特許第6006321号(P6006321)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6006321装着シミュレートによる装着ホイールの挙動の測定
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6006321
(24)【登録日】2016年9月16日
(45)【発行日】2016年10月12日
(54)【発明の名称】装着シミュレートによる装着ホイールの挙動の測定
(51)【国際特許分類】
   G01M 1/02 20060101AFI20160929BHJP
   G01M 17/02 20060101ALI20160929BHJP
【FI】
   G01M1/02
   G01M17/02 B
【請求項の数】32
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-537616(P2014-537616)
(86)(22)【出願日】2012年10月25日
(65)【公表番号】特表2014-531037(P2014-531037A)
(43)【公表日】2014年11月20日
(86)【国際出願番号】EP2012071166
(87)【国際公開番号】WO2013060782
(87)【国際公開日】20130502
【審査請求日】2014年12月1日
(31)【優先権主張番号】11008537.0
(32)【優先日】2011年10月25日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503337678
【氏名又は名称】スナップ−オン エクイップメント エッセエッレエッレ ア ウーニコ ソーチョ
(74)【代理人】
【識別番号】100096884
【弁理士】
【氏名又は名称】末成 幹生
(72)【発明者】
【氏名】パオロ ソットジュ
(72)【発明者】
【氏名】フランチェスコ ブラギロリ
(72)【発明者】
【氏名】マルコ トラッリ
【審査官】 福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−123644(JP,A)
【文献】 特開2009−020123(JP,A)
【文献】 特開2001−356080(JP,A)
【文献】 特開2007−210528(JP,A)
【文献】 特開2007−230403(JP,A)
【文献】 特開2006−175994(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/080571(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 1/00〜1/38
G01M 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リムと、前記リムに取り付けられたタイヤとを備えた装着タイヤ又はホイールの挙動を測定する方法であって、
前記タイヤ又はホイールの少なくとも一部の輪郭を測定するステップと、
前記タイヤ又はホイールの少なくとも1つの回転位置において前記タイヤに支えられる少なくとも1つの仮想装着エレメントを、測定された輪郭、前記仮想装着エレメントにより生じる測定された輪郭のずれ、及び、前記タイヤ又はホイールあるいは前記タイヤの一部に関する少なくとも1つパラメータに基づいて、前記タイヤ又はホイールに装着するようシミュレートするステップと、
前記シミュレーション結果を用いて前記装着されたタイヤ又はホイールの挙動を測定するステップとを備え
前記シミュレートするステップは、前記仮想装着エレメントにより及ぼされた所定の力で擬似的にホイールを装着するステップを含み、
前記挙動を測定するステップは、前記装着ホイールの半径方向振れを測定するステップを含むことを特徴とする装着タイヤ又はホイールの挙動を測定する方法。
【請求項2】
前記挙動は、前記タイヤと前記仮想装着エレメントとの間に及ぼされる力、前記タイヤと前記リムとの間に及ぼされる力、前記リム又はホイールにより前記ホイールの回転軸上に及ぼされる力、前記タイヤ又は前記タイヤの一部の変形又はずれ、前記リムの変形、前記タイヤ又はホイールの複数の回転位置についての複数の装着シミュレートに関する力又は変形又はずれのいずれかの変化の内の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記力又は変形又はずれは、前記タイヤ又はホイールに関する半径方向、横方向及び周方向の少なくとも1つで測定されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記挙動は、前記力又は変形又はずれの変化の内の少なくとも1つの平均、ピークピーク値、第1高調、高調波の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記タイヤ又はホイールあるいはタイヤの一部に関する少なくとも1つのパラメータは、前記リムについてのばね定数、前記タイヤの充填圧力、前記タイヤについてのばね定数、前記タイヤの一部についてのばね定数、前記仮想装着エレメントにより生じる前記測定された輪郭のずれ、前記タイヤの各位置の壁厚、及び、前記仮想装着エレメントにより生じる前記測定された輪郭の変形の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記輪郭は、前記タイヤの外輪郭の少なくとも一部を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記タイヤ又はホイールの一部は、前記タイヤのトレッド部分の少なくとも一部を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記タイヤ又はホイールの各回転位置における装着をシミュレートするステップは、複数の異なる装着状態を含み、
前記異なる装着状態は、異なる又は変化する装着強度、及び/又は、前記タイヤ又はホイールあるいは前記タイヤの一部に関する少なくとも1つのパラメータの異なる又は変化する値を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記シミュレートするステップは、異なる装着状態の複数のシミュレーションに基づく前記タイヤ又はホイールの各回転位置におけるシミュレーション結果を測定し、平均化するステップをさらに備えることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記シミュレートするステップは、前記仮想装着エレメントと前記ホイールの回転軸との間を所定の距離として擬似的にホイールを装着するステップを含み、
前記挙動を測定するステップは、前記装着ホイールの半径方向力変化を測定するステップを含むことを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記挙動を測定するステップは、前記装着ホイールの横方向力変化又は横方向振れの少なくとも1つを測定するステップをさらに備えることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つのパラメータは、関連するトレッド部分の軸位置及び半径方向位置のうちの少なくとも1つに従って変化する微小ばね定数であることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つのパラメータは、前記装着エレメントにより生じる前記タイヤトレッドのずれに従って変化する非線形微小ばね定数であることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つのパラメータは、タイヤのタイプ、タイヤのサイズ、タイヤの膨張圧力、リムのタイプ、仮想装着エレメントのずれ、前記装着エレメントにより生じた測定された輪郭のずれ又は変形、車両の種類、車両重量、車両の軸上の車重の再配分、車両のサスペンションの幾何学的形状、車両の精密なモデルデータの少なくとも1つに従って修正されることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記タイヤ又はホイールの輪郭を測定するステップは、前記リムの半径方向振れ又は横方向振れの少なくとも1つを測定するステップを含み、
