特許第6006323号(P6006323)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6006323
(24)【登録日】2016年9月16日
(45)【発行日】2016年10月12日
(54)【発明の名称】電子発振回路
(51)【国際特許分類】
   H03L 7/07 20060101AFI20160929BHJP
   H03L 1/02 20060101ALI20160929BHJP
【FI】
   H03L7/07
   H03L1/02
【請求項の数】13
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-538741(P2014-538741)
(86)(22)【出願日】2012年9月20日
(65)【公表番号】特表2014-533015(P2014-533015A)
(43)【公表日】2014年12月8日
(86)【国際出願番号】NL2012050666
(87)【国際公開番号】WO2013066161
(87)【国際公開日】20130510
【審査請求日】2015年4月17日
(31)【優先権主張番号】2007682
(32)【優先日】2011年10月31日
(33)【優先権主張国】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】514107831
【氏名又は名称】アンハーモニック ビー.ヴイ.
【氏名又は名称原語表記】ANHARMONIC B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 正悟
(72)【発明者】
【氏名】モンターニュ,アントニウス ヨハネス マリア
【審査官】 橋本 和志
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第04227158(US,A)
【文献】 特開平02−170607(JP,A)
【文献】 特開平04−363913(JP,A)
【文献】 特開平04−068903(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03L1/00−7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子発振回路は、
− 第1制御信号に応じて第1発振周波数を持つ第1発振信号を供給する第1発振器と、
− 第2制御信号に応じて第2発振周波数を持つ第2発振信号を供給する少なくとも1つの第2発振器と、
− 自分への第1の制御入力および第2の制御入力の位相差の関数として前記第1制御信号を送る第1制御器と、
− 自分への第1の制御入力および第2の制御入力の位相差の関数として前記第2制御信号を送る第2制御器と、
− 発振素子と、を備え、
前記発振素子は、少なくとも、
− 第1励起信号の周波数との周波数差に応じた第1位相シフトを有する第1共振周波数と、
− 第2励起信号の周波数との周波数差に応じた第1位相シフトを有する少なくとも第2共振周波数と、を備え、
− 前記第1発振信号は、前記第1制御器の前記第1の制御入力へフィードバックされるとともに、前記発振素子を介して前記第1制御器の前記第2の制御入力へフィードバックされ、
− 前記第2発振信号は、前記第2制御器の前記第1の制御入力へフィードバックされるとともに、前記発振素子を介して前記第2制御器の前記第2の制御入力へフィードバックされ、
− 少なくとも前記第1発振信号および前記第2発振信号を受信し、前記第1発振信号および前記第2発振信号の相互比を決定し、予め記憶されているテーブル内の周波数補償係数を検索して、補償された発振信号を出力する処理手段を有する、ことを特徴とする電子発振回路。
【請求項2】
前記第1および少なくとも第2発振周波数はフィルタされ、少なくとも部分的に分離されたフィードバック・チャネルを通してフィードバックされる、請求項1に記載の電子発振回路。
【請求項3】
少なくとも1つの前記発振器はダウンコンバータを備える、請求項1または2に記載の電子発振回路。
【請求項4】
少なくとも1つの前記制御器はミキサ、特に線形ミキサを備える、請求項1から3のいずれかに記載の電子発振回路。
【請求項5】
フィードバック・チャネルは分周器、特にIQ分周器を備える、請求項1から4のいずれかに記載の電子発振回路。
【請求項6】
少なくとも前記分周器の出力を少なくともサイン波または三角波へ波形整形する波形整形回路を備える、請求項5に記載の電子発振回路。
【請求項7】
