【実施例】
【0023】
実施例に係る乗員保護装置制御ユニット用ケース構造について図面に基づき説明する。なお、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」、「下」は運転者から見た方向に従い、Frは前側、Rrは後側、Leは左側、Riは右側を示す。
【0024】
図1に示されるように、自動車等の車両10は車体11の前部、例えばフロアトンネルの前端部にケース取付ブラケット13が設けられている。該車体11の前部、つまりケース取付ブラケット13には、ケース20が取り付けられている。該ケース20の前部は、車両10の前方を向いて位置している。
図2に示されるように、該ケース20は乗員保護装置制御ユニット30、つまり種々の電子部品32を収納するための収納部である。
【0025】
該乗員保護装置制御ユニット30は、プリント基板等の基板31と、該基板31に設けられた各種の電子部品32とからなる。該乗員保護装置制御ユニットは、車両10が衝突荷重を受けたときに、乗員保護装置を制御するものであり、該衝突荷重を受けたことを検出するための加速度センサを含む。つまり、該加速度センサは、該各種の電子部品32の一部に含まれる。
【0026】
該ケース20は、板面を上下に向けて車体に取り付けられる下部の金属板製のベース40と、該ベース40の上(板面)に被せられ且つ取り付けられる樹脂製のケース本体90とからなる。該ベース40は、平面視略矩形状(直角四辺形)且つ概ね平板状の部材であって、例えばアルミニウム合金板等の軽合金板や鋼板の折り曲げ成型品である。
【0027】
詳しく述べると、
図2及び
図3に示されるように、該ベース40は、平面視略矩形状の平坦な中央部41と、該中央部41の周囲を囲む枠部42と、該枠部42の周囲を囲む平坦な縁部43とからなる、一体成型品である。該枠部42は、中央部41の縁から上方へ膨出しており、上端面42aが平坦に形成されている。該上端面42aは、中央部41に対して平行である。
【0028】
該縁部43は、中央部41に対して平行に且つ同じ高さに形成されている。
図4に示されるように、該縁部43の左右の側端面43a,43aは、ベース40の幅方向中心を通ってケース前後方向に延びる直線CL(幅方向中心線CL)に対し、平行である。
【0029】
図2〜
図4に示されるように、該縁部43の前端面、つまり車両10(
図1参照)の前方を向いている面には、全面にわたって該前端面から起立した縦板状の前壁45が形成されている。該縁部43の後端面には、ほぼ全面にわたって該後端面から起立した縦板状の後壁46が形成されている。枠部42の前端と前壁45との間には、前側の溝47が形成される。枠部42の後端と後壁46との間には、後側の溝48が形成される。該前壁45及び該後壁46の各高さは、枠部42の上端面42aと同じ高さである。
【0030】
ケース20は、車体11に取り付けるための複数のブラケット50〜70を有する。より具体的に述べると、
図3及び
図4に示されるように、各ブラケット50〜70は、ベース40の左右の縁43a,43a、つまり縁部43の左右の側端面43a,43aから側方(車幅方向の外側)へ延びており、該ベース40に一体に形成されている。該複数(例えば3つ)のブラケット50〜70は、ベース40の縁43aの右前の部位に位置する第1ブラケット50と、ベース40の縁43aの右後の部位に位置する第2ブラケット60と、ベース40の縁43aの左中央の部位に位置する第3ブラケット70とであり、車体11に各々ボルト81(ビスを含む)によって止められる。
【0031】
図5(a)は、
図4に示される第1ブラケット50を拡大して表している。
図5(b)は、
図5(a)のb−b線に沿った断面図である。第1ブラケット50は、ベース40の縁43a(縁部43の側端面43a)から側方へ延びた平板状の脚部51と、該脚部51の先端に一体に形成されて車体11(
図1参照)にボルト止めされる止め部52とからなる。
【0032】
