏡装置の駆動電流生成部の概略構成を示す図である。
【
図6】
図1の光走査型内視鏡装置の検出部の該略構成を示す図である。
【
図7】
図1の光走査型内視鏡装置の偏向磁場発生用コイルへの印加電流波形を示す図であり、
図7(a)は、第一軸方向の偏向磁場発生用コイルへの印加電流波形であり、
図7(b)は、第二軸方向の偏向磁場発生用コイルへ印加する第二の電流成分の波形であり、
図7(c)は、第二軸偏向磁場発生用コイルへ印加する第一の電流成分の波形であり、
図7(d)は、第二軸方向の偏向磁場発生用コイルへの印加電流波形であって、
図7(b)および
図7(c)の印加電流波形を足し合わせたものである。
【
図8】
図1の光走査型内視鏡装置の光走査線を示す図である。
【
図9】第1実施の形態において、第二軸方向の偏向磁場発生用コイルへ印加する第一の電流成分を三角波とする例を示す図である。
【
図10】第2実施の形態に係る光走査型内視鏡装置の先端部の断面図である。
【
図11】駆動電圧生成部の概略構成を示す図である。
【
図12】従来技術における光走査型観察装置の走査線の例を示す図であり、
図12(a)は、第一軸方向にのみ共振周波数で交流磁場を印加した場合を示し、
図12(b)は、第一軸方向の交流磁場に加え、第二軸方向に共振周波数よりも低い周波数の交流磁場を印加した場合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0020】
(第1実施の形態)
図1は、第1実施の形態に係る光走査型観察装置の一例である光走査型内視鏡装置10の概略構成を示すブロック図である。光走査型内視鏡装置10は、光走査型内視鏡本体20と、光源部30と、検出部40と、駆動電流生成部50と、制御部60と、表示部61と入力部62とを含んで構成される。光源部30と光走査型内視鏡本体20との間はシングルモードファイバである照明用光ファイバ11により光学的に接続され、検出部40と光走査型内視鏡本体20との間はマルチモードファイバにより構成される検出用光ファイババンドル12により光学的に接続されている。
【0021】
図2は、光走査型内視鏡本体20を概略的に示す概観図である。光走査型内視鏡本体20は、操作部22および挿入部23を備え、操作部22の一方の端部と挿入部23の一方の端部とは接続されて一体となっている。操作部22には、光源部30からの照明用光ファイバ11、検出部40からの検出用光ファイババンドル12、および、駆動電流生成部50からの配線ケーブル13が、それぞれ接続されている。これら照明用光ファイバ11、検出用光ファイババンドル12および配線ケーブル13は挿入部23内部を通じて、挿入部23の操作部22と接続されている端部とは別の端部である先端部24(
図2における破線部内の部分)まで導かれている。
【0022】
図3は、
図2の光走査型内視鏡本体20の挿入部23の先端部24を示す拡大図であり、
図3(a)はその断面図を示している。先端部24は、走査部21、投影用レンズ25a、25bおよび図示しない検出用レンズを備えるとともに、挿入部23を通る照明用光ファイバ11および検出用光ファイババンドル12が延在している。
【0023】
走査部21は、角型チューブ26、偏向磁場発生用コイル27a〜27dおよび永久磁石28(
図3(b)参照)を含んで構成される。角型チューブ26は、先端部24の中心軸線に沿って長手方向に延びる中空の四角柱状のチューブであり、一方の端部を挿入部23内に固定され他端を開口した状態で配置されている。なお、角型チューブ26に代えて、円筒状や他の形状のチューブを用いても良い。
【0024】
照明用光ファイバ11は、角型チューブ26の内部の支持部11b(
図3(b)参照)で挿入部23に対して支持されるとともに、この角型チューブ26の略中心部を通って、その出口端部11aが角型チューブ26の開口した端部から突き出ている。この、先端の出口端部11aは固定されず一定の範囲で可動に保持される。一方、検出用光ファイババンドル12は先端部24の外周部を通るように配置され、内視鏡の先端部24の先端まで延びている。
