(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0007】
実施形態の搬送媒体の熱処理装置について
図1乃至
図10を参照して説明する。
図1は搬送媒体の熱処理装置の一例である消色装置10を示す。消色装置10は、例えば、給紙部11、搬送機構12、センサ13、加熱部である消色部14、排紙機構16、熱移動部である熱移動機構17及びコントロールパネル18を備える。
【0008】
給紙部11は、媒体であるシートPを給紙する。給紙部11は例えば画像を消色するシートPを積載する給紙トレイ11a、給紙トレイ11aからシートPを取り出すピックアップローラ11b、分離ローラ11cを備える。
【0009】
搬送機構12は、給紙したシートPをセンサ13、消色部14あるいは排紙機構16方向に搬送する。搬送機構12は、第1搬送路20、第1の媒体搬送部である第2搬送路21及び第2の媒体搬送部である第3搬送路22を備える。第1搬送路20は、給紙部11からセンサ13を経て第1分岐部24に至る。第2搬送路21は、第1分岐部24から消色部14に至る。第3搬送路22は、消色部14からセンサ13の上流の合流点26に至る。すなわち、第1の搬送路20の一部と第2の搬送路21と第3の搬送路で循環型の搬送路を形成し、その循環型の搬送路の所定の個所にセンサ13が配置されている。
【0010】
第2搬送路21は、図示しない搬送ガイドを含み、予熱ガイド27を備える。予熱ガイド27は、熱移動機構17からの熱により温度上昇し、第2搬送路21で搬送するシートPを予熱する。予熱ガイド27は、高熱伝導性の、例えば銅板からなる。第3搬送路22は、図示しない搬送ガイドを含み、冷却ガイド28を備える。冷却ガイド28は、熱移動機構17による熱の移動により温度低下し、第3の搬送路22で搬送する、消色部14で加熱されたシートPを冷却する。冷却ガイド28は、高熱伝導性の、例えば銅板からなる。予熱ガイド27或いは冷却ガイド28の材質は熱伝導性が良ければ限定されない。
【0011】
センサ13は、第1搬送路20を挟んで対向する第1スキャナ部13aと第2スキャナ部13bを備える。第1スキャナ部13aと第2スキャナ部13bは、例えば、CCD(Charge Coupled Device)スキャナあるいはCMOSセンサ等の読取ユニットを備える。第1スキャナ部13aは、第1搬送路20を通過するシートPの表面の画像を読取り、第2スキャナ部13bは、第1搬送路20を通過するシートPの裏面の画像を読取る。
【0012】
消色部14は、シートPを画像の消色温度まで加熱して、シートPに形成される画像を消色する。消色部14は、
図2に示すように、シートPの表面の画像を消色する第1消色ユニット31と、シートPの表面とは反対側の裏面の画像を消色する第2消色ユニット32を備える。第1消色ユニット31は、ヒートランプ31aを内蔵するヒートローラ31b、プレスローラ31c及び温度センサ31dを備える。第2消色ユニット33は、ヒートランプ33aを内蔵するヒートローラ33b、プレスローラ33c及び温度センサ33dを備える。
【0013】
排紙機構16は、消色後のシートPを排紙する。排紙機構16は、消色後にリユース可能なシートS1を収納する排紙トレイ36と、消色後にリユース不可能なシートS2を収納するリジェクトトレイ37を備える。排紙機構16は、第1分岐部24aから第2分岐部24bを経て排紙トレイ36に至る第1排紙路36a及び、第2分岐部24bからリジェクトトレイ37に至る第2排紙路37aを備える。
【0014】
熱移動機構17は、冷却ガイド28が放出する熱を移動して予熱ガイド27を加熱する。熱移動機構17は、第1の熱移動部である第1の熱流路40、停止部である第1ポンプ41、蓄熱部である蓄熱カプセル42、第2の熱移動部である第2の熱流路43及び第2ポンプ44を備える。
