特許第6006590号(P6006590)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6006590ポリアセタール樹脂組成物、成形体および水回り物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6006590
(24)【登録日】2016年9月16日
(45)【発行日】2016年10月12日
(54)【発明の名称】ポリアセタール樹脂組成物、成形体および水回り物品
(51)【国際特許分類】
   C08L 59/02 20060101AFI20160929BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20160929BHJP
   C08L 71/02 20060101ALI20160929BHJP
   C08L 77/00 20060101ALI20160929BHJP
   C08L 79/08 20060101ALI20160929BHJP
【FI】
   C08L59/02
   C08K3/22
   C08L71/02
   C08L77/00
   C08L79/08 Z
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-196677(P2012-196677)
(22)【出願日】2012年9月6日
(65)【公開番号】特開2014-51586(P2014-51586A)
(43)【公開日】2014年3月20日
【審査請求日】2015年7月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】594137579
【氏名又は名称】三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129296
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 博昭
(74)【代理人】
【識別番号】100143764
【弁理士】
【氏名又は名称】森村 靖男
(72)【発明者】
【氏名】山田 隆介
【審査官】 井津 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/111823(WO,A1)
【文献】 特開2000−026703(JP,A)
【文献】 特表2005−503477(JP,A)
【文献】 特開平07−150005(JP,A)
【文献】 特開平05−222268(JP,A)
【文献】 特開2013−032416(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対して、水酸化マグネシウムを含有する水酸化マグネシウム含有粒子(B)が、0.5〜2質量部、ポリエチレングリコール(C)が〜5質量部、ポリアミド樹脂(D)が0.01〜質量部配合され、
前記水酸化マグネシウム含有粒子(B)の平均粒子径が1.5μm以下であり、前記水酸化マグネシウムのBET比表面積が102/g以下であり、
前記ポリエチレングリコール(C)の数平均分子量が15,000〜25,000であり、
前記ポリアミド樹脂(D)のアミン価が2.0〜6.9mgKOH/gである、ポリアセタール樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリアミド樹脂(D)が、重合脂肪酸系ポリアミド樹脂及びポリアミドエラストマーからなる群より選ばれた少なくとも一種のポリアミド樹脂である、請求項1に記載のポリアセタール樹脂組成物
【請求項3】
さらにポリカルボジイミド化合物(E)が0.01〜2質量部配合された請求項1又は2に記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜のいずれか一項に記載のポリアセタール樹脂組成物を成形してなる成形体。
【請求項5】
成形体を有する水回り物品であって、
前記成形体が、請求項に記載の成形体で構成され、
