(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6006721
(24)【登録日】2016年9月16日
(45)【発行日】2016年10月12日
(54)【発明の名称】プリフォームの温度調整装置及びプリフォームの温度調整方法、樹脂製容器及び樹脂製容器の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 49/68 20060101AFI20160929BHJP
【FI】
B29C49/68
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-524752(P2013-524752)
(86)(22)【出願日】2012年7月20日
(86)【国際出願番号】JP2012068471
(87)【国際公開番号】WO2013012067
(87)【国際公開日】20130124
【審査請求日】2015年7月6日
(31)【優先権主張番号】特願2011-159316(P2011-159316)
(32)【優先日】2011年7月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000227032
【氏名又は名称】日精エー・エス・ビー機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(72)【発明者】
【氏名】中原 敦
【審査官】
辰己 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】
特開平03−051117(JP,A)
【文献】
特開2007−001187(JP,A)
【文献】
特開平07−205997(JP,A)
【文献】
特開平03−290225(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C49/00−49/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底プリフォームの底部及び前記底部に連続する周囲部の一部の外周面を保持する温度調整ポットと、
前記有底プリフォームの前記周囲部の外側に配される温度調整ブロックと、
前記有底プリフォームの内側に挿入され、先端部で前記底部及び前記底部に連続する前記周囲部の一部の内周面に接触する温度調整コアと、
前記温度調整ポットと前記温度調整コアの間に前記有底プリフォームの底部壁面を保持し、前記温度調整ポットと前記温度調整コアを相対的に接近させ前記底部および前記周囲部の一部を密着させて挟持する押付け駆動手段と、を備え、
前記温度調整ポットは冷却用のポットであり、
前記温度調整コアは冷却用のコアであり、
前記温度調整ブロックは加熱用のブロックであり、
前記有底プリフォームは、前記底部に連続する周囲部に対し前記底部の肉厚が厚くされたものが前記温度調整ポットと前記温度調整コアの間に配され、
前記温度調整コアは、その先端部に、四角い容器の角部となる部分に接触するように四角い形状に形成された冷却コア部を有する
ことを特徴とするプリフォームの温度調整装置。
【請求項2】
射出成形により、底部及び前記底部に連続する周囲部を有し前記周囲部に対して前記底部の肉厚が厚くされた有底プリフォームを成形し、
前記有底プリフォームの前記底部及び前記底部に連続する周囲部の一部の外周面を温度調整ポットにより密着保持して温度調整し、
前記有底プリフォームの前記底部に連続する周囲部の一部を除く前記周囲部の部位を所定の温度に相対的に昇温させ、
温度調整ポットと前記プリフォームの前記底部及び前記底部に連続する周囲部の一部とを密着保持する際、前記プリフォームの前記底部及び前記底部に連続する胴部の下方部位を、前記温度調整ポットの内壁面と前記プリフォームの内側に挿入される温度調整コアとの間で機械的に押圧して最終容器に近い形状に圧縮変形させ、
前記温度調整コアは、その先端部に、四角い容器の角部となる部分に接触するように四角い形状に形成された冷却コア部をその先端部に備え、
この四角い形状の冷却コア部を前記プリフォームの前記底部に接触させて前記底部を変形させる
ことを特徴とするプリフォームの温度調整方法。
【請求項3】
請求項2に記載のプリフォームの温度調整方法において、
前記底部及び前記底部に連続する周囲部の一部が冷却用のポットと冷却用のコアの間に配され、冷却用のポットと冷却用のコアを互いに接近させることにより、前記底部及び前記底部に連続する周囲部の一部の外周面が冷却用のポットに密着すると共に内周面が冷却用のコアに密着して冷却される
ことを特徴とするプリフォームの温度調整方法。