前記シミュレートするステップは、前記リムの測定された振れの検討を含むことを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記シミュレートするステップは、前記タイヤ又はホイールの1つ半径方向断面の測定された輪郭を用いることを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記シミュレートするステップは、前記仮想装着エレメントと前記タイヤとの間の接触領域をシミュレートするために、前記タイヤ又はホイールの隣接する複数の半径方向断面の測定された輪郭を用いることを特徴とする請求項1〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記シミュレートされた接触領域は、前記タイヤと所定半径を有する仮想装着ローラとの間、前記タイヤと所定たわみ半径を有する仮想装着ベルトとの間、又は、前記タイヤと路面のような面の表面との間の接触領域であることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記タイヤと前記個々に成形された仮想装着エレメントとの間の前記接触領域は、前記タイヤ又はホイールの前記各隣接する半径方向断面の前記シミュレーションに各荷重関数を適用することによりシミュレートされることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
少なくとも2つの仮想装着エレメントが同時に用いられ、
一方の仮想装着エレメントは、前記タイヤビードに支えられる仮想リムを意味し、
他方の仮想装着エレメントは、前記タイヤトレッドに支えられることを特徴とする請求項1〜19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記仮想装着エレメントを前記タイヤ又はホイールに装着するステップは、総車両重量、各車両の軸上の車重の再配分、車両の種類、サスペンションの幾何学的形状のような車両パラメータに従属して適用されることを特徴とする請求項1〜20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
リムと、前記リムに取り付けられたタイヤとを備えた装着タイヤ又はホイールの挙動を測定するシステムであって、
前記タイヤ又はホイールの輪郭あるいは前記タイヤの一部をスキャンするスキャン装置と、
前記スキャン装置に連結自在であり、請求項1〜21のいずれかに記載の方法を実行するために形作られたコンピュータとを備えることを特徴とする装着タイヤ又はホイールの挙動を測定するシステム。
【請求項23】
前記スキャン装置は、前記タイヤ又はホイールの表面を非接触様式感知可能な光学スキャナーを含み、前記タイヤ又はホイールの少なくとも一部の三次元輪郭データを提供することを特徴とする請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記システムは、ポータブル独立型装置であることを特徴とする請求項22又は23に記載のシステム。
【請求項25】
前記システムは、車両の車内に取り付けられることを特徴とする請求項22又は23に記載のシステム。
【請求項26】
前記システムは、品質チェック装置のようなホイール又はタイヤ試験装置の一部であることを特徴とする請求項22又は23に記載のシステム。
【請求項27】
請求項22又は23に記載のシステムを備えたことを特徴とする車両サービス装置。
【請求項28】
前記装置は、ホイールバランサー、タイヤ取り付け/取り外し装置、ローラ試験台、タイヤ試験スタンド、又は、ホイール試験スタンドであることを特徴とする請求項27に記載の車両サービス装置。
【請求項29】
前記装着タイヤ又はホイールの挙動を測定するステップは、前記車両サービス装置により実行されるサービス操作中に検討されることを特徴とする請求項27又は28に記載の車両サービス装置。
【請求項30】
コンピュータにより実行された際に、コンピュータが請求項1〜21のいずれかに記載の方法を実施することができるとのコンピュータ読み取り可能な指示を行うコンピュータ読み取り可能な媒体を備えたことを特徴とするコンピュータプログラム製品。
【請求項31】
前記車両は、前記車両のドライビング特性を向上するために、ホイール又はタイヤの状態についてドライバーに情報を伝え、又は、前記車両の技術的システム、好ましくは前記車両のサスペンションシステムを自動的に調整する車載システムによって得られたタイヤ又はホイールの挙動についての情報を使用するよう構成されていることを特徴とする請求項25に記載のシステムを備えた車両。
【請求項32】
請求項31に記載の車両から有線又は無線伝達コネクションを経由してタイヤ又はホイールの挙動についてのデータを受容し、サービス操作、好ましくはホイールアライメント工程の改良用のデータを評価又は使用するよう構成されたデータ加工装置を備えたことを特徴とする自動車サービスシステム、好ましくはホールアライメントシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装着されたタイヤ又はホイール、特に空気自動車用タイヤ又はホイールあるいはリムとリムに取り付けられたタイヤとを備えたホイール又はホイール組立品の挙動を測定する方法に関するものである。この構成における挙動は、装着されたホイールの半径方向力又は横方向力、装着によるタイヤ又はホイールの変形、装着されたホイールの半径方向振れ又横方向振れ、タイヤ又はホイール上に作用する荷重から得られる他の挙動又は効果に関するものである。さらに、本発明は、このような方法を実施するシステム又は装置に関するものである。特に、本発明は、装着シミュレートによる装着ホイールの挙動測定の改良された方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気自動車用ホイールがバランス調整される時でさえ、通常操作状態の荷重におけるホイールの回転時に、タイヤの構成の不均一性及びホイールの振れは顕著な振動力を生じる。無荷重状態において好適にバランス調整されたホイール/タイヤ組立品が、自動車に取り付けられ、自動車重量から生じる実質的な装着を行う際に好適にバランス調整されることは必ずしもあてはまらない。
【0003】
装着されたホイールの挙動における不均一性は、例えば骨組み又はタイヤ壁厚さ(タイヤ構造)の変動のようなタイヤ構成の不均一性により生じるタイヤ剛性の変動と同様に、タイヤ及び/又はリムの半径方向振れ又は横方向振れにより生じる。このような不均一性は、外周に沿った装着ホイールの回転直径、すなわちホイールの回転に変動を生じる。これはホイール軸の縦移動を生じ、駆動車両のホイールサスペンションに作用する縦振動力を生じる。
【0004】
振動及び/又は振れ力のような装着ホイールの不均一性を測定することが望ましい。例えばバランス調整おもりの大きさ又は位置を修正するため、又は、リム/タイヤ組立品の付け直し角度位置を決めるために、ホイールバランサーの操作又はタイヤ交換の間に、測定された不均一性が用いられる。このように、装着ホイールの不均一性の不利な効果は軽減され、又は、除去される。
【0005】
回転する装着ホイールの半径方向力振動又は半径方向振れのような不均一性を測定するホイールバランサーは、特許文献1に開示されている。このホイールバランサーにおいては、装着ローラがホイール回転中にリム/タイヤ組立品(ホイール)に本質的な半径方向力を適用する。装着ホイールの半径方向振れを測定するために、ホイール回転中に装着ローラの移動が観測される。さらに、ホイールバランサーの振動センサによって回転する装着ホイールの振動力が測定される。
【0006】
現実的な状態における回転する装着ホイールを測定するためには、一般的に装着ローラによりホイールに適用される強い力のため、装着ローラには大規模な対応測定装置が要求される。これは、装置を重く扱いにくいものとし、コストを増加する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6,397,6756号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、ホイールに強い力の適用を必要とすることなく、装着に起因するホイールの挙動を測定する改良方法およびシステムを提供することである。
【0009】
本発明によれば、請求項1の方法及び請求項23のシステムにより上記目的が解決される。従属項は本発明のさらなる開発を言及する。
【0010】
第1態様においては、本発明は、リムと、前記リムに取り付けられたタイヤとを備えた装着タイヤ又はホイールの挙動を測定する方法であって、前記タイヤ又はホイールの少なくとも一部の輪郭を測定するステップと、測定された輪郭、前記仮想装着エレメントにより生じる測定された輪郭のずれ、及び、前記タイヤ又はホイールあるいは前記タイヤの一部に関する少なくとも1つパラメータに基づいて、前記タイヤ又はホイールの少なくとも1つの回転位置において前記タイヤに支えられる少なくとも1つの仮想装着エレメントを、前記タイヤ又はホイールに装着するようシミュレートするステップと、前記シミュレーション結果を用いて前記装着されたタイヤ又はホイールの挙動を測定するステップとを備える方法を提供する。
