特許第6006711号(P6006711)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許60067111級アルカノールアミンを含むLCD製造用フォトレジスト剥離液組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6006711
(24)【登録日】2016年9月16日
(45)【発行日】2016年10月12日
(54)【発明の名称】1級アルカノールアミンを含むLCD製造用フォトレジスト剥離液組成物
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/42 20060101AFI20160929BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20160929BHJP
   B08B 3/08 20060101ALI20160929BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20160929BHJP
【FI】
   G03F7/42
   H01L21/30 572B
   B08B3/08 Z
   H01L21/304 647A
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-235744(P2013-235744)
(22)【出願日】2013年11月14日
(62)【分割の表示】特願2011-187941(P2011-187941)の分割
【原出願日】2011年8月30日
(65)【公開番号】特開2014-63186(P2014-63186A)
(43)【公開日】2014年4月10日
【審査請求日】2014年8月29日
(31)【優先権主張番号】10-2010-0122001
(32)【優先日】2010年12月2日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】510311746
【氏名又は名称】エルティーシー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】ホ ソン・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ムン キョ・チョン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン イル・ペ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン スン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ヘ ソン・ヤン
【審査官】 清水 裕勝
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−186243(JP,A)
【文献】 特開2001−350276(JP,A)
【文献】 特開2001−209190(JP,A)
【文献】 特開2005−043874(JP,A)
【文献】 特開2000−241991(JP,A)
【文献】 特表2007−511784(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/051237(WO,A1)
【文献】 米国特許第06440326(US,B1)
【文献】 特表2008−528762(JP,A)
【文献】 特表2011−525641(JP,A)
【文献】 化学大辞典3 縮刷版,日本,共立出版株式会社,1976年 9月10日,第19刷,p.95
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/00
G03F 7/26−7/42
H01L 21/027
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール 1〜20重量%;
(b)アルコール10〜60重量%;及び
(c)極性有機溶剤5〜70重量%;を含むLCD製造用フォトレジスト剥離液組成物であって、
前記アルコールが、エチレングリコール、オクタノール、1−ヘプタノール、1−デカノールおよび2−ヘプタノールからなる群から選ばれた1種以上であり、および
前記極性有機溶剤が、スルホラン、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド及びモノメチルホルムアミドからなる群から選ばれた1種以上である、
前記LCD用フォトレジスト剥離液組成物。