前記水回り物品が、スプリンクラー、ポンプ、コンベヤーベルト、スプレー、配管材、ワッシャー、蛇口、栓、シャワーヘッド、塩素系漂白剤若しくは塩素系洗剤の容器、又は、湯沸器、食器洗浄器、水道メーター、浄水器、整水器、散水器、洗濯機、貯水槽若しくは浄化槽、又は、浴室用備品、洗面所用備品、トイレ用備品若しくは台所用備品で構成される、水回り物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリアセタール樹脂組成物、成形体および水回り物品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアセタール樹脂は機械的特性、熱的特性、電気的特性、摺動性、成形性などのバランスに優れ、構造材料や機構部品などとして電気機器、自動車部品、精密機械部品などに広く使用されている。
【0003】
近年、ポリアセタール樹脂の用途はさらに拡大しており、ポリアセタール樹脂は、例えば浴室の壁材、浴室の床材、トイレ用備品、台所用備品、洗濯機、スプリンクラー、コンベヤーベルト、ポンプ、配管材などの水回りの物品の成形体として広く使用されるようになっている。これらの水回り物品は、例えば残留塩素を含む水道水、塩素系の消毒剤、殺菌剤、洗剤または漂白剤等の塩素系化合物を含む水に長時間接触しながら使用されることがある。ポリアセタール樹脂が使用された成形体が塩素系化合物を含む水に長時間接触しながら使用されると、ポリアセタール樹脂が分解し、成形体内部からガスが発生して泡状の膨らみ(いわゆるバブル)が生じたり、白化が生じたりする。成形体表面にバブル又は白化が生じると、成形体の外観が不良になったり、成形体の劣化が加速度的に促進されて機械的特性が低下したり、バブル又は白化が生じた箇所を起点にして成形体が破壊するリスクが高くなったりする。そのため、ポリアセタール樹脂に、塩素系化合物を含む水に対する耐久性を付与することが望まれており、そのために種々の提案がなされている。
【0004】
例えば下記特許文献1には、金属水酸化物および金属酸化物をポリアセタール樹脂に配合したポリアセタール樹脂組成物により、塩素系化合物を含む水に対して耐久性を付与することが提案されている。
【0005】
以下、本明細書において「塩素系化合物」とは、塩素、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム等の、漂白性、殺菌性、腐食性を有する無機の塩素含有化合物のことを言うものとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3737502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記特許文献1に記載のポリアセタール樹脂組成物は、塩素系化合物を含む水に対する耐久性に関して未だ改善の余地があった。そこで、塩素系化合物を含む水に対して、優れた耐久性を有するポリアセタール樹脂組成物が望まれていた。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、塩素系化合物を含む水に対して優れた耐久性を有するポリアセタール樹脂組成物、成形体および水回り物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するために、ポリアセタール樹脂に配合する添加剤の種類および配合量について鋭意検討を重ねた。その結果、ポリアセタール樹脂に水酸化マグネシウムおよびポリエチレングリコールをそれぞれ所定量配合すると、塩素系化合物を含む水に対する耐久性が著しく向上する場合があることに気付いた。そこで、本発明者は更に鋭意検討を重ねた結果、以下の発明により上記課題を解決し得ることを見出した。
【0010】
すなわち本発明は、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対して、水酸化マグネシウムを含有する水酸化マグネシウム含有粒子(B)が0.5〜2質量部、ポリエチレングリコール(C)が〜5質量部、ポリアミド樹脂(D)が0.01〜質量部配合され、前記水酸化マグネシウム含有粒子(B)の平均粒子径が1.5μm以下であり、前記水酸化マグネシウムのBET比表面積が102/g以下であり、前記ポリエチレングリコール(C)の数平均分子量が15,000〜25,000であり、前記ポリアミド樹脂(D)のアミン価が2.0〜6.9mgKOH/gである、ポリアセタール樹脂組成物である。