脚部51の前端面51a(車両前側を向く面51a)は、縁部43の側端面43aに対して直角な面であり、該側端面43aから真横に直線状に形成されている。脚部51の後端面51bは、縁部43の側端面43aに対して前方へ斜めに形成されている。脚部51の側端面51cは、後端面51bの先端から前方へ直線状に形成されている。
【0033】
止め部52には、板面方向に貫通した円形状のボルト孔53が形成されている。さらに、該止め部52は、脚部51の前外側の角部に位置している。このため、止め部52の前端面52aは、脚部51の前端面51aよりも前に位置する。この結果、該脚部51の前には、該縁部43の側端面43aと、脚部51の前端面51aと、止め部52の内側面52bとによって囲まれた、凹部54(切り欠き部54)が形成される。該凹部54は、前が開放されるとともに、後端の両隅が平面視直角(略直角を含む)に形成されている。このため、凹部54の後端の両隅54a,54aには、応力が集中することにより破断しやすくなる現象、いわゆるノッチ効果(切り欠き効果)が働きやすい。
【0034】
脚部51は、該脚部51を板面方向に貫通した貫通孔55と、該貫通孔55によって分岐された前の分岐部分56と後の分岐部分57とからなる。該貫通孔55は、縁部43の側端面43a上に位置し、前後方向に細長く且つ幅方向中心線CL(
図4参照)に対して平行な矩形状に形成されている。該貫通孔55の四隅55a〜55d、つまり前内側の隅55aと前外側の隅55bと後内側の隅55cと後外側の隅55dは、平面視直角(略直角を含む)である。
【0035】
該脚部51のなかの、貫通孔55によって前後に分岐された(二股状に形成された)2つの分岐部分56,57は、ベース40の縁43aから側方へ延びて、2つの脆弱部56,57を構成している。以下、2つの分岐部分56,57のことを、適宜「2つの脆弱部56,57」という。前の分岐部分56は、前側の脆弱部56を構成する。後の分岐部分57は、後側の脆弱部57を構成する。
【0036】
2つの脆弱部56,57のなかの、前側の脆弱部56(一方の脆弱部56)は後側の脆弱部57(他方の脆弱部57)よりも脆弱である。
【0037】
詳しく述べると、前側の脆弱部56の幅Wf1、つまり脚部51の前端面51a(前側の脆弱部56の前端面56f)から貫通孔55の前縁55eまで長さWf1は、後側の脆弱部57の幅Wr1よりも小さい。該脚部51の前端面51aは、止め部52のボルト孔53の中心Pbに対して若干後に位置している。さらに、該脚部51の前端面51aの直前に、凹部54が形成されている。脚部51が、衝突荷重を受けて、上下方向や前後方向へ変位する際に、前側の脆弱部56に局所的な歪みを発生させることができる。この結果、前側の脆弱部56の破断性能を確保することができる。
【0038】
一方、貫通孔55の四隅55a〜55dのなかの、後外側の隅55dからボルト孔53の縁までの距離Lb1は大きい。このため、脚部51が、衝突荷重を受けて、上下方向や前後方向へ変位する際に、該荷重に対する後側の脆弱部57の変形量は大きい。つまり、後側の脆弱部57のバネレートは小さい。言い換えると、後側の脆弱部57の変形量に対する荷重の大きさを下げることができる。
【0039】
このように、ベース40に対する上下方向や前後方向からの荷重に対して、前側の脆弱部56は後側の脆弱部57よりも脆弱であるといえる。脚部51の変形時に、前側の脆弱部56を最初に破断させることにより、該脚部51の全体の変形力を低減することが可能である。つまり、脚部51の変形の最初のステップとして、前側の脆弱部56を破断することができる。
【0040】
貫通孔55の四隅55a〜55dのなかの、後外側の直角な隅55dに対して、脚部51の後端面51bが傾斜している。このため、直角な後外側の隅55d、つまり角55dにはノッチ効果が働きやすい。
【0041】
