(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
交連支持部材が、基部への交連支持部材の取り付け位置における楕円断面の外側縁に対する接線を含む面に対して血流方向から10°の外側角度で基部から離れて広がる、請求項1に記載の装置。
装置が、経皮送達システム内に圧縮可能でありかつ解放されたときに楕円形状に拡張可能であるのに効果的な圧縮可能かつ拡張可能な材料から構成される、請求項1に記載の装置。
【背景技術】
【0002】
哺乳類の心臓は本質的に、化学機械的エネルギ変換器として機能するポンプである。代謝基質および酸素の化学エネルギは血圧の機械エネルギに変換され、心収縮中に心筋サルコメアによって流動する。該ポンプは、収縮期と呼ばれる収縮/駆出期および拡張期と呼ばれる弛緩/充満期を1〜2Hzの周波数で周期的に繰り返す。
【0003】
ヒトの心臓は心臓血管系、すなわち肺循環および体循環から成る2つの並列循環を有する系の中心である。肺循環は大静脈から血液を右心房および右心室内に受け入れ、次いで心拍出量を肺動脈内および肺全体に送り出す。体循環は肺静脈から血液を受け入れ、左心房および左心室を介して心拍出量を大動脈、全身動脈、毛細血管、および静脈に送り出し、最終的に血液を大静脈に戻す。上方のチャンバすなわち左心房とポンプチャンバすなわち左心室との間に、僧帽弁が位置する。左心房は、心周期全体を通して肺静脈を介して肺から血液を受け入れるキャパシタ機能を果たす。左心室は拡張期に僧帽弁が開いたときに左心房から血液を受け入れることによって充満し、次いで収縮期に僧帽弁は閉じて、左心室から上行大動脈への血液の前方拍出を可能にする。左心室と大動脈との間には大動脈弁が位置し、正常な状態で、収縮期に心室から大動脈へのスムーズな血流を可能にするように働く。拡張期には、大動脈弁が閉じて左心室への逆流を防止する。
【0004】
患者の自己弁の外科的再建は、僧帽弁疾患の標準になりつつある。僧帽弁逸脱、純粋弁輪拡張、虚血性僧帽弁逆流、または僧帽弁心内膜炎のいずれを考慮するかに関わらず、修復術は今や常法であり、成功率が高く、関連する遅発性不全率も低い。リウマチ性僧帽弁疾患の場合でさえ、多くの外科医が積極的修復のプログラムに乗り出し、弁輪形成術にグルタルアルデヒド固定自己心膜による後尖増強技術、狭窄僧帽弁下装置の切除と人工GORTEX(商標)腱索の挿置、弁葉脱灰等を追加している。現在の目標は、僧帽弁疾患の100%に近い修復率を達成し、かつ人工弁置換術を著しく減少させることである。この状況における置換術に対する修復術の利点は充分に立証されている。(他の因子に対し正規化した)手術死亡率は低く、洞律動に抗凝血は不要であり、弁関連合併症は人工弁の場合より少なく、患者自身の組織が変質しないので耐久性は優れており、存在する異物が少ないので遅発性心内膜炎は低減される。したがって、僧帽弁疾患に対するこれらの概念は、心臓外科の分野で急速に標準治療になりつつある。
【0005】
ヒトの心臓の大動脈弁もまた罹病することがあり得、大動脈弁閉鎖不全は多くの原因で発生する。一般的な原因は、バルサルバ洞が外側に移動し、交連間距離が拡大する弁輪拡張である。幾何学的には、この乱れは弁輪の外周を増大させるだけでなく、尖接合の表面積をも低減させる。尖の接合角度は本質的に、平行し鋭角で交わる状態から、互いの方向を指向し、尖がより鈍角の構成を備える状態に変化する。最終的に、接合の中央間隙が生じ、増大する大動脈弁閉鎖不全はより大きい弁輪拡張を引き起こし、それはさらに大きい大動脈弁閉鎖不全を引き起こし、漏れは徐々に増大する。
【0006】
病変した大動脈弁の修復術は、病変した僧帽弁の再建術で経験されるのと同じ成功を収めてこなかった。約10ないし15年間、「交連弁輪形成」技術が使用されてきたが、それは通常、一次冠状動脈バイパス術または僧帽弁手技を受けた患者の軽度から中程度の二次大動脈弁閉鎖不全症にのみ適用することができる。交連弁輪形成術は弁輪外周を低減させるだけではなく、洞を中心に移動させる傾向もあり、こうして尖の形状および接合角度を正常化する。しかし、交連弁輪形成術が正常化することのできる形状異常には限界があり、弁輪全体はこの手技では固定されないので、さらなる拡張および再発大動脈弁閉鎖不全の潜在的可能性が存在する。
【0007】
したがって、弁輪上大動脈弁を教示する例えば米国特許第4451936号(「´936号特許」)を含め、装置および方法が提示されてきた。´936号特許によると、該発明は機械的心臓弁および小葉型心臓弁に適用可能であり、大動脈弁には投影されない。米国特許第5258021号(「´021号特許」)では、大動脈弁輪の上の弁輪上領域で大動脈の内側に挿入するための人工弁輪が記載されている。開示された装置は上から見ると円形であり、3つの略正弦波状のストラットを有する。米国特許出願公開第2005/0228494号(「´494号特許出願」)には、移植後に複数の個別尖に分離することのできる心臓弁フレームが記載されている。加えて、´494号特許出願の発明は、合成弁葉と共に使用することが好ましい。
【0008】
米国特許第6231602号(「´602号特許」)は、大動脈弁輪の上の組織に縫合される弁形成リングについて、かつ交連‐動脈壁交差部の真下の高密度組織に縫合することのできる弁輪下リングについても記載している。さらに、弁輪下リングは弁葉の形状を組織的に変化させずあるいはそれに影響を及ぼすことさえないが、代わりに弁輪下大動脈を圧搾して、適切な弁葉接合を回復するのではなく、弁葉の下面を中心に移動させる。さらに、´602号特許のリングは明らかに僧帽弁の以前の研究に基づいているので、´602号は大動脈弁の三次元形状の複雑さを無視しており、小弁上または小弁下いずれかの領域を非効率的に圧搾している。また、´602号特許はリングについて、弁輪の上または下いずれかの大動脈組織の大まかな形状に従うとだけ記載し、リングの適切な大きさの説明はなく、リングを患者の体内にどのように移植するかについても記載していない。
【0009】
残念ながら、先行技術のプロセスの弁輪上または弁輪下のリングおよび人工弁は略円形の形状であり、大動脈弁の長期改善には一般的に効率的でなく、加えて、極めて複雑な外科的手技を必要とする。
【0010】
したがって、求められているものは、大動脈弁修復術または置換術のための改善された装置である。また、そのような装置を挿置かつ装着するためのプロセスも求められている。
【発明の概要】
【0011】
本開示は、装置が大動脈弁中の血流の方向に対し垂直な面を楕円断面形状に構成されたときに、自己弁葉または合成弁葉のいずれでも弁葉構造の正しい配向、配置、および接合角度をもたらす大動脈弁装置、インプラント、および補綴物を製造することができるという驚くべき発見に起因する。さらに、自己弁を置換するのではなく修復する場合、装置は、装置またはインプラントの内部領域を通過する垂直面から外側に(大動脈壁の方向に)広がる交連支持領域を有するように構成される。特定の装置は、他の特徴を取り付けることのできる剛性または拡張可能なリング構造である基部を含む。そのような基部が存在する場合、血管壁に対し垂直な面が楕円または楕円面の形状であり、あるいはリング構造を含まない装置では、装置の略断面形状は血管壁に対し垂直な面に楕円断面形状を有する。楕円構造は、ここでは、改善された機能およびしたがって患者にとって改善された結果をもたらすように示される。
【0012】
特定の実施形態では、一般的に患者の大動脈弁の特定の形状に応じて、楕円の短軸に対する楕円の長軸の比は1より大きく、特定の態様では、約1.1から1.8の間であり、約1.1、約1.2、約1.3、約1.4、約1.5、約1.6、約1.7、および約1.8の比率を含む。弁輪内装着フレームによって画定される楕円は、長軸に対する短軸の比として表現することもできる。したがって、現在記載している弁輪内装着フレームは1未満の長軸に対する短軸の比を有することができ、特定の態様では約0.9、約0.85、約0.80、約0.75、約0.70、約0.65、約0.60、または約0.55か程度とすることができる。種々の実施形態では、楕円の長軸の長さは約10ミリメートルから約35ミリメートルの間、約15ミリメートルから約30ミリメートルの間、約20ミリメートルから約25ミリメートルの間、約10ミリメートルから約30ミリメートルの間、約10ミリメートルから約25ミリメートルの間、約10ミリメートルから約20ミリメートルの間、約10ミリメートルから約15ミリメートルの間、約15ミリメートルから約35ミリメートルの間、約20ミリメートルから約35ミリメートルの間、約25ミリメートルから約35ミリメートルの間、または約30ミリメートルから約35ミリメートルの間であり、約10ミリメートル、約11ミリメートル、約12ミリメートル、約13ミリメートル、約14ミリメートル、約15ミリメートル、約16ミリメートル、約17ミリメートル、約18ミリメートル、約19ミリメートル、約20ミリメートル、約21ミリメートル、約22ミリメートル、約23ミリメートル、約24ミリメートル、約25ミリメートル、約26ミリメートル、約27ミリメートル、約28ミリメートル、約29ミリメートル、約30ミリメートル、約31ミリメートル、約32ミリメートル、約33ミリメートル、約34ミリメートル、および約35ミリメートルの長さを含む。