【0011】
本発明のポリアセタール樹脂組成物によれば、塩素系化合物を含む水に対して優れた耐久性を有することが可能となる。
【0014】
また、上記ポリアセタール樹脂組成物においては、前記ポリアミド樹脂(D)が、重合脂肪酸系ポリアミド樹脂及びポリアミドエラストマーからなる群より選ばれた少なくとも一種のポリアミド樹脂であることが好ましい。
【0015】
この場合、上記ポリアセタール樹脂組成物は、塩素系化合物を含む水に対してさらに優れた耐久性を有する。
【0016】
上記ポリアセタール樹脂組成物においては、さらにポリカルボジイミド化合物(E)が0.01〜2質量部が配合されることが好ましい。
【0017】
この場合、上記ポリアセタール樹脂組成物は、上記ポリカルボジイミド化合物(E)の配合量が0.01質量部未満である場合に比べ、塩素系化合物を含む水に対してさらに優れた耐久性を有し、配合量が2質量部を超える場合に比べ、より優れた機械的特性を有する。
【0018】
また、本発明は上記のポリアセタール樹脂組成物を成形してなる成形体である。
【0019】
この成形体は、上記のポリアセタール樹脂組成物を成形してなるため、塩素系化合物を含む水に対して優れた耐久性を有することが可能となる。
【0020】
また本発明は、成形体を有する水回り物品であって、前記成形体が、上述した成形体で構成され、前記水回り物品が、スプリンクラー、ポンプ、コンベヤーベルト、スプレー、配管材、ワッシャー、蛇口、栓、シャワーヘッド、塩素系漂白剤若しくは塩素系洗剤の容器、又は、湯沸器、食器洗浄器、水道メーター、浄水器、整水器、散水器、洗濯機、貯水槽若しくは浄化槽、又は、浴室用備品、洗面所用備品、トイレ用備品若しくは台所用備品で構成される。
【0021】
上記水回り物品は、塩素系化合物を含む水に対して優れた耐久性を有する成形体を有するため、水回り物品の成形体に、塩素または塩素系化合物を含む水が長時間接触しても、ポリアセタール樹脂が分解しにくい。そのため、白化や成形体内部から発生したガスによるバブルが生じにくくなる。そのため、成形体の外観が不良になったり、成形体の劣化が促進されて機械的特性が低下したり、成形体が破壊するリスクが高くなったりすることが十分に抑制される。従って、成形体の交換頻度を十分に減らすことができる。
【0022】
なお、本発明において、「水回り物品」とは、水と接触されることが予定されている物品を言う。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、塩素系化合物を含む水に対して優れた耐久性を有するポリアセタール樹脂組成物、成形体および水回り物品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0025】
本発明のポリアセタール樹脂組成物は、ポリアセタール樹脂(A)と、水酸化マグネシウムを含有する水酸化マグネシウム含有粒子(B)と、ポリエチレングリコール(C)と、ポリアミド樹脂(D)とを含む。ここで、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対して、水酸化マグネシウム含有粒子(B)は0.01〜5質量部、ポリエチレングリコール(C)は0.01〜5質量部、ポリアミド樹脂(D)は0.01〜5.0質量部配合されている。そして、水酸化マグネシウム含有粒子(B)の平均粒子径が2μm以下であり、水酸化マグネシウムのBET比表面積は20m2/g以下であり、ポリエチレングリコール(C)の数平均分子量は10,000〜40,000である。
【0026】
本発明のポリアセタール樹脂組成物によれば、塩素系化合物を含む水に対して優れた耐久性を有することが可能となる。
【0027】
次に、ポリアセタール樹脂(A)、水酸化マグネシウム含有粒子(B)、ポリエチレングリコール(C)およびポリアミド樹脂(D)のそれぞれについて詳細に説明する。
【0028】
(A)ポリアセタール樹脂
ポリアセタール樹脂(A)は、2価のオキシメチレン基を構成単位として含むものであれば特に限定されるものではなく、2価のオキシメチレン基のみを構成単位として含むホモポリマーであっても、2価のオキシメチレン基と、炭素数が2以上の2価のオキシアルキレン基とを構成単位として含むコポリマーであってもよい。