前記制御信号内の高調波のフィード・レベルを低減するフィルタを備える、請求項1から6のいずれかに記載の電子発振回路。
【請求項8】
前記フィルタはスイッチドキャパシタフィルタのような帯域除去フィルタである、請求項7に記載の電子発振回路。
【請求項9】
前記制御発振器の出力の不要成分を除去するために、前記ミキサと前記発振器間の信号をリサンプリングする手段を備える、請求項1から8のいずれかに記載の電子発振回路。
【請求項10】
前記処理手段は温度校正テーブルを備える、請求項1から9のいずれかに記載に電子発振回路。
【請求項11】
前記発振素子は少なくとも第3共振周波数を備え、前記発振回路はさらに少なくとも第3制御発振器を備える、請求項1から10のいずれかに記載の電子発振回路。
【請求項12】
前記発振素子は少なくとも第4共振周波数を備え、前記発振回路はさらに少なくとも第4制御発振器を備える、請求項1から11のいずれかに記載の電子発振回路。
【請求項13】
発振信号を生成する方法は、
− 第1制御信号に応じて第1発振周波数を持つ第1発振信号を供給するステップと、
− 第2制御信号に応じて第2発振周波数を持つ第2発振信号を供給するステップと、
− 第1制御器の第1の制御入力および第2の制御入力の位相差の関数として前記第1制御信号を送るステップと、
− 第2制御器の第1の制御入力および第2の制御入力の位相差の関数として前記第2制御信号を送るステップと、
− 少なくとも、第1励起信号の周波数との周波数差に応じた第1位相シフトを有する第1共振周波数および第2励起信号の周波数との周波数差に応じた第1位相シフトを有する第2共振周波数を発振素子に供給するステップと、
− 前記第1発振信号は、前記第1制御器の前記第1の制御入力へフィードバックされるとともに、前記発振素子を介して前記第1制御器の前記第2の制御入力へフィードバックされるステップと、
− 前記第2発振信号は、前記第2制御器の前記第1の制御入力へフィードバックされるとともに、前記発振素子を介して前記第2制御器の前記第2の制御入力へフィードバックされるステップと、
− 前記第1発振信号および前記第2発振信号を受信するステップと、
− 前記第1発振信号および前記第2発振信号の相互比を決定するステップと、
− 予め記憶されているテーブル内の周波数補償係数を検索するステップと
− 補償された発振信号を出力するステップと、
を備えることを特徴とする方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子発振回路およびその回路動作方法に関する。特に、本発明は低減された温度特性を有する電子発振回路に関する。
【背景技術】
【0002】
電子発振回路は一般に、発振を生じさせるあるいは共振状態を生じさせ発振を生じさせることができる素子を備える。これらの発振は電子回路内において周波数基準、または時間基準として使用することができる。要求精度が高くなればなるほど、発振回路には高い精度が求められる。
【0003】
発振回路の精度は、発振器あるいは発振素子の精度に強く依存するため、この技術分野における周波数および時間基準は、十分に絶対的に定義される材料特性に基づいて構成される。そのような例として、その周波数精度が原子エネルギレベルから得られるセシウムおよびルビジウム発振器がある。しかし、これらの素子は相対的に高価である。
【0004】
安価な基準素子として精度が劣る水晶振動子が利用できる。水晶振動子は電子回路での使用が容易であり、自然界で見つかる水晶は十分に高純度であり、良好な共振特性を示す。溶融して製造する際に、純度は完璧に近づき、多くの望ましくない影響(ノイズおよび経年変化)がほぼ皆無となる。水晶振動子は圧電効果を有するため、水晶振動子の駆動は簡易である。すなわち、電子回路を用いて水晶の正確な機械的振動特性を引き出し、読み取ることが容易である。
【0005】
このような低精度の代替品は、集積回路製品に由来して得られる。マイクロ電気機械システム(MEMS)は、電子部品と共に集積化されて機械的に振動するコンポーネントとすることができる。
【0006】