【0011】
タイヤ構造の不均一性は、通常非装着状態及び装着状態のタイヤの形状の不均一性を生じ、又はこのタイヤの不均一性により生じる。言い換えると、装着状態のタイヤ又はホイールの挙動は、その形状又はその形状の不均一性に少なくとも部分的に由来するその構造に依存する。輪郭は、タイヤ又はホイールの表面をスキャンするスキャン装置、例えばスキャン表面についての3次元データが得られる光学スキャン装置により測定される。
【0012】
装着シミュレーションは、タイヤのいずれかの部分の輪郭に基づく。シミュレーションに用いられる輪郭としては、限定されるものではないが、タイヤのトレッド表面及び/又はタイヤの側壁の少なくとも一部を含む外輪郭、又は、ホイールの直径に対応する輪郭と同様に、トレッド表面に対向するタイヤの内輪郭、又は、側壁及びビード領域の内輪郭が用いられる。例えばタイヤの側壁の輪郭が装着状態のタイヤの変形及びタイヤの剛性を決めるため、タイヤの側壁の検討がシミュレーション精度を改良する。測定され及びシミュレーションで用いられる輪郭の位置、拡張及び形状は、本出願に従って又は測定されるタイヤ又はホイールの挙動の態様に従って、選択される。
【0013】
本発明のさらなる開発においては、タイヤの部分の内輪郭及び外輪郭は、各タイヤ部分の壁厚が測定されるように測定される。タイヤ部分の壁厚についてのデータの取得は、局所的なタイヤ壁剛性及びタイヤ変形予測を考慮した非常に正確なシミュレーションを可能とする。これは、例えば有限要素法計算に基づく。
【0014】
本発明の第1態様の他の独立したさらなる開発においては、さらに正確な結果を達成するために、各回転位置にタイヤ又はホイールを装着することにより生じるタイヤ全体の変形がシミュレートされる。この目的のためには、タイヤの技術分野で公知なタイヤのリングモデルが用いられる。このリングモデルは、装着状態のタイヤ全体の変形を説明し、タイヤ部分の測定された輪郭又は壁厚についてのシミュレートされた装着状態から得られるタイヤ部分のずれ及び各タイヤ部分に作用する対応力を計算する。
【0015】
タイヤ又はホイールの少なくとも一部の輪郭の測定の間は、タイヤ又はホイールは非装着状態であることが好ましい。しかしながら、物理的装着ローラ又は装着プレートによりホイールが装着された、又は、装着状態の装着表面上にホイールが支えられている(例えば車両に取り付けられた際の)ホイールの装着状態の輪郭を測定することもできる。この場合、輪郭を測定するために、タイヤ又はホイールの非装着部分をスキャンすることができ、非装着部分は物理的装着エレメント又は装着表面に対向して配置され、又は、ホイールに対していずれかの回転角位置に配置される。しかしながら、タイヤの装着部分、すなわち物理的装着エレメント又は装着表面により(例えばシースルー装着エレメントを通してタイヤ表面を光学的にスキャンすることにより、又は装着エレメントに隣接するタイヤの部分をスキャンし、タイヤと装着エレメントとの間の接触領域における装着エレメントの公知の表面形状に従ってタイヤの変形を推測することにより)変形され及びずらされた部分の輪郭を測定することもできる。
【0016】
本発明の独立したさらなる開発においては、先ず非装着状態の輪郭を測定し、次いで輪郭を測定しつつ公知の方法でホイールを装着することができる。したがって、ホイールは回転しないことが好ましい。これは、試験装置の単純な機械的構造を許容し、タイヤと試験装置の物理的摩耗を避ける。このように、本発明の方法に従って下記の装着シミュレーションに用いられるばね定数、充填圧力、変形因子又は他のパラメータのようなタイヤのあるパラメータが測定され又は事前に推測される。これは、タイヤタイプ、充填圧力等のような変化条件について本発明の装置及び方法を適用又は較正することができる。
【0017】
仮想装着エレメントをタイヤ又はホイールに装着するようシミュレートする場合、仮想装着エレメントはタイヤのトレッドに対して支えられることが好ましい。しかしながら、装着状態のタイヤの挙動についてのさらなる情報を得、追加情報によりシミュレーションの正確性を向上させるために、トレッド部分に対する仮想装着エレメントの支えに代えて又はに加えて側壁のようなタイヤの他の部分に対して仮想装着エレメントを支えることができる。さらに、任意の装着状態をシミュレートするために、2つ以上の装着エレメントを同時に用いることもできる。
【0018】
本発明の独立した他のさらなる開発においては、セパレートタイヤ(リムに取り付けられない)は、トレッドの内表面及び/外表面、側壁及びタイヤのビードを含むタイヤの少なくとも一部の輪郭を測定するためにスキャンされる。このように、少なくとも2つの仮想装着エレメントにより物理的リムから独立したホイールの装着をシミュレートすることができる。この場合、1つの仮想装着エレメントは、リムであり、タイヤビードに支えられ、一方、他の仮想装着エレメントは、装着ローラ又は装着表面であり、例えば外側トレッド表面に支えられる。この方法に関しては、(リムのばね定数、リム幅、リム端の形状等のような)異なる特性を有する仮想リムは、タイヤの挙動を測定するために用いられる。
【0019】
タイヤ又はホイールは、タイヤ又はホイールの完全な輪郭に達するように外周の複数の回転位置でスキャンされることが好ましい。これは、外周に沿ったタイヤの挙動の変化を測定できる。しかしながら、タイヤ又はホイールの挙動についての有用な情報を得るために、タイヤ又はホイールの1つだけの回転位置の輪郭をスキャンすることもできる。この場合、測定された輪郭は、タイヤ又はホイールの外周に沿って一定であると推測される。本発明の簡易化された方法を改良するために、最大の半径方向振れ又は選択された他のパラメータの回転位置と一致するように、測定される輪郭の1つの回転位置を選択してもよい。
【0020】
タイヤ又はホイールあるいはタイヤの一部に関する少なくとも1つのパラメータは、リムについてのばね定数、タイヤの充填圧力、タイヤについてのばね定数、タイヤの一部についてのばね定数、仮想装着エレメントにより生じる測定された輪郭のずれ、タイヤの各位置の壁厚、及び、仮想装着エレメントにより生じる測定された輪郭の変形の少なくとも1つを含む。
【0021】
本発明の方法により測定されたタイヤ又はホイールの挙動は、タイヤと仮想装着エレメントとの間で及ぼされる力、タイヤとリムとの間で及ぼされる力、ホイールの回転軸上でリム又はホイールにより及ぼされる力、タイヤ又はタイヤの一部の変形又はずれ、リムの変形、タイヤ又はホイールの複数の回転位置についての複数の装着シミュレーションに関する力又は変形又はずれのいずれかの変化の内少なくとも1つを含む。上記の力又は変形又はずれは、タイヤ又はホイールに関する半径方向、横方向及び周方向の少なくとも1つで測定される。さらに、上記の挙動は、上記の力又は変形又はずれの変化の内の少なくとも1つの平均、ピークピーク値、第1高調破、高調波の少なくとも1つを含む。
【0022】
本発明の第1態様の独立した他のさらなる開発においては、タイヤ又はホイールの各回転位置における装着をシミュレートするステップは、複数の異なる装着状態を含み、異なる装着状態は、異なる又は変化する装着強度、及び/又は、タイヤ又はホイールあるいはタイヤの一部に関する少なくとも1つのパラメータの異なる又は変化する値を含む。また、上記のシミュレートステップは、平均化により、異なる装着状態の複数のシミュレーションに基づくタイヤ又はホイールの各回転位置におけるシミュレーション結果を測定するステップをさらに備えてもよい。
【0023】
以下の記載においては、タイヤ又はホイール不均一性は、タイヤ又はホイールの挙動の一例として理解される。したがって、不均一性の用語は、(例えば幾何学的形状の半径方向又は横方向振れあるいは半径方向力のような)技術分野の特定の不均一性に限定されることなく、タイヤの装着により得られる広義のタイヤ又はホイールの挙動として解釈される。
【0024】
第1態様のさらなる開発においては、本発明の方法は、少なくともタイヤのトレッドを含む非装着ホイールの少なくとも一部の外輪郭を測定するステップと、測定された外輪郭、仮想装着エレメントにより生じる測定された外輪郭のずれ、及び、タイヤトレッドに関する所定のばね定数に基づいてホイールの複数の回転位置においてタイヤのトレッドに支えられる仮想装着エレメントをホイールに装着するようシミュレートするステップと、シミュレーション結果を用いて装着されたホイールの不均一性を測定するステップとを備える。