楕円の短軸の長さもまた様々にすることができ、例えば約8ミリメートルから約25ミリメートルの間、約10ミリメートルから約21ミリメートルの間、約14ミリメートルから約18ミリメートルの間、約8ミリメートルから約20ミリメートルの間、約8ミリメートルから約15ミリメートルの間、約10ミリメートルから約25ミリメートルの間、約15ミリメートルから約25ミリメートルの間、または約20ミリメートルから約25ミリメートルの間であり、約8ミリメートル、約9ミリメートル、約10ミリメートル、約11ミリメートル、約12ミリメートル、約13ミリメートル、約14ミリメートル、約15ミリメートル、約16ミリメートル、約17ミリメートル、約18ミリメートル、約19ミリメートル、約20ミリメートル、約21ミリメートル、約22ミリメートル、約23ミリメートル、約24ミリメートル、および約25ミリメートルの長さを含む。
【0013】
既存の大動脈弁を置換するのではなく修復する特定の態様では、一般的に患者の大動脈弁の特定の形状に応じて、記載する大動脈修復装置の縁部領域は、装置、インプラント、または補綴物の内部領域を通過する垂直面から、約1度、約2度、約3度、約4度、約5度、約6度、約7度、約8度、約9度、約10度、約11度、約12度、約13度、約14度、約15度、約16度、約17度、約18度、約19度、約20度、約21度、約22度、約23度、約24度、約25度、約26度、約27度、約28度、約29度、もしくは約30度、またはそれ以上の角度で外側に広がる。
【0014】
開示する装置は、機械的、高分子、生体高分子、または二弁葉炭素型いずれかの大動脈弁インプラントまたは補綴物とすることができる。該装置は例えば剛性金属、熱分解炭素、または高分子材料から構成するか、あるいは金属もしくは高分子かご構造とすることができる。特定の装置は外科的に弁内に移植して縫合するように設計されており、楕円形の弁輪リング支持構造を含むことができる。特定の実施形態では、インプラントまたは補綴物は例えばコラーゲンのような生体高分子を始めとする生体材料から構成され、さらに構造に播種細胞またはシグナル伝達分子を含むことができる。
【0015】
特定の実施形態では、本開示は、楕円形に形作られた生体高分子布および生体高分子ロープを含み、生体高分子布が生体高分子ロープの周りに巻き付けられ縫合された、ホストの大動脈壁に心臓弁を取り付けるための楕円状縫合リングを提供する。
【0016】
追加の実施形態では、本開示は、固定リングの開口を画定する内周および外周を有し、患者の自己弁輪に取り付けるように適応された固定リングと、装着リングの開口を画定する内周面を有する装着リングであって、開口を位置合せした状態で固定リングに連結され、それによって装着リングの開口内に人工弁を受容することができるようにした装着リングと、装着リングの開口内に受容可能な人工弁と、保持リングと、人工弁が開口内に受容されているときに、装着リングの開口から一方向に動かないように人工弁を保持リングが保持することができ、かつ人工弁を別の人工弁と交換可能にするために人工弁を取り外すことなく保持リングを取り外すことができるように、保持リングを装着リングに解放可能に取り付けるための少なくとも部分的に前記装着リング上の手段と、装着リングの開口から別の方向に移動しないように人工弁を保持するための手段とを備え、固定リング、装着リング、および保持リングが、弁中の血流の方向に対し垂直な面における断面形状が楕円形である、楕円形の人工心臓弁組立体を提供する。
【0017】
別の実施形態では、本開示は、寸法が安定しており、予め位置合せされ、かつ予め組み立てられ、複数の弁葉を含む組織弁葉部分組立体であって、各弁葉が接合縁とは反対側の尖縁および尖縁と接合縁との間の接合部から略反対方向に延びる2つの弁葉タブを含み、部分組立体の弁葉の事前位置合せにより、部分組立体から外向きに延びる複数対の嵌合い弁葉タブが、隣接する1対の弁葉につき嵌合い弁葉タブ1対ずつ、形成されて成る部分組立体と、予め位置合せされた組織弁葉部分組立体を固定された嵌合い係合状態に受容するように寸法を決定された底面を有する略楕円形のワイヤフォームであって、該ワイヤフォームが上向きに延びる交連によって遮断される下部尖を有し、予め組み立てられた組織弁葉部分組立体における弁葉の尖縁がワイヤフォームの尖に沿って取り付けられて弁葉/ワイヤフォーム部分組立体を形成するように構成されたワイヤフォームと、弁葉/ワイヤフォーム部分組立体と嵌合い係合状態に着座固定するように寸法を決定された上面を有する略楕円形の支持ステントであって、嵌合い弁葉タブの対が付着する上向きに延びる可撓性交連ポストを有する支持ステントとを備えた、楕円形の組織型心臓弁を提供する。
【0018】
追加の実施形態では、本開示は、複数の交連を有する弁葉を有する自己動脈心臓弁の拡張した弁輪および洞の正常な周縁を回復するのに使用される楕円形の弁輪形成補綴物であって、軸線方向に突出する複数の脚を有する上縁の脚の各々が弁の交連の位置に対応しかつ上縁の弓状外周または周囲セグメントによって順次相互接続され、こうして一連の山および谷を画定する上縁と、上縁の下に実質的にそれに隣接して配置されかつ上縁の山および谷に合致するように形作られた下縁が、上縁の山および谷より目立たない一連の山および谷を画定するようにした下縁と、補綴物を被覆する可撓性の生体適合性材料とを備えた該楕円形補綴物を提供する。自己動脈心臓弁を使用することガできない実施形態では、楕円形弁輪形成補綴物は楕円形の弁は弁輪、弁葉、および交連点を含み、種々の実施形態で機械弁、二弁葉炭素弁、動物またはヒトの弁または組織のような生体材料から作られた組織弁、または例えば高分子化合物から作られた合成弁とすることができる。
【0019】
さらなる実施形態では、本開示は、冠状動脈入口が無く、各々が心臓弁弁葉を含む3つの部片の動物組織を縫合して外面、内面、後端、前端を有する楕円構造を形成することによって作られた三成分全根ステントレス弁を備えており、3つの弁葉が尖および縁を有し、弁葉の隣接する縁が交差して交連を形成し、部片が縫合前に光化学固定によって処理される、楕円形の人工心臓弁を提供する。
【0020】
特定の実施形態では、装置は、経皮送達システム内に圧縮可能でありかつ解放されたときに楕円形状に拡張可能であるのに効果的な圧縮可能かつ拡張可能な材料から構成することができる。そのような装置は、圧縮性および拡張性をもたらすように、ワイヤロープ、螺旋体、または他のオープンメッシュ構造から構成することができる。装置は典型的には楕円リング構造を含む。特定の実施形態では、装置は、装置が正しい位置にあるときにバルーン(例えばナイロンの楕円形バルーン)を膨らませることによって拡張され、あるいは装置は自己展開式とすることができる。特定の実施形態では、自己展開式装置は、略等量が存在するニッケル‐チタン合金であるニチノールから構成される。
【0021】
他の実施形態では、本開示は、体内チャネルに移植するための楕円形の弁補綴物であって、弾性ステントに装着される折畳み式弾性弁を備え、弾性弁が複数の交連点を有しており、ステントが、体内チャネル内に導入するために半径方向に折り畳み可能でありかつ楕円形の支持手段が体内チャネル内に固定されるために半径方向に拡張可能であるように複数の周方向に拡張可能な部分を有する楕円形の支持手段と、折畳み式弁の交連点を支持するために楕円形の支持手段の片側からその長手軸に略平行な方向に突出する複数の交連支持体とを含み、カテーテル処置技術によって体内チャネルに移植するために折畳み式弁を楕円形の支持手段と共に折畳みかつ拡張することができるように、楕円形の支持手段の少なくとも1つの周方向に拡張可能な部分が交連支持体の各々の間に位置するようにした、楕円形の弁補綴物を提供する。さらに他の実施形態では、本開示は、内壁を有する体内チャネル内に移植するための楕円形の弁補綴物であって、表面を有する楕円形の支持手段を含み半径方向に折畳み可能かつ拡張可能なステントと、交連点を有する折畳み可能かつ拡張可能な弁が交連点でステントに装着されるようにした弁とを備え、ステントおよび弁がカテーテル処置によって体内に移植されるように構成された弁補綴物を提供する。本開示はまた、体内に移植するための楕円形の弁補綴物であって、一連のループから構成される周方向に拡張可能な部分を有しそれらの間にそれらと一体的な交連支持体を持つ楕円形の支持体を含む弾性ステントと、弾性弁の交連点が交連支持体の各々に装着されるようにした弾性弁とを備え、楕円形の支持体がカテーテルを介して体内に移植するために半径方向に折畳み可能である、弁補綴物をも提供する。