【0025】
さらに、投影用レンズ25a、25bおよび検出用レンズは、先端部24の最先端に配置される。投影用レンズ25a、25bは、照明用光ファイバ11の出口端部11aから射出されたレーザ光が、被観察物100上に略集光するように構成されている。また、検出用レンズは、被観察物100上に集光されたレーザ光が、被観察物100により反射、散乱、屈折等をした光(被観察物100と相互作用した光)又は蛍光等を検出光として取り込み、検出用レンズの後に配置された検出用光ファイババンドル12に集光、結合させるように配置される。なお、投影用レンズは、二枚構成に限られず、一枚や他の複数枚のレンズにより構成しても良い。
【0026】
図3(b)は、
図3(a)の角型チューブ26および照明用光ファイバ11を拡大して示す斜視図であり、
図3(c)は、
図3(b)の偏向磁場発生用コイル27a〜27dおよび永久磁石28を含む部分の照明用光ファイバ11の軸に垂直な面による断面図である。照明用光ファイバ11の支持部11bと出口端部11aとの間の一部には、照明用光ファイバ11の軸方向に着磁され貫通孔を有する永久磁石28(磁性体)が、照明用光ファイバ11が貫通孔を通った状態で結合されている。また、角型チューブ26の永久磁石28の一方の極と対向する部分の表面上には、螺旋状の偏向磁場発生用コイル27a〜27dが設けられている。偏向磁場発生用コイル27aと27c(第一の偏向磁場発生用コイル)のペアおよび偏向磁場発生用コイル27bと27d(第二の偏向磁場発生用コイル)のペアは、角型チューブ26のそれぞれ対向する面に配置され、偏向磁場発生用コイル27aの中心と偏向磁場発生用コイル27cの中心を結ぶ線と、偏向磁場発生用コイル27bの中心と偏向磁場発生用コイル27dの中心を結ぶ線とは、静止時の照明用光ファイバ11の配置される角型チューブ26の中心軸線付近で直交する。
【0027】
駆動電流生成部50からの配線ケーブル13は、挿入部23の内部を通り、偏向磁場発生用コイル27a〜27dに接続される。配線ケーブル13は、第一の配線ケーブル13aと第二の配線ケーブル13bとを含み、偏向磁場発生用コイル27aおよび27cには第一の配線ケーブル13aが接続され、偏向磁場発生用コイル27bおよび27dには、第二の配線ケーブル13bが接続される。
【0028】
第一の配線ケーブル13aにより、電流を偏向磁場発生用コイル27aと27cに印加すると、偏向磁場発生用コイル27aと27cとの中心を結ぶ第一軸方向(第一の方向)に第一軸偏向磁場(第一の偏向磁場)が発生する。同様に、第二の配線ケーブル13bにより、電流を偏向磁場発生用コイル27bと27dに印加すると、偏向磁場発生用コイル27bと27dとの中心を結ぶ第二軸方向(第二の方向)に第二軸偏向磁場(第二の偏向磁場)が発生する。第一軸偏向磁場および第二軸偏向磁場と永久磁石28が相互作用し、各磁場強度の時間的変化に応じて照明用光ファイバ11の出口端部11aが振動する。照明用光ファイバ11の出口端部11aの振動に応じて、レーザ光は被観察物100の表面を順次走査する。
【0029】
図4は、
図1の光走査型内視鏡装置10の光源部30の概略構成を示す図である。光源部30は、それぞれ、赤、緑および青の三原色のCW(連続発振)レーザ光を射出するレーザ光源31R,31G,31Bと、ダイクロイックミラー32a,32bとレンズ34とを備える。赤色のレーザ光源31Rとしては、例えば、LD(半導体レーザ)を使用することができる。また、緑色のレーザ光源31Gとしては、例えば、DPSSレーザ(半導体励起固体レーザ)を使用することができる。さらに、青色のレーザ光源31Bとしては、例えば、LDを使用することができる。
【0030】
