(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6006593
(24)【登録日】2016年9月16日
(45)【発行日】2016年10月12日
(54)【発明の名称】空調制御システムおよび空調制御方法
(51)【国際特許分類】
F24F 11/02 20060101AFI20160929BHJP
F24F 11/053 20060101ALI20160929BHJP
F24F 7/007 20060101ALI20160929BHJP
F24F 7/08 20060101ALI20160929BHJP
【FI】
F24F11/02 102J
F24F11/02 F
F24F11/053 G
F24F7/007 B
F24F7/08 101J
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-205732(P2012-205732)
(22)【出願日】2012年9月19日
(65)【公開番号】特開2014-59124(P2014-59124A)
(43)【公開日】2014年4月3日
【審査請求日】2015年5月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】大澤 義孝
(72)【発明者】
【氏名】長尾 泰司
【審査官】
久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】
特開平04−013038(JP,A)
【文献】
特開平11−257713(JP,A)
【文献】
特開昭57−099414(JP,A)
【文献】
特開2004−093003(JP,A)
【文献】
特開2002−071184(JP,A)
【文献】
特開平09−178242(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/02
F24F 7/007
F24F 7/08
F24F 11/053
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御対象空間へ調和された空気を供給する空調機と、前記制御対象空間からのリターン空気と外気との換気を行う換気装置とを備え、前記空調機は前記換気装置に直列に接続されて前記換気装置からの外気と前記制御対象空間からのリターン空気の一部との混合空気を取入空気とし、前記換気装置は熱交換を伴う熱交換換気モードと熱交換を伴わず単に換気のみ行う非熱交換換気モードとを備えた空調制御システムであって、
前記制御対象空間の温度を室内温度として検出する室内温度検出手段と、
前記換気装置に取り込まれる前の外気の温度を外気温度として検出する外気温度検出手段と、
冷房を行う場合の室内温度の設定値を冷房設定温度として設定する室内温度設定手段と、
前記室内温度が前記冷房設定温度および前記外気温度よりも高い場合、前記換気装置を非熱交換換気モードで動作させる一方、前記室内温度と前記冷房設定温度との差に応じて前記空調機を送風モードとするか冷房モードとするかを定め、その定められたモードで前記空調機を運転する制御手段とを備え、
前記制御手段は、
前記室内温度が前記外気温度よりも高く、かつ前記冷房設定温度よりも所定の値以上低い場合、前記換気装置を熱交換換気モードで動作させ、前記空調機を暖房モードで運転する
ことを特徴とする空調制御システム。
【請求項2】
制御対象空間へ調和された空気を供給する空調機と、前記制御対象空間からのリターン空気と外気との換気を行う換気装置とを備え、前記空調機は前記換気装置に直列に接続されて前記換気装置からの外気と前記制御対象空間からのリターン空気の一部との混合空気を取入空気とし、前記換気装置は熱交換を伴う熱交換換気モードと熱交換を伴わず単に換気のみ行う非熱交換換気モードとを備えた空調制御システムであって、
前記制御対象空間の温度を室内温度として検出する室内温度検出手段と、
前記換気装置に取り込まれる前の外気の温度を外気温度として検出する外気温度検出手段と、
冷房を行う場合の室内温度の設定値を冷房設定温度として設定する室内温度設定手段と、
前記室内温度が前記冷房設定温度および前記外気温度よりも高い場合、前記換気装置を非熱交換換気モードで動作させる一方、前記室内温度と前記冷房設定温度との差に応じて前記空調機を送風モードとするか冷房モードとするかを定め、その定められたモードで前記空調機を運転する制御手段とを備え、