【0022】
追加的実施形態では、本開示は、欠損自己弁の置換に使用するための楕円形の人工弁組立体であって、複数の弾性弁葉を有する楕円形の弁と、複数の拡張可能な房を備えた楕円形の中央バンドを備えており、経管送達のために折畳み可能でありかつ組立体が生体内の本来の位置に配置されたときに自己弁の解剖学的弁輪と接触するように拡張可能であるように構成され、弁の基部および交連点を支持する弁支持体と、展開後の弁組立体の実質的移動を防止するために所定の位置で拡張したときに内腔壁に係合するためのアンカがそれ自体拡張可能に構成されたアンカとを備えた、人工弁組立体を提供する。
【0023】
本開示はさらに、端を有する複数の湾曲と、内部領域を形成するために湾曲の各々の端を相互接続する複数の点と、点の各々から上向きに延びる複数のポストとを備えた大動脈弁用の楕円形の弁輪内装着フレームであって、点、湾曲の端、およびポストが弁輪内装着フレームの内部領域から外側に広がる縁領域を画定し、かつ弁輪内装着フレームが長軸および短軸を有する楕円形の形状を有し、ここで長軸が短軸より大きい、弁輪内装着フレームを提供する。特定の実施形態では、弁輪内装着フレームは3つの湾曲と、3つの点と、3つのポストを備える。弁輪内装着フレームのポストの各々の間に角度が画定される。一部の実施形態では、一般的に患者の大動脈弁の特定の形状に応じて、ポストの各々の間の角度は等しく(対称)、他の実施形態では、ポストの各々の間の角度は異なり(非対称)、さらに他の実施形態では、ポスト間の角度のうちの2つは等しいが、第3の角度は他の2つとは異なる(非対称)。さらなる実施形態では、楕円形の弁輪内装着フレームは2つの湾曲と、2つの点と、2つのポストを備える。そのような実施形態は二尖大動脈弁の修復に使用される。特定の実施形態では、一般的に患者の二尖大動脈弁の特定の形状に応じて、ポストの各々の間の角度は等しい(対称)であるが、他の実施形態ではポストの各々の間の角度は異なる(非対称)。追加の実施形態では、ポストは、楕円形の長軸によって画定される湾曲または楕円形の短軸によって画定される湾曲に沿って配置され、あるいは1つのポストが楕円形の長軸によって画定される湾曲に沿って配置され、もう1つのポストが楕円形の短軸によって画定される湾曲に沿って配置される。
【0024】
本開示全体を通して、文脈上矛盾しない限り、用語「備える(comprise)」または「三人称単数形(comprises)」もしくは「進行形(comprising)」のような変化形は、「含むが、それに限定されない」ことを意味するものと理解され、したがって明示的に示されない他の要素も含めることができる。さらに、文脈上矛盾しない限り、用語「a(不定冠詞)」の使用は単数の物または要素を意味し、あるいは複数の、または1つ以上のそのような物または要素を意味する。加えて、楕円形の装置の議論において、用語「外周(circumference)」および「周囲(perimeter)」は互換可能に使用される。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本開示は少なくとも部分的に、大動脈弁の弁輪が、当業界で一般的に信じられているように円形ではなく、実際には楕円形の形状であり、かつ大動脈弁の交連が弁の中心から外側に広がっているという、本発明者らの発見から生じている。したがって、形状が略楕円形でありかつ特定の実施形態では外側に広がった交連を有する装置、インプラント、および補綴物は、欠損のある大動脈弁の修復結果を改善するであろう。
【0042】
楕円形の弁輪および楕円形の装着フレーム
特定の実施形態では、本開示は、楕円形の弁輪または楕円形の装着フレームを、患者の自己弁内に移植するシステムおよび方法に向けられる。楕円形の大動脈弁装着フレームの例示的実施形態を以下でより詳細に記載する。
【0043】
ここで
図1を参照すると、大動脈弁の修復に有用な楕円形の弁輪内装着フレームの実施形態の斜視図が示され、一般的に番号10で表わされている。楕円形の弁輪内装着フレーム10は大動脈弁の弁輪内に挿置され、自己大動脈弁の再建をもたらす。
【0044】
楕円形の弁輪内装着フレーム10は複数の湾曲12、相互接続点14、およびポスト16を含む。一般的に、湾曲12は弁輪尖の形状と一致し、相互接続点14およびポスト16は交連下領域の形状と一致する。湾曲12は、大動脈弁の尖の三次元形状に対応するように楕円形の弁輪内装着フレーム10の複数の平面内でカーブする。参考として、水平面は、各湾曲12が水平面に接触しながら楕円形の弁輪内装着フレーム10が載置される平面と定義される。垂直面は、水平面と直角に交差しかつ楕円形の弁輪内装着フレーム10を垂直に貫通する平面と定義される。湾曲12は水平および垂直両方の面内でカーブすることがあり、かつ/または1つ以上の他の平面内でカーブすることがある。一般的に湾曲12は大動脈壁に接触し、大動脈弁尖に対する支持および整列をもたらす。相互接続点14およびポスト16は大動脈弁の交連に対する支持をもたらす。特に、相互接続点14およびポスト16は隣接する尖の間の三次元形状に緊密に合致し、交連の近くに位置し、こうして尖の適切な接合の回復を支持かつ支援するように設計される。相互接続点14はポスト16に向かって連続的に細くなり、こうして交連につながる隣接する尖の間の狭まる空間内に嵌合する。したがって、相互接続点14およびポスト16は交連の真下までこの尖間空間内に支持をもたらす。
【0045】
次に
図2を参照すると、
図1の楕円形の弁輪内装着フレーム10の正面図が示されている。再び、楕円形の弁輪内装着フレーム10は複数の湾曲12、相互接続点14、およびポスト16を含む。
【0046】
次に
図3を参照すると、楕円形の弁輪内装着フレーム10の上面図が示されている。再び、楕円形の弁輪内装着フレーム10は複数の湾曲12、相互接続点14、およびポスト16を含む。
図3に示す通り、楕円形の弁輪内装着フレーム10の基部は一般的に、「D」で表わされる長軸および「A」で表わされる短軸を持つ楕円形を画定する。
図3に示す楕円形の弁輪内装着フレーム10の実施形態では、楕円形の短軸に対する長軸の比は約1.5:1であるが、楕円形の弁輪内装着フレームの他の実施形態(図示せず)では、楕円形の短軸に対する長軸の比は一般的に約1.7:1または1.8:1から約1.1:1または1.2:1の間で変化することができる。加えて、
図3に示す楕円形の弁輪内装着フレーム10の実施形態におけるポスト16間の外周距離(楕円形の周囲の距離)は略均等(対称;外周の約33%)であるが、楕円形の弁輪内装着フレームの他の実施形態(例えば
図5参照)では、ポスト16間の外周距離は異なることができる。修復しようとする大動脈弁の特定の形状に応じて、例えばポスト16間の外周距離のうちの2つは略均等とすることができるが、第3の外周距離は他の2つとは異なることができ、あるいは3つの外周距離全部が互いに異なることができる。こうして、現在記載する楕円形の弁輪内装着フレームを用いて、非対称な大動脈弁の形状を修復することができる。
【0047】
次に
図4を参照すると、楕円形の弁輪内装着フレーム10の側面図が示されている。再び、楕円形の弁輪内装着フレーム10は複数の湾曲12、相互接続点14、およびポスト16を含む。
図4に示す楕円形の弁輪内装着フレーム10の実施形態では、相互接続点14、ポスト16、および2つの湾曲12の上部を備えた楕円形の弁輪内装着フレーム10の3つの縁部18は、楕円形の弁輪内装着フレームの垂直面から外側に約10°広がっている。しかし、楕円形の弁輪内装着フレームの他の実施形態(図示せず)では、3つの縁部18は、楕円形の弁輪内装着フレームの垂直面から外側に約1°程度から約30°程度の間広がることができる。
図4に示す楕円形の弁輪内装着フレームの実施形態では、3つの縁部18は各々垂直面から等しい角度に外側に広がっているが、追加の実施形態(図示せず)では、修復しようとする大動脈弁の特定の形状に応じて、3つの縁部18は垂直面から異なる角度で外側に広がることができ、例えば縁部18のうちの2つは垂直面から等しい角度で外側に広がることができる一方、第3縁部18は垂直面から他の2つの縁部18とは異なる角度で外側に広がることができ、あるいは3つの縁部18が全部、垂直面とは異なる角度で外側に広がることができる。
【0048】
大動脈弁の様々な解剖学的変化を考慮して様々な配向および形状の湾曲を利用することができる。
図1ないし
図4で上に詳述した通り、ほとんどの実施形態で、ほとんどの大動脈弁は等しい大きさの3つの尖を有するので、湾曲は互いにかなり対称的である。しかし、追加の実施形態では、一部の患者は非対称な洞を持つ大動脈弁を有するので、楕円形の弁輪内装着フレームは非対称な設計に製造することができる。変形は、1つの湾曲の長さが他の2つの湾曲の長さより約20%大きいか、1つの湾曲の長さが他の湾曲の長さより20%小さい変形、または各湾曲の長さが異なる大きさを有する変形を持つ、楕円形の弁輪内装着フレームを含むことがあり得る。加えて、一部の患者は2つの尖だけを有する(二尖)大動脈弁を有するので、2つの湾曲および2つの相互接続点を持つ二尖楕円形の弁輪内装着フレームを製造することができる。