【0029】
2価のオキシアルキレン基の炭素数は通常は2〜6である。炭素数が2〜6のオキシアルキレン基としては、例えばオキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシペンテン基及びオキシヘキセン基などが挙げられる。
【0030】
ポリアセタール樹脂(A)においては、オキシメチレン基および炭素数2以上のオキシアルキレン基の総重量に占める炭素数2以上のオキシアルキレン基の割合は特に限定されるものではなく、例えば0〜30質量%であればよい。
【0031】
上記ポリアセタール樹脂(A)を製造するためには通常、主原料としてトリオキサンが用いられる。また、ポリアセタール樹脂中に炭素数2以上のオキシアルキレン基を導入するには、例えば環状ホルマールや環状エーテルを用いることができる。環状ホルマールの具体例としては、例えば1,3−ジオキソラン、1,3−ジオキサン、1,3−ジオキセパン、1,3−ジオキソカン、1,3,5−トリオキセパン、1,3,6−トリオキソカン等が挙げられ、環状エーテルの具体例としては、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシドおよびブチレンオキシド等が挙げられる。ポリアセタール樹脂(A)中にオキシエチレン基を導入するには、例えば1,3−ジオキソランを用いればよく、オキシプロピレン基を導入するには、1,3−ジオキサンを用いればよく、オキシブチレン基を導入するには、1,3−ジオキセパンを導入すればよい。
【0032】
(B)水酸化マグネシウム含有粒子
水酸化マグネシウム含有粒子(B)は、水酸化マグネシウムを含有するものであればよい。従って、水酸化マグネシウム含有粒子は、水酸化マグネシウムのみで構成されてもよいし、水酸化マグネシウムを表面処理して構成されるものであってもよい。
【0033】
水酸化マグネシウムは、20m/g以下のBET比表面積を有する。
【0034】
BET比表面積が20m/gを超える場合、水酸化マグネシウムはポリアセタール樹脂組成物中に均一に分散されず、その結果、ポリアセタール樹脂組成物は、塩素系化合物を含む水に対して優れた耐久性を有することができない。上記水酸化マグネシウムのBET比表面積は10m/g以下であることが好ましく、5.2m/g以下であることがさらに好ましい。但し、水酸化マグネシウムのBET比表面積は、0.5m/g以上であることが好ましい。ここで、BET比表面積はN吸着法により測定される値を言う。
【0035】
水酸化マグネシウム含有粒子(B)は2μm以下の平均粒子径を有する。平均粒子径が2μmを超える場合、水酸化マグネシウム含有粒子(B)はポリアセタール樹脂組成物中に均一に分散されず、その結果、ポリアセタール樹脂組成物は、塩素系化合物を含む水に対して優れた耐久性を有することができない。上記水酸化マグネシウム含有粒子(B)の平均粒子径は、1.5μm以下であることが好ましく、1.3μm以下であることがさらに好ましい。但し、水酸化マグネシウム含有粒子(B)の平均粒子径は、0.1μm以上であることが好ましい。水酸化マグネシウム含有粒子(B)の平均粒子径は、水酸化マグネシウム含有粒子をエタノールに懸濁させ、3分間超音波処理した後に、レーザ回折法により測定される値を言う。
【0036】
また、上記水酸化マグネシウムが表面処理される場合、表面は、脂肪酸、脂肪酸金属塩、シランカップリング剤又はチタネートカップリング剤などで処理されることが好ましい。この場合、粒子の二次凝集の抑制が可能となり、水酸化マグネシウム含有粒子をポリアセタール樹脂組成物中にてより均一に分散させることが可能となる。
【0037】
脂肪酸は、一般式RCOOHで表される。ここで、Rは炭素数4〜30のアルキル基又はアルケニル基を表す。
【0038】
脂肪酸の具体例としては、ステアリン酸およびオレイン酸などが挙げられる。
【0039】
脂肪酸金属塩は、M(OOCR)nで表される。ここで、Rは、脂肪酸を表す一般式におけるRと同義である。MはIA属、IIB属、IIIA属の金属を表し、nは自然数を表す。
【0040】
脂肪酸金属塩の具体例としては、ステアリン酸カルシウムおよびステアリン酸マグネシウムなどが挙げられる。
【0041】