前記制御手段は、
前記室内温度が前記外気温度よりも高く、かつ前記冷房設定温度よりも第1の所定の値以上低い場合、前記換気装置を熱交換換気モードで動作させ、前記空調機を送風モードで運転し、
前記室内温度が前記外気温度よりも高く、かつ前記冷房設定温度よりも前記第1の所定の値よりも大きい第2の所定の値以上低い場合、前記換気装置を熱交換換気モードで動作させ、前記空調機を暖房モードで運転する
ことを特徴とする空調制御システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された空調制御システムにおいて、
前記制御手段は、
前記室内温度が前記冷房設定温度および前記外気温度よりも高く、前記室内温度と前記冷房設定温度との差が所定値以下の場合、前記空調機を送風モードで運転する
ことを特徴とする空調制御ステム。
【請求項4】
請求項3に記載された空調制御システムにおいて、
前記制御手段は、
前記室内温度が前記冷房設定温度および前記外気温度よりも高く、前記室内温度と前記冷房設定温度との差が前記所定値よりも大きい場合、前記空調機を冷房モードで運転する
ことを特徴とする空調制御システム。
【請求項5】
請求項1又は2に記載された空調制御システムにおいて、
前記制御手段は、
前記室内温度と前記冷房設定温度との差に応じて、前記換気装置の外気導入量および前記空調機の送風量を段階的に切り替える
ことを特徴とする空調制御システム。
【請求項6】
制御対象空間へ調和された空気を供給する空調機と、前記制御対象空間からのリターン空気と外気との換気を行う換気装置とを備え、前記空調機は前記換気装置に直列に接続されて前記換気装置からの外気と前記制御対象空間からのリターン空気の一部との混合空気を取入空気とし、前記換気装置は熱交換を伴う熱交換換気モードと熱交換を伴わず単に換気のみ行う非熱交換換気モードとを備えたシステムに適用される空調制御方法であって、
前記制御対象空間の温度を室内温度として検出する室内温度検出ステップと、
前記換気装置に取り込まれる前の外気の温度を外気温度として検出する外気温度検出ステップと、
冷房を行う場合の室内温度の設定値を冷房設定温度として設定する室内温度設定ステップと、
前記室内温度が前記冷房設定温度および前記外気温度よりも高い場合、前記換気装置を非熱交換換気モードで動作させる一方、前記室内温度と前記冷房設定温度との差に応じて前記空調機を送風モードとするか冷房モードとするかを定め、その定められたモードで前記空調機を運転する制御ステップとを備え、
前記制御ステップは、
前記室内温度が前記外気温度よりも高く、かつ前記冷房設定温度よりも所定の値以上低い場合、前記換気装置を熱交換換気モードで動作させ、前記空調機を暖房モードで運転する
ことを特徴とする空調制御方法。
【請求項7】
制御対象空間へ調和された空気を供給する空調機と、前記制御対象空間からのリターン空気と外気との換気を行う換気装置とを備え、前記空調機は前記換気装置に直列に接続されて前記換気装置からの外気と前記制御対象空間からのリターン空気の一部との混合空気を取入空気とし、前記換気装置は熱交換を伴う熱交換換気モードと熱交換を伴わず単に換気のみ行う非熱交換換気モードとを備えたシステムに適用される空調制御方法であって、
前記制御対象空間の温度を室内温度として検出する室内温度検出ステップと、
前記換気装置に取り込まれる前の外気の温度を外気温度として検出する外気温度検出ステップと、
冷房を行う場合の室内温度の設定値を冷房設定温度として設定する室内温度設定ステップと、
前記室内温度が前記冷房設定温度および前記外気温度よりも高い場合、前記換気装置を非熱交換換気モードで動作させる一方、前記室内温度と前記冷房設定温度との差に応じて前記空調機を送風モードとするか冷房モードとするかを定め、その定められたモードで前記空調機を運転する制御ステップとを備え、
前記制御ステップは、
前記室内温度が前記外気温度よりも高く、かつ前記冷房設定温度よりも第1の所定の値以上低い場合、前記換気装置を熱交換換気モードで動作させ、前記空調機を送風モードで運転し、
前記室内温度が前記外気温度よりも高く、かつ前記冷房設定温度よりも前記第1の所定の値よりも大きい第2の所定の値以上低い場合、前記換気装置を熱交換換気モードで動作させ、前記空調機を暖房モードで運転する
ことを特徴とする空調制御方法。
【請求項8】
請求項6又は7に記載された空調制御方法において、