【請求項4】
請求項3に記載のプリフォームの温度調整方法において、
前記底部及び前記底部に連続する周囲部の一部を除く前記有底プリフォームの周囲部は完全な非接触状態もしくは周囲部の内周面において一部接触状態で所定の温度に相対的に昇温される
ことを特徴とするプリフォームの温度調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形されたプリフォームの温度を制御するプリフォームの温度調整装置及びプリフォームの温度調整方法に関する。
また、本発明は、樹脂製容器及び樹脂製容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂としてポリエチレンテレフタレート(PET)を用いて有底状のプリフォームをブロー成形して製造される容器が知られている。プリフォームは、射出成形により製造され、所定の温度調整の処理が施される(例えば、特許文献1参照)。プリフォームが所定の温度状態に調整された後、ブロー成形されて延伸されることで、所望の形状の容器が得られる。ブロー成形されて製造された樹脂製の容器は、デザインの処理や大量生産に優れ、軽量で耐衝撃性にも優れた容器として幅広く使用されている。
【0003】
ここで、化粧品や乳液等を収容する容器としては、ガラス製のびんが好んで用いられている。化粧品等を収容する容器は、消費者の購買意欲を高めるため、容器自体に美的鑑賞に堪える外観が要求される。この点、ガラス製のびんは、重厚感や高級感があり、繰返し使用しても美麗な状態を保つことができるという点で申し分ない。しかしながら、ガラス製のびんは重くて割れやすく、輸送や製造にかかるコストが高いという欠点も存在する。
【0004】
そこで近年、化粧品等の容器として、ガラス製のびんに代えて樹脂製の容器が用いられることが検討されてきている。樹脂製の容器は、割れにくいうえ軽量で取り扱いやすく、しかも安価という利点がある。しかし、ガラス製のような重厚感や高級感といった美的外観を備えることが難しく、消費者がもつ容器イメージと合わないという問題がある。そこで、これら樹脂製の容器に対し、ガラス製と同程度の美的外観を持たせる工夫が必要になってくる。
【0005】
例えば、化粧品等を収容するガラス製のびんは、高級感や重量感を強調させるため、肉厚に形成されている。収容物に伴い容器形状は適宜変更されるものの、一般的には、底部をかなり肉厚にする一方で、胴部を底部に対して薄く均肉化させたものが多い。従って、樹脂製の容器においても同様に、底部を肉厚、胴部を薄く均肉化させたものに成形することが望ましい。
【0006】
樹脂製の容器を製造する手法としては、射出成形法もしくはブロー成形法が存在する。射出成形法では、一般的に容器の口部内径と胴部内径が等しいものに限定され、成形に必要な樹脂量も多くなる。そこで、容器の口部内径が胴部内径より小さいボトル型の容器を製造するためには、ブロー成形法を用いなければならない。
【0007】
ブロー成形法は、プリフォームを室温まで冷却せずに射出成型時の保有熱(内部熱量)を活用しブロー成形するホットパリソン方式と、プリフォームを一旦室温まで冷却して再加熱しブロー成形するコールドパリソン方式の2種類が存在する。主に化粧品等が収容される中小型である容器の成形においては、エネルギー消費量や賦形性の面で有利な、ホットパリソン方式が通常用いられる。
【0008】
一般的なプリフォームの成形は、射出キャビティ型と射出コア型およびネック型によって形成された射出空間に、溶融樹脂を射出充填することで行われる。溶融樹脂は冷却された射出キャビティ型や射出コア型と接した内外表面で80℃程度まで急冷固化され、表面にスキン層を形成する。スキン層が形成されることで、形状を維持した状態でプリフォームを射出型から離型させることができる。一方、プリフォームの内部は冷却未完の状態であり、140℃程度の高温状態にある。
【0009】
ホットパリソン方式では、プリフォームの各部の保有熱は肉厚に比例し、肉厚であるほど延伸しやすい。また延伸により肉厚が薄肉化して表面積が増すと、延伸した部位の温度が低下して延び難くなるので、延伸は相対的に厚肉で温度が高い隣接部位に移行してゆく。そこで、最終成形器の要求される規格値を考慮してプリフォーム各部の肉厚を調整し、最終容器上で所望の肉厚分布を実現させる手法がとられる。
【0010】
ここで、射出成形後のプリフォームを適切な温度状態に調節するため、温度調整装置を設けることがある。この温度調整装置は、射出成形時に生じるプリフォームの好ましくない温度分布を緩和したり、容器の肩部や底部など肉厚化させたい箇所の温度を局所的に下げたりする点で効果がある。
【0011】