レーザ光源31Rを出射したレーザ光の光路と、レーザ光源31Gを出射したレーザ光の光路とは、所定の点で交差するように配置され、それらの交差する位置にダイクロイックミラー32aが設けられる。ダイクロイックミラー32aは、赤色の波長帯域の光を透過させ、緑色の波長帯域の光を反射させる光学特性を有し、レーザ光源31Rから出射しダイクロイックミラー32aを透過した赤色のレーザ光と、レーザ光源31Gから出射してダイクロイックミラー32aにより反射される緑色のレーザ光とが、合波される角度で配置される。
【0031】
さらに、赤色のレーザ光と緑色のレーザ光とを合波したレーザ光の光路と、レーザ光源31Bを出射した青色のレーザ光の光路とは、所定の点で交差するように配置され、それらの交差する位置にダイクロイックミラー32bが設けられる。ダイクロイックミラー32bは、赤色の波長帯域の光と緑色の波長帯域の光とを透過させ、青色の波長帯域の光を反射させる光学特性を有し、ダイクロイックミラー32aで合波されダイクロイックミラー32bを透過したレーザ光と、レーザ光源31Bから出射してダイクロイックミラー32bにより反射される青色のレーザ光とが、合波される角度で配置される。このようにして、それぞれのレーザ光源31R,31G,31Bを出射した赤、緑、青の3原色のレーザ光が合波されることにより白色のレーザ光となり、レンズ34により照明用光ファイバ11の入射端部に集光、結合される。
【0032】
なお、レーザ光源31R,31G,および31B並びにダイクロイックミラー32aおよび32bの配置は、これに限られず、例えば、緑色および青色のレーザ光を合波した後、赤色のレーザ光を合波するようにしても良い。また、各色光の合成手段としては、ダイクロイックミラーに限らず、光ファイバからなるコンバイナであってもよい。
【0033】
図5は、
図1の光走査型内視鏡装置10の駆動電流生成部50の概略構成を示す図である。駆動電流生成部50は、第一の波形発生装置51、第一の電流増幅器52、第二の波形発生装置53および第二の電流増幅器54で構成される。第一の波形発生装置51および第一の電流増幅器52は、第一の電流供給手段を構成し、第二の波形発生装置53および第二の電流増幅器54は、第二の電流供給手段を構成する。
【0034】
第一の波形発生装置51および第二の波形発生装置53は、それぞれ、制御部60からの制御に基づいて、任意の波形を生成することが可能な装置である。第一の波形発生装置51で発生した波形は、第一の電流増幅器52により増幅される。また、第二の波形発生装置53で発生した波形は、第二の電流増幅器54で増幅される。第一の電流増幅器52および第二の電流増幅器54で増幅された電流は、配線ケーブル13の第一の配線ケーブル13aおよび第二の配線ケーブル13bにそれぞれ接続される。第一の波形発生装置51と第二の波形発生装置53は配線で接続され、制御部60からの同期信号により同期がとられる。
【0035】
図6は、
図1の光走査型内視鏡装置10の検出部40の概略構成を示す図である。検出部40は、赤、緑および青の各色に対応する光を検出するためのフォトダイオードを用いた光検出器41R,41G,41B、ダイクロイックミラー42a,42bおよびレンズ43を備える。検出部40には、複数の検出用光ファイババンドル12が束ねられて接続されている。
【0036】
レーザ光の照射により被観察物100により反射または散乱され、あるいは、被観察物100で発生し、検出用光ファイババンドル12を通りその出射端から出射した信号光は、レンズ43により略平行な光束となる。略平行光束となった信号光の光路上には、ダイクロイックミラー42aおよび42bが、光路の方向に対して傾いて配置されている。ダイクロイックミラー42bは、青色の波長帯域の光を反射させ、赤色および緑色の波長帯域の光を透過させる光学特性を有し、レンズ43で平行光束となった信号光から青色の信号光を分離する。分離された青色の信号光は、光検出器41Bにより検出され、電気信号に変換される。また、ダイクロイックミラー42aは、緑色の波長帯域の光を反射させ、赤色の波長帯域の光を透過させる光学特性を有し、ダイクロイックミラー42bを透過した信号光を赤色と緑色の信号光とに分離する。分離された赤色および緑色の信号光は、それぞれ光検出器41Rおよび光検出器41Gにより検出され電気信号に変換される。