【0025】
言い換えると、第1ステップにおいて、ホイールの外輪郭がスキャンされ、ホイールの輪郭データが得られる。輪郭データは、ホイール又はホイールのスキャン部分の外輪郭の複数の半径方向の二次元断面を含み、各半径方向断面はホイールの特定の回転位置に関係づけられる。次のステップにおいて、輪郭データの半径方向断面の1つが検討され、ホイール軸に平行なラインにより表現される仮想装着エレメントがホイール軸の半径方向に実質的に移動され、外輪郭、特に外輪郭のトレッド部分の半径方向断面がずらされ、変形される。このタイヤは、タイヤ膨張圧力及びタイヤ材料剛性による外輪郭のこのような変形及びずれに対する耐性を提供するために、改良仮想装着エレメントにより生じる外輪郭の半径方向断面の各個別の(微小)部分の仮想ずれは、所定のばね定数を有する小さな仮想ばねのずれ(圧縮)により表される。仮想装着エレメントにより影響される範囲の外輪郭の個々の部分をずらせるのに要される力は、所定のばね定数及びHookの法則により非装着位置に関するずれ距離から得られる。外輪郭の半径方向断面に沿った個々の輪郭部分の個々の(微小)力の統合は、考察位置における仮想装着エレメントを移動及び保持するのに要する総合力をもたらす。これにより、ホイール軸に対する特定距離を有する特定の装着エレメント位置に関する全装着力が得られる。また、特定の全装着力が達成されるまでホイール軸の方向に仮想装着エレメントを次第に進めることもできる。したがって、特定の全装着力に関する装着エレメント位置が得られる。これは、各全装着力、あるいは、ホイールの回転位置において測定される外輪郭の半径方向断面に関する各装着エレメント位置を得るために、ホイールの各回転位置において繰り返される。実際のホイールは完全な対称ではなく、完全な円形ではないため、ホイールの異なる回転位置に関する外輪郭の半径方向断面は異なってもよい。これは、それぞれ異なる全装着力又は装着エレメント位置になる。このように、例えば着状態のホイール回転の異なる半径方向力(装着力)又は異なる回転半径は、上記のシミュレーションに従って測定された複数の装着力又は装着エレメント位置からそれぞれ測定される。
【0026】
仮想装着エレメントをホイールに擬似的に装着することにより、実際の装着ローラを提供する必要がなく、測定装置の嵩高さ及び重量及びコストを低減することができる。これは、特に取り扱われるホイールの外輪郭をスキャンできるスキャン装置を既に備えた車両サービス装置の場合において有効である。
【0027】
本発明のさらなる開発においては、シミュレートするステップは、仮想装着エレメントにより作用する所定の力でホイールを擬似的に装着するステップを含み、不均一性を測定するステップは、装着ホイールの半径方向振れを測定するステップを含む。これは、ホイールが駆動車両の所定重量で装着される現実的な操作状態に対応する。このように、例えばサスペンションシステムのダンピング効果がこのような移動を実質的に低減しない場合に、低速駆動中のホイール軸の仮想移動が推測される。
【0028】
本発明のさらなる態様によれば、シミュレートするステップは、ずれ及び所定のばね定数から計算された装着力がホイールの全ての回転位置に対して一定となるように、仮想装着エレメントにより生じるホイールの各回転位置において測定された外輪郭のずれを変化及び設定するステップを含み、不均一性の測定ステップは、ホイールの周方向に沿って変化するホイール回転軸に対するスレッドずれの変化及び仮想装着エレメントの異なる距離の内の少なくとも1つを測定するステップを含む。
【0029】
本発明の独立した他のさらなる開発においては、シミュレートするステップは、仮想装着エレメントとホイールの回転軸との間の所定の距離を確保しつつ擬似的にホイールを装着するステップを含み、不均一性を測定するステップは、装着ホイールの半径方向力の変化を測定するステップを含む。これは、ホイール軸と装着表面との間の距離を実質的に一定にしつつ装着ホイールが回転する現実的な操作状態に対応する。このように、例えばサスペンションシステムのダンピング効果がホイール軸の仮想的移動を実質的に低減しない場合に、高速駆動中のサスペンションシステムに作用する仮想振動力が推測される。
【0030】
本発明の独立した他の態様によれば、シミュレートするステップは、仮想装着エレメントとホイール軸との間の距離を一定に維持するステップと、ホイールの全ての回転位置における各装着力を所定のばね定数及び仮想装着エレメントにより生じる測定された外輪郭のずれから計算するステップとを含み、不均一性を測定するステップは、ホイールの周方向に沿って変化する装着力から装着ホイールの半径方向力振動を測定するステップを含む。
【0031】
本発明の独立した他の開発においては、不均一性を測定するステップは、装着ホイールの少なくとも1つの横方向力変化又は横方向振れを測定するステップをさらに含む。このように、車両の駆動安定性及び特に方向安定性に影響する横方向力は評価される。
【0032】
本発明の独立したさらなる開発においては、タイヤタイプ、タイヤサイズ、タイヤ膨張圧力及びリムタイプの少なくとも1つ、仮想装着エレメントのずれ、装着エレメントにより生じる測定された外輪郭のずれ又は変形、車両の種類、車両重量、車両軸上の車両重量の再配分、車両のサスペンション幾何学的形状、並びに、車両の精密なモデルデータに従って、少なくとも1つのパラメータが修正される。検討がシミュレーションの正確性をさらに増加するように、全てのパラメータがタイヤ剛性及びばね定数の局所的強度に対して多少影響を及ぼす。これらのパラメータは自動的に測定され又は決定され、あるいは、オペレータにより入力され、例えばデータベースから引き出されてもよい。
【0033】
上記の態様から独立した本発明のさらなる態様によれば、ホイールの外輪郭を測定するステップは、リムの半径方向振れ及び/又は横方向振れを測定するステップを含み、シミュレートするステップは、測定されたリムの半径方向又は横方向振れの検討を含む。リムの影響及びホイールの測定された外輪郭上のタイヤの影響と、装着ホイールの測定された不均一性とをそれぞれ分離するために、リムの半径方向又は横方向幅の知見は有益である。このように、例えばリム/タイヤ組立品の半径方向又は横方向振れを低減又は除去するために、装着シミュレーションは正確性、さらにはリム/タイヤ組立品の載置し直す角位置を向上させる。
【0034】
さらに、タイヤトレッドに関する所定のばね定数は、トレッド表面上の全てを一定にすると推測される微小ばね定数としてもよく、又は、関連するトレッド部分の軸位置を選択的に変更してもよい。ばね定数のこの変更は対応荷重関数により達成される。このように、例えば装着シミュレーションの正確性の向上のために、タイヤ剛性及びばね定数に対するトレッドの軸方向の端部のより強力な影響が考慮される。一般に、トレッドの端部がずらされる際に変形するタイヤの側壁の影響により、トレッドの軸方向の端部はより堅く、すなわち高ばね定数を有する。
【0035】
さらなる上記態様から独立した態様においては、タイヤトレッドに関する所定のばね定数は、関連するトレッド部分の半径方向位置について変更する微小ばね定数とすることができる。また、ばね定数のこの変化は対応する荷重関数により達成される。このように、例えば装着シミュレーションの正確性の向上のために、タイヤ構造の不均一性から生じる完全な円周からのタイヤ輪郭の偏差が考慮される。タイヤ構造におけるこのような不均一性は、タイヤ輪郭においてのみならずタイヤ剛性変化においても生じると推測される。したがって、非装着トレッド部分の半径方向位置と関連するばね定数との間には関係がある。
【0036】
さらなる上記態様から独立した態様においては、所定のばね定数は、装着により生じるタイヤトレッドのずれについて変化する非線形微小ばね定数とすることができる。これは、開始時のトレッド部分のずれ(すなわち小さなずれ)がタイヤ材料の局所的な幾何学手で変形により主に影響され、トレッドの大きなずれを有するタイヤ膨張圧力及びタイヤ側壁変形のような他の要因が異なる強度で影響を及ぼすことを有利に考慮される。このように、装着シミュレーションの正確性が向上される。
【0037】
本発明のさらなる態様によれば、シミュレートするステップは、ホイールの1つの半径方向断面の測定された外輪郭を用いることができる。このように、ホイールの対応回転位置におけるホイールの装着の計算及びシミュレーションは比較的単純であり、例えば単純な良/否評価を下すタイヤ診断法のような様々なサービス用途にとって十分な結果の正確性を提供し得る。このために必要なパラメータ、特に装着に起因するトレッドずれによる非直線性と同様に、トレッド部分の関連するばね定数の量、並びに、軸位置及び/又は半径方向位置による変化にとって適切な推定がなされてもよい。