前記制御ステップは、
前記室内温度が前記冷房設定温度および前記外気温度よりも高く、前記室内温度と前記冷房設定温度との差が所定値以下の場合、前記空調機を送風モードで運転する
ことを特徴とする空調制御方法。
【請求項9】
請求項8に記載された空調制御方法において、
前記制御ステップは、
前記室内温度が前記冷房設定温度および前記外気温度よりも高く、前記室内温度と前記冷房設定温度との差が前記所定値よりも大きい場合、前記空調機を冷房モードで運転する
ことを特徴とする空調制御方法。
【請求項10】
請求項6又は7に記載された空調制御方法において、
前記制御ステップは、
前記室内温度と前記冷房設定温度との差に応じて、前記換気装置の外気導入量および前記空調機の送風量を段階的に切り替える
ことを特徴とする空調制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、制御対象空間へ調和された空気を供給する空調機と、制御対象空間からのリターン空気と外気との換気を行う換気装置とを用いた空調制御システムおよび空調制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
中小規模ビルでは、大規模ビルに比べて、低イニシャルコストの空調システムが求められる。このため、従来より、中小規模ビルでは、空調機からの調和された空気をダクトに送り、このダクトを通して送られてくる調和された空気を吹出口から制御対象空間に吹き出すという空調システムが採用されている。このような空調制御をビルマルチ空調と呼んでいる。
【0003】
このビルマルチ空調では、室外機と室内機とによって構成される空調機の他に、制御対象空間からのリターン空気と外気との換気を行う換気装置が必要となる。近年は、換気装置として、換気によって失われる空調エネルギーの全熱(排熱)の一部を回収することができる全熱交換器が設置されることが多い。
【0004】
全熱交換器を換気装置として用いる場合、中間期(春・秋)など、室内熱負荷が高く(冷房要求があり)、なおかつ外気温度が室内温度よりも低いような場合には、全熱交換器による熱交換を行わずに外気を室内に取り込むことで、外気冷房による省エネルギー効果を期待することができる。
【0005】
例えば、特許文献1に示されたシステムでは、換気装置を熱交換を伴う熱交換換気モードと熱交換を伴わず換気のみを行う非熱交換換気モードとを備えた全熱交換器とし、空調機が冷房運転で稼働中に、室内温度が冷房設定温度および外気温度よりも高く、かつ室内温度と冷房設定温度との差が所定値以下のときは、自動的に、換気装置(全熱交換器)を熱交換換気モードから非熱交換換気モードに切り替え、これに連動して空調機を停止させるようにしている。
【0006】
図11に特許文献1に示された空調制御システムの概略を示す。同図において、1は空調機、2は換気装置(全熱交換器)、3はコントローラ、4は制御対象空間、5は制御対象空間4の温度を室内温度Trpvとして検出する室内温度センサ、6は換気装置2に取り込まれる前の外気の温度を外気温度Toutとして検出する外気温度センサ、7は冷房を行う場合の室内温度の設定値を冷房設定温度Trspとして設定する室内温度設定器である。
【0007】
このシステムにおいて、空調機1と換気装置2とは独立して設置されており、空調機1は制御対象空間4からのリターン空気RAを取入空気とし、調和された空気を給気SAとして制御対象空間4に供給する。換気装置2は、制御対象空間4からのリターン空気RAを排気EAとして排出する一方、外気OAを取り込んで制御対象空間4に供給する。
【0008】
コントローラ3は、室内温度Trpvが冷房設定温度Trspよりも高く、外気温度Toutが室内温度Trpvよりも高い場合、換気装置2を熱交換換気モードで動作させ、空調機1を冷房モードで運転する。これに対し、室内温度Trpvが冷房設定温度Trspおよび外気温度Toutよりも高く、かつ室内温度Trpvと冷房設定温度Trspとの差ΔTrが所定値Tth以下となった場合、コントローラ3は、換気装置2を熱交換換気モードから非熱交換換気モードに切り替え、空調機1を停止させる。また、室内温度Trpvが冷房設定温度Trspおよび外気温度Toutよりも高く、かつ室内温度Trpvと冷房設定温度Trspとの差ΔTrが所定値Tthよりも大きい場合には、空調機1を冷房モードで運転する。
【0009】