しかしながら、従来の温度調整装置によりプリフォームに温度分布を授けようとしても、隣接する部位に徐々に熱が伝わってしまうため、隣接部位と明確に峻別されえるような温度分布を付与させることはできなかった。したがって、肉厚の底部と薄く均肉である胴部が隣接するような樹脂製の容器を製造することは、技術的にきわめて困難であった。また、肉厚になるほどブロー成形で均等に延伸させることは難しく、偏肉や歪みがない肉厚の容器を成形することは難しかった。
【0012】
上記理由により、底部が肉厚であり胴部が比較的薄肉かつ均肉である(化粧品等が収容される中小型の容器として良好な肉厚分布をもつ)、ガラス瓶状の質感を呈する樹脂製の容器を成形する手法は、未だ確立していないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平3−51117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、消費者のもつ容器イメージに合う美的外観を備えるために見栄えを向上させた容器を得ることができるプリフォームの温度調整装置を提供することを目的とする。特に、肉厚の底部と肉薄で均肉な胴部が隣接した樹脂製容器を得るためのプリフォームの温度調整装置を提供することを目的とする。
【0015】
また、本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、消費者のもつ容器イメージに合う美的外観を備えるために見栄えを向上させた容器を得ることができるプリフォームの温度調整方法を提供することを目的とする。特に、肉厚の底部と肉薄で均肉な胴部が隣接した樹脂製容器を得るためのプリフォームの温度調整方法を提供することを目的とする。
【0016】
また、プリフォームの温度調整装置で温度調整されたプリフォームを用いて作製され、見栄えが向上した樹脂製容器を提供することを目的とする。
【0017】
また、プリフォームの温度調整方法で温度調整されたプリフォームを用いて作製され、見栄えが向上した樹脂製容器を得ることができる樹脂製容器の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するための請求項1に係る発明のプリフォームの温度調整装置は、有底プリフォームの底部及び前記底部に連続する周囲部の一部の外周面
を保持する温度調整ポットと、前記有底プリフォームの前記周囲部の外側に配される温度調整ブロックと、前記
有底プリフォームの内側に挿入され、先端部で前記底部及び前記底部に連続する前記周囲部の一部の内周面に接触する温度調整コアと、前記温度調整ポットと前記温度調整コアの間に前記有底プリフォームの底部壁面を保持し、前記温度調整ポットと前記温度調整コアを相対的に接近させ前記底部および前記周囲部の一部を密着させて
挟持する押付け駆動手段と、を備え、
前記温度調整ポットは冷却用のポットであり、前記温度調整コアは冷却用のコアであり、前記温度調整ブロックは加熱用のブロックであり、前記有底プリフォームは、前記底部に連続する周囲部に対し前記底部の肉厚が厚くされたものが前記温度調整ポットと前記温度調整コアの間に配され、前記温度調整コアは、その先端部に、四角い容器の角部となる部分に接触するように四角い形状に形成された冷却コア部を有することを特徴とする。
【0019】
請求項1に係る本発明では、温度調整ポットの上方の待機位置に有底プリフォームの底部の部位が配され、押付け駆動手段により温度調整ポットを接近上昇させることで、有底プリフォームの底部壁面が密着して保持される。これにより、温度調整ポットの内壁面に有底プリフォームの底部が隙間なく密着し、有底プリフォームの外側より温度調整が的確に実施される。
【0020】
このため、有底プリフォームの温度状態及び底部の形状(肉厚)を所望の状態に確実に制御することができ、見栄えを向上させた容器を得るための有底プリフォームとすることが可能になる。
【0022】
また、温度調整ポットと温度調整コアの間に有底プリフォームの底部が配され、押付け駆動手段により温度調整ポットと温度調整コアを接近させることで、有底プリフォームの底部壁面が密着して挟持される。これにより、温度調整ポットと温度調整コアの間に有底プリフォームの底部が隙間なく密着し、有底プリフォームの内外より温度調整が的確に実施される。
【0023】
このため、有底プリフォームの温度状態及び底部の形状(肉厚)を所望の状態に確実に制御することができ、見栄えを向上させた容器を得るための有底プリフォームとすることが可能になる。
【0025】
また、有底プリフォームの底部及び底部に連続する周囲部の一部を確実に冷却することができると共に、周囲部を昇温させて所望の温度状態にすることができる。