【0038】
他の態様から独立した本発明のさらなる開発においては、シミュレートするステップは、仮想装着エレメントとタイヤトレッドとの間の接触領域をシミュレートするために、ホイールの複数の隣接する半径方向断面の測定された外輪郭を用いることができる。このように、より正確な装着シミュレーションは、装着に起因したより現実的なタイヤ変形に基づいて達成される。さらに、異なる形状を有する仮想装着エレメントをホイールに擬似的に装着するようシミュレートし、異なるトレッド部分のずれの変化及び/又はタイヤトレッドと仮想装着エレメント表面との間の接触領域内の接触圧力の変化を考慮することができる。例えば、装着表面に相当するフラット装着エレメントと同様に、異なる直径の装着ローラがシミュレートできる。特に、ホイールにフラット装着エレメントを装着するようシミュレートするステップは、装着表面上のホイール回転の現実的操作状態に近いため、有利である。
【0039】
シミュレートされた接触領域は、タイヤと所定半径を有する仮想装着ローラとの間、タイヤと2つの支持ローラ間の所定のたわみ半径を有する仮想装着ベルトとの間、又は、タイヤと装着表面のような表面との間の接触領域であってもよい。また、タイヤの接触領域及びそれぞれ形作られた仮想装着エレメントは、タイヤ又はホイールの各隣接半径方向断面のシミュレーションに各荷重関数を適用することによりシミュレートされてもよい。仮想装着エレメントの形状を考慮する他の方法としては、接触領域の中心に対する各タイヤ部分の回転位置に従属するシミュレーションに用いられる局所的なパラメータに適用可能である。
【0040】
本発明のさらなる態様においては、非装着ホイールの平均外輪郭は、完全な円形ホイールを表すスキャンされた輪郭データから計算される。この平均外輪郭からスキャンされた外輪郭の偏差が測定され、例えばタイヤトレッドに関連する所定のばね定数が修正される。さらに、装着ホイールの半径方向振れ又は横方向振れあるいは半径方向力変化又は横方向力変化のような不均一性は計算された平均値からの偏差の第1高調波に基づいて決定される。装着シミュレーションから得られるピーク−ピーク値に基づいて不均一性を決定することもできる。
【0041】
本発明の独立したさらなる他の開発においては、仮想装着エレメントをタイヤ又はホイールに装着するステップは、車両総重量、各車両軸上の車両重量の再分配、車両の種類、サスペンションの幾何学的形状のような車両パラメータに従属して適用される。これに対して、仮想装着エレメントのずれが適用されてもよく、また、例えば仮想装着エレメントにより及ぼされる力が適用されてもよい。車両パラメータに従属して仮想装着エレメントの形状を適用することもできる。
【0042】
本発明の独立したさらなる他の開発においては、シミュレートされた接触領域は、タイヤと所定半径を有する仮想装着ローラとの間、タイヤと所定のたわみ半径を有する仮想装着ベルトとの間、又は、タイヤと装着表面のような表面との間の接触領域であってもよい。また、各荷重関数をタイヤ又はホイールの各隣接半径方向断面のシミュレーションに適用することにより、タイヤとそれぞれ形作られた仮想装着エレメントとの接触領域がシミュレートされてもよい。仮想装着エレメントの形状を考慮する他の方法としては、接触領域の中心に対する各タイヤ部分の回転位置に従属するシミュレーションに用いられる局所的なパラメータに適用可能である。
【0043】
本発明の他の態様によれば、リムとそのリム上に取り付けられたタイヤとを備えた装着ホイールの不均一性を測定するシステムが提供される。このシステムは、非装着ホイールの外輪郭をスキャンするスキャン装置と、このスキャン装置に連結されたコンピュータとを備える。ホイールの装着をシミュレートし、上記の装着ホイールの半径方向又は横方向振れあるいは半径方向又は横方向力偏差のような不均一性を測定するために、コンピュータは、非装着ホイールの外輪郭を表すデータをスキャン装置から受け取り、タイヤ膨張圧力、リム及びタイヤの大きさ、リム及びタイヤのタイプ、タイヤトレッドのばね定数、並びにこれらの偏差のような要求されるパラメータ用の規定値あるいは測定又は入力値を用いる。
【0044】
このシステムは、独立型システムとすることができ、あるいは、いずれかのタイヤ又はホイール試験装置の一部とすることができる。このような独立型システムは、タイヤの質を評価するためにあらゆる所で用いられるように、ポータブルとしてもよい。例えば製造されたタイヤの品質を評価するためにタイヤ製造に用いられることもできる。この場合、仮想リムがタイヤ挙動のシミュレーションに用いられることが特に有利である。このように、リムなしのセパレートタイヤのタイヤ表面(内及び/又は外輪郭)をスキャンし、リム上にタイヤを物理的に取り付けることなく、また、装着状態のホイール組立品を物理的に回転することなく、許容的なリムに取り付けられたタイヤの挙動をシミュレートすることができる。これにより、時間とコストを削減することができる。
【0045】
このシステムは、車両に取り付けられたホイールに近接して位置決めでき、ホイールを回転することなく床から持ち上げられる独立したシステム、あるいは、扱いやすい又はポータブルモバイルシステムとすることができる。ホイールは、システムのスキャン装置がホイールの全周をスキャンできるように、手動又は技術的手段により回転することができる。また、ホイールは固定され、スキャン装置がホイール周囲を回転してもよい。本発明の他の態様によれば、システムは、車両を持ち上げる必要のない試験レーンの一部であってもよく、(例えばローラ試験台のような)試験レーンローラによりホイールが回転され、次いでホイールの全周がスキャンされる。このような形態を有するローラは、ホイールへの移動に用いられ、一方では、スキャン装置により非接触様式でホイール輪郭データ収集が行われる。ホイールの対応回転位置は、関連する回転位置に対するスキャンされた表面輪郭が明確に決定されるように、タイヤ又はリムの識別可能な特徴を有するスキャンデータから導き出される。このようなシステムは、例えば診断目的で車両に取り付けられたホイールの均一性を迅速かつ便利に確認するのに有利であり、ホイールを取り外す必要がなく、タイヤチェンジャー又はホイールバランサーのようなサービス装置の回転自在な支持台に取り付ける必要がない。
【0046】
本発明の他の態様によれば、このシステムは車両の車上に取り付けられる。この目的のために、タイヤ又はホイールの輪郭を測定するスキャン装置が車両のホイールハウジング内に配置されてもよく、車両の操作中にタイヤ又はホイールをスキャンしてもよい。スキャンされた輪郭部分をホイールの回転角位置に関連づける車両ホイールの回転位置情報は、ドライビングシステムやブレーキシステム(ABSセンサ)のような車両の他のシステムから得てもよい。このような車載システムにより得られたタイヤの挙動についての情報は、例えば車両のドライビング特性を改良するために、ホイール又はタイヤの状況をドライバーに知らせる用途に、又は、サスペンションシステムを自動的に調整する用途に使われてもよい。
【0047】
本発明の独立した他の態様においては、このような車載システムは、タイヤ又はホイール挙動について得られたデータをいずれかの種類の自動車のサービス装置に有線又は無線で伝達し、このデータが評価され又はサービス操作及び決定に用いられてもよい。例えば車両ホイールアライメントシステムは、アライメント工程を改良するためにタイヤ又はホイールの挙動データを用いてもよい。
【0048】
本発明の他の態様によれば、スキャン装置は、ホイールの外表面を非接触様式で探知し、少なくともタイヤのトレッドを有するホイールの少なくとも一部の三次元外輪郭データを提供し得る光学スキャナーを備える。スキャンするステップは、ホイールの表面上に光線を照射するレーザーシステム又は他の光学システムにより行われる。ホイール表面から戻る拡散光又は反射光は光学レシーバーに受容され、ホイール表面上の光衝突点の光レシーバーの光源までの距離は公知の方法に従って測定される。このように、ホイール表面の三次元画像又はモデルが作製され、三次元輪郭データの形態で表現される。
【0049】