【0037】
なお、光検出器41R,41Gおよび41Bは、後述する
図1の制御部60に電気的に接続されている。また、光検出器41R,41G,および41B並びにダイクロイックミラー42aおよび42bの配置は、これに限られず、例えば、信号光から赤色の光を分離した後、さらに緑色と青色の信号光を分離するような配置としても良い。
【0038】
図1の制御部60は、光源部30、検出部40および駆動電流生成部50を同期制御するとともに、検出部40により出力された電気信号を処理して、画像を合成し表示部61に表示する。また、入力部62から、光走査型内視鏡装置10に、走査速度や表示画像の明るさ等、種々の設定を行うことができる。
【0039】
以上のような構成によって、光走査型内視鏡装置10による観察を行う際には、制御部60の制御のもとで、駆動電流生成部50が駆動され配線ケーブル13を介して走査部21を構成する偏向磁場発生用コイル27a〜27dに電流が印加され、照明用光ファイバ11の出口端部11aを振動させる。制御部60は、駆動電流生成部50による電流の印加とともに光源部30からレーザ光を出射し、これを、照明用光ファイバ11を介して被観察物100に向けて出射する。照明用光ファイバ11の出口端部11aの振動による出射方向の偏向により、レーザ光は被観察物100上を順次走査する。
【0040】
被観察物100上へのレーザ光の照射により得られる、反射光、散乱光または被観察物100から発生する光(検出光)は、検出用レンズにより集光され検出用光ファイババンドル12に結合される。この検出光は、検出用光ファイババンドル12により検出部40に導かれ、検出部40内で、ダイクロイックミラー42a、42bにより青色、緑色、赤色の各成分に分離され、光検出器41R、41G,41Bにより所定の波長成分ごとに検出される。
【0041】
制御部60は、駆動電流生成部50により印加する電流の波形および位相から走査経路上の走査位置の情報を算出するとともに、検出部40から出力された電気信号から、当該走査位置における被観察物100の画素データを得る。制御部60は、走査位置と画素データの情報を順次記憶部(図示せず)に記憶し、走査終了後または走査中に補間処理等の必要な処理を行って被観察物100の画像を生成し、表示部61に表示する。
【0042】
次に、駆動電流生成部50により生成される電流の波形と、これによる被観察物100上の走査線について説明する。第一の波形発生装置51は、支持部11bで支持された照明用光ファイバ11の出口端部11aの共振周波数近傍の周波数に設定される第一の周波数を有する正弦波形を生成し、第一の電流増幅器52で電流増幅し、第一の配線ケーブル13aにより挿入部23先端に導電する。第二の波形発生装置53は、第一の周波数と第二の周波数との二つの周波数成分を有する波形を生成し、第二の電流増幅器54で電流増幅し、第二の配線ケーブル13bにより挿入部23の先端部24に導電する。第二の周波数は照明用光ファイバ11の先端の非共振周波数であり、ビデオレートでのラスター走査を実現するため、例えば10から30Hz、好ましくはおよそ15Hzの低周波である。
【0043】
第一の配線ケーブル13aにより、第一の周波数を有する正弦波形電流が第一の偏向磁場発生用コイル27aと27cとに印加され、第一軸偏向磁場を発生する。同様に、第二の配線ケーブル13bにより第一の周波数と第二の周波数との二つの周波数成分を有する電流が第二の偏向磁場発生用コイル27bと27dとに印加され、第二軸偏向磁場を発生する。第一軸偏向磁場および第二軸偏向磁場と永久磁石28とが相互作用し、各磁場強度の時間的変化に応じて照明用光ファイバ11の先端が振動する。照明用光ファイバ11の先端の振動に応じて、レーザ光は被観察物100の表面を順次走査する。