【0027】
また、有底プリフォームの底部が底部に連続する周囲部に対し肉厚とされ、少なくとも、底部および底部に連続する周囲部の一部が他の部位に比べて肉厚の状態にされて確実に冷却される。他の周囲部の温度を相対的に昇温させることで、ブロー成形を行った際に、所望の厚さを有する底部と、均一で薄肉に延伸された周囲部を備えた容器を製造することが可能になる。相対的に昇温させるとは、底部を冷却している間、周囲部を温度低下させないようにしていることを含み、昇温の状況は使用する樹脂などの成形条件に依存する。
【0028】
上記目的を達成するための
請求項2に係る本発明のプリフォームの温度調整方法は、射出成形により、底部及び前記底部に連続する周囲部を有し前記周囲部に対して前記底部の肉厚が厚くされた有底プリフォームを成形し、前記有底プリフォームの前記底部及び前記底部に連続する周囲部の一部の外周面を温度調整ポットにより密着保持して温度調整し、前記有底プリフォームの前記底部に連続する周囲部の一部を除く前記周囲部の部位を所定の温度に相対的に昇温させ
、温度調整ポットと前記プリフォームの前記底部及び前記底部に連続する周囲部の一部とを密着保持する際、前記プリフォームの前記底部及び前記底部に連続する胴部の下方部位を、前記温度調整ポットの内壁面と前記プリフォームの内側に挿入される温度調整コアとの間で機械的に押圧して最終容器に近い形状に圧縮変形させ、前記温度調整コアは、その先端部に、四角い容器の角部となる部分に接触するように四角い形状に形成された冷却コア部をその先端部に備え、この四角い形状の冷却コア部を前記プリフォームの前記底部に接触させて前記底部を変形させることを特徴とする。
【0029】
請求項2に係る本発明では、底部を厚肉に成形した有底プリフォームにおいて、有底プリフォームの底部及び底部に連続する周囲部の一部の内壁面及び外壁面を温度調整ポットにより密着保持して温度調整することで、肉厚の有底プリフォームの底部及び底部に連続する周囲部の一部を確実に温度調整することができる。そして、底部及び底部に連続する周囲部の一部を除く周囲部の部位を所定の温度に相対的に昇温させることができる。
【0030】
このため、見栄えを向上させた容器を得るように有底プリフォームを温度調整することが可能になる。特に、肉厚の底部と肉薄で均肉な周囲部が隣接した樹脂製容器を製造することが可能になる。
【0031】
そして、
請求項3に係る本発明のプリフォームの温度調整方法は、
請求項2に記載のプリフォームの温度調整方法において、前記底部及び前記底部に連続する周囲部の一部が冷却用のポットと冷却用のコアの間に配され、冷却用のポットと冷却用のコアを互いに接近させることにより、前記底部及び前記底部に連続する周囲部の一部の外周面が冷却用のポットに密着すると共に内周面が冷却用のコアに密着して冷却されることを特徴とする。
【0032】
請求項3に係る本発明では、底部及び前記底部に連続する周囲部の一部が冷却用のポットと冷却用のコアに挟まれて両面から効率よく冷却が実施される。また、肉厚の底部と肉薄で均肉な周囲部が隣接した樹脂製容器をより効率よく製造することが可能になる。
【0033】
また、
請求項4に係る本発明のプリフォームの温度調整方法は、
請求項3に記載のプリフォームの温度調整方法において、前記底部及び前記底部に連続する周囲部の一部を除く前記有底プリフォームの周囲部は完全な非接触状態もしくは周囲部の内周面において一部接触状態で所定の温度に相対的に昇温されることを特徴とする。
【0034】
請求項4に係る本発明では、底部及び底部に連続する周囲部の一部を除く有底プリフォームの周囲部は完全な非接触状態もしくは周囲部の内周面において一部接触状態で所定の温度に温調されることから、隣接した底部と周囲部に対し異なった温度条件を容易かつ峻別的に付与させることが可能になる。
【発明の効果】
【0035】
本発明のプリフォームの温度調整装置及び温度調整方法は、見栄えを向上させた容器とするプリフォームを得ることが可能になる。特に、肉厚の底部と肉薄で均肉な胴部が隣接した樹脂製容器を得るためのプリフォームに対し、温度分布を適正に付与させることが可能になる。
【0036】
また、本発明の樹脂製容器及び樹脂製容器の製造方法は、見栄えを向上させるためのプリフォームを用いて得ることができる。特に、肉厚の底部と肉薄で均肉な胴部が隣接した樹脂製容器とすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】射出成形されたプリフォームの外観を表す断面図である。
【
図2】本発明の一実施例に係る温度調整装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1から