すなわち、コントローラ3は、室内温度Trpvが冷房設定温度Trspおよび外気温度Toutよりも高い場合、換気装置2を非熱交換換気モードで動作させる一方、室内温度Trpvと冷房設定温度Trspとの差ΔTrに応じ、この差ΔTrが所定値Tth以下の場合には空調機1を停止させ、この差ΔTrが所定値Tthよりも大きい場合には空調機1を冷房モードで運転する。
【0010】
これにより、室内温度Trpvが冷房設定温度Trspおよび外気温度Toutよりも高く、室内温度Trpvと冷房設定温度Trspとの差ΔTrが所定値Tth以下の場合には、空調機1を停止させた状態で、換気装置2による熱交換を伴わない換気(バイパス換気)のみが行われるものとなり、換気装置2からの外気の導入のみで制御対象空間4の冷房(外気冷房)が行われるものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2010−117084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、このような空調制御システムでは、空調機1が担当する空調制御ゾーンが換気装置2の設置場所から離れているような場合、換気による外気冷房の効果を十分に得ることができない、という問題があった。
【0013】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、空調機が担当する空調制御ゾーンが換気装置の設置場所から離れているような場合であっても、換気による外気冷房の効果を十分に得ることが可能な空調制御システムおよび空調制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
このような目的を達成するために本発明は、制御対象空間へ調和された空気を供給する空調機と、制御対象空間からのリターン空気と外気との換気を行う換気装置とを備え、空調機は換気装置に直列に接続されて換気装置からの外気と制御対象空間からのリターン空気の一部との混合空気を取入空気とし、換気装置は熱交換を伴う熱交換換気モードと熱交換を伴わず単に換気のみ行う非熱交換換気モードとを備えた空調制御システムであって、制御対象空間の温度を室内温度として検出する室内温度検出手段と、換気装置に取り込まれる前の外気の温度を外気温度として検出する外気温度検出手段と、冷房を行う場合の室内温度の設定値を冷房設定温度として設定する室内温度設定手段と、室内温度が冷房設定温度および外気温度よりも高い場合、換気装置を非熱交換換気モードで動作させる一方、室内温度と冷房設定温度との差に応じて空調機を送風モードとするか冷房モードとするかを定め、その定められたモードで空調機を運転する制御手段とを
備え、制御手段は、室内温度が外気温度よりも高く、かつ冷房設定温度よりも所定の値以上低い場合、換気装置を熱交換換気モードで動作させ、空調機を暖房モードで運転する、あるいは、室内温度が外気温度よりも高く、かつ冷房設定温度よりも第1の所定の値以上低い場合、換気装置を熱交換換気モードで動作させ、空調機を送風モードで運転し、室内温度が外気温度よりも高く、かつ冷房設定温度よりも第1の所定の値よりも大きい第2の所定の値以上低い場合、換気装置を熱交換換気モードで動作させ、空調機を暖房モードで運転することを特徴とする。
【0015】
本発明において、空調機と換気装置とは、直列に接続された構成とされる。すなわち、本発明において、空調機は、換気装置からの外気(OA)と制御対象空間からのリターン空気(RA)の一部との混合空気を取入空気とし、換気装置は制御対象空間からのリターン空気(RA)の残りを排気(EA)として排出する。また、本発明において、制御手段は、室内温度が冷房設定温度および外気温度よりも高い場合、換気装置を非熱交換換気モードで動作させ、室内温度と冷房設定温度との差に応じて空調機を送風モードとするか冷房モードとするかを定め、その定められたモードで空調機を運転する。例えば、室内温度と冷房設定温度との差が所定値(Tth)以下の場合、空調機を送風モードで運転し、室内温度と冷房設定温度との差が所定値(Tth)よりも大きい場合、空調機を冷房モードで運転するようにする。
【0016】
本発明において、室内温度が冷房設定温度および外気温度よりも高く、かつ室内温度と冷房設定温度との差が所定値(Tth)以下の場合、換気装置を非熱交換換気モードとし、空調機を送風モードとすると、換気装置からの外気(OA)と制御対象空間からのリターン空気(RA)の一部との混合空気が空調機からの給気(SA)として制御対象空間に供給されるものとなる。これにより、空調機が担当する空調制御ゾーンが換気装置の設置場所から離れていても、外気冷房の効果を及ぼすことが可能となる。