水晶振動子およびMEMS発振素子は安定性に、特に温度特性に限界がある。その温度係数の精度は、−40℃から125℃の温度範囲において数10ppm(1ppmは100万分の1)のオーダであり、セシウムおよびルビジウム発振器における数ppt(1pptは10の12乗分の1)またはいわゆる粒子線(particle fountains)(0.001pptオーダ)の精度とは比較にならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この技術分野では、主に水晶振動子の温度係数を補償することが知られている。製造段階において発振素子と発振回路の温度特性偏位を確定し、偏位を訂正するために使用する補償テーブルとして記憶する。異なる温度を測定し、外付けキャパシタンスを用いて対応する水晶振動子の周波数偏位を補償しようと試みる補償方法が知られている。しかし、仮に測定素子が水晶振動子に密着されている場合には、水晶振動子に新たな温度効果をもたらす。仮にそうでない場合は、2つの素子間にダイナミックな応答を制限する温度差が存在することになるだろう。いずれの場合も精度が損なわれる。
【0008】
ここで経年変化は複雑な要因であるが、プリ・エージングおよび一般に純粋な材質で動作することで限定的に留めることができる。MEMS使用時には、純度は製造では殆ど問題とならず、密封封止を低コストで実現することができる。
【0009】
温度特性を補償することで、水晶振動子およびMEMS発振素子は数ppb(1ppbは10の9乗分の1)の範囲に移動する。
【0010】
本発明の目的は、前述の欠点を除去する電子発振回路を提供することであり、そのような回路が動作する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の電子発振回路は、第1制御信号に応じて第1発振周波数を持つ第1発振信号を供給する第1発振器と、第2制御信号に応じて第2発振周波数を持つ第2発振信号を供給する少なくとも1つの第2発振器と、自分への第1の制御入力および第2の制御入力の位相差の関数として前記第1制御信号を送る第1制御器と、自分への第1の制御入力および第2の制御入力の位相差の関数として前記第2制御信号を送る第2制御器と、発振素子と、を備え、前記発振素子は、少なくとも、第1励起信号の周波数との周波数差に応じた第1位相シフトを有する第1共振周波数と、第2励起信号の周波数との周波数差に応じた第1位相シフトを有する少なくとも第2共振周波数と、を備え、前記第1発振信号は、前記第1制御器の前記第1の制御入力へフィードバックされるとともに、前記発振素子を介して前記第1制御器の前記第2の制御入力へフィードバックされ、前記第2発振信号は、前記第2制御器の前記第1の制御入力へフィードバックされるとともに、前記発振素子を介して前記第2制御器の前記第2の制御入力へフィードバックされ、少なくとも前記第1発振信号および前記第2発振信号を受信し、前記第1発振信号および前記第2発振信号の相互比を決定し、予め記憶されているテーブル内の周波数補償係数を検索して、補償された発振信号を出力するプロセッサを有する。
【0012】
第1共振周波数と少なくとも第2共振周波数とを備える発振素子は「マルチ・モード」発振素子と呼ばれる。共振周波数(あるいはモード)を同時に開始することができる場合には、発振素子は連続デュアル・モード発振素子に該当する。このようなアプローチでは、2つの共振を発振素子の同一温度箇所で同時に測定することができる。
【0013】
水晶振動子の異なる発振モードの温度効果は一致しない。結果として、同時モードの相互比が変化する。本発明では、この効果を発振素子の温度を決定するために使用し、一度温度が決定されると、その温度で発生することが知られている偏位を補償するために使用する。測定した相互比の補償係数を提供するために予め記憶した補償テーブルを用いて、プロセッサが補償を開始する。本発明の場合、相互比の変化は温度変化によって発生させられると仮定している。しかし、恐らく外部圧力等の他の外部要因を考えることができる。
【0014】
この方法の利点の1つは別素子である温度センサーの使用を不要とすることである。従来技術での不都合、すなわち発振素子に隣接あるいは近接する必要がある温度センサー、発振素子上にまたは近接する必要があるバリキャップ、または周波数選択素子(フィルタ)等の素子のために、1つのチップに集積化することが困難であるという不都合を解消する。
【0015】
デュアル・モードの使用には問題がある。発振素子はそれぞれの温度で固有の共振周波数を有するようなモードが多数存在する。例えば、第3高調波が他の第3高調波の1つによって干渉される幾つかの事例では、この効果は恐らく僅かである。しかし、正確な解を十分に制限できる程度に重要である。この現象が発生する周波数は、実際に特別なアクティビィティであるため、少し奇妙な名称であるが、アクティビィティ・ディップと呼ばれる。この問題を解消するために、恐らく第3のモードが適用される。
【0016】