図4に基づいてプリフォームの温度調整装置を説明する。
【0039】
図1には射出成形されたプリフォームの外観を表す断面、
図2には本発明の一実施例に係る温度調整装置の断面、
図3には冷却ポット及び加熱ブロックを備えた温度調整ポットの外観、
図4には温度調整コアの外観を示してある。
【0040】
本発明のプリフォームの温度調整装置は、射出成形された樹脂製の有底プリフォームの温度及び底部の肉厚を所望状態に調整する装置である。そして、所望の温度及び肉厚に調整したプリフォームがブロー成形されて容器とされる。ブロー成形した際に、周囲部分(胴部)の偏った肉厚の分布をなくし局所的に底部を肉厚化させ、また、透明度合いや光沢の度合いが均一な状態に維持された容器が得られるように、本発明の温度調整装置でプリフォームの温度及び肉厚が調整される。製造された容器は、例えば、消費者のもつ容器イメージに合う美的外観を備えるような、見栄えが重要な化粧品等の容器として使用される。
【0041】
プリフォームから容器を製造する装置は、有底プリフォームを射出成形する射出成形装置と、射出成形された有底プリフォームの温度及び肉厚を所望状態に調整する温度調整装置と、温度調整された有底プリフォームをブロー成形して中空の容器とするブロー成形装置とを、少なくとも備えている。有底プリフォームは、例えば、ブロー成形装置上に回転可能に保持される回転盤のネック型にて、順次、射出成形装置、温度調整装置、ブロー成形装置に移送される。
【0042】
射出成形装置では、
図1に示すような有底プリフォーム(プリフォーム)1が射出成形される。プリフォーム1は、ねじ溝が形成された口頭部2と、口頭部2の下方に配される胴部3と、ブロー成形後に中空の容器の底面部となる底部4とを有している。つまり、プリフォーム1は、底部4に連続して周囲部としての胴部3が配された状態になっている。そして、プリフォーム1は、胴部3の肉厚t1に対して底部4の肉厚t2が胴部3の肉厚t1以上にされている。実施例では、t1を2.5mm〜5.0mm、t2を2.5mm〜15.0mmとし、t2/t1=1〜3の範囲で設定している。射出成形されたプリフォーム1は、温度調整装置に供給される。
【0043】
図2から
図4に基づいて温度調整装置を説明する。
【0044】
図2に示すように、プリフォーム1は回転盤6に設けられたネック型7によって口頭部2が保持され、温度調整装置11に供給される。温度調整装置11は、プリフォーム1の外側部分を取り囲む温度調整ポット12と、プリフォーム1の内側部分に挿入される温度調整コア13を備えている。
【0045】
図2、
図3に示すように、温度調整ポット12は複数一組でポットベース15に固定されている。温度調整ポット12は、温度調整ポットとしての冷却ポット16と温度調整ブロックとしての2つの加熱ブロック17が連結台18を介して一体的にされ、ポットベース15に固定されている。
【0046】
冷却ポット16は、プリフォーム1の底部4及び底部4に連続する胴部3の下方部位(周囲部の一部)3aの外周面部を保持する内壁面16aを備えている。加熱ブロック17は、プリフォーム1の胴部3の下方部位3aを除く部位の外周面に非接触で対向する内壁面17aを備えている。図では加熱ブロック17は2段式で示されているが、1段にしても3段以上にしても構わない。また、各々の加熱ブロックは独立して温度制御可能であり、例えば100〜450℃の温度範囲で適宜設定することができる。同様に冷却ポット16でも、例えば、10〜90℃の範囲で温度調整が可能である。
【0047】
ポットベース15には押付け駆動手段としての昇降装置19が備えられ、昇降装置19によりポットベース15を介して複数の温度調整ポット12が昇降される。
【0048】
図2、
図4に示すように、温度調整コア13は複数一組でコアベース21に固定されている。温度調整コア13はプリフォーム1に挿入されるコア22を備え、コア22の先端部位はプリフォーム1の底部4及び底部4に連続する胴部3の下方部位3aの内周面部を接触して保持する先端部としての冷却コア部23となっている。コア22は先端部の冷却コア部23の径が太くされ、冷却コア部23以外の部位はプリフォーム1の胴部3の内壁面に対して非接触で挿入される状態になっている。
【0049】