【0015】
図3乃至
図6を参照して、熱移動機構17の詳細を説明する。
図3は、第3搬送路22の冷却ガイド28及び熱移動機構17の第1の熱流路40の一部を示す。冷却ガイド28は、矢印q方向にシートPを搬送する搬送ローラ対22aの下流にある。第1の熱流路40は、高熱伝導性の銅製の第1パイプ40aの中空内部に、熱媒体である水を循環する。第1パイプ40aは、冷却ガイド28の表面に蛇行した状態で密接する。冷却ガイド28上で、第1パイプ40aの表面をウレタン等の断熱材40bで覆う。冷却ガイドセンサ28aは、冷却ガイド28の温度を検知する。
【0016】
図4は、熱移動機構17の蓄熱カプセル42、第1の熱流路40の一部及び第2の熱流路43の一部を示す。蓄熱カプセル42は、例えば高熱伝導性の容器内に蓄熱材を充填してなる。蓄熱カプセル42は、蓄熱材として例えば58℃で固体から液体へ相変化する酢酸ナトリウムを用いる。第1の熱流路40の第1パイプ40aは、蓄熱カプセル42の表面に蛇行した状態で密着する。蓄熱カプセル42上で第1パイプ40aの表面を、ウレタン等の断熱材40bで覆う。蓄熱センサ42aは、蓄熱カプセル42の温度を検知する。蓄熱カプセル42の第1パイプ40aと対向する側に、後述する第2の熱流路43の第2パイプ43aを蓄熱カプセル42の表面に蛇行した状態で密着する。
【0017】
第1の熱流路40から蓄熱カプセル42に移動した熱は、蓄熱カプセル42内の酢酸ナトリウムを加熱して、固体から液体へ相変化するエネルギーに用いられる。蓄熱カプセル42は、酢酸ナトリウムが固体から完全に液体になるまでは、相変化温度(58℃)以上にならない。蓄熱センサ42aは、蓄熱カプセル42の温度を検知する。
【0018】
液体状の酢酸ナトリウムは、ゆっくりと温度低下を生じた場合は、過冷却現象により、液体から固体に変化する相変化温度(58℃)以下に温度が下がっても液体状態を保ち、固体にならない(過冷却状態)。過冷却状態の酢酸ナトリウムは、振動や電気信号等のトリガを与え核となる微少な相を生成させる(発核させる)と、液体から固体に急激に変化する。酢酸ナトリウムは、発核して液体から固体に急激に変化することで発熱する。
【0019】
図5は、第2搬送路21の予熱ガイド27及び熱移動機構17の第2の熱流路43の一部を示す。第2の熱流路43は、高熱伝導性の銅製の第2パイプ43aの中空内部に、熱媒体である水を循環する。第2パイプ43aは、予熱ガイド27の表面に蛇行した状態で密接する。予熱ガイド27上で、第2パイプ43aの表面をウレタン等の断熱材43bで覆う。第2の熱流路センサ22aは、予熱ガイド27の温度を検知する。
【0020】
熱移動機構17は、
図6に示すように、冷却ガイド28と蓄熱カプセル42を第1の熱流路40で接続して、冷却ガイド28と蓄熱カプセル42の間で熱を移動する。第1の熱流路40は、第1パイプ40aの中空内部の水を、矢印r方向から矢印s方向に循環して、冷却ガイド28の熱を蓄熱カプセル42に移動する。
【0021】
冷却ガイド28は、消色部14で加熱されたシートPを連続して搬送することにより温度上昇する。冷却ガイド28は、蓄熱カプセル42の酢酸ナトリウムが固体から完全に液体になるまでは、例えば(酢酸ナトリウムの相変化温度(58℃)+α℃)以上には温度上昇しない。
【0022】
第1ポンプ41は、第1パイプ40a内の水を積極的に循環し或いは循環を停止する。熱移動機構17は、第1ポンプ41をオンして、第1パイプ40a内の水を循環し、冷却ガイド28が放出する熱を蓄熱カプセル42に移動する。熱移動機構17は、第1ポンプ41をオフして、第1パイプ40a内の水の循環を停止して、冷却ガイド28と蓄熱カプセル42間の熱の移動を停止する。