シランカップリング剤としては、例えばビニルトリエトキシシランおよびビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シランが挙げられる。
【0042】
チタネートカップリング剤としては、例えばイソプロピル−トリ(ジオクチルホスフェート)チタネートおよびチタニウムジ(オクチルホスフェート)オキシアセテート等が挙げられる。
【0043】
上記水酸化マグネシウム含有粒子(B)の配合量は、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対して0.01〜5質量部である。水酸化マグネシウム含有粒子(B)の配合量が上記範囲を外れる場合、ポリアセタール樹脂組成物は、塩素系化合物を含む水に対して優れた耐久性を有することができない。水酸化マグネシウムの配合量は0.1〜3質量部であることが好ましく、0.5〜2質量部であることがさらに好ましい。
【0044】
(C)ポリエチレングリコール
ポリエチレングリコール(C)は、例えばエチレンオキサイドを開環重合させることにより得ることができる。ポリエチレングリコール(C)は、直鎖状のものであっても、分岐を有するものであってもよい。ここで、開環重合で使用する重合開始剤としては通常、アルコール及び塩基の組合せが用いられる。重合開始剤として例えばエチレングリコール及び水酸化カリウムを用いると、直鎖状のポリエチレングリコールが得られる。また、重合開始剤として例えばグリセリン及び水酸化カリウムを用いると、分岐を有するエチレングリコールが得られる。
【0045】
上記ポリエチレングリコール(C)の数平均分子量は10,000〜40,000である。数平均分子量が上記範囲を外れる場合、ポリアセタール樹脂組成物は、塩素系化合物を含む水に対して優れた耐久性を有することができない。ポリエチレングリコール(C)の数平均分子量は12,000〜30,000であることが好ましく、15,000〜25,000であることがさらに好ましい。
【0046】
上記ポリエチレングリコール(C)の配合量はポリアセタール樹脂100質量部に対して、0.01〜5質量部である。ポリエチレングリコール(C)の配合量が上記範囲を外れる場合、ポリアセタール樹脂組成物は、塩素系化合物を含む水に対して優れた耐久性を有することができない。ポリエチレングリコール(C)の配合量は1〜5質量部であることが好ましく、2.5〜4質量部であることがさらに好ましい。
【0047】
(D)ポリアミド樹脂
ポリアミド樹脂(D)は、分子中に2個以上のアミド結合を有する樹脂であり、ポリアミド樹脂(D)としては、例えばナイロン−6、ナイロン−6,6、ナイロン−6,10、これらの3元共重合体、重合脂肪酸系ポリアミド樹脂及びポリアミドエラストマー等が挙げられる。これらの中では、重合脂肪酸系ポリアミド樹脂又はポリアミドエラストマーが特に好ましい。これらのポリアミド樹脂は1種類を単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
ここで、重合脂肪酸系ポリアミド樹脂とは、重合脂肪酸とジアミンとの重縮合体で構成されるポリアミド樹脂を言う。
【0049】
重合脂肪酸とは、不飽和脂肪酸の重合体、又はこの重合体を水素添加して得られるものであり、重合脂肪酸としては、例えば10〜24の炭素数を有し、二重結合又は三重結合を1個以上有する一塩基性脂肪酸の二量体(ダイマー酸)又はその水素添加物が挙げられる。ダイマー酸としては、例えば、オレイン酸、リノール酸およびエルカ酸等の二量体が挙げられる。
【0050】
ジアミンとしては、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミンおよびメタキシリレンジアミン等が挙げられる。
【0051】
ポリアミドエラストマーとは、ハードセグメントとソフトセグメントとを有し、ハードセグメントがポリアミドで構成され、ソフトセグメントがポリアミド以外のポリマーで構成されるポリアミド樹脂を言う。ハードセグメントを構成するポリアミドとしては、例えばナイロン−6、ナイロン−6,6、ナイロン−6,10、これらの3元共重合体、重合脂肪酸系ポリアミド樹脂等が挙げられる。ポリアミド以外のポリマーとしては、例えば脂肪族ポリエステルおよび脂肪族ポリエーテルが挙げられる。脂肪族ポリエステルとしては、例えばポリ(ε−カプロラクトン)、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペートおよびポリブチレンサクシネート等が挙げられる。脂肪族ポリエーテルとしては、例えばポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド等のポリオキシアルキレングリコールが挙げられる。