【請求項2】
アルコールが、エチレングリコールである、請求項1に記載のLCD用フォトレジスト剥離液組成物。
【請求項3】
(a)2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール 1〜20重量%;
(b)アルコール10〜60重量%;及び
(c)極性有機溶剤5〜70重量%;を含むLCD製造用フォトレジスト剥離液組成物であって、
前記アルコールが、エチレングリコール、オクタノール、1−ヘプタノール、1−デカノールおよび2−ヘプタノールからなる群から選ばれた1種以上であり、および
前記極性有機溶剤が、N−メチルピロリドンおよびジエチレングリコールモノエチルエーテルの混合物である、前記LCD用フォトレジスト剥離液組成物。
【請求項4】
アルコールが、エチレングリコールである、請求項3に記載のLCD用フォトレジスト剥離液組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトレジスト剥離液組成物に関し、TFT−LCD全工程に使用可能な統合フォトレジスト剥離剤に関する。
【背景技術】
【0002】
フラットパネルディスプレイ(FPD)の製造工程において、基板上に一定のパターンを形成するためにフォトリソグラフィ(Photo-lithography)工程が広く利用されている。このようなフォトリソグラフィ工程は、大きく露光工程、乾式又は湿式エッチング工程、及びアッシング(ashing)などの一連の工程から構成されており、基板上にフォトレジスト(Photo Resist)を塗布し露光した後、これに対して乾式又は湿式エッチングを行ってパターンを形成する。このとき、金属配線上に残っているフォトレジストは、フォトレジスト剥離剤を用いて除去することになる。
【0003】
これまで使われてきたLCD工程用フォトレジスト剥離剤の組成は、主に水を含まない有機系で、1,2級アルカノールアミン類、極性溶媒又はグリコール類の混合物が使われてきた。一般に、エッチング工程後に残存しているフォトレジストを上述のフォトレジスト剥離剤を用いて剥離させてから水で洗浄するが、この場合、金属配線が腐食され、フォトレジストの再吸着に因り不純物が生成されるという問題点がある。これは、アルカノールアミン類が水と混ざると水酸化イオンを発生させて、アルミニウムを含む金属の腐食性が相当増加するからである。そのため、金属配線の腐食を防止するための特別な腐食防止剤が必要とされるが、従来の腐食防止剤は、その原価が高くて経済性に劣るといった問題点があった。これにより、特に最近は、LCDのようなフラットパネルディスプレイの製造における工程原価の上昇が不可避であった。
【0004】
また、TFT LCD Al配線膜の場合、変性フォトレジストを剥離しなければならないが、このとき、弱塩基性アミンは、フォトレジスト除去能力の低下に因りフォトレジストの剥離が完璧ではない場合がある。韓国特許第10−0950779号には、弱塩基性アルカノールアミンが3級アルカノールアミンを含むフォトレジスト剥離剤組成物が開示されているが、同組成物を使用した結果、変性フォトレジストの剥離が完璧ではないという問題点があった。
【0005】
一方、水により活性化された強塩基性アルカノールアミンを使用する場合、Al及びCu配線膜の損傷が不回避であるため、これを解決するために、既存の有機系LCD用剥離液には腐食防止剤を微量添加する。しかし、水を含むフォトレジスト剥離液を用いてTFT−LCDフォトレジスト剥離工程を進行する場合、使用時間によって水が揮発するため、剥離液内の水の含有量が変化して、腐食防止剤の腐食防止能力及びフォトレジスト剥離能力が急激に変わる。従ってこれまで、有機系剥離液組成において強塩基性アルカノールアミンと腐食防止剤を添加したLCD用剥離液組成物に関しては多くの報告が存在したが、強塩基性アルカノールアミンを用いた水系LCD用剥離液組成物に関しては見つけるのが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国特許第10−0950779号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
よって、本発明者らは、メルカプト基が含まれたアゾール系化合物を腐食防止剤として用いた、比較的安定した腐食防止及びフォトレジスト剥離剤を開発することにより、上記のような問題の解決を図る。
本発明の目的は、TFT−LCD用剥離液組成物添加剤であるメルカプト基が含まれたアゾール系化合物を腐食防止剤として用いて、水の含有量変化時にもCu及びAlの腐食防止及びフォトレジスト剥離能力を一定に維持する水系フォトレジスト剥離剤を提供することにある。