【0023】
第2の熱流路43は、蓄熱カプセル42と予熱ガイド27に接続して、蓄熱カプセル42と予熱ガイド27の間で熱を移動する。第2の熱流路43は、第2パイプ43aの中空内部の水を、矢印t方向から矢印u方向に循環して、蓄熱カプセル42に蓄積した蓄積熱を予熱ガイド27に移動する。予熱ガイド27は、蓄熱カプセル42の酢酸ナトリウムが相変化温度(58℃)に達している場合には、(酢酸ナトリウムの相変化温度(58℃)−β℃)を保つ。
【0024】
第2ポンプ44は、第2パイプ43a内の水を積極的に循環し或いは循環を停止する。熱移動機構17は、第2ポンプ44をオンして、第2パイプ43a内の水を循環し、蓄熱カプセル42の熱を予熱ガイド27に移動する。熱移動機構17は、第2ポンプ44をオフして、第2パイプ43a内の水の循環を停止して、蓄熱カプセル42と予熱ガイド27と間の熱の移動を停止する。
【0025】
冷却ガイド28と蓄熱カプセル42の間において、断熱材40bは、第1パイプ40aを同軸状に被覆する。蓄熱カプセル42と予熱ガイド27の間において、断熱材43bは、第2パイプ43aを同軸状に被覆する。第1パイプ41a或いは第2パイプ43aは熱伝導性が良ければ銅製に限らない。第1パイプ41a或いは第2パイプ43a内の熱媒体は水に限らない。蓄熱材は酢酸ナトリウムに限定されない。蓄熱材を変えることにより相変化温度が変化すると、熱移動機構17の熱移動により冷却ガイド28が保持する温度は変化する。
【0026】
図7に示すブロック図を参照して、消色装置10の熱移動機構17を主体とする要部の制御系50について説明する。制御系50の消色装置制御部51は、プロセッサを含み、消色装置10の全体を制御する。消色装置制御部51は、搬送機構12或いは消色部14を駆動するモータ52に接続する。消色装置制御部51は、消色部14の、第1消色ユニット31のヒートランプ31a、温度センサ31d、第2消色ユニット32のヒートランプ32a及び温度センサ32dに接続する。消色装置制御部51は、温度センサ31dの検知結果によりヒートランプ31aを温度制御し、温度センサ32dの検知結果によりヒートランプ32aを温度制御する。
【0027】
消色装置制御部51は、給紙部11、排紙機構16、コントロールパネル18、及び第1の分岐部24a、第2の分岐部24bに接続する。消色装置制御部51は、センサ13の第1スキャナ部13a、第2スキャナ部13bに接続する。消色装置制御部51は、コントロールパネル18からの消色開始入力により給紙部11からシートPを給紙する。消色装置制御部51は、第1の分岐部13aを制御して、消色するシートPを第2搬送路21方向に分岐し、消色済み或いは消色しないシートPを排紙機構16方向に分岐する。
【0028】
消色装置制御部51は、センサ13によるシートPの画像読取り結果に応じて第2の分岐部13bを制御する。消色装置制御部51は、第2の分岐部13bを制御して、画像を消色したシートPを、第1排紙路36aを経て排紙トレイ36方向に分岐する。消色装置制御部51は、第2の分岐部13bを制御して、画像を消色しないシートP或いは画像を消色できなかったシートPを、第2排紙路37aを経てリジェクトトレイ37方向に分岐する。
【0029】
消色装置制御部51は、熱移動機構17の第1ポンプ41、第2ポンプ42、冷却ガイドセンサ28a、予熱ガイドセンサ27a、蓄熱センサ42c及びトリガ発生部46に接続する。トリガ発生部46は蓄熱カプセル42にトリガとして例えば電気パルスを発生する。消色装置制御部51は、冷却ガイドセンサ28a、予熱ガイドセンサ27a或いは蓄熱センサ42cの検知結果から第1ポンプ41或いは第2ポンプ42をオン/オフ制御する。消色装置制御部51は、コントロールパネル18からの消色開始入力により、トリガ発生部46を駆動する。