【0052】
上記ポリアミド樹脂(D)のアミン価は特に制限されるものではないが、2.0mgKOH/g以上であることが好ましい。この場合、アミン価が2.0mgKOH/g未満である場合に比べ、ポリアセタール樹脂組成物は塩素系化合物を含む水に対して特に優れた耐久性を有することができる。上記ポリアミド樹脂(D)のアミン価は、以下のようにして求めることができる。すなわち、ポリアミド樹脂3.0gをm−クレゾール80mLに溶解した溶液を被滴定溶液として調製し、0.050モル/Lの過塩素酸メタノール溶液を滴定剤として用いて電位差滴定を行い、当量点に達するまでに要した滴定剤の量から、ポリアミド樹脂1.0g当たりのアミン価を、相当する水酸化カリウムの質量(mgKOH)として換算することにより求めることができる。ポリアミド樹脂(D)のアミン価は4.6mgKOH/g以上であることがさらに好ましい。但し、ポリアミド樹脂(D)のアミン価は、40mgKOH/g以下であることが好ましく、30mgKOH/g以下であることがより好ましい。
【0053】
上記ポリアミド樹脂(D)の配合量はポリアセタール樹脂100質量部に対して、0.01〜5質量部である。ポリアミド樹脂(D)の配合量が上記範囲を外れる場合、ポリアセタール樹脂組成物は、塩素系化合物を含む水に対して優れた耐久性を有することができない。ポリアミド樹脂(D)の配合量は0.5〜3質量部であることが好ましく、1〜2.5質量部であることがさらに好ましい。
【0054】
(E)ポリカルボジイミド化合物
本発明のポリアセタール樹脂組成物(E)には、ポリカルボジイミド化合物(E)がさらに配合されてもよい。
【0055】
ポリカルボジイミド化合物(E)は、分子中に2個以上のカルボジイミド基を有する化合物であれば特に限定されるものではない。
【0056】
ポリカルボジイミド化合物(E)の具体例としては、例えばポリ(4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)およびポリ(ジイソプロピルフェニルカルボジイミド)などが挙げられる。
【0057】
上記ポリカルボジイミド化合物(E)の配合量は、ポリアセタール樹脂100質量部に対して、0.01〜2質量部であることが好ましい。この場合、ポリカルボジイミド化合物(E)の配合量が0.01質量部未満である場合に比べて、ポリアセタール樹脂組成物は、塩素系化合物を含む水に対してより優れた耐久性を有することができる。一方、ポリカルボジイミド化合物(E)の配合量がポリアセタール樹脂100質量部に対して上記範囲内にあると、ポリカルボジイミド化合物(E)の配合量が2質量部を超える場合に比べて、ポリアセタール樹脂組成物は塩素系化合物を含む水に対してより優れた耐久性を有することができる。ポリカルボジイミド化合物(E)の配合量は0.05〜1質量部であることがより好ましく、0.1〜0.5質量部であることが特に好ましい。
【0058】
本発明のポリアセタール樹脂組成物は、さらにヒンダードフェノール系安定剤(F)等の熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑材、核剤、充填剤、顔料、界面活性剤、帯電防止剤等を含んでいてもよい。
【0059】
本発明の成形体は、上述したポリアセタール樹脂組成物を成形してなるものである。成形方法としては、例えば射出成形法、押出成形法、圧縮成形法およびブロー成形法などが挙げられる。
【0060】
また本発明の水回り物品は、上記成形体を有し、上記成形体は、上述したポリアセタール樹脂組成物を成形してなるものである。水回り物品は、具体的には、スプリンクラー、ポンプ、コンベヤーベルト、スプレー、配管材、ワッシャー、蛇口、栓、シャワーヘッド、塩素系漂白剤若しくは塩素系洗剤の容器、又は、湯沸器、食器洗浄器、水道メーター、浄水器、整水器、散水機、洗濯機、貯水槽若しくは浄化槽、又は、浴室用備品、洗面所用備品、トイレ用備品若しくは台所用備品で構成される。