【0017】
本発明において、制御手段は、室内温度が冷房設定温度および外気温度よりも高い場合、換気装置を非熱交換換気モードで動作させる一方、室内温度と冷房設定温度との差に応じて空調機を送風モードとするか冷房モードとするかを定めるが、これと合わせて、室内温度と冷房設定温度との差に応じて、換気装置の外気導入量や空調機の送風量を段階的に切り替えるようにしてもよい。例えば、室内温度と冷房設定温度との偏差が大きくなるほど換気装置の外気導入量を多くしたり、空調機の送風量を多くしたりする。これにより、室内温度と冷房設定温度との偏差が大きいほど、冷房効果の高い運転を行い、偏差が小さくなるにつれ、省エネルギー効果の高い運転に段階的に切り替えて行くようにして、より一層の省エネルギー効果の高い運転を行うことが可能となる。
【0018】
また、
本発明では、室内温度が外気温度よりも高く、かつ冷房設定温度よりも所定の値以上低い場合、換気装置を熱交換換気モードで動作させ、空調機を暖房モードで運転する
ようにする。本発明では、外気温度が冷房設定温度よりも著しく低い場合、制御対象空間が冷えすぎの状態となってしまうことがある。このような場合、空調機を暖房モードで運転させることにより、制御対象空間が冷えすぎの状態となるという問題を解消することが可能となる。また、換気装置を熱交換換気モードで動作させることにより、換気によって失われる排熱の一部を回収することが可能となる。
【0019】
また、
本発明では、第1の所定の値(Tth1)と第1の所定の値(Tth1)よりも大きい第2の所定の値(Tth2)とを定め、室内温度が外気温度よりも高く、かつ冷房設定温度よりも第1の所定の値(Tth1)以上低い場合、換気装置を熱交換換気モードで動作させ、空調機を送風モードで運転し、室内温度が外気温度よりも高く、かつ冷房設定温度よりも第2の所定の値(Tth2)以上低い場合、換気装置を熱交換換気モードで動作させ、空調機を暖房モードで運転するというように、暖房モードへ段階的に切り替えて行く
ようにする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、室内温度が冷房設定温度および外気温度よりも高い場合、換気装置を非熱交換換気モードで動作させる一方、室内温度と冷房設定温度との差に応じて空調機を送風モードとするか冷房モードとするかを定め、その定められたモードで空調機を運転するようにしたので、例えば、室内温度と冷房設定温度との差が所定値以下の場合、空調機を送風モードで運転するようにして、換気装置からの外気と制御対象空間からのリターン空気の一部との混合空気を空調機からの給気として制御対象空間に供給し、空調機が担当する空調制御ゾーンが換気装置の設置場所から離れているような場合であっても、換気による外気冷房の効果を十分に得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明に係る空調制御システムの一実施の形態を示す図である。
【
図2】この空調制御システムにおけるコントローラが有する空調機・換気装置連動制御機能に従う処理動作の第1例(実施の形態1)を示すフローチャートである。
【
図3】実施の形態1における室内温度、外気温度および冷房設定温度の温度条件と室内温度の位置する領域を示す図である。
【
図4】この空調制御システムにおけるコントローラが有する空調機・換気装置連動制御機能に従う処理動作の第2例(実施の形態2)を示すフローチャートである。
【
図5】実施の形態2の処理動作に従う空調機および換気装置の運転制御状態の変化を示す図である。
【
図6】実施の形態2における室内温度、外気温度および冷房設定温度の温度条件と室内温度の位置する領域を示す図である。
【
図7】この空調制御システムにおけるコントローラが有する空調機・換気装置連動制御機能に従う処理動作の第3例(実施の形態3)を示すフローチャートである。
【
図9】実施の形態3の処理動作に従う空調機および換気装置の運転制御状態の変化を示す図である。
【
図10】実施の形態3における室内温度、外気温度および冷房設定温度の温度条件と室内温度の位置する領域を示す図である。
【