公知の他のスキャン技術では、細線の形態のホイール表面に衝突するフラットシート(光技術のシート)の形態の光線を照射することによりホイール表面の三次元輪郭データが提供される。この線は、例えばカメラにより傾斜視野角から観測され、ホイールの表面輪郭に従って変形して表われる。ホイール表面の精密な空間位置及び輪郭は、レシーバー内に受容された光線の位置及び変形から導き出される。非装着ホイールの外輪郭を測定する他の技術としては、接触センサ又は他の接触方法又は超音波スキャンのような非接触方法等を用いた機械的スキャンが利用できる。ホイール表面をスキャンする技術は、十分な正確性でホイールの外輪郭データを提供できれば、本発明に重要ではない。
【0050】
さらなる態様によれば、仮想装着エレメントをホイールに装着するシミュレーション及び上記のタイヤトレッドに関する所定のばね定数を有する非装着ホイールの測定された外輪郭を用いて装着ホイールの挙動及び不均一性を測定するシステムを備えた本発明は車両サービス装置を提供する。例えば非装着ホイールの振れ測定のような他の診断目的に用いられる装置のスキャン装置は、本発明を実行するために必要な非装着ホイールの外輪郭データを提供するために用いられる。車両サービス装置にすでに内蔵されているコンピュータは、追加ソフトウェアの形態で単に追加することにより本発明の装着シミュレーションを行うために用いられる。このように、装着ホイールの不均一性を測定する非常に便利で費用対効果のある方法および装置が提供される。
【0051】
車両サービス装置は、例えば、ホイールバランサー、タイヤ取り付け/取り外し装置、又は、両メーカーの車両組立ラインにおいて事前取り付けされたホイールの試験に用いられるいずれかの種類のホイール準備/試験装置であってもよい。
【0052】
本発明のさらなる態様によれば、装着ホイールの測定された挙動又は不均一性は、車両サービス装置により実行されるサービス操作中に利用され、検討される。このように、ホイールバランサーにおいては、バランス調整おもりの位置及び大きさは、ホイールバランサー操作において測定された挙動又は不均一性に従って修正される。タイヤ取り付け装置においては、例えばリムふれを測定されたタイヤの不均一性で補うことにより又はその逆により、半径方向及び/又は横方向の力変化及び振れを低減又は除去するように、測定された装着ホイールの挙動又は不均一性に従ってリム上のタイヤの取り付け角位置をシフトすることもできる。
【0053】
本発明のさらなる開発においては、測定された外輪郭、装着シミュレーション結果、測定された不均一性、タイヤ診断結果のうちの少なくとも1つをオペレータに示すことができる。次いで、オペレータは、ホイールをどのように加工するのか決定することができる。例えば、初期パラメータ及び/又はタイヤの1つのみの半径方向断面の輪郭を用いた単純なシミュレーションが行われた場合、オペレータは、変更されたパラメータ又は高精度でシミュレーションを繰り返すことを決定できる。本発明を実施するシステム又は装置は、例えばタイヤ又はリムが不具合を有し、交換すべきかどうか、あるいは、リム/タイヤの組み合わせが互いにシフトされた角位置に取り付け直すべきかどうかのインディケータを提供することもできる。
【0054】
本発明のさらなる態様によれば、非装着ホイールの測定された外輪郭及びタイヤトレッドに関する所定のばね定数を用いて仮想装着エレメントをホイールに装着するシミュレーションにより装着ホイールの挙動又は不均一性を測定するシステムは、タイヤ/リム組立品を取り付け/取り外し及び/又はバランス調製が可能な十分に自動的なホイールサービス装置内に組み込まれる。
【0055】
本発明のさらなる実施形態によれば、コンピュータにより実行された際に、コンピュータが本発明の方法を実行することができるコンピュータ読み取り可能な指示を行うコンピュータ読み取り可能な媒体を備えたコンピュータプログラム製品が提供される。
【0056】
本発明の独立したさらなる態様によれば、車両のトライビング特性を改良するために、ホイール又はタイヤの状態についてドライバーに情報を伝え、車両の技術的システム、好ましくは車両のサスペンションシステムを自動的に調整する車載システムにより得られたタイヤ又はホイールの挙動についての情報を用いるよう車両が構成された、本発明のタイヤ又はホイール挙動測定システムを備えた車両が提供される。
【0057】
本発明の独立したさらなる態様によれば、本発明のタイヤ又はホイール挙動測定システムを備えた車両から有線又は無線伝達コネクションを経由してタイヤ又はホイールの挙動についてのデータを受容し、サービス操作、好ましくはホイールアライメント工程の改良用のデータを評価又は使用するよう構成されたデータ加工装置を備えた自動車サービスシステム、好ましくはホイールアライメントシステムが提供される。また、ホイールバランサーのような他の自動車サービスシステムは、本発明のタイヤ又はホイール挙動測定システムを備えた車両からタイヤ又はホイール挙動データを受容及び使用するように構成される。
【0058】
以下に添付図面とともに本発明の方法及びシステムのさらなる利点及び実施形態を記載する。なお、左、右、下及び上の表現は、符号の普通に読める図面の向きを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1】非装着ホイールの半径方向断面の測定された外輪郭の一部を示すダイアグラムであり、L線は擬似的な装着状態で変形される外輪郭を示す。
図2】ホイールの軸方向のタイヤトレッドに関する所定のばね定数を変更するために用いられる荷重関数の一例を示すダイアグラムである。
図3】ホイールの軸方向のタイヤトレッドに関する所定のばね定数を変更するために用いられる荷重関数の他の一例を示すダイアグラムである。
図4】仮想装着ローラの周囲に沿ってシミュレートされたタイヤトレッドのずれを変更するために用いられる荷重関数の一例を示すダイアグラムである。
図5】他の仮想装着ローラの周囲に沿ってシミュレートされたタイヤトレッドのずれを変更するために用いられる他の荷重関数の一例を示すダイアグラムである。
図6】ホイールリムにより生じた効果とホイールタイヤにより生じた効果との分離の一例を示すダイアグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0060】
以下、上記の本発明の複数の実施形態の内の最も好適な実施形態を図面とともに記載した。特に本発明の方法及び装置は、独立型システムとして、あるいは、ホイールバランサー、タイヤ取り付け/取り外し装置、破壊試験用又はダイナモメータ用ローラ試験台、、ホイールアライメントシステム等のようないずれかの自動車ショップサービス装置とともに又はこれらに内蔵されて用いられる。さらに、たとえタイヤトレッドの外輪郭が示され、下記の最も好適な実施形態の説明に記載されたとしても、上記の他の実施形態から明らかなように、本発明はこれらの特異的な実施形態に限定されるものではない。本発明の新規な原理は、タイヤの非装着状態又は装着状態で測定された様々なタイヤの位置の輪郭、及び、様々なタイヤ位置に対して支えられる様々な仮想装着エレメントを用いて適用される。このように、非常に様々なタイヤ又はホイール挙動は、本発明のシミュレーションにより測定される。
【0061】
本発明の第1の好適な実施形態は、図1とともに以下に記載される。
【0062】
図1は、非装着ホイールの半径方向断面の外輪郭の一部を示す。図1においては、X軸はホイール軸に平行な軸座標を意味し、Y軸はホイール軸に垂直な半径方向座標を意味する。描写部分はタイヤの側壁のトレッド表面及び部分を含む。
【0063】
本発明の方法によれば、図1に描写されたものに対応するホイールの一部を十分にスキャン及び測定できる。しかしながら、下記の本発明のさらなる開発において、少なくともタイヤの外輪郭の全体並びにタイヤ及びリムの接続部、すなわちリム端を測定することは可能であり、好ましい。さらに、リムの外輪郭の本質的な部分をスキャン及び測定することもできる。
【0064】
ホイール全周の非装着ホイールの外輪郭の測定においては、例えばホイールの外輪郭の三次元画像(モデル)を作製するために、スキャン装置がレーザビームによりホイール表面をスキャンするようにホイールが回転される。距離情報を作製し、スキャンされたホイール表面の三次元輪郭データを提供するレーザ装置は公知である。ホイール表面の光のラインを作製するフラット線形光線を用い、ホイール表面の輪郭により変形された光の線の画像を評価する他の光学スキャン装置も公知であり、本発明の目的に適切である。このような上記の光学スキャン装置は、半径方向断面につき検出点が数百又は数千の非常に高い精度でスキャンされたホイールの外輪郭を提供できる。ホイールの周方向においては、ホイールの外輪郭の十分な数の半径方向断面が測定できるように、数百又は数千のホイールの回転位置がスキャンされることが好ましい。
【0065】