【0061】
上記水回り物品は、塩素系化合物を含む水に対して優れた耐久性を有する成形体を有するため、水回り物品の成形体に、塩素または塩素系化合物を含む水が長時間接触しても、ポリアセタール樹脂が分解しにくい。そのため、白化や成形体内部から発生したガスによるバブルが生じにくくなる。そのため、成形体の外観が不良になったり、成形体の劣化が促進されて機械的特性が低下したり、成形体が破壊するリスクが高くなったりすることが十分に抑制される。従って、成形体の交換頻度を十分に減らすことができる。
【0062】
なお、浴室用備品としては、例えば桶、椅子、浴槽の蓋、ソープディスペンサー、ホルダー、排水溝ユニット、及び掃除道具等が挙げられ、洗面所用備品としては、例えば洗面化粧台、ソープディスペンサー、ホルダー、排水溝ユニット、及び掃除道具等が挙げられる。またトイレ用備品としては、例えばウォシュレット、トイレットペーパーホルダー、ピュアレットディスペンサー、サニタリーボックス、及び掃除道具等が挙げられ、台所用備品としては、例えば水切り籠、ホルダー、排水溝ユニット、食器洗い用ブラシ、及び掃除道具等が挙げられる。また成形体の具体例としては、例えばギヤ、カム、レバー、プーリー、軸受け、シャーシ、パッキン、ガスケット、給水管、継手、ノズル、シャワーヘッド、浮玉、スピンドル、ガイド、こま、ボールタップ、スクリーンメッシュ、吐水口、水栓、タンク及び水受け容器等が挙げられる。
【実施例】
【0063】
以下、本発明について実施例及び比較例を挙げてより具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0064】
実施例および比較例において用いたポリアセタール樹脂組成物の原料は次のとおりである。
【0065】
(A)ポリアセタール樹脂:
トリオキサンと1,3−ジオキソランとを、ポリアセタール樹脂中の1,3−ジオキソランの含有率が4.2質量%となるように共重合して得られたアセタールコポリマーであって、メルトインデックス(ASTM−D1238規格:190℃、2.16kg)が10.5g/10分であるアセタールコポリマー
【0066】
(B)水酸化マグネシウム含有粒子:
(B−1)水酸化マグネシウムをシランカップリング剤で表面処理してなる平均粒子径1.1μmの水酸化マグネシウム含有粒子であって、水酸化マグネシウムのBET比表面積が5.2m/gである水酸化マグネシウム含有粒子、神島化学工業社製、商品名「マグシーズS−6F」
(B−2)水酸化マグネシウムを高級脂肪酸で表面処理してなる平均粒子径1.3μmの水酸化マグネシウム含有粒子であって、水酸化マグネシウムのBET比表面積が4.4m/gである水酸化マグネシウム含有粒子、神島化学工業社製、商品名「マグシーズN−4」
(B−3)水酸化マグネシウムのみで構成される平均粒子径5.0μmの水酸化マグネシウム含有粒子であって、水酸化マグネシウムのBET比表面積が51m/gである水酸化マグネシウム含有粒子、協和化学工業社製、商品名「MgF」
(B−4)水酸化マグネシウムのみで構成される平均粒子径3.5μmの水酸化マグネシウム含有粒子であって、水酸化マグネシウムのBET比表面積20m/gである水酸化マグネシウム含有粒子、神島化学工業社製、商品名「10A」
【0067】
(C)ポリエチレングリコール:
(C−1)数平均分子量20,000のポリエチレングリコール、三洋化成工業社製、商品名「PEG20,000」
(C−2)数平均分子量6,000のポリエチレングリコール、三洋化成工業社製、商品名「PEG6,000」
(C−3)数平均分子量80,000のポリエチレングリコール、三洋化成工業社製、商品名「メルポールF220」
【0068】
(D)ポリアミド樹脂:
(D−1)アミン価9.5mgKOH/gのポリアミド樹脂であって、ダイマー酸系ポリアミド樹脂(重合脂肪酸系ポリアミド)からなるポリアミド樹脂、富士化成工業社製、商品名「トーマイドTXM−78C」
(D−2)アミン価4.6mgKOH/gのポリアミド樹脂であって、ダイマー酸系ポリアミド樹脂(重合脂肪酸系ポリアミド)からなるポリアミド樹脂、富士化成工業社製、商品名「トーマイドTXM−78A」