本発明は周波数比の決定に基づくものであるため、その性能は正確な周波数を決定する能力に関係している。一般に、電子回路内の非線形関数は、複数周波数の混合を正確かつ確実に測定することを困難にする。この理由、および雑音軽減等の他の理由から、発振周波数を分離すること、および複数周波数の混合を可能な限り確実に避けることが望ましい。
【0017】
この分野では、フィルタ手段、典型的には選択した発振モード上に共振周波数を有する2次あるいは高次LCフィルタ等のフィルタ手段を用いて周波数分離を行う。実際の発振素子にとって、この共振周波数は相対的に低く、このため、扱い難い、非集積化コンポーネント、フィルタの温度係数、経年変化等の問題が次々と暗示される。これらの全てに対して高次のロバストネス性を有する解決策を設計することは困難である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ダウンコンバータを適用することでこの問題を解決する。ダウンコンバージョン・プロセスでは、所望の信号を別の周波数、例えば低IF、あるいはDC信号にさえ変換する。他の信号を異なる周波数に変換することで、十分な分離を得る。ダウンコンバータはローパスフィルタ、あるいは単一信号に対する大きな選択性を得るように2次の低速度IF−DCフィルタと組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本発明を以下の図面を参照してより詳細に説明する。
図1】従来技術の発振素子モデルの回路図である。
図2】実施形態の温度補償を有しない単一モード発振回路のブロック図である。
図3】本発明の第1の実施形態の発振回路のブロック図である。
図4】本発明の発振回路のスペクトラム図である。
図5】本発明の高調波ミキサを有する発振回路のスペクトラム図である。
図6】補償機能制御における再標本化回路の回路図である。
図7】本発明の補償回路を有する発振回路のブロック図である。
図8】補償信号を出力するプロセッサのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1はこの分野における発振素子のモデルを示す。モデルは単一の基本周波数、単一の第3高調波、単一の第5高調波を備え、並列キャパシタンスが存在する。このキャパシタンスを発振の一部(並列共振)とすることも、あるいはそうでないようにすること(直列共振)も可能である。高調波は、調和高調波であり、このモデルを本発明に適用しにくくする。実際に、Rs1と直列なキャパシタンスの値はRs1≒Cs/3、Rs3と直列なキャパシタンスの値はRs3≒Cs/9、等となる。
【0021】
図2は、本出願人の別出願における、温度補償を有しない単一モード発振回路のブロック図を示す。本図はダウンコンバージョン発振器の一例を示す。発振素子は、フィードバックシステムが現在の正確な位相同期点を探し出し、その点において共振周波数が「見いだされる」、周波数依存型の位相シフトであることが基本である。ミキサはその入力が90度位相シフトした安定状態の解を必要とする。しかし、一般の発振素子では、共振時の発振素子の位相シフトは0度である。特別な90度位相シフトを得るためにIQ分周器を使用する。
【0022】
図3は、本発明におけるマルチ・モード発振回路の第1の実施形態のブロック図を示す。図2に示す回路と対照すると、図3のブロック図のほぼ全ての回路が、互いに他の発振と相互分離するように2重化されている。図示した例では、「マルチ」は「2重」と解釈すべきである。しかし、本発明によれば、より多くのモードを考慮することができ、その場合には、より多くの並列ブロックが存在する。
【0023】
ダウンコンバージョンは選択された共振周波数で動作する信号を必要とする。発振素子内部へエネルギ源として共振信号を供給する必要があるため、いずれにしてもこの信号が生成される。しかし、ダウンコンバージョンとしての機能を付与する2つの信号に対して、実際に生成される周波数は恐らくより高周波である。簡易な分周器は正確な共振周波数上の信号を得ることができるだろう。分周器は周波数を4分周するために(直交変調は信号および90度位相シフト信号を生成し、このため目標周波数の1/4となる)使用する。出力信号が選択された共振周波数に一致するように分周される高周波発振器を使用することができる。この可能性が全解決手段の統合の容易さを増加させる。
【0024】
ブロック図に図示されているように、発振素子は相対的に簡易な印加点(重畳点)を持つ信号入力側に接続される。例えば、情報伝搬手段として電流を選択することで印加点は簡単な接続となる。
【0025】