冷却コア部23以外(コア22)が非接触の場合は、プリフォーム1の胴部に対し(断面方向で)均一な温度分布を授けることが可能になる。このため、主に容器の胴部が(断面方向で)等しく延伸されるような(例えば円形容器)成形で良好な結果が得られる。しかしながら、容器の胴部(断面形状)が四角形等で角があるような場合、非接触では胴部が均等に延伸されてしまうことから、角にあたる部分は延伸率が必然的に大きくなり、薄肉になってしまう傾向がある。この場合、コア22をプリフォーム1の延伸率が高くなる部分(角にあたる部分)に実質的に接触させ(接触しているとみなせる程度に接近している状態を含む)その部分の温度を低下させることで、容器角部の薄肉化を抑制することができる。より保有熱が高い非接触部分から延伸が始まり、保有熱が低下した接触部分では延伸されにくくなるためである。例えば、四角い容器を製造する場合は四角いコア22を用い、プリフォーム1の容器角部となる部分を実質的に接触させることで、角部に十分な肉厚を備えた四角い容器を製造することが可能になる。
【0050】
温度調整コア13の内部には、水もしくは油といった温調媒体を流す回路が設けられており(図示せず)、例えば、10℃〜90℃の範囲で温度設定が可能である。
【0051】
コアベース21には図示しない押付け駆動手段としての昇降装置が備えられ、昇降装置によりコアベース21を介して複数の温度調整コア13が昇降される。
【0052】
温度調整ポット12にプリフォーム1が供給されることで、底部4及び底部4に連続する胴部3の下方部位3aの外周面が冷却ポット16の内壁面16aにて保持可能な状態となる(待機状態)。また、温度調整コア13がプリフォーム1に挿入され、冷却コア部23により底部4及び底部4に連続する胴部3の下方部位3aの内周面が保持可能な状態ともなる。
【0053】
ポットベース15の昇降装置19及びコアベース21の昇降装置により(またはいずれか一方の昇降装置により)温度調整ポット12と温度調整コア13を相対的に接近させ、温度調整ポット12と温度調整コア13の間に配したプリフォーム1の底部4及び底部4に連続する胴部3の下方部位3aが温度調整ポット12の内壁面(または温度調整ポット12の内壁面と温度調整コア13の先端部の両方)と密着に接触して保持される。
【0054】
この状態で、プリフォーム1の底部4及び底部4に連続する胴部3の下方部位3a(底部壁面)が、冷却ポット16の内壁面16a(または冷却ポット16の内壁面16aとコア22の冷却コア部23の両方に)に接触して冷却される。同時に、プリフォーム1の底部4及び底部4に連続する胴部3の下方部位3a以外の胴部3が、加熱ブロック17の内壁面17aで(または加熱ブロック17の内壁面17aと冷却コア部23以外の部位のコア22との間で)、非接触で加熱される。プリフォーム1と冷却コア部23以外の部位(コア22)を一部接触させる際は、プリフォーム1の内周面の接触部が冷却されるのと同時に、プリフォーム1の外周面が非接触で加熱されることになる。さらに、プリフォーム1の底部4及び底部4に連続する胴部3の下方部位3aを、冷却ポット16の内壁面16aと冷却コア部23との間で機械的に押圧し、より最終容器の底部に近い形状へ圧縮変形させることも可能である。この場合、底部4側の材料が一部、胴部3側に流動される。プリフォーム1の底部4及び底部4に連続する胴部3の下方部位3aを最終容器により近い肉厚分布や形状に調整することで、密着接触による冷却のみでは対応できない最終容器の底部形状も賦形することが可能になる。
【0055】
これにより、プリフォーム1の温度及び底部の形状(肉厚)が所望の状態に調整される。例えば、プリフォーム1の底部4の近傍の肉厚を確保した状態で冷却を行い、プリフォーム1の胴部の肉厚を相対的に薄くして後工程でのブロー成形での延伸性を確保した状態で加熱を行うことができる。プリフォーム1の温度及び肉厚を所望の状態に調整することにより、ブロー成形した際に、底部が肉厚で周囲部(胴部)の肉厚の分布が整った、透明度合いや光沢の度合いが均一な状態に維持された容器が得られ、例えば、消費者のもつ容器イメージに合う美的外観を備えるような、見栄えが重要な化粧品等の容器として使用することが可能になる。
【0056】
本発明の温度調整装置11を用いることにより、見栄えを向上させた容器を得ることが要求されるプリフォーム1に対し、適切な温度分布や形状(肉厚)変形を提供することが可能になる。
【0057】
図5から
図7に基づいて上記構成の温度調整装置11の動作を説明して本発明のプリフォームの温度調整方法を説明する。
【0058】
図5(a)にはプリフォーム1が温度調整ポット12に供給された状態(待機状態)の断面、
図5(b)にはプリフォーム1の底部壁面が冷却ポット16に密着接触して冷却された状態の断面、
図5(c)には温度調整ポット12の冷却ポット16と温度調整コア13の冷却コア部23の間にプリフォーム1の底部4が押圧・挟持された状態の断面を示してある。また、
図6(a)には所望の状態に温度調整されたプリフォーム1の断面、