(D−3)アミン価6.9mgKOH/gのポリアミド樹脂であって、ポリエステルアミド樹脂からなるポリアミド樹脂、富士化成工業社製、商品名「TPAE−617C」
【0069】
(E)ポリカルボジイミド化合物:
ポリ(4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)、日清紡ケミカル社製、商品名「カルボジライトLA−1」
【0070】
(F)ヒンダードフェノール系安定剤:
トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、BASF社製、商品名「イルガノックス245」
【0071】
<ポリアセタール樹脂組成物の作製>
(実施例1〜9及び比較例1〜12)
ポリアセタール樹脂(A)、水酸化マグネシウム含有粒子(B)、ポリエチレングリコール(C)、ポリアミド樹脂(D)、ポリカルボジイミド化合物(E)およびヒンダードフェノール系安定剤(F)を表1〜3に示す配合量で、川田製作所社製スーパーミキサーを用いて均一に混合したのち、常法に従って2軸押出機(池貝鉄工社製PCM−30、スクリュー径30mm)を用いて、スクリュー回転数120rpm、シリンダー設定温度190℃の条件下で溶融混練したのち、ストランドに押出し、ペレタイザーにてカットすることでポリアセタール樹脂組成物のペレットを製造した。なお、表1〜3において、配合量の単位は質量部である。
【0072】
<塩素系化合物を含む水に対する耐久性評価>
実施例1〜9及び比較例1〜12で得られたポリアセタール樹脂組成物について、塩素浸漬処理した後の引張り伸び保持率および外観観察に基づき塩素系化合物を含む水に対する耐久性を調べた。引張り伸び保持率の測定および外観観察は以下のようにして行った。
【0073】
(1)引張伸び保持率
(引張試験用試験片の作製)
まず射出成形機(製品名:EC100S、東芝機械社製)を用い、上流から下流側に向かって配置される4つのシリンダーの各温度を、190℃、190℃、180℃、170℃に設定し、金型温度を80℃に設定して、実施例1〜9及び比較例1〜12で得られたポリアセタール樹脂組成物のペレットを射出成形し、ISO9988−2規格に規定される引張試験用試験片を作製した。
【0074】
(塩素浸漬処理)
次に、上記の引張試験用試験片を、次亜塩素酸ナトリウムを蒸留水に溶解した塩素濃度300ppmの水溶液(試験溶液)に浸漬し、試験溶液の温度が65℃で一定になるよう水槽の温度を調節しながら遮光した暗室において14日間静置した。ここで上記水溶液の塩素濃度は、高濃度残留塩素濃度計(製品名:AQ−102P、柴田科学社製)を用いてモニタリングし、24時間毎に300ppmになるように再調整した。
【0075】
(引張試験)
引張試験機(製品名:ストログラフAPII、東洋精機製作所社製)を用いて、ISO527規格に準拠した条件で、上記の引張試験用試験片について引張試験を行い、塩素浸漬処理前の引張破壊呼び歪(%)と、塩素浸漬処理後の引張破壊呼び歪(%)を測定した。これらの測定値を用い、下記式に従って引張伸び保持率(%)を算出した。その結果を表1〜3に示す。
【数1】
【0076】
(2)外観観察
上記塩素浸漬処理後の引張試験用試験片の表面を目視にて観察し、外観を以下の3段階で評価した。結果を表1〜3に示す。

[外観評価基準]
3:バブル又は白化の発生が一切なし
2:バブル又は白化の発生個所が試験片全体の半分以下
1:試験片全体にバブル又は白化が発生
【0077】
塩素系化合物を含む水に対する耐久性についての合格基準は以下の通りとした。
引張伸び保持率が75%以上で且つ外観評価が3である

【0078】
【表1】
【表2】
【表3】
【0079】
表1に示す結果より、実施例1〜9で得られたポリアセタール樹脂組成物は全て、塩素系化合物を含む水に対する耐久性について合格基準を満たした。それに対し、表2及び3に示す結果より、比較例1〜12で得られたポリアセタール樹脂組成物はいずれも、塩素系化合物を含む水に対する耐久性について合格基準を満たさなかった。
【0080】
従って、本発明のポリアセタール樹脂組成物によれば、塩素系化合物を含む水に対して優れた耐久性を有することが確認された。