【0008】
上記の目的を達成するための一具体例で、(a)1級アルカノールアミン1〜20重量%;(b)アルコール10〜60重量%;(c)水0.1〜50重量%;(d)極性有機溶剤5〜50重量%;及び(e)腐食防止剤0.01〜3重量%;を含むLCD製造用フォトレジスト剥離液組成物を提供する。
【0009】
他の具体例で、上記1級アルカノールアミンは、モノエタノールアミン(Monoethanol amine)、モノイソプロパノールアミン(Monoisopropanol amine)、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(2-amino-2-methyl-1-propanol)、2−メチルアミノエタノール(2-Methylaminoethanol)及び3−アミノプロパノールアミン(3-Aminopropanol amine)からなる群から選ばれた1種以上であることを特徴とするLCD用フォトレジスト剥離液組成物を提供する。
もう一つの具体例で、上記アルコールは、エチレングリコール(Ethylene Glycol)、1−ヘキサノール(1-Hexanol)、オクタノール(Octanol)、1−ヘプタノール(1-Heptanol)、1−デカノール(1-Decanol)、2−ヘプタノール(2-Heptanol)及びテトラヒドロフルフリルアルコール(Tetrahydrofurfurylalcohol)からなる群から選ばれた1種以上であることを特徴とするLCD用フォトレジスト剥離液組成物を提供する。
【0010】
もう一つの具体例で、上記腐食防止剤は、C5−C10ヘテロ環式化合物であり、環を構成する炭素が、N、O及びSからなる群から選ばれた一つ以上の原子で置換されてなり、該ヘテロ環の炭素原子にメルカプト基が置換されていることを特徴とするLCD製造用フォトレジスト剥離液組成物を提供する。
【0011】
もう一つの具体例で、上記ヘテロ環式化合物は、イミダゾールであることを特徴とするLCD製造用フォトレジスト剥離液組成物を提供する。
もう一つの具体例で、上記腐食防止剤は、2−メルカプトベンズイミダゾール(2-Mercaptobenzimidazole)、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジゾール(2,5-Dimercapto-1,3,4-thiadizole)及び2−メルカプトベンゾチアゾール(2-Mercaptobenzothiazole)からなる群から選ばれた1種以上であることを特徴とするLCD製造用フォトレジスト剥離液組成物を提供する。
【0012】
もう一つの具体例で、上記極性有機溶剤は、R-O(CH2CH2O)Hの化学式(ここで、上記Rは、線状炭化水素、分岐炭化水素又は環状炭化水素のうちの何れか一つである)を有するグリコールを含有するLCD製造用フォトレジスト剥離液組成物を提供する。
【0013】
もう一つの具体例で、上記極性有機溶剤は、N−メチルピロリドン(N-methylpyrollidone,NMP)、スルホラン(Sulfolane)、ジメチルスルホキシド(Dimethylsulfoxide,DMSO)、ジメチルアセトアミド(Dimethylacetamide,DMAC)及びモノメチルホルムアミド(Monomethylformamide)からなる群から選ばれた1種以上であることを特徴とするLCD製造用フォトレジスト剥離液組成物を提供する。
【0014】
一具体例で、(a)1級アルカノールアミン1〜20重量%;(b)アルコール10〜60重量%;及び(c)極性有機溶剤5〜70重量%;を含むLCD製造用フォトレジスト剥離液組成物を提供する。
他の具体例で、上記1級アルカノールアミンは、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(2-amino-2-methyl-1-propanol)であることを特徴とするLCD製造用フォトレジスト剥離液組成物を提供する。
【0015】
もう一つの具体例で、上記アルコールは、エチレングリコール(Ethylene Glycol)、1−ヘキサノール(1-Hexanol)、オクタノール(Octanol)、1−ヘプタノール(1-Heptanol)、1−デカノール(1-Decanol)、2−ヘプタノール(2-Heptanol)及びテトラヒドロフルフリルアルコール(Tetrahydrofurfurylalcohol)からなる群から選ばれた1種以上であることを特徴とするLCD用フォトレジスト剥離液組成を提供する。