【0044】
図7は、偏向磁場発生用コイル27a〜27dに印加する電流の時間波形を示す図である。
図7(a)は、第一の周波数を有する第一軸偏向磁場発生のための第一の偏向磁場発生用コイル27a、27cへの印加電流(第一の偏向磁場発生用電流)である。第一の周波数は光ファイバ共振周波数近傍の周波数であるため、一般的に数kHzの高周波となる。
【0045】
図7(b)は、第二の周波数を有する第二軸偏向磁場発生のための第二の偏向磁場発生用コイル27b、27dへの印加電流(第二の電流成分)である。
【0046】
図7(c)は、
図7(b)に示された第二の周波数の印加電流に重畳される、第一の周波数を有する第二軸偏向磁場発生のための第二の偏向磁場発生用コイル27b、27dへの印加電流(第一の電流成分)である。この電流は、第一軸方向の光ファイバの共振により惹起された第二軸方向の光ファイバの共振を打ち消す効果を持ち、振幅は
図7(b)に示した偏向磁場発生用コイル27b、27dへの印加電流(第二の電流成分)に比べ小さく、走査線の楕円形状を抑制するための位相差を有する。
【0047】
図7(d)は、
図7(b)および
図7(c)に示したそれぞれの第二の偏向磁場発生用コイル27b、27dへの印加電流の和(第二の偏向磁場発生用電流)を示したものであり、結果的に二つの周波数成分を有する電流を偏向磁場発生用コイル27b、27dに印加する。
【0048】
図7(a)の第一軸偏向磁場発生電流および
図7(d)の第二軸偏向磁場発生電流を印加することによる作用を以下に説明する。ω
1を第一の周波数(光ファイバ共振近傍周波数)、tを時間、I
10を第一軸偏向磁場発生電流の振幅とするとき、第一軸偏向磁場発生電流I
1は、式(1)で表される。
【0050】
第一の偏向磁場発生用コイル27a,27cに式(1)による電流が印加されると、レーザ光の走査位置に第一軸方向以外に第二軸方向の不所望な振動をも発生させる。第一軸方向の走査位置をX、第二軸方向の走査位置をYとするとき、それぞれの走査位置は式(2)のようになる。
【0051】
【数2】
ここで、X
10およびY
10は、それぞれX,Yの振幅であり、φ
11は、第一軸方向の振動と第二軸方向の振動との間で生じる位相差である。
【0052】
この状態で、第二軸方向の走査のため、式(4)で表される第二の電流成分を印加すると、走査先に歪みや歪が残ってしまう。
【0053】
【数3】
ここで、ω
2は、第二の周波数(非共振周波数)であり、I
20はI
2の振幅である。
【0054】
位相差φ
11は、第一軸偏向磁場発生電流I
1の大きさと、振動機構の形状および寸法と、第1の周波数ω
1とに依存して定まる。そこで、あらかじめ実測または計算により得たφ
11について、式(5)で表される第二軸方向の振動を打ち消す方向の力を及ぼす第一の電流成分を、式(4)で表される第二の電流成分に付加して、第二軸方向の偏向磁場発生用コイル27b,27dに印加することにより、上述の不所望な第二軸方向の振動を抑制することができる。
【0055】
【数4】
ここで、I
11は、第一の電流成分の振幅である。
【0056】
すなわち、第二軸偏向磁場発生電流I
2は、式(6)のような二周波電流となる。
【0058】
第一の電流成分を第二軸偏向磁場発生電流I
2に付加したことによって、共振周波数による第二軸方向の振動を抑制することができる。その結果、
図8に示すような、走査線の重複や走査線密度の疎密のない一様なラスター走査が可能になる。また、走査線が螺旋状ではなく、単純な第一軸方向および第二軸方向への往復になっているので、走査位置を制御部で特定することが容易かつ正確であり、得られる内視鏡画像の精度も向上する。また、第二軸方向の共振振動をリアルタイムに検出して、振動を抑制するための電流振幅I