2つの脆弱部56,57は、それぞれ脚部51の板面方向に段差状に形成されている。つまり、各脆弱部56,57には、ベース40の縁43aに連なる基端から先端側に下がる段差部56a,57aが形成されている。各脆弱部56,57は、基端(ベース40の縁43a側)に対して先端が低い。止め部52は、各脆弱部56,57の先端と同じ高さに位置する。このため、各脆弱部56,57が破断するときに、破断した端同士が干渉することを防止することができる。従って、該各脆弱部56,57の破断が、より適切に行われる。
【0042】
このように、第1ブラケット50に少なくとも1つの脆弱部(2つの脆弱部56,57の一方)を有することにより、車体11から第1ブラケット50に過大な衝突荷重が作用した場合に、各脆弱部56,57が破断することによって、ケース20内の乗員保護装置制御ユニット30を保護することができる。
【0043】
図6(a)は、
図4に示される第2ブラケット60を拡大して表している。
図6(b)は、
図6(a)のb−b線に沿った断面図である。第2ブラケット60は、ベース40の縁43a(縁部43の側端面43a)から側方へ延びた平板状の脚部61と、該脚部61の先端に一体に形成されて車体11(
図1参照)にボルト止めされる止め部62とからなる。
【0044】
脚部61の前端面61a(車両前側を向く面61a)は、縁部43の側端面43aに対して直角な面であり、該側端面43aから真横に直線状に形成されている。脚部61の後端面61bは、縁部43の側端面43aに対して前方へ斜めに形成されている。
【0045】
止め部62の前端面62aは、脚部61の前端面61aに対して略面一に位置する。止め部62には、板面方向に貫通した円形状のボルト孔63が形成されている。
【0046】
該脚部61は、該脚部61を板面方向に貫通した貫通孔65と、該貫通孔65によって分岐された前の分岐部分66と後の分岐部分67とからなる。該貫通孔65は、縁部43の側端面43a上に位置し、前後方向に細長く且つ幅方向中心線CL(
図4参照)に対して平行な矩形状に形成されている。該貫通孔65の四隅65a〜65d、つまり前内側の隅65aと前外側の隅65bと後内側の隅65cと後外側の隅65dは、平面視直角(略直角を含む)である。
【0047】
該脚部61のなかの、貫通孔65によって前後に分岐された2つの分岐部分66,67は、ベース40の縁43aから側方へ延びて、2つの脆弱部66,67を構成している。以下、2つの分岐部分66,67のことを、適宜「2つの脆弱部66,67」という。前の分岐部分66は、前側の脆弱部66を構成する。後の分岐部分67は、後側の脆弱部67を構成する。
【0048】
2つの脆弱部66,67のなかの、前側の脆弱部66(一方の脆弱部66)は後側の脆弱部67(他方の脆弱部67)よりも脆弱である。
【0049】
詳しく述べると、前側の脆弱部66の幅Wf2、つまり脚部61の前端面61a(前側の脆弱部66の前端面66f)から貫通孔65の前縁65eまで長さWf2は、後側の脆弱部67の幅Wr2よりも小さい。
【0050】
ボルト孔63の縁の前端は、貫通孔65の前縁65eの延長線Lfの付近に位置している。該貫通孔65の四隅65a〜65dのなかの、後外側の隅65dからボルト孔63の縁までの距離Lb2は大きい。このため、脚部61が、衝突荷重を受けて、上下方向や前後方向へ変位する際に、該荷重に対する後側の脆弱部67の変形量は大きい。つまり、後側の脆弱部67のバネレートは小さい。言い換えると、後側の脆弱部67の変形量に対する荷重の大きさを下げることができる。
【0051】
このように、ベース40に対する上下方向や前後方向からの荷重に対して、前側の脆弱部66は後側の脆弱部67よりも脆弱であるといえる。脚部61の変形時に、前側の脆弱部66を最初に破断させることにより、該脚部61の全体の変形力を低減することが可能である。つまり、脚部61の変形の最初のステップとして、前側の脆弱部66を破断することができる。
【0052】
貫通孔65の四隅65a〜65dのなかの、後外側の直角な隅65dに対して、脚部61の後端面61bが傾斜している。このため、直角な後外側の隅65d、つまり角65dにはノッチ効果が働きやすい。
【0053】