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において、本発明によるフォトレジスト剥離液の構成要素は、メルカプト基が含まれたアゾール系化合物を腐食防止剤として0.01〜3重量%使用する。腐食防止剤の重量比が低すぎる場合は、金属配線膜に対する腐食防止効果がほとんど現れず、特に、腐食防止剤の含有量が低い場合、水の量が減るほど腐食防止効果の減少が著しい。腐食防止剤の重量比が高すぎる場合は、フォトレジスト剥離能力が弱くなる。本発明による組成物において腐食防止剤を3重量%使用する場合、腐食防止及び剥離能力に異常がないことを確認した。尚、腐食防止剤は高価なため、必要以上の量を投入する必要はない。
【0017】
また、LCDパターン成分要素であるMo、Al及びCuなどの腐食防止能力を一層向上させるために、その他の腐食防止剤を添加できる。そして、pH11(10%水溶液基準)以上である1,2級アルカノールアミン(例:モノエタノールアミン(Monoethanolamine, MEA)、モノイソプロパノールアミン(Monoisopropanolamine, MIPA)、2−メチルアミノエタノール(2-Methylaminoethanol, 2-MAE)、ジエチルエタノールアミン(Diethylethanolamine、DEEOA)及びMDEA,MDMA,DEEOA混合液)の含有量は、1〜20重量%でありうる。水の含有量は0.1〜50重量%、アルコール(例;エチレングリコール(Ethylene Glycol, EG, 沸点:197.7℃)の含有量は10〜60重量%でありうる。極性有機溶剤としては、N−メチルピロリドン(N-methylpyrollidone, NMP)、ジメチルスルホキシド(Dimethylsulfoxide, DMSO)、ジメチルアセトアミド(Dimethylacetamide, DMAC)及びN−メチルホルムアミド(N-Methylformamide, NMF)等を5〜50重量%単独又は混合使用することができる。
【0018】
また、剥離後における洗浄力の向上のために、グリコール類は、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(Diethyleneglycolmonoethylether, EDG)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(Diethyleneglycolmonobutylether、BDG)、トリエチレングリコールエーテル(Triethyleneglycolether, TEG)等を20%〜60%単独又は混合使用することができる。重量比は5〜50重量%が適当で、少なすぎる場合は硬化したフォトレジストを十分に溶解できず、逆に多すぎる場合は価格が高くなるという短所がある。
【0019】
剥離液に対する、pH11以上で沸点が150℃以上である1級アルカノールアミンの重量比は1〜20重量%が適当で、1重量%未満である場合は、変性フォトレジスト剥離力に問題が生じ、工程進行に伴う損失により剥離力に問題が生じる。20重量%超過の場合は、腐食防止剤が相対的に追加投入されなければならず、金属配線膜が腐食する恐れがあり、製造コストの上昇を招く。水の含有量は0.1〜50重量%、アルコール(沸点:150℃以上、(例;エチレングリコール(Ethylene Glycol, EG, 沸点:197.7℃)、テトラヒドロフルフリルアルコール(Tetrahydrofurfurylalcohol, THFA, 沸点:178℃)など)の含有量は10〜60重量%が適当で、比率が少なすぎる場合、Cu配線膜の腐食防止能力が低下する恐れがある。
【0020】
また、水の比率が高すぎる場合、Al金属配線が腐食する恐れがあり、フォトレジスト剥離効果が低下する。アルコールを添加しない場合、腐食防止及び剥離能力には影響を与えないが、剥離工程進行時、工程温度(40℃以上)と装備内の排気圧により水が揮発されて剥離液の寿命が短縮される。従って、LCDフォトレジスト剥離工程進行時、剥離液の使用時間に応じて適当量のアルコールを混合して使用すればよい。
【0021】
本発明によるフォトレジスト剥離液組成物は、水を含む水系である。水を含む水系剥離液は、有機系剥離液に比べてアミンの塩基度が一層活性化される。従って、フラットパネルディスプレイの製造工程において、乾式エッチング、インプラント及びハードベーク工程進行後に残っている変性フォトレジストに対する除去能力が、一般的に使用されている有機系LCD用剥離液に比べて、低い工程温度を適用しても遥かに優れている。低い工程温度の適用は、フラットパネルディスプレイの製造原価節減を可能にする。また、本発明による剥離液組成物は、最適の腐食防止剤を用いていることからアルミニウム配線と銅配線のどちらにも適用可能であり、有機膜及びCOA工程に導入できる。