11や位相差φ
11を算出して第二軸偏向磁場発生電流I2に付加する方式ではないので、迅速且つ効率的に第二軸方向の不所望な共振振動を抑制することができる。
【0059】
以上説明したように、本実施の形態によれば、第二の偏向磁場発生用コイル27b、27dに印加する第二軸偏向磁場発生用電流に、第一軸偏向磁場発生用電流に対して予め測定または算出された所定の位相差を有する共振周波数近傍の電流を付加したので、フィードバック回路を必要としない簡単な構成で、走査線の不所望な重複や歪みの影響を素早く抑制し、共振周波数による安定した走査をすることができる。
【0060】
(変形例)
なお、第1実施の形態において、
図7(c)に示した第一の電流成分は、正弦波としたが、この波形を三角波とするように第一の波形発生装置が生成する波形を三角波とすることもできる。
図9は、第二軸偏向磁場発生用コイル27b、27dへ印加する非共振周波数電流を三角波(実線)とし、比較のため拡大した
図7(c)の波形(破線)と重ねて表示したものである。このように三角波を用いても、第二軸方向の不所望な振動を抑制する効果が期待できる。また、
図7(b)に示した第二の電流成分を三角波とすることができる。この場合、電流の増減が一定なので、走査速度も一定的であり画像の生成がより容易になる。また、第二軸方向に代えてあるいは第二軸方向に加えて、第一軸方向の共振周波数の振動も、三角波とすることができる。さらに、第二の電流成分が正弦波形、三角波形の何れの場合であっても、第一の電流成分が三角波形であることによる上記作用効果は得られるので、ラスター走査を正弦波形で実行する場合(第1の実施の形態)および三角波形で行う場合の何れでもよい。
【0061】
(第2実施の形態)
図10は、第2実施の形態に係る光走査型内視鏡装置10の光走査型内視鏡本体20の先端部24の断面図である。この光走査型内視鏡装置10では、照明用光ファイバ11の出口端部11aを駆動するために、永久磁石28と角型チューブ26および偏向磁場発生用コイルを用いた磁力による方法に代えて、ピエゾ素子71(圧電素子)を用いるものである。ピエゾ素子71は、光走査型内視鏡本体20の先端部24内に照明用光ファイバ11を支持するとともに、照明用光ファイバ11を、90°異なる第一軸方向と第二軸方向とにそれぞれ独立して振動駆動できるように構成されている。
【0062】
また、ピエゾ素子71は、電圧により駆動されるため、本実施の形態では第1実施の形態の駆動電流生成部50に代えて、
図11に示す駆動電圧生成部55を備える。駆動電圧生成部55は、第1実施の形態の駆動電流生成部50の第一の電流増幅器52および第二の電流増幅器54に代えて、第一の電圧増幅器56および第二の電圧増幅器57を設けたものである。その他の構成は、第1実施の形態と同様であるので、同一または対応する構成要素、同一作用をなす構成要素には同一参照符号を付して説明を省略する。
【0063】
本実施の形態は、第1実施の形態における照射用光ファイバの駆動手段をピエゾ素子71を用いたものに変えたものであり、第1実施の形態の駆動電流生成部50による電流の印加と同様に、駆動電圧生成部55により駆動電圧を印加することにより、第1実施の形態と同様の効果が得られる。
【0064】
なお、本発明は、上記実施の形態にのみ限定されるものではなく、幾多の変形または変更が可能である。たとえば、照明用光ファイバの振動の態様は、第1実施の形態のような直線的な振動に限られず、第3実施の形態のような曲線を含む種々の振動の態様が可能である。また、偏向磁場発生用コイルやピエゾ素子の共振周波数による振動駆動は、正弦波や三角波に限られず、他の波形による振動駆動であっても良い。さらに、振動駆動手段は、コイルおよび磁石を用いる方法やピエゾ素子を用いた方法に限られず、他の振動駆動手段を用いても良い。