2つの脆弱部66,67は、それぞれ脚部61の板面方向に段差状に形成されている。つまり、各脆弱部66,67には、ベース40の縁43aに連なる基端から先端側に下がる段差部66a,67aが形成されている。各脆弱部66,67は、基端(ベース40の縁43a側)に対して先端が低い。止め部62は、各脆弱部66,67の先端と同じ高さに位置する。このため、各脆弱部66,67が破断するときに、破断した端同士が干渉することを防止することができる。従って、該各脆弱部66,67の破断が、より適切に行われる。
【0054】
このように、第2ブラケット60に少なくとも1つの脆弱部(2つの脆弱部66,67の一方)を有することにより、車体11から第2ブラケット60に過大な衝突荷重が作用した場合に、各脆弱部66,67が破断することによって、ケース20内の乗員保護装置制御ユニット30を保護することができる。
【0055】
図7(a)は、
図4に示される第3ブラケット70を拡大して表している。
図7(b)は、
図7(a)のb−b線に沿った断面図である。第3ブラケット70の全体形状は、ベース40の縁43a(縁部43の側端面43a)から側方へ先細りとなる、平面視略テーパ状である。該第3ブラケット70は、縁部43の側端面43aから側方へ延びた平板状の脚部71と、該脚部71の先端に一体に形成されて車体11(
図1参照)にボルト止めされる止め部72とからなる。
【0056】
脚部71は、ベース40の縁43aから側方へ先細りとなる、平面視略テーパ状に形成されている。脚部71の前端面71a(車両前側を向く面71a)は、縁部43の側端面43aに対して後方へ斜めに形成されている。脚部71の後端面71bは、縁部43の側端面43aに対して前方へ斜めに形成されている。
【0057】
脚部71は、該脚部71を板面方向に貫通した貫通孔75と、該貫通孔75によって分岐された前の分岐部分76と後の分岐部分77とからなる。該貫通孔75は、縁部43の側端面43a上に位置し、前後方向に細長く且つ幅方向中心線CL(
図4参照)に対して平行な矩形状に形成されている。該貫通孔75の四隅75a〜75d、つまり前内側の隅75aと前外側の隅75bと後内側の隅75cと後外側の隅75dは、平面視直角(略直角を含む)である。
【0058】
該脚部71のなかの、貫通孔75によって前後に分岐された2つの分岐部分76,77は、ベース40の縁43aから側方へ延びて、2つの脆弱部76,77を構成している。以下、2つの分岐部分76,77のことを、適宜「2つの脆弱部76,77」という。前の分岐部分76は、前側の脆弱部76を構成する。後の分岐部分77は、後側の脆弱部77を構成する。
【0059】
2つの脆弱部76,77のなかの、前側の脆弱部76(一方の脆弱部76)は後側の脆弱部77(他方の脆弱部77)よりも脆弱である。
【0060】
詳しく述べると、前側の脆弱部76の幅Wf3、つまり脚部71の前端面71a(前側の脆弱部76の前端面76f)から貫通孔75の前縁75eまで長さWf3は、後側の脆弱部77の幅Wr3よりも小さい。止め部72には、板面方向に貫通したベース幅方向に細長い長孔状のボルト孔73が形成されている。該ボルト孔73の中心Pbcは、貫通孔75の前後方向中心Ptcの付近に位置している。
【0061】
貫通孔75の四隅75a〜75dのなかの、後外側の隅75dからボルト孔73の縁までの距離Lbrは、前外側の隅75bからボルト孔73の縁までの距離Lbfよりも大きい。このため、脚部71が、衝突荷重を受けて、上下方向や前後方向へ変位する際に、該荷重に対する後側の脆弱部77の変形量は大きい。つまり、後側の脆弱部77のバネレートは小さい。言い換えると、後側の脆弱部77の変形量に対する荷重の大きさを下げることができる。
【0062】
このように、ベース40に対する上下方向や前後方向からの荷重に対して、前側の脆弱部76は後側の脆弱部77よりも脆弱であるといえる。脚部71の変形時に、前側の脆弱部76を最初に破断させることにより、該脚部71の全体の変形力を低減することが可能である。つまり、脚部71の変形の最初のステップとして、前側の脆弱部76を破断することができる。