【0049】
次に
図5を参照すると、大動脈弁の修復に有用な非対称な楕円形の弁輪内装着フレームの実施形態の斜視図が示され、一般的に番号10′で表わされている。非対称な楕円形の弁輪内装着フレーム10′は大動脈弁の弁輪内に挿置され、非対称な洞を有する自己大動脈弁の再建をもたらす。非対称な楕円形の弁輪内装着フレーム10′は複数の湾曲12′、相互接続点14′、およびポスト16′を含む。
図1ないし
図4で上に詳述した対称な楕円形の弁輪内装着フレーム10の場合と同様に、湾曲12′は弁輪尖の形状と一致し、相互接続点14′およびポスト16′は交連下領域の形状と一致する。湾曲12′は、非対称な大動脈弁の尖の三次元形状に対応するように、非対称な楕円形の弁輪内装着フレーム10′の複数の平面内でカーブする。参考として、水平面は、各湾曲12′が水平面に接触しながら非対称な楕円形の弁輪内装着フレーム10′が載置される平面と定義される。垂直面は、水平面と直角に交差しかつ非対称な楕円形の弁輪内装着フレーム10′を垂直に貫通する平面と定義される。湾曲12′は水平および垂直両方の面内でカーブすることがあり、かつ/または1つ以上の他の平面内でカーブすることがある。一般的に湾曲12′は大動脈壁に接触し、大動脈弁尖に対する支持および整列をもたらす。相互接続点14′およびポスト16′は大動脈弁の交連に対する支持をもたらす。特に、相互接続点14′およびポスト16′は隣接する尖の間の三次元形状に緊密に合致し、交連の近くに位置し、こうして尖の適切な接合の回復を支持かつ支援するように設計される。相互接続点14′はポスト16′に向かって連続的に細くなり、こうして交連につながる隣接する尖の間の狭まる空間内に嵌合する。したがって、相互接続点14′およびポスト16′は交連の真下までこの尖間空間内に支持をもたらす。
【0050】
次に
図6を参照すると、
図5の非対称な楕円形の弁輪内装着フレーム10′の正面図が示されている。再び非対称な楕円形の弁輪内装着フレーム10′は複数の湾曲12′、相互接続点14′、およびポスト16′を含む。
【0051】
次に
図7を参照すると、非対称な楕円形の弁輪内装着フレーム10′の上面図が示されている。再び、非対称な楕円形の弁輪内装着フレーム10′は複数の湾曲12′、相互接続点14′、およびポスト16′を含む。
図7に示す通り、非対称な楕円形の弁輪内装着フレーム10′の基部は一般的に、「D」で表わされる長軸および「A」で表わされる短軸を持つ楕円形を画定する。
図7に示す非対称な楕円形の弁輪内装着フレーム10′の実施形態では、楕円形の短軸に対する長軸の比は約1.5:1であるが、非対称な楕円形の弁輪内装着フレームの他の実施形態(図示せず)では、楕円形の短軸に対する長軸の比は一般的に約1.7:1または1.8:1から約1.1:1または1.2:1の間で変化することができる。加えて、
図7に示す非対称な楕円形の弁輪内装着フレーム10′の実施形態におけるポスト16′間の外周距離(楕円形の周囲の距離)は各々異なる(外周または周囲の大体28%、33%、および39%)が、修復しようとする非対称な大動脈弁の特定の形状に応じて、非対称な楕円形の弁輪内装着フレームの他の実施形態(図示せず)では、ポスト16′間の外周距離のうちの2つは略均等とすることができる一方、第3の外周距離は他の2つと異なることができる。こうして、現在記載する非対称な楕円形の弁輪内装着フレームを用いて、全ての非対称な大動脈弁の形状を修復することができる。
【0052】
次に
図8を参照すると、非対称な楕円形の弁輪内装着フレーム10′の側面図が示されている。再び、非対称な楕円形の弁輪内装着フレーム10′は複数の湾曲12′、相互接続点14′、およびポスト16′を含む。
図8に示す非対称な楕円形の弁輪内装着フレーム10′の実施形態では、相互接続点14′、ポスト16′、および湾曲12′の上部を備えた非対称な楕円形の弁輪内装着フレーム10′の3つの縁部18′は、非対称な楕円形の弁輪内装着フレーム10′の垂直面から外側に約10°広がっている。しかし、非対称な楕円形の弁輪内装着フレームの他の実施形態(図示せず)では、3つの縁部18′は非対称な楕円形の弁輪内装着フレームの垂直面から外側に約1°程度から約30°程度の間広がることができる。
図8に示す非対称な楕円形の弁輪内装着フレーム10′の実施形態では、3つの縁部18′は各々、垂直面から外側に等しい角度(約10°)広がっているが、追加の実施形態(図示せず)では、3つの縁部18′は垂直面から異なる角度外側に広がることができ、修復しようとする非対称な大動脈弁の特定の形状に応じて、例えば縁部18′のうちの2つは、垂直面から外側に等しい角度広がることができる一方、第3縁部18′は垂直面から外側に他の2つの縁部18′とは異なる角度広がることができ、あるいは3つの縁部18′が全部、垂直面とは異なる角度で外側に広がることができる。
【0053】
次に
図9を参照すると、二尖大動脈弁の修復に有用な楕円形の二尖弁輪内装着フレームの実施形態の斜視図が示され、一般的に番号10″で表わされている。楕円形の二尖弁輪内装着フレーム10″は大動脈弁の弁輪内に挿置され、2つだけの洞を有する自己大動脈弁の再建をもたらす。楕円形の二尖弁輪内装着フレーム10″は、2つの湾曲12″、相互接続点14″、およびポスト16″を含む。
図1ないし
図4で上に詳述した対称的な楕円形の弁輪内装着フレーム10の場合と同様に、湾曲12″は弁輪尖の形状と一致し、相互接続点14″およびポスト16″は交連下領域の形状と一致する。湾曲12″は、二尖大動脈弁の2つの尖の三次元形状に対応するように、楕円形の二尖弁輪内装着フレーム10″の複数の平面内でカーブする。参考として、水平面は、各湾曲12″が水平面に接触しながら楕円形の二尖弁輪内装着フレーム10″が載置される平面と定義される。垂直面は、水平面と直角に交差しかつ楕円形の二尖弁輪内装着フレーム10″を垂直に貫通する平面と定義される。湾曲12″は水平および垂直両方の面内でカーブすることがあり、かつ/または1つ以上の他の平面内でカーブすることがある。一般的に湾曲12″は大動脈壁に接触し、大動脈弁尖に対する支持および整列をもたらす。相互接続点14″およびポスト16″は大動脈弁の交連に対する支持をもたらす。特に、相互接続点14″およびポスト16″は隣接する尖の間の三次元形状に緊密に合致し、交連の近くに位置し、こうして尖の適切な接合の回復を支持かつ支援するように設計される。相互接続点14″はポスト16″に向かって連続的に細くなり、こうして交連につながる隣接する尖の間の狭まる空間内に嵌合する。したがって、相互接続点14″およびポスト16″は交連の真下までこの尖間空間内に支持をもたらす。
【0054】
次に
図10を参照すると、楕円形の二尖弁輪内装着フレーム10″の正面図が示されている。楕円形の二尖弁輪内装着フレーム10″は2つの湾曲12″、相互接続点14″、およびポスト16″を含む。
【0055】
次に
図11を参照すると、楕円形の二尖弁輪内装着フレーム10″の上面図が示されている。再び、楕円形の二尖弁輪内装着フレーム10″は2つの湾曲12″、相互接続点14″、およびポスト16″を含む。
図11に示す通り、楕円形の二尖弁輪内装着フレーム10″の基部は一般的に、「D」で表わされる長軸および「A」で表わされる短軸を持つ楕円形を画定する。
図11に示す楕円形の二尖弁輪内装着フレーム10″の実施形態では、楕円形の短軸に対する長軸の比は約1.5:1であるが、楕円形の二尖弁輪内装着フレームの他の実施形態(図示せず)では、楕円形の短軸に対する長軸の比は一般的に約1.7:1または1.8:1から約1.1:1または1.2:1の間で変化することができる。加えて、
図11に示す楕円形の二尖弁輪内装着フレーム10″の実施形態におけるポスト16″間の外周距離(楕円形の周囲の距離)は略均等(対称;外周の約50%)であるが、楕円形の二尖弁輪内装着フレームの他の実施形態(図示せず)では、ポスト16″間の外周距離は異なることができ、修復しようとする二尖大動脈弁の特定の形状に応じて、例えば一方の外周距離を外周の約75%、他方の外周距離を外周の約25%とし、一方の外周距離を外周の約70%、他方の外周距離を外周の約30%とし、一方の外周距離を外周の約65%、他方の外周距離を外周の約35%とし、一方の外周距離を外周の約60%、他方の外周距離を外周の約40%とし、一方の外周距離を外周の約55%、他方の外周距離を外周の約45%などとすることができる。こうして、現在記載する非対称な楕円形の二尖弁輪内装着フレームを用いて、全ての非対称な二尖大動脈弁形状を修復することができる。