【0022】
また、グリコール類を一つ又は二つ以上混合してフォトレジストの剥離を効果的に補助できる。グリコール類は、溶解されたフォトレジストを剥離剤に広く行き渡らせる役割を果たして、迅速な除去に有用である。上述のグリコールの場合、構造がR-O(CH2CH2O)Hであり、ここで‘R'は、線状炭化水素、分岐炭化水素及び環状炭化水素のうちの何れか一つを示す。
【0023】
更に具体的には、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(Diethyleneglycolmonomethylether, MDG)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(Diethyleneglycolmonoethylether, EDG)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(Diethyleneglycolmonobutylether, BDG)及びトリエチレングリコールエーテル(Triethyleneglycolether, TEG)等を使用することができる。
【0024】
全体組成に対するグリコール類の重量比は10〜70重量%が適当で、上述のR-O(CH2CH2O)Hに該当するもののうち一つ又は二つ以上を混合して使用することができる。
一方、1級の強塩基性アルカノールアミンでも立体障害のある2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(2-amino-2-methyl-1-propanol, 以下“AMP”という)は、水なしでアルコール類だけ添加した有機系組成において腐食防止剤を使用せずに、変性されたフォトレジストを完全に剥離すると共に、Al及びCu配線の腐食を防止できる。
【0025】
AMPは、1級アミンであるため、水とは下記反応式(1)によりOHを生成して金属配線膜を腐食させる。水がない場合、アミンと金属との腐食反応は下記反応式(2)の通りである。この時、AMPは、1級アミンではあるが、下記反応式(2)のRグループが非常に大きいことから立体障害が生じて腐食反応を抑制する。一方、AMPは、1級の強塩基性アミンであるため、変性されたフォトレジストの剥離に有利である。
【0026】
(1)水溶液状態におけるアミンと銅との腐食反応
RNH2 + H2O → RNH3+ + OH-
Cu2+ + 2OH- → Cu(OH)2(s)
Cu(OH)2(s) + 4RNH3+ → [Cu(RNH2)4]

(2)有機溶液状態におけるアミンと銅との腐食反応
Cu2+ + 4RNH2 → Cu(RNH2)42
【0027】
よって、本発明は、TFT−LCDフォトレジスト剥離工程時、銅及びアルミニウム配線に対し、水が含まれているにもかかわらず腐食防止及び剥離能力に卓越し、工程進行後の変性フォトレジストに対する除去能力にも優れ、既存発明の長所を維持したまま短所は克服したフォトレジスト剥離組成物を提供できる。
【0028】
本発明によるフォトレジスト剥離剤は、半導体又はフラットパネルディスプレイの製造工程において、工程進行後の変性フォトレジストに対する除去能力に優れ、アルミニウム配線と銅配線のどちらにも適用可能であり、有機膜及びCOA工程に導入でき、沸点が150℃以上のアルコール類及び水と混合して使用すれば、腐食防止能力が向上し使用時間を増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、フォトレジストが除去されていないAl金属膜配線ガラス基板をオーブンにて170℃の温度で10分間熱処理して製作したものを示した顕微鏡代表写真である。
図2図2は、温度を50℃に維持した剥離液に、熱処理製作(170℃/10分)された基板を30秒間浸漬させ、変性されたフォトレジストの除去程度を評価した結果、フォトレジストが除去されずに基板に残っていることを示した顕微鏡代表写真である(Xに該当する)。
図3図3は、温度を50℃に維持した剥離液に、熱処理製作(170℃/10分)された基板を30秒間浸漬させ、変性されたフォトレジストの除去程度を評価した結果、フォトレジストの一部が除去されずに基板に残っていることを示した顕微鏡代表写真である(△に該当する)。
【0030】