【0030】
画像の消色時ユーザは、消色装置10の給紙トレイ11aにシートPをセットして、コントロールパネル18から消色操作をスタートする。消色装置制御部51の制御により消色装置10は、ピックアップローラ11a、及び分離ローラ11b及び第1搬送路20を駆動して、シートPをセンサ13に搬送する。センサ13でのシートPの読取り結果から、シートPがリユース可能であれば消色装置10は、シートPを第1分岐部24a、第2搬送路21を経て消色部14に搬送する。シートPがリユース不可能であれば消色装置10は、シートPを第1搬送路20から第2排紙路37aを経てリジェクトトレイ37に排紙する。
【0031】
第2搬送路21の予熱ガイド27は、シートPを消色部14に搬送するまでの間に、シートPを予熱する。消色部14は、第1消色ユニット31と第2消色ユニット32でシートPの両面を加熱して、シートPの画像を消色する。消色装置10は消色後のシートPを、第3搬送路22を経て合流点26から再度センサ13に搬送する。
【0032】
消色装置制御部51は、センサ13で読取った読取りデータから、画像が消色されていれば、シートPをリユース可能と判断する。消色装置制御部51は、第1分岐部24a、第2分岐部24bを駆動して、リユース可能と判断したシートPを第1搬送路20から第1排紙路36aを経て排紙トレイ36に排紙する。消色装置制御部51は、センサ13で読取った読取りデータから、画像が消色されていなければ、シートPをリユース不可能と判断する。消色装置10はリユース不可能と判断したシートPをリジェクトボックス37に排紙する。
【0033】
消色装置10は、例えば第3搬送路22でシートPを冷却しないで、高温のままセンサ13に搬送すると、センサ13が温度上昇する。高温のシートPの通過により、センサ13が加熱して、センサ13が温度上限以上に加熱すると、第1スキャナ部13a或いは第2スキャナ部13bの特性が変化する恐れがある。センサ13は、第1スキャナ部13a或いは第2スキャナ部13bの特性が変化すると、読取り精度を著しく損なうおそれがある。消色装置10は、センサ13の読取り精度を良好に維持するために、消色部14を通過したシートPを、第3搬送路22で搬送する間に冷却する。消色装置10は、第3搬送路22でシートPを冷却する一方、熱移動機構17を用いて、消色のために消費したエネルギーを蓄積して、エネルギーを有効に活用する。熱移動機構17の作用を
図8及び
図9に示すフローチャートを参照して説明する。
【0034】
図8は熱移動機構17の第1ポンプ41の駆動を示す。熱移動機構17は、消去装置10の電源がオンである間に、冷却ガイド28の熱を蓄熱カプセル42に蓄熱可能であれば、第1ポンプをオンする。消色装置制御部51は冷却ガイドセンサ28aの検知結果と蓄熱センサ42aの検知結果を比較して、冷却ガイドセンサ28aの温度T2が、蓄熱センサ42aの温度T3より高ければ(ACT70でYes)、第1ポンプ41をオンする(ACT71)。
【0035】
第1ポンプ41のオンにより第1パイプ40a内の水は、矢印r方向から矢印s方向に循環して、冷却ガイド28の熱を蓄熱カプセル42に移動して、蓄熱カプセル42に熱を蓄積する。冷却ガイド28の温度T2が蓄熱カプセル42の温度T3以下に低下すると(ACT70でNo)、消色装置制御部51は、第1ポンプ41をオフする(ACT72)。第1ポンプ41のオフにより、第1パイプ40a内の水は循環を停止して、冷却ガイド28から蓄熱カプセル42への熱の移動を停止する。或いは第1ポンプ41のオフにより、蓄熱カプセル42から冷却ガイド28に熱が移動するのを停止する。消色装置10は電源をオンする間、第1ポンプ41のオン/オフを繰り返して、蓄熱カプセル42に熱を蓄積する。