【0056】
次に
図12を参照すると、楕円形の二尖弁輪内装着フレーム10″の側面図が示されている。再び、楕円形の二尖弁輪内装着フレーム10″は2つの湾曲12″、相互接続点14″、およびポスト16″を含む。
図12に示す楕円形の二尖弁輪内装着フレーム10″の実施形態では、相互接続点14″、ポスト16″、および2つの湾曲12″の上部を備えた楕円形の二尖弁輪内装着フレーム10″の2つの縁部18″は、楕円形の二尖弁輪内装着フレームの垂直面から外側に約10°広がる。しかし、楕円形の二尖弁輪内装着フレームの他の実施形態(図示せず)では、2つの縁部18″は楕円形の二尖弁輪内装着フレームの垂直面から外側に約1°程度から約30°程度の間広がることができる。
図12に示す楕円形の二尖弁輪内装着フレーム10″の実施形態では、2つの縁部18″は各々垂直面から外側に等しい角度広がることができるが、追加の実施形態(図示せず)では、2つの縁部18″は、修復しようとする二尖大動脈弁の特定の形状に応じて、垂直面から外側に異なる角度に広がることができる。
【0057】
最も一般的に、楕円形の弁輪内装着フレームの長軸は長さが約10ミリメートルから約35ミリメートル程度であり、楕円形の弁輪内装着フレームの短軸は長さが約8ミリメートルから約25ミリメートル程度であり、それらの間の種々の異なる大きさのフレームは、患者の要求に密接に近づくように可能な選択肢の勾配を形成する。しかし、大動脈根瘤またはMarian症候群の患者に利用するために、より大きいサイズの楕円形の弁輪内装着フレームを製造することができる。さらに、湾曲の基部からポストの先端までを測定した楕円形の弁輪内装着フレームの高さは様々に異なってよいが、一般的には約8ミリメートルから約15ミリメートル程度の範囲である。
【0058】
楕円形の弁輪内装着フレームは、大きく拡張した大動脈根から生じる潜在的に高い張力にもかかわらず無傷の状態を維持する金属、プラスチック、熱可塑性プラスチック、高分子化合物、樹脂、または他の材料から構成することができる。楕円形の弁輪内装着フレームは、中実金属線、中実プラスチック、または大動脈弁内に移植した後、縫合のための優れた手掛かりをもたらすように穿孔した帯状の金属もしくはプラスチックから構成することができる。穿孔は設置方法に応じて異なってよいが、略均等な形状の弁輪領域では、設定された数および位置の縫合用の穿孔を楕円形の弁輪内装着フレームに形成し、マークを付けることができる。特定の実施形態では、楕円形の弁輪内装着フレームはGORE‐TEX(登録商標)コーティングを含むことができる。さらなる実施形態では、楕円形の弁輪内装着フレームは、DACRON(登録商標)クロースの名称で販売されているポリエチレンテレフタレートを含め、しかしそれに限らず、様々な高分子化合物または高分子樹脂で被覆またはコーティングすることができる。代替的に、楕円形の弁輪内装着フレームは、グルタルアルデヒド固定されたウシの心膜で被覆することができ、それは、特定の実施形態では、左心室の流出路における高い血流速度のため、布の被覆により患者がおそらく溶血を起こしやすくなることがあり得るので、有用であり得る。
【0059】
楕円形の弁輪内装着フレームの多くの利点の1つは、必要なフレームの大きさを術前に容易に決定することができることである。患者のための楕円形の弁輪内装着フレームを作製するのに必要な測定値を決定するために、非侵襲的に磁気共鳴撮像法(MRI)、心エコー検査法、またはコンピュータ断層撮影(CT)血管造影法のような撮像技術を使用することができる。さらなる実施形態では、MRI機械またはCT血管造影機械および関連制御装置をはじめとする撮像装置は、患者の大動脈弁の大きさを自動的に測定し、患者の大動脈弁の能力を回復するために必要な、適切な大きさの楕円形の弁輪内装着フレームを出力する、楕円形の弁輪内装着フレームのシステムパラメータならびに数学的モデルおよび記述を含むことができる。追加的データ出力は、能力を回復するための種々の大きさの弁輪内装着フレームおよび各々の異なるフレームが移植後にもたらす効果の表示を含む。
【0060】
特定の実施形態では、現在記載する楕円形の弁輪内装着フレームは、縫合糸を通すための穿孔を湾曲およびポストに有することができる。例えば縫合糸は水平マットレス縫合糸とすることができ、その場合糸は大動脈弁弁輪の下の大動脈壁内に通過することができる。1つの特定の構成では、縫合糸は尖の下で大動脈壁の奥深くに通過することができ、尖および交連に密接に対応する楕円形の弁輪内装着フレームを大動脈弁の弁輪内に直接挿置することを可能にする。任意選択的に、1つの尖につき3つ、および1つの交連につき1つの水平マットレス縫合糸を利用することができ、楕円形の弁輪内装着フレームを移植するために合計で12の縫合糸が使用される。当業者は、楕円形の弁輪内装着フレームを大動脈弁の弁輪内に配置しかつ取り付けるために、より少ないかより多い縫合糸のみならず、当業界で公知の他の取付け技術も利用することができることを理解されるであろう。大動脈組織の断裂の可能性を防ぐために、大動脈弁の上からマットレス縫合糸の上に綿撒糸を配置することができる。綿撒糸はTEFLON(登録商標)フェルト綿撒糸とすることができ、他の実施形態では、綿撒糸ではなく、DACRON(登録商標)のような布片または断片または帯状の織物をマットレス縫合糸と共に利用することができる。綿撒糸は一般的に小さいので、大動脈弁弁葉の可動性を阻害しない。
【0061】
代替的実施形態では、楕円形の弁輪内装着フレームを設置するために、弁輪の上に、縫合糸を挿通することのできる支持アークを使用することができる。そのような支持アークは、交連と同様に大動脈壁への尖の取付けの湾曲および形状に対応する、楕円形の弁輪内装着フレームの形状と略同様の形状を持つ3つの湾曲を含み、その結果、大動脈弁の弁輪は楕円形の弁輪内装着フレームと支持アークとの間に「狭持」される。縫合糸は楕円形の弁輪内装着フレームの穿孔を介し、大動脈壁を介して尖の上の支持アークに延び、支持アークの穿孔をも介して取り付ける。追加の実施形態では、縫合糸は支持アークの周りに延び、あるいは当業界で公知の他の方法を用いて取り付けることができる。
【0062】
記載した楕円形の弁輪内装着フレームおよび楕円形の弁輪内装着フレームの大きさを決定しかつ移植する関連方法は、他の病態にも適用することができる。大動脈根瘤では、楕円形の弁輪内装着フレームは、現行手技の場合のように大がかりな外側からの切開の必要なく、大動脈の内側から弁葉温存根置換を実行することを可能にする。楕円形の弁輪内装着フレームと共に無孔DACRON(登録商標)グラフトを、バルサルバの洞と形状が一致するようにグラフトの近位面を波打たせ広げた後、利用することができる。グラフトの大きさは、遠位大動脈の直径についても考慮しながら、楕円形の弁輪内装着フレームの大きさに適合するように選択することができる。次いで、ボタンとして、または封入技術により、冠動脈をグラフトの横に吻合することができる。この簡単な方法を用いて、大動脈弁の弁輪の大きさおよび形状が決定され、自己大動脈弁は修復かつ保存され、現行の技術よりずっと少ない切開および難度により、動脈根瘤疾患に対し根および上行大動脈全体を置換することができる。
【0063】
他の病態も記載した楕円形の弁輪内装着フレームを用いて対処することができる。超音波創面切除を補助的に使用して、カルシウムの針状体を除去することができ、弁葉の一部分を切除して、グルタルアルデヒド固定した自己心膜に置換することができる。この概念は、大動脈弁の単一または複数の尖置換の選択肢をも含む。再配向を通して根の形状を決定し、かつ潜在的にそれをわずかに縮小する方法により、楕円形の弁輪内装着フレームがわずかな不足を補償して、複雑な修復に取り組むことができる。1つの尖が重症または逸脱している場合、例えば尖を、(楕円形の弁輪内装着フレームおよび自己尖の大きさに適合する適切な大きさおよび形状の)グルタルアルデヒド固定された自己(または特定の場合、ウシの)心膜尖に置換することができる。楕円形の弁輪内装着フレームがアークおよび人工弁葉への取付具として働き、人工尖を楕円形の弁輪内装着フレームの上のアークに取り付けることができる。患者の他の弁組織は温存することができ、完全に適格な弁が達成され、その場合、それは3分の2が自己組織である。心膜弁葉組織は、石灰化を防止するための最新技術により処理することができるが、人工弁葉が術後に後で運動不能になった場合、それは依然として他の弁葉のための接合バフルとして働くことができ、全異種グラフト置換術で生じうるように、おそらく追加の手術を必要としない。
【0064】
人工弁
特定の実施形態では、本開示は、楕円形の弁補綴物を患者の体内に移植するシステムおよび方法に向けられる。特定の態様では、楕円形の弁構造物は、生体組織から構成することができる。
【0065】
次に
図13を参照すると、楕円形の支持体‐弁組立体100の実施形態の斜視図が示されている。