図4図4は、温度を50℃に維持した剥離液に、熱処理製作(170℃/10分)された基板を30秒間浸漬させ、変性されたフォトレジストの除去程度を評価した結果、フォトレジストが完全に除去されたことを示した顕微鏡代表写真である(◎に該当する)。
図5図5は、フォトレジストが除去されていないCu金属膜配線ガラス基板をSEMで撮影した代表写真である。
図6図6は、温度を50℃に維持した剥離液に、フォトレジストが除去されていないCuガラス基板を10分間浸漬させ、Cu表面の腐食程度を評価した結果、(◎)に該当することを示したSEM代表写真である。
【0031】
図7図7は、温度を50℃に維持した剥離液に、フォトレジストが除去されていないCuガラス基板を10分間浸漬させ、Cu表面の腐食程度を評価した結果、(?)に該当することを示したSEM代表写真である。
図8図8は、温度を50℃に維持した剥離液に、フォトレジストが除去されていないCuガラス基板を10分間浸漬させ、Cu表面の腐食程度を評価した結果、(△)に該当することを示したSEM代表写真である。
図9図9は、温度を50℃に維持した剥離液に、フォトレジストが除去されていないCuガラス基板を10分間浸漬させ、Cu表面の腐食程度を評価した結果、(X)に該当することを示したSEM代表写真である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を下記実施例により詳しく説明する。但し、下記実施例は、本発明を例示するだけであって、本発明の内容を限定するものではない。
【実施例】
【0033】
実施例1
本発明によるフォトレジスト剥離液組成物の性能を評価するための変性フォトレジスト剥離能力及び腐食防止能力試験は、次のような方法で行なった。剥離液組成物は、腐食防止剤として2−メルカプトベンズイミダゾールを1重量%含有し、アミン、水など残りの具体的な構成成分及びその組成(重量%)は、下記表1の通りである。フォトレジストが除去されていないAl金属膜配線ガラス基板をオーブンにて160℃の温度で10分間熱処理して製作した。上記製造された剥離液組成物を50℃に維持しながら、上記製作された基板を剥離液組成物に30秒間浸漬させ、変性されたフォトレジストの除去程度を評価した。
また、剥離液組成物を50℃に維持しながら、Cu金属膜配線ガラス基板を剥離液組成物に10分間浸漬させ、Cu配線膜の腐食有無を評価した。評価基準は、アセトンに10分間浸漬させたCu金属膜配線ガラス基板を対照群として使用した(表1)。
【0034】
上記実験の結果値は、次のような記号で表1に示した。
[Al配線の変性フォトレジスト(PR)剥離能力]
◎:変性されたフォトレジストが完全除去された
△:変性されたフォトレジストが痕跡量残っている
X:変性されたフォトレジストが1/3以上残っている
【0035】
[Cu配線の腐食程度]
◎:対照群基板と腐食程度が同一
○:対照群基板と対比して膜厚は同一であるが表面に微弱の腐食が発生
△:対照群基板と対比して膜厚が減少し表面に腐食が発生
X:Cu配線膜が腐食されて膜厚が1/2以上減少した
【0036】
【表1】
【0037】
MEA :モノエタノールアミン(Monoethanol amine)
MIPA :モノイソプロパノールアミン(Monoisopropanol amine)
DIPA :ジイソプロパノールアミン(Diisopropanol amine)
TIPA :トリイソプロパノールアミン(Triisopropanol amine)
AMP : 2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(2-amino-2-methyl-1-propanol)
【0038】
2-MAE:2−(メチルアミノ)エタノール(2-(Methylamino)ethanol)
MDEOA:メチルジエタノールアミン(Methyldiethanol amine)
DEEOA:ジエチルエタノールアミン(Diethylethanol amine)
AEEOA:アミノエチルエタノールアミン(Aminoethylethanol amine)
3-APN:3−アミノプロパノールアミン(3-Aminopropanol amine)
MDEA :メチルジエタノールアミン(Methyldiethanolamine)
【0039】
MDMA :メチルジメタノールアミン(Methyldimethanolamine)
EG :エチレングリコール(EthyleneGlycol)
EDG :ジエチレングリコールモノエチルエーテル(Diethyleneglycolmonoethylether)
NMP :N−メチルピロリドン(N-methylpyrrolidone)