図6(b)にはブロー成形を行った後の容器の断面を示してある。更に、
図7には容器の外観状況を示してある。
【0059】
温度調整ポット12の冷却ポット16が所定の冷却に必要な温度に調整され、加熱ブロック17が所定の加熱に必要な温度に調整されている。また、温度調整コア13の冷却コア部23が所定の冷却に必要な温度に調整されている。
【0060】
図5(a)に示すように、昇降装置19によりポットベース15を介して複数の温度調整ポット12が所定の位置に位置決め(待機)される。次いで、温度調整ポット12を、プリフォーム1の底部4及び底部4に連続する胴部3の下方部位3aが冷却ポット16の内壁面16aと密接に接触できるように、所望の高さ(δ1)だけ上昇させる(
図5(b))。この状態では、プリフォーム1の底部4及び底部4に連続する周囲部3の一部が冷却ポット16の内壁面16a形状に倣って干拡径するため、長さが多少短くなり、底部4の厚さも(a)に対して若干薄くなる。この時、プリフォーム1の胴部3の下方部位3aを除く部位の外周面には、加熱ブロック17の内壁面17aが非接触で対向している。上記の動作及び方法により、底部4及び底部4に連続する周囲部3の一部が全体的に冷却されて胴部3よりも低温となる結果、ブロー後の容器底部にも樹脂の肉が残りやすくなる。
【0061】
さらに、コアベース21の押付け駆動手段を介して温度調整コア13を下降させることにより、コア22をプリフォーム1に挿入させることが可能である。この時、温度調整コア13の先端となる冷却コア部23の下限位置は、プリフォーム1の底部4及び底部4に連続する胴部3の下方部位3aの内周面部を軽く接触させることができる位置に規定する。プリフォーム1の底部4及び底部4に連続する周囲部3の一部の形状は(b)の時点より実質的に変化しない。上記の動作方法により、プリフォーム1の底部4及び底部4に連続する周囲部3の一部の肉厚を維持した状態で、内外から同時に冷却することが可能となる。これにより、徐冷に起因する底部4の白化をかなり抑制することができる。なお、冷却コア部23の先端形状は尖っているより平坦な方が望ましい。プリフォーム1の底部4の内面と接触面積が大きくなり、冷却効率が向上するためである。
【0062】
なお、容器の底部をより肉厚に成形したい場合には、温度調整コア13を下降させる時点で、プリフォーム1の底部4と冷却ポット16を離接させた状態にしていることが望ましい。
図6を見れば分かるように、(a)温度調整後のプリフォーム1と(b)ブロー成形後の容器25は、縦軸方向の長さに差がほとんどない。つまり、ブロー成形において縦軸延伸がほぼ行われない。このため、最終容器25の底部26の形状は、温度調整後のプリフォーム1の底部4(及び底部4に連続する周囲部3の一部)の形状と近いものになりやすい。もし、冷却ポット16を下降させないまま冷却コア部23をプリフォーム1に挿入すると、底部4を押圧して潰してしまう虞がある。これにより、冷却コア部23との接触部分にあたる底部4は薄肉になってしまったり、冷却コア部23の形状が底部4の内面に痕として残ってしまったりする。
【0063】
ただし、温度調整段階において、底部4を積極的に変形させ、最終容器の底部形状に近づけさせるという点では、冷却ポット16及び冷却コア部23による底部4の押圧処理は利用価値がある方法と言える。
図5(c)では、その方法を例示している。ただし、最終容器の底部の厚さは、
図5(b)の方式よりも薄くなってしまうという点は、留意しておかなければならない。
【0064】
温度調整ポット12と温度調整コア13が
図5(b)よりさらに接近することにより、プリフォーム1の底部4及び底部4に連続する胴部3の下方部位3aの内周面部がコア22の冷却コア部23に押付けられ、プリフォーム1の底部4及び底部4に連続する胴部3の下方部位3aの外周面部が冷却ポット16の内壁面16aに押付けられる。
【0065】
つまり、温度調整ポット12と温度調整コア13の間にプリフォーム1の底部4及び底部4に連続する胴部3の下方部位3aが機械的に圧縮されて挟持される。
【0066】
これにより、肉厚状態にされたプリフォーム1の底部4の材料が底部4に連続する胴部3の下方部位3a側に流動して変形し、底部4及び底部4に連続する胴部3の下方部位3aの内周面部がコア22の冷却コア部23に確実に密着し、底部4及び底部4に連続する胴部3の下方部位3aの外周面部が冷却ポット16の内壁面16aに押圧され確実に密着する。
【0067】