図13に示す楕円形の支持体‐弁組立体100の実施形態では、分かり易くするために、楕円形の弁は示されていない。楕円形の弁(図示せず)は弁輪、弁葉、および交連点を含み、種々の実施形態で機械弁、二弁葉炭素弁、動物またはヒトの弁または組織のような生体材料から作られた組織弁、または例えば高分子化合物から作られた合成弁とすることができる。楕円形の上部ワイヤフォーム102および楕円形の下部ワイヤフォーム103から成る楕円形のワイヤフレーム101を有する楕円形の支持体‐弁組立体100が示されている。楕円形の上部ワイヤフォーム102は、柔軟な半剛性金属、好ましくはELGILOY(登録商標)のようなFDA承認ニッケル‐コバルト合金から形成された単線構造であり、楕円形の弁(図示せず)の交連を支持するために軸線方向に突出する3つの脚105を有する連続リングを形成するように、端部は圧着、溶接、または他の確実な結合プロセスによって結合部104で接合される。各脚105は、湾曲セグメント106によって隣接する脚に接合される。楕円形の下部ワイヤフォーム103は、楕円形の上部ワイヤフォーム102と同様の単線構造であり、楕円形の上部ワイヤフォーム102の脚105より下に3つのあまり目立たない脚108を有する連続したリングを形成するように、端部は楕円形の上部ワイヤフォーム102と同様の方法により結合部107で接合される、これらの脚は湾曲セグメント109によって接合される。楕円形の支持体‐弁組立体100の楕円形のフレーム101はこうして、楕円形の周方向の繰返しフレームを画定する。
【0066】
可撓性の生体適合性材料(図示せず)を使用して、楕円形のワイヤフレーム101の全表面を被覆することができる。可撓性の生体適合性材料は、楕円形のワイヤフレーム101のコア構造を体組織および血液との接触から分離し、かつ弁(図示せず)内の血流を妨害することなく楕円形の支持体‐弁組立体100を所定の場所に縫合するためのシースを提供する、ポリエステルのような丈夫な細い織物であることが好ましい。代替的に、編物またはバイアス編みのポリエステル、PTFE、またはコラーゲン繊維織物は全て、楕円形のワイヤフレーム101の表面を被覆するために使用することができる。可撓性の生体適合性材料は、楕円形のワイヤフレーム101の周りに緊密に合致する細長い管として構成することができ、あるいは代替的に、内側に折り畳まれかつ楕円形のワイヤフレーム101の周りに一体に縫合された、1対の長手方向縁部を含むシートとして構成することができる。
【0067】
別の例示的な楕円形の生体人工心臓弁組立体は一般的に、ヒトまたはヒト以外の動物の心臓弁組織の矩形の部分から作製した楕円形の全根ステントレス心臓弁を含む。好ましくは、ヒト以外の動物の組織はブタまたはウシの組織である。該部分は、無傷の弁葉材料を含む細長い帯状の本来の弁である。これらの部分は、異質の筋肉組織を除去するために刈り込むことができる。筋肉の刈込みの結果生じる空隙は隣接する弁葉によって埋めることができる。これらの部分は、参照によって本書に組み込まれる米国特許第5147514号に記載されているような光化学固定処理を受けることができる。代替的に、グルタルアルデヒド固定も使用することができる。加えて、動物から切り取られた全根心臓弁は、弁葉の部分が切除される前または後のいずれかに処理することができる。切除の前に全心臓弁を処理する場合には、該部分を任意の弁葉部分と再構成することができ、それは弁葉の所望の適合をもたらす。
【0068】
楕円形の三成分生体人工心臓弁は、縫合を用いて組み合わされる、前処理した弁葉部分の3つの断片から形成される。略楕円形の形状を有する弁は、外面および内面を含む。使用中に、血液は弁を介して流入端から流出端の方向に流動する。最終弁を構成する3つの部分は縫合糸を用いて縁部を縫い合わされ、縫合線を形成する。各群の縫合は2つの群を含む。すなわち隠れ縫合およびロッキング縫合である。隠れ縫合は、弁の内面を穿通しない。この構成技術は弁葉と接触する可能性を最小化する。隠れ縫合は当業界で公知の適切な技術を用いて第1の色を有する糸で運針され、流入端の縁から弁葉の自由縁または縁が弁の内面と交差する位置まで延びることができる。ロッキング縫合は、切断されたときでも、例えば移植のために刈り込まれたときでも、ほどけることに抵抗するのでそのように呼ばれ、一般的に4針毎に1つのこま結びを作ることによって行なわれる。ロッキング縫合は、第1の色とは異なる第2の色を用いて運針され、流出端の縁から隠れ縫合が終端する位置まで延びる。ロッキング縫合は、外科医が移植中に全根を刈り込んでいる間に切断されてもほどけないので、重要な目的を果たす。それは、隠れ縫合の色とは異なる色で、好ましくははっきりと区別できる色で、運針することができるので、移植中に刈り込むことのできる弁部分の領域の境界を画する。こうして、ロッキング縫合は刈込みガイドとして機能する。
【0069】
次いで、部分的に形成された弁の外縁が縫合糸で綴じられ、細長い楕円体が形成される。各部分は、流入部を被覆する心膜組織を含むことができる。公知の技術を用いて所定の場所に綴じることのできる心膜被覆は、縫合リングとして役立つことができる。心膜被覆は、個々の縫合糸が心膜被覆の内面を穿通しないように、ブランケットステッチを用いて綴じることができる。ブランケットステッチは外科医のための縫合ガイドとしても役立つことができる。完全に組み立てられた弁は、三成分弁の各部分に洞を含むことができる。弁の移植を容易にするために外科医が刈り込むことのできる弁の流入端および流出端に、心膜延長部を含めることができる。延長部は、上述の通りロッキング縫合および隠れ縫合を用いて構成することができる。弁葉は、組み立てられた弁では隣接する縁部で一体になって接合ゾーンを形成する尖を含む。弁葉部は、弁葉に適合しかつ交連の間隙を制限するように事前選択することができ、それによって使用中の弁葉の動作が最適化される。心臓弁の大きさは様々に変えることができる。一般的に、心臓弁は約17から約33ミリメートルの外径を有する。弁の大きさは典型的には、ドナー動物から調達した弁葉部の大きさに基づく。移植用に選択される大きさは、患者の要件によって異なる。ドナー動物から切り取られた心臓弁は好ましくは、解剖学的異常が無く、かつ弁葉または尖に穴が無いようにすべきである。公知の技術を用いて、弁葉部はドナー動物から取り出すことができ、かつ弁葉部は取り出された動物の心臓弁から切り出すことができる。
【0070】
さらなる例示的な楕円形の人工心臓弁組立体は一般的に、楕円形の縫合リングの形の楕円形の固定用リング、楕円形の装着用リング、楕円形の保持リング、および楕円形の人工心臓弁を備える。楕円形の縫合リングおよび楕円形の装着リングは合わせて人工弁輪を形成する。楕円形の縫合リングは、それを自己弁輪または隣接する体組織に固定することを可能にする、任意の構造とすることができる。例えば、それはDACRON(登録商標)クロースのような適切な布で被覆された比較的軟質のプラスチックコアとすることができる。楕円形の縫合リングは、楕円形の縫合リングの開口を画定する外周および内周を有する。
【0071】
楕円形の装着リングは生体適合性ステンレス鋼のような金属または適切なプラスチック材料の細く本質的に剛性の楕円形の部材である。楕円形の装着リングは装着リングの開口を画定する内周面を有する。人工弁を開口内に受容することができるように開口が適切に整列している限り、楕円形の装着リングは様々な方法でかつ様々な位置で、楕円形の縫合リングに結合することができる。1つの実施形態では、楕円形の装着リングは開口に装着される。これに関連して、楕円形の装着リングは、軸方向断面図で見たときに凹形でありかつ楕円形の縫合リングの内周と形状が一致する外周面を有する。楕円形の縫合リングは、楕円形の装着リングの周りに巻回された楕円形の縫合リングの糸によって、または任意の他の適切な方法で、楕円形の装着リングに結合し、かつそこに保持することができる。この実施形態における周面は本質的に楕円状である。しかし、楕円形の装着リングの上端付近にショルダが形成され、ねじ山はショルダまで続く。
【0072】
楕円形の保持リングは楕円形の装着リングのねじ山と協働する雄ねじ山を有し、楕円形の保持リングを楕円形の装着リングの上端にねじ込むことを可能にする。様々な構造が可能であるが、楕円形の保持リングは開口内に短い距離だけ半径方向内側に突出することができる。楕円形の保持リングは剛性であり、生体適合性材料またはプラスチックから作られ、大きい中央開口を有する。楕円形の保持リングを楕円形の装着リングのねじ内に螺入することを容易にするために、楕円形の保持リングの上面にソケットが設けられる。
【0073】
楕円形の弁は、外周フランジまたはショルダを有する比較的剛性の楕円形の基部を含むことを除いて、本質的に従来の構成とすることができる。基部は、適切な織物によって被覆された適切な金属またはプラスチックのフレーム部材によって剛性にすることができる。弁はまた、生体組織または他の適切な材料の3つの交連および3つの弁葉を含む。