【0063】
貫通孔75の四隅75a〜75dのなかの、後外側の直角な隅75dに対して、脚部71の後端面71bが傾斜している。このため、直角な後外側の隅75d、つまり角75dにはノッチ効果が働きやすい。
【0064】
2つの脆弱部76,77は、それぞれ脚部71の板面方向に段差状に形成されている。つまり、各脆弱部76,77には、ベース40の縁43aに連なる基端から先端側に下がる段差部76a,77aが形成されている。各脆弱部76,77は、基端(ベース40の縁43a側)に対して先端が低い。止め部72は、各脆弱部76,77の先端と同じ高さに位置する。このため、各脆弱部76,77が破断するときに、破断した端同士が干渉することを防止することができる。従って、該各脆弱部76,77の破断が、より適切に行われる。
【0065】
このように、第3ブラケット70に少なくとも1つの脆弱部(2つの脆弱部76,77の一方)を有することにより、車体11から第3ブラケット70に過大な衝突荷重が作用した場合に、各脆弱部76,77が破断することによって、ケース20内の乗員保護装置制御ユニット30を保護することができる。
【0066】
図4に示されるように、幅方向中心線CLからボルト孔53,63,73の中心位置までの距離は、互いに同一である。幅方向中心線CLから貫通孔55,65,75の位置までの距離は、互いに同一である。貫通孔55,65,75の幅は、互いに同一である。
【0067】
第1及び第3ブラケット50,70の前側の脆弱部56,76同士は、ベース40の前端面、つまり前壁45から基本的に(実質的に)同じ距離だけ後方に位置している。さらに、第1ブラケット50の前側の脆弱部56から後方へ、第1ブラケット50の後側の脆弱部57、第3ブラケット70の後側の脆弱部77、第2ブラケット60の前側の脆弱部66、第2ブラケット60の後側の脆弱部67が、この順に位置している。特に、ベース40が荷重を受けたときに、各前側の脆弱部56,66,76は、第1ブラケット50の前側の脆弱部56、第2ブラケット60の前側の脆弱部66、第3ブラケット70の前側の脆弱部76の順に破断するように、破断強度が設定されることが好ましい。
【0068】
図2に示されるように、ケース本体90は、例えば硬質樹脂等の樹脂の成型品によって構成される。該ケース本体90は、中央部41及び枠部42を全体にわたって上から覆うことが可能な大きさの、平面視略矩形状に形成されており、下面の全体が開放されている。該ケース本体90は、枠部42の上端面42aの上に基板31を介して上から重ねられ、下方から複数のビス91によって、基板31と共に枠部42に取り付けられている。
【0069】
言い換えると、ケース20は、下が開放されたケース本体90と、該ケース本体90の下面を塞ぐベース40とからなる。基板31は、該基板31の下側に位置するベース40と共に、ケース本体90にビス91によって固定されている。
【0070】
該ケース本体90の下端の縁には、全周にわたって下方へ延びたスカート92が一体に形成されている。該スカート92は、枠部42の外周囲を全周にわたって覆っている。このため、ケース本体90の上方から水が流れてきても、枠部42の上端面42aに水が流れ込むことはない。なお、基板31は、外部の水に晒されないようにケース20内に位置していればよい。さらに、前側の溝47と後側の溝48とには、スカート92が上から入り込んでいる。
【0071】
次に、上記構成の作用を説明する。
図8(a)は、ケース20にフロアパネルが前下方から突き当たった状態を右側から見ていることを示す。
図8(b)は、
図8(a)の状態を左側から見ていることを示す。
【0072】
各ブラケット50〜70は、車体11にボルト止めされている。車両前下方からの過大な衝突荷重fu(上後向き荷重fu)によって、車体11の前部の一部、例えばフロアパネルのなかのケース20直前付近の一部の部位が後上方へ塑性変形した場合には、該部位はベース40の前壁45に突き当たる。この結果、該部位が変形して、ベース40の前壁45を後上方へ押し上げる。特に、ベース40の前半分に位置している第1及び第3ブラケット50,70の前側の脆弱部56,76は、過大な上後向き荷重fuを受けて、上方へ塑性変形する。