ミキサの使用は大変魅力的である。しかし、図示した構成ではそれにもかかわらず依然として詳細な選択課題が存在する。例えば、雑音の観点からはスイッチング・ミキサの使用が魅力的である。線形ミキサは常時オン動作するトランジスタを用いるため、雑音が増加する。しかし、スイッチング・ミキサは(線形ミキサにはサイン波信号がフィードバックされると仮定した場合の)線形ミキサよりも高調波成分の除去性能が劣る。このため周波数測定を妨害する特に出力の位相雑音、および/または、ジッタの形でシステム内に性能制限をもたらし、相対的に長時間の測定時間を強いることになる。
【0026】
図4は本発明による発振回路のスペクトラムを示す。本図では、基本周波数と基本周波数の概略3倍の周波数のいわゆる第3高調波の2つのモードが動作する。共振周波数の品質は他の全成分をフィルタして除去する程度に高品質であり、実際に十分にもっともらしく、発振周波数は完全なサイン波形であると考えて差し支えないだろう。
【0027】
図5は、本発明における高調波ミキシングを有する発振回路のスペクトラム図を示す。f1発振周波数での最良な位相雑音が必要となる場合には、f1ミキサの後段で何が発生するかを考慮する必要がある。図示の例は、片側側波帯にブロック信号を持つスイッチング・ミキサであり、f1は単一の強度、しかし3×f1は依然として通常強度の1/3である(これはブロック信号のフーリエ級数に相当する)。しかし、ミキサは入力f3を3×f1信号(1/3の強度)と混合し、(高調波が「オフ・グリッド」された)ビート周波数に変換する。
【0028】
上図に図示されたスペクトラムの結果において、ミキサ内での3倍弱い駆動の結果として、3×f1―f3は今や小さなスペクラム成分となる。しかし依然として大きく、フィードバックループあるいは周波数測定において抑制することは、高調波の距離によっては恐らく困難であろう。
【0029】
本発明によれば、この挙動を改善する複数の解決手段がある。
− スイッチング・ミキサを線形リニアに変更する方法。この方法は、よりサイン波に近似するようIQ分周器からI信号を生成することである。三角波のフーリエ級数は真に理想的(第3高調波は基本周波数の1/9)となるため、好ましい第1ステップは三角波を生成することとなるであろう。勿論、三角波の生成およびサイン波整形の使用は、より高性能を実現するだろう。
− 発振素子を低レベルで駆動することによって、発振素子内の第3高調波エネルギを低減する方法。この低減は直接的ではあるが、恐らく高次高調波が出力周波数の生成の元になっているため、多分真に魅力的とは言えない。
− 高調波の帯域除去フィルタを使用する方法。f1フィードバックはフィルタを用い、このフィルタはビート成分の伝搬低減の用途に拡張できる。フィルタは例えばスイッチドキャパシタフィルタによって簡便に構成可能である。
− ビート成分が測定を妨害しないようf1上で出力周波数の測定を駆動する方法。最も好適な方法は電流ビートを算出し、測定期間を相対的に正確な複数のビート期間に調整し、再度測定することである。
【0030】
不要成分の抑制によって正確さを大きく損なうことがないように周波数測定を制御する方法は実にシンプルである。しかし、アナログ領域で行わなければならないため、制御発振器の出力上での不要成分の抑制は大変困難である。デュアル・モード発振器では、ビート・レートでのリサンプリングが、妨害波を完全に除去するため好適となるであろう。しかし、恐らくビート周波数は非常に低周波であり、全体ループの雑音特性を恐らく損なうし、デュアル・モードにのみ限定されたものであるため、最大効率ループ帯域幅を制限する。図6の回路はこのことに対して良い解を与えることができる。
【0031】
図6は比較器機能の制御下でリサンプリングを発生させる方法を図示している。比較器の1つの入力はミキサ後方での不要成分を含む生の信号であり、第2の入力も同じであるが低周波成分がフィルタされている。ゼロ交差上で比較器は、不要成分を意味するゼロ交差付近でのふらつきがサンプルされず、通過しない信号パスを形成する。この回路の最大の利点は、発振器内において使用される最も低いモードの最小レートで、恐らくはより高い頻度で実際に発生するところのゼロ交差が存在するだけということにある。サンプリングは不要成分を除去するだけであり、コーナ周波数等を有するこの回路がさらに伝搬させて影響を及ぼすことがないため、多分に予期不能なサンプリングは無害である。このようにして、この回路を通過する帯域は厳格に制限される。
【0032】