【0036】
図9は消色中の熱移動機構17の第2ポンプ44の駆動を示す。電源をオンした後、コントロールパネル18等からの入力により、消色操作がスタートすると、消色装置制御部51は、トリガ発生部46をオンして(ACT76)、ACT77に進む。ACT76で、トリガ発生部46は蓄熱カプセル42に電気パルスを送信する。蓄熱カプセル42の酢酸ナトリウムが過冷却状態であると、電気パルスにより酢酸ナトリウムは発核して液体から固体に急激に変化し発熱する。蓄熱カプセル42の酢酸ナトリウムが過冷却状態でなければ、電気パルスの入力にかかわらず、酢酸ナトリウムは現状の温度を維持する。
【0037】
ACT77で、消色装置制御部51は蓄熱センサ42aの検知結果と予熱ガイドセンサ27aの検知結果を比較して、蓄熱センサ42aの温度T3が予熱ガイドセンサ27aの温度T1より高ければ(ACT77でYes)、第2ポンプ44をオンする(ACT78)。第2ポンプ44のオンにより第2パイプ43a内の水は、矢印t方向から矢印u方向に循環して、蓄熱カプセル42の蓄積熱を予熱ガイド27に移動する。蓄積熱の移動により加熱した予熱ガイド27は、第2搬送路21で搬送するシートPを予熱する。
【0038】
蓄熱カプセル42の蓄積熱を予熱ガイド27に移動する間に、蓄熱カプセル42の温度T3が予熱ガイド27の温度T1以下に低下すると(ACT77でNo)、消色装置制御部51は、第2ポンプ44をオフする(ACT80)。第2ポンプ44のオフにより、第2パイプ43a内の水は循環を停止して、蓄熱カプセル42から予熱ガイド27への蓄積熱の移動を停止する。或いは第2ポンプ44のオフにより、予熱ガイド27から蓄熱カプセル42に熱が移動するのを停止する。
【0039】
消色装置10の消色操作が継続していれば(ACT81でNo.)、消色装置制御部51はACT77に戻り、蓄熱センサ42aの温度T3と予熱ガイドセンサ27aの温度T1の関係に応じて、第2ポンプ44をオン/オフ制御する。消色装置10の消色操作が終了すれば(ACT81でYes.)、第2搬送路21でシートPを搬送しないことから。消色装置制御部51は、第2ポンプ44をオフして(ACT82)、第2ポンプ44の操作を終了する。
【0040】
消色装置10で消色操作を行う間の、予熱ガイド27、冷却ガイド28及び蓄熱カプセル42の温度の推移を、
図10に示すグラフを参照して説明する。消色装置10の電源オン後、例えば熱ガイド27と冷却ガイド28がほぼ室温まで冷却し、蓄熱カプセル42が前の消色操作による熱を多少蓄積しているとする。予熱ガイドセンサ27aの温度T1、冷却ガイドセンサ28aの温度T2及び蓄熱センサ42aの温度T3は、T3>T1=T2となっている。
【0041】
時間m1で、ユーザがコントロールパネル18から消色操作の開始を入力すると、消色装置制御部51はトリガ発生部46を駆動し、T3>T1であることから消色装置制御部51は第2ポンプ44がオンする。酢酸ナトリウムは、過冷却状態であるとトリガ発生部46からの電気パルスにより発核し、液体から固体に急激に変化して発熱する。酢酸ナトリウムは、過冷却状態で無ければトリガ発生部46からの電気パルスを発生しても、発熱しない。
【0042】
例えば時間m1の消色操作開始時に、酢酸ナトリウムが過冷却状態で無いとすると、蓄熱カプセル42は、加熱しない。第2ポンプ44がオンして、第2パイプ43aの水を循環すると、蓄熱カプセル42は蓄積していた熱を予熱ガイド27に移動する。蓄熱カプセル42からの熱により予熱ガイド27は温度上昇する。