THFA :テトラヒドロフルフリルアルコール(Tetrahydrofurfurylalcohol)
MBI :2−メルカプトベンズイミダゾール(2-Mercaptobenzimidazole)
【0040】
表1のように、腐食防止剤として2−メルカプトベンズイミダゾール(2-Mercaptobenzimidazole)を含んだ本発明の組成物条件において、変性PR剥離能力とCu配線腐食防止能力を共に満たす組成が得られる。
【0041】
比較例1
腐食防止剤(MBI、2−メルカプトベンズイミダゾール)を含まないという点を除いては、実施例1と同一の方法で実験を行なった。その結果は表2の通りであり、表2に記載された略語は上述した通りである。
【0042】
【表2】
【0043】
表2の通り、水系フォトレジストにおいて1級アルカノールアミン及び水を使用しながらCu腐食防止剤を添加しない条件では、変性フォトレジスト剥離能力が落ちるか、又はCu配線腐食防止能力が顕著に減少した。
【0044】
実施例2
Cu腐食防止剤の種類又はアルコールの含有量だけを下記表3の通り異にすることを除いては、実施例1と同一の方法で実験を行なった。その結果は、表3の通りである。
【0045】
【表3】
【0046】
BIMD:ベンズイミダゾール(Benzimidazole)
IMD :イミダゾール(Imidazole)
4-MIMD:4−メチルイミダゾール(4-methylimidazole)
BTA :ベンゾトリアゾール(Benzotriazole)
TTA :テトラゾール(Tetrazole)
MBI :2−メルカプトベンズイミダゾール(2-Mercaptobenzimidazole)
2,5-DTA:2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジゾール(2,5-Dimercapto-1,3,4-thiadizole)
MBT:2−メルカプトベンゾチアゾール(2-Mercaptobenzothiazole)
【0047】
表3の結果から分かるように、メルカプト基が含まれていない化合物を腐食防止剤として使用した場合は、配線が腐食されたり、工程後に腐食防止剤が残留するといった問題点が発生したが、2−メルカプトベンズイミダゾール(2-Mercaptobenzimidazole)、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジゾール及び2−メルカプトベンゾチアゾール(2-Mercaptobenzothiazole)のようなメルカプト基が含まれているアゾール系化合物を腐食防止剤として使用した場合は、配線の腐食がほぼ完全に防止され、残留する腐食防止剤も全くないことが確認できた。
【0048】
実施例3
1級アミンとして、立体障害のあるAMP(2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール)を用いて上記実施例1と同様の方法で実験を行なった。その結果は表4の通りである。
【0049】
【表4】
【0050】
表4の結果の通り、AMPは、水及び腐食防止剤を添加した場合だけでなく、水なしでアルコール類だけを添加した有機系組成において金属配線膜腐食剤を使用しない場合も、変性されたフォトレジストを完全に剥離すると共に、Al及びCu配線の腐食を効果的に防止できることが確認された。
【0051】
以上の実験結果の通り、水系フォトレジスト剥離剤の製造時、強塩基である1級エタノールアミンとメルカプト基とが含まれているアゾール系化合物を腐食防止剤として用いれば、著しく変性されたフォトレジストの完全剥離と銅配線の腐食防止が両方可能である。また、立体障害のある1級アルカノールアミンであるAMPは、水が含まれていない有機系組成で用いられるとき、腐食防止剤なしでも銅配線が腐食されなかった。
【0052】
以上、例示的な実施様態を参照しながら本発明について記述したが、本発明の属する技術分野の当業者であれば、本発明の範ちゅうを逸脱することなく多様な変化を実施しその要素を等価物で代替することが可能であることを理解できるであろう。
【0053】
また、本発明の本質的な範ちゅうを逸脱することなく多様な変形を実施して特定の状況及び材料を本発明の教示内容に採用することが可能である。従って、本発明が、本発明の実施にあたって計画された最上の様式として開示された特定の実施様態に極限されるのではなく、本発明の特許請求範囲に属する実施様態全てを含むものと解釈されなければならない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9