ミキシングのさらなる利点は、f3ループでのミキシングがよりクリーンである点である。そこでは、発振素子からの信号は依然として非常にクリーンであり、IQ分周器からのI信号は1/3f3を含まないが、3f3、5f3等を含む。この点において、このループでのミキシングはクリーンである。しかしながら、我々は次のレベルの妨害に遭遇する。発振素子は、キャパシタンスがf1で駆動されて、並列キャパシタンスを恐らく相対的に直交信号の形で搬送する。共振信号は駆動信号と比較して大きく、駆動信号は発振素子を共振励起する程度に小さい値だろう。しかし、直交信号は存在するだろう。仮に駆動信号が直交信号であるなら、その第3高調波は基本周波数の1/3となり、そのため、係数3は共振励起係数と混合し、依然として出力妨害となるだろう。
【0033】
以下に値の概要を示す。20MHz水晶振動子の第5高調波は10ns周期で発振する。しかし通信標準では12kHzから80MHz帯域で可能な限り低い位相ノイズ、例えば0.1psRMSとする必要がある。この一部だけが発振器に配分されるだろう。構造的効果(高調波)に焦点を当てていることから、10%の配分が許容可能であり、10fsとなる。この値はRMS表示であり、2の平方根から少なくとも3dBとなる。しかし係数100万(10ns/10fs)を考慮する必要があるため、120dBとなる。仮にRMSから3dB、直交信号における第3高調波部分から9dB、そして恐らく発振素子励起からの50dBを考慮すると、依然として60dBの小さい値が必要となる。
【0034】
図7は本発明による補償回路を有する発振回路を示す。ここで、並列キャパシタンス自体の存在を補償する。C補償の必要サイズは、イメージ抑圧ミキサ、およびC補償をバリキャップによって実現するところの小さな制御ループを用いて決定できる。その制御電圧は、ミキサで実現できる増幅度に合うように計算する。
【0035】
図8は補償信号を出力するためのプロセッサを示す。ここで、安定周波数を生成するために高調波を考慮し使用する。周波数を測定し、インターポーレーション/ラインマッチング計算によって訂正値の大きさが幾つであるべきかを決定するために校正テーブルを使用し、訂正値を出力周波数シンセシスに送信する。
【0036】
この方法は相対的に自明な方法であり、過去のデュアル・モード発振器において何度も適用されている。安定基準信号とマルチ・モード周波数との周波数差をモニターする間、温度サイクルを行う多量バッチ式による発振素子の校正ステップである。
− 校正フェーズにおいて、新マルチ・モード発振器の特別に大きな利点が明らかになる。発振素子は恐らくアクティビィティ・ディップを有し、実際に実現可能な精度を制限する。そのようなディップにおいて、マルチ・モード周波数の1つの周波数では発振素子が実際に動作し、他のモードはアクティビィティ・ディップで動作し、周波数特性がビット・エラーとなるという問題を生じるだろう。新マルチ・モード発振器においてこれを消去する方法には2つある。
− トリプル・モード発振器を使用し、周波数が信頼できない校正を留意する。これらの周波数では補償アルゴリズムはその周波数に関連するモードを使用すべきではなく、他の2つのみを使用すべきである。
− 少なくとも4重モード発振器を使用し、少し異なる温度で周波数が校正点に一致しないで動作することに留意する。この一致点は簡単な多項式インターポーレーションを用いて発見することができ、所望の性能レベルを超えるエラーを有する数個のポイントを探すことができる。それらの点をドロップすることができる。
【0037】
実際、最初の方法は、第2の方法と同様に、4つの周波数を使用する。第4周波数は校正での安定基準周波数によって実際に生成されることを特に理解する必要がある。このため校正段階で「奇妙な振る舞いをする周波数」が文字通り留意される。両方法ともハミング距離2のエラー検出・訂正が必要となる情報理論に基づく。本発明の方法によれば高精度訂正のためには少なくとも2つの良好な周波数が必要となるだけであり、他の2つはエラー検出・訂正のための余分な周波数となる。
【0038】
この方法の他の側面はモード間の良好な抑制を得ることができ、短時間で良好な解が得られることである。例えば、仮に全モードが他モードから多数のジッタを伝搬する場合には、補正のために必要な高精度周波数の獲得には、ジッタの平均値算出に時間がかかる。そして、このことは、補正を実行できる最高速度を直接制限し、このため温度変動が続くような速度に制限する。
【0039】
前述の実施例は例示を示すのみであり、本発明の請求項に規定した特許請求の範囲を限定するものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8