【0043】
時間m2でシートPの搬送を開始すると、第2搬送路21は、シートPを消色部14に搬送する間に予熱ガイド27でシートPを予熱する。第3搬送路22は、消色部14で例えば90〜100℃程度に加熱されたシートPを搬送する間に冷却ガイド28でシートPを冷却する。シートPの搬送により、冷却ガイド28は温度上昇して、T2>T3になる。T2>T3になる時間m3で、消色装置制御部51は第1ポンプをオンして、第1パイプ40aの水を循環して、冷却ガイド28から蓄熱カプセル42に熱を移動する。
【0044】
蓄熱カプセル42は、第1の熱流路40が移動する冷却ガイド28からの熱を蓄積し、且つ第2の熱流路43により予熱ガイド27に蓄積熱を移動しながら温度上昇する。予熱ガイド27は、第2の熱流路43が移動する蓄積熱により温度上昇する。
【0045】
蓄熱カプセル42は、酢酸ナトリウムの相変化温度(58℃)に達すると、酢酸ナトリウムが固体から液体へ変化し始めて、完全に液体になるまで相変化温度(58℃)を保つ。冷却ガイド28は、センサ13の温度上限より低温の、(58+α)℃(例えば63℃)以上に温度上昇しない。(58+α)℃を保つ冷却ガイド28は、消色部14で加熱されたシートPの熱を奪う。第3搬送部22は、センサ13の温度上限以下に温度低下したシートPを下流のセンサ13方向に搬送する。消色装置10は、消色後のシートPを読取るセンサ13が温度上昇するのを抑制できる。
【0046】
蓄熱カプセル42の酢酸ナトリウムが相変化温度(58℃)を保つ間、予熱ガイド27は、(58−β)℃(例えば53℃)を保持する。第2搬送路21は、シートPを消色部14に搬送する間に予熱ガイド27により、室温程度のシートPを例えば48℃程度まで予熱する。
【0047】
時間m4で消色操作を終了し、シートPの搬送を終了すると、予熱ガイド27によるシートPの予熱操作を終了することから、消色装置制御部51は第2ポンプ44をオフする。第2ポンプ44のオフにより、第2の熱流路43による蓄熱カプセル42から予熱ガイド27への蓄積熱の移動を停止する。予熱ガイド27と冷却ガイド28は、徐々に温度低下する。時間m5で冷却ガイド28が酢酸ナトリウムの相変化温度(58℃)以下になると、消色装置制御部51は第1ポンプ41をオフする。第1ポンプ41のオフにより、第1の熱流路40による冷却ガイド28から蓄熱カプセル42への熱の移動を停止する。
【0048】
この後、予熱ガイド27と冷却ガイド28は、ほぼ室温まで温度低下を続ける。蓄熱カプセル42は、相変化温度(58℃)を継続した後、徐々に室温近くまで温度低下する。蓄熱カプセル42は、酢酸ナトリウムが過冷却状態であると、消色操作を終了後、徐々に温度低下した場合には、固体に変化せずに液体状態を保つ。
【0049】
時間m6で、ユーザがコントロールパネル18から次の消色操作の開始を入力すると、m1の時と同様に、消色装置制御部51は、トリガ発生部46を駆動し第2ポンプ44をオンする。例えば酢酸ナトリウムが過冷却状態であると、蓄熱カプセル42はトリガ発生部46からの電気パルスにより発核し、液体から固体に急激に変化して蓄熱カプセル42は発熱する。
【0050】
蓄熱カプセル42の発熱は、第2の熱流路43により予熱ガイド27に移動して、予熱ガイド27を加熱する。時間m7でシートPの搬送を開始すると、第2搬送路21は、シートPを予熱ガイド27で予熱して消色部14に搬送する。冷却ガイド28は、消色部で加熱されたシートPを冷却する。シートPの搬送により冷却ガイド28が温度上昇して、時間7でT2>T3になると、消色装置制御部51は第1ポンプをオンする。
【0051】