図11】特許文献1に示されたシステムの概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1はこの発明に係る空調制御システムの一実施の形態を示す図である。同図において、
図11と同一符号は
図11を参照して説明した構成要素と同一或いは同等構成要素を示し、その説明は省略する。
なお、以下の説明では、本発明の権利範囲に含まれないものも実施の形態として記載されているが、ここでは全て実施の形態として説明する。
【0023】
この空調制御システムにおいて、空調機1と換気装置(全熱交換器)2とは、直列に接続された構成とされている。すなわち、空調機1は、換気装置2からの外気OAと制御対象空間4からのリターン空気RAの一部との混合空気を取入空気とし、換気装置2は、制御対象空間4からのリターン空気RAの残りを排気EAとして排出するように、ダクトD1〜D3で接続されている。
【0024】
また、この空調制御システムにおいて、コントローラ3は、プロセッサや記憶装置からなるハードウェアと、これらのハードウェアと協働して各種機能を実現させるプログラムとによって実現され、本実施の形態特有の機能として空調機1と換気装置2の動作を制御する空調機・換気装置連動制御機能を有している。以下、
図11に示した従来のコントローラ3と区別するために、本実施の形態におけるコントローラ3を符号3Aで示す。
【0025】
〔実施の形態1〕
図2にコントローラ3Aが有する空調機・換気装置連動制御機能に従う処理動作の第1例(実施の形態1)のフローチャートを示す。
【0026】
コントローラ3Aは、定期的に、室内温度センサ5からの室内温度Trpvと、外気温度センサ6からの外気温度Toutと、室内温度設定器7からの冷房設定温度Trspとを取り込む(ステップS101)。そして、室内温度Trpvと冷房設定温度Trspとを比較し(ステップS102)、室内温度Trpvが冷房設定温度Trspよりも高かった場合(ステップS102のYES)、室内温度Trpvと外気温度Toutとを比較する(ステップS103)。
【0027】
ここで、室内温度Trpvが外気温度Toutよりも高かった場合(ステップS103のYES)、すなわち室内温度Trpvが冷房設定温度Trspおよび外気温度Toutよりも高かった場合、コントローラ3Aは、室内温度Trpvと冷房設定温度冷房設定温度Trspとの差ΔTr(ΔTr=Trpv−Trsp)を求める(ステップS104)。
【0028】
そして、コントローラ3Aは、室内温度Trpvと冷房設定温度冷房設定温度Trspとの差ΔTrと所定値Tthとを比較し(ステップS105)、ΔTrが所定値Tth以下(ΔTr≦Tth)の場合には(ステップS105のYES、
図3(a)に示す斜線の領域参照)、換気装置2を非熱交換換気モードとし(ステップS106)、空調機1を送風モードとする(ステップS107)。
【0029】
これにより、例えば、今、空調機1が冷房運転中で、換気装置2が熱交換換気モードで動作中であるものとすれば、空調機1が冷房運転から送風モードでの運転(送風運転)に切り換わり、換気装置2が熱交換換気モードでの換気から非熱交換換気モードでの換気(バイパス換気)に切り替えられる。
【0030】
この場合、空調機1と換気装置2とが直列に接続されているので、換気装置2からの外気OAと制御対象空間4からのリターン空気RAの一部との混合空気が空調機1からの給気SAとして制御対象空間4に供給されるものとなる。これにより、空調機1が担当する空調制御ゾーンが換気装置2の設置場所から離れていても、外気冷房の効果を及ぼすことが可能となり、換気による外気冷房の効果を十分に得ることができるようになる。
【0031】
これに対して、ステップS105での比較結果がΔTr>Tthであった場合(ステップS105のNO、
図3(b)に示す斜線の領域参照)、コントローラ3Aは、換気装置2を非熱交換換気モードとし(ステップS108)、空調機1を冷房モードとする(ステップS109)。
【0032】
これにより、例えば、今、空調機1が送風転中で、換気装置2が非熱交換換気モードで動作中であるものとすれば、空調機1が送風運転から冷房モードでの運転(冷房運転)に切り換わり、換気装置2は非熱交換換気モードでの動作を継続する。この場合、空調機1は、換気装置2から導入した外気OAとリターン空気RAの一部との混合空気を冷却するものとなり、室内温度Trpvよりも低い外気OAを利用して冷房運転を行うことから、省エネルギーが図られる。