従って、上記のプリフォーム底部の押圧加工を実施することで、底部4に連続する胴部3の下方部位3aの肉厚が十分に確保され、底部4及び底部4に連続する胴部3の下方部位3aの内周面部と外周面部が所望の形状(最終容器の底部形状に類似した形状)を維持した状態で、冷却ポット16の内壁面16a及び冷却コア部23に同時に接触して冷却される。
【0068】
同時に、プリフォーム1の底部4及び底部4に連続する胴部3の下方部位3a以外の胴部3の部位3bが、加熱ブロック17の内壁面17aと冷却コア部23以外の部位のコア22との間で、非接触で加熱される。この条件により、ブロー成形される周囲部および底部の範囲内で、ブロー成形に必要な内部熱量の不足状態が避けられる。
【0069】
これにより、プリフォーム1の底部4が冷却され、底部4に連続する胴部3の下方部位3aが冷却され、胴部3の下方部位3a以外の胴部3の部位3bが延伸可能な状態に加熱され、プリフォーム1の温度及び形状(最終容器の底部形状に類似した形状)が所望の状態に調整される。
【0070】
例えば、プリフォーム1の底部4及び底部4に連続する胴部3の下方部位3aの近傍の肉厚を確保した状態で冷却を行い、後工程でのブロー成形で形状が確保されるようにし、プリフォーム1の胴部3の部位3bの肉厚を相対的に薄くして後工程でのブロー成形で均一に延伸させることができる状態で加熱を行うことができる。
【0071】
なお、前述の温度調整装置11及び温度調整方法によりプリフォーム1にどのような温度分布を授けるかは、プリフォーム1の形状や重量、射出成形時から有した温度分布の状態、最終的な容器形状や要求される規格値等により変更される。実施例では温度調整ポット12を最初に上昇させているが、温度調整ポット12と温度調整コア13を併用する場合は、これに限定されない。具体的には、温度調整処理時間の長さ、温度調整コア13もしくは温度調整ポット12のどちらを先にプリフォーム1から離すか(冷却処理と加熱処理のどちらを長くするか)は、プリフォーム1に適切な温度分布を付与させるため、適宜変更しても構わない。
【0072】
温度調整装置11で所定の形状(肉厚)及び温度に調整されたプリフォーム1は、ブロー成形により2軸延伸加工され、
図6(b)に示すように、所望の状態に冷却された底部4及び底部4に連続する胴部3の下方部位3aの肉厚が維持され、延伸性を確保する状態に加熱されたプリフォーム1の胴部3の部位3bが均一かつ比較的薄肉に延伸され、底部や胴部の偏った肉厚の分布をなくして透明度合いや光沢の度合いが均一な状態に維持された容器(樹脂製容器)に成形される。なお、肉厚である底部26を良好に賦形させるため、底型の駆動を2軸延伸時にわざと遅らせる成形方法、所謂、上底遅延成形法を実施することが望ましい。この方法は、例えば出願人の日本特許公報(特許第2107926号)等で公知であるため、本願での詳しい説明は省略する。
【0073】
図7に示すように、ブロー成形された容器25は、底部26の強度が十分に確保されると共に、周囲部分(胴部)27の肉厚の分布をなくして透明度合いや光沢の度合いが均一な状態に維持された容器25となる。容器25は、例えば、見栄えが重要な化粧品等の容器として使用することが可能になる。
【0074】
このため、上述した温度調整装置11を用いたプリフォームの温度調整方法によると、見栄えを向上させた容器25を得ることが可能になる。また、肉厚の底部と肉薄で均肉な胴部が隣接した樹脂製容器を得ることも可能になる。加えて、プリフォームの温度調整方法で温度調整されたプリフォームを用いて作製され、見栄えが向上した樹脂製容器を得ることができる樹脂製容器の製造方法を提供することが可能になる。
【0075】
尚、本装置および方法にて使用できる樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)の他、ポリプロピレン(PP)といったものがあげられる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、射出成形されたプリフォームの温度を制御するプリフォームの温度調整装置及びプリフォームの温度調整方法の産業分野で利用することができる。また、本発明は樹脂製容器及び樹脂製容器の製造方法の産業分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0077】
1 有底プリフォーム(プリフォーム)
2 口頭部
3 周囲部(胴部) 4 底部
6 回転盤
7 ネック型
11 温度調整装置
12 温度調整ポット
13 温度調整コア
15 ポットベース
16 冷却ポット
17 加熱ブロック
18 連結台
19 押付け駆動手段(昇降装置)
21 押付け駆動手段(コアベース)
22 コア
23 先端部(冷却コア部)
25 容器(最終容器)
26 底部
27 周囲部(胴部)