【0074】
使用中に、自己心臓弁は除去され、公知の外科的技術を用いて、楕円形の装着リングの周面を本質的に自己弁によって画定される開口と面一にして、楕円形の人工弁輪が自己弁輪に縫合される。次いで、楕円形の弁は、フランジがショルダ上に載置されるまで、所望の角度方向に開口内に挿入される。次いで、フランジが楕円形の保持リングとショルダとの間にきつく締め付けられるように、楕円形の保持リングは楕円形の装着リングに螺合される。この構成により、楕円形の保持リングは楕円形の弁が開口から上方に移動することを防止し、フランジおよびショルダは協働して、弁が開口から下方に移動することを防止する。弁を交換することが必要になった場合、楕円形の保持リングが楕円形の装着リングから外され、弁を開口から上方に持ち上げることができる。次いで弁は別の人工弁と交換され、新しい人工弁が上述の通り、楕円形の装着リングに保持される。
【0075】
別の例示的な楕円形の人工弁は、寸法が安定しており予め位置合せされた組織弁葉部分組立体、略楕円形のワイヤフォーム、および略楕円形の支持ステントを含む。楕円形のワイヤフォームは、予め位置合せされた組織弁葉部分組立体を固定された嵌合い係合状態で受容するように大きさを決定された底面を有する。支持ステントは、楕円形のワイヤフォームの底面と嵌合い係合状態に固定歯位置される予め位置合せされた組織弁葉部分組立体と嵌合係合状態に着座かつ固定するように大きさを決定された上面を有する。
【0076】
この構成では、例示的な楕円形の組織弁補綴物は、寸法が安定しておりかつ寸法に矛盾の無い接合弁葉部分組立体を形成するために、テンプレート化されかつそれらの先端が一体に付着された複数の組織弁葉を含む。次いで、本質的に単一プロセスであるものにおいては、部分組立体の弁葉の各々は、布を被覆された楕円形のワイヤフォームと位置合せされ、かつ1つのワイヤフォーム交連の先端から弁葉尖の周囲を巡って隣接するワイヤフォーム交連の先端まで均等に、個々にワイヤフォームに縫い付けられる。その結果、綴付け縫合は、予め位置合せされた接合弁葉の各々の尖全体に沿って作用する荷重力を全部が均等に受ける、同様に位置合せされたステープルと同様に作用する。それによって形成された結果的に得られる楕円形の組織‐ワイヤフォーム構造組立体は、交連から交連まで弁葉尖全体に応力を均等に分配させることによって、弁葉縫合糸界面における応力および潜在的な疲労を軽減する。寸法が安定しており応力が軽減された組立体は手術により、弁葉を歪めることなく、あるいはそれらの相対的位置合せおよびそれらの嵌合縁の結果的に得られる接合を阻害することなく、楕円形の布被覆ステントの頂部によって形成される荷重分配布座上に組織弁葉尖を締め付けるように、事前に作製された楕円形の布被覆ステントの頂部に取り付けられる。
【0077】
楕円形ステントは、楕円形ステントの交連が楕円形の弁葉ワイヤフォーム組立体の対応する交連内に延びる状態で、組立体に固定することができる。楕円形のステント自体は、裁断され折り返されかつ支持体とスチフナの組合せの周りに縫い付けられた布カバーを有するELGILOY(登録商標)金属スチフナのような外科的に受入れ可能な金属リングに固定された、内部ポリエステルフィルム支持体から形成することができる。代替的に、ELGILOY(登録商標)外側バンドおよび積層ポリエステルフィルム支持体を有する代わりに、楕円形の2つのステント層は両方ともポリエステル層または適度に可撓性の交連ポストを有する一体成形ステントとすることができる。いずれのステント構造も、交連から交連に延びかつ各弁葉の周りに均等に分配される支持および寸法的安定性を弁構造物にもたらす。この組立方法は、弁葉尖の均等に縫合された組織が楕円形のワイヤフォームとステントとの間に狭持され、かつそれによってさらに荷重力を取付け部位の周りにいっそう均等に分配することを可能にする。組織弁葉は動作中により低くより均等に分配される応力を経験するので、それらは使用中に歪みを経験する傾向は低い。こうして、取付け力のこの均等な分配によって、弁葉のより安定した、寿命の長い、機能的な閉止または接合がもたらされる。
【0078】
圧縮可能かつ拡張可能な楕円形の弁
特定の実施形態では、本開示は、楕円形弁補綴物の移植が、折畳み可能かつ拡張可能な楕円形の弁構造をステント内に配置した状態で圧縮可能かつ拡張可能な楕円形のステントを含む、システムおよび方法に向けられる。該実施形態の実施に際して、胸部または鼠径部の小さい入口開口を介して楕円形の弁補綴物を前進させるために、挿入カテーテルが使用される。楕円形の弁構造物は生体組織で構成することができる。
【0079】
楕円形のステントは弾性材料、例えばニチノール(ニッケル‐チタン合金)のような自己拡張型金属、またはステンレス鋼から作ることができ、かつポリエチレンまたはポリウレタンを被覆することができる。特定の楕円形のステントは、カテーテルの遠位端部のバルーン(例えばナイロン製の楕円形のバルーン)によって拡張することもできる。ステントが適所に配置されると、バルーンが膨張し、ステントが体内チャネル内で拡張するので、ステントの外面は最終楕円形の形状を取り、周囲の組織と係合する。開示した装置において、ステントは、大動脈弁との正しい適合を生じるために、楕円形の形状に製造されるか、あるいは楕円形の形状のバルーンにより拡張される。
【0080】
特定の実施形態では、楕円形の装置は、折畳み可能な楕円形の弁と一緒に折り畳みかつ拡張するための半径方向に折畳み可能かつ再拡張可能な楕円形の支持体から作られた、楕円形のステントを含む。生体材料から作られた折畳み可能な弾性の楕円形の弁は典型的には、接着剤、溶接、または縫合によってステントに取り付けられる。金属支持体は格子の形状とすることができ、あるいはループ状または螺旋状とすることができる。
【0081】
次に
図14を参照すると、楕円形の支持体‐弁組立体200の実施形態の斜視図が示されている。
図14に示された楕円形の支持体‐弁組立体200の実施形態では、分かり易くするために楕円形の弁は示されていない。楕円形の弁は弁輪、弁葉および交連点を含み、種々の実施形態で機械弁、二弁葉炭素弁、動物またはヒトの弁または組織のような生体材料から作られた組織弁、または例えば高分子化合物から作られた合成弁とすることができる。拡張可能な楕円形の支持体‐弁組立体200は、楕円形の支持体‐弁組立体200をカテーテルによって患者の体内に導入することを可能にするために、半径方向に収縮させることができかつ弁を展開しようとする部位の壁にこの構造物を係合させるために展開することができる、ワイヤまたは複数のワイヤの形の自己拡張型楕円形のステント201に支持された組織弁(図示せず)を備える。楕円形の弁(図示せず)は、この実施形態では第1端205および第2端206を有する細長い楕円形の支持バンド202を形成するべくジグザグ状に構成された第1ワイヤ203および第2ワイヤ204から作られた、中央の自己拡張型の楕円形の弁支持バンド202内に完全に支持することができる。他の実施形態(図示せず)では、楕円形の弁支持バンド202は単一のワイヤから作ることができる。楕円形の支持体‐弁組立体200はまた近位アンカ207および遠位アンカ209をも含むことができ、それらはこの実施形態では、それぞれ単一のワイヤ208および210から作られた離散した自己拡張型の楕円形のバンドを含む。楕円形の近位アンカバンド207は、楕円形の中央弁支持バンド202の第2端206に接続された第1端211と、接続されない第2端212とを有し、楕円形の遠位アンカバンド209は、楕円形の中央弁支持バンド202の第1端205に接続された第2端213と、接続されない第1端214とを有する。これは、楕円形の支持体‐弁組立体200全体が、生体組織の形状により自然に合致するように調和して拡張することを可能にする。楕円形の弁(図示せず)は、例えば1つ以上の縫合で楕円形の弁支持バンド202に取り付けられる。縫合は生体適合性の糸、プラスチック、金属、またはシアノアクリレートのような接着剤とすることができる。
【0082】
ワイヤはステンレス鋼、銀、タンタル、金、チタン、または任意の適切な組織もしくは生体適合性プラスチック、例えば発泡ポリテトラフルオロエチレンすなわちTEFLON(登録商標)から作ることができる。楕円形の中央弁支持バンド202がその上端を遠位アンカバンド209に、かつその下端を近位アンカバンド207に取り付けることができるように、楕円形の中央弁支持バンド202はその端部に一連のループを有することができる。リンクは例えばステンレス鋼、銀、タンタル、金、チタン、任意の適切なプラスチック材料、または縫合から形成することができる。
【0083】