【0033】
〔実施の形態2〕
図4にコントローラ3Aが有する空調機・換気装置連動制御機能に従う処理動作の第2例(実施の形態2)のフローチャートを示す。
図5にこの処理動作に従う空調機1および換気装置2の運転制御状態の変化を示す。
【0034】
なお、この実施の形態2において、空調機1は、3段階(H(大)/M(中)/L(小))の送風量の切替機能を有し、換気装置2は2段階(H(大)/L(小))の外気導入量の切替機能を有しているものとする。この送風量切替機能および外気導入量の切替機能自体は、いずれも公知の技術であり、ここでの詳しい説明は省略する。
【0035】
コントローラ3Aは、定期的に、室内温度センサ5からの室内温度Trpvと、外気温度センサ6からの外気温度Toutと、室内温度設定器7からの冷房設定温度Trspとを取り込む(ステップS201)。そして、室内温度Trpvと冷房設定温度Trspとを比較し(ステップS202)、室内温度Trpvが冷房設定温度Trspよりも高かった場合(ステップS202のYES)、室内温度Trpvと外気温度Toutとを比較する(ステップS203)。
【0036】
ここで、室内温度Trpvが外気温度Toutよりも高かった場合(ステップS203のYES)、すなわち室内温度Trpvが冷房設定温度Trspおよび外気温度Toutよりも高かった場合、コントローラ3Aは、室内温度Trpvと冷房設定温度冷房設定温度Trspとの差ΔTr(ΔTr=Trpv−Trsp)を求める(ステップS204)。
【0037】
そして、室内温度Trpvと冷房設定温度冷房設定温度Trspとの差ΔTrと第1の閾値TthHとを比較し(ステップS205)、ΔTrが第1の閾値TthHよりも大きかった場合(ΔTr>TthH)(ステップS205のYES、
図6に斜線で示す領域I参照)、コントローラ3Aは、「偏差大」であるとして、換気装置2を非熱交換換気モードとし(ステップS206)、換気装置2の外気導入量を「H」とし(ステップS207)、空調機1を冷房モードとする(ステップS208)。
【0038】
コントローラ3Aは、ΔTrが第1の閾値TthH以下(ΔTr≦TthH)であった場合(ステップS205のNO)、ΔTrと第2の閾値TthM(<TthH)とを比較する(ステップS209)。ここで、ΔTrが第2の閾値TthMよりも大きかった場合(ΔTr>TthM)(ステップS209のYES、
図6に斜線で示す領域II参照)、コントローラ3Aは、「偏差中」であるとして、換気装置2を非熱交換換気モードとし(ステップS210)、換気装置2の外気導入量を「H」とし(ステップS211)、空調機1を送風モードとし(ステップS212)、空調機1の送風量を「H」とする(ステップS213)。
【0039】
コントローラ3Aは、ΔTrが第2の閾値TthM以下(ΔTr≦TthM)であった場合(ステップS209のNO)、ΔTrと第3の閾値TthL(<TthM)とを比較する(ステップS214)。ここで、ΔTrが第3の閾値TthLよりも大きかった場合(ΔTr>TthL)(ステップS214のYES、
図6に斜線で示す領域III参照)、コントローラ3Aは、「偏差やや小」であるとして、換気装置2を非熱交換換気モードとし(ステップS215)、換気装置2の外気導入量を「L」とし(ステップS216)、空調機1を送風モードとし(ステップS217)、空調機1の送風量を「M」とする(ステップS218)。
【0040】
コントローラ3Aは、ΔTrが第3の閾値TthL以下(ΔTr≦TthL)であった場合(ステップS214のNO)、ΔTrが0以上であるか否かをチェックする(ステップS219)。ここで、ΔTrが0以上であった場合(ΔTr≧0)(ステップS219のYES、
図6に斜線で示す領域IV参照)、コントローラ3Aは、「偏差小」であるとして、換気装置2を非熱交換換気モードとし(ステップS220)、換気装置2の外気導入量を「L」とし(ステップS221)、空調機1を送風モードとし(ステップS222)、空調機1の送風量を「L」とする(ステップS223)。
【0041】
この実施の形態2では、室内温度Trpvが冷房設定温度Trspおよび外気温度Toutよりも高かった場合、室内温度Trpvと冷房設定温度Trspとの差ΔTrに応じて、換気装置2による外気導入量と空調機1による送風量が段階的に切り替えられる。すなわち、室内温度Trpvと冷房設定温度Trspとの偏差が大きくなるほど換気装置2の外気導入量が多くなり、空調機1の送風量が多くなる。これにより、室内温度Trpvと冷房設定温度Trspとの偏差が大きいほど、冷房効果の高い運転が行われ、偏差が小さくなるにつれ、省エネルギー効果の高い運転に段階的に切り替えられて行き、より一層の省エネルギー効果の高い運転が行われるものとなる。