【0073】
塑性変形が大きくなると、ベース40のなかの最も前に位置している、第1ブラケット50の前側の脆弱部56は、上後向き荷重fuが比較的小さいうちに、最初に破断する。その後には、第1ブラケット50の後側の脆弱部57と、第2及び第3ブラケット60,70の脆弱部66,67,76,77が、上方への塑性変形を続行し、破断タイミングをずらしながら、順次破断し始める。第2及び第3ブラケット60,70においても、前側の脆弱部66,76が後側の脆弱部67,77よりも先に破断する。この結果、ケース20内の乗員保護装置制御ユニット30(
図2参照)を衝突荷重fuから保護する。
【0074】
一方、
図9に示されるように、車両前方からの過大な衝突荷重fc(後向き荷重fc)によって、車体11の前部の一部11a、例えばフロアパネルのなかのケース20直前付近の一部の部位11aが後方へ塑性変形した場合には、該部位11aはベース40の前壁45の全面にわたって突き当たる。この結果、該部位11aが変形して、ベース40の前壁45を後方へ押し出す。このため、車体11にボルト止めされている各止め部52,62,72に対し、全ての脆弱部56,57,66,67,76,77は、後方へ変位、つまり塑性変形しようとする。
【0075】
ベース40の右側に前後2つのブラケット50,60が設けられているのに対し、該ベース40の左側には1つのブラケット70だけが設けられている。このため、第3ブラケット70の前側の脆弱部76は、他の脆弱部56,57,66,67,77よりも大きく後方へ変形する。従って、
図10に示されるように、ケース20は、ベース40の前壁45の右端を支点として平面視反時計回り(矢印Rc方向)に傾き始める。この結果、第1ブラケット50の前側の脆弱部56には、平面視反時計回り方向の過大な破断力が作用する。
図11に示されるように、該前側の脆弱部56は破断する。該前側の脆弱部56の破断の前後に、タイミングをずらしながら、又は同時に他の脆弱部57,66,67,76,77も塑性変形し、一部が破断する。この結果、ケース20内の乗員保護装置制御ユニット30(
図2参照)を衝突荷重fcから保護する。
【0076】
以上の説明をまとめると、次の通りである。
図9に示されるように、車体11から第1ブラケット50に過大な衝突荷重fcが作用した場合に、該衝突荷重fcは止め部52から、脚部51のなかの分岐された2つの脆弱部56,57に分散される。各脆弱部56,57の破断強度は、分散された小さい荷重によって破断することが可能に、予め設定すればよい。各脆弱部56,57は、比較的小さい荷重によって個別に破断し得る。第1ブラケット50は、過大な衝突荷重fcに対して、速やかに且つ確実に破断することができる。つまり、第1ブラケット50が、いつまでも破断しないで塑性変形し続けることのないように、抑制することができる。
【0077】
この結果、ケース20に収納されている乗員保護装置制御ユニット30(
図2参照)を、衝突荷重fcから保護する保護性能を増すことができる。該乗員保護装置制御ユニット30には、重要な各種データが記録されている。該乗員保護装置制御ユニット30が保護されることにより、該乗員保護装置制御ユニット30から該各種データを読み出す読み出し性能を確保することができる。しかも、第1ブラケット50の脚部51に、貫通孔55によって分岐された2つの分岐部分56,57により、2つの脆弱部56,57が構成されるだけの簡単な構成ですみ、ケース20の製造コストの低減化を図ることができる。
【0078】
さらには、2つの脆弱部56,57のなかの、一方が他方よりも脆弱である。このため、2つの脆弱部56,57が破断するタイミングを変えて、第1ブラケット50を過大な衝突荷重に対してより速やかに且つより確実に破断することができる。
【0079】
第2及び第3ブラケット60,70についても、第1ブラケット50と同様である。