楕円形の支持体‐弁組立体200は、その直径を拡張位置から圧縮位置まで縮減することができるように、その中心軸線を中心に圧縮可能である。楕円形の支持体‐弁組立体200は、その圧縮位置でカテーテルに装填し、したがって所定の位置に保持することができる。ひとたびカテーテルに装填され圧縮位置で固定されると、楕円形の支持体‐弁組立体200は経腔的に体内の所望の位置に、例えば心臓内の欠損した弁に、送達することができる。ひとたび体内に適切に配置されると、楕円形の支持体‐弁組立体200を解放し、かつそれを楕円形の展開形状および位置に拡張させるように、カテーテルを操作することができる。1つの実施形態では、カテーテルは調整フックを含むので、楕円形の支持体‐弁組立体を体内で部分的に解放して拡張させ、かつ最終的な所望の位置に移動させるかあるいは他の方法で調整させることができる。最終的な所望の位置で、楕円形の支持体‐弁組立体200はカテーテルから完全に解放され、および完全に拡張した楕円形の形状および位置まで拡張することができる。ひとたび楕円形の支持体‐弁組立体200がカテーテルから完全に解放されて拡張すると、カテーテルは体内から取り出すことができる。
【0084】
次に
図15を参照すると、楕円形の支持体‐弁組立体300の別の実施形態の斜視図が示されている。
図15に示す楕円形の支持体‐弁組立体300の実施形態では、分かり易くするために楕円形の弁は示されていない。楕円形の弁は弁輪、弁葉および交連点を含み、種々の実施形態で機械弁、二弁葉炭素弁、動物またはヒトの弁または組織のような生体材料から作られた組織弁、または例えば高分子化合物から作られた合成弁とすることができる。楕円形の支持体‐弁組立体300は、第1楕円リング302および第2楕円リング303の形の楕円形の支持手段301を用いて作ることができる。第1楕円リング302および第2楕円リング303は、ループ状に折り畳まれかつ端部を溶接することによって閉止される第1楕円リング302および第2楕円リング303を形成するために屈曲される、第1ワイヤ304および第2ワイヤ305を用いて形成される。第1ワイヤ304および第2ワイヤ305は、ステンレス鋼、銀、タンタル、金、チタン、または任意の適切な組織もしくは生体適合性プラスチック、例えば発泡ポリテトラフルオロエチレンすなわちTEFLON(登録商標)から作ることができる。第1楕円リング302のループ306のうちの3つは残りのループより高さが大きく、かつ楕円形の支持手段301に装着された楕円形の弁(図示せず)から交連点を固定するように意図される。これらのループは、交連支持体を形成する交連点間の周方向に拡張可能な部分を形成する。第1楕円リング302および第2楕円リング303は、例えば多数の縫合を用いて互いに積み重ねられ、相互に固定される。突出する頂点を持つ構造を使用することによって、全てのループがもっぱら同一ループ高さであるステントと比較して、重量の軽減が得られる。
【0085】
1つの実施形態では、ブタのような哺乳動物から生体弁(図示せず)を取り出し、楕円形の支持手段301に装着する前に洗浄することができる。洗浄した弁は約25〜27mmの外径を有し、3つの交連点の高さは約8mmである。弁(図示せず)は適切な数の縫合によって楕円形の支持手段301に装着され、楕円形の支持体‐弁組立体300を形成する。
【0086】
楕円形の支持体‐弁組立体300は、膨張可能なバルーン手段を有するカテーテルを用いて大動脈内に導入され移植される。楕円形の支持体‐弁組立体300は最初に収縮したバルーン手段の上に配置されおよびバルーン手段の上に手動で圧縮される。導入し配置した後、バルーン手段は膨張され、それによって楕円形の支持体‐弁組立体300に楕円形の外側寸法をもたらす。大動脈内で効果的な固定を得るために、楕円形の支持体‐弁組立体300の外側寸法は大動脈の直径より大きい。これは、楕円形の支持体‐弁組立体300が、血流による脱離に対抗するのに充分大きい圧力で大動脈の内壁に対し緊張することを意味する。バルーンカテーテルはその後、大動脈から取り出すことができる。金属の剛性のため、楕円形の支持体‐弁組立体300は収縮を防止する。しかし、バルーンカテーテルの収縮および取出しの後、小さい収縮が発生することがある(直径の10%未満の縮減)。
【0087】
楕円形の支持体‐弁組立体300は、患者の疾病の診断に従って、大動脈の3つの異なる位置、すなわち心臓の冠動脈と左心室の間の位置、大動脈の上行部における冠動脈の入口の直後の位置、および大動脈の下行部における位置に配置することができる。
【実施例】
【0088】
以下の実施例は、本発明の好適な実施形態を実証するために含まれる。以下の実施例に開示する技術が発明の実施においてよく機能することが本発明者らによって明らかになった技術を代表するものであり、したがって発明の実施の好適な形態を構成するとみなすことができることを、当業者は理解されたい。しかし、当業者は、本開示に照らして、開示する特定の実施形態に多くの変化を施しても、依然として発明の精神および範囲から逸脱することなく類似または同様の結果を得ることができることを理解されたい。本発明は、発明の個々の態様の単なる例証として意図された、本書に記載する特定の実施形態によって範囲を制限されず、機能的に同等の方法および構成要素は発明の範囲内である。実際、本書に図示しかつ記載したものに加えて、発明の種々の変形例が、当業者には上記の説明から明らかになるであろう。そのような変形例は、添付する特許請求の範囲に該当することを意図している。
【0089】
実施例1
発明者らは、健康なヒトの大動脈弁の高解像度マルチスライスコンピュータ断層撮影(CT)血管造影図を入手して解析した。1mmの軸線方向スライスを用いて、Mathematicaで10個の正常な大動脈根のCT血管造影図から弁構造物のx、y、およびz座標を生成した。弁葉および洞の座標の三次元最小二乗回帰を使用して、半球モデルと楕円モデルとを比較した。全ての根構造物の形状および寸法を評価した。
【0090】
正常な弁の形状は、円筒内に嵌め込まれた3つの半球として表わすことができる。しかし、寸法的適合は楕円体の形状を用いる方が良好であり、弁葉の高さは半球によって予測されたより高かった。弁葉/洞の水平方向の外周は、かなり円形に近かった(平均短軸‐長軸比=0.82〜0.87)。弁の基部は全く楕円形であり(短軸‐長軸比=0.65)、この形状は垂直方向に延在した。左冠動脈(LC)尖と無冠動脈(NC)尖との間の交連は、右冠動脈(RC)尖の中心と対向して、基部の短径と外周との後接合部に位置する。LC、NC、およびRCの弁葉/洞楕円体の中心は、弁の中心の方向に移動した(それぞれの平均微小移動すなわちアルファ=0.24、0.32、および0.09)。交連は5〜10度外側に広がり、RC尖は最大であった(表1)。
【0091】
さらに、交連下領域の調査から、交連が弁の中心から約5〜10度外側に広がったことが示された。したがって、装着フレームは、本書および以下に記載するように、ポストが狭まりかつ張り出し、楕円形の断面を持つように設計された。
【0092】
実施例2
1.5の軸比(長軸/短軸または0.66の短軸/長軸の軸比)の楕円形の断面および10°外側に広がったポストを持つ現在記載した弁輪内装着フレームを子ウシで試験し、以下の詳述する通り有望な結果を得た。
【0093】
Texas Heart Instituteで生存研究のために装着フレームを10頭の子ウシに移植した。子ウシを移植モデルとして使用したのは、子ウシがヒトに近い大きさの弁を持ち、臨床的にヒトに使用されるであろう装置に対する良好な対応性をもたらすからであった。修復された弁の心エコー解析は、優れた弁葉接合、正常な弁葉開口、無漏出、および不撹乱層流を示した。CT血流造影法は、拡張期の正常な楕円形の弁葉の形状および接合、および収縮期の弁葉の良好な開口を示した。これらの結果は根血管造影法を用いて確認された。
【0094】
死体解剖で、加圧水下で内視鏡検査を実行し、全ての子ウシで、弁葉が優れた垂直性をもってよく位置合せされており、接合の問題が無く、すなわち弁葉は正中線上で交差し、綿撒糸は充分に内皮化していることが示された。
【0095】
現在記載する楕円形の装着フレームは現在、臨床試験を受けることが計画されている。
【0096】
本書に開示しかつ請求する構成および/または方法は全て、本開示に照らして過度の実験なしに作成しかつ実行することができる。本発明の構成および方法を好適な実施形態に関して記載したが、発明の概念、精神、および範囲から逸脱することなく、該構成および/または方法、ならびに本書に記載する方法のステップまたは一連のステップに変化を適用することができることを、当業者は理解されるであろう。さらに詳しくは、本書に記載する作用物質を、化学的にかつ生理学的に関連する特定の作用物質に置き換えながら、同一または同様の結果を達成することができることは明らかであろう。当業者にとって明白な全てのそのような代替物および変形は、添付の特許請求の範囲に記載する発明の精神、範囲、および概念の範疇であるとみなされる。