蓄熱カプセル42は、冷却ガイド28からの熱を蓄積し且つ予熱ガイド27に蓄積熱を移動しながら酢酸ナトリウムの相変化温度(58℃)に達し、完全に液体になるまで相変化温度(58℃)を保つ。冷却ガイド28は、第1の熱流路40により蓄熱カプセル42に熱を移動しながら温度上昇し、(58+α)℃を保つ。予熱ガイド27は、第2の熱流路43による蓄熱カプセル42からの蓄積熱の移動により温度上昇し、(58−β)℃を保つ。
【0052】
この後消色操作の終了及び消色操作の開始を繰り返す間、消色操作の開始時に、消色装置制御部51はトリガ発生部46を駆動して、トリガ発生部46から蓄熱カプセル42に電気パルスを発生する。
【0053】
消色装置10は熱移動機構17により、消色操作時に、冷却ガイド28をセンサ13の温度上限より低温の(58+α)℃に保ち、消色部14で加熱されたシートPを冷却する。消色装置10は、消色後にシートPを読取るセンサ13が温度上昇するのを抑制する。
【0054】
これに対して、消色装置10に熱移動機構17を備えていない比較例の冷却ガイド28の温度の推移を
図11に示す。比較例では加熱されたシートPを連続して搬送する間は、消色操作を終了するまで、冷却ガイド28は温度上昇を続ける。比較例では冷却ガイド28が、センサ13の温度上限に達しても温度上昇を続けることから、シートPは、冷却ガイド28で冷却されずに高温のままセンサ13に達する。センサ13は、高温のシートPを読取ることにより温度上昇して、読取り精度を著しく損ない読み取り不能となる。
【0055】
第1の実施形態によれば、熱移動機構17により、消色部14で加熱されたシートPを搬送する冷却ガイド28の熱を蓄熱カプセル42に移動する。冷却ガイド28をセンサ13の温度上限以下に保持して、蓄熱カプセル42に熱を蓄積する。熱移動機構17により蓄熱カプセル42の蓄積熱を予熱ガイド17に移動して、消色部14に搬送するシートPを予熱する。
【0056】
冷却ガイド28は、消色部14で加熱されたシートPを冷却して、消色後にシートPを読取るセンサ13が温度上昇するのを抑制する。シートPの消色を連続して行った場合でも、センサ13の第1スキャナ部13a及び第2スキャナ部13bの特性を損なうことがなく、センサ13は良好な読取り精度を維持する。
【0057】
消色に使用したエネルギーを用いて予熱ガイド27を加熱して、消色前にシートPを予熱することにより、消色部で消費するエネルギーを減らすことが可能になる。消色に使用したエネルギーを蓄積して予熱に利用することにより、エネルギーを有効に活用し、消色装置10の消費エネルギーの節約を得る。
【0058】
以上説明した実施形態では、熱移動部の熱の移動及び停止をポンプのオン・オフで行ったが、これに限らず熱流路に弁を設けて、弁を閉じることで熱の移動を妨げても良い。実施形態では、搬送媒体の熱処理装置の一例として消色装置を示したが、搬送媒体の熱処理装置は画像形成装置に搭載するものであっても良い。例えば両面印刷可能な画像形成装置において、片面の定着を終了したシートの反転搬送路に冷却ガイドを設けて、シートを冷却する。冷却したシートを転写部に再搬送することにより、裏面のトナー像転写の転写精度を向上する。反転搬送路の冷却ガイドの熱を定着装置に移動して、定着エネルギーを節約するようにしても良い。また、媒体は紙に限らず、プラスチック等第1及び第2の媒体搬送部で搬送可能のものであれば、いずれであってもよい。
【0059】
この発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことが出来る。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。