非装着ホイールの外輪郭を測定した後に、ホイールへの仮想装着エレメントの装着がシミュレートされる。このために、例えばホイール軸に平行であることが好ましいL線により図1に示された1つの半径方向断面の外輪郭が得られる。しかしながら、例えば車両のホイールのポジティブチャンバ又はネガティブチャンバに起因する非対称装着をシミュレートするために、ホイール軸に平行でないL線を用いることもできる。このL線は、タイヤのトレッドに支えられる仮想装着エレメントの表面を意味する。言い換えると、トレッド溝の間のトレッド、すなわち陸地の最外部がL線と一致するように、タイヤトレッドの外輪郭がずらされ及び変形されると推測される。図1において小さな象徴的なばねで示された輪郭に沿ったそれぞれの部分のずれ量ΔLは、空間位置データの単純な幾何学的引き算により測定される。
【0066】
例えばタイヤのトレッド部分の内輪郭のようなタイヤの他の表面部分の輪郭も、上記のように用いることができるであろう。しかしながら、タイヤのトレッド部分を有する外輪郭が用いられる場合には、通常シミュレーション結果はより精密である。シミュレーション中にタイヤの外輪郭と内輪郭の両方が測定され、用いられる場合には、より良好なシミュレーション結果が達成される。このように、例えばタイヤ剛性に影響を及ぼす各タイヤ部分の壁厚が考慮される。タイヤ部分の内輪郭の測定は、リム上にタイヤを取り付ける前にタイヤの内表面をスキャンできるスキャンシステムによって達成される。所定の用途においては、リム上にタイヤを取り付ける必要は全くない。この場合、輪郭を測定するためには、タイヤ表面のみならずタイヤの内輪郭及び外輪郭の両方がスキャンされることが好ましい。次いで装着シミュレーションは、一方は仮想リムであり、他方は路面の装着ローラである2つの仮想装着エレメントをタイヤに装着するようシミュレートすることにより行われる。その結果、仮想リムは測定された輪郭のビード部分に支えられ、他の仮想装着エレメントは測定された輪郭のトレッド部分に支えられることが好ましい。
【0067】
タイヤに関するパラメータとしてタイヤトレッドに関する所定のばね定数K、特にトレッドの外輪郭の微小部分に関する微小ばね定数を用いて、外輪郭がL線に一致するまで微小トレッド部分をずらす必要がある微小力Fが計算される。このために、ばねのずれ又は変形ΔL、ばね定数K及びばねに適用される力Fの間の関係を記載するHookの法則F=K・ΔLが用いられる。
【0068】
トレッド輪郭が完全に伸ばされる程度までトレッドが変形されないため、変化されない陸地及び溝を有する詳細なトレッド構造を保持することが好ましい。むしろ、装着シミュレーションの計算はトレッド部分全体のずれ及びトレッドの湾曲をずらす又は除去する大きな変形を考慮する。装着状態の個々のトレッド輪郭部分のために計算された微小ずれ力Fを有し、L線に対してトレッド輪郭をずらす必要のある全体の力Fは、それぞれ合計又は積分により計算される。この計算は、数式F=Σ(K・ΔL)により表される。正確性を向上させるために、任意に、側壁に近接するトレッド部分の装着状態の軸ずれが考慮されるように、軸方向のトレッド変形を考慮することもできる。
【0069】
所定のばね定数Kは、標準状態用に選択された初期値とすることができ、又は、例えば幅、肩高さ、膨張圧力、タイヤタイプ(パンクプルーフタイヤ、ランフラットタイヤ等)のような公知のタイヤパラメータに従って計算される。これらのパラメータはオペレータにより入力され、装置により(例えばスキャン装置のスキャンデータを評価することにより)自動的に検出される。
【0070】
このように、L線で示された所定の範囲でホイールのタイヤトレッドをずらす仮想装着エレメントの総装着力Fは、非装着ホイールの測定された外輪郭の考慮された半径方向断面の各回転位置において測定される。
【0071】
次いで、仮想装着エレメントにより適用されたこの総装着力Fは、ホイールの外輪郭の対応する測定された半径方向断面を用いて、複数の回転位置において測定される。
【0072】
本発明の一実施形態によれば、ホイールの各回転位置におけるタイヤトレッドの擬似的なずれ、すなわちL線の位置は、一定の全体の力Fがホイールの全ての回転位置において達成されるように、変化及び設定されると、装着ホイールの周方向に沿って変化するホイールの回転軸に対するトレッドずれの変化及び/又は仮想装着エレメントの変化距離、すなわち半径方向振れが測定される。
【0073】
本発明の他の実施形態によれば、ホイールの回転軸に対するL線の位置、すなわち仮想装着エレメントとホイール軸との間の距離が一定に保持され、ホイールの全ての回転位置における全体の力Fが上記のように測定されると、装着ホイールの半径方向力変化が測定される。
【0074】
L線の位置が一定に保持される基礎を提供するために、ホイールの軸の位置が得られない場合に、トレッド全体(及びタイヤ及びリムの任意的追加部分)の平均外輪郭がスキャンデータから決定される。このように、ホイールの回転軸の位置はホイールの平均外輪郭から計算される。
【0075】
上記の実施形態の1つのホイール装着をシミュレートされた装着ホイールの挙動又は不均一性が決定される。
【0076】
上記のようにホイールの全ての回転位置における一定の力Fを有する装着をシミュレートされた、ホイール軸に対するL線の計算された(仮想装着エレメントの表面を示す)位置は、装着ホイールの半径方向振れを決定するために用いられる。これは、例えばホイールの回転軸の計算された位置に対するL線の距離の偏差の第1高調波を計算することにより行われる。距離偏差の第1高調波の強度(振幅)は装着ホイールの半径方向振れの基準である。ホイールの回転軸に対するL線の位置の距離のピークピーク差を計算することによっても装着ホイールの半径方向振れの基準を決定することができる。
【0077】
ホイールの全ての回転位置においてL線の位置とホイールの回転軸との間の距離を一定としてた装着をシミュレートされた、ホイールの各回転位置における仮想装着エレメントの計算された総装着力Fは、装着ホイールの半径方向力変化を測定するために用いられる。これは、例えば測定された全ての力の平均値からホイールの各回転位置に関する力Fの偏差の第1高調波を計算することにより行われる。力偏差の第1高調波の強度(振幅)は装着ホイールの半径方向力偏差(RFV)の基準である。ホイールの各回転位置に関する総装着力Fの偏差のピークピーク差を計算することによっても装着ホイールの半径方向力偏差の基準を決定することができる。
【0078】
本発明のさらなる開発においては、装着ホイールの横方向力変化又は横方向振れは上記のシミュレーション工程と類似の工程で任意に計測される。例えばホイールの中心面に対するタイヤの円錐状又は逆円錐状の非対称トレッド位置が測定される場合、理想の形状から非装着ホイールの計算された外輪郭の偏差が横方向力を生じるため、これは可能である。例えば装着ホイールの横方向力及び力変化及び/又は横方向振れは、非装着ホイールの測定された外輪郭に基づき、トレッド円錐特性についての所定の関係を有するタイヤトレッドに関する横方向(軸)ばね定数Kaを用いて測定できる。このような関係は、経験的に測定されてもよく、又は、このような非対称トレッド部分を有する装着ホイールの擬似的変形から導き出されてもよい。横方向力が駆動安定性、特に自動車の方向安定性に顕著な影響を及ぼすため、これは有用である。
【0079】
また、タイヤの周方向に作用する力は、本発明の装着シミュレーションにより測定される。ホイールの回転半径の変化は周方向力の変化を生じる。この周方向力の変化は、装着力の方向に対して実質的に垂直な方向でホイールの回転軸上に作用する輪郭力も発生する。
【0080】
さらに、装着状態のタイヤ挙動のより洗練された評価においては、軸方向のトレッド部分のずれを生じるホイール軸に平行でないL線の非対称の装及び/又はホイール軸に垂直でない方向の装着も考慮される。これは、例えば車両のサスペンションの幾何学的形状を考慮する。横方向ばね定数Kaは予め決められてもよく、ばね定数K及び/又は例えば幅、肩高さ、膨張圧力及びタイヤタイプのような他のタイヤパラメータから導き出されてもよい。
【0081】
上記の実施形態においては、タイヤトレッドに関するばね定数Kはタイヤトレッド上一面に一定であると推測される。これは、低い要求にとっては十分な精度のシミュレーション結果を提供する。
【0082】
本発明の他の実施形態の方法を促進し、シミュレーション結果の精度を向上するために、タイヤトレッドに関する所定のばね定数Kは、関連されたトレッド部分の軸位置に従って変化する微小ばね定数Kとして定義される。上記のようにL線に対してトレッド輪郭をずらす必要のある全体の力Fの計算は、数式F=Σ(K・ΔL)により表現される。このばね定数の変化は対応する荷重関数により達成される。このような荷重関数の例示が図2及び3に示され、X軸がミリメータ(mm)の中心タイヤ幅を意味し、Y軸がホイール幅の中心における1に正規化された重み係数を意味する。