【0042】
〔実施の形態3〕
図7および
図8にコントローラ3Aが有する空調機・換気装置連動制御機能に従う処理動作の第3例(実施の形態2)のフローチャートを分割して示す。
図9にこの処理動作に従う空調機1および換気装置2の運転制御状態の変化を示す。
【0043】
この実施の形態3においても、実施の形態2と同様、空調機1は、3段階(H(大)/M(中)/L(小))の送風量の切替機能を有し、換気装置2は2段階(H(大)/L(小))の外気導入量の切替機能を有しているものとする。また、
図7に示したステップS301〜S323の処理動作は、
図4に示したステップS201〜S223の処理動作と同じであるので、ここでの説明は省略する。
【0044】
コントローラ3Aは、ΔTrが0>ΔTrであった場合(
図7:ステップS319のNO)、すなわち室内温度Trpvが冷房設定温度Trspよりも低かった場合、ΔTrと負方向に定められた第1の所定値Th1とを比較する(
図8:ステップS324)。ここで、ΔTrが第1の所定値Tth1よりも大きかった場合(Tth1<ΔTr)(ステップS324のYES、
図10に斜線で示す領域V参照)、コントローラ3Aは、「偏差小」であるとして、換気装置2を非熱交換換気モードとし(ステップS325)、換気装置2の外気導入量を「L」とし(ステップS326)、空調機1を送風モードとし(ステップS327)、空調機1の送風量を「L」とする(ステップS328)。
【0045】
コントローラ3Aは、ΔTrが第1の所定値Tth1以下(ΔTr≦Tth1)であった場合(ステップS324のNO)、ΔTrと第2の所定値Tth2(<Tth1)とを比較する(ステップS329)。ここで、ΔTrが第2の所定値Tth2よりも大きかった場合(Tth2<ΔTr)(ステップS329のYES、
図10に斜線で示す領域VI参照)、コントローラ3Aは、「偏差中」であるとして、換気装置2を熱交換換気モードとし(ステップS330)、換気装置2の外気導入量を「H」とし(ステップS331)、空調機1を送風モードとし(ステップS332)、空調機1の送風量を「L」とする(ステップS333)。
【0046】
コントローラ3Aは、ΔTrが第2の所定値Tth2以下(ΔTr≦Tth2)であった場合(ステップS329のNO、
図10に斜線で示す領域VII参照)、「偏差大」であるとして、換気装置2を熱交換換気モードとし(ステップS334)、換気装置2の外気導入量を「H」とし(ステップS335)、空調機1を暖房モードとする(ステップS336)。
【0047】
前述した実施の形態2では、外気温度Toutが冷房設定温度Trspよりも著しく低い場合、外気冷房効果によって室内温度Trpvが徐々に下がり、ついには冷房設定温度Trsp以下となり、制御対象空間4が冷えすぎの状態となってしまう恐れがある。
【0048】
これに対し、この実施の形態3では、室内温度Trpvと冷房設定温度Trspとの負方向の偏差が一定範囲の間(「偏差中」の間)は、換気装置2を熱交換換気モードに切り替えることで排熱の回収を図り、それでもなお室内温度Trpvの低下が止まらず、室内温度Trpvと冷房設定温度Trspとの負方向の偏差がさらに大きくなった場合(「偏差大」となった場合)には、空調機1を暖房モードでの運転(暖房運転)に切り替える。これにより、制御対象空間4が冷えすぎの状態となるという問題を解消することが可能となる。
【0049】
〔実施の形態の拡張〕
以上、実施の形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明の技術思想の範囲内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。また、各実施の形態については、矛盾しない範囲で任意に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0050】
1…空調機、2…換気装置(全熱交換器)、3(3A)…コントローラ、4…制御対象空間、5…室内温度センサ、6…外気温度センサ、7…室内温度設定器、D1〜D3…ダクト。