【0083】
このような重み係数に関しては、装着シミュレーションの精度の向上において、タイヤ剛性及びばね定数に対するトレッドの軸方向の端部の強い影響が考慮される。トレッドの端部がずらされた際に変形されるタイヤの側壁の影響のため、トレッドの軸方向の端部は一般により硬く、すなわちより高いばね定数を有する。これは、ホイールの各回転位置の考察された横方向断面に隣接した外輪郭の横方向断面に類似する、後に装着エレメントに通常係合するタイヤトレッドの端部のより強い(より高い)ばね定数、すなわちより大きなトレッドのずれ及びより高い総装着力により補われる。
【0084】
さらに、上記実施形態から独立した態様においては、タイヤトレッドに関する所定のばね定数Kは、非装着ホイールの関連するトレッド部分の半径方向位置に従って変化する微小ばね定数Kとすることができる。ばね定数の変化は対応する荷重関数(示していない)により達成される。前段落に記載された荷重関数に類似のホイールの外輪郭の隣接する半径方向断面の貢献に対する補償効果のほかに、タイヤ構造の不均一性から生じる真円の周囲からのタイヤ輪郭の偏差は、装着シミュレーションの精度向上に考慮される。このようなタイヤ構造における不均一性はタイヤ剛性変化を生じる。したがって、トレッド部分の非装着半径方向位置と関連するばね定数との間には、非装着タイヤのトレッド部分の半径方向位置に従ってばね定数を変化する荷重関数を考慮する関係がある。
【0085】
さらに、本発明のさらなる開発においては、所定のばね定数は、擬似的装着により生じるタイヤトレッドのずれに従って変化する非線形微小ばね定数とすることができる。このように、初期のトレッド部分のずれ(すなわち小さなずれ)がタイヤ材料の局所的な幾何学的変形により主に影響を受け、トレッドの大きなずれに関して、タイヤの膨張圧力及びタイヤの側壁変形のような他の要因が異なる強度の影響を持つことに対する補償を提供する。このように、装着シミュレーションの精度が向上される。また、このばね定数変化は対応する荷重関数により達成され、総装着力Fの一部を支えるホイールの外輪郭の隣接する半径方向断面の貢献のような上記のいくつかの態様を補える。
【0086】
もちろん、ホイール装着の現実的状態によりよく応じるために、上記荷重関数の組み合わせが用いられる。仮想装着エレメントにより生じるタイヤ部分のずれから得られる力を計算するために、タイヤに関するパラメータとして上記ばね定数以外の他のパラメータを用いることもできる。このような他のパラメータの例示は、所定の条件が満たされるまで、仮想装着エレメントにより生じる輪郭のずれの主要因とされる。このような条件は、例えばタイヤの周囲の安定的な半径方向力変動値の到達、第1高調波の取得又は第1高調波の除去、あるいは、より高い高調波の除去であってもよい。シミュレーションアルゴリズムは、任意の条件に依存する輪郭の任意のずれを考慮できる。
【0087】
本発明のさらなる実施形態においては、ホイールの外輪郭を測定するステップは、リムの半径方向振れ及び/又は横方向振れを測定するステップを含む。このために、少なくともタイヤの外輪郭及びリムの一部、特にリム端がスキャンされ、測定されることが好ましい。タイヤビードの位置は、リム端の測定された位置に基づいて決定される。このように、リムの半径方向又は横方向振れは装着シミュレーション中で考慮される。リムの半径方向又は横方向振れの知見は、非装着ホイールの測定された外輪郭上又は装着ホイールの測定された不均一性上のリムの効果及びタイヤの効果を分離することができる。これは、装着シミュレーションの精度を向上させ、さらには、例えばリム/タイヤ組立品の半径方向又は横方向振れを低減又は除去するために、リム/タイヤ組立品の取り付け直し角位置が測定される。
【0088】
図6は本発明の上記実施形態の1つの装着ホイールの測定された挙動又は不均一性の一例である。図6のダイアグラムにおいては、ASSYで示された線はホイール、すなわちリム/タイヤ組立品の測定された半径方向振れを意味する。RIMで示された線はホイールリムの測定された半径方向振れを意味する。TYREで示された線は例えばASSY線及びRIM線から引き算により計算されたリム/タイヤ組立品の半径方向振れに対するタイヤの貢献を意味する。FVmmで示された線は、リム振れ及びタイヤ振れから計算され、半径方向力変化に対するリム及びタイヤの各貢献を考慮したホイール(リム/タイヤ組立品)の半径方向力変化を意味する。このために、一般的にリムのばね定数がタイヤのばね定数よりも非常に高く、通常の力でホイールが実施的なリム変形を生じないため、必要でない場合でさえも、リムばね定数がさらに考慮される。FV1hで示された線は半径方向力変化の計算された第1高調波を意味する。この第1高調波は半径方向力変化に対する標準的基準を決定するために用いられる。他の可能性は、すでに上記したように、半径方向力変化に対する基準としてピークピーク値を用いる。
【0089】
本発明のさらなる開発においては、ホイールの隣接する複数の半径方向力断面の測定された外輪郭は、仮想装着エレメントとタイヤトレッドとの間の接触領域を考慮することによりホイールの装着をシミュレートするために用いられる。このように、装着によるより現実的なタイヤ変形に基づき、さらに正確な装着シミュレーションが達成される。このように、異なる形状の仮想装着エレメントのホイールへの装着がシミュレートされる。このため、ホイールの隣接するいくつかの半径方向断面の測定された外輪郭が用いられ、例えば図4及び5に示された荷重関数とともに考慮される。図4及び5におけるダイアグラムはタイヤの各トレッド部分に関するばね定数Kに適用された荷重関数を示し、X軸は仮想装着ローラの周方向の接触領域の角度(度)を意味し、Y軸は接触領域の中心における1に正規化された荷重値を意味する。
【0090】
本発明の他の実施形態によれば、タイヤトレッドと仮想装着エレメントとの間の接触領域内において、異なるトレッド部分の異なるずれ及び/又は異なる接触領域は装着シミュレーションにおいて考慮される。例えば仮想装着エレメントのために異なる直径を有する装着ローラが用いられる。仮想装着エレメントのためにフラット面を用いることもできる。このような面は路面を意味する。これは、路面を走行するホイールの現実的な操作状況に近似するホイールの装着をシミュレートすることができる。接触領域のシミュレーションを用いるこの方法において、シミュレーションをさらに促進し、結果の精度を向上するためには、図2〜5に関する上記の1以上の適切な荷重関数が付加的に用いられる。
【0091】
本発明の他の実施形態によれば、リムとリムに取り付けられたタイヤとを備えた装着ホイールの挙動又は不均一性を測定するシステムが提供される。このシステムは、タイヤ又はホイールの表面をスキャンするスキャン装置と、スキャン装置に連結自在なコンピュータとを備える。このように、スキャン装置及びコンピュータは分離された装置とすることができる。例えばスキャン装置を装置に追加し、装置に本発明の方法を行わせる追加ソフトウェアの追加により装置にすでに存在するコンピュータを促進することによって、ホイールアライナー又はタイヤチェンジャーのような現在の車両ホイールサービス装置をアップグレードすることもできる。
【0092】
コンピュータはスキャン装置を制御し、ホイールの表面輪郭を表す三次元データをスキャン装置から受容する。コンピュータは初期値を用い、装着シミュレーション及び装着ホイールの挙動又は不均一性の測定を行うために必要なパラメータのために測定され又は入力された値を使うことができる。このようなパラメータは例えばタイヤの膨張圧力、リム及びタイヤの大きさ、リム及びタイヤのタイプ、及び、タイヤトレッドの平均ばね定数Kである。コンピュータは、初期値を変化又はばね定数に適用される荷重関数を変化することによって、上記パラメータのタイヤトレッドに関するばね定数を修正できる。このように、非常に精密なシミュレーション及び測定された挙動又は不均一性の非常に正確な値が達成される。
【0093】
本発明の他の実施形態によれば、上記の本発明のシステム及び方法は車両サービス装置内で統合される。このように、非常に便利で費用対効果に優れた装着ホイールの挙動又は不均一性を測定する方法及び装置が提供され、サービス装置により行われるサービス操作中に測